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頭足人表現の分析離… - Tokaigakuen University Repository

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頭足人表現の分析離… - Tokaigakuen University Repository
子どもの初期描画発達における運動感覚の関与について
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子どもの初期描画発達における運動感覚の関与について
頭足人表現の分析
AStudy on Kinesthetic Participation in Early Childreゴs Drawings:
Analysis of Head−Feet Representation
水 野 道 子
Michiko MIZUNO
キーワード:描画、美術教育、頭足人、直立二足歩行、運動感覚
Key words:drawing, art education, headぜeet representation, vertical bipedalism,
kinesthesia
要約
目的
本研究は、子どもの初期描函発達においてみられる「頭・足」表現、いわゆる頭足人表現が.
乳幼児の成長の節目である直立二足歩行に関係しているのではないかと仮定し実証することを
目的として行っている。
方法
仮説が正しいとすれば.歩行の困難な肢体不自由児の初期の描函においては頭・足表現は希
薄なのではないかと考え肢体不自由児の人物描函作品の調査を実施した。調査は、愛知県立の
肢体不自由養護学校で行った。過去に筆者が行った同様の調査にも検討を加えた。
結果
今回の調査で.生まれつき下肢の不自由な幼児において人物画表現では、足の描出が無く、
仮説の正しさが示唆される結果を得た。
Abstract
Oblectives
To discover if there is any relationship between the acquisition of the function to
walk and the development of early drawings of children with regards to head and feet
representatlon、
Method
If this hypothesis is correct, in the initial drawings of disabled children who have
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東海学園大学研究紀要 第15号
difficulty walking, I may not find drawings of headぜeet representation。 Therefore I
investigated the drawing of people made by the disabled infant. The investigation was
㈱rried ou.t in the school of the disabled child of Aichi prefecture in Japan. I added a
comparison with similar investigations that I performed in the past and added an
exammatlon。
Result
As a result of having examined the images people made by infants who had difficulty
to walk since birth, we got the conclusive evidence both legs were not drawn.
嘱、はUめに
小中学校における美術(略序工作)教育、幼稚園や保育所における造形表現教育は幼児・児童・
生徒が健全にトータルに成長、発達するための援助・支援をする一手段であり、一側面である。
したがって、指導するうえにおいては子どもの心身の機能の特性の把握や、その発達過程の理解
が基礎となり.出発点となるべきと考えられる。
ところで、一般に私たちが考えがちなのは、芸術活動が非凡な才能をもつある特殊な人が行う
ものとの認識である。しかし、すべての人々は生まれながらに感じたものを表現するという本能
を持っていて、とりわけ幼児期、児童期の子どもは芸術家に例えられるほど表現活動に意欲的で
あり.さらにその能力は心身の成長にともなって発達していくと考えられている。描函は、子ど
もの遊びや生活に深く浸透し、認知発達や人格形成に多大な影響を与えているのである。これま
での描画発達研究を概観すると、従来は、描写成立以後の年長幼児や小学校児童を中心に進めら
れてきた。(Thomas&Silk,1990;Bremner,1996;:Luquet,1927)描画成立以前の3歳ごろま
での初期描画に関してはほとんど研究が進んでいないものの、山形(1999)のシンボル形成と描
函の結びつきを調べた縦断的研究は、示唆に富むものである。水野は本研究のスタートとなる調
査を既に行っており本研究において新しく得られた結果と合わせて分析していくことにした。ま
た:Lowenferd(1947)によって提唱された描爾発達理論は、美術教育分野において広く影響を
