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五 式 太 極 拳 重 点 要 領
2004年度第2期第2回ブロック講師養成セミナー 五 式 太 極 拳 実技研修資料 重 点 要 領 2005年1月10日~16日 豊橋市 2004年度第2期第1回セミナーの伝達項目である、 ◎ 全体課題=体の各部を「ゆるめて、繋げ、拡げる」 ◎ 二つの3点セット;①<ゆっくり><均一に><ゆるめながら>、 ②<鬆腰・鬆胯・収胯><虚領頂勁(含胸抜背、抜背寛胸)><踏実> ◎ 1.歩法と身法、2.身法と手法、3.眼法と歩法・身法・手法の結合、 ◎ 五式太極拳の要求; ① 膝の故障を予防するために、両足の前後の歩幅は小さく、高い姿勢で行う。 ②「前引き」 、「後ろ引き」、「膝つぶれ」、「膝乗り」の習慣を改善する。 ③ ゆっくり、高い姿勢で行う。 の基礎のうえで、五式太極拳の各動作の重点要領の体得をすすめる。 1.起 勢・野馬分鬃: ◎ 起 勢; 1)抱 掌;① 両手のひらを上下で相対させる。 - 右手が体から遠すぎ、肘が伸びているのは不可。 - 左腕の肘が伸び、掌が上に向いていないのは不可。 - 左足裏から右足裏に重心を均等に移してゆく(左かかとを徐々に上げ、 右胯をゆるめて収める) 。 - 両肩をゆるめ、両肘をゆるめながら均等に動かして、抱掌をつくる。 ② 抱掌・収脚・眼神の協調一致。 ★ 起勢から、 - 抱掌を完成する時に、左足を右足のそばに引き寄せる(収脚)動作 と、眼が右手の上から前方を見る動作を、一瞬の間、一致させる。 - 抱掌動作を完成させ、右胯を収め、左足を寄せた時に、体と眼は、 一瞬の間、右斜め前方に向く。 - この時に、右胯が収まらないで、体が左に向いているのは不可。 ★ 右方向を見たり、体を右に向ける動作が、抱掌動作が完成するよりも早 過ぎると、抱掌動作が完成する時に、体が左に向いてしまうことが、し ばしば起きる。 重心の移動、右胯を収める動作と、抱掌動作を協調させて行い、手・ 体・眼が一致して、右斜め方向に向いた状態を、一瞬の間作る。 続いて、停止・停滞しないで、次の、転腰・上歩に移って行くこと。 ◎ 野馬分鬃; 1)分 掌;両手は、前後だけでなく、左右にも十分開く。体の中心(胸の中)から、前後 左右、あらゆる方向に向かって拡げてゆく。 2)抱 掌;歩法・身法に合わせて、両肩をゆるめ、両肘を均等にゆるめて動かし、抱掌に する。 下の手の掌が、上を向いていないのは不可。 肘をゆるめて外側に拡げ、指先を内側に差し込みながら、掌を旋転させて上に 向けてゆく動作を連動させて行う。 上の手の肘と下の手の肘は、同時に、均等に動かす。下の手の肘の動きが遅れ ないように。 2.倒巻肱: 1)分開手;払いだす腕は、腹前から直接外側に向けて払い出さないこと。まず、下に向け て降ろした後に、外側に払い出すことで、肩を開き、腰と連動して払い出す。 腕だけの動きでなく、胸をゆるめて拡げる動作にともなって、払い出す。 2)収 臂(腕を収める);腕を収める時に、肩をゆるめないで、引き寄せるのは不可。 -1- 肘だけを曲げて、引き寄せるのも不可。 ① 先ず、肩と軸足の胯をゆるめ、次に肘をゆるめ、指先をわずかに外側に送り出し、 ② 肘を外側・後方に沈め、指先を内側に向ける。 ③ 眼・顔・体を前方に向ける動作に協調させて、②の動作を行い、指先を耳のそ ばに引き寄せる。 