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国際陸上競技連盟競技会規則
国際陸上競技連盟競技会規則 (2007年11月1日改正) 定 義 エリア 6つの地域陸連のいずれか1つに加盟するすべての国と地域で構成される 地理的なエリア。 地域陸連 憲章において、加盟団体は世界を6つの地域に分けたその1つに属し、そ の地域における陸上競技の振興育成に責任を有する、IAAF の地域陸連をい う。 陸上競技 トラックとフィールド競技、道路競走、競歩、クロスカントリー競走およ び山岳競走をいう。 CAS ローザンヌにあるスポーツ仲裁裁判所をいう。 市 民 ある国の法律上の市民権または地域の場合、地域の親の国の法律上の市民 権および適用される法律に基づくその地域の適正な法律上の地位を持った人 をいう。 市民権 ある国の法律上の市民権または地域の場合、地域の親の国の法律上の市民 権および適用される法律に基づくその地域の適正な法律上の地位をいう。 クラブ IAAF の加盟団体の規則に基づいて、当該加盟団体に登録している競技者 のクラブあるいは団体をいう。 コミッション 憲章の規定に基づき IAAF カウンシルから選任された IAAF のコミッショ ンをいう。 憲 章 IAAF の憲章をいう。 - 255 - カウンシル IAAF のカウンシルをいう。 国 世界で自ら統治している地理的地域を保有し、それが国際法および国際的 統治団体に独立した国家として承認されているものをいう。 IAAF 国際陸上競技連盟をいう。 (The International Association of Athletics Federations) 国際招待大会 大会組織委員会の招待によって2カ国以上の加盟団体に所属する競技者が 参加する陸上競技大会 国際競技会 規則第1条1項に掲げたすべての国際競技会。 IOC 国際オリンピック委員会をいう。 加盟団体 IAAF に加盟している陸上競技の国内統轄団体をいう。 会員資格 IAAF の会員である資格をいう。 陸 連 本規則に基づき競技者、競技支援要員またはその他の人が所属している IAAF の加盟団体をいう。 手続きガイドライン カウンシルによって承認されたドーピングコントロールのための手続きガ イドラインをいう。 規 定 カウンシルで随時可決される IAAF の規定をいう。 規 則 IAAF の競技会規則ハンドブックに規定されている競技会規則をいう。 地 域 地理的な地域または地方であり、国家ではないが、自己統治を確実に行な い、少なくともスポーツの統轄を自主的に行なっており、それが IAAF に承 認されているものをいう。 - 256 - ワールドアスレチックスシリーズ 4年を単位とする IAAF の公式競技会プログラムにおける主要な国際競 技会をいう。 ワールドアスレチックツアー 競技者がカウンシルによって承認された規定に従い、参加し、ポイントを 獲得する年間シリーズの国際招待競技大会。このシリーズは IAAF が主催す る。 世界混成競技チャレンジ 競技者がカウンシルによって承認された規定に従い、参加し、ポイントを 獲得する年間シリーズの混成競技大会。 このシリーズは IAAF が主催する。 世界競歩チャレンジ 競技者がカウンシルによって承認された規定に従い、参加し、ポイントを 獲得する年間シリーズの競歩成競技大会。 このシリーズは IAAF が主催す る。 注1:上記の定義はすべての規則に適用される。アンチ・ドーピング規則 にのみ適用される第3章にさらなる定義がある。 注2:男性について触れた場合は、すべて女性も含まれており、また、単 数について触れた場合は、すべて複数も含まれているものとする。 注3:IAAF 競技会規則2006-2007年版以降の改正部分(文章上の修正を除 く)は余白に二重縦線をつけてある。 - 257 - 第1章 第1条 国 際 競 技 会 規則が適用される国際競技会 1.競技規則第1条2項に規定するように、本規則および規定が適用される 国際競技会は以下に示すとおりである。 (a)(ⅰ)ワールド・アスレティック・シリーズ(WAS)に含まれる競技会 (ⅱ)オリンピック大会の陸上競技プログラム (b)IAAF が独占的な管理を行っていない、地域、区域またはグループの ゲームの陸上競技プログラム (c)単一の地域から参加するように制限されていない、区域またはグルー プの陸上競技選手権大会 (d)複数の加盟陸連、または地域、またはその組み合わせを代表する異な った複数のエリアから来たチームの対抗戦。 (e) (ⅰ)ワールド・アスレティック・ツアーに含まれる国際招待大会 (ⅱ)競歩チャレンジ、世界混成競技チャレンジ、およびカウンシルの 承認を受けた同様なプログラムを含む競技会 (f)1つの地域陸連が主催した、地域選手権、およびその他の地域内競技 会。 (g)単一の地域からの参加だけに制限されている陸上競技の区域またはグ ループの選手権大会。 (h)2以上の加盟団体、または同じ地域の加盟団体の組合わせを代表する チームの対抗戦。 (i) 出場料、賞金および/または現金でない賞品の価値が合計で15,000米 ドルを超える、またどの種目であっても5,000米ドルを超えるような上 記の規則第1条1項(e)に規定されている以外の国際招待競技大会。 (j)上記の規則第1条1項(e)に規定されているのと同様な地域のプログ ラム。 2. 本規則を以下のように適用する。 (a)参加資格の規則(第2章)、紛争を管理する規則(第4章)および競技 規則(第5章)は上記の規則第1条1項に掲げたすべての国際競技会 に適用する。IAAF によって認められた他の国際団体は自らの権限に - 258 - おいてより厳格な参加資格制度を規定しても良い。 (b)アンチ・ドーピングの規則(第3章)は上記の規則は、IOC または IAAF が認めたもう一つの国際的な組織がそれぞれの規則に基づきドーピン グを実施するオリンピック大会のような場合を除き、第1条1項に掲 げたすべての国際競技会に適用し、それらの規則が可能な限り適用さ れる。 (c)広告の規則(第8章)は上記の規則第1条1項(a) (ⅰ) 、(c)、 (d) および(e)に掲げたすべての国際競技会に適用する。 地域の陸連は、 規則第1条1項(f)、 (g)、 (h)、 (i)および(j)に掲げた国際競技会 に適用する固有の広告規定を公布できる。 (d)第1章の残りの規則(規則第2~7条)は、その適用を個別に制限し ている場合を除いて、すべての国際競技会に適用される。 第2条 国際競技会の主催認可 1.IAAF は、地域陸連と協力して、全世界の競技システムを指導・管理す る責任を有する。IAAF の競技カレンダーとそれぞれの地域の陸連の競技 カレンダーがぶつからないように、あるいはそのぶつかりが最小になるよ うに調整する。すべての国際競技会は、この第2条に従って IAAF または 1つのエリアの陸連により認可されなければならない。1つの地域の陸連 がこれらの規則に準拠して国際競技会を適切に管理できない場合、IAAF は必要に応じて介入し必要な対策を講じる権利を与えられるものとする。 2.IAAF だけがオリンピック大会で陸上競技大会、およびワールド・アス レティック・シリーズに含まれる競技会を組織する権利を有するものとす る。 3. IAAF は奇数年に世界選手権を組織する。 4. 地域陸連は地域の選手権大会を組織する権利を有し、必要と見なすこと ができれば、そのようなその他の地域間のイベントを組織できる。 IAAF の認可を要する大会 5.(a)規則第1条1項(b) 、(c) 、(d)および(e)に掲げたすべての国際競技 会は IAAF の許可証が必要である。 (b)許可証の申請は、当該の国際競技会が開催される国またはテリトリー (領土)の陸連が、大会12カ月より前、または IAAF が定めることがで きるそのようなその他の締め切り日より前に IAAF に対し行う。 - 259 - 地域陸連の認可を要する大会 6.(a)規則第1条1項(g) 、(h) 、(i)および(j)に掲げられたすべての国 際競技会に対して、地域陸連の認可証が必要である。 国際招待競技会 または、もし出場料、賞金および/または現金でない賞品の価値が合計 で200,000米ドルを超える、またどの種目であっても25,000米ドルを超 えるような競技会の認可証は、開催日に関して IAAF と当該地域陸連 が協議する前に認可証を発行してはならない。 (b)認可証の申請は、当該の国際競技会が開催される国またはテリトリー (領土)の陸連が、大会12カ月より前、または当該の地域陸連が定め ることができるそのようなその他の締め切り日より前に適切な地域の 陸連に対して行う。 加盟団体が認可した競技会 7.加盟団体は自国の選手権を認可でき、外国人の競技者はそれらの競技会 に規則第4条2項および第4条3項を条件として参加できる。もし外国人 の競技者が参加するなら、そのような自国の選手権におけるすべての競技 者の出場料、賞金および/または現金でない賞品の価値が合計で15,000米ド ルを超え、またはどの種目であっても5,000米ドルを超えてはならない。い かなる競技者も、もし IAAF、開催地の加盟団体、または当該競技者が所 属している陸連の規則において、陸上競技に参加する資格がなければ、い かなるそのような競技会にも参加できない。 第3条 国際競技会を実施する為の統括規則 1. カウンシルは本規則に準拠して国際競技会を実施し、競技者、競技者代 理人、大会組織者および複数の加盟陸連の関係を律する規定を定めること ができる。 カウンシルはこれらの規定をうまく適合するように変更また は修正できる。 2. IAAF および地域陸連は、適用できる規則や規定に確実に準拠している のを確認するために、IAAF および地域陸連の許可証をそれぞれ必要とす る国際競技会に参加する1名以上の代表者を指定できる。 IAAF または地域陸連の要請により、そのような代表者(単数または複数 の)は、問題の国際競技会が終わってから30日以内に準拠性に関する報告 書を提出する。 - 260 - 第4条 国際競技会で競技するための要件 1.いずれの競技者も下記に該当しなければ、国際競技会に参加することは できない。 (a)加盟団体に所属しているクラブのメンバー。あるいは、 (b)自分自身が加盟団体に所属している。 あるいは、 (c)そうでなければ加盟団体の規則に従うことに同意している。かつ、 (d)IAAF がドーピングコントロールの責任を負う国際競技会(以下の規 則第5条7項参照)については、規則、規定および手続きガイドライ ン(随時修正)によって拘束されること、および IAAF または加盟団 体と起こりうる紛争は、これらの規則に規定されていない裁判所や機 関に持ち込むことなく、これらの規則に従い裁定に付託することに合 意するという IAAF の書式で契約書に署名している。 2. 加盟団体は、いかなる競技者またはその加盟団体に所属しているクラブ が当該加盟団体の書面による承諾なしに、外国の国またはテリトリー(領 土)における陸上競技会に参加できないことを求めることができる。 その場合、競技会を開催する加盟団体は、いかなる外国の競技者またはク ラブも、その競技者またはクラブに参加資格があり、その国または関係す るテリトリー(領土)で競技することが許されていることを証明する許可証 がなければ、いかなる競技会にも申し込みをすることを許可してはならな い。 加盟団体はそのような認可証の要件を IAAF に通知する。本規則に準拠す ることを促進させるために、IAAF はそのような要件を有する加盟団体の リストを IAAF のウェブサイトに掲載を続ける。 3. もしその加盟団体の規則がそのような認可を求めるならば、いかなる競 技者も本来所属している陸連の事前承認なしに、外国への登録をすること はできない。その時でも、その競技者が居住している国またはテリトリー (領土)の陸連は、その競技者の出生地の陸連の事前承認がなければ、も う1つの国またはテリトリー(領土)、における競技会にどんな競技者の申 し込みもできない。 本規則においてすべての場合、その競技者が居住している国またはテリト リー(領土)の陸連は、その競技者の本来の陸連に文書で要請しなければ ならず、本来の陸連はその要請に対する返事を書面で30日以内に出さなけ - 261 - ればならない。これらのやりとりは両方とも、受領確認ができる方法で行 わなければならない。受信を証明する機能を有する電子メールはこの目的 の条件を満たしている。その競技者の本来の陸連からの回答が30日以内に 届かなければ、承認されたものとみなす。本規則に従い承認を求めた要請 に対し、理由を付した否定的な回答があった場合、競技者または競技者が 居住している国またはテリトリー(領土)の陸連は、その決定に対して IAAF に提訴することができる。IAAF は本規則に基づく提訴手続のガイ ドラインを発行しなければならない、また、このガイドラインは IAAF の ウェブサイトに掲載しなければならない。 本規則に準拠することを促進するために、IAAF はそのような要件を有す る加盟団体のリストを IAAF のウェブサイトに掲載を続ける。 注:規則第4条3項は、その年の12月31日現在で18歳以上の競技者に対し て適用する。この条項は、ある国またはテリトリー(領土)の市民でな い競技者、または政治難民には適用しない。 第5条 市民権と市民権の変更 1.規則第1条1項(a)、 (b)および(f)に定められた国際競技会において は、各加盟団体はその加盟団体が代表する国または地域の市民によっての み代表されなければならない。 2.規則第1条1項(a)、 (b)または(f)に定められた国際競技会において、 一度ある加盟団体を代表した競技者は、下記の場合を除き、規則第1条1 項(a) 、 (b)または(f)の国際競技会において他の加盟団体を代表して競 技することはできない。 (a)1国または地域が他に併合されたとき。 (b)条約の批准によって、または、国際レベルでの承認によって新しい国 ができたとき。 (c)新しい市民権を獲得したとき。この場合、競技者は、規則第1条1項 (a) 、(b)、(c)(i)または(d)の国際競技会において、競技者の申請 に基づく新しい市民権を取得してから3年間は、新しい加盟団体を代 表して競技することはできない。しかし、3年という期間については、 下記のとおり、短縮または取り消すことができる。ただし、競技者が 出場しようとする国際競技会の少なくとも30日前までにカウンシルに - 262 - よって審議されなくてはならない。 (ⅰ) 当該期間は両加盟団体が合意した場合12カ月に短縮することが できる。短縮は、両者により署名された加盟団体の合意書の書面に よる通知を IAAF 事務局が受け取ってはじめて有効となる。 (ⅱ)当該期間はカウンシルによる承認があれば、真に例外的なケース においては短縮または取り消すことができる。 (d)二重の市民権: この場合、2つ(またはそれ以上)の国または地域 の市民権を有する競技者は、いずれかの加盟団体を選択して代表する ことができる。しかしながら、規則第1条1項(a)、(b)または(f)の国 際競技会において、その加盟団体を一度代表した場合、最初の加盟団 体を最後に代表した日から3年間は、規則第1条1項(a)、 (b)または (f)の国際競技会において、その市民権を有する他の加盟団体を代表 することはできない。しかし、この3年という期間は、下記のとおり、 短縮または取り消すことができる。 (ⅰ) 当該期間は両加盟団体が合意した場合12カ月に短縮することが できる。短縮は、両者により署名された加盟団体の合意書の書面に よる通知を IAAF 事務局が受け取ってはじめて有効となる。 (ⅱ)当該期間はカウンシルによる承認があれば、真に例外的なケース においては短縮または取り消すことができる。ただし、競技者が出 場しようとする国際競技会の少なくとも30日前までにカウンシル によって審議されなくてはならない。 3.(a)IAAF から資格停止されている国または地域の市民が、資格停止され ていない国または地域の市民になろうとする場合、同競技者は下記条件に より、資格停止されていない加盟団体が主催する国内競技会で競技するこ とができる。即ち、 * 資格停止されていない加盟団体の国または地域の市民権申請過程に おいて、前国籍を放棄し、当該加盟団体に対しその事実関係を公式 に陳述すること。 * 同競技者は少なくとも新しい国または地域に1年継続して居住する こと。 * 同競技者が参加する国内競技会に、その他の加盟団体から競技者が 参加していないこと。 (b)上記の規則第5条3項(a)の要件に合致する競技者は、新しい国または - 263 - 地域に2年間継続して居住した後にのみ、規則第1条1項(f) 、(g)、 (h)に該当する国際競技会で競技することができる。 (c)上記の規則第5条3項(a)の要件に合致する競技者は、新しい国または 地域に3年間継続して居住し、新しい市民権を取得した後にのみ、規 則第1条1項(a)~(e)に該当する国際競技会で、新たに所属した陸連 を代表することができる。 (d)継続した居住期間とは、1年を365日として計算するものとし、新しい 市民権を取得するためにその国または地域に入国した翌日から開始す るものとする。 (e)継続した365日の期間中において、競技者は資格停止中の外国の国また は地域に、合計90日以上滞在することはできない。 (f)本規則に基づいて資格を得ようとする競技者は、資格停止中の加盟団 体の代表と一緒に、エキシビジョン競技、トレーニング、コーチング、 競技運営、講演、インタビューおよび広報インタビュー等を含むが、 それに限定しない陸上競技活動を行ってはならない。 4.加盟団体およびその役員、コーチと競技者は、上記の規則第5条3項 (f)に定めるように、またはそうでなくとも、資格停止中の加盟団体の代 表、その役員、コーチ、審判員、競技者等と関連したいかなる活動もして はならない。この規則に違反した場合、憲章に定めた資格停止および制裁 措置に関する条項が適用される。 第6条 競技者への支払い 1.陸上競技は、広く門戸を開放されたスポーツであり、本規則および規定 の適用を受けるものの、競技者は、陸上競技会に出場、参加、競技するこ とに対し、または陸上競技への参加に関連したその他の商業活動に従事す ることに対しても、現金または適切であればどんな方法であっても、支払 いを受けることができる。 第7条 競技者代理人 1.競技者は加盟団体との協力の下に陸上競技の出場や諸関係、スポンサー 等に関わる計画、調整および交渉をするうえで援助を受けるために公認の 競技者代理人のサービスを利用するができる。 2.加盟団体は、競技者代理人を公認する責任を負う。各加盟団体は、自国 - 264 - の競技者を代理して活動する競技者代理人を統轄する権限と加盟団体の国 または地域内で活動する競技者代理人を統轄する権限を保有しなければな らない。 3.カウンシルは、この業務を加盟団体が行うにあたり援助するため、競技 者代理人および、彼らと競技者、加盟団体、大会主催者との関係に関する 規定を発行する。さらにカウンシルは、各加盟団体の競技者代理人に関す る規定に含めなければならない事項のリスト、IAAF のこの分野での最善 の実施方法案、さらに競技者と競技者代理人との間の契約様式案を示す。 4.各加盟団体はその憲章の中に、陸連と競技者代理人に関する IAAF の規 定に定められた基本条項を含んだ契約書が競技者と競技者代理人との間で 書面で締結されていなければ、加盟団体は競技者が競技者代理人を使うこ とができないことを明記する規定を盛り込むことが会員資格としての条件 である。プライバシーとデータは加盟団体の国内法によって保護される。 5.競技者代理人は、その活動を行うにあたり十分な教育と知識を持ってい ることを示さなくてはならない。 6.競技者代理人を承認した各加盟団体は、毎年、その一覧を IAAF に提出 する。IAAF は公認競技者代理人リストを毎年発行する。 7.公認されていない競技者代理人を利用した競技者は、本規則および規定 により処罰の対象となる。 第8条 国際競技会における広告および展示物 1.規則第1条1項(a)から(h)に従って開催されるすべての国際競技会で認 められる広告および宣伝の性質を持つ展示は、本規則の条件および別途定 められる規則に従わなければならない。 2.カウンシルは、広告の形態および本規則に基づき開催される国際競技会 において宣伝用またはその他の素材が展示される方法に関する詳細な指針 となる規定を随時議決することができる。これらの規定は、少なくとも以 下の原則に従わなければならない 。 (a)本規則に基づき開催される競技会において許される広告は、商業広告 またはチャリティー広告に限る。政治的主張の推進や圧力団体の利益を 目的とする広告は、国内的、国際的の如何を問わず、これを禁止する。 (b)大会の趣旨に照らして、品位に欠ける、混乱のもとになる、不快、侮 辱的、あるいは不適当と IAAF が判断する広告は掲出してはならない。 - 265 - テレビカメラが競技会を映すのに部分的にでも妨げになる広告は展示し てはならない。すべての広告は、適用される安全上の法令・規則を守ら なければならない。 (c)たばこ製品の広告は禁止する。アルコール製品の報告も、カウンシル が特別に承認した場合以外禁止する。 3.カウンシルはいつでも本規則による規定を修正することができる。 第9条 賭 博 行 為 IAAF に関わりのある者は、直接か、間接かの別なく、IAAF、地域または 加盟団体の規則の下で実施される競技会と関係あるいかなる賭博、ギャンブ ル、または類似した行為や業務にも参加してはならないし、参加しようとす ることも許されない。 - 266 - 第2章 参 第20条 加 資 格 有資格競技者の定義 1.競技者は、本規則に従うことに合意し、資格剥奪を宣言されていなけれ ば、競技する資格がある。 第21条 競技会は資格ある競技者のみに限定 1.本規則によって行われる競技会は、加盟団体の管轄下にあって、本規則 のもとに競技する資格のある競技者だけに限定される。 2.本規則によるいかなる競技会においても、競技する競技者の参加資格は 競技者が所属している加盟団体により保証されなければならない。 3.加盟団体における参加資格の規則は、IAAF の参加資格規則に厳格に合 致していなければならない、またどの加盟団体も、自分の憲章または規定 の中に IAAF の規則または規定に直接抵触する参加資格規則または規定 を採択したり、公布したり、あるいは保持してはならない。