与え続けてきた理論であるが、初期描画に関して新たに再検討することも視野に入れて研究を進
めている。
年少幼児までの初期描画発達段階は、シンボルの萌芽が生まれてそれを実際に具現化し始める
興味ある段階であり、初期描画発達の解明によって年少幼児の描画発達の基礎を理解することの
できる機会でもある。子どもの発達初期の描函の成立にどのような要因が関与するのか、子ども
の描爾表現がどのような知覚や感覚に依拠するのかを調べていくことはきわめて重要な問題であ
り、有意義な研究であると考えられる。
子どもの初期描画発達における運動感覚の関与について
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窯.問題
幼児はなぐり描きから、次に.物の形を描く段階へと移っていく。その最初に描く人物は、ま
るい頭だけの人物だが、次に足を描き加えて、頭・足表現へと移行する。これは、社会や地域に
関係なくどの子どもにも見られる一般的な変化と考えられている。しかしここで疑問になってく
るのは、なぜ足であって、手や胴体ではないのかという点である。
子どもの描函発達の研究におけるこれまでの仮説を見てみると、絵画表現の発達過程は文化や
性劉に関係なく普遍性を伴うと指摘されている。(Amheim l983)また、ピアジェも子どもの
認知の普遍的傾向は文化圏や国に関わらず質的に違いはなく段階移行するとしている。(Piaget
19521969)子どものどの年齢段階までにこうした普遍性が当てはまるか子細の検討は劉にして、
このベースに立脚して幼児の初期描画に焦点を合わせると、描画上に表現として表れる造形処理
の仕方は子どもの認識の発達に因るものであり、幼児の描く絵に一般的に足が出てくるというの
は.そこに幼児の認識の発達上のひとつの法則(特質、特徴)があるからであると考えられる。
人類は四足歩行から、直立、二足歩行の能力を獲得してきた。子どもは一人一人の個人的な成
長や発達の過程の中で直立、二足歩行を個人史的に繰り返し獲得してきていることになる。ハイ
ハイをし、つかまり立ち、伝い歩きをし、よちよち歩きが始まる。立ってはころび、ころんでは
立ち、そしてまた歩く。全力を注ぎこんで歩くという能力を獲得していく。そこでは、立つ.歩
くという足の機能が最も重要となり、こうした経験の中で子どもは足に対して特に大きな意識を
抱くのではないだろうか。手も大切な機能には違いないが、これは乳児が横になっている時期つ
まり意識以前の段階から無意識的に使い続けてきているので、特別な存在、特別な機能として子
どもにそれを意識させる機会がなかったのではないだろうか。一つの時期に、歩行開始という大
事業を成し遂げた足の存在とでは意識のされ方が異なっているのではないだろうか。そこで物の
形を描き始めた幼児が人物を描くとすれば.まるい頭の次に意識が強く働いている足が描かれる
ことになる。
したがって、本研究においては次のような仮説を立て実証を試みることにした。
「幼児が描く初期人物函いわゆる頭足人表現にみられる足の描出は.歩行という実際の体験に
起因するものである。」
仮説が正しいとすれば、歩行の困難な肢体不自由児の初期の描画では、頭・足表現は、希薄な
のではないかと考えられる。肢体不自門児の初期描函作品を調べて足が描出されていなければ、
歩行可能な子どもの頭・足表現は歩行という経験が基になっていることが証明されることになる。
そこで子どもの描函をその場で描いてもらう機会をお願いできる愛知県内の肢体不自出養護学
校を各所当たった結果、好意的に受け入れていただける養護学校があり、この研究をすることが
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東海学園大学研究紀要 第15号
可能となった。全国的にも数少ない幼児在籍の幼稚部付設の養護学校である。
3.文献硯究
藤江(1983)によれば、最:も早い時期に子どもの描いた頭・足表現に着目した人々の中の一人
に、心理学者のJ・サリー(1842∼1923)がいる。その著書8枷dぎe80ゾC配Z疏oo4(1895)に
おいて、「頭と足だけで胴体のない人物像」として指摘し、胴体を省略することを「表現の抽象
的様式」と呼んでいる。
その後.児童画研究で高名なH・エングは、その著書「児童の描画心理学』(1931)の中で
「ドイツの児童心理学者が、この原始的な形の人間爾について述べている。頭ど脚だけでできて
いるので頭足類」と記述している。
二十世紀初頭においては、人物の頭・足表現という年少幼児独特の描函表現の形式があること
に気づき.指摘された時期であった。しかしまだなぜこのような描函表現形式がとられるのかに
ついての検討は、試みられていなかった。
この解明が文献上にあらわれてきたのはG・H・リュケ(1876∼1965)の頃である。しかしリュ
ケは頭・足表現そのものについては、直接触れてはいないが、「たいていの子どもたちの人物爾
を見ると、初期にはずっと衣服がついていない」、「たいていの子どもたちの人物画には長い間、
腕がない」、「大きさという点から言えば見逃すということは考えることもできない胴体の部分を、
はじめのうちはずっと無視し続け.注意されてもいっこうに直そうとしないのは、疑いもなくそ
の有用性がわかっていないからである」と著作「子供の絵』(1927)の中で述べており、胴体が
出てこないのは、その有用性が子どもにわからないからだと解釈している。