3)指先・掌心;掌心は顔に向け、指先は、推掌の方向に向ける。指先を上に向けたり、横 に向けるのは不可。五指の方向が乱れているのも不可。 4)退 歩;退歩する脚部だけを単独で動かすと、身法・手法が乱れ、動作全体の協調一致 が得られない。 ① 退歩する足を、軸足から後方に送り出すときに、軸脚の腰・胯をゆるめる (ゆるめてわずかに沈める感覚)動作と協調させる。 軸足の腰・胯の協調動作を伴わないで、退歩する足を単独で動かさない こと。 ② 退歩する足は、①の動作と協調して、膝を柔らかく伸ばすように送り出し、 できるだけスムーズに、すみやかに、着地し、かかとを床におろす。 退歩が停滞した速度で行われると、身法・手法の協調が損なわれる。 ③ 重心は軸足足裏で支え、軸足の胯をゆるめて折込む。 ④ さらに腰をゆるめ、軸足足裏で十分に体重を支えた後に、 ⑤ 収胯・虚領頂勁をともなって、体重を後ろ足裏に送り込んでゆく。 ⑥ 体重を後ろ足の膝で受け止めて、膝をつぶさないこと。 ⑦ 虚歩の定式では、前膝をゆるめて曲げ、腰・胯をわずかに沈めて、虚領頂 勁。 5)推 掌;「空」の手を動かさない。歩法・身法の働きに従って、両手を協調させて行う。 ① 退歩・虚領頂勁の動作に従って、肩をゆるめ、肘を送り出す。肘を送りだ す動作に従って、掌心を、徐々に、前方に向けて推掌を行う。 ② 肘を下に沈めすぎると、肩が開かず、掌心に勁が届かない。 ③ 肘を浮かせたまま、推し出すのも不可。 ④ 肘が伸びきる、手首を強く沈める、手首を全く沈めない、はいずれも不可。 3.搂膝拗歩: 1)収 臂(腕を収める);「倒巻肱」と同様。 2)指先・掌心;「倒巻肱」と同様。 3)推 掌;「空」の手を動かさない。肩を開き、伸びやかに推し出す。 ① 重心が中点(中定)を過ぎる頃から、眼は前方遠くを注視し、歩法・身法 の働きに従いながら、肩をゆるめ、肘を送り出し、掌心を徐々に前方に向け て、推し出す。肘を送り出すことで、肩がさらに開いて沈むように。 ② 眼法と虚領頂勁の身法の働きで、肘を送り出す。手を、体の働きより先行 して動かすと「空の手」になる。 ③ 「搂掌」と「推掌」の虚実の入れ替えを、意識して行う。 4.穿 梭: 1)転腰上歩;① 突っ立ったまま体を回さない。腰・胯をわずかにゆるめたうえで、踏実・ 虚領頂勁の働きを作りながら、目が上歩の方向に体を導き、両手の回転動作 と上歩を協調させて行う。 ② 両手は、転腰上歩と連動して動かし、上歩の着地と同時に、片手は腰骨の 横に、もう一方は腹前に伸ばし出す。次の「架掌・推掌」の準備を同時に完 成させる。両手の動作の完成が、前足の着地より遅れないこと。 ③ 上歩と同時に、すみやかに胯をゆるめ、前足の膝・足首をゆるめ、足裏を 着地させて、次の、弓歩に移る準備を完成させる。 前足の着地後に、突っ立ったままの姿勢にならないこと。 2)架掌・推掌;① 弓歩・虚領頂勁の動作に従い、先ず、前の腕が前方、上方に「架掌」 を行ってゆき、続いて、「推掌」を行う。両肩をゆるめ、肘を前方に送り 出す。 「推掌」は、肘を持ち上げながら行ってはならない。肩をゆるめて沈め、 肘を前方に送り出す動作によって、更に、肩がゆるんで沈むように行う。 3)後坐転腰、両手の虚実; ① 後坐転腰の時には、 「推掌」であった腕が「実」、 「架掌」であった腕が「虚」。 -2- ② 次の、踏実・収脚の時には、 「架掌」であった腕が「実」 、 「推掌」であっ た腕が「虚」、であるようにうごかす。