もし、IAAF の 参加資格規則と加盟団体の参加資格規則の間に不一致がある場合、IAAF の参加資格規則を適用しなければならない。 第22条 国際および国内競技会における資格剥奪 1.IAAF 規則もしくは加盟団体の国内規則によって行われる競技会に下記 の者は参加資格がないとみなされる。 なんぴとでも: (a)IAAF より資格停止中の陸連に所属している者。その国または地域の 市民のために、現在資格停止中の加盟団体によって主催される国内競 技会については適用しない。 (b)競技者の誰かが、本規則に基づく競技への出場が停止されているまた は競技を行う資格が剥奪されていると知りながら、あるいは、資格停 止中の加盟団体の国または地域で開催される競技会または種目に参加 した者。 このことはマスターズ年齢グループ(35歳以上)に限定した陸上競技 会には適用しない。 - 267 - (c)競技会の行われる国または地域の加盟団体の認可、承認あるいは証明 のない陸上競技会に参加する者。 (d)自分の陸連の管轄下で行われる競技会への出場を停止されたり、資格 が剥奪されている者。ただし、その資格剥奪が本規則と合致している 場合に限る。 (e)アンチ・ドーピング規則(以下の第3章を参照)に違反する者。 (f)スポーツを侮辱、不適切、もしくは不評判の種となると考えられる行 為や声明を口頭もしくは書面で行ったり、規則に違反した責任を負わ なければならない者。 (g)規則第8条(国際競技会における広告および展示物)または別途定め る関連規定に違反する者。 (h)規則第7条により、当該加盟団体によって公認された以外の競技者代 理人のサービスを受ける者。 (i)本規則によるいかなる規定でも、それに違反したことにより、資格剥 奪を宣言された者。 2.本規則に違反していると申し立てられた場合、競技者の資格剥奪を決定 する際に取られる懲罰手続き(規則第22条1項(e)の違反の場合以外)は、 下記の規則第60条4項に定められている。 3.もし競技者が資格停止もしくは資格剥奪されている期間中に競技した場 合、関連する規則に明記されていない限り、その競技者の資格剥奪期間は、 それまで経過した資格停止または資格剥奪期間は無視され、最後に競技を したときから再開始する。 - 268 - 第3章 ドーピング防止 定 義 ADAMS ドーピング防止管理運営システム(Anti-Doping Administration and Management System)の略。データ入力、保存、共有、報告のためのウェ ブ上のデータベース管理ツールで、情報保護に関する法律とともに、関係者 および WADA のドーピング防止活動を支援することを目的としたもの。 違反が疑われる分析報告 分析機関またはその他の認定機関からの報告のうち、分析機関国際基準お よび関連する技術文書に定められている通り、禁止物質またはその代謝物ま たはマーカー(内因性物質の量的増大を含む)の存在が検体において確認さ れたもの、または禁止方法の使用が検体において確認されたものをいう。 ドーピング防止機関 ドーピング・コントロール・プロセスの策定、実施または執行のための規 則を採択する責任を担う署名当事者をいう。国際オリンピック委員会、主催 する競技会において検査を実施する主要競技大会組織、WADA、国内ドー ピング防止機関などが含まれる。 ドーピング防止規則 IAAF 総会または IAAF カウンシルにより随時採択される IAAF ドーピン グ防止規則をいう。 ドーピング防止規約 IAAF カウンシルにより随時採択されるドーピング防止規約をいう。 競技者 IAAF、加盟団体および地域陸連と合意を締結している者、その会員資格 を有する者、かかる団体に所属している者、その許可または認定を受けてい る者、あるいはその活動ないし競技会へ参加する者をいう。ならびに署名当 事者、または原規程を受諾している他のスポーツ団体の管轄に服する陸上競 技大会参加者をいう。 競技者支援要員 コーチ、トレーナー、マネージャー、公認の競技者代理人、エージェント、 チーム・スタッフ、役員、医師または医療従事者、親、その他の者で、競技 - 269 - 会に参加する競技者または競技会に向けて準備をする競技者とともに行動し たり、その治療や支援に携わったりする者をいう。 企て 結果としてドーピング防止規則への違反に相当する行為に向けて、故意に 実質的な行動を起こすことをいう。ただし、企てに関与しない第三者によっ てその事実が発見される前に、当人が自らその企てを中止した場合、企てが あったという事実だけではドーピング防止規則に対する違反行為は成立しな い。 非定型的報告 分析機関またはその他の認定機関が報告した結果のうち、違反が疑われる 分析報告に相当するか否かの判断を下すために、分析機関国際基準または関 連する技術文書の下で、追加調査が求められるものをいう。 原規程 世界ドーピング防止規程のことをいう。 競技会 1日もしくは数日にわたって行われる競技または競技のまとまりをいう。 (例:世界選手権大会、ワールドアスレティックファイナル、個別のゴール デンリーグ大会) ドーピング防止規則違反の結果 競技者またはその他の者がドーピング防止規則に違反した場合は、以下の 措置のうち少なくとも1つが適用される。(a) 失効:該当する種目または競 技会における競技者の成績を取り消すとともに、獲得したタイトル、賞、メ ダル、点数、賞金、出場料をはく奪するなどの措置を講じること。(b) 資格 停止:本規則第40条に従い、一定期間にわたって競技者またはその他の者に 対し、競技会またはその他の活動への参加を禁止すること、または資金援助 を停止すること。 失効 前掲のドーピング防止規則違反の結果を参照。 ドーピング・コントロール 検査配分計画の立案から不服申し立ての最終解決に至るすべての段階およ び作業をいい、居場所情報の提出、検体の採取および処理、分析機関による 分析、TUE、結果管理および聴聞会など、その間のすべての段階および作 業が含まれる。 - 270 - 種目 単一の競走または競技会における競技種目を言う(例:100m 競走、やり 投げ)。 居場所情報未提出 ドーピング防止規約もしくは、競技者を管轄する加盟団体またはドーピン グ防止機関の規則または規約(国際検査基準に準じたもの)に反し、競技者 が正確かつ完全な居場所情報を提出しないことをいう。 競技会時(In-Competition) 競技者が参加を予定している種目の開始12時間前から、当該種目が終了し、 かかる種目に関連して検体が採取されるまでの間をいう。 資格停止 前掲のドーピング防止規則違反の結果を参照。 国際競技会 本ドーピング防止規則の目的においては、以下の本規則第35条7項に定め る国際競技会をいう。かかる競技会は、IAAF のウェブサイト上で毎年発表 される。 国際基準 原規程を支援する目的で WADA により採択された基準をいう。(たとえ 他の選択的基準や慣行や手順が遵守されていなくても)国際基準の遵守とは、 国際基準に定められた手順が適切に実施されることである。国際基準には、 国際基準に従って発行された技術文書が含まれる。 主要競技大会組織 国内オリンピック委員会の大陸地域連合、およびその他の国際的総合スポ ーツ大会主催団体で、大陸、地域またはその他の国際的な競技会を統括する 役割を持つ組織をいう。 未成年者 居住国の適用法に定められた成人年齢に達していない自然人をいう。 検査未了 ドーピング防止規約もしくは、競技者を管轄する加盟団体またはドーピン グ防止機関の規則または規約(国際検査基準に準じたもの)に反し、当該日 について、本人の居場所情報に明示された60分の時間枠の中で検査の場所お よび時間を検査可能と記入したにもかかわらず、当該競技者にかかる検査が 実施されないことをいう。 - 271 - 国内ドーピング防止機関 全国的規模でドーピング防止規則を採択および実施し、検体の採取を指示 し、検査結果を管理し、聴聞会を開く第一義的な権限および責任を有するも のとして、国または地域から指定された機関をいう。これには、複数の国ま たは地域により、かかる国または地域の地域ドーピング防止機関として指定 を受けた機関が含まれる。管轄権を有する公的機関がかかる指定を行わなか った場合、当該国または当該地域の国内オリンピック委員会またはその指定 を受けた者が、国内ドーピング防止機関の役割を果たす。 国内オリンピック委員会 国際オリンピック委員会の認定を受けた組織をいう。ドーピング防止にか かわる国内オリンピック委員会の責任業務を国内スポーツ連合が引き受けて いる国または地域の場合、国内オリンピック委員会という用語は国内スポー ツ連合も含むものとして理解する。 事前通告なし 競技者に対する事前の注意なしに実施されるドーピング・コントロールで、 通知時から検体の提出時まで、一貫して競技者に監視人がつけられる。 過誤または過失がないこと 本規則第38条に該当する場合、禁止物質もしくは禁止方法を使用したこと、 または投与されたことを自分自身が知らず疑いもしなかったこと、かつ細心 の注意をもってしても、かかる使用または投与について合理的に知りえず疑 いえなかったことを競技者が立証することをいう。 重大な過誤または過失がないこと 本規則第38条に該当する場合、事情を総合的に勘案し、過誤または過失が ないことに定める基準を考慮したときに、ドーピング防止規則違反との関係 において、競技者本人の過誤または過失の度合いが重大なものではないこと を競技者が立証することをいう。 競技会外 競技会時以外の時間をいう。 参加者 競技者または競技者支援要員をいう。 人/者 (当人/本人) 自然人(競技者または競技者支援要員を含む)または組織、その他の機関 をいう。 - 272 - 保有 禁止物質または禁止方法が実際に物理的に保有されている状態、または保 有されていると推定される状態をいう(保有しているとみなされるのは、当 人が禁止物質/方法、または禁止物質/方法が存在する場所を単独で管理下 に置いている場合に限るものとする)。ただし、当人が禁止物質/方法、ま たは禁止物質/方法が存在する場所を単独で管理下に置いていない場合、か かる禁止物質/方法を保有していたとの推定が成立するのは、当人が禁止物 質/方法の存在について知悉しており、かつそれを管理する意図を持ってい た場合に限るものとする。ただし、ドーピング防止規則に違反した旨の通知 を受け取る前に、当人が、禁止物質/方法を保有する意図がなかったことを 立証するために具体的な行動を起こし、かつ IAAF、加盟団体、ドーピング 防止機関にその旨を明言して保有を放棄した場合、かかる禁止物質/方法を 保有していたという事実だけでは、ドーピング防止規則への違反は成立しな い。本定義に反する規定があったとしてもそれにはかかわらず、何者かが禁 止物質または禁止方法を(電子的手段であれその他の方法であれ)購入した 場合は、購入した当人がかかる物質/方法を保有しているものとみなされる。 禁止表 禁止物質および禁止方法が記載された WADA 発行のリストをいう。 禁止方法 禁止表に記載されている方法をいう。 禁止物質 禁止表に記載されている物質をいう。 暫定的資格停止 本規則に従って開催される聴聞会において最終的な判断が下されるまで、 競技者またはその他の者の競技会への参加が暫定的に禁止されることをいう。 検査対象者登録リスト IAAF の検査プログラムの一環として、競技会検査および競技会外検査の 両方を受けなくてはならないとして IAAF が指定した競技者のリストをいう。 IAAF は、検査対象者登録リストに記載された競技者のリストを公表しなく てはならない。 検体/標本 ドーピング・コントロールのために採取された生体物質をいう。 - 273 - 署名当事者 原規程に署名し、これに準拠することに合意した団体をいう。国際オリン ピック委員会、国際競技連盟、国内オリンピック委員会、主要競技大会主催 組織、国内ドーピング防止機関、WADA が含まれる。 実質的な支援 本規則第40条5項(c)の目的において、実質的な支援を提供する者は、(i) 自ら保有するドーピング防止規則違反に関する情報すべてを、署名入りの文 書により全面的に開示しなくてはならない。また(ii) 追訴側または聴聞パ ネルから要請を受けた場合は聴聞会で証言するなど、当該情報に関する調査 および裁定に全面的に協力しなくてはならない。提供する情報は信頼に足り、 かつ手続きが開始された事件の重要部分を構成するものでなくてはならない。 また手続きが開始されていない場合は、その開始に十分な根拠を与えるもの でなくてはならない。 不当な改変 不適切な目的または方法で変更を行うこと、不適切な影響を生じさせるこ と、不適切な形で介入すること、結果を改ざんしたり、通常の手続きの進行 を妨げたりするために、妨害行為や誘導、あるいは不正行為を行うこと、ま たは虚偽の情報を提供することをいう。 特定対象検査 検査対象となる特定競技者または競技者グループを一定期間に選択的に抽 出して行う検査をいう。 検査 ドーピング・コントロール・作業の中で、検査配分計画の立案、検体の採 取、検体の処理および分析機関への輸送にかかわる部分をいう。 TUE Therapeutic Use Exemption(治療目的使用にかかわる除外措置)の略。 不正取引 競技者、競技者支援要員またはその他の者が、直接に、または電子的手段 あるいはその他の方法により、禁止物質または禁止方法を第三者に販売、供 与、輸送、送付、配送、流通することをいう。ただし、善意の医療関係者が 禁止物質または禁止方法を純粋かつ合法的な治療目的のために、またはその 他の正当な事由のために使用する行為はこの定義には該当しない。また競技 会外検査において禁止されていない禁止物質が関与する行為についてもこの 定義には当てはまらない。ただし総合的に判断して、禁止物質が純粋かつ合 - 274 - 法的な治療目的のために使用されていないことが明らかな場合はこの限りで はない。 使用 その手段を問わず、禁止物質または禁止方法を利用、適用、服用、注入ま たは摂取することをいう。 WADA World Anti-Doping Agency(世界ドーピング防止機構)の略。 居場所情報義務違反 居場所情報未提出または検査未了をいう。 居場所情報提出 検査対象者登録リストに記載された競技者本人またはそれに代わる者によ って提出された情報で、向こう3カ月の当該競技者の居場所が示されている ものをいう。 第30条 ドーピング防止規則の適用範囲 1.ドーピング防止規則は IAAF、その加盟団体、地域陸連、および競技者、 競技者支援要員、ならびに合意、会員資格、提携、許可、認定あるいはそ の活動ないし競技会に参加することによって IAAF、その加盟団体および 地域陸連に参加する者に適用される。 2.すべての加盟団体および地域陸連は、ドーピング防止規則およびドーピ ング防止規約を遵守しなければならない。各加盟団体および地域陸連は、 ドーピング防止規則およびドーピング防止規約を、直接に、または言及す ることにより、その規則または規約に盛り込まなくてはならず、またドー ピング防止規則およびドーピング防止規約を効果的に実施するために必要 な手続き上の規程(および同規程が改正された場合は、かかる改正部分) を、その規則に盛り込まなくてはならない。各加盟団体および地域陸連の 規則は、すべての競技者、競技者支援要員、ならびにその管轄下にあるそ の他の者が、ドーピング防止規約およびドーピング防止規程の適用を受け ることを明確に定めなくてはならない。 3.競技者および(状況に応じて)競技者支援要員およびその他の者が、国 際競技会での競技資格、参加資格またはその他の認定を受けるためには、 カウンシルが定める書式により、ドーピング防止規則およびドーピング防 止規約に従う旨の同意書に署名しなければならない。競技者が国際競技会 に対して資格を有することを保証するには(前掲の規則第21条2項を参 - 275 - 照)、加盟団体は、求められる形式の同意書に当該競技者が署名し、かつ 署名を付した同意書の写しがすでに IAAF 事務局に送付されていることを 保証しなければならない。 4.ドーピング防止規則およびドーピング防止規約は、IAAF ならびにそれ ぞれの加盟団体および地域陸連が管轄するすべてのドーピング・コントロ ールに適用される。 5.各加盟団体は、競技者に対する国内水準のすべての競技会検査および競 技会外検査を実施し、かかる検査の結果がドーピング防止規則およびドー ピング防止規約に従っていることを管理する責任を負う。国または地域に よっては、加盟団体自ら、かかる検査および検査結果の管理を行う場合も あれば、その責任の一部またはすべてを(加盟団体自ら、または適用され る国内の法律または規約の下で)、国内ドーピング防止機関あるいはその 他の第三者に移譲または譲渡している場合もある。かかる国または地域に ついては、ドーピング防止規則内で加盟団体または国内陸連(または該当 する役員)と記載されている部分は、それぞれの事情に応じて、国内ドー ピング防止機関またはその他の第三者(または該当する役員)を指すもの として解釈する。 6.IAAF は、ドーピング防止規則の下で、各加盟団体(およびまたは、上 記第30条5項に定める国内ドーピング防止機関または第三者)が国内で実 施する競技会検査および競技会外検査も含め、加盟団体が行うドーピング 防止活動を監視するものとする。加盟団体の競技者が国際競技会で優れた 成績をおさめたことに鑑み、またはその他の事由により、かかる加盟団体 が国内で実施した競技会検査およびまたは競技会外検査、またはその他の ドーピング防止活動が不十分または不適切であったと IAAF が判断した場 合、カウンシルは、当該国または地域において、納得のゆくドーピング防 止活動を実施するために必要であると判断した措置を取るよう、かかる加 盟団体に求めることができる。加盟団体がカウンシルの決定に従わなかっ た場合、本規則第44条の下で制裁措置を科すことがある。 7.加盟団体に所属する競技者またはその他の者に対する本ドーピング防止 規則下の通知は、当該加盟団体に送達することがある。この場合、当該加 盟団体は、かかる通知の宛先となっている競技者またはその他の者に直ち に連絡する責任を負う。 - 276 - 第31条 IAAF ドーピング防止組織 1.IAAF は原則として、以下の各号に掲げる者または組織により、本ドー ピング防止規則の下で活動する。 (a) カウンシル (b) 医事ドーピング防止コミッション (c) ドーピング再調査委員会 (d) IAAF ドーピング防止管理者 カウンシル 2.カウンシルは、IAAF 総会に対し、その目的に沿って IAAF の活動を 監督し、指導する義務を有する(憲章第6条12項(a)参照)。かかる目的 の1つは、スポーツにおけるフェアプレイの精神を広め、陸上競技界およ びより広いスポーツ界において率先してドーピング撲滅のために行動する とともに、スポーツ界を汚染するドーピングを根絶やしにすることを目的 に、かかる企てを未然に発見し、抑止し、啓発をはかるためのプログラム を開発し、実施してゆくことである(憲章第3条8項参照)。 3.IAAF の活動を監督し、指導するに当たり、カウンシルは憲章の下で、 以下の各号に定める権限を有する。 (a) カウンシルが IAAF の適切な業務遂行に必要であると判断した場合、 臨時または常設のコミッションまたはサブコミッションを設置する(憲 章第6条11項(j)参照)。 (b) カウンシルが必要と判断した場合、総会と総会の間に、本規則に対す る改正を暫定的に採択し、かかる改正部分の発効日を決定する。かかる 暫定的改正は次回総会で報告し、総会の場で正式決定するかどうかを決 定する(憲章第6条11項(c)参照)。 (c) ドーピング防止規約の承認、却下、または改正を行う(憲章第6条11 項(i)参照)。 (d) 第14条7項に従い、本規則に違反した加盟団体に対して資格停止処分 またはその他の制裁措置を科す(憲章第6条11項(b)参照)。 医事ドーピング防止コミッション 4.医事ドーピング防止コミッションは、憲章第6条11項(j)の下で、カウ ンシルの一コミッションとして任命され、ドーピング防止規則およびドー ピング防止規約に関する事項はじめ、ドーピング防止およびその関連事項 のすべてについて、IAAF に一般的な助言を行う。 - 277 - 5.医事ドーピング防止コミッションのメンバーは15名を上限とする。メン バーは少なくとも年に1度、通常は暦年末毎に会合を開き、IAAF が過去 12カ月間に実施したドーピング防止活動の成果を検討し、次年度の IAAF ドーピング防止プログラムを策定してカウンシルの承認を得るものとする。 また必要が生じた場合は、一年を通して定期的に協議を行う。 6.医事ドーピング防止コミッションは、本ドーピング防止規則下で、以下 の各号に具体的に定める業務に対して責任を負う。 (a) ドーピング防止規約を公表し、必要に応じてその都度改正を加え、公 表する。ドーピング防止規約には、直接に、または言及することにより、 WADA が発行する下記の文書を盛り込まなくてはならない。 (ⅰ)禁止表 (ⅱ)国際検査基準 (ⅲ)分析機関国際基準 (ⅳ)TUE 国際基準 (ⅴ)国際プライバシー・個人情報保護基準 以上に加えて、ドーピング防止規約には、上記の文書または国際基準 の追加または改正部分、またはドーピング防止規則に準拠するために、 あるいは IAAF のドーピング防止プログラムを推進するために必要と思 われるその他の手順またはガイドラインを盛り込むものとする。 ドーピング防止規約およびその改正案は、ドーピング防止規則に別途 定めのない限り、カウンシルの承認を受けなくてはならない。承認を下 した場合、カウンシルは直ちに、ドーピング防止規約またはその改定部 分の発効日を決定する。また IAAF 事務局は加盟団体に発効日を通知す るとともに、ドーピング防止規約およびその改定部分を IAAF のウェブ サイトに掲載するものとする。 (b) 必要が生じる毎に随時、カウンシルに対して本ドーピング防止規則の 改正について助言する。総会と総会の間にドーピング防止規則の改正が 提案された場合は、必ずカウンシルの承認を受けた上で、憲章第6条11 項(c)の下で加盟団体に通知するものとする。 (c) ドーピング防止情報およびドーピング防止教育プログラムの立案、実 施、監視に当たる。かかるプログラムにおいては、少なくとも以下の各 号に定める事項について、正確な最新情報を提供することとする。 (ⅰ)禁止表に記載されている禁止物質および禁止方法 (ⅱ)ドーピングが健康に及ぼす影響 - 278 - (ⅲ)ドーピング・コントロールの手順 (ⅳ)競技者の権利と責任 (d) 下記第34条9項(a)に従い、TUE を付与する。 (e) 検査対象者登録リストに掲載する競技者を選ぶための一般的なガイド ラインを定める。 医事ドーピング防止コミッションは、上記の業務を遂行する過程で、 必要に応じ、専門家の医学的、科学的助言を求めることができる。 7.医事ドーピング防止コミッションは、カウンシル会議が開催される毎に、 事前にカウンシルに対して活動報告を行わなくてはならない。また IAAF 医事ドーピング防止部を通し、IAAF 事務局に対してドーピング防止なら びにその関連事項全般について報告しなくてはならない。 ドーピング再調査委員会 8.ドーピング再調査委員会は、憲章第6条11項(j)の下で、カウンシルの 一サブコミッションとして任命され、少なくとも以下の各号に具体的に定 める業務を担当する。 (a) 加盟団体が定められた3カ月の期限までに競技者またはその他の者の ために聴聞会を開くことができなかった場合、本規則第38条9項の下で 当該事件を CAS の調停に付託するか否かの判断を下す。 (b) 下記第38条16項に従い、同委員会に付託された事件に特別な事情や例 外的事情(それぞれ本規則第40条4項および第40条5項を適用する)が 存在するか否かの判断をカウンシルに代わって下す。 (c) 下記第42条15項に従い、事件を CAS の調停に付託するか否か、また 付託する場合は、CAS の裁定が下るまでの間、当該競技者に再度資格 停止処分を科すか否かの判断を下す。 (d) 下記第42条19項に従い、自らが当事者となっていない CAS の調停に IAAF が参加すべきか否か、また参加する場合は、CAS の裁定が下る までの間、当該競技者に再度資格停止処分を科すか否かの判断を下す。 (e) 下記第42条13項に従い、いずれの事件においても IAAF が CAS に対 して不服申立てを行うことができるように、期限の延長を決定する。 (f) 下記第45条4項の下で付託された事件において、原規程の署名当事者 以外の団体が本ドーピング防止規則とは異なる規則および手順に従って 検査を実施した場合、IAAF がかかる検査を認可すべきか否かの判断を 下す。 - 279 - ドーピング再調査委員会は、上記業務を遂行する過程で、特定の事件に 関して医事ドーピング防止コミッションまたはカウンシルの意見や指導を 求めることができる。また一般的な方針について検討する必要が生じた場 合は、カウンシルに相談することができる。 9.ドーピング再調査委員会のメンバーは3名とし、そのうち1名は法的資 格を持つ者とする。会長は必要に応じ、随時1名または複数名の人物を暫 定的にドーピング再調査委員会メンバーとして新たに任命する権限を有す る。 10.ドーピング再調査委員会は、カウンシル会議が開催される毎に、事前に カウンシルに対して活動報告を行わなくてはならない。 IAAF ドーピング防止管理者 11.IAAF ドーピング防止管理者は IAAF 医事ドーピング防止部長が務める。 IAAF ドーピング防止管理者は、上記第31条5項の下で医事ドーピング防 止コミッションが定めたドーピング防止プログラムを実施する責任を有す るものとし、また医事ドーピング防止コミッションに対してかかる計画に ついての報告を行うものとする。かかる報告の回数は最低年に一度とする が、要請を受けた場合はその回数を増やす。 12.IAAF ドーピング防止管理者は、本ドーピング防止規則の下で生じたド ーピング事例に対し、日常的な管理を行う責任を有する。とくに IAAF ド ーピング防止管理者は、それぞれの事情に応じ、本規則第37条下で国際水 準の競技者に対する結果管理を行い、本規則第38条の下で国際水準の競技 者に対する暫定的資格停止処分を決定し、国際水準の競技者による居場所 情報未提出/検査未了に対し、ドーピング防止規約に定められた手順に従 って審査を行う責任を有する。 13.IAAF ドーピング防止管理者は、その業務を遂行する過程で、医事ドー ピング防止コミッション委員長、ドーピング再調査委員会、または同管理 者が適切と考えるその他の者に随時助言を求めることができる。 第32条 ドーピング防止規則違反 1.ドーピングとは、本ドーピング防止規則第32条2項に定めるドーピング 防止規則違反行為が1つまたは複数発生することをいう。 2.競技者または他の者は、ドーピング防止規則違反に当たる構成要件、な らびに禁止表に記載されている物質および方法について知っておく責任が ある。以下に掲げるものがドーピング防止規則違反を構成する。 - 280 - (a) 競技者の検体において禁止物質またはその代謝物またはマーカーが存 在すること。 (ⅰ)禁止物質が体内に入らないように注意することは、競技者各人の責 任である。自己の検体に禁止物質またはその代謝物またはマーカーが 確認された場合は、競技者がその責任を負わなければならない。従っ てこの場合は、本規則第32条2項(a)のドーピング防止規則違反が成 立するのに、競技者の側に意図、過誤、過失、または故意の使用があ ったことを示す必要はない。 (ⅱ)次のいずれかが証明された場合は、本規則第32条2項(a)の下で、 ドーピング防止規則に対する違反行為があったことが十分に立証され たものとみなされる。競技者のA検体において禁止物質またはその代 謝物またはマーカーの存在が確認された場合で、競技者がB検体の分 析を放棄し、B検体の分析が行われなかった場合。または競技者のB 検体が分析され、その結果、競技者のA検体にみとめられた禁止物質 またはその代謝物またはマーカーの存在が追認された場合。 (ⅲ)禁止表に量的報告閾値が明記されている物質を除き、競技者の検体 において禁止物質またはその代謝物またはマーカーの存在が検出され た場合は、その量の多少にかかわらず、ドーピング防止規則違反が成 立する。 (ⅳ)本規則第32条2項(a)の規定の例外として、内因的にも生成されう る禁止物質の特別評価基準を禁止表または国際基準に定めることがで きる。 (b) 競技者が禁止物質または禁止方法を使用すること、または使用を企て ること。 (ⅰ)禁止物質が体内に入らないように注意することは、競技者各人の責 任である。従って、競技者の側に意図、過誤、過失、または使用する ことを知っていたことを立証しなくても、禁止物質または禁止方法の 使用に対するドーピング防止規則違反が成立する。 (ⅱ)禁止物質または禁止方法の使用または使用の企ての成否は重要では ない。禁止物質または禁止方法を使用した、または使用を企てたとい う事実があれば、それだけでドーピング防止規則違反が成立する。 (c) 適用されるドーピング防止規則の下で正規の通告を受けたにもかかわ らず、やむを得ない正当な理由なくして検体の採取に応じることを拒否 したり、応じなかったりすること。または検体の採取を回避すること。 - 281 - (d) 競技会外検査について競技者の可用性に関する適用要件についての違 反で、検査国際基準に基づき、求められる居場所情報の未提出または検 査未了の場合も含まれる。IAAF およびまたは、当該競技者を管轄する その他のドーピング防止機関が定める18カ月の期間中に、検査未了およ びまたは居場所情報未提出の回数が合わせて3回にのぼれば、ドーピン グ防止規則違反が成立する。 注:2009年1月1日以前に競技者が一度、検査未了/居場所情報未提 出に該当する行為を行ったことが IAAF の記録に残っている場合で、 2009年1月1日以降に同じ競技者が検査未了/居場所情報未提出に 該当する行為を繰り返した場合は、2009年1月1日以前の1回分の 行為も計算に入れて、本規則第32条2項(d)に定める違反行為の回 数を数えるものとする。ただしドーピング防止規則違反が成立する には、検査未了/居場所情報未提出の回数が、18カ月の期間に3回 にのぼった場合に限られる。 (e) ドーピング・コントロールのいずれかの部分に不当な改変を加えるこ と。または不当な改変を企てること。 (f) 禁止物質または禁止方法を保有すること。 (ⅰ)競技者が、禁止物質または禁止方法を競技会時に保有すること、ま たは競技会外に禁止されている禁止物質または禁止方法を競技会外に おいて保有することをいう。ただしかかる保有に対して、下記第34条 9項(治療目的使用)の下で TUE が付与されていること、または他 の正当な事由があることを競技者本人が立証できた場合はこの限りで はない。 (ⅱ)競技者支援要員が、競技者、競技会、またはトレーニングのために、 禁止物質または禁止方法を競技会時に保有すること、または競技会外 に禁止されている禁止物質または禁止方法を競技会外において保有す ることをいう。ただしかかる保有に対して、下記第34条9項(治療目 的使用)の下で TUE が付与されていること、または他の正当な事由 があることを競技者支援要員本人が立証できた場合はこの限りではな い。 (g) 禁止物質または禁止方法を不正取引すること、またはその不正取引を 企てること。 (h) 競技会時において禁止方法または禁止物質を競技者に投与すること、 またはその投与を企てること。競技会外に禁止されている禁止方法また - 282 - は禁止物質を競技会外において競技者に投与すること、またはその投与 を企てること。またはドーピング防止規則違反もしくは同規則違反の企 てを支援、助長、援助、教唆、隠ぺいしたり、その他の形でかかる行為 に加担したりすること。 第33条 ドーピングの証明 挙証責任および証明の程度 1.ドーピング防止規則違反が発生したことを立証する責任は、IAAF、加 盟団体、またはその他の追訴当局が負うものとする。立証の程度は、聴聞 パネルが IAAF、加盟団体、またはその他の追訴当局の主張の重大性を考 慮した上で、ドーピング防止規則違反が生じたことを無理なく納得できた か否かを基準とする。いずれのケースにおいても、ここに定める立証の程 度は、単なる証拠の優越だけでは不十分であるが、合理的疑いの余地がな くなるまでの立証は求められない。 2.本ドーピング防止規則においては、ドーピング防止規則に違反したとさ れる競技者またはその他の者は、推定事項に対して反論したり、具体的事 実または事情を証明したりする立証責任を有するが、この場合の立証の程 度は、証拠の優越によるものとする。ただし本規則第40条4項(特定物 質)および第40条6項(加重事情)により、競技者により重い立証責任が 科せられる場合はこの限りではない。 事実および推定事項の証明方法 3.ドーピング防止規則違反に関わる事実は、信頼性のおける手段によって 証明するものとする。かかる手段には、自白、第三者の証拠、目撃証言、 専門家による報告、証拠書類、長期的プロファイリングから得られた結論、 およびその他の分析情報が含まれるが、これだけに限定されるわけではな い。 ドーピングのケースには、以下の証明原則が適用される。 (a) WADA 認定の分析機関は、分析機関国際基準に準拠して、検体の分 析および管理手続きを実施していることが前提とされている。競技者ま たはその他の者は、かかる分析機関が分析機関国際基準を遵守しなかっ たことが、違反が疑われる分析報告を招いた合理的な原因となりうるこ とを証明することにより、かかる前提に反論することができる。競技者 またはその他の者が、分析機関国際基準からの逸脱が、違反が疑われる 分析報告を招いた可能性があることを証明することにより、かかる前提 - 283 - に反論した場合、IAAF、その加盟団体、またはその他の訴追当局は、 かかる逸脱が違反が疑われる分析報告の原因ではないことを証明する責 任を負う。 (b) 他の国際基準または他のドーピング防止規則あるいは方針からの逸脱 があったとしても、かかる行為が、違反が疑われる分析報告または他の ドーピング規則違反の原因となっていないのであれば、その結果は無効 にはならない。競技者またはその他の者が、他の国際基準または他のド ーピング防止規則あるいは方針を逸脱する行為が、違反が疑われる分析 報告または他のドーピング規則違反の原因となった可能性があることを 証明した場合、IAAF、その加盟団体、またはその他の訴追当局は、か かる逸脱が違反が疑われる分析報告の原因、またはドーピング規則違反 の事実的根拠ではないことを証明する責任を負う。 (c) 管轄権を有する裁判所または専門的な裁決機関の裁定によって事実が 証明され、かかる裁定に対して不服申立てがなされていない場合、かか る事実は、裁定を受けた競技者またはその他の者の違反行為を立証する 決定的な証拠となる。ただし、かかる裁定が自然的正義の原則に反して いることを、当該競技者またはその他の者が証明した場合はこの限りで はない。 (d) 競技者またはその他の者に対し、聴聞会に出頭して、聴聞パネル、ま たはドーピング防止規則違反を申立てている IAAF、加盟団体、その他 の訴追当局の質問に答えるようにとの要請が、合理的な時間の余裕をも って(直接、または聴聞パネルの指示による電話により)行われたにも かかわらず、当該競技者またはその他の者がかかる要請に応じることを 拒否した場合、聴聞パネルは、ドーピング規則違反を審議する聴聞会に おいて、かかる事実を根拠に、当該競技者またはその他の者に対して不 利益となる推定を行うことができるる。 第34条 禁 止 表 1.本ドーピング防止規則には、WADA が随時発行する禁止表が含まれる。 禁止表の公表および改定 2.禁止表は IAAF で入手できるようにする。また IAAF のウェブサイトに 掲載する。各加盟団体は、最新の禁止表が、(ウェブサイト上またはその 他の方法で)管轄するすべての競技者およびその他の者に利用できるよう はからなくてはならない。 - 284 - 3.禁止表およびまたは禁止表に加えられた改訂に別途定められていない限 り、禁止表およびその改訂版は、WADA がこれを公表した日から3カ月後 に、IAAF が特段の行動を取るまでもなく、本ドーピング防止規則の下で 発効する。 禁止表に特定される禁止物質および禁止方法 4.禁止物質および禁止方法:禁止表には、将来の競技会で競技力を増強す る可能性があるために、または隠蔽効果の恐れがあるために、常時(競技 会時においても競技会外においても)ドーピングとして禁止されている物 質および方法、ならびに競技会時に限定して禁止されている物質および方 法を特定する。禁止物質および禁止方法は、一般的なカテゴリー(例:蛋 白同化薬)別に、または特定の物質または方法に具体的に言及することに より、禁止表に記載するものとする。 5.特定物質:本規則第40条(個人に対する制裁措置)の適用にあたり、蛋 白同化薬およびホルモンに分類される物質、ならびに禁止表に特定される 興奮薬、ホルモン拮抗薬と調節薬を除き、すべての禁止物質は特定物質と みなす。禁止方法は特定物質とはみなさない。 6.新たな種類の禁止物質:WADA が新たな種類の禁止物質を追加して禁 止表の対象を広げる場合、WADA の常任理事会は、新たに追加される禁 止物質の一部またはすべてを、本規則第34条5項に定める特定物質とみな すか否かを決定しなければならない。 7.禁止表に盛り込む禁止物質および禁止方法、ならびに禁止表における物 質の分類については、WADA の決定を最終的なものとする。競技者もそ の他の者も、ある物質または方法が隠蔽薬ではない、あるいは競技力を増 強する効果を持たない、健康リスクがない、またはスポーツ精神を損なう ものではないという主張を根拠に、WADA の決定に異議を唱えることは できない。 治療目的使用 8.WADA は、治療目的使用にかかわる除外措置(TUE)の国際基準を採 択している。 9.禁止物質または禁止方法の使用を必要とする旨の診断書を所持している 競技者は、TUE を申請しなければならない。TUE が付与されるのは、や むを得ない明確な治療上の必要性が存在し、かつ当該競技者が競技上の利 益を受けない場合に限るものとする。 - 285 - (a) 国際水準の競技者は(国内ですでに TUE を取得しているか否かにか かわらず)、国際競技会への参加に先立ち、IAAF に対して TUE を申 請しなければならない。IAAF は、IAAF からの TUE の取得が求めら れる国際競技会のリストを公表する。TUE を取得しようとする国際水 準の競技者は、医事ドーピング防止コミッションに対して申請を行うも のとする。詳しい申請手続きは、ドーピング防止規約に定める。本規則 の下で IAAF が TUE を付与した場合、(ADAMS またはその他の手段 により)当該競技者の所属陸連および WADA にその旨が報告される。 (b) 国際水準以外の競技者が TUE を取得する場合は、所属陸連、または 所属陸連が指定するその他の団体、または所属陸連の国または地域で TUE を付与する法的権限を有する団体に申請を行うものとする。本規 則の下で TUE を付与した場合、当該所属陸連は、(ADAMS またはそ の他の手段により)その旨を速やかに IAAF および WADA に報告する 責任を有する。 (c) WADA は、国際水準の競技者または、国際水準の競技者ではないが 国内の検査対象者登録リストに記載されている競技者に付与された TUE について、随時、自らの裁量で審査することができる。また TUE の申請を却下された競技者から要求があった場合は、かかる却下につい て審査することができる。TUE の付与または却下が治療目的使用にか かわる除外措置の国際基準に合致しないと決定した場合、WADA は当 該決定を覆すことができる。 (d) 禁止物質またはその代謝物またはマーカーの存在(本規則第32条2項 (a))、禁止物質または禁止方法の使用あるいは使用の企て(第32条2 項(b))、禁止物質または禁止方法の保有(第32条2項(f))、または禁 止物質または禁止方法の投与(第32条2項(h))については、かかる行 為が、適用される TUE の条項に合致し、かつ治療目的使用にかかわる 除外措置の国際基準に従って行われている限り、ドーピング防止規則違 反とはみなされない。 第35条 検 査 1.本ドーピング防止規則に定めるすべての競技者は、自らが参加する競技 会における競技会検査を受けなくてはならず、またいつ、どの場所におい ても競技会外検査を受けなくてはならない。また競技者は、検査の実施権 - 286 - 限を有する者から要請を受けた場合は、必ずドーピング・コントロールを 受けなくてはならない。 2.加盟団体(および各地域陸連)には、IAAF 構成員の条件として、その 憲章に以下の各号に掲げる条項を盛り込むことが求められる。 (a) 加盟団体(および各地域陸連)は、競技会検査および競技会外検査を 実施する権限を有する。加盟団体は、かかる検査について、IAAF に年 次報告を行わなければならない(下記第43条4項を参照)。 (b) IAAF は、加盟団体の国内選手権大会(および各地域陸連の地域選手 権大会)において検査を実施する権限を有する。 (c) IAAF は、加盟団体に所属する競技者に対し、事前通告なし競技会外 検査を実施する権限を有する。 (d) 国内の陸連に登録または所属し、加盟団体が公認または主催する競技 会に参加するための条件として、競技者には、加盟団体、IAAF、およ び本ドーピング防止規則の下で検査の実施に対する法的権限を有するそ の他の団体が行う競技会検査または競技会外検査を受けることに合意す ることが求められる。 3.IAAF およびその加盟団体は、本規則の下で、いずれかの加盟団体、他 の加盟団体、WADA、政府機関、国内ドーピング防止機関、その他、目 的に適しているとみなされる第三者に対して、検査の実施を委託すること ができる。 4.IAAF およびその加盟団体が行う検査に加えて(および IAAF およびそ の加盟団体が上記第35条3項の下で検査業務を委託した場合は、その委託 を受けた機関が行う検査に加えて)、競技者は以下の検査を受けなくては ならない場合がある。 (a) 当該競技者が参加する競技会において検査を実施する法的権限を有す る他の組織または団体が行う競技会検査。 (b) 以下の競技会外検査。(i) WADA が実施するもの。(ii) 競技者が所 在している国または地域の国内ドーピング防止機関が実施するもの。 () IOC またはその代行機関がオリンピック大会に関連して実施する もの。 ただし競技会中は、単一の組織が検査の策定および指示に対して責任を 負うものとする。国際競技会では、IAAF が検体の採取を企画し、指示を 与えるものとする(下記第35条7項を参照)。また IAAF が単独で運営権 限を有していない国際競技会については、他の国際的スポーツ統括組織が - 287 - その任に当たる(例:オリンピック大会の場合は IOC、英連邦競技大会 の場合は英連邦競技大会連盟)。IAAF または他の国際的スポーツ統括組 織が国際競技会において検査を実施しないことを決定した場合は、かかる 国際競技会が開催される国またはテリトリーの国内ドーピング防止機関が、 IAAF および WADA の承認を受けた上で、検査を企画し、実施すること ができる。 5. IAAF およびその加盟団体は、競技会検査が終わり次第、WADA クリ アリングハウスを通してその旨を速やかに報告し(加盟団体が報告を行う 場合は、かかる報告の写しを同時に IAAF に送付すること)、検査の無駄 な重複を避けなくてはならない。 6.本規則のもとで IAAF およびその加盟団体が検査を実施する場合は、そ の時点で効力を有するドーピング防止規約を確実に遵守しなければならな い。 競技会検査 7.IAAF は、以下の各号に定める国際競技会において、競技会検査を策定 し、指示する責任を有する。 (a) 世界選手権大会 (b) ワールドアスレティックシリーズ競技会 (c) ワールドアスレティックツアー競技会(ゴールデンリーグ、スーパー グランプリ、グランプリ大会) (d) IAAF パーミット大会 (e) IAAF ロードレース(IAAF マラソンを含む) (f) 医事ドーピング防止コミッションの勧告を受けてカウンシルが決定す るその他の国際競技会。本規則に定める国際競技会を網羅したリストを IAAF のウェブサイトに毎年掲載する。 8.カウンシルは、医事ドーピング防止コミッションの勧告を受けて、上記 の国際競技会において検査対象となる競技者の人数を決定する。検査対象 となる競技者の抽出方法は以下の通りとする。 (a) 最終順位を基準とする、または無作為抽出による。またはその両方に より抽出する。 (b) 特定対象検査を含め、IAAF が自ら選んだ方法により、抽出する(実 際の作業は、IAAF を代表して、その担当役員または団体が行う)。 (c) 地域記録およびまたは世界記録を更新した競技者、または同記録を出 した競技者。 - 288 - 9.IAAF が上記第35条3項の下で検査を委託している場合、IAAF は本ド ーピング防止規則およびドーピング防止規約がしかるべく適用されている ことを確認するために、代表者1名を指名して当該国際競技会に派遣する ことができる。 10.IAAF は、加盟団体(およびそれぞれの地域陸連)と協議した上で、当 該加盟団体の国内選手権大会または地域選手権大会の検査を実施したり、 かかる検査の実施を補佐したりすることができる。 11.その他の場合は(ただしオリンピック大会で IOC が検査を実施するな ど、国際的スポーツ統括組織の規則に従って検査が実施されている場合を 除く)、コントロールを実施する加盟団体、または競技会が開催されてい る国または地域の加盟団体が、競技会検査を開始し、指示する責任を負う。 上記第35条3項に従って加盟団体が検査を委託している場合、加盟団体は、 国内または地域内で行われるかかる検査が、本ドーピング防止規則および ドーピング防止規約に遵守していることを確認する責任を負う。 競技会外検査 12.IAAF は、原則として国際水準の競技者に限定して競技会外検査を行う ものとする。ただし IAAF は、いずれの競技者に対しても、その一存で随 時競技会外検査を実施することができる。例外的な状況を除き、競技会外 検査は毎回、競技者またはその競技者支援要員、または所属陸連に対する 事前通知なしに実施する。検査対象者登録リストに記載された競技者には、 下記第35条17項の下で居場所情報の提出が求められる。 13.各加盟団体、加盟団体の役員、および加盟団体に所属するその他の者は、 競技会外検査の実施に当たり、本規則の下で、IAAF(および状況に応じ て他の加盟団体、WADA、または検査を実施する法的権限を有する他の 団体)を助力する義務を有する。加盟団体、加盟団体の役員、または加盟 団体に所属するその他の者がかかる検査の実施を妨害、阻害または阻止し たり、その他の方法で不当な改変を加えたりした場合は、本ドーピング防 止規則の下で制裁措置を科せられることがある。 14.競技会外検査は、常時(競技会時においても競技会外においても)禁止 されている物質および方法として禁止表に記載されている禁止物質および 禁止方法を検出することを目的に、本ドーピング防止規則の下で実施する ものとする。 15.検査対象者登録リストに記載された競技者毎に、また加盟団体毎に、年 に一度、競技会外検査の統計資料を公表する。 - 289 - 居場所情報 16.IAAF は、本規則およびドーピング防止規約の下で、居場所情報の提出 が求められる競技者の検査対象者登録リストを作成する。IAAF は検査対 象者登録リストをウェブサイト上で公表するとともに、必要に応じて随時 その見直しをはかり更新するものとする。 17.検査対象者登録リストに記載された各競技者には、ドーピング防止規約 の下で、居場所情報を提出することが求められる。居場所情報を提出する 最終的な責任は、競技者一人一人に帰属する。ただし加盟団体は、IAAF または他の関連検査当局から要請を受けた場合、登録する競技者の正確な 最新の居場所情報を収集することができるよう、最善の努力を行うととも に、かかる目的に則した具体的な条項を内部の規則または規程に盛り込む ものとする。本規則に従って競技者が提出した居場所情報は、WADA な らびに、ドーピング防止規約の下で当該競技者を検査する合法的権限を有 する他の団体との間で共有するものとする。ただしこの場合、かかる情報 の使用目的はドーピング・コントロールに限定するという条件を厳守する ことが求められる。 18.検査対象者登録リストに記載された競技者が自分の居場所を IAAF に報 告しなかった場合で、ドーピング防止規約の適用条件が満たされている場 合、本規則第32条2項(d)の目的において、居場所情報未提出が成立する ものとみなされる。検査対象者登録リストに記載された競技者が申告した 居場所で検査ができなかった場合で、ドーピング防止規約の適用条件が満 たされている場合、第32条2項(d)の目的において、検査未了が成立する ものとみなされる。競技者が任意の18カ月間に合計3回居場所情報義務違 反を犯した場合(居場所情報未提出およびまたは検査未了の回数を合わせ て3回になった場合)は、第32条2項(d)の目的において、ドーピング防 止規則違反が成立するものとみなされる。競技者を担当した他のドーピン グ防止機関が、検査国際基準に準じた規則の下で、当該競技者による居場 所情報未提出およびまたは検査未了を申告した場合、IAAF はかかる申告 を根拠に、第32条2項(d)を適用することができる。 19.検査対象者登録リストに記載された競技者またはその競技者支援要員の 一員もしくはその他の者が、故意に不正確なまたは虚偽の居場所情報を提 出した場合は、検体の採取を回避した、およびまたはドーピング・コント ロールのプロセスに不当な改変を加えた、または不当な改変を企てたもの とみなされ、それぞれ本規則第32条2項(c)および第32条2項(e)への違反 - 290 - が成立する。加盟団体が、第35条17項の下で、IAAF に協力して居場所情 報の収集に努めることが求められているにもかかわらず、または登録する 競技者に代わって居場所情報を提出することに合意しているにもかかわら ず、提出された居場所情報が最新かつ正確なものであることを確認しなか った場合は、下記第44条2項(e)への違反が成立する。 引退後または活動停止後の競技会復帰 20.検査対象者登録リストに記載された競技者が、引退を理由に、またはそ の他の事由で競技から身を引くことを理由に、以後競技会外検査を受ける ことを希望しない場合は、指定の書式を用いて IAAF に通知を提出しなけ ればならない。また同一競技者が競技を再開するためには、競技に復帰し たい意志を12カ月前に書面で IAAF に伝えるとともに、この期間に IAAF の競技会外検査に応じることができるように、上記第35条17項に従って IAAF に居場所情報を提出しなければならない。競技者が、引退を理由に、 またはその他の事由で競技から身を引くことを理由に、検体の採取を拒否 したりこれに応じなかったりした場合で、本規則に定める通知を IAAF に 提出していなかった場合は、本規則第32条2項(c)への違反が成立する。 第36条 検 体 の 分 析 1.本ドーピング防止規則の下で採取された検体はすべて、以下に定める一 般原則に従って分析するものとする。 認定分析機関の使用 (a) 本規則第32条2項(a)(競技者の検体において禁止物質またはその代謝 物またはマーカーの存在が確認された場合)の目的において、検体は、 WADA の認定分析機関が分析するか、または WADA が承認したその 他の分析機関で分析するものとする。第35条7項の下で IAAF が採取し た検体の送付先は、IAAF の承認を受けた WADA の認定分析機関(ま たは状況に応じて血液分析機関もしくは移動検査施設)に限定する。 検体の採取および分析の目的 (b) 検体を分析する目的は、ドーピング防止に向けて、禁止表に記載され ている禁止物質および禁止方法(およびその監視プログラムの下で WADA より他の物質が指定された場合は、かかる物質)を検出するこ と、およびまたは DNA またはゲノムプロファイリングも含め、競技者の 尿、血液、その他のマトリックスにおける関連パラメーターのプロファ イリングを支援することである。得られたプロファイル情報は、特定対 - 291 - 象検査の実施を指示するために、およびまたは本規則第32条2項におけ るドーピング防止規則違反を立証するために使用することができる。 検体の研究 (c) 競技者の書面による承諾を得ることなく、検体を本規則第36条1項 (b)に定めるもの以外の目的に使用することはできない。(競技者の承 諾を得た上で)第36条1項(b)に定めるもの以外の目的に検体を使用す る場合は、競技者当人が特定されることがないように、本人に結びつく 一切の手掛かりを検体から取り除かなくてはならない。 検体分析・報告基準 (d) 分析機関は、分析機関国際基準に従って検体を分析し、結果を報告し なければならない。(たとえ他の選択的基準や慣行や手順が遵守されて いなくても)分析機関国際基準が遵守されているということは、同基準 に定められた手順が適切に実施されたものである。分析機関国際基準に は、同基準に従って発行された技術文書が含まれる。 2.国際競技会におけるドーピング・コントロールで競技者が提出した検体 はすべて、直ちに IAAF の所有に帰するものとする。 3.いずれかの段階において、検体の分析またはその結果の解釈に疑義また は問題が生じた場合、分析機関(または血液分析機関もしくは移動検査施 設)における分析責任者は、IAAF のドーピング防止管理者と協議し、そ の指示をあおぐことができる。 4.いずれかの段階において、検体に関して疑義または問題が生じた場合、 分析機関(または移動検査施設)は、かかる疑義または問題の解決に必要 な検査を追加的に、あるいは別途実施することができる。IAAF はかかる 検査の結果を根拠に、検体が、違反が疑われる分析報告または他のドーピ ング防止規則違反に該当するか否かの判断を下すことができる。 5.本規則第36条2項の下で採取された検体は、IAAF または WADA(た だし IAAF の承諾を必要とする)から指示があった場合に限り、第36条1 項(b)に定める目的のために、随時再検査することができる。陸上競技で 採取されたその他の検体はすべて、検査当局または IAAF(ただし検査当 局の承諾を必要とする)または WADA から指示があった場合に限り、再 検査することができる。検体を再検査する場合の状況および条件について は、分析機関国際基準に準拠するものとする。 6.分析の結果、禁止物質の存在、あるいは禁止物質または禁止方法の使用 がみとめられた場合、WADA の認定分析機関は直ちに、違反が疑われる - 292 - 分析報告または非定型的報告を確認し、同機関の正式な代表者が署名を付 した報告書中に暗号形式でその旨を記載した上で、IAAF による検査の場 合は IAAF に、国内検査の場合は当該加盟団体に(この場合は IAAF に写 しを提出する)、報告書を送付するものとする。国内検査の場合、加盟団 体は、WADA の認定分析機関から情報を受け取り次第、必ず2週間以内 に、違反が疑われる分析報告または非定型的報告または使用の事実を、競 技者の氏名と合わせて IAAF に連絡しなければならない。 第37条 結 果 管 理 1.A検体について違反が疑われる分析報告または非定型的報告が通知され た場合、または本ドーピング防止規則に対する違反が立証された場合は、 以下に定める結果管理手順を適用する。 2.国際水準の競技者の場合、IAAF ドーピング防止管理者が結果管理手順 を実施する。その他の場合は、適切な者またはその他の者が所属する陸連 の担当者または担当機関がかかる手順を実施する。適切な者またはその他 の者が所属する陸連の担当者または担当機関は、IAAF ドーピング防止管 理者に対してかかる手順の進捗状況を逐一報告しなければならない。また 結果管理手順を実施する上で援助や情報が必要な場合は、随時 IAAF ドー ピング防止管理者に対してその要請を行うことができる。 本条項ならびに下記第38条の目的において、以下「IAAF ドーピング防 止管理者」という表記は、事情に応じて「加盟団体の担当者または担当機 関」(または加盟団体が別の団体に結果管理業務を委託している場合は、 かかる団体の担当者または担当機関)を指すものとして解釈し、また「競 技者」という表記は、事情に応じて「競技者支援要員またはその他の者」 を指すものとして解釈する。 3.A検体について違反が疑われる分析報告が通知された場合、IAAF ドー ピング防止管理者は以下の判断を下すために検討を行う。 (a) 違反が疑われる分析報告が TUE の適用によるものではないか。 (b) ドーピング防止規約または分析機関国際基準からの明らかな逸脱行為 が、違反が疑われる分析報告の原因となっていないか。 4.上記第37条3項に定める違反が疑われる分析報告の最初の検討において、 TUE の適用、またはドーピング防止規約もしくは分析機関国際基準から の逸脱が違反が疑われる分析報告の原因となっているとの結論が得られな - 293 - かった場合、IAAF ドーピング防止管理者は、当該競技者に対して、速や かに以下の内容を通知しなければならない。 (a) 違反が疑われる分析報告。 (b) 違反のあったドーピング防止規則。 (c) 競技者が直接、または所属陸連を通して、違反が疑われる分析結果に ついて IAAF に釈明するための期限。 (d) 競技者には、直ちにB検体の分析を要求する権利が認められている。 かかる要求が行われなかった場合、B検体の分析は放棄されたものとみ なされる。またB検体の分析を要求する場合、分析機関の費用は全額競 技者の負担となるが、B検体の分析報告がA検体のそれと一致しなかっ た場合は、検査実施の責任を有する機関が費用を負担することも合わせ て競技者に通知する。 (e) IAAF または競技者からの要求を受けてB検体の分析を行う場合は、 その日時および場所。通常かかる分析の実施日は、違反が疑われる分析 報告が競技者に通知された日から7日以内とする。検査予定日通知後、 担当分析機関が予定されていた日にB検体の分析を行うことができなく なった場合は、その日以降、当該分析機関にとって都合のよい最も早い 日に検査日を変更することができる。その他の理由でB検体の検査日を 変更することはできない。 (f) B検体の分析を求めた場合、当該競技者およびまたはその代理人は、 検査予定日時および場所において、B検体の開封および分析に立ち会う 権利を有すること。 (g) 競技者は、分析機関国際基準の下で求められる情報も含め、A検体お よびB検体に関する分析機関の文書一式の写しを要求する権利を有する こと。 IAAF ドーピング防止管理者は、競技者に対する上記通知の写しを当該 加盟団体および WADA に送付しなければならない。また IAAF ドーピン グ防止管理者が、違反が疑われる分析報告がドーピング防止規則違反に相 当しないという判断を下した場合は、競技者本人、当該加盟団体および WADA にその旨を通知する。 5.国際基準に従い、内因的にも生成されうる禁止物質の存在を非定型的報 告として通知するよう、分析機関に指示が与えられる場合がある。なお非 定型的報告が通知された場合は、追跡調査の対象となる。A検体の非定型 的報告を受け取った場合、IAAF ドーピング防止管理者は、最初の検討を - 294 - 実施して、以下の判断を下す。(a)非定型的報告は、治療目的使用にかか わる除外措置の国際基準の下で認められた TUE の適用が原因ではないか。 (b)ドーピング防止規約または分析機関国際基準からの明らかな逸脱行為 が、非定型的報告の原因となっていないか。初回検討において、TUE の 適用、またはドーピング防止規約もしくは分析機関国際基準からの逸脱が 非定型的報告の原因となっているとの結論が得られなかった場合、IAAF ドーピング防止管理者は、国際基準に定められた調査を実施し、調査終了 後直ちに、非定型的報告を違反が疑われる分析報告として処理するか否か を WADA に通知しなければならない。非定型的報告を違反が疑われる分 析報告として処理する場合は、本規則第37条4項に従って、競技者に通知 を与えるものとする。IAAF ドーピング防止管理者は、調査を終え、 IAAF が非定型的報告を問題にするか否かの決定を下すまでは、非定型的 報告についての通知を行わない。ただし以下の各号に該当する場合はこの 限りではない。 (a) 本規則第37条5項の下で調査を完了する前にB検体の分析を行う必要 があるとの判断を IAAF ドーピング防止管理者が下した場合、IAAF は 当該競技者に通知を与えた上でB検体の分析を行うことができる。かか る通知には、非定型的報告の内容ならびに、第37条4項(b)-(g)のうち、 該当する情報を記載する。 (b) 近く国際競技会の開催を予定している主要競技大会機関、または国際 競技会を控え、チームメンバー選出の期限に迫られているスポーツ団体 より、かかる主要競技大会機関またはスポーツ団体が提出したリストに、 非定型的報告が疑われる競技者が含まれているか否かを知らせて欲しい との要請が IAAF ドーピング防止管理者に寄せられた場合、IAAF ドー ピング防止管理者は、該当する競技者に非定型的報告を通知した上で、 かかる競技者の氏名を連絡するものとする。 6.競技者は、B検体の分析を要求する権利を放棄して、A検体に対する違 反が疑われる分析報告を受け入れてもよい。ただし IAAF が、かかる競技 者のケースを検討するためにはB検体の分析が必要であると判断した場合、 IAAF は随時B検体の分析を要求することができる。 7.競技者およびまたはその代理人は、B検体の分析に立ち会い、その一部 始終を見届けることができる。競技者の所属陸連の代表者、ならびに IAAF の代表者も、かかる分析に立ち会い、すべてを見届けることができ - 295 - る。B検体の分析を要求したとしても、当該競技者に対する暫定的資格停 止処分は継続する(下記第38条2項参照)。 8.B検体の分析が終了し次第、要請があれば、分析機関の報告書一式と、 分析機関国際基準によって求められるすべての関連データの写しを IAAF ドーピング防止管理者の元へ送付する。また要請があれば、かかる報告書 ならびにすべての関連データの写しを競技者本人にも送付する。 9.B検体の分析機関の報告書を受け取り次第、IAAF ドーピング防止管理 者は、必要に応じて、禁止表で求められている追跡調査を実施しなければ ならない。追跡調査完了後、IAAF ドーピング防止管理者は速やかにその 結果を当該競技者に通知するとともに、IAAF がドーピング防止規則違反 があったと判断するのか否か、あるいは今後もその判断が覆らないのか否 かを連絡しなければならない。 10.違反が疑われる分析報告または非定型的報告とは一切無関係にドーピン グ防止規則に対する違反があった場合、IAAF ドーピング防止管理者は、 原規程に従って採択されたドーピング防止方針および規則の下で追跡調査 を実施し、または自ら必要と考える追跡調査を実施し、かかる調査の終了 後、当該競技者に対して、当人がドーピング防止規則に違反したと判断さ れるか否かを速やかに通知するものとする。かかる判断が下った場合、当 該競技者には、IAAF ドーピング防止管理者が指定する期限までに、直接、 または所属陸連を通して、ドーピング防止規則違反の疑いについて釈明す る機会が与えられる。 11.ドーピング・コントロールに携わる者は、B検体の分析報告が出るまで (または本規則第37条9項の下でB検体の分析に対する追跡調査が禁止表 によって求められている場合は、かかる追跡調査の結果が出るまで)、も しくは当該競技者がB検体の分析の権利を放棄するまで、あらゆる合理的 手段を講じて秘密厳守に努めなくてはならない。ドーピング防止規則への 違反が疑われる競技者またはその他の者の氏名は、第37条4項または第34 条10項の下で当人に対して通知が行われるまで、公表してはならない。通 常の場合であれば、下記第38条2項または第38条3項の下で暫定的資格停 止処分が科せられる前に、氏名が公表されることはない。 12.IAAF ドーピング防止管理者は、加盟団体に対し、管轄する競技者また はその他の者のうち、本ドーピング防止規則への違反が疑われる者につい て調査を実施するよう随時要求することができる(事情に応じ、当該加盟 団体が所在する国またはテリトリーの国内ドーピング防止機関およびまた - 296 - は関連する国内の当局または団体と協力して調査を行うこともある)。 IAAF から依頼があったにもかかわらず加盟団体が調査を実施しなかった り、実施を断ったりした場合、または IAAF ドーピング防止管理者が指定 した合理的な期限までに、かかる調査の報告書を作成しなかったり、その 作成を拒否したりした場合は、下記第44条に定める制裁処分が科せられる ことがある。 13.検査対象者登録リストに記載された競技者が明白な検査未了または居場 所情報未提出の違反を犯した場合は、IAAF が、ドーピング防止規約に定 められた手順に従って、その結果管理を行う。IAAF またはその代理とな る者が競技者の検査を行おうとした結果、国内の検査対象者登録リストに 記載された競技者が明白な検査未了または居場所情報未提出の違反を犯し た場合は、IAAF が、ドーピング防止規約に従ってその結果管理を行う。 別のドーピング防止機関またはその代理となる者が競技者の検査を行おう とした結果、国内の検査対象者登録リストに記載された競技者が明白な検 査未了または居場所情報未提出の違反を犯した場合は、かかるドーピング 防止機関が、国際検査基準に従ってその結果管理を行う。 14.IOC が実施する検査、または IAAF が単独で運営権限のない国際競技 会(例:英連邦競技大会、パン・アメリカン競技大会)において他の国際 的スポーツ統括組織が実施する検査については、競技者に対し、当該国際 競技会での失効処分以上の制裁措置を決定する場合に限り、IAAF が本ド ーピング規則の下で結果管理を行う。 第38条 罰 則 手 順 1.本ドーピング防止規則におけるドーピング防止規則違反が疑われる場合、 以下の3つの段階を経て罰則手順を適用する。 (a) 暫定的資格停止 (b) 聴聞会 (c) 制裁措置または免責 暫定的資格停止 2.本規則第37条4項(c)に基づき IAAF ドーピング防止管理者が指定した 期限までに、当該競技者またはその所属陸連が、違反が疑われる分析結果 に対して一切釈明を行わなかった場合、またはその釈明が不十分であった 場合、違反が疑われる分析結果が特定物質に関するものである場合を除き、 競技者に対して資格停止処分が科せられる。ただしこの場合の資格停止処 - 297 - 分は、所属陸連が本件について決定を下すまでの暫定的なものとする。国 際レベルの競技者の場合は、IAAF ドーピング防止管理者が資格停止処分 を科す。