...

15 新潟水先区水先人会

by user

on
Category: Documents
78

views

Report

Comments

Transcript

15 新潟水先区水先人会
15
新潟水先区水先人会
[新潟港]
新潟港は江戸時代に港町としての基礎が築かれ、明治時代に開港した。
現在の新潟港は信濃川河口にあり、客船、フェリーボート、材木船、雑貨船及び官庁船等の入
出港がある「西港区」と、昭和 44 年に掘込み港湾として整備・開港され、コンテナ船及び LNG
船等の入出港がある「東港区」から成っている。
気象・海象
① 風の影響
東港区は防波堤の角度が約 27 度方向を指しているため、北西方向の風に対しては強い。し
かし東の方向に対しては無防備のため、低気圧の通過で北から北東よりの風が吹くと波及び
うねりが港内に入り、被害が出やすい。
② 突風
経験として、LNG 船離岸中に突然 30m/s ぐらいの突風が吹き始めたことがある。
沖を見ると白波が立ち、数分後に急に風が吹き出し、以降はそのまま吹きっぱなしであっ
た。このときは桟橋から離して回頭しようとしていたので、とにかく元の場所に戻すことだ
けを考えて操船し、桟橋に戻してからはタグボートで押し付けさせて突風が収まるのを待っ
1
た。
③ 海流・潮流・河流の影響
i)
新潟港沖
新潟港の沖では、対馬海流の分流が最大で 0.5 ノット程度で流れるが、風の向きによっ
ては逆に流れることもある。
ii)
西港区(図 15-1 参照)
図 15-1 新潟港西港区
西港区は信濃川の河口港のため、上流域で大雨が降ると水量の大幅な増加や港に土砂が
堆積し船舶の航泊に影響していたが、上流に『大河津分水路』
(大正 11<1922>年通水)と
新潟港に比較的近い所に『関屋分水路』
(昭和 47<1972>年通水)が整備され、この 2 か所
で水量の調整が行われているため、現在では港に流れ込む流量は一定量に調整されている。
(分水路については、図 15-2 を参照のこと。
)本来ならば大雨が降ると河川の流量が増え
港に大量の雨水が流れ込むはずであるが、新潟港では前述の 2 つの分水路を使って大雨に
よる増水分を直接海に流すことにより、港に流れ込む河川の水量を約 300 ㎥/s 程度に調整
している。
(また増水とともに増える土砂の流量もこの分水路によって緩和されている。し
かし土砂の堆積は日々続いているため、ドレッジャーによる港内の水深維持は欠かせない
作業となっている。一年間で西港区へ流入する土砂の量は、新潟県庁の建物<地上 18 階・
2
地下 1 階・高さ 87.3m>を升にしてほぼ 2 杯分程度といわれている。
)
図 15-2 信濃川と大河津分水路及び関屋分水路
西港区は河口に位置するため、河川の下層部では上流に向かって楔状に海水が入り込ん
でおり(これを「塩水楔」という。)、上層は淡水、下層は海水の構造になっている。信濃
川河口の臨港の信号所横(水深約 11m)付近では水面から約 4m が淡水で、その下約 7m は海
水となっている。
一般に、塩水楔の上層にある淡水部分では上流から下流に向かう流れがあるが、下層の
海水部分には大きな流れはない。このため西港区へ入港する船舶は、自船の喫水の大小に
よって川の流れを受ける度合いが異なるので注意を要する。河口での流速は、これまでに
最大で 1~1.2 ノットが計測されたことがある。
「山の下ふ頭北側岸壁」は川の流れに平行であるが、ときには川の流れが蛇行すること
もあり、着岸時に船体が岸壁に寄せられることがあるので注意を要する。なお当岸壁沖の
川幅は約 300m であるが、そこに長さ 240m の客船が入る。
また船を「出船」にする場合は、川の流れによって下流に押し流されながらの回頭とな