R・アルンハイムは、その大著「美術と視覚』(1954)において、この頭・足表現についてか
なりのページ数を割き、推論を試みている。「写実的偏見に基く誤解がおそらく最もはっきりし
ているのはオタマジャクシ的人物の場合である。これはフランス語ではhomnes量ards(頭だ
けの人)、ドイツ語ではkopf掘ssler(頭足類)といわれる。通俗的にはこの非常によく見られ
る絵は、子どもが胴体を描くのを忘れて手を間違って頭や脚にくっつけたのだとする。これが4
歳児の描いた絵である(図は省略)。(中略)しかし発生のプロセスを見るならば、このような説
が正しくないことがわかる。(中略)次の2つの型がある。円が頭と胴体の未分化な表現である。
したがって.子どもがそれに手足をつけるのは全く筋が通っている。(中略)もうひとつの型は
(中略)2本のタテの平行線が胴体と脚の未分化な表現であり、円は頭に限られる」以上がアル
ンハイムの所説である。ここでは.頭・足表現における足は「未分化な総合体」であるとの見解
のもとに、幼児の表現は未分化であるために区別が十分に描き表されていないとしている。
アルンハイムの表現未分化説に近い考え方はJ・Goodnow(1977)、鬼丸(1981).加藤義信
(1991)の研究にも見られる。しかし、大人と比較して幼児の思考や表現が未分化であるとして
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も何故そこに「足」が出てくるのかという疑問に答えるものではなく、さらにまた足と胴体が一
緒になった未分化な表現であるとするならばそのことを、実際に証明していく必要があると考え
られる。
以上見てきたように、「頭・足」表現に関する研究は.初期の段階ではそうした描画表現が幼
児の絵に見られることへの発見と指摘にとどまっていたが、次の段階では、なぜ「頭・足」表現
が出てくるのかへの解釈が試みられるようになってきていることがわかる。こうしたなか、今後
は幼児の「頭・足表現」を推論するうえで、現実の事象に照らし合わせて実証していく時期に入っ
ていると考えられる。
4、方法
対象児 女児N・1(5歳)を対象児とした。愛知県内の肢体不自由養護学校の幼稚部に通園
している。下肢は誕生時から不自由で日常自立歩行は不可能である。座った状態での直立の姿勢
の保持は、しっかりしていている。上肢については特に問題は見られず、クレヨンやペンを用い
て一人で描くことができる。知的な大きな遅れは見られない。対象児の条件としては.1。肢体不
自由の中でも、足に不自由があって歩行が困難である、2.知的には、なぐりがきから物の形を描
く段階へ移行してきている、3。形を描くうえで、養育者が大人の知識や概念を教え込んでいない.
以上三点が挙げられるが、障がいの重度重複傾向で12名の在籍園児の中で条件に合致するのは
1名のみである。
実施期間 平成21年7月9日、9月29日、いずれも午前中に実施した。
手続き 保育室の中、対象児は椅子に座った状態で小テーブルの上で、好きな人(7月は母親
を、次に兄、各先生へとつづく複数の人物、9月は母親と担任)を線描で描く。用紙は幼稚部で
の保育に用いている画用紙(B4)及び調査者が用意したスケッチブック(A4横大)を使用した。
筆記用具は、サインペン及びクレヨンで好きな色を選ばせた。調査者は1名、及び養護学校教員
(7月は2名、9月は3名)も見守る形で参加していただく。
対象児は乞うままにつぎつぎに知っている人を描いたが対象児が描くことに興味を失った場合
には全く強制はしなかった。いつもの慣れた保育室の中で行うことや、無理なく描画に取り掛か
ることができるよう教員と協力して対象児に対し言葉掛けをした。描画はデジタルカメラも用い
て撮った。対象児が描いた一枚目は写真で、二枚目は実物を持ち帰って検討した。
5、鈴析結果
まず、今回の新しい調査の結果を紹介し、次に過去に行った同様の調査(1984)の結果を紹介
する。
第1図は、平成21年7月に描いた描画。クレヨンで大好きなママを描く。一一番に丸を描き、つ
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東海学園大学研究紀要 第15号
ぎに顔の部分を描き、向って右側の腕と指とバッグ、向っ
て左側の腕と指の順番に描く。担任教師によると.朝の
送りの時に、担任と母親は母親が持参していた新しいハ
ンドバッグについて対象児の前で会話をしたことを覚え
ていたのではないかと話した。このように詳しく描く一
方で母親の足は全く描かなかった。次に右上に兄.左に
担任の先生を描くが疲れてきたのか頭のみ。手や足は描
かなかった。
図1
第2図は、第1図と同日引き続いて別紙に描函材を選び
なおし描いたものである。サインペンで右側に主事先生、
左側に調査者を描いた。頭の輪郭を描いたのち顔の部分
を描く。人を描いているうちにだんだん頭の大きさが小
さくなってきたため、顔の細かい作りを描きにくくなっ
てきた様子であるがそれでも顔の部分は必ず描いている。
手や足は一切描かなかった。疲れてきた様子もありここ
図2
で終了した。描画時間は全体で約10分である。
第3図は、2ヶ月後の9月に7月と同じ手続きで人物函
を描いたその一枚目である。前回と同じ大好きなママを
好きな色のサインペンを選ばせて描いた。B4の画用紙
に描く。前回よりも大きく頭を描いている為、顔の部分
をはっきり描くことができた。まるい頭の両側から手を
描き、指を五本描いている。そこで.ペンのふたを閉め
る動作に入り描き終えた。2分で描く。
図3