またその他のすべての場合は、当該競技者の所属陸連が、競技者 本人に書面で通知を与えることにより、適宜資格停止処分を科すものとす る。あるいは競技者本人が所属陸連に書面で届け出を行って、自発的に資 格停止処分を受けることもできる。違反が疑われる分析結果が特定物質に 関するものである場合、または違反が疑われる分析結果以外の形でドーピ ング防止規則への違反が疑われる場合、IAAF ドーピング防止管理者は、 当該競技者の所属陸連が決定を下すまでの間、競技者に対して暫定的に資 格停止処分を科すことができる。暫定的資格停止処分は、本ドーピング防 止規則の下で競技者に通知が行われた日から発効する。 3.加盟団体が暫定的資格停止処分を科した場合、または競技者が自発的に 資格停止処分を受けた場合、加盟団体はその旨を速やかに IAAF に確認す る。かつ、以下に定める罰則手続きが競技者本人に適用される。自発的資 格停止処分は、競技者がその旨を確認した文書を IAAF が受領した日から 発効する。加盟団体が、前項の定めに反してしかるべき暫定的資格停止処 分を適用していないと IAAF ドーピング防止管理者が判断した場合は、 IAAF ドーピング防止管理者が自らかかる暫定的資格停止処分を科すもの とする。暫定的資格停止処分を科した上で、IAAF ドーピング防止管理者 は、加盟団体に対して資格停止処分を通知し、これを受けて加盟団体は以 下に定める罰則手順を開始するものとする。 4.競技者に暫定的資格停止処分を科すという決定が下った場合、かかる決 定に対して不服申立てを行うことはできない。ただし競技者が暫定的資格 停止処分を受けた場合、または自発的に資格停止処分を受けた場合、下記 第38条9項に基づき、所属する加盟団体の正式な簡易聴聞を受けることが できる。 5.A検体の違反が疑われる分析結果を根拠に暫定的資格停止処分が科せら れた場合で(またはかかる資格停止処分が自発的に受け入れられた場合 で)、その後(IAAF または当該競技者からの要請を受けて)B検体の分 析が実施され、その結果がA検体の分析結果と一致しなかった場合、それ 以降、本規則第32条2項(a)(競技者の検体において禁止物質またはその 代謝物またはマーカーが存在すること)への違反を理由とした暫定的資格 停止処分が当該競技者にそれ以降適用されることはない。本規則第32条2 項(a)に違反したとして、競技者(または事情に応じて競技者のチーム) - 298 - が競技会から除外されていた場合で、その後に行われたB検体の分析結果 がA検体の分析結果と一致しなかった場合は、その時点において当該競技 者またはそのチームが、競技会に特段の支障をきたすことなく復帰するこ とが可能であれば、継続して競技会に参加することができる。 6.結果管理手順が進められている最中に競技者またはその他の者が引退し たとしても、本ドーピング防止規則の下で結果管理手順の責任を有する組 織は、結果管理手順を最後まで行う権限を有する。結果管理手順が開始さ れる前に競技者またはその他の者が引退したとしても、競技者またはその 他の者がドーピング防止規則違反を犯した時点で、当該競技者またはその 他の者に対し、本ドーピング防止規則の下で結果管理を行う権限を有する 組織は、結果管理を実施することができる。 聴聞会 7.すべての競技者は、本ドーピング防止規則の下で制裁措置が決定される 前に、所属陸連の裁定機関による聴聞会を要求する権利を有する。上記第 4条3項に従い、国外の陸連の資格を得た競技者は、本国の所属陸連の裁 定機関か、本人が資格を有する加盟団体の裁定機関のいずれかによる聴聞 会を要求する権利を有する。聴聞会の手順においては、以下の原則が尊重 されなくてはならない。聴聞会は適切な時期に行う。聴聞パネルは公正か つ公平でなくてはならない。当該競技者またはその他の者は、自らの費用 負担で弁護士を立ち会わせる権利を有する。(当該競技者またはその他の 者は)申立てられたドーピング防止規則違反の内容を、正しくかつ適切な 時期に知らされる権利を有する。(当該競技者またはその他の者は)申立て られたドーピング防止規則違反およびその結果の処置に対して反論する権 利を有する。各当事者は、証人を召喚し尋問する権利も含め、証拠を提出 する権利を有する(電話または書面提出による証言の受け入れについては、 聴聞パネルがその裁量で決定する)。当該競技者またはその他の者は、聴 聞会において通訳を利用する権利を有する。通訳の身元と経費の負担責任 については、聴聞パネルが決定する。いかなる資格停止期間の根拠の説明 も含め、適切な時期に、理由を明示した書面により決定を下すものとする。 8.競技者には、当人の釈明が却下され上記第38条2項の下で暫定的資格停 止処分が適用される旨の通知とあわせて、聴聞会を要求する権利が認めら れていることが伝えられる。競技者が、所属陸連または他の関連団体に対 し、かかる通知を受けた日から14日以内に、聴聞会を要求する意思がある ことを書面で伝えなかった場合は、聴聞会を要求する権利を放棄し、かか - 299 - るドーピング防止規則違反を犯したことを認めたものとみなされる。当該 加盟団体は、5就業日以内に、IAAF に対して書面でこの旨を確認連絡す る。 9.競技者が聴聞会を要求した場合は、当該競技者が加盟団体にその要求を 通知した日から3カ月以内に、遅滞なく聴聞会を開催しなくてはならない。 加盟団体は、聴聞会で審議するすべての事例について、その状況を IAAF に逐一報告するとともに、すべての聴聞会の日程を、確定し次第、IAAF に知らせるものとする。IAAF はオブザーバーとしてすべての聴聞会に立 ち会う権利を有する。ただし IAAF が聴聞会に参加したり、別の形で審議 に関与したりしたとしても、そのために、下記第42条の下で、加盟団体の 決定に対して CAS に不服申立てを行う権利が損なわれることはない。聴 聞会での審議が3カ月以上長引く場合、その対象が国際レベルの競技者で あれば、IAAF は、CAS が指定する単一の調停者に直接本件についての 審判を委ねることができる。この場合は、CAS の規則(不服申立て調停 手続きに適用される規則で、不服申立て期限を定めないもの)に従って処 理が行われる。聴聞会は当該加盟団体の責任および費用負担で実施するも のとする。また下記第42条の下で、かかる単一の調停者が下す決定に対し て、CAS に不服申立てを行うことができる。加盟団体が、本規則に反し て、3カ月以内に競技者のために聴聞会を開催しなかった場合は、本規則 第44条の下で制裁措置が科せられることがある。 10.競技者は、本ドーピング防止規則に違反したことを書面で認めるととも に、加盟団体の申し出に応じて本規則第40条に定める処置を受け入れるこ とにより、聴聞会を放棄することができる。競技者が本規則第40条の下で 処置を受け入れたために聴聞会が開催されなかった場合、当該加盟団体は IAAF に、その決定を理由とともに提出し、どのような措置を取ったかを 説明しなければならない。本ドーピング防止規則の下で競技者が処置を受 け入れた上で加盟団体が下した決定に対しては、下記第42条の下で不服申 立てを行うことができる。 11.競技者の聴聞会は、加盟団体が組織する裁定機関、または加盟団体が権 限を付与する裁定機関が実施する。加盟団体が聴聞会の実施を(加盟団体 内外の)団体、委員会、もしくは裁定機関に委託した場合、または他の理 由により、加盟団体外の国内の団体、委員会、もしくは裁定機関が本規則 の下で競技者のために聴聞会を開く責任を負う場合は、下記第42条の目的 において、かかる団体、委員会、もしくは裁定機関の決定を加盟団体の決 - 300 - 定とみなし、第42条に「加盟団体」と表記されている部分は、かかる団体、 委員会、もしくは裁定機関を指すものとして理解する。 12.競技者事例を取り扱う聴聞会において、裁定機関は、ドーピング防止規 則違反の有無を最初に検討する。加盟団体または他の調査権限をもつ機関 は、ドーピング防止規則違反が成立することを裁定機関に立証する責任を 有する(上記第33条1項参照)。 13.当該加盟団体の裁定機関がドーピング防止規則への違反はなかったとい う決定を下した場合、その日から5就業日以内に、IAAF ドーピング防止 管理者に(かかる結論の理由を記した文書の写しとともに)その決定を書 面で通知するものとし、その後ドーピング再調査委員会が当該ケースの再 検討を行って、下記第42条15項の下で同件を CAS の調停に付託するか否 かの判断を下すものとする。ドーピング再調査委員会が同件を CAS の調 停に付託することを決定した場合、同委員会は同時に、事情に応じ、 CAS が不服申立てに対する裁定を下すまでの間、当該競技者に対して暫 定的資格停止処分を再度適用する。 14.当該加盟団体の裁定機関がドーピング防止規則違反が成立するという決 定を下した場合、資格停止期間の適用に先立って、競技者に、当該ケース においては例外的/特別な事情が存在し、下記第40条の下で適用される制 裁処分を緩和すべき正当な事由があることを立証する機会が与えられる。 例外的/特別な状況 15.本ドーピング防止規則の下で例外的/特別な状況の有無について判断が 下される場合は、国籍、居住地、水準、または経験に関係なく、すべての 競技者に対して常に同一の法的条件が適用されるように、整合性を取るこ とが求められる。従って例外的/特別な状況について検討する場合には、 以下の原則を適用する。 (a) 禁止物質が自分の体組織や体液に入らないようにすることは、競技者 一人一人に課せられた義務である。体内に禁止物質の存在が認められた 場合は、競技者本人がその責任に問われることを、競技者は留意しなけ ればならない(上記第32条2項(a)(i)参照)。 (b) 例外的状況が成立するのは、その状況が真に例外的である場合に限ら れるものとし、圧倒的多数のケースは、例外的状況には該当しない。 (c) 上記第38条15項(a)の競技者の義務という観点から、以下の各号に示 す申立ては、通常の場合、真に例外的なものとはみなされない。自分が 知らないうちに、何者かによって禁止物質または禁止方法が与えられた。 - 301 - 誤って禁止物質を摂取してしまった。禁止物質が混入したサプリメント 食品を摂取したために、禁止物質が検出された。競技者支援要員が、そ うとは知らずに禁止物質が含まれている薬を処方した。 (d) ただし以下の場合は例外的状況が成立する。競技者またはその他の者 が、IAAF、所属陸連、ドーピング防止機関、刑事司法機関、または専 門の懲戒機関に対して実質的な支援を提供し、その結果 IAAF、所属陸 連、ドーピング防止機関、刑事司法機関、または専門の懲戒機関が、別 の人物によるドーピング防止規則違反を発見または立証した場合、ある いは刑事司法機関または専門の懲戒機関が、別の人物による犯罪行為ま たは専門的な規則に対する違反を発見または立証した場合。 (e) 特定物質に関する違反が疑われる分析結果については、以下の場合、 特別な状況が成立する。競技者が、特定物質が自分の体内に入った経緯、 または特定物質を入手した経緯を明らかにすることができ、かつ特定物 質の使用が、競技力を高める目的や、競技力を向上する物質の使用を隠 ぺいする目的ではなかったことを立証できた場合。 16.国際レベルの競技者がかかわる場合、例外的/特別な状況の有無につい ては、ドーピング再調査委員会が判断を下す(下記第38条20項参照)。 17.競技者が自分のケースが例外的/特別な状況に該当することを立証しよ うとする場合、当該裁定機関は、提出された証拠に基づき、かつ上記第38 条15項に定める原則に厳密に照らし合わせた上で、当該競技者のケースが 例外的/特別な状況に該当するか否かの検討を行うものとする。本規則第 32条2項(a)に該当する場合、資格停止期間の短縮を認めてもらうためには、 競技者は、禁止物質が自分の体内に入った経緯を明らかにすることができ なければならない。 18.提出された証拠を検討した結果、裁定機関が、当該競技者のケースは例 外的/特別な状況に該当しないと判断した場合、下記第40条に定める制裁 措置を適用する。加盟団体は、裁定機関が判断を下した日から5就業日以 内に、IAAF および競技者本人に対してかかる判断を書面で通知する。 19.提出された証拠を検討した結果、裁定機関が、当該競技者のケースは例 外的/特別な状況に該当する可能性があると判断した場合、それが国際レ ベルの競技者が関与するケースであれば、以下の措置を取る。 (a) かかる状況の例外性を証明するものと目される資料およびまたは証拠 一式を添えて、(事務総長経由で)本件をドーピング再調査委員会の検 討に委ねる。 - 302 - (b) 当該競技者およびまたはその所属陸連に、裁定機関がドーピング再調 査委員会に本件を委託したことを支持するよう依頼する。またはかかる 委託を支持する旨の独自の意見書を提出するよう依頼する。 (c) ドーピング再調査委員会が例外的/特別な状況の有無について決定を 下すまでの間、当該競技者の聴聞会を延期する。 ドーピング再調査委員会が例外的/特別な状況の有無について決定を下 すまでの間、当該競技者には引き続き暫定的資格停止処分が適用される。 20.裁定機関より委託を受けた場合、ドーピング再調査委員会は、提出され た文書資料に基づき、例外的/特別な状況の有無に限定して検討を行う。 ドーピング再調査委員会は以下の権限を有する。 (a) Eメール、電話、ファックスを通して、または対面して、本件に関す る意見交換を行う。 (b) 証拠または文書をさらに要求する。 (c) 競技者にさらに詳しい説明を求める。 (d) 必要であれば、同委員会の検討の場に競技者の立ち会いを求める。 ドーピング再調査委員会は、提出された文書資料(追加された証拠また は文書、または競技者による説明を含む)を精査し、上記第38条15項に定 める原則を厳密に検討した上で、当該事例において例外的/特別な状況が 成立するか否かの判断を下すものとし、成立すると判断した場合は、さら にそれが次のいずれの範疇に該当するのかを決定する。すなわち例外的状 況とは、競技者の側に過誤または過失がない状態(下記第40条5項(a)参 照)なのか、競技者の側に重大な過誤または過失がない状態(下記第40条 5項(b)参照)なのか、または別の人物によるドーピング防止規則違反また は犯罪行為または専門的な規則に対する違反が発見または立証された実質 的な支援(下記第40条5項(c)参照)のいずれに相当するのか、もしくは特 定物質にかかわる制裁措置が軽減されるのか特別な状況(下記第40条4項 参照)なのかを判断する。かかる決定は、事務総長により、書面で加盟団 体に伝えられる。 21.ドーピング再調査委員会が例外的/特別な状況は成立しないという判断 を下した場合、かかる判断は当該裁定機関を拘束し、同裁定機関は、下記 第40条に従って制裁措置を科す。加盟団体は、裁定機関の決定が下った日 から5就業日以内に、IAAF および競技者本人に、かかる決定を書面で通 知する。なお裁定機関の決定には、ドーピング再調査委員会の判断が盛り 込まれていなければならない。 - 303 - 22.ドーピング再調査委員会が例外的/特別な状況が成立するという判断を 下した場合、裁定機関は、上記第38条20項においてドーピング再調査委員 会が定める例外的/特別な状況の範疇に応じ、下記第40条4項または第40 条5項の下で当該競技者に対する制裁措置を決定する。加盟団体は、裁定 機関の決定が下った日から5就業日以内に、IAAF および競技者本人にか かる決定を書面で通知する。 23.競技者は、例外的/特別な状況に対するドーピング再調査委員会の決定 を再検討するよう、CAS に求める権利を有する。例外的/特別な状況に 対するドーピング再調査委員会の決定を見直す場合は、常に下記第42条21 項に定める基準を遵守するものとする。 24.国際レベルの競技者が関与していない場合、裁定機関は、上記第38条15 項に定める原則を厳密に検討した上で、当該競技者のケースにおいて例外 的/特別な状況が成立するか否かの判断を下すとともに、その判断に従っ て競技者に対する制裁措置を決定する。加盟団体は、裁定機関の決定が下 った日から5就業日以内に、IAAF および競技者本人にかかる決定を書面 で通知する。裁定機関が、当該競技者のケースにおいて例外的/特別な状 況が成立すると結論した場合は、決定内容を知らせる文書の中で、かかる 結論の根拠となった事実的背景を十分に説明しなければならない。 第39条 個人競技結果の自動的失効 競技会検査に関わるドーピング防止規則に対して違反が生じた場合、該当 する競技において自動的に失効の措置が取られ、獲得したタイトル、賞、メ ダル、点数、賞金、出場料をすべてはく奪することを含む相応の処置が、当 該競技者に対して講じられる。 第40条 個人に対する制裁措置 ドーピング防止規則違反が生じた競技会における競技結果の失効 1.競技会の開催中に、または競技会に関連してドーピング防止規則違反が 生じた場合、該当する競技会における当該競技者の個人記録はすべて失効 し、獲得したタイトル、賞、メダル、点数、賞金、出場料をすべてはく奪 することを含む相応の処置が、当該競技者に対して講じられる。ただし以 下に定める場合は、この限りではない。 競技者本人が、かかる違反に対して自分には過誤または過失がないこと を立証した場合で、ドーピング防止規則違反が生じたもの以外の競技にお - 304 - いて競技者が出した結果が、かかる違反行為の影響を受けていないとみな された場合、他の競技における当該競技者の個人結果は失効しない。 禁止物質および禁止方法の存在、使用、使用の企て、または保有を理由とす る資格停止処分 2.本規則第32条2項(a)(競技者の検体において禁止物質またはその代謝物 またはマーカーが存在すること)、第32条2項(b)(競技者が禁止物質また は禁止方法を使用すること、または使用を企てること)、または第32条2 項(f)(禁止物質または禁止方法を保有すること)に対する違反が生じた場 合、資格停止の期間は以下の通りとする。ただし、本規則第40条4項およ び第40条5項に定める資格停止期間の取り消しまたは短縮、または本規則 第40条6項に定める資格停止期間の延長に関わる各条件が満たされている 場合は、この限りではない。 初回違反の場合:2年の資格停止。 ドーピング防止規則に対するその他の違反を理由とする資格停止処分 3.本規則第40条2項に定めるもの以外のドーピング防止規則違反が生じた 場合、資格停止期間は以下の通りとする。 (a) 本規則第32条2項(c)(検体の採取を拒否したり、応じなかったりした 場合)または本規則第32条2項(e)(ドーピング・コントロールのいずれ かの部分に不当な改変を加えること)に対する違反が生じた場合、資格 停止の期間は2年とする。ただし、本規則第40条5項または第40条6項 に定める条件が満たされている場合は、この限りではない。 (b) 本規則第32条2項(g)(禁止物質または禁止方法を不正取引すること、 またはその不正取引を企てること)または本規則第32条2項(h)(禁止方 法または禁止物質を競技者に投与すること、またはその投与を企てるこ と)に対する違反が生じた場合は、最短で4年の資格停止、最高で永久 資格停止とする。ただし、第40条5項に定める条件が満たされている場 合は、この限りではない。未成年を巻き込んだドーピング防止規則違反 はとくに重大な違反とみなされ、競技者支援要員が、本規則第34条5項 に定める特定物質に関する違反以外の違反を犯した場合は、かかる競技 者支援要員に永久資格停止処分を科すものとする。さらに、本規則第32 条2項(g)または第32条2項(h)に対する違反がスポーツ以外の法令違反 にも及んだ場合は、管轄の行政機関、専門機関、または司法機関にその 旨を通報する。 - 305 - (c) 本規則第32条2項(d)(居場所情報未提出およびまたは検査未了)に対 する違反が生じた場合は、当該競技者の過誤の程度に応じ、最短で1年、 最高で2年の資格停止とする。 特別な状況下での特定物質に関わる資格停止期間の取り消しまたは短縮 4.競技者またはその他の者が、特定物質が自分の体内に入った経緯、また は特定物質を入手した経緯を明らかにすることができ、かつその特定物質 の使用が、競技力を高める目的や、競技力を向上する物質の使用を隠ぺい する目的ではなかったことを立証できた場合、本規則第40条2項に定める 資格停止期間は以下のように変更する。 初回違反の場合:最低で将来の競技会に対する資格停止処分を伴わない譴 責処分、最高で2年の資格停止処分。 処分の取り消しまたは期間短縮の正当性を立証するために、競技者また はその他の者には、自分の証言に加え、競技力を高める目的や、競技力を 向上する物質の使用を隠ぺいする目的がなかったことを聴聞パネルに無理 なく納得させるような補強証拠を提示することが求められる。資格停止期 間の短縮について検討する際には、当該競技者またはその他の者の過誤の 程度が考慮される。 本条項を適用するのは、競技者が特定物質を摂取した目的が競技力を高 めることではなかったという客観的状況に、聴聞パネルが無理なく納得し た場合に限るものとする。 例外的状況を理由とする資格停止期間の取り消しまたは短縮 5.(a) 過誤または過失がないこと:競技者またはその他の者が、当該ケー スにおいて自分には過誤または過失がないことを証明した場合、かかる 証明がなければ科せられていた資格停止期間は取り消される。本規則第 32条2項(a)(競技者の検体において禁止物質またはその代謝物またはマ ーカーが存在すること)の違反において、競技者の検体において禁止物 質またはそのマーカーもしくは代謝物が検知された場合、禁止物質が体 内に入った経緯を当該競技者が明らかにできなければ、資格停止期間の 取り消しは認められない。 本規則が適用され、当該証明がなければ科せられていた資格停止期間 が取り消された場合、下記第40条7項の下で、複数違反に関わる資格停 止期間を決定する場合に限り、当該ドーピング防止規則違反を違反とみ なさないものとする。 - 306 - (b) 重大な過誤または過失がないこと:競技者またはその他の者が、当該 ケースにおいて自分には重大な過誤または過失がないことを証明した場 合、かかる証明がなければ科せられていた資格停止期間を短縮すること ができる。ただし短縮後の資格停止期間が、当該証明がなければ科せら れていた資格停止期間の半分を下回ってはならない。かかる証明がなけ れば永久資格停止処分が科せられていた場合、本規則に定める短縮後の 期間は、8年以上とする。