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かけはし会報 Vol.30 2013年 秋冬号

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かけはし会報 Vol.30 2013年 秋冬号
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
Vol.30
関西帰国生親の会かけはし
[email protected]
今年も 1 年近くの準備、取材、作成を経て、
『帰国生への学校案内《関西》2014』を発行することができま
Vol.26
関西帰国生親の会かけはし
[email protected]
した。学校の訪問記事や、出国から帰国にわたる教育情報などがお役に立ちましたら、国内・海外の会員一
同、嬉しいです。
恒例のセミナーや「レッツトーク」の開催ほか、7 月には公益財団法人海外子女教育振興財団主催の「帰国生
のための学校説明会・相談会」にて初めてブース参加をさせていただきました。渡航前や一時帰国中、帰国後
の方々と悩みを分かち合う貴重なひとときとなりました。また、今年度はバイエル・ケア財団のボランティ
アリングプログラム支援において、海外赴任先や帰国後の生活・教育に関する情報を提供する会の取り組み
に対し JAPAN LOCAL AWARD を受賞いたしました。かけはしが 29 年にわたってこれらの活動を続けてこられま
したのも、ご助力くださる多くの方々のおかげです。温かなご支援に心より感謝申し上げます。
会に寄せられるご相談の中には、2 度目 3 度目の海外転勤に関するものもあります。再度家族が同行する
かどうかの迷いに直面した会員も少なくありません。会報第 30 号では、教育相談員へのインタビュー、海外
駐在同行を経験された方々へのアンケート調査に基づくかけはしリポート、会員の体験談などを通して、再
赴任の心構えや家庭の決断を紹介いたします。また、ロンドンで日本人の心の問題に向き合われている医師
に海外生活における心のケアについて在英会員が取材いたしました。海外赴任は環境や家族の在り方などの
変化を伴いますが、今号がさまざまな問題への対応のご一助になることを願っております。
関西帰国生親の会かけはし代表
青木
真子
目 次
*
ご挨拶
*
特集
関西帰国生親の会かけはし代表
『 2 度目、3 度目の海外赴任
真子
1
教育相談員
森本
昭憲
2
精神科医
赤沼
のぞみ
5
~家族の選択~ 』
「再び海外赴任が決まったら」
海外子女教育振興財団
「海外生活でストレスと折り合うために」
「また海外赴任!
青木
さて、どうしますか?」
*
かけはしリポート
(第 8 回)
*
異文化でドッキリ! <お祭り・パーティー編>
*
海外の学校を紹介します
*
海外でのお稽古
*
編集部より・「レッツトーク 2013 秋」
*
会員のつぶやき・編集後記
かけはし会員 6 名
「再びの海外赴任
-あなたは同行しますか?」
8
11
14
「MY PAST TIMES」
足つぼマッサージのうれしい効能
かけはし会員
MANAdaBANANA
16
宮本みゆき
17
実施報告
18
19
* 『帰国生への学校案内《関西》2014』のお知らせ・かけはし賛助会員のみなさま
20
(敬称略)
1
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
「再び海外赴任が決まったら」
公益財団法人
海外子女教育振興財団 関西分室
教育相談員
森本 昭憲 先生
奈良市立小・中学校で教頭・校長、奈良市小学校長会長を歴
任。その間兵庫教育大学大学院修了。兵庫教育大学、皇學館大
学、奈良教育大学で非常勤講師。1986 年よりスラバヤ日本人
学校教諭。1995 年よりウエリントン補習授業校教頭。2007 年
よりサンディエゴ補習授業校校長(シニア派遣)。2011 年より
海外子女教育振興財団 関西分室で教育相談員として勤務。
―
再度の海外赴任が決まって、どのような赴任形態にすればよいのか悩まれる方もいらっしゃると思いま
すが、そのような時にどのようなアドバイスをなさっていますか。
◆ お勧めは家族みんなで生活することです。家庭には慈しむ、包み込むという優しいイメージの母性性と、
叱咤する、リーダーシップをとるという厳しいイメージの父性性の両方がかみ合うのが理想だからです。
そうはいっても、再度の赴任の時期となると、子どもが成長して中学生で「高校受験期を迎える」、あるい
は高校生で「インター校の選択」となることが多く、今まで以上の困難が伴うと思います。親の考えだけで
なく、成長した子ども本人の気持ちを十分尊重する必要があると思います。ご家族みんなでよく話し合っ
て決められるのが一番よいでしょう。決めたら親も本人も覚悟を決めて行ってほしいですね。お子さんが
小学生でしたら、あまり躊躇せずに、一緒に行かれたらいかがですか。渡航地では、日本人学校は言うま
でもなく、現地校やインター校でも比較的なじみやすいからです。子どもが思春期で、父親の力が一番大
事なときに、やむを得ずお父さんが単身で行かれた場合、お母さん一人で子育てすることになるので、お
母さんの負担が大きく、苦労されることでしょう。互いに連絡を取り合って頑張ってほしいと思います。
―
中学生、高校生を帯同する海外赴任について、子どもの将来を考えたときのメリットとデメリットはど
のようなことがありますか。
◆
思春期では何もかもが記憶に残る年齢で、ものの見方や考え方の視野が広くなり、国際的な感覚が身に
つくと思います。海外体験というのは人生の長いスパンでみるとメリットになってもデメリットにはなら
ないはずです。デメリットとなるのは、親から説得されて本人がしぶしぶ行くことになった場合、適応で
きずうまくいかずに、親のせいだと責任転嫁して、逃げたり挫折感を味わったりすることです。これから
歩む人生を考えながら、親と子どもが十分に話し合いをして、本人が確たる目的意識を持てば、デメリッ
トにはなりにくいでしょう。帯同するからには、親はしっかり精神面で支えてあげて、本人は必死になっ
て勉強する覚悟を決めることだと思います。
―
高校進学を考えて、中学生くらいで日本人学校からインター校や現地校へ移る例が多いと聞きますが、
