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1 ガラス溶解炉排ガスの NOx 低減技術の概要 公立大学法人 大阪府立

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1 ガラス溶解炉排ガスの NOx 低減技術の概要 公立大学法人 大阪府立
ガラス溶解炉排ガスの NOx 低減技術の概要
公立大学法人
大阪府立大学
大学院工学研究科機械系専攻
公立大学法人 大阪府立大学 大学院工学研究科機械系専攻
日本山村硝子株式会社 環境室 室長 鳥居 豊彦
日本山村硝子株式会社 環境室 山本 柱
教授
准教授
大久保
黒木
雅章
智之
1.ガラスびん溶解炉の構造、用途、市場と環境影響
本開発で対象とするガラス溶解炉は、図 1 に示すようにガラス原料(珪砂、石灰な
ど)を重油あるいは都市ガス燃焼バーナを用いて約 1500℃で溶解し、飲料や食料用の
ガラスびん製品を成形しています。国内におけるガラスびん出荷量は年間約 120 万ト
ンであり、日本山村硝子はその約 4 割を製造しています。
図 2 にガラス溶解炉内部の写真を示します。左側のバーナからは燃焼炎が噴出して
おり、下部のタンク内のガラス原料を火炎の輻射熱で溶解します。炉から排出される
燃焼排ガスには SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、PM(微粒子状物質)などの
大量の大気汚染物質が含まれています。
原料
燃焼バーナ
燃焼炎
調合
ガラス溶解炉
蓄熱炉
びんの成形
燃焼
排ガス
徐冷
検査
図1
出荷
ガラスびんの製造工程
図2
ガラス溶解炉内部の写真
2.プラズマ複合排ガス処理技術の説明
大阪府立大学が開発を進めてきた燃焼排ガスに対する総合的排ガス浄化技術であ
るプラズマ複合排ガス処理技術は、排ガス排気管の途中に、高電圧放電を利用したプ
ラズマ(電離ガス)発生装置(図 3)により形成される O3(オゾン)を主成分とする
活性酸素を注入し、排ガス中の NOx を酸化して下流の反応塔での複合処理により完全
に無害化する技術です。図 4 に円筒電極内部で発生したプラズマの写真を示します。
NOx は光化学スモッグなど二次微粒子状物質生成の原因となる有害大気汚染物質で
あることが知られています。一例として、当該技術を産業用都市ガス産業用ボイラに
1
適用した場合、NOx 排出濃度を 1 ppm 以下に抑制可能であることを実証してきました。
図 5 に本開発を行った日本山村硝子播磨工場の排ガス処理設備を示します。ガラス
溶解炉から排出される燃焼排ガスに含まれる SOx は NaOH(水酸化ナトリウム)を脱
硫剤として用いる湿式や乾式の脱硫装置により除去され、その反応生成物である
Na2SO4(硫酸ナトリウム)や、ばい塵(原料飛散物)などの PM は電気集塵機やバグ
フィルタなどの集塵装置によって処理されています。しかしながら、NOx に対しては、
排ガス中に含まれるガラス原料由来の粘着ダストや高濃度 SOx 等が触媒にダメージ
を与えるため、石炭火力発電所の排ガス処理などで広く用いられている SCR(選択触
媒還元法)の導入が困難であり、これまでその対策が行われた事例はほとんどありま
せんでした。
今回、ガラス溶解炉排ガスを対象として、プラズマ複合排ガス処理装置を既存の湿
式ならびに乾式排煙脱硫装置と組み合わせて SOx、NOx、PM の同時低減を図ること
を可能とする技術を開発しました。今後の展開として、世界中に多数存在するガラス
溶解炉向け排ガス処理装置への適用を行ってまいります。
図3
テストに使用したプラズマ発生装置
図4
円筒電極内部のプラズマの写真
ガラス溶解炉
溶解能力:215t/d
燃料:都市ガス
燃焼量:1,000m3/h
図5
日本山村硝子播磨工場の排ガス処理設備
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3.開発の社会的背景
昨今の越境汚染の問題に関連して、燃焼プラントやエンジンから排出される排ガス
の浄化技術に関心が集まっています。排ガス中の大気汚染物質は大別して一次生成粒
子状物質(PM)とガス状物質(NOx、SOx など)の 2 種類がありますが、ガス状物質
に関しても気体として大気中に放出されたものが、大気中で化学反応し二次生成粒子
状物質となり、PM2.5 として検出されるため、微粒子状物質とガス状汚染物質の総合
的浄化技術が極めて重要となってきています。以上の状況を踏まえて、大阪府立大学
では、新興国でも安価に実施できる省エネルギー・低コストである総合的排ガス浄化
手法としてプラズマ複合排ガス処理技術を様々な燃焼装置に対して適応させてまい
りました。なお、処理技術の原理と、各種燃焼機器に対する試験結果は、アメリカ電
気電子学会産業応用部門論文集あるいはプラズマ・核融合学会における一連の論文と
して掲載され世界的な評価を受けております。
4.研究助成資金等
本研究は大阪府立大学先端科学共同研究プロジェクト研究費と日本山村硝子㈱共
同研究費の補助を受けて行われました。
5.発表論文および発表予定
(1)半乾式のプラズマ複合排ガス処理に関する実験結果を発表済み(静電気学会)
http://www.iesj.org/html/journal/articles/papers/38/38-1-52.pdf
(2)半乾式および湿式のプラズマ複合排ガス処理に関する実験結果を 2014 年 6 月
に発表予定(International Symposium on Non-Thermal/Thermal Plasma Pollution Control
Technology & Sustainable Energy、大連市、中国) http://www.isntp-9.org/
6.関連リンク
(1)公立大学法人 大阪府立大学
http://www.me.osakafu-u.ac.jp/plasma/
大学院工学研究科
環境保全学研究グループ
(2)日本山村硝子株式会社
http://www.yamamura.co.jp/
(3)プラズマ複合排ガス処理技術に関する発表論文(プラズマ・核融合学会)
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2013_03/jspf2013_03-152.pdf
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