本規則第32条2項(a)(競技者の検体において 禁止物質またはその代謝物またはマーカーが存在すること)に反して、 競技者の検体において禁止物質またはそのマーカーもしくは代謝物が検 知された場合、禁止物質が体内に入った経緯を当該競技者が明らかにで きなければ、資格停止期間の短縮は認められない。 (c) ドーピング防止規則違反を発見または証明するための実質的な支援: 競技者またはその他の者が、IAAF、所属陸連、ドーピング防止機関、 刑事司法機関、または専門の懲戒機関に対して実質的な支援を提供し、 その結果 IAAF、所属陸連、またはドーピング防止機関が、別の人物に よるドーピング防止規則違反を発見または立証した場合、あるいは刑事 司法機関または専門の懲戒機関が、別の人物による犯罪行為または専門 的な規則に対する違反を発見または立証した場合、加盟団体の裁定機関 は、本規則第42条の下で最終的な不服申立ての決定が下される前に、ま たは不服申立ての期限が満了する前に(本規則第38条16項の下で国際水 準の競技者がドーピング再調査委員会に審議を付託している場合は、そ の状況に応じるものとする)、当該ケースにおいて科せられる資格停止 期間の一部を執行停止することができる。本規則第42条の下で最終的な 不服申立ての決定が下された後、または不服申立ての期限が満了した後、 加盟団体が競技者またはその他の者の資格停止期間を執行停止すること ができるのは、ドーピング再調査委員会がかかる決定を下し、WADA がその旨に同意した場合に限るものとする。ドーピング再調査委員会が、 実質的な支援はなかったと判断した場合、かかる判断は当該加盟団体を 拘束し、この場合、資格停止期間の執行停止は行われない。一方ドーピ ング再調査委員会が、実質的な支援があったと判断した場合、当該加盟 団体は執行を停止する資格停止期間を決定する。かかる支援がなければ 適用されていた資格停止期間に対してどの程度執行停止を認めるかは、 当該競技者またはその他の者が犯したドーピング防止規則違反の重大性、 ならびにかかる競技者またはその他の者が陸上競技界からドーピングを - 307 - 根絶するために提供した実質的な支援の大きさによって、決定する。た だし、かかる支援がなければ適用されていた資格停止期間の4分の3以 上が執行停止されることはない。かかる支援がなければ永久資格停止処 分が科せられていた場合、本規則に定める執行停止期間を除く資格停止 期間は8年以上とする。加盟団体が本規則の下で資格停止期間の一部を 執行停止する場合は、IAAF およびかかる決定に不服申立てを行う権利 を持つ他の当事者に対して、速やかに、かかる決定の理由を書面で提出 しなければならない。競技者またはその他の者が、期待されていた実質 的な支援を提供することができず、その結果加盟団体が資格停止の執行 停止を破棄した場合、当該競技者またはその他の者は、かかる措置に対 して不服申立てを行うことができる。 (d) 他の証拠が存在しない状況で、競技者がドーピング防止規則違反を認 めた場合:競技者またはその他の者が、ドーピング防止規則違反を証明 しうる検体採取の通知を受け取る前に、(または本規則第32条2項(a) 以外のドーピング防止規則違反の場合は、本規則第37条の下で認めた違 反行為について最初の通知を受け取る前に)、自発的にドーピング防止 規則に違反したことを認めた場合で、その時点で他に違反を裏付ける信 頼するに足る証拠がない場合は、資格停止期間を短縮することができる。 ただし、短縮後の期間が、当該事情がなければ適用されていた資格停止 期間の半分を下回ってはならない。 (e) 競技者またはその他の者が、本規則の複数の条項の下で、制裁措置の 軽減を求める権利を持つことを証明した場合:本規則第40条5項(b)、 (c)または(d)の下で短縮または執行停止措置が適用される前に適用され るべき資格停止期間は、本規則第40条2項、第40条3項、第40条4項お よび第40条6項に従って、決定しなくてはならない。競技者またはその 他の者が、本規則第40条5項(b)、(c)または(d)のうち2つ以上の条項 の下で、短縮または執行停止措置の権利を持つことを証明した場合、資 格停止期間を短縮または執行停止することができる。ただし短縮または 執行停止後の期間が、当該事情がなければ適用されていた資格停止期間 の4分の1を下回ってはならない。 資格停止期間延長の根拠となりうる加重事情 6.本規則第32条2項(g)(禁止物質または禁止方法を不正取引した場合、ま たはその不正取引を企てた場合)および第32条2項(h)(禁止方法または禁 止物質を競技者に投与した場合、またはその投与を企てた場合)以外のド - 308 - ーピング防止規則違反において、標準的な制裁措置よりも重い資格停止期 間の適用を正当化する加重事情が存在することが立証された場合、当該事 情がなければ適用されていた資格停止期間を、4年間を上限として延長す るものとする。ただし当該競技者またはその他の者が、故意にドーピング 防止規則違反を犯したわけではないこと立証し、聴聞パネルがその事実に 無理なく納得した場合はその限りではない。 (a) 標準的な制裁措置よりも重い資格停止期間の適用を正当化する加重事 情の例は以下の場合である。競技者またはその他の者が、ドーピングを 目的とした計画または企ての一環として、個人で、またはドーピング防 止規則違反の謀略や共同謀議に加担して、ドーピング防止規則違反を犯 した場合。競技者またはその他の者が、複数の禁止物質または禁止方法 を使用または保有したり、1つの禁止物質または禁止方法を数回にわた って使用または保有したりした場合。健常者において、当該事情がなけ れば適用されていた資格停止期間が過ぎても、ドーピング防止規則違反 による競技力向上効果が継続する可能性がある場合。競技者またはその 他の者が、ドーピング防止規則違反の検出や裁定を避けるために、詐害 行為や妨害行為を行った場合。なお錯誤回避のために付け加えるならば、 加重事情の例は上記にあげた事例だけに限定されず、他の加重的要因に より、標準的な制裁措置よりも重い資格停止期間の適用が正当化される 場合もある。 (b) 競技者またはその他の者に対してドーピング防止規則違反が申し立て られた場合、競技者またはその他の者が速やかに(すなわち上記第37条 4項(c)に定める釈明書提出期限までに、およびいずれの場合にも、当 該競技者が再度競技に参加する前に)、かかる申立てを認めれば、本規 則の適用を回避することができる。 複数の違反 7.(a)2回目のドーピング防止規則違反:競技者またはその他の者が1 回目のドーピング防止規則違反を犯した場合の資格停止期間は、本規則 第40条2項および第40条3項に定める通りとする(なお本規則第40条4 項または第40条5項の下で資格停止期間の取り消し、短縮、または執行 停止が行われる場合がある。また第40条6項の下でかかる期間が延長さ れることがある)。2回目のドーピング防止規則違反については、以下 の表の範囲内で資格停止期間を定めるものとする。 - 309 - 2回目の 違反 1回目の 違反 RS FFMT NSF St AS TRA RS 1-4 2-4 2-4 4-6 8-10 10-永久 FFMT 1-4 4-8 4-8 6-8 10-永久 永久 NSF 1-4 4-8 4-8 6-8 10-永久 永久 St 2-4 6-8 6-8 8-永久 永久 永久 AS 4-5 永久 永久 永久 永久 永久 永久 TRA 8-永久 10-永久 10-永久 永久 永久 上記の2回目のドーピング防止規則違反に関わる表の略号は次の意味 を有する。 RS( 本 規則 第40条 4項 に 定める 特定 物質 に関 わる 制裁 措置 の軽 減):ドーピング防止規則違反が特定物質に関わるため、または本規則 第40条4項に定める他の条件が満たされているため、本規則第40条4項 に従い、軽減した制裁措置を適用した、または適用すべきである。 FFMT(居場所情報未提出およびまたは検査未了):本規則第40条3 項(c)(居場所情報未提出およびまたは検査未了)に従い、ドーピング防 止規則違反に対して制裁措置を適用した、または適用すべきである。 NSF ( 重 大 な 過 誤 ま た は 過 失 が な い こ と に 関 わ る 制 裁 措 置 の 軽 減):当該競技者が、本規則第40条5項(b)に定める重大な過誤または 過失がないことを立証したために、ドーピング防止規則違反に対して、 本規則第40条5項(b)の下で制裁措置を適用した、または適用すべきで ある。 St(本規則第40条2項または第40条3項(a)に定める標準的制裁措 置):ドーピング防止規則違反に対して、本規則第40条2項または第40 条3項(a)に定める標準的制裁措置を適用した、または適用すべきであ る。 AS(加重制裁措置):本規則第40条6項に定める条件が成立すること が立証されたため、ドーピング防止規則違反に対して、本規則第40条6 項の下で加重制裁措置を適用した、または適用すべきである。 TRA(不正取引または投与):ドーピング防止規則違反に対して、不 正取引または投与について定めた本規則第40条3項(b)の下で制裁措置 を適用した、または適用すべきである。 - 310 - (b) 2回目のドーピング防止規則違反に対する本規則第40条5項(c)およ び第40条5項(d)の適用:2回目のドーピング防止規則違反を犯した競 技者またはその他の者が、本規則第40条5項(c)および第40条5項(d)の 下で、資格停止期間の一部執行停止または短縮を求める権利を有するこ とを立証した場合、聴聞パネルは、本規則40条7項(a)に定める表の範 囲で、当該事情がなければ適用される資格停止期間を決定した上で、資 格停止期間を適宜執行停止または短縮するものとする。本規則第40条5 項(c)および第40条5項(d)の下で執行停止または短縮を行った後の資格 停止期間が、当該事情がなければ適用される資格停止期間の4分の1を 下回ってはならない。 (c) 3回目のドーピング防止規則違反:ドーピング防止規則違反の回数が 3回に達した場合は、必ず永久資格停止処分を適用する。ただし3回目 の違反行為が本規則第40条4項に定める資格停止期間の取り消しまたは 短縮の条件を満たしている場合、または本規則第32条2項(d)(居場所情 報未提出およびまたは検査未了)に対する違反に関わっている場合、資 格停止期間は最短で8年、最高で永久とする。 (d) 潜在的な複数の違反に対する追加規則: (ⅰ)本規則第40条7項の下で制裁措置を適用する場合、競技者またはそ の他の者が2回目のドーピング防止規則違反を犯したとみなされるの は、当該競技者またはその他の者が本規則第37条(結果管理)の下で 通知を受け取った後に、または1回目のドーピング防止規則違反の通 知を行うために合理的な努力がなされた後に、2回目の規則違反を犯 したことが立証できる場合に限るものとする。かかる立証ができない 場合は、当該2回の違反を合わせて1回の違反行為が成立するものと みなし、当該2回の違反に対する制裁措置のうち、重い方の違反を基 準に、制裁措置を適用するものとする。ただし、加重事情の有無(本 規則第40条6項)を判断する際には、複数回の違反が生じたという事 実も考慮に入れるものとする。 (ⅱ)1回目のドーピング防止規則違反の裁定が下った後に、当該競技者 またはその他の者が、1回目の違反の通知を受ける前に別のドーピン グ防止規則違反を犯していた事実が明らかになった場合は、当該2回 の違反が同時に審議されていた場合に科せられたはずの制裁措置に基 づいて、制裁措置を追加的に適用することとする。また早い方のドー ピング防止規則違反の時点まで遡り、本規則第40条8項の下で、それ - 311 - 以降のすべての競技における結果を失効させるものとする。以前の違 反行為が後に発覚すれば加重事情(本規則第40条6項)が成立するた め、かかる事態を回避するには、競技者またはその他の者は、違反の 通知を初めて受けた後、速やかに(すなわち上記第37条4項(c)に定 める釈明書の提出期限までに、およびいずれの場合にも、当該競技者 が再度競技に参加する前に)、それ以前にもドーピング防止規則への 違反を犯していた事実を自発的に認めなければならない。2回目のド ーピング防止規則違反の裁定が下った後に、それ以前の別のドーピン グ防止規則違反が明らかになった場合にも、同じ規則を適用するもの とする。 (e) 複数のドーピング防止規則違反の期限を8年とすること:本規則第40 条7項を適用する場合、複数の違反が成立するのは、個々のドーピング 防止規則違反が8年間のうちに生じた場合に限るものとする。 検体の採取またはドーピング防止規則違反後における競技結果の失効 8.本規則第39条および第40条に従い、競技会において陽性検体が検出され た場合、かかる競技会における競技結果は自動的に失効する。これに加え て(競技会検査、競技会外検査の区別を問わず)陽性検体が採取された日、 または他のドーピング防止規則違反が生じた日から、暫定的資格停止期間 または資格停止期間の開始時までの競技結果についても、そのすべてを失 効とし、獲得したタイトル、賞、メダル、点数、賞金、出場料をすべては く奪することも含め、当該競技者に対して相応の処置が講じるものとする。 9.上記第40条8項に定める賞金のはく奪については、以下の規則が適用さ れる。 (a)はく奪された賞金の扱い:資格停止処分を受けた競技者に対して、賞 金の支払いが行われていない場合は、当該競技または競技会において、 資格停止処分を受けた競技者に次ぐ成績をあげた競技者に賞金が授与さ れる。賞金がすでに資格停止処分を受けた競技者に支払われている場合 は、資格停止処分を受けた競技者が、はく奪された賞金の全額を、賞金 の支払者または支払い機関に返還している場合に限り、当該競技または 競技会において資格停止処分を受けた競技者に次ぐ成績をあげた競技者 に賞金が授与される。 (b) 資格停止処分を受けた競技者がドーピング防止規則違反に問われた後 に資格を回復するためには、最初に、上記第40条8項の下ではく奪され - 312 - た賞金の全額を返還することが条件の1つとなる(下記第40条12項参 照)。 資格停止期間の開始 10.以下に定める場合を除き、資格停止期間は、聴聞会が資格停止の決定を 下した日、または聴聞会が開かれていない場合は資格停止処分が受け入れ られた日、もしくは別の形でかかる処分が適用された日から開始するもの とする。暫定的資格停止期間が適用されていた場合、または競技者が暫定 的資格停止処分を自発的に受け入れていた場合は、資格停止期間から、か かる暫定的資格停止期間の日数を控除するものとする。 (a) 速やかに申立てを認めた場合:競技者に対してドーピング防止規則が 申し立てられた場合、当該競技者が速やかに(すなわち上記第37条4項 (c)に定める釈明書提出期限までに、およびいずれの場合にも、当該競 技者が再度競技に参加する前に)、書面でかかる申立てを認めれば、資 格停止期間の開始日を、検体の採取日まで、または直近の別のドーピン グ防止規則違反日まで遡及させることができる。ただし、本規則が適用 される場合、競技者またはその他の者が制裁措置を受け入れた日、聴聞 会が制裁措置の決定を下した日、または別の形で制裁措置が適用された 日以降、当該競技者またはその他の者が資格停止処分に服する期間が、 資格停止期間の半分を下回ってはならない。 (b) 競技者に対して暫定的資格停止処分が科せられ、競技者がこれを遵守 した場合、将来資格停止期間が適用された場合に、かかる暫定的資格停 止期間の日数を控除するものとする。 (c) 競技者が書面で自発的に(本規則第38条2項に従い)暫定的資格停止処 分を受け入れ、その後競技に参加しなかった場合、将来資格停止期間が 適用された場合に、かかる自発的な暫定的資格停止期間の日数を控除す るものとする。本規則第38条3項に従い、自発的資格停止は、IAAF が これを承認した日から発効するものとする。 (d) 当該競技者が競技を自粛した場合でも、選ばれなかったために競技に 参加しなかった場合も含め、暫定的資格停止、または自発的な暫定的資 格停止の発効日以前には、資格停止期間に対する日数の控除は認められ ない。 資格停止期間中の地位 11.(a) 資格停止期間中の参加の禁止:競技者またはその他の者が資格停止 を宣告された場合は、IAAF または地域陸連または加盟団体(もしくは - 313 - 加盟団体のクラブまたはその他の関連団体)あるいは署名当事者(また は署名当事者の加盟団体または、署名当事者の加盟団体のクラブまたは 関連団体)が認定または組織する公認のドーピング防止教育プログラム またはリハビリテーション・プログラム、あるいはプロフェッショナ ル・リーグや国際、国内水準の団体が認定または組織する競技会を除き、 いかなる資格においても、競技会または活動に参加することはできない。 競技者は、資格停止期間中であっても引き続き検査の対象となる。資格 停止期間が4年以上に及ぶ場合、当該競技者またはその他の者は、4年 間の資格停止期間が経過すれば、陸上競技以外の国内のスポーツ大会に 参加することができる。ただしかかる国内の大会は、資格停止期間でな ければ当該競技者またはその他の者に、国内選手権大会または国際競技 会への出場資格を直接または間接に与えるものであってはならない(ま たはかかる大会の参加資格に向けて得点を累積できるものであってはな らない)。 (b) 資格停止中の参加禁止条項に対する違反行為:資格停止を宣告された 競技者またはその他の者が、資格停止期間中の参加の禁止を定めた上記 第40条11項(a)に違反した場合、かかる参加により得られた結果は失効 するものとし、かつ当初の資格停止期間は、かかる違反があった日から 改めて開始するものとする。当該競技者またはその他の者が、参加禁止 条項への違反に対して自分に重大な過誤または過失がないことを立証し た場合、新たに科せられた資格停止期間は、本規則第40条5項(b)に従 って短縮される場合がある。競技者またはその他の者が参加禁止条項に 違反したか否か、また本規則第40条5項(b)の下で資格停止期間を短縮 すべきか否かの判断は、当該競技者またはその他の者の結果管理を行い、 その結果当初の資格停止期間を適用することを決定した機関が下すもの とする。 (c) 資格停止期間中の資金援助の停止:さらに、ドーピング防止規則違反 が行われ、かかる違反が、本規則第40条4項に定める特定物質に関わる 制裁措置の軽減の対象とならない場合、当人に対するスポーツ関連の資 金援助、またはその他のスポーツ関連の給付金の支払いは一部、または 全面的に停止される。 資格停止後に競技会に復帰するための要件 12.指定された資格停止期間満了後に資格を回復するための条件として、競 技者またはその他の者は、以下の要件を満たさなくてはならない。 - 314 - (a) 賞金の返還:違反が疑われる分析結果または他のドーピング防止規則 違反に該当する結果に至った検体が採取された日、または他のドーピン グ防止規則違反を犯した日以降の競技会において、競技成績に対して賞 金を受け取った場合、当該競技者はその全額を返還しなくてはならない。 (b) 復帰検査:競技者は、暫定的資格停止期間または資格停止期間中、 IAAF、所属陸連、および本ドーピング防止規則の下で検査を実施する 権限を有するその他の機関の下で競技会外検査を受けなくてはならず、 かつ要請があった場合は、かかる検査を目的に、最新の正確な居場所情 報を提出しなくてはならない。国際水準の競技者が1年以上の資格停止 処分を受けた場合は、競技会外検査3回と、資格停止期間が満了する直 前に禁止物質および禁止方法全般について調べる検査1回の、最低でも 計4回の復帰検査を受けなくてはならない。かかる復帰検査は当該競技 者の費用負担で行うこととし、検査と検査の間には3カ月以上の間隔を あけるものとする。IAAF は、復帰検査が本ドーピング防止規則および 規程の下で実施されるようはかる責任を有する。ただし WADA の認定 分析機関が採取された検体の分析を行い、かつ適正な資格を持つ検査機 関が検査を実施している場合、IAAF はかかる事実をもって、本要件が 満たされているものとみなすことができる。競走競技、競歩競技、また は混成競技に参加する競技者が本ドーピング防止規則違反を犯したこと が明らかになった場合は、少なくとも最後の2回の復帰検査において、 赤血球生成促進剤およびその放出因子の分析を行うものとする。かかる 復帰検査の結果はすべて、当該競技者が競技会に復帰する前に、ドーピ ング・コントロールの書式の写しとともに、IAAF に送付しなければな らない。本規則の下で実施されたいずれかの復帰検査において、違反が 疑われる分析結果または他のドーピング防止規則違反に該当する結果が 得られた場合は、新たなドーピング防止規則違反が成立するものとし、 当該競技者には、事情に応じて、懲戒手続きおよびさらなる制裁措置が 科せられる。 (c) 競技者の資格停止期間が満了した場合、上記第40条12項に定める要件 が満たされていれば、当該競技者は自動的に資格を回復する。この場合 競技者またはその所属陸連は、IAAF に対して申請を行う必要はない。 - 315 - 第41条 チームに対する制裁措置 1.ドーピング防止規則違反を犯した競技者がリレーチームの一員として競 技に参加した場合は、当該リレーチームに対し、かかる競技において自動 的に失効の措置が取られ、獲得したタイトル、賞、メダル、点数、賞金を すべてはく奪することを含め、リレーチームに対して相応の処置が講じら れる。ドーピング防止規則違反を犯した競技者が、競技会におけるそれ以 降の競技に、リレーチームの一員として参加する場合は、当該リレーチー ムに対し、かかる競技において自動的に失効の措置が取られ、獲得したタ イトル、賞、メダル、点数、賞金をすべてはく奪することを含め、リレー チームに対して、上記と同様の処置が講じられるが、当該競技者が、かか る違反に対して自分には過誤または過失がないこと、および自分がリレー に参加することに、ドーピング防止規則違反の影響が及んでいた可能性は 低いことを立証した場合はこの限りではない。 2.リレーチーム以外のチームの一員として、ドーピング防止規則違反を犯 した競技者が、個人の競技結果の累計によってチーム順位が決まる競技に 参加した場合、かかる競技において当該チームに対し、自動的に失効の措 置が適用されることはない。