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大型車を取り巻く環境について
大型車を取り巻く環境について 久保田茂樹(三菱自動車工業) 使用過程車に対する規制に乗り出した。 2.2.自動車 NOx・PM 法 さらに国とは別に、東京都を始めとし ( 「自動車から排出される窒素酸化物及 わらず、NOx(窒素酸化物)や PM た自治体レベルでのディーゼル車対策 び粒子状物質の特定地域における総量 (粒子状物質)を中心に大都市域の大 の動きも始まった。 の削減等に関する特別措置法」 ) 1.はじめに これまでの国の排出ガス規制にも拘 気環境は依然として改善されない情況 が続いている。 (図 1,2 参照) また幹線道路沿線の自動車交通騒音 大都市地域での NOx による大気汚 が改善されない現状から、自動車単体 染改善のため、平成4年に自動車NO の騒音規制も施行されつつある。 x法が制定された。これは首都圏、近 さらに高速道路での大型車が関与し 畿圏においては、当時の最新排出ガス た場合の事故被害の大きさから、大型 規制値を満たさない車は、現在運行中 トラックの最高速度を規制することも の使用過程車であっても一定の猶予期 決定された。 間後は継続して車検を取得できないと ここでは、これら大型車を取り巻く 最近の規制動向について紹介する。 の法律であった。 しかし自動車交通量の増大等もあり、 目標とした平成 12 年度末においても 2.排出ガス規制の動向 前述のとおり大気環境が大きく改善さ 2.1.新短期、新長期排出ガス規制 れなかったため、再度施策を強化して 日本におけるディーゼル重量車の排 図 1 NOx 濃度の年平均値推 移 出ガス規制は、昭和 48 年から開始さ れ、現在は長期規制と呼ばれる平成 図 2 PM 濃度の年平均値推移 (環境省 HP より) 京都が展開したディーゼル車 NO 作 れることとなった。 今回の改正では適合すべき排出ガス 10 年・11 年規制が施行されている。 基準を最新の平成 10 年・11 年規制に PM については前回の短期規制(平 変更し、PM も規制対象物質に追加さ 成 6 年規制)から規制対象に追加さ れた。また対象地域に中部圏(愛知 れた。今後、平成 15 年・16 年には新 県・三重県の一部)が追加指定された。 短期規制の施行が既に決定されており、 2.3.東京都環境確保条例 さらに平成 19 年からの予定であった こうした中、平成 11 年夏以降の東 改正自動車 NOx・PM 法として実施さ 東京都は「東京都公害防止条例」 新長期規制も、導入時期を 2 年早め (昭和 44 年制定)を、 「都民の健康 るとともに一層の規制値強化が検討さ と安全を確保する環境に関する条例」 戦、平成 12 年 1 月の尼崎地区 (通称:環境確保条例)として平成 と 8 月の名古屋南部地区の自 12 年 12 月に全面的に改正した。 動車公害裁判での国の敗訴など この条例は都民の健康に関して幅広 により、ディーゼル車の排出ガ く定められているが、自動車対策の特 スとりわけ PM に対する批判 徴としては、都の定める PM 排出基 が強まりつつある。 このような動きを受け、環境 省・国土交通省は新車に対する 排出ガス規制の強化と、現在運行中の 図 3 ディーゼル重量貨物車の 排出ガス規制値推移 れている。 規制値の推移を図 3 に示す。 準を満たさないディーゼル車の都内 (島嶼部を除く)運行禁止である。こ れは全国から都内に入ってくる車にも 同様に規制対象となる点が注目される。 施行は平成 13 年 10 月 1 日である。 さらに、改正自動車 NOx・PM 法 と同様に一定の猶予期間が設定され ているが、都条例では全車一律 7 92 90 けがなされてきた。現在、車両総重量 89 規 86 制 値 82 7トン以上のトラックまで装着を義務 86 83 dB (A) 78 年と短い点や、平成 17 年には規制 81 を車両総重量 3.5 トン以上のトラック 74 ’71 強化(排出基準値強化)も規定され 付けられているが、近々その適用範囲 ’76 ’79 ’85 ’01 図 5 加速騒音規制の推移(150kW 超) にまで拡大される見込みである。 また大型車においても地球温暖化防 ている点が改正自動車 NOx・PM 法と 止、CO2 排出量削減の観点から燃費 異なる。 