両腕の虚実が不分明であると、散 漫でバラバラな手法になってしまう。 4)踏実・収脚;① 前胯をゆるめて、踏実を行う。「前引き」は厳禁。 ② 「前引き」で行うと、膝が体重を受け、次の動作が全て、壊れてしまう。 ③ 足を引き寄せた時は、前胯を引き込み(「収胯」ショウクワ)、体重をすべ て、足裏で支え、抱掌は、膝・足先よりも、少し外側で抱える。 5.雲 手: 1)重心移動;① 左右いずれの時も、重心が中点(中定)を過ぎる時から、重心を送り出す 足のかかとを徐々に持ち上げ、それに呼応して、もう一方の足の胯をゆる め、重心を足裏で受け止めて行く。 ② かかとと胯を連動させ、重心の移動(虚実の変換)を、均一に行う。 ③ 中点を過ぎても、かかとを持ち上げる動作が遅れていると、重心移動の停 滞と、その後に、不均一で突然の移動が行われ、断勁が起きる。 ④ <②かかとと胯を連動させて、重心の移動を均一に行う>ためには、足を 出し、または収めて、足裏前部の内側を着地している状態から、次のよう に行う。 - 軸足の胯をゆるめてわずかに沈める動作と、もう一方の足のかかとを 着地する動作を協調させる。かかとを単独で着地させない。 - つづいて、軸足の胯を更にわずかにゆるめる動作と、もう一方の足の 胯、膝をわずかにゆるめる動作を連動させる。 - その後に、軸足の重心をすこしづつ、柔らかく、均一に、もう一方の 足裏に送り込んでゆく。もう一方の足は、胯・膝をゆるめる動作を 連動させる。 - 重心が中点を過ぎる時から、かかとをあげる動作と、胯をゆるめる動 作を連動させる。 2)転腰の幅;① 上級者は、体を真横まで回して、180度の方向で、足を出し、足を収め る。 ② <3)の足と手の協調一致>をバランス良く行うために、180度の角度 が必要。 ③ 体を真横まで回すためには、胯をゆるめて、腰を十分に回し、足裏で重心 を安定して支えることが必要。 3)足と手の協調一致;① 足を出す時、引き寄せる時は、上の手を伸ばし終わり、下の手を 腹前から上に挙げる時と、協調一致させて行う。 ② 足の動作が両手の動作と協調しないと、明白な断勁が起きる。 4) 手法=脇・肩;① 体を真横まで回して足を出し、また、足を収める時に、下の腕の脇が 詰まらないように。 軸足の胯を十分にゆるめて腰を回したうえで、下の腕の、肩をゆるめ、 肘をゆるめて、少し外側に曲げて、沈める。 肘を伸ばしたまま、または、肘を持ち上げたままでは、必ず、脇が詰 まる。 ② 下の腕の脇が詰まると、次に、その腕を持ち上げて外側に払い出す時 に、肩が持ち上がり、手法の基本的な過ちとなる。 5)手法=掌心・肩;① 上の腕を外に払い出し、掌心を返す時に、掌心を返すのが早過ぎな いこと。体の回転と連動しないで、掌心だけが、単独に、先行して 返るのも不可。 ② 掌心を返すのが早過ぎたり、身法と連動しないで返すと、定点で上 の腕の肩が持ち上がったり、腕がちじこまって、のびやかな拡がり が得られない。 体が回転して定点に至る時に、体の働きで、掌心を返すように。 手指の要求: 全ての手法において、手指をゆるめ、のびやかに保ち、五指が自然にそろっていることに注意する。 五指が曲がっていたり、五指の指先の方向が揃わないで、乱れたまま動かしているのは不可。 「其根在脚、発於腿、主宰於腰、形於手指」 参考: (張三豊遺論・武禹襄) (その根は足にあり、脚部から発し、腰が主宰し、手指に現れる) 以上 -3-