その時期はいつがよいと思われますか。そのためにどのような準備をすればよいでしょうか。
◆
お父さんの任期が、明らかに子どもの高等学校までかかる場合、そして、赴任先にはインター校しかな
いときには、可能な限り早い時期にインター校に編入したほうがよいでしょう。学年が低いほど英語にな
じみやすいし、在籍期間が長いほど英語が上達すると思えるからです。インター校への準備としてお勧め
したいのは、中学生ならば、英語の教科書を暗唱することです。きちんとした文章で書かれていますから、
現実の省略された会話にも役立ちます。市販のリスニング教材やテレビ、ラジオなどの英会話講座、洋画
2
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
などで耳慣れすることも有効でしょう。インター校や現地校へ進んだ場合は、通っている学校の勉強に時
間が割かれてどうしても日本の教科学習がおろそかになりがちです。お子さんが帰国後の学習に困らない
ためにぜひとも並行して日本の教科学習もしてほしいです。財団の通信教育は国語、数学、理科、社会の
4 教科ですが、基礎基本が身につくように工夫されていますので活用してもらえるとよいと思います。イ
ンター校へ編入しても数カ月でお父さんの任期が終わると分かっている時には、日本人学校中学部 3 年生
を卒業見込みで、日本国内の高校を受験したほうがよいとアドバイスしています。
―
財団にあるインター校などの資料はどのようにして入手されているのでしょうか。
◆
財団が補習授業校へ調査依頼して、児童生徒が多く通っている現地校やインター校から情報をもらいま
す。また、財団の担当者が直接インター校へメールや電話で問い合わせたり、外務省の在外公館が調査を
したりします。
―
中学生で帰国する場合、帰国時期はいつごろがよいでしょうか。また、反対に避けた方がよい時期があ
れば、教えていただけますか。
◆
日本人学校の中学 3 年生の場合は、早期に帰国しなくても、卒業見込みで日本人学校の調査書の評定、
いわゆる内申点がもらえます。そうすると、日本の高校を「一般入試」で受験できますし、「帰国生入試」も
可能です。また、志望校の出願時期に間に合うように「一時帰国」して受けることもできます。
インター校や現地校に通っていた場合は、日本の中学校へ編入後、卒業見込みで高校を受験することに
なります。中 3 の夏ごろ帰国して 2 学期に編入すると、内申点がつくので国内中学校卒業見込みで「一般入
試」でも「帰国生入試」でも受験できます。また、志願する高校の出願時期までに帰国して(概ね冬頃)日本の
中学校卒業見込みで「帰国生入試」を受けることができます。次に、インター校や現地校のグレード 9(日本
の中学 3 年生相当)を修了して 6 月に帰国し、高校 1 年生への「編入試験」を受けて 2 学期から高校生になる
こともできます。帰国を避けた方がよい時期は、高校入試や中学校の卒業式が終わるころから、グレード
9 の修了前です。日本の中学校も卒業していない、グレード 9 も修了していないとなると、基本的には日
本の高校受験の資格がありませんので十分気をつけてほしいです。
出願時期や選考方法など詳細については、公立校は教育委員会、私学は志望校へ直接問い合わせるなど
して、間違いのないようにしてほしいと思います。9 年間の教育課程を修了するという大前提をお忘れに
ならないことです。
―
子どもを日本に残して夫婦で海外赴任をする場合、親として子どもの日常が気がかりで、つい過干渉に
なりインターネットなどで頻繁に呼びだし迷惑がられますが、連絡はとり続けたほうがよいでしょうか。
◆
子どもを残して赴任するというのは思春期以上の子どもの場合ですね。子どもが大きくなっていても連
絡は取り続けたほうがよいと思います。思春期は親や大人の権威を嫌う時期ですから、細かい指示出しは
子どもも嫌がるでしょう。「~しなさい」「~はだめよ」などの指示や命令、禁止などお説教じみた言葉が多
いからではないでしょうか。親ですから我が子のことが気になるのは当たり前ですが、しつこいと返事も
来なくなるかもしれませんね。両親の生活の様子や現地の話題を入れながら、言いたいことだけを簡潔に
伝えるような工夫が必要でしょう。大学生ともなると連絡は頻繁でなくてもよいでしょう。
―
海外駐在に限らず、単身赴任の留守家族では、母親が子育てを全て背負い込むことが多いと思います。
父親はどのような形で母親をサポートすればよいでしょうか。
◆
家庭における、お父さんの役割は大きいと思います。単身赴任で行ったご自分も辛いでしょうが、お母
さんもひとりで大事な子どもを育てるわけですから大変です。大方、子どもは受験期だろうと想像します
ので、お父さんはお母さんにねぎらいの言葉をかけ、「子どものことで困ってないか」と気遣うことが一番
大事だと思います。お父さんに悩みを吐き出せることが、お母さんにとってもありがたいし、お父さんも
3
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
家庭のようすがわかるでしょう。お母さんを追いつめるような言葉は控えるようにしたいですね。そして、
日頃は優しくてもここぞというときの出番を忘れず、父親として父性性を発揮して対応することです。ま
た、子どもの実態を見ていないお父さんが、教訓的な話をするとお母さんはあまり気持ちのよいものでは
ありません。お母さんの話の裏に隠されている悩みにじっと耳を傾けることが大切ではないでしょうか。
子どもの学校生活の悩みには、躊躇なく担任の先生などに相談するのがよいでしょう。
―
単身赴任の場合、日本の家族へ、また日本の家族からどのようなサポートがあると望ましいとお考えで
しょうか。また、気をつけなければならないことはありますか。
◆
今はメールやインターネット通話などを気軽に利用できるのでよいですね。子どもには、赴任先のよう
すを伝えたり、学校や部活動のようすを聞いたり、時には「同じ年の頃には○○で苦労したよ。」など気軽
な話をするのがよいのではないでしょうか。お母さんには「子育ての労」を、お父さんには「仕事の労」を、
お互いにねぎらうという気遣いがあるとよいですね。頭ごなしに教訓をたれるのは避けたいものです。お
父さんも子どもの顔や姿を見ると疲れがとれることでしょう。
―