規制の検討も開始されている。乗用車 4.スピードリミッターの装着 等では 10・15 モードの走行試験モー 大型車の高速道路における速度超過 ドが古くから確立されていることもあ 時の悲惨な事故の防止を図るため、車 って、 「2010 年燃費基準」が既に示さ 境確保条例はいずれも使用過程車も含 両の速度を強制的に 90km/h に制限 れている。しかし様々な車型、架装形 めた規制であるが、両者の主な内容・ する速度抑制装置(スピードリミッタ 態を持つ大型車においては、全てを評 相違点を表 4 に示す。 ー)装着が平成 15 年9月から義務付 価できる試験モードがまだなく、現在 なお首都圏では埼玉・千葉・神奈川 の各県で同様の条例が準備されている。 改正自動車 NOx・PM 法と東京都環 検討が進められている状況である。 表 4 改正自動車 NOx・PM 法と東京都環境確保条例 規制物質 規制の内容 対象車 対象地域 対象となる車種 猶予期間 (初度登録から) 罰則等 改正自動車NOx・PM法 NOxおよびPM 環境確保条例(都) PM 排出ガス基準に適合しない車の登録 禁止(継続車検不可) 特定地域に使用の本拠地がある自動 車 東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、 兵庫、愛知、三重の一部の対策地域 ディーゼル乗用車およびトラック・ バス(燃料を問わず) 乗用車:9年、小型トラック:8年、 普通トラック:9年、マイクロバス・ 特種車:10年、大型バス:12年 50万円以下の罰金 規制の強化 PM排出基準に適合しないディーゼル 車の都内運行禁止 東京都内を走行する自動車 都内全域(23区・多摩地区) 自動車騒音問題については、自動車 生産財であるトラック、バスにとっ て、 「経済性」 「積載効率」が技術開発 の重要なテーマであることは将来とも 変わらない。しかし今、時代は確実に ナンバーが1-、2-、4-、6-、8-の ディーゼルトラック・バス 一律に7年 知事が指定したPM減少装置(DPF等) を装着すれば規制適合とみなす 運行禁止命令 従わない場合は50万円以下の罰金 平成17年4月1日以降の知事の定める 日以降にPM排出基準を強化の予定 けられることとなった。 3.騒音規制の動向 6.さいごに 対象は車両総重量 8 トン以上また は 「環境」と「安全」を求めている。 大型車の主機関であるディーゼルエ ンジンにとって「経済性」は得意分野 であるが、 「環境」はなかなか難しい が、生き延びていくためには克服しな ければならない。 また大型車はその大きさ故に、一旦 事故に関与した時には相手への加害性 交通量の増加等によって幹線道路の沿 最大積載量 5 トン以上の大型貨物 も大きな問題となる。事故を起こさな 道地域を中心に依然として厳しい状況 自動車(車両前面に 3 連の速度表示 い、万一の場合は被害を最小限に抑え が続いている。 灯を備える車両)であり、新規登録車 る「安全性」は、大型車にこそ必要で に加えて、平成 6 年排出ガス規制適 ある。 これを受け乗用車やバス、小型トラ ックについては平成 10~12 年に順次 合以降の使用過程車にも所要の経過措 規制強化されてきたが、平成 13 年 10 置を設けて適用される。 月より残る車両重量 3.5t 以上の中・ 大型トラックについても 6 年ぶりに 規制が強化されることとなった。 参考までに大型トラックでの加速騒 音規制の推移を、図 5 に示す。 従来は、ややもすると作り手(メー カー)と、使い手(ユーザー)に偏っ た技術開発になっていなかっただろう 5.その他 乗用車がトラックの後部に追突した か?これからは周囲にも気を配った技 術開発を心がけたいものである。 際に、トラックの車体の下にもぐり込 む、いわゆる「もぐり込み事故」への 防止対策として、平成 4 年から大型 トラック後部への突入防止装置(いわ ゆる大型リヤバンパー)の装着義務付 参考文献 (1) 環境省ホームページ http://www.env.go.jp/ (2) 国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/ (2) 東京都環境局ホームページ http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/