るので注意を要する。
3
iii) 東港区(図 15-3 参照)
図 15-3 新潟港東港区
東港区の防波堤内では、操船に影響を及ぼすような強い潮流はない。
④ 長周期波の影響
長周波波は、特に東港区に着桟中の船舶に影響を及ぼす。この長周期波が発生するタイミ
ングは、富山湾の「寄り回り波」が発生するときと一致する場合が多い。
富山湾で有名な「寄り回り波」は、北海道の東方海上に発達した低気圧が停滞して北海道
の西の海上で長時間にわたり北よりの暴風となったとき、高い波が発生する。この高い波が
「うねり」となって日本海を南へ伝わることによって発生する。
この波は、低気圧が遠ざかり風や波が収まっても沖合には「うねり」となって残る。
富山湾から新潟南部にかけては海岸近くまで深い「近深か」のため、上記の「うねり」が
寄り回り波となり大きな影響を受けるが、新潟港付近は遠浅になっているためそのエネルギ
ーは減衰される。しかしいわゆる「底うねり」として、波高が小さく周期の長い波として残
る。
この「底うねり」のために、東港区では波高が 20~30cm 程度でも波の周期が 7 秒を超える
と、係留中の船舶の前後移動と横揺れが大きくなり、Loading Arm を使って荷役する LNG 船は
桟橋に係留していられなくなる。経験的に周期 7 秒が限界で、8 秒以上では LNG 船は着桟させ
ないようにしている。一方波高が 40cm 程度でも、周期 6 秒の場合は問題なく着岸できること
もある。
4
この「寄り回り波」が原因の長周期波による着桟中の船舶の前後移動と横揺れは、冬季に
限って発生する。
なお前述の LNG バースへの着離桟の判断については、東港区の LNG 桟橋前の自動記録計で
波の周期を計測しており、入港の可否をバースマスター、船社担当者及び代理店等が入船前
会議を行い決定している。
⑤ 台風の影響
台風が日本列島に沿って新潟付近を北東に進むときは、(1)台風が海上を進む場合、(2)海
岸線に沿って進む場合及び(3)山側を進む場合によって影響の度合いが変わってくる。
(1)台風が海上を通過する場合、陸から海に向かう風となる。
(2)海岸線に沿って進む場合、海岸線の真上を北東方向に通る台風が最も影響が大きい。
(3)海岸の南(山側)を台風が通過する場合、海からの北風になる。
台風が新潟を通過し、秋田・山形に台風の中心が達したときに、吹き返しの風が強くなる
こともあり、注意を要する。
沖出しして台風を避航する場合は、佐渡島の周囲を自船が島影になるように操船しながら
台風を避けている例がある。
⑥ 視程
霧による視界不良は年間 2 日程度である。
しかしながら冬は「雪」で視界が妨げられることがある。
⑦ 雷
雷は少なく、運航を阻害するほど発生しない。
錨泊
海上保安庁は「冬季及び荒天時の錨泊は推奨しない。
」との見解である。
また冬季以外でも、その日に着桟する船舶の時間調整のための錨泊は認められるが、翌日着桟
する船舶は沖出しの上、海岸から 12 マイル以上離れていなければならない。
漁具の設置状況
波浪観測塔灯近辺から東港区にかけて
(図 15-4 参照)、
漁業施設(網、
ブイ、旗、Fishing Marker、
ボンテン等)が、特に冬季に多く設置されているため、船舶は大きく迂回して通らなければなら
ない。
5
図 15-4 波浪観測塔から新潟港東港区にかけての海域
水先人の乗下船
風波が大きいときに水先人が乗下船する際は、本船に要請して回頭してもらい、風波の影響を
受けない平穏な海面を作るようにしている。
例えば冬季で北西の風が強い場合、本船を風に立てるように真北程度まで転針してもらった後、
乗下船の直前に大きく舵をとって回頭すると、風下舷側でうねり及び波が消えるため、本船が回
頭中に乗下船するのが安全である。
6
Fly UP