2 度、3 度と海外赴任が予想されるご家庭では、海外での学校の選択や現地で身につけた言語保持、英語
習得について悩まれる方がいらっしゃいますが、先生はどのようにアドバイスなさいますか。
◆
任期が 2~3 年と短く、子どもの帰国時が幼稚園や低学年にあたるなら「母語の育成」の観点から、日本語
を重視した教育を選ぶことをお勧めします。今後も海外赴任が続くと予想されるなら現地校やインター校
も選択肢のひとつに入ってくると思います。お子さんの学年と仕事の任期によりますが、5 年以上の長期
にわたる場合や、日本人学校の高等部もない場合は、はじめから現地校やインター校を選ばざるを得ない
ということもおこるでしょうね。
一度身につけた外国語の保持として、小中学生対象に私どもは保持教室(関西は英語のみ)を開催してお
ります。遠隔地にお住まいの方には WEB サテライトコースもあります。英語の保持には、英語力に応じた
英語本の読書をお勧めしています。海外子女教育振興財団外国語保持教室アドバイザーの服部孝彦先生は、
外国語保持、英語習得には、「親は、本や映画・音楽、インターネットなどの利用で英語に率先して触れる
機会を多くして、子どもを積極的に英語に巻き込むことが大切」、「親が英語に対して好意的な態度を示し
続けること」という趣旨を述べられています。英語好きの家庭環境づくりを心がけることですね。
―
これから海外へ行かれる方や海外で暮らしている方へメッセージをお願いします。
◆
健康と安全に気をつけながら、「何でも見てやろう、聞いてやろう、知ってやろう」という気持ちが大切
です。その国の言葉はもちろんですが、歴史、地理、文化なども学ぶとその国がますます好きになるでし
ょう。そして、子どもには赴任国のネガティブな話題は避けるように気をつけてほしいと思います。
―
お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
先生の話にひきこまれて、ついつい長居をしてしまいました。インドネシア、ニュージーランド、
アメリカに赴任されているだけに、話題が豊富で、すべて納得してしまうことばかりです。子どもの
教育で気がかりなときは、ぜひとも相談にのっていただきたいです。これからも海外赴任を経験され
る多くのご家族を勇気づけ、そしてまた、帰国生の強い味方であっていただきたいと願っております。
森本先生が教育相談員をなさっている公益財団法人 海外子女教育振興財団から
全国版の学校紹介誌『帰国子女のための学校便覧 2014』3,333 円税別が発刊されています。
http://www.joes.or.jp/publish/binran.html
4
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
「海外生活でストレスと折り合うために」
精神科医
赤沼 のぞみ
先生
日本で医学教育を受け、精神科医として 8 年間勤務されました。
その後、2000 年からロンドンのキングス・カレッジで、てんかんお
よび神経精神機能についての臨床研究に携わり、2006 年よりロンド
ン南西部にある South London & Maudsley Foundation Trust という
精神保健専門の NHS トラストにおいて、精神科専門医(コンサルタン
ト)をなさっています。並行して、2007 年より日本クラブ北診療所
で週 1 回の精神科専門外来も担当されています。タンゴダンサーで
もあり、毎年アルゼンチンに踊りに行かれるそうです。
―
先生がロンドンで診療を行うようになったきっかけは何ですか。
◆
最初は 1 年の予定で「てんかん」についての研究留学で来ました。幸運なことに、プロジェクトに参加で
きて、あわせて 5 年間研究に関わりました。臨床研究を通じて医療の現場を目にするうちにイギリスでの
臨床に興味が湧き、2006 年からは臨床医として働いています。気がついたらすでにこちらに来てから 13
年近く経ちました。日英の医療の大きな違いは、制度そのものと、変化のスピードです。日本の医療は、
公費と自己負担をもとに、公・民両方の施設が必要な医療行為を積み上げていく形で機能しています。イ
ギリスでは医療は基本的に税金で賄われており、NHS(National Health Service イギリスの国営医療サー
ビス事業)が予算の枠内で医療行為を地域のニーズに合うように配分します。医療行為の基準が日本より
もはっきりしていてシステムがわかりやすいと思います。このダイナミクスの中で医療を行うということ
が結構自分には向いているのではないかと思います。
―
先生のお考えでは、海外で生活する日本人はどんな点でストレスを感じていると思われますか。
◆
海外生活につきものの「変化・違い」によるストレスがあります。言葉や文化、気候などの違いから受け
るストレスです。これらは渡航する前からはっきりとわかるものなので、心づもりをすることもできます
が、実際に相対してみると、適応するのは簡単ではありません。もうひとつは、今まであって当たり前の
ものがなくなることから受けるストレスです。職場の同僚や友達、家族など、日本で自分をとりまき、サ
ポートしてくれていた人から隔離されてしまうことによるストレスです。すぐに会えない、簡単に声が聞
けないなどといったサポートのネットワークを失うことです。愚痴を言い合える相手がいなくなってしま
うわけです。また人間関係だけではありません。スーパーやコンビニで簡単に買えた、おにぎりやお弁当
や惣菜、日本の食料や雑誌などが簡単に買えなくなってしまうなどということも目に見えないストレスを
引き起こします。住環境やサービスなどの違いなどもそうです。
―
海外生活を送ることでよくおこる心の病の事例と対処法をお聞かせください。
◆
一番多いのは「適応障害」です。気分が沈む、不安になる、身体の不調を訴える、パニックになる、外出
できなくなるなど、いろいろな症状がでます。そのほかには「うつ」もあります。ストレス要因が引き金に
なることもあります。日本でもないわけではありませんが、緯度の高い北欧などで日照時間が短くなる冬
にうつ状態になることがあります。いずれの場合も、自分のまわりで何が変化し、何が起こっているのか
を把握することが大事かと思います。休養と運動、規則正しい生活と気分転換になるような活動を行うこ
とをおすすめしています。マイナス思考にならないような考え方・行動を身につけるためのセルフ・ヘル