第4図は、第3図を描いた後、今度は、A4スケッチブッ
クにサインペンの色を変えて描く。担任のO先生を描
いた。この絵も大きく頭の輪郭をとった。そのため、目
や口を大きく描くことができた。手を大きく描く。指も
描くものの、足には全く関心がないのか、描くことはな
かった。2分で描き、やはりペンのふたを自分で閉じた。
(気持ちよく描いていたが、疾が絡みだし、看護士が三
図4
子どもの初期描画発達における運動感覚の関与について
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査当日は不在の日のため別室で待機していた母親が気管吸引を行った。その後は、問題はなかった。)
参考資料 過去の調査と結果
1985年9月に今回と同様の調査を行っている。対象児は.前出(4方法において記述)の三条
件を満たした者とした。愛:知県内の肢体不自由養護学校小学部在籍の下肢の不自由な児童11名で
ある。11名の児童全員に絵を描いてもらったが、実際に条件を満たしているのはその内の4名で
ある。個劉に、児童の好みの函材で好きな絵を描かせた。人物を描いていれば問題はないが、描
いていない児童でなぐり描き段階以外の者には.無理強いにはならないよう配慮しながらも先生
やお母さんを描いてみるよう促した。描かれたものについては、何を描いたかを尋ねた。描爾時
間は、10分間ぐらいで飽きてしまった児童もいれば.40分間以上も描き続けた児童もいてまちま
ちであった。
11書中、6歳のY・1(女)、9歳のY・0(女)、10歳のU・S(男)の3名が頭・足表現に該
当した。Y・1の描爾は第5図、パスで描いたものと、第6図、鉛筆で描いたもので、手は出て
きているが足はない。Y・Oの描画は第7図.鉛筆で描いたもので、手も足も描かれているが.
足の付き方は体から離れている。手はしっかり頭に付いている。U・Sの門門は第8図、鉛筆で
描いたもので、足はない。この3名はともに車椅子を使用しており、移動は手で車を回し、他の
行動についても手を用いることが中心である。
一L
Y・1の作品
σ
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図5
Y・0の作晶
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Y・1の作品
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図7
図8
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東海学園大学研究紀要 第15号
⑳.考察
過去の調査では.小学部に在籍している子どもたちの描函を対象にしていた。年齢からみれば
実際には初期描画の範疇に当てはまりにくい部分も存在する。調査対象児童の年齢が九歳、十歳
でありながら選ばれているのは.肢体不自由児の中には知的発達の遅れのある者もあり、知的発
達が遅い場合その表現活動にも遅れが見られると判断して実施したからである。しかし門門に考
えると知的発達に遅れのある子どもたちに特有の状態があるのではないかの見極め、吟味をする
必要があった。また、下肢に不自由がある子どもたちには上肢の麻痺も重複して顕れる場合があ
り、腕で描く描画ではうまくペンをコントロールし難い可能性がある。結果.下肢に不自出があ
るから必ず足の表現が希薄であると言い切るには難しい側面があったことは、否めない。
一方、新たに行った今回の調査では、対象児の知的発達は、ほぼ通常のレベルであり、描画を
行う上での困難さは特に見られなかった。描爾の産出は三次元対象を二次元表示に変換して表す
操作である。知的発達に遅れがある場合.表現がしばしば固定化することがある。今回第一回目
の調査(7月)では手だけでなく手にハンドバッグを持たせるなどして身近な日常に体験したこ
とを併せて描いており、表現に柔軟性があり固定化は見られない。本児には生活への興味や関心
の広がりが見られた。それにも拘らず、足を全く描かなかったことについては考慮する必要があ
る。また今まで担任の先生方も気づくことがなかった事実であるらしく、一様に驚かれていた。
対象幼児は他の障がいも併せ持つ為、健康面、治療面に比重を置いた生活であったと考えられる。
これまで絵を描く頻度は家庭においても、幼稚部においても少なかったとのことで、ようやく絵
を描けるような生活ができるようになってきた模様である。
7.まとめ
本研究では子どもの描画に働くメカニズムの中で、特に初期描画のなぐり描きに続く段階、物
の形を描きだす上で意識の中で運動感覚、歩行が大きく関わっている結果を得た。幼児の「頭・
足」表現は、仮説通り足を主体とした直立、歩行という発達上重要な体験に基づいて描出された
ものであるということが強く示唆された。事例数、データとしては少ないが、さらに事例を積み
上げ検討していくものである。ところで今回の研究課題に該当するような対象幼児を広く探して
いくには様々な点で困難さを伴う。しかしながら、より多くの幼児に接し、事例をつんでいくこ
とも重要であると考えている。尚、平成21年度より始めた本研究については.対象幼児が加齢や
学習とともに、描函の変化や認識の変化がみられるかどうか、継続分析をしていこうと考えてい
る。縦断的研究として今後も進めていくことを企図している。
子どもの初期描画発達における運動感覚の関与について
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