Comments
Description
Transcript
燃料転換の現状と検討の方向性
資料5 燃料転換の現状と検討の方向性 1.現状 (1)燃料転換の実施状況 ○燃料転換とは、例えば、発電燃料を石油から石炭へ転換するために、ボ イラーや燃料設備等の改造工事を実施するものを指す。 ○このような燃料転換は、これまでにも実施事例が見られる。 ○燃料転換を実施する理由として、公表資料では燃料コストの削減(経済 性)、燃料調達の安定性、環境負荷低減等が挙げられている。 ○昨年度ヒアリング結果から、燃料の選択はガスパイプラインの整備状況、 石炭の荷揚げ可能な場所・港湾埠頭の有無など、立地条件や施設整備 状況の影響も関わる。 1 1.現状 (1)燃料転換の実施状況 ○平成以降に転換後運転開始が行われた(予定されている)発電所の例 を以下に示す。 発電出力 (kW) 転換後 運転開始時期 主燃料 転換理由 (公表資料に記載された内容) 120万 重油・原油 → 石炭 平成32年度 調達の安定性、経済性 75万 重油・原油 → 重油・原油・LNG 平成28年度 - 約42万 軽油 → LNG 平成27年 環境負荷低減、経済性向上 126万 軽油 → 都市ガス 平成26年 コンバインドサイクル発電方式への変 更による燃料使用量抑制 35万 石油 → 石油・LNG 平成26年 CO2削減、燃料コスト削減 35万 重原油 → LNG 平成22年 CO2削減対策 34万 重油・原油 → LNG 平成18年 - LNG → 石炭 平成16年 - 25万 重油・原油 → 石炭 平成15年 - 35万 重油 → 石炭 平成7年 - 35万 重油 → 石炭 平成4年 - 約16万 注)上記の他確認できる範囲では、昭和53年以降、8件の燃料転換事例がある。 出典:電力需給の概要、各社プレスリリース 2 1.現状 (2)設備更新の可能性 ○重油原油焚ボイラーは、オイルショック以前に設置された40年以上経過して いる設備が非常に多い(設備更新の可能性がある)。 ○一般的に、火力発電所は50年程経つとプラント全体の設備更新を行う(大幅 な発電効率向上による投資回収)。ただし、LNGや石炭の基地が近くにある 場合、短期的な投資回収を目的として燃料転換のみ行う場合がある。 なお、1979年の第二次オイルショックを受けて開催された第3回国際エネルギー機関 (IEA)理事会において「石炭利用拡大に関するIEA宣言」が採択され、ベースロード用石油 火力の新設禁止等が盛り込まれた指針が示された。 ※認可出力11.25万kW以上の発 電所に設置されたボイラーを 対象とした 出典:火力原子力発電所設備要覧 (平成23年改訂版) (火力原子力発 電技術協会)より作成 3 1.現状 (3)燃料種別の燃料費の違い ○発電燃料を転換する事例として、石油から石炭やLNGへの転換事例が 従来から見られる。 ○設置後の経過年数が長く、ボイラーの更新時期を迎えている石油火力 発電所は一定数存在することから、電力自由化による競争等も背景に、 今後も、設備更新にあわせて燃料転換を行う事例が発生する可能性が ある。 (参考)燃料輸入価格の推移 円/千kcal 8 原油 7 LNG 6 5 4 3 2 一般炭 1 1975 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 0 出典:エネルギー・経済統計要覧 2015年版(日本エネルギー経済研究所 計量分析ユニット) 4 3.燃料転換とアセス制度 ○環境影響評価法の対象となる火力発電所に係る事業の種類は、環境影 響評価法施行令別表第1の第5号において「発電設備の新設を伴う火力 発電所の変更の工事」と規定されており、原動力設備のみの変更(ボイ ラーの改造等であって、石炭、石油、液化ガス等の燃料の種類の変更を 含む)は環境影響評価法の対象とならない。 ○なお、環境影響評価書を公告する前、または公告した後であって着工前 に燃料の種類を変更した場合は、アセス手続を再実施する必要がある (環境影響評価法施行令第17条で準用する第13条、第18条)。 環境影響評価法施行令 別表第1(一部加工) 事業の種類 第一種事業の要件 第二種事業の要件 電気事業法第38条に規定す 出力が15万kW以上である火力発 出力が11万2,500kW以上15万kW未 る事業用電気工作物であって 電所(地熱を利用するものを除く。)の設 満である火力発電所(地熱を利用するも 発電用のものの設置又は変 置の工事の事業 のを除く。)の設置の工事の事業 更の工事の事業 出力が15万kW以上である発電設 出力が11万2,500kW以上15万kW未 備の新設を伴う火力発電所(地熱を 満である発電設備の新設を伴う火 利用するものを除く。)の変更の工事の 力発電所(地熱を利用するものを除く。)の 事業 変更の工事の事業 5 4.課題認識 ① CO2排出削減対策、大気環境保全対策等 • 燃料転換では、現行法上アセス対象とならないものの、環境負荷の変化 が想定される。 • 仮に石油から石炭へ燃料が転換される場合、一般的に、CO2排出量の増 加、大気汚染物質の増加、石炭焼却灰の増加、貯炭場からの粉じん飛散 等の発電所周辺地域への環境負荷の増加の可能性が懸念される。 ②住民とのコミュニケーション • アセス制度では説明会等による住民意見の収集や住民とのコミュニケー ションの機会が設けられている。燃料転換の場合、これらは事業者の自 主的な対応に委ねられるが、十分かどうかわからず、その対応にばらつ きがある可能性もある。 ○なお、近年では石炭+バイオマス混焼も増えているが、将来的には、計 画時からのバイオマス混焼率の減少や、石炭専焼への転換の可能性も あり得る。 6 5.今後の対応方針 ①調査の実施 ○今後、どの程度、燃料転換事例がありうるかの見込み、またそれらの環境 負荷について、火力発電所の立地条件や事業者に対する調査等により把 握する。 資料等調査 ○法アセス対象規模の石油火力発電所の立地状況等 ○リプレースではなく燃料転換を実施した(今後の実施を計画している)理由 ○燃料転換実施前後の環境負荷の把握 ○燃料転換を実施した(する)際の自主アセス及び地元説明の実施状況 ○環境保全対策の検討内容や実施状況 ②施策の検討 ○調査の結果を踏まえつつ、今後のあるべき対応策について検討する。 7