プの方法もあります。重症になることは多くありません。だいたい 1 回か 2 回のアドバイスで症状が緩和
5
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
されることが多いです。薬を処方するケースのほうが少ないです。
駐在員の場合、本社と海外支社との板挟みになり、現地採用の社員との軋轢などがストレス要因による
ことが多いです。駐在員夫人の場合、適応障害の背景には、「自分の都合で、外国にきているわけではない」
と思うことが多いようです。ご主人は、「仕事のために海外にいく」という意識がはっきりしていて、会社
で他者と関わることができます。しかし、奥さんは、海外生活における楽しみや意義、人間関係を自分で
作り上げていかなくてはいけません。決して「早く新しい環境に適応しなくてはいけない」と思うことはな
いのです。焦るから不安も大きくなってしまいます。慣れるには、時間がかかります。大抵の人は環境が
変わると、最初の 3 カ月ぐらいは緊張して夢中でがんばります。この後、少し慣れて落ち着いた時に、周
りが少しよく見えるようになり、不安が生じてきます。しかし、6 カ月から 1 年がすぎると、自分なりの
適応法をみつけることができるのです。
私は大人を専門としている精神科医なので、子どものケースに対応することはあまりありませんが、子
どもにも、適応障害や、成績低下や乱暴な行動といった行動上の問題が見られることもあります。このよ
うな時には学校の先生や、スクール・カウンセラーに主に関わってもらうといいでしょう。
―
海外で生活すると、母親は、家事だけでなく、日本ではあまり必要のなかった子どもの送迎、言葉や習
慣の違う現地のお母さんたちとの付き合いなどに疲れ、ついイライラして、子どもや夫にあたってしま
うという話もよくあります。このような場合の対処はどうしたらよいのでしょうか。
◆
「知識」は大きな助けになると感じます。制度や仕組みについての知識や、なぜそうしなくてはいけない
のかという理解ができていないためにストレスを感じることがよくあります。環境の変化などでストレス
を感じている時にイライラするのは誰にでもあることです。ただ、何がストレス要因なのか、何が問題な
のかという認識ができていると解決も早いです。カーッとなって八つ当たりしているときには頭が真っ白
になっているはずですから、この最中にはどうにもなりません。こういう時はあとで、自分の行動を思い
返して落ち込みがちです。少し落ち着いたときに、どうしてそうなったのか、次に同じような状況になっ
たらどうしたらよいのかと考える必要があります。イライラしたら、その場を離れる、部屋を出るといっ
たこともひとつの手です。またカーッとなってから行動に出るまでの時間をかせぐ方法を決めておくのも
よいかもしれません。深呼吸を 3 回するとか決めておきましょう。一度に全部うまくやろうするのは、ち
ょっとハードルが高すぎます。いい母親になろう、理想の母親像に自分を近づけようなどと思って、自分
に厳しいとよけいにイライラするのです。行動のパターンを変えるのには練習が必要ですし、時間がかか
ります。もっと自分に優しくしてもいいと思います。
―
父親が海外に単身赴任の場合、忙しさから、食生活が乱れて体調を崩すことがあるようです。このよう
な時にサプリメントなどで栄養補給をしたほうがよいのでしょうか。
◆
食生活は人間にとって大事なことです。料理をするということは買い物から準備、調理とかなり高度な
技術が要求されることなのです。日本でいつも奥さんに食事を作ってもらっていた人がいきなり、一人で
やれといわれても簡単にできるようにはなりません。お金を払って外食すれば、解決するといえばそれま
でなのですが、毎日外食というわけにはいかないのが現実でしょう。日本のようにはいきませんが、海外
でもスーパーにいけば、簡単な調理でいただける食品もありますので、こういうものを利用するのもよい
かもしれません。サプリメントは栄養素として摂取することはできますが、食事の代用にはなりません。
食べることで臓器が機能し、血糖値が上がり、消化し、またお腹がすくといったリズムが生まれます。食
べ物を口にすることは、食感を楽しみ満腹感を得ることでもあり、精神の安定にもつながると考えます。
―
子どもが海外の生活に適応できずに、乱暴な行動をしたり、わがままになったりすることがよくありま
す。親としてはどこまで、その行動を許し、どのように接したらよいのでしょうか。
6
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
◆
それぞれのご家庭には、それぞれのルールがあると思います。これは親の責任においての判断です。ど
こまで許せるかということは原則として、日本にいたときと同じでよいと思います。子どもにとって何が
つらいのか、何がストレスなのか、何をしてほしいのかということについて情報を収集しなくてはいけま
せん。また内容によっては対処方法が違います。学校等の環境が原因だったら、問題を取り除くためにサ
ポートをするべきです。先生と面談する、本人とよく話し合いをする、あるいは少し学校を休ませるとい
ったことで、子どもを落ち着かせ、解決策を考えるべきです。
―
子どもが現地の学校になじまなかったときに、我慢をせずに学校を変えるべきなのでしょうか。見極め
が難しいのですが、どのような言葉や身体のサインがでたときに行動をうつせばよいのでしょうか。
◆
我慢をするのではなく、問題の種類と中身によって、どこまで変更が可能か、何を変更したら成果があ
がるのかということを考えるべきです。学校を変えること、クラスを変えること、先生を変えること、い
くらでも方法はあると思います。身体のサインとしては、チック症状や不眠症などの場合はそれほど緊急
性が高くないので、しばらく様子をみることもできますが、自傷行為や暴力がはじまったときは、赤信号
だと思ってください。本人とまわりの安全のために速やかに対処法を考えて行動にうつしてください。
―
まわりの人と同じことをしていないと、仲間はずれやいじめにあうと不安になるのは、日本人特有の気
質なのでしょうか。
◆
いじめや仲間はずれやハラスメントは普遍的なものでどこの国でもあります。不安になるのは日本人だ