この場合は、違反を犯した競技者の競技結果 をチーム成績から除外し、代わりに、次点の成績を上げたチームメンバー の競技結果を加算するものとする。当該競技者の競技結果をチーム成績か ら除外したことにより、かかるチームの競技者数が定められた人数を満た さなくなった場合は、かかるチームに対して失効の措置が取られる。ドー ピング防止規則違反を犯した競技者が、競技会におけるそれ以降の競技に チームの一員として参加する場合は、同様の原則を適用してチームの競技 結果を計算するものとするが、当該競技者が、かかる違反に対して自分に は過誤または過失がないこと、および自分がチームに参加することに、ド ーピング防止規則違反の影響が及んでいた可能性は低いことを立証した場 合はこの限りではない。 3.上記第40条8項における競技結果の失効に加えて、以下の措置を講じる ものとする。 (a) 陽性検体が採取された日、または他の違反が生じた日から、暫定的資 格停止期間または資格停止期間の開始時までの間に当該競技者がリレー チームの一員として競技した場合、かかる競技結果についても、失効の 措置が適用され、獲得したタイトル、賞、メダル、点数、賞金をすべて - 316 - はく奪することも含め、当該リレーチームに対して相応の処置が講じら れる。 (b) 陽性検体が採取された日、または他の違反が生じた日から、暫定的資 格停止期間または資格停止期間の開始時までの間に当該競技者がリレー チーム以外のチームの一員として競技した場合は、当該チームの競技結 果に対して自動的に失効の措置が取られることはないが、違反を犯した 競技者の競技結果をチーム成績から除外し、代わりに、次点の成績を上 げたチームメンバーの競技結果を加算するものとする。当該競技者の競 技結果をチーム成績から除外したために、かかるチームの競技者数が定 められた人数を満たさなくなった場合は、かかるチームに対して失効の 措置が講じられる。 第42条 不 服 申 立 て 不服申立ての対象となる決定 1.他に特段の定めのない限り、本ドーピング防止規則に基づいて下された 決定については、以下に定める規定に従い、不服申立てをすることができ る。不服申立て審問機関が別の命令を下さない限り、または本規則の下で 別途定められている場合を除き(下記第42条15項参照)、かかる決定はす べて、不服申立て期間中も引き続き効力を有するものとする。不服申立て 手続きが開始されるためには、事前に本ドーピング防止規則に定める事後 的検討が尽くされなければならない(ただし WADA が不服申立ての権利 を有し、かつ他の当事者が、適用される規則の下で最終決定に対し不服申 立てをしない場合には、WADA は、他の救済措置を尽くすことなく、 CAS に直接不服申立てをすることができる)。 ドーピング防止規則違反または処置に関する決定への不服申立て 2.以下にあげるドーピング防止規則違反または処置に関する決定に対して は、本規則の下で不服を申し立てることができる。ただし不服申立ての対 象となる決定は、これだけに限定されるわけではない。ドーピング防止規 則に違反したという決定、ドーピング防止規則違反の結果を果した決定。 ドーピング防止規則に違反していなかったという決定、ドーピング防止規 則違反に対し、本規則に定める処置の適用に至らなかった決定、国際水準 の競技者の事例において制裁措置の取り消しまたは軽減を正当化できる例 外的/特別な状況が存在しなかったという本規則第38条21項の下でドーピ ング再調査委員会が下した決定、競技者またはその他の者がドーピング防 - 317 - 止規則違反に対する処置を受け入れることを確認する旨の加盟団体の決定、 ドーピング防止規則違反手続きが手続き上の理由(例えば、時効を含む) により、進めることができないという決定、資格停止期間中に競技者また はその他の者が、参加禁止の規定に違反したか否かについて、本規則第40 条11項の下で下された決定、加盟団体がドーピング防止規則違反の申立て またはその処置を裁定する管轄権を持たないとの決定。違反が疑われる分 析結果または非定型的報告をドーピング防止規則違反として取り上げない 旨の決定、または本規則第37条10項に定める調査の結果、ドーピング防止 規則違反に関する手続きを進めないこととする決定。本規則第38条9項の 下で CAS の審議に付託された場合に、CAS の単一の調停者が下した決定。 その他、ドーピング防止規則違反または処置に関する決定で、IAAF が、 誤っている、または手続き上の問題があると判断したもの。 3.国際水準の競技者が関与する不服申立て:国際水準の競技者またはその 競技者支援要員が関わる事例において加盟団体の関連機関が下した決定に ついては、以下に定める規則に従い、CAS に対してのみ不服申立てを行 うことができる。 4.国際水準の競技者が関与しない不服申立て:国際水準の競技者またはそ の競技者支援要員が関与しない事例において加盟団体の関連機関が下した 決定に対しては、(下記第42条8項が適用される場合を除き)、加盟団体 が定める規則に従って、独立かつ公平な独立機関に不服申立てをすること ができる。かかる不服申立ての規則は、次に掲げる原則を尊重しなければ ならない。 ・適切な時期に聴聞会を開くこと。 ・聴聞パネルは公正かつ公平で、独立していなくてはならないこと。 ・当事者は、自らの費用負担で弁護士を立ち会わせる権利を有すること。 ・当事者は、自らの費用負担で聴聞会において通訳を利用する権利を有 すること。 ・適切な時期に、理由を明示した書面により決定を下すこと。 国内水準の審査機関が下した決定に対しては、下記第42条7項の下で、 不服申立てを行うことができる。 5.不服申立ての権利を有する当事者:国際水準の競技者またはその競技者 支援要員が関わる事例の場合、以下の者が CAS に不服申立てを行う権利 を有する。 (a) 不服申立てを行う決定の対象となった競技者またはその他の者 - 318 - (b) 当該決定が下された事案の他方当事者 (c) IAAF (d) 競技者またはその他の者が居住する国、または競技者またはその他の 者が国籍または資格を有する国の国内ドーピング防止機関 (e) IOC(オリンピック大会の参加資格に影響を及ぼす決定も含め、オリ ンピック大会に関わる決定に対して不服を申し立てる場合) (f) WADA 6.国際水準の競技者またはその競技者支援要員が関与しない事例の場合、 以下の者が国内の審査機関に不服申立てを行う権利を有する。 (a) 不服申立てを行う決定の対象となった競技者またはその他の者 (b) 当該決定が下された事案の他方当事者 (c) 加盟団体 (d) 競技者またはその他の者が居住する国、または競技者またはその他の 者が国籍または資格を有する国の国内ドーピング防止機関 (e) WADA IAAF は、下された決定に対して国内水準の審査機関に不服申立てを行 う権利を持たないが、オブザーバーとして、国内水準の審査機関が行う聴 聞会に立ち会う権利を有する。IAAF がオブザーバーの資格で聴聞会に立 ち会ったとしても、そのために、国内水準の審査機関が下した決定に対し て下記第42条7項の下で IAAF が CAS に不服を申し立てる権利が損なわ れることはない。 7.国際水準の競技者またはその競技者支援要員が関与しない事例の場合、 以下の者が国内の審問機関の下した決定に対して CAS に不服申立てを行 う権利を有する。 (a) IAAF (b) IOC(オリンピック大会の参加資格に影響を及ぼす決定も含め、オリ ンピック大会に関わる決定に対して不服を申し立てる場合) (c) WADA 8.国際水準の競技者またはその競技者支援要員が関与しない事例で、以下 の各号に該当する場合、IAAF、IOC(オリンピック大会の参加資格に影 響を及ぼす決定も含め、オリンピック大会に関わる決定に対して不服を申 し立てる場合)、および WADA は加盟団体の関連機関が下した決定に対 して直接 CAS に不服申立てを行う権利を有する。 (a) 加盟団体が国内において不服申立ての手順を定めていない場合。 - 319 - (b) 本規則第42条6項に定められたいずれの当事者も、加盟団体の国内の 審査機関に対して不服申立てを行っていない場合。 (c) 加盟団体の規則にかかる規定がある場合。 9.本ドーピング防止規則の下で不服申立てを行う者はいずれも、不服申立 ての対象となる決定を下した機関から関連情報を入手するために、CAS の支援を受ける権利を有する。CAS が命じた場合には当該情報は提供さ れなければならない。 決定が遅れた場合の WADA による不服申立て 10.本ドーピング防止規則の下で、IAAF または加盟団体が、WADA が定 めた合理的な期限までに、ドーピング防止規則違反の有無について決定を 下すことができなかった場合、WADA は、IAAF または加盟団体がドー ピング防止規則違反はなかったとの決定を下したものとみなし、直接 CAS に不服申立てを行うことができる。CAS の聴聞パネルが、ドーピング防 止規則違反があったとの決定を下し、かつ直接 CAS に不服申立てを行っ た WADA の行為が合理的なものであったと判断した場合、期限内に決定 を下すことができなかった機関(IAAF または加盟団体)は、かかる不服 申立てに要した WADA の費用および審問料金を払い戻さなくてはならな い。 TUE を付与または不承認とする決定に対する不服申立て 11.WADA が TUE の付与または不承認を覆す決定を下した場合、決定を 覆された当人である競技者、または IAAF または加盟団体(あるいは本規 則第34条9項に従って指定された機関)は、CAS に対して不服申立てを 行うことができる。WADA 以外の機関によって TUE を不承認とする決 定が下され、かつ WADA がかかる決定を覆さなかった場合、国際水準の 競技者は CAS に限定して不服申立てを行うことができる。またその他の 競技者は、上記第42条4項に定める国内の審査機関に不服申立てを行うこ とができる。国内の審査機関が TUE を不承認とする決定を覆した場合、 WADA は当該決定に対し、CAS に不服申立てを行うことができる。TUE が正規に申請されたにもかかわらず、IAAF または加盟団体が(自ら、ま たは第34条9項に従って指定した機関を通して)、合理的な期限内にその 対応を決定しなかった場合、本規則に定める不服申立ての権利に関しては、 かかる申請は却下されたものとみなされる。 - 320 - ドーピング防止義務違反を理由に加盟団体に制裁措置を科す旨の決定に対す る不服申立て 12.本規則に定めるドーピング防止義務を怠ったとして、本規則第44条の下 でカウンシルが加盟団体に対して制裁措置を適用する決定を下した場合、 当該加盟団体はかかる決定に対し、CAS に対して不服申立てを行うこと ができる。 CAS への不服申立ての期限 13.本規則に別途定められていない限り(または IAAF が不服申立人となる 場合は、ドーピング再調査委員会が別途定めていない限り)、不服申立人 は、不服申立ての対象となる決定の事由が書面で通知された日から (IAAF が不服申立人となる場合は、英語またはフランス語でかかる通知 が行われた日から)、または上記第42条8項(b)の下でかかる決定に対し て国内の審査機関に不服申立てを行うことが認められた期限の最終日から 起算して45日以内に、CAS に対して不服申立書を提出しなければならな い。また不服申立人は、不服申立書の提出期限から15日以内に CAS に対 して不服申立概要書を提出するものとし、被不服申立人は、かかる不服申 立概要書を受領してから30日以内に CAS に意見書を提出するものとする。 14.WADA は、以下に定めるもののうちいずれか遅い方の日までに、CAS に不服申立てを行わなくてはならない。(a) 当該ケースの当事者に認めら れた不服申立て期限の最終日から21日目。または(b) WADA が当該決定 に関する完全な書類を受け取ってから21日目。 IAAF から CAS への不服申立て 15.IAAF が CAS に不服申立てを行うべきか否か、あるいは IAAF が本来 の当事者となっていない CAS の不服申立てに参加すべきか否か(下記第 42条19項参照)の決定は、ドーピング再調査委員会が下すものとする。同 時にドーピング再調査委員会は、必要に応じ、CAS の決定が下るまでの 間当該競技者に再度資格停止処分を適用するか否かの判断を下す。 CAS への不服申立てにおける被不服申立人 16.原則として、CAS への不服申立てにおける被不服申立人は、不服申立 ての対象となっている決定を下した当事者とする。上記第38条11項に従い、 加盟団体が本規則に定める聴聞会の実施を他の機関、委員会または裁定機 関に委託している場合は、当該加盟団体が、かかる決定に対する CAS へ の不服申立ての被不服申立人となる。 - 321 - 17.IAAF が CAS に不服申立てを行う場合、IAAF は、当該決定の影響が 及ぶ可能性のある競技者、競技者支援要員またはその他の者や機関で、 IAAF が適切であると判断した者を、被不服申立人に加えることができる。 18.CAS への不服申立てにおいて、被不服申立人が2人以上おり、IAAF がそのうちの1人となっている場合、IAAF は、他の被不服申立人との間 で、調停者の指定について合意しなければならない。誰を調停者に指定す るかについて意見が分かれた場合は、IAAF の選択を優先する。 19.CAS への不服申立てにおいて IAAF が当事者となっていなかったとし ても、IAAF はかかる不服申立てに当事者として参加することを決めるこ とができる。この場合 IAAF は、CAS の規則に定める当事者の権利をす べて有するものとする。 CAS への不服申立て 20.CAS への不服申立ては(下記第42条21項に定める場合を除き)すべて、 当該事例によって提示された問題を新たに審理する形で行うものとし、 CAS の聴聞パネルは、加盟団体または IAAF の裁定機関が下した決定に 誤りがある、または手続き上の問題があると判断した場合、かかる決定を 覆すことができる。また CAS の聴聞パネルは随時、不服申立ての対象と なった決定の下で科せられた処置に新たな処分を追加したり、その範囲を 拡大したりすることができる。 21.ドーピング再調査委員会が下した例外的/特別な状況についての決定に 対し、CAS に不服申立てが行われた場合、例外的/特別な状況について CAS が行う聴聞は、ドーピング再調査委員会に提出された資料の見直し およびその決定に限定するものとする。ドーピング再調査委員会が下した 決定に対して CAS の聴聞パネルが異議を唱えることができるのは、以下 の場合に限るものとする。 (a) ドーピング再調査委員会の決定の根拠となる事実が存在しない場合。 (b) 当該決定の内容と、ドーピング再調査委員会が過去に審査した事例と の間に重大な矛盾があり、当該事例の事実によっても、かかる矛盾を正 当化することができない場合。 (c) ドーピング再調査委員会が、他の合理的な再調査機関なら絶対に下さ ないような決定を下した場合。 22.CAS への不服申立てに IAAF が関与する場合、CAS および CAS の聴 聞パネルは必ず、IAAF の憲章、規則および規約(本ドーピング防止規則 を含む)を遵守しなければならない。CAS の現行の規則と IAAF の憲章、 - 322 - 規則および規約の内容が一致しない場合は、IAAF の憲章、規約および規 程を優先して適用する。 23.CAS への不服申立てに IAAF が関与する場合、当事者が別途合意した 場合を除き、モナコ公国の法律を準拠法とし、かつ調停は英語によって実 施するものとする。 24.CAS の聴聞パネルは、状況に応じて、当事者に対し、CAS への不服申 立てにおいて生じた費用の支払いまたは分担を裁定することができる。 25.CAS の下した決定は最終的なものであり、すべての当事者および加盟 団体に対して拘束力を有する。CAS の決定に対して不服申立てを行うこ とはできない。CAS の決定は直ちに効力を発するものとし、すべての加 盟団体は、かかる決定の発効に必要な一切の措置を講じなくてはならない。 第43条 加盟団体の報告責任 1.各加盟団体は、国際競技会での参加資格を得るために、本ドーピング防 止規則およびドーピング防止規約を遵守する旨の合意書に署名した競技者 の氏名を速やかに IAAF に報告しなければならない(上記第30条3項参 照)。またその都度、署名済の合意書の写しを IAAF 事務局に送付しなけ ればならない。 2.上記第34条9項(b)の下で TUE が付与された場合、各加盟団体は、 IAAF および WADA に対してその旨を速やかに報告しなければならない。 3.加盟団体が実施した検査、または加盟団体の国または地域で実施された 検査において違反が疑われる分析報告が得られた場合、当該加盟団体は、 速やかに、かつその旨の通知を受けた日から必ず14日以内に、当該競技者 の氏名ならびにかかる違反が疑われる分析報告に関する文書一式を添えて、 IAAF に対して報告を行わなければならない。 4.各加盟団体は、毎年年初3カ月以内に IAAF に対して提出することが求 められている年次報告の中で(憲章第4条9項参照)、前年に当該加盟団 体が実施した検査、または当該加盟団体の国または地域において(IAAF 以外の機関により)実施された検査すべてを報告しなければならない。か かる報告には、競技者毎に、検査の実施時期、実施機関、および競技会検 査・競技会外検査の区別を明記するものとする。IAAF は、本規則の下で 加盟団体から提出されたかかるデータを定期的に公表することができる。 5.IAAF は、その加盟団体も含め、原規程に対する IAAF の遵守状況を WADA に対して隔年毎に報告しなければならない。 - 323 - 第44条 加盟団体に対する制裁措置 1.加盟団体が本ドーピング防止規則に定める義務を履行しなかった場合、 カウンシルは、憲章第14条7項の下で、かかる加盟団体に対して制裁措置 を科す権限を有する。 2.以下の各号に該当する場合は、加盟団体が本ドーピング防止規則に定め る義務を履行しなかったものとみなされる。 (a) 上記第30条2項の規定に反して、本ドーピング防止規則と規約を内部 の規約または規程に盛り込まなかった場合。 (b) 競技者の国際競技会への参加資格を確保するために、競技者に本ドー ピング防止規則およびドーピング防止規約を遵守する旨の合意書に署名 するよう求め、署名済の合意書の写しを IAAF 事務局に送付することが 定められているにもかかわらず(上記第30条3項参照)、これを怠った 場合。 (c) 上記第30条6項の規定に反して、カウンシルの決定に従わなかった場 合。 (d) 要請を受けてから3カ月以内に競技者のために聴聞会を開催しなかっ た場合(上記第38条9項参照)。 (e) IAAF から居場所情報を収集するための協力要請があったにもかかわ らず、その要請に真摯に応じなかった場合(上記第35条17項参照)、お よびまたは管轄する競技者に代わって収集した居場所情報の内容が、最 新かつ正確なものであることを確認しなかった場合(上記第35条19項参 照)。 (f) IAAF、他の加盟団体、WADA、または検査の権限を有する他の機関 が実施する競技会外検査に対して、妨害、詐害、またはその他の不当な 改変を行った場合(上記第35条13項参照)。 (g) 本規則第34条9項(b)の規定に反し、TUE が付与されたことを IAAF および WADA に報告しなかった場合(上記第43条2項参照)。 (h) 加盟団体が実施したドーピング・コントロール、または加盟団体の国 または地域で実施されたドーピング・コントロールにおいて違反が疑わ れる分析報告が得られた場合、当該加盟団体は、その旨の通知を受けた 日から必ず14日以内に、当該競技者の氏名ならびにかかる違反が疑われ る分析報告に関する文書一式を添えて、IAAF に対してかかる事実を報 - 324 - 告しなければならないことが定められているにもかかわらず、これを怠 った場合(上記第43条3項参照)。 (i) 本ドーピング防止規則に定める罰則手順を厳守しなかった場合。国際 水準の競技者が関与する例外的/特別な状況をめぐるケースをドーピン グ再調査委員会の検討に委ねなかった場合も含む(上記第38条19項参 照)。 (j) ドーピング防止規則に違反した競技者に対し、本ドーピング防止規則 に定める制裁措置を適用しなかった場合。 (k) IAAF から要請を受けたにもかかわらず、本ドーピング防止規則違反 が疑われるケースについて調査を実施することを断ったり、実施しなか ったりした場合。またかかる調査についての報告書を IAAF が指定した 期限までに提出することを断ったり、提出しなかったりした場合(上記 第37条12項参照)。 (l) 毎年年初3カ月以内に IAAF に対して提出することが求められている 年次報告の中で、前年に加盟団体が実施したドーピング・コントロール、 または加盟団体の国または地域において実施されたドーピング・コント ロールすべてを報告することが定められているにもかかわらず、これを 怠った場合(上記第43条4項参照)。 3.加盟団体が、本ドーピング防止規則に定める義務を履行していないとみ なされる場合、カウンシルは、以下に定めるもののうち、1つまたは複数 の措置を講じる権限を有する。 (a) 次回総会まで、またはそれより短い期間、当該加盟団体に資格停止処 分を科す。 (b) 当該加盟団体に警告または譴責処分を科す。 (c) 罰金を科す。 (d) 当該加盟団体に対する助成金または補助金の支給を停止する。 (e) 当該加盟団体に所属する競技者が1つまたは複数の国際競技会に参加 することを禁じる。 (f) 当該加盟団体の役員またはその他の代表者に対する認定を取り消す。 またはかかる認定を与えない。 (g) 適切とみなされるその他の制裁措置を科す。 カウンシルは、上記第44条2項に定める義務の不履行に対し、加盟団体 に適用する制裁措置の一覧表を随時決定することができる。かかる一覧表、 - 325 - またはこれに対する変更点は、加盟団体に通知するとともに、IAAF のウ ェブサイト上で公表する。 4.カウンシルが本ドーピング防止規則に定める義務を履行しなかった加盟 団体に対して制裁措置を科した場合は、IAAF のウェブサイト上でかかる 決定を公表するとともに、次回総会でその旨を報告する。 第45条 承 認 1.本ドーピング防止規則に従って下された最終決定は、IAAF およびその 加盟団体によって承認されなければならない。