Comments
Description
Transcript
24ページ (PDF:479.4KB)
宍粟 歴史 再発見 〜 第 回 〜 うが 「与位の洞門」 が し ゅ か ん べ 山崎町神野地区の国道二十九号を 一 宮 町 方 面 に 向 か う と、 田 井 と 杉 ケ 瀬に架かる井ケ瀬橋にさしかかりま す。 橋の上から左斜め前方に目をやる と、 揖 保 川 の 対 岸 に そ そ り 立 つ 岩 塊 の根元に穿たれた与位の洞門が姿を 現します。 この辺りは揖保川に沿って宍粟の 北 部 に 向 う 際 の 交 通 の 難 所 で、 所 々 に「 ほ き 」 と 呼 ば れ る 断 崖 が 河 岸 に 迫 っ て 通 行 を 阻 む と と も に、 一 方 で 雅趣に富む景観を見せています。 江 戸 時 代 に は、 田 井 と 杉 ケ 瀬 の 間 に渡し舟が置かれ、「神戸八景」のう ち の「 杉 瀬 渡 船 」 と し て 和 歌 に も 詠 まれています。 き が ん ひろ しも し だ へきたん さんきゃく すこぶ ずいどう のぞ ひるがえ とうえい みち いよいよ き ぜ つ そうせい ほき れた『兵庫県宍粟郡誌』には、「下乢 の奇巌」として次のように記されて います。 、揖 「神野村田井より与位に至る途 保川の清流山脚を洗う処に二箇の巨 巌 あ り。 其 の 形 頗 る 奇 な り。 巌 頭 に は 老 松 枝 を 伸 べ て 空 に 翻 り、 断 崖 数 十 尋、 羊 歯 岩 松 の 類 こ れ に 叢 生 し、 下部は碧潭に臨みて倒映の景奇絶な り。 も と 桟 橋 を 架 し て 風 致 を 添 え た り し が、 今 は 隧 道 を 穿 ち て 奇 弥 々 加 われり。」 このように洞門が穿たれる以前は、 川に面して桟橋が架けられていまし た。 下 の 洞 門 の 東 口 に あ る 石 造 地 蔵 尊の台石には、「橋願主高尾多右衛門 /宝暦二申年(一七五二)」と刻まれ、 この頃には桟橋が架けられていたも のと思われます。 し す い あ ん そ れ ん 近世山崎俳壇の第一人者と称され る 青 蓮 寺 の 四 睡 庵 素 練 が、 寛 政 四 年 (一七九二)に行われた句会の記録を 編んだ『俳諧三音鳥』に、「(与位桟道) か け は し や 霞 を そ ゆ る 裾 も や( よ ) う 亀有」)とあり、その奇勝は広く 知 れ 渡 っ て い ま し た。 今 も 川 に 面 し た 岩 塊 の 壁 面 に は、 桟 橋 の 腕 木 を 差 し込んだ四角い穴が残されています。 し か し な が ら、 岩 肌 に 貼 り 付 く よ う な狭い桟橋を渡るには多くの危険が 伴ったであろうことを想像するに難 く あ り ま せ ん。 ま た、 荒 天 の 度 に 桟 橋が落ちていたとも伝えられています。 この巨岩を穿って隧道を通す工事 が 行 わ れ た の は、 明 治 時 代 も 後 半 期 になってからのことでした。 昭和二十七年(一九五二)、神野村 発 行 の『 本 村 の 実 情 に 即 し た 全 村 教 育』によれば、「明治三十年(一八九七) 遂に岩石を穿ち洞門し隧道を開通せ り。」とあり、従来伝えられていたよ りも早くに隧道が掘削されていたよ うです。 そ の 後、 昭 和 の 初 年 に は 荷 車 が 通 れ る よ う に 拡 張 さ れ、 さ ら に 昭 和 四 十 三 年( 一 九 六 八 ) に は 大 型 の 自 動車が通行できるように改修されま した。昭和六〇年(一九八五)には、 旧 山 崎 町 の 文 化 財 に 指 定 さ れ、 合 併 後 も 宍 粟 市 指 定 文 化 財( 名 勝 ) と し て引き継がれています。 (参考資料は本文に掲げたもの以外に、 『山崎町史』、『一宮町史』ほか。) 社会教育文化財課 24 Public Relations S H I S O [ 2016. 8] この広報紙は環境保護のため、植物油インキと古紙再生紙を使用しています。 http://www.city.shiso.lg.jp [email protected] 0790-63-3061(代) 0790-63-3000(代) 平成28年8月12日発行 (137号) 発行/宍粟市 編集/企画総務部秘書広報課 〒 671-2593 兵庫県宍粟市山崎町中広瀬 133-6 8月号 広報しそう 与位の洞門 大 正 十 二 年( 一 九 二 三 ) に 発 行 さ 桟橋をかけるために穿たれた穴 38 編集後記 いよいよ夏本番。私の家の近くでも、毎朝ラジオ体操の軽快な音楽と子どもたちの笑い声が聞 こえ、朝から元気になります。さて、最近ニュースなどでも大きく取り上げられているスマートフォ ン向けゲーム「ポケモン GO」。町を歩いていると、幅広い年齢層のポケモンマスターたちが新種のポケモンを求めて歩 き回っています。ポケモン探しも楽しいですが、ケータイの液晶画面ばかり見て夏が終わってしまうのはもったいない! 8月は市内各地で開かれるイベントが盛りだくさんです!ぜひ、家族や友だちとの思い出づくりに出かけましょう。 小