けではありません。ただ、欧米のように個人主義を尊重する国では、まわりの人との同調圧力が低いのは
確かです。これらの不安を解消するには、人と話をすることが大切なことだと思います。夫婦や親子で話
し合うとか、愚痴をこぼすということは、実は大変に健全なことです。言葉にするということで、問題が
みえてきますし、他者からの同感を得ることで、自分一人が苦しいのではないということを確認し、不安
が軽減するのです。飲み会やランチ会で愚痴をこぼすのも、悪くありません。
―
海外でも日本でも大きく環境が変化したときにどのような心持ちでいたらよいのかアドバイスをお願い
いたします。
◆
環境が大きく変わるとストレスを感じ、イライラするのは、「あなただけではない」ということです。適
応するまでに時間がかかるのは当たり前と捉えてください。事前準備として情報収集も不安の軽減となる
かもしれません。ただ、人からのアドバイスと違って、インターネットで検索して得た、大量の情報は一
方通行です。どれが正しくて、どれが間違いなのか自分で判断するのは難しいことがあります。これらの
情報は、良い面と悪い面を持ち合わせているということを忘れずにいてほしいと思います。
―
お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
インタビューを終えて
明るく気さくな赤沼先生のお話は、すべてにおいて新鮮に感じました。「患者さんを治すということで
はなく共に走っていきたい」とおっしゃる先生の言葉から、患者さんたちから慕われ、信頼も厚い先生だ
と思いました。
先生は、2011 年より、英国王立精神科医学会のホームページに掲載された、一般向けのこころの健康
に関する情報を日本語に翻訳し、学会ホームページに掲載するボランティアのプロジェクトを運営されて
います。精神疾患に関する基本的知識や治療の解説に加え、予防や再発防止のために自分で実行できるこ
と(セルフ・ヘルプ)の方法も提案されているそうです。今後のさらなるご活躍を応援いたします。
http://www.rcpsych.ac.uk/mentalhealthinfo/translations/japanese.aspx
7
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
また海外赴任!
さて、どうしますか?
海外から帰国して落ち着いたのもつかの間、次の海外赴任の話が出ることがあります。
再赴任が決まった経験のある 6 人のかけはし会員に、その時の家族の選択について、以下のような質問を
してみました。
①
この選択(単身赴任・高学年の子どもを連れて赴任・夫婦のみで赴任)をした理由
②
この選択をしてよかったと思うこと
③
この選択をしたために困ったこと
④
その他、みなさんへ伝えたいこと
単身赴任を選んだ A さんのケース
①
一番の理由は、中 2 の娘がどうしても学校を辞めたくないと主張したことです。タイミング的にも娘が、
前十字靱帯断裂の大けがをして、手術(入院 1 カ月)と主人の赴任が重なり、術後完治まで 1 年近く通院も必
要だったので日本を離れる決断はできませんでした。その後娘が高 1 の時に 1 年だけ休学をして赴任先に行
くことも考えましたが、再び拒否権を発動され、私としてもそれを押してまで 1 年だけ移動するという労力
に費やすパワーはありませんでした。
②
娘は高校生活を満喫し、現在は大学 2 回生になり、イギリス留学中で充実した日々を過ごしています。
息子も日本のきびしい環境でいろいろな経験をし、雑草のようにたくましく?成長しています。また、主人
の赴任中に気に入った物件が見つかり家を購入することもできました。
③
上の娘を中心に決断したため、息子は小 3 から父親と離れて育ち、現在中 2 になりました。主人は去年
帰国したものの、東京勤務のため単身赴任という状況は変わっていません。男子が育つ過程で、幼い頃から
多感期にかけて、父親不在で育つ影響を考え、重責を感じるとともに最近自問自答が増えてきました。
④
その時々の選択で正しいか正しくないのかは分からないもので、ましてや子育てがらみの決断の場合、
一生どちらが正しかったのか結論が出ない場合もあると思います。家族でよく考え、話し合い、決めたこと
を信じて進むしかないのでは。(しかし、一番自然な形は家族が一緒に過ごすこと、でしょうか?)
単身赴任を選んだ B さんのケース
①
海外転勤の話を聞かされたのは、上の子が高校 3 年生になる直前でした。大学受験を控えた息子を一人
日本に置いて受験に挑ませるのはあまりにしのびなく、単身赴任となりました。
②
上の子は予備校にも通い出して帰宅が遅くなり、家にいる時間が限られたので、栄養面の配慮をして、
食べるのが楽しみになるよう手作りを心がけて母なりのバックアップができました。
③
下の子は父親について行って現地校で学びたがりました。日本の学校でなんだかしっくりいかないもの
を感じていただけにその思いが強く、「今回は家族で兄を応援してあげよう」と説得するのに一苦労しました。
「自分は兄の犠牲になった」と今でも思っているようです。もうひとつは、大学入学の諸費用として、夫名義
で契約した学資保険をあてにしていましたが、いざ請求手続きをしようとすると、必要書類が揃わなかった
ために保険金の受け取りができなかったことです。赴任前に委任代理人による手続きについて確認して目処
をつけていたつもりでしたが、事情が変わったようです。まとまったお金が欲しいときに手にすることがで
きず、がっくりきました。
④
反抗期の娘と父親との関係をうまく築いていくのは、微妙で難しいと感じています。娘が親を客観的に
見る年頃でもあり、また離れて暮らしているからでしょうか。
8
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
高学年の子どもを同行・家族が先行帰国した C さんのケース
①
3〜4 年ごとの転勤で、アメリカに 2 度、メキシコ、オランダ、と引っ越し続けてきたので、家族は一緒
にいるのが当然と考えていました。オランダ転勤が決まった時、長男が中 2、次男は小 5 と高学年でしたが、
日本人学校に入ることで子どもも同行を納得しました。2 年後、兄弟ともに帰国生受験をした時、長男の受
験した大阪府立高校が保護者の大阪在住が条件であるため、高校入学に合わせて、父親をオランダに残し帰