また IAAF およびその加盟 団体は、かかる決定を発効させるために必要な措置をすべて講じるものと する。 2.陸上競技における署名当事者の検査および TUE については、それがド ーピング防止規則および規約に合致しており、かつ当該署名当事者の権限 内で行われているのであれば、IAAF およびその加盟団体は、上記第42条 に定める不服申立ての権利を条件として、その結果を承認し、尊重しなく てはならない。 3.署名当事者以外の団体が、陸上競技において、本ドーピング防止規則お よび規約とは異なる規則および手順の下で検査を実施した場合、かかる検 査が適正に実施されており、かつ検査を実施した団体の規則がドーピング 防止規則および規約に一致しているのであれば、カウンシルは、すべての 加盟団体を代表して、かかる検査を承認することができる。 4.カウンシルは、上記第45条3項の下で検査を承認する責任を、ドーピン グ再調査委員会または適切とみなされるその他の者または団体に移譲する ことができる。 5.カウンシル(または本規則第45条4項の下でその指定を受けた者)が、 陸上競技において署名当事者以外の団体が実施した検査を承認することを 決定した場合、かかる団体の規則に対する違反行為は、これに対応する IAAF の規則への違反とみなされ、違反を犯した競技者には、本ドーピン グ防止規則に適用されるものと同じ罰則手順および制裁措置が科せられる。 いずれの加盟団体も、かかる事例においてドーピング防止規則違反に対す る決定を発効させるために必要な措置をすべて講じるものとする。 6.陸上競技以外のスポーツにおける署名当事者の検査、TUE、聴聞会の 結果、およびその他の最終的な裁定については、それがドーピング防止規 則および規約の趣旨に合致しており、かつ当該署名当事者の権限内で行わ - 326 - れているのであれば、IAAF およびその加盟団体はかかる結果および裁定 を承認し、尊重しなくてはならない。 7.陸上競技以外のスポーツにおいて原規程を受諾していない団体について も、その規則がドーピング防止規則および規約に合致しているのであれば、 IAAF およびその加盟団体は、上記第45条6項に定めるものと同様の結果 および裁定を承認しなくてはならない。 第46条 時 効 競技者またはその他の者が本ドーピング防止規則に対して違反を犯した場 合に懲罰を適用することができるのは、ドーピング防止規則違反が生じた日 から8年以内とし、それ以降は一切の措置を科すことができないものとする。 第47条 解 釈 1.ドーピング防止規則の本質は、あくまでも陸上競技を行うための条件を 定めた競技規則であって、刑事手続きまたは雇用関係に適用される要件お よび法的基準によって拘束や制約を受けるものではない。スポーツ界から ドーピングを根絶するための取組の根拠として、かつ IAAF が本ドーピン グ防止規則の中で是認した原規程に定められた。方針および基準は、フェ アなスポーツ精神を希求する者たちの幅広いコンセンサスを表したもので あり、すべての裁判所および裁定機関によって尊重されなくてはならない。 2.本ドーピング防止規則は、それ自体独立した文書として解釈するものと し、署名当事者または政府の既存の法令に照らし合わせて解釈してはなら ない。 3.本ドーピング防止規則に使用されている見出しおよび小見出しはあくま でも便宜上のものであり、本ドーピング防止規則の内容の一部とみなして はならない。また該当する条項の文言に対して、何らかの影響を及ぼすも のとみなしてはならない。 4.本第3章に定める定義は、本ドーピング防止規則の不可分の一部とみな さなくてはならない。 5.本ドーピング防止規則の発効日である2009年1月1日以前から審議され ている事項に対して、本ドーピング防止規則を遡及的に適用することはで きない。ただし本ドーピング防止規則発効後に発生した違反に対して本規 則第40条の下で制裁措置を決定する場合は、旧 IAAF 規則におけるドーピ ング規則違反を1回目または2回目の違反として数えるものとする。 - 327 - 6.本ドーピング防止規則と原規程の内容が一致しない場合は、本ドーピン グ防止規則を優先的に適用する。 移 行 規 定 1.本ドーピング防止規則は2009年1月1日(以下「効力発生日」と称す る)をもって発効し、この日以降、採取されたすべての検体またはその他 のドーピング防止規則違反に対して全面的に適用される。 寛大な法(Lex Mitior)の原則の適用時を除く遡及的適用の禁止 2.効力発生日において審議中のドーピング防止規則違反のケース、および 効力発生日以前に生じたドーピング防止規則違反行為に基づき、効力発生 日以降に審議されるケースについては、申告された違反が生じた時点で効 力を有していた実質的なドーピング防止規則を適用するものとする。ただ し当該ケースを審議している裁定機関が、当該事情においては「寛大な法 (lex mitior)」の原則の適用が妥当であるとの判断を下した場合はこの 限りではない。 2009年版ドーピング防止規則の発効以前に下された決定への適用 3.効力発生日以前にドーピング防止規則違反の最終決定を受けた競技者ま たはその他の者が、効力発生日時点においても依然として資格停止処分に 服している場合、当該競技者またはその他の者は、2009年版ドーピング防 止規則に準じて、資格停止期間の短縮の検討を願い出ることができる。国 際水準の競技者の場合、かかる願い出の提出先はドーピング再調査委員会 とし、その他の場合は、当該競技者またはその他の者が所属する陸連の関 連団体とする。かかる願い出は、当該資格停止期間が満了する前に行わな くてはならない。またドーピング再調査委員会またはその他の関連団体が 下した決定に対しては、本規則第42条の下で不服申立てを行うことができ る。ドーピング防止規則違反が成立する旨の最終決定が下され、かつ資格 停止期間が満了している場合は、当該ケースに対して本2009年版ドーピン グ防止規則を適用することはできない。 2009年以前のドーピング防止規則違反に対する本規則の適用 4.効力発生日以前に生じたドーピング防止規則違反のうち、本ドーピング 防止規則の下で特定物質に指定される物質が関わっており、かつ科せられ た資格停止期間が2年未満のものは、上記第40条7項(a)の適用において、 軽減した制裁措置(RS)とみなされる。 - 328 - 第4章 紛 第60条 総 紛 争 争 則 1.個別の規則または規定(例えば,競技会の現場で生じる紛争に関する規 則または規定)に別段の定めがない限り,本規則から生じる紛争は,以下 に定める条項に従って解決するものとする。 競技者,競技支援要員およびその他の人が関与する紛争 2.各加盟団体は,個別の規則または規定に別段の定めがない限り,ドーピ ングに関連する事案か否かに関わらず,競技者,競技支援要員またはその 加盟団体の管轄下にあるその他の人が関わるすべての紛争は,加盟団体自 ら構成または承認する関連の聴聞機関の聴聞会に付託されなければならな い旨,自らの憲章の条項に記載しなければならない。そのような聴聞会は 以下の原則を遵守しなければならない。即ち,公平で偏りのない聴聞機関 における時宜を得た聴聞を受ける権利,自らに対する嫌疑の内容を知らさ れる権利,証人を召喚および尋問する権利を含め証拠を提出する権利,弁 護士と通訳(その個人の費用で)に代理させる権利,および適切な時期に, 理由を付した書面により決定を受ける権利。紛争となっている事案が,懲 罰とは関連性のない事案の場合は,関連の聴聞機関は,仲裁パネルを構成 するものとする。 3.本規則第3章に規定したアンチ・ドーピング規則違反の場合は,加盟団 体は本規則第38条に定められた懲罰手続を適用しなければならない。その 加盟団体は,その決定事項を,決定後5就業日以内に,IAAF に書面で知 らせなければならない(また,当該決定の英語またはフランス語による理 由書のコピーを IAAF に送付しなければならない) 。 4.国際競技会と国内競技会に対する資格剥奪について定めた本規則第22条 に違反する事案の存在が申し立てられた場合(ただし,本規則第22条第1 項(e)の違反を除く)は,加盟団体は,以下の各号に定めた懲罰手続きを適 用しなければならない。 (a)申し立ては書面にまとめ,競技者,競技支援要員,またはその他の人 が加盟している加盟団体へ送付しなければならず,加盟団体は,時機 - 329 - を逸せずにその事案の事実関係について調査しなければならない。 (b)上記の調査の結果,もし加盟団体が資格剥奪の申し立てを裏付ける証 拠があると考えるならば,加盟団体はただちに競技者または関係する その他の人に対し,提起されている嫌疑の内容,および資格剥奪に関 する決定がなされる前に聴聞を受ける権利があることを通知しなけれ ばならない。もし競技者またはその他の人が,加盟団体またはその他 の関係機関に対して,通知を受けてから14日以内に聴聞会を希望する 旨を書面で意思表示しなかった場合は,その競技者は聴聞を受ける権 利を放棄して,本規則第22条の関連条項に違反したことを認めたもの とみなされる。 (c)もし競技者またはその他の人が,聴聞を受けることを希望する旨意思 表示した場合は,すべての関連する証拠は参加資格が疑われている本 人に提供され,本規則第60条2項に定めた原則を遵守した聴聞会が, 本規則第60条第4項(b)にある嫌疑の内容の通知後2カ月以内に開催 されなければならない。加盟団体は聴聞会の期日が決まり次第,IAAF に通知し,IAAF はその聴聞会にオブザーバーとして出席する権利を 有する。IAAF がそのような資格で聴聞会に出席すること,または IAAF の当該事案に対するその他のどんな係わり合いも,IAAF が, 本規則第60条24項に従い,決定に対して CAS へ上訴する権利に影響 を与えない。 (d)もし加盟団体の関連の聴聞機関が,証拠調べを行った後,競技者,ま たは関係するその他の人が本規則第22条に違反していると決定した場 合は,その聴聞機関は,その人に対し,カウンシルが作成したガイド ラインに定められている一定期間,国際競技会および国内競技会から の資格剥奪を宣言しなければならない(また,加盟団体は競技者また は関係するその他の人が聴聞を受ける権利を放棄した場合においても, 同様の宣言を行わなければならない)。 そのようなガイドラインがな い場合,その関連の聴聞機関は,その人の資格剥奪の適当な期間を決 定しなければならない。 (e)加盟団体は,決定が行われた日から5就業日以内に,その決定事項を IAAF に書面で通知しなければならない(また,当該決定の理由書の コピーを IAAF に送付しなければならない)。 5.加盟団体が,聴聞会の運営を,何らかの機関,委員会または裁定機関(加 - 330 - 盟団体の内部組織であろうと外部組織であろうと)に委ねる場合,または, その他の理由で,国の機関,委員会またはその加盟団体の外部の裁定機関 が,競技者,競技支援要員またはその他の人に本規則に基づく聴聞会の機 会を与える責任を有する場合は,当該機関,委員会または裁定機関の決定 は,本規則第60条10項との関係ではその加盟団体自身の決定と見なされる ものとし,同条項における“加盟団体”という言葉は,そのように解釈さ れる。 加盟団体と IAAF 間の紛争 6.各加盟団体は,個別の規則または規定に別段の定めのない限り,加盟団 体と IAAF の間で生じたすべての紛争をカウンシルに付託しなければなら ないという条項を自らの憲章の条項に記載しなければならない。カウンシ ルは,当該事案の状況に応じて,紛争の裁定手順を定めなければならない。 7.IAAF が,規則違反を理由に加盟団体の資格停止を求める場合は,加盟 団体に対し,資格停止の根拠について書面にて事前の通知が送付されなけ ればならない。また,憲章第14条10項に定められた手続きに従い,加盟団 体に対し,当該事案についての聴聞を受ける適切な機会が与えられなけれ ばならない。 加盟団体間の紛争 8.各加盟団体は,他の加盟団体とのすべての紛争をカウンシルに付託しな ければならないという条項を自らの憲章の条項に記載しなければならない。 カウンシルは当該事案の状況に応じて,紛争の裁定手順を定めなければな らない。 上 訴 9.ドーピングに関連する事案か否かに関わらず,本規則において上訴の対 象となるすべての決定に対し,以下に定めた条項に従い,CAS に上訴する ことができる。ただし,上訴された決定はすべて,別段の定め(本規則第 60条23項および24項参照)がない限り,上訴中も有効である。 10.以下の各号に掲げたものは,本規則において上訴の対象となる決定の例 である。 (a)加盟団体が競技者,競技支援要員またはその他の人がアンチ・ドーピ ング規則違反をしたと決定した場合。 (b)競技者が自分がアンチ・ドーピング規則を違反したという加盟団体の 決定を受け入れるが,資格剥奪期間の短縮を正当化する例外的な状況 - 331 - がその事案に存在しない旨の,本規則第38条第18項に基づくドーピン グ再調査委員会の決定の見なおしを求めようとする場合。 (c)加盟団体が競技者,競技支援要員またはその他の人がアンチ・ドーピ ング規則違反をしていないと決定した場合。 (d)検査結果が禁止物質の存在または禁止方法の使用を示しながら,加盟 団体が本規則第38条7項に反して,適当な期間内に競技者に対し聴聞 会を開催することを拒否またはしそこなった場合。 (e)IAAF が,本規則第34条第5項(a)に基づき国際的レベル競技者に TUE を許可しない決定をした場合。 (f)IAAF が加盟団体の規則違反に対して,制裁措置を発した場合。 (g)加盟団体が競技者,競技支援要員またはその他の人が本規則第22条に 違反していないと決定した場合。 11.ドーピングに関連する事案か否かに関わらず,国際的レベル競技者(また は彼らの競技支援要員)が関与する事案,または国際競技会で発生した事 案,または規則違反により加盟団体がカウンシルから制裁を受ける事案に 関する加盟団体の関係機関または IAAF(適切であれば)の決定に対して は,本規則第60条25項から30項に定める規定に従い,CAS に対してのみ上 訴することができる。 12.ドーピングに関連する事案か否かに関わらず,国際的レベル競技者(ま たは彼らの競技支援要員)が関与していない事案,または国際競技会で発 生した事案ではない場合に関する加盟団体の関係機関の決定に対しては, 下記の本規則第60条15項に従い,その国の再調査機関に上訴することがで きる(ただし,本規則第60条17項が適用される場合を除く)。 各加盟団体は,以下の原則を重んじる国レベルでの上訴手続きを適切に 行うものとする。即ち,公平で偏りがなく独立した聴聞機関における時宜 を得た聴聞を受ける権利,弁護士や通訳(上訴人の費用で)に代理しても らう権利,および適切な時期に,理由を記した決定を書面で受ける権利。 国の再調査機関による決定に対しては,本規則第60条第16項に従って, CAS に上訴することができる。 決定に対して上訴する権利がある当事者 13.国際的レベル競技者(または彼らの競技支援要員)が関与する事案,ま たは国際競技会で発生した事案に関する決定に対しては,以下の各号に掲 げる当事者は,CAS に上訴する権利を有する。 - 332 - (a)決定の名宛人たる競技者またはその他の人 (b)決定の他方当事者 (c)IAAF (d)IOC(その決定がオリンピック大会に関する参加資格に影響する場合) (e)WADA(ドーピング関連事案のみ) 14.規則違反により加盟団体を制裁する旨のカウンシルによる決定に対して は,影響を受ける当該加盟団体は,CAS に上訴する独占権を有する。 15.国際的レベル競技者(または彼らの競技支援要員)が関与していない事 案か,または国際競技会で発生した事案ではない場合に関する決定に対し て国レベルの再調査機関に上訴する権利を有する当事者の範囲は下記の者 でなければならない。 (a)決定の名宛人たる競技者またはその他の人 (b)決定の他方当事者 (c)加盟団体 IAAF は,加盟団体の国レベルの再調査機関に決定を上訴する権利は有 しないが,オブザーバーとして国レベルの再調査機関の聴聞会に出席する 権利を有する。 そのような資格で聴聞会に IAAF が出席することは,IAAF が,国レベ ルの再調査機関の決定に対して,本規則第60条第16項の定めに従い CAS に上訴する権利に影響を与えない。 16.以下の関係者は,国レベルの再調査機関の決定に対し,CAS に上訴する 権利を有する。 (a)IAAF (b)WADA(ドーピング関連事案のみ) 17.国際際的レベル競技者(またはその競技支援要員)が関与していない決 定について、IAAF および WADA(ドーピング関連事案のみ)は、規則第 60条の規定に従い、下記の状況のいずれかであれば、加盟団体の関連機関 の決定を直接 CAS に上訴する権利を有する。 (a) 加盟団体が国レベルで適切な上訴制度を持たない。 (b) 上記の第 60 条 15 項における当事者のいずれによっても加盟団体の国レ ベルの再調査機関になされる上訴がない。 (c) 加盟団体の規則がそのように規定している。 - 333 - CASへの上訴における被上訴人 18.以下に別段の定めがない限り,原則として,本規則に基づく CAS への 上訴において被上訴人となるのは,上訴の対象たる決定を行った者とする。 19.本規則第60条10項(a), (d)または(g)に基づき CAS へ事案が付託さ れる場合は,上記各号に該当する加盟団体がそれぞれ被上訴人となる。 し かし,もし本規則第60条10項(a)に基づく上訴において,上訴人が本規則 第38条17項に基づいてドーピング再調査委員会が下した例外的な状況の存 否についての決定の再調査を求める場合は,その上訴に対する被上訴人は 上記(a)号に該当する加盟団体および IAAF とし,両者は合同で仲裁人 を選任する。 もし誰をその選任の仲裁人にするかについて両者の意見の相違があれば, IAAF による仲裁人の選択が優先する。 20.本規則第60条10項(b),(e)または(f)に基づき CAS へ付託されるすべて の事案において,IAAF が被上訴人となる。 21. 本規則第60条10項(c)に基づき CAS へ付託されるすべての事案において, 該当する加盟団体と競技者が被上訴人となる。 22.IAAF または関連の加盟団体は,CAS に付託された上訴における当事者 でない場合であっても,適切であると考えるならば,当該 CAS における 聴聞会に参加することができる。 IAAF による CAS への上訴 23.ドーピングに関連する事案を CAS に上訴すべきかどうかについての IAAF の決定は,ドーピング再調査委員会が行う。ドーピング再調査委員 会は,適切であれば,前記決定と同時に,CAS の決定が出るまで当該競技 者を再度資格停止にすべきか否かを決定する。 24.ドーピングに関連しない事案を CAS に上訴すべきかどうかについての IAAF の決定は,カウンシルが行う。カウンシルは,適切であれば,前記 決定と同時に,CAS の決定が出るまで当該競技者を資格停止にすべきか否 かを決定する。 CAS における上訴手続き等 25.カウンシルが別段の定めをしない限り,上訴人は,上訴対象となる決定 の理由を書面(IAAF が上訴人となりうる場合は英語またはフランス語に よる)で通知された日から30日以内に,CAS に対して上訴状を提出しなけ ればならない。 - 334 - 上訴人は,上訴状の提出期限から15日以内に,CAS に対して上訴理由書 を提出しなければならない。また,被上訴人は,上訴理由書の受付後,30 日以内に,CAS に対して答弁書を提出しなければならない。 26.CAS に付託されたすべての上訴(本規則第60条27項に定める上訴の場合 を除く)においては,当該事案で提起されたすべての論点について,再度, 新たに審理するものとする。そして,もし,CAS パネルが,加盟団体の関 連裁定機関または IAAF の決定に誤りがあるか,または IAAF の決定が手 続きの適正を欠いたものであると判断した場合は,CAS パネルは加盟団体 の関連裁定機関または IAAF の決定を,CAS パネル自らの決定内容をもっ て置き換えることができる。 27.ドーピングに関連する事案における CAS への上訴が本規則第60条10項 (b)に基づいて行われる場合,または,上記上訴が本規則第60条10項(a)に 基づいて行われ,競技者が例外的な状況の存否についてのドーピング再調 査委員会の決定を再調査することを上訴の内容の1つとして求める場合は, 上記の例外的な状況の存否についての CAS における審理は,ドーピング 再調査委員会の審理の際に提出されていた資料の再調査および同資料に基 づく同委員会の決定の当否に限定される。CAS パネルは,以下の事項につ き確信を持った場合のみ,ドーピング再調査委員会の決定に介入する。 (a)ドーピング再調査委員会の決定が事実に基づいていない場合。 (b)ドーピング再調査委員会の決定が,同委員会が審理した従前の事案と 比較して著しく一貫性を欠いており,一貫性を欠いている原因が事案 の事実関係の相違によるものとして正当化できない場合。 (c)ドーピング再調査委員会の決定が,正当な再調査機関であればそうな らないような決定である場合。 28.IAAF が関与するすべての CAS における上訴において,CAS および CAS パネルは,IAAF の憲章,規則と規定(手続きガイドラインを含む)に拘 束される。現在施行されている CAS の規則と IAAF の憲章,規則および 規定の間で不一致があれば,IAAF の憲章,規則および規定が優先する。 29.IAAF が関与するすべての CAS における上訴において,準拠する法律は モナコ公国の法律とし,当事者が別に同意しない限り,仲裁は英語で行わ れる。 30.CAS パネルは,適当な事例においては,CAS への上訴で発生する CAS の費用またはその費用に対する負担金を当事者に裁定することができる。 - 335 - 31.CAS の決定は,最終的なものであり,すべての当事者とすべての加盟団 体に拘束力があるとともに,CAS の決定には上訴できない。CAS の決定 はただちに発効し,すべての加盟団体は,それが有効であることを保証す るために,あらゆる必要な行動をとらなければならない。 CAS へ付託された事実および CAS の決定事項は,事務総長からすべての 加盟団体に通知されなければならない。 - 336 -