国という形をとりました。
②
私は男の子の成長には父親の影響が大きいと思うので、家族が一緒に過ごせたことが何よりでした。日
本人学校への転入で無理なく勉強にもついて行けて、環境の変化へのストレスもありませんでした。また、
多感な時期に海外の多様な文化に触れた経験から精神的にも大きく成長し、将来進みたい道が見えてきたよ
うです。
③
日本人学校は、放課後のクラブ活動がないうえスクールバス通学なので、高学年であっても自由に行動
できず気の毒でした。どこへ行くにも親の送り迎えが必要で箱入り育ちになってしまいました。受験に関す
る情報集めや手続きはほとんどが親の仕事なので、責任重大でした。
④
アメリカからの帰国後、英語から日本語へ主言語の切り替えをしました。その時の苦労から、子どもた
ちが英語と日本語どっちつかずにならないよう、今後は日本語で育てようと夫婦で方針を決めたので、次の
転勤が決まった時に、インター校と日本人学校のどちらに行かせるか迷いがなくて楽でした。同じ経歴で育
つ帰国生はいないので、それぞれの個性を伸ばせられる、子どもに合った教育で育てられればよいと思いま
す。
高学年の子どもを同行した D さんのケース
①
任期 3 年の予定の駐在が決まったのが、子どもたちが私立中高一貫校の中 2、公立小 6 の夏頃でした。
家族そろって駐在に出られる最後のチャンスだと思ったのが一番の理由です。同行する方向で考え始めた時、
先ず中学の先生に相談したところ、高校への復学も難しくないと言っていただきました。また、大学入試準
備のために高 2 夏休み前の帰国を勧められたことで先のことを考えることができ、渡航時に帰国時期を決め
ての出国となりました。
②
子どもたちが幼いころとは違って、多感な時期に海外で過ごしたのは貴重な経験だったと思います。ま
た、父親の仕事を間近で見ることができたのもよかったと思っています。おまけとして、休暇でさまざまな
国への旅行をしたことも大きな収穫でした。
③
長女はインター校へ行きましたが、学習のサポートが本当に大変でした。次女は日本人学校に行かせま
したが、思ったほど英語の学力がつかなかったのは誤算でした。また、家庭の事情で帰国後は元の地域に戻
らなかったので、新たな学校探しが大変でした。自分の出身地へ戻ったのでまだよかったと思っていますが、
知らない土地への帰国だともっともっと大変だっただろうと思います。
④
中高生を同行するには、覚悟も少し必要かもしれませんが、その分得るものも多いと思います。小学生
の時とはちがって、大人に近い視点でいろいろなものを見てくることができたと思っています。我が家は帰
国時期を決めての短期の同行でしたから、考えようによっては「親付き留学」とも言えたのではないかと考え
ています。一人で留学させるより安心・安全かもしれませんよね。
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関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
高学年の子どもを同行した E さんのケース
①
なによりも家族は一緒にいるべきだと考えたため、再赴任しました。中 3 の 3 学期という微妙な時期で
の赴任であったので、多少躊躇もしましたが、前回と同じ国への赴任だったため、友人もいたし、環境・学
校事情もよくわかっていたので同行することができました。
(この時期で他国への赴任だったら家族は行かな
かったと思います)
②
主に高校生での滞在だったので、小さいころとは違った観点からものごとを判断でき、娘にとっては国
際的な視野を身につけるよいチャンスとなったと思います。そして、苦労はしましたが IB ディプロマ(イン
ターナショナルバカロレア:国際的な大学入学資格)を取ってハイスクールを卒業できたことは自信につなが
ったようです。また、将来の進路を決める時期に家族で広い視点から進路選択をすることができてよかった
です。
③
中学生になって初めて日本での生活を経験して自由というものを知った娘に、思いもよらず海外再赴任
を猛反対されたため、説得するのに手を焼きました。赴任後、ハイスクールでは IB ディプロマを取るために、
夜も寝ずに勉強しているようすを見て、体を壊さないかと心配でした。
④
高校入学直前での再赴任であったため、たとえ先に主人が帰国することになっても家族だけで残ってハ
イスクールを卒業させてから帰国しようと決めて赴任しました。海外赴任に当たっては、親は目先のことだ
けではなく、5 年先、10 年先を見据えて子どもをサポートすることが大切ではないかと思います。今、「海外
に再赴任をしてよかったの?」と娘に尋ねてみると、「行ってよかった」との答えが(しぶしぶ?)返ってくるの
で、私もほっとしています。
子どもを残して夫婦のみの赴任を選んだFさんのケース
①
息子たちが大学生となりそれぞれに下宿をしているので、私だけ夫の海外駐在に同行しました。
②
連絡ツールが発達しているとはいえ、時差があるので、何かあっても子どもたちはなかなかスムーズに
親に相談できないので、自己解決する力がついて逞しくなったようにも思えます。先に一言欲しかったこと
も多々ありますが。親に頼れない分、兄弟がお互い密に連絡しているようで面白いです。子育てから解放さ
れて寂しい反面、のびのび自分中心の生活をしております。
③
成人した子どもでもついつい気になり、頻繁に連絡をして、「しつこい」と呆れられています。子どもか
らは、お金の無心の時以外はなかなか連絡をくれず、一方通行のコミュニケーションに少し腹をたてていま
す。子どもだけでなく、年老いた親たちのことも気になります。連絡はとりますが、実際に顔をみているわ
けではないので、ようすがわからず心配です。介護の必要がでてきたら、私だけ帰国することも考えていま
す。夫は「海外駐在をするということは、自分も親も、もう会えないかもしれないという覚悟を持つことだ」
と言いますが、何ともわりきれない思いです。
④
子どもの送迎などがないので、自由な時間をすごしていますが、子どもそれぞれの生活や親や夫や自分
の健康のことなど、若いころの海外赴任とは違った悩みや心配があります。あまり深く考えても仕方ないの
で、「なるようにしかならない」と思っています。
海外への再赴任。家族が一緒に行くか行かないか。すでに海外生活を経験していろいろな事情がよくわかっ
ているだけに、たいへん悩むところですね。貴重な経験ができる半面、困ったことも多々でてくることでし
ょう。この体験談から、家族が一丸となってがんばっているようすが目に浮かびました。親が奮闘している
姿を見て、子ども達もたくましく育ってくれるといいですね。
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関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
かけはしリポート
(第8回)
「再びの海外赴任-あなたは同行しますか?」
・はじめに
2 度目、3 度目の海外赴任が決まり家族が同行するかどうか悩むという話題が、かけはし会員の中でもよく
出ます。ある企業の人事の方から、「海外の現場の実情をよく知る、経験のある 40 代や 50 代の人に再度の赴
任をお願いすることも増えてきた」ということを聞きました。若い海外赴任者の増加はよく聞かれますが、再
度の赴任者も増えているとのことです。かけはし発行の学校情報誌『帰国生への学校案内《関西》2013』
(昨
年度版)において行われた「帰国生へのアンケート」をみると、複数回、複数国滞在経験のある帰国生が 2 割
以上いるということがわかりました。今回のリポートでは、再びの海外赴任が決まったら、かつてと同じよ
うに家族が同行できるのか、前回とは違った選択をすることになるのか、その場合にはどのようなことが問
題になるのか、ということを、みなさんから広く意見を求めることにしました。思いを共有することで、再
びの海外赴任について考えていきたいと思います。
・アンケート調査について
① 目的:海外駐在経験のある夫人を対象とする「再度の海外赴任時に同行するかどうかとその理由」に
ついての調査
② 実施期間:2013 年 10 月
③ 対象:海外駐在同行経験のある夫人 217 人
④ 質問内容:「夫の次回の海外赴任が決まったら、あなたは同行しますか」
(選択回答及び自由記述の理由)
・結果
再度の海外赴任に同行するかどうかとその理由
回答は「同行する」「同行しない」「その時の条件や状況による」の 3 つの選択肢の中から1つを選び、その理
由を述べてもらいました。また、その理由をカテゴリー別に分類しました。理由の中には、複数のカテゴリ
ーが含まれるものもあり、その場合は複数回答としてカウントしました。
① 再度の海外赴任に対する夫人たちの考え
結果は図1のとおりです。その時の条件や状況によって考えると答えた人が 64%、同行するが 29%、
同行しないとの答えは 7%となりました。
次回の海外赴任ーあなたは同行しますか
図1
同行する
29%
その時の条
件や状況に
よる
64%
②
同行しない
7%
同行すると答えた人の理由(複数回答あり)
同行すると答えたのは 63 名でした。その理由の内訳は、「家族は一緒にいるべきである」、「子どもが小さ
11
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
いから家族は一緒」といった「家族同行」が 12、「海外生活は楽しいから」11、「子どもが大きくなったので夫婦
でのんびり海外にてすごしたい」9、「日本ではできない体験ができるから」8、「夫のサポートをするため」7、「生
活に刺激がほしい」5、「行かない理由がない」4、「とにかく海外が好き」3、「夫の仕事だから仕方ない」2、「海
外は住みやすい」2、「自分のスキルアップのため」1、「自由になりたい」1でした。
③
同行しないと答えた人の理由(複数回答あり)
同行しないと答えた人は 15 名でした。理由の内訳は、「子どもの学校が心配」3、「親のこと(高齢 介護)」3、
「語学の習得が嫌」3、「自分の仕事やキャリアダウンが困る」2 でした。その他としては「病気の家族がいる」、
「海外生活に慣れない」、「ペットがいる」、「海外は嫌い」、「自宅を新築したから」といった回答もありました。
④
その時の条件や状況によってと答えた人の理由
その時の条件や状況によってと答えた人は一番多く 139 人でした。理由の内訳は図 2 のとおりです。
次回の海外駐在はその時の条件と状況によって行くと回答した理由
赴任先の国(言葉・治安も含む)
子どもの学校や受験
親のこと
家族の状況
ペットの問題
滞在期間
赴任先の住宅事情
自分の仕事の都合
自分の体調
会社の待遇
赴任国までのフライト
その他
51.7
45.3
19.4
図2
10.7
3.5
3.5
2.8
2.1
2.1
1.4
1.4
5
複数回答あり
数値は回答数における割合%
言葉や治安、政治情勢、文化や日本に対して友好的な国かどうかなど、赴任先によって同行するかどうか考
えるという回答が半分を超えていました。次には、学校、教育事情、受験など、その時の子どもの年齢によ
って考えるという答えが続きます。「高齢の親の健康状態による」などといった親についての心配事の回答も
2 割近くありました。子どもの気持ちも含めた、「その時の家族の状況」との答えも続きます。これらに比べ
ると、回答数は減りますが、「ペットがいるから簡単に海外には行かれない」、「滞在期間が短ければ旅行気分
だから行く」といったものや、反対に「滞在期間が短かったら、同行せずに年に 1、2 回だけ赴任先に行く」な
どといった意見もありました。そのほか、「会社の海外駐在員に対する待遇が以前ほどよくないから、残った
ほうがいいのか考える」、「長時間のフライトの必要な国はいやだ」というものも、複数の回答がありました。
その他としては、「よい経験にはなるが・・・」、「条件があえば」などといった戸惑いの気持ちがあらわれて
いるものがありました。
・考察とまとめ
再びの海外赴任の可能性を考えたときに、回答者は、経験上海外生活において、生活に必要なことや問題
点がイメージできるので、同行するか否かという選択回答とともに、具体的な理由が添えられていました。
それらの内容は、前回の駐在より自分も子どもも親も年齢があがる分、今後の家族の将来の見通しがある程
度はっきりするため、新たな悩みや心配も含まれていました。
「海外生活は楽しいから」、「日本ではできない経験ができるから」などの回答には「どんな国でもついて行
く」という力強い意見もありましたが、「条件や状況によって同行を考える」との選択した人の中では、51%が
「赴任先の国によって考える」でした。これは全回答者 217 人の中でも 3 分の1を占めます。この中でも「治安
12
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
が気になる」というのが圧倒的な数でした。「安全な生活」をまず考えた結果でしょうか。「子どもが学齢前な
ら常に一緒だから自分が守ることができるが、学校に通うようになったら、一人で行動する時間がでてくる
ので治安の悪い国には心配で行かれない」といった声もありました。「日本に対して友好的な国ならよい」、「英
語圏がよい」、「住みやすく便利な国がよい」などの、赴任先の国についての希望は、先の海外生活経験から得
た率直な思いなのでしょうか。
学齢期の子どもを持つ親にとって、「子どもの学校や受験」については、大きく悩むところです。海外の現
地校に通った経験のある子ならば、海外の学校生活に慣れるのは、はじめての時より早いかもしれません。
しかし、帰国の時期を考えたときに、きょうだいの学齢がそれぞれうまく帰国枠受験の条件にあうのかどう
か難しい場合もあります。子どもたちの進路を思い描くときには、海外生活の時期や期間も考えなくてはい
けません。「夫の仕事だから仕方がない」と割り切っている人もいましたが、子どもが中学生や高校生ともな
ると、子ども自身の意思も尊重して、納得してもらわねばなりません。「子どもが海外の学校をいやがるから
同行しない」という人もいました。
全体の 3 割近くを占める「同行する」との答えには、「家族は一緒にいるべきだ」が一番多かったのですが、
それらの回答には、まだ子どもが小さいからという示唆があるものがほとんどでした。その一方、「夫婦での
んびり海外暮らしをしたい」という意見の中では、「子どもが大学生だから・社会人になった」など、子どもが
成人、もしくはもうすぐ成人という方ばかりでした。つまり子どもの年齢次第ということです。
親のことについても多くの意見をいただきました。自分が若いうちの海外赴任は、親も元気で気になりま
せんが、年老いた親を日本に残し、海外に行くとなると、「すぐに親元にかけつけられない」、「面倒をみてあ
げられない」、「様子がわからない」などといった心配もあります。「心配するといけないからと、母親が手術
をしていたのに、事後報告だった」といった話もありました。子を思う気持ちも親を思う気持ちも、お互いの
思いやりが伝わってせつない話です。
今回のアンケートで、ある会員からはこのような回答がよせられました。
同行するかどうかは、子供の学齢によります。大学生になっていれば夫に同行すると思います。でも、その
くらいになると、双方の両親が高齢になり、そちらも気にかかることなので、どうなることか。みなさんは
どうやって乗り切っていらっしゃるのか、ご意見や体験があればぜひおうかがいしたいものです。
同じような思いの方もたくさんいらっしゃるかと思います。何人かの経験者に聞いたところ、「近所に住む親
戚や民生委員に定期的に様子をみてもらう」、「緊急連絡もできる GPS 付きの携帯を持たせたり、警備会社の
高齢者サービスを利用したりする」、「年に数回一時帰国をして、様子をみる。フライト代がかかるが、海外
でやきもきしているよりずっとよい」といったことでした。みなさん対策をたてて赴任地に向かっています。
帰国して数年たつと、母親たちも自分の仕事や学校の役員など、地域に根付いた生活がはじまります。趣
味や習いごとなどを通じて、または近所などでも、友人や知人のネットワークができます。せっかく築き上
げたこれらのつながりを断ち切ることになるため、同行することにためらいを感じることもあるでしょう。
「一度辞めたらもう同じ仕事にもどれない」、「自分のキャリアがストップしてしまう」という意見もありまし
た。一方、海外生活におけるさまざまな困難は夫婦で乗り越えねばならぬと「夫をサポートするために自分は
同行しなくてはいけない」と考える人もいました。
再度の海外赴任には、海外生活の実態をわかっているからこそ憂慮することもあります。その時がきたら、
それぞれが、これらの問題をよく吟味して、「家族にとって最善の選択」をしなくてはなりません。たとえど
んな選択をしても、家族の絆が切れることは決してありません。「我が家の選択」には自信をもってほしいと
思います。今回の会報には、再びの海外駐在について、かけはし会員の体験談も載せてあります。よかった
こと、困ったことについても語ってもらいました。ご参考となれば幸いです。
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関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
異文化でドッキリ!<お祭り・パーティー編>
今回は各国でのお祭り・パーティーにまつわるドッキリです。
*大晦日
*犠牲祭
しんみり年越しする日本とは大違いで、新年の
イスラム巡礼月の 10 日目に行われる犠牲祭で
カウントダウンを皮切りに、国中で打ち上げ花火
は、各家庭で羊などを屠って家族で食べ、貧し
が始まります。各家庭が買い込んだ大量の打ち上
い人に振る舞います。その日は町のあちこちで
げ花火をそこらじゅうで一斉に打ち上げ続けるの
気の毒な羊さんがしきたり通りの方法で首を切
で、迫力に圧倒されます。それが夜中の 2〜3 時ま
られます。なるべくたくさんの人に振る舞うと
で続き大盛り上がりで新年を迎えます。
功徳があるらしく、異教徒の我が家までお裾分
(オランダ)
けが来たことがあります。あらかじめ大家さん
が「もらってあげてくれる?」と尋ねてくれた後
*ホッホサイト
で、お隣りのサウジアラビアの方が持って来て
ミュンヘンの近くの歴史ある町、ランツフー
くれましたが、もしかしたらアパートの中で「や
トでは 4 年に一度、ポーランドからお姫様のお
った」のかも・・・?!(ヨルダン)
輿入れを再現したお祭りが 1 カ月にわたって開
催されます。1,000 人近い歴史的コスチュームを
つけた人々が町を練り歩き、広場が昔の村にな
*女性だけのパーティー
伝統的イスラムでは男女同席はありえません
り、馬にのった騎士の競技もあります。お祭り
から、パーティーも男女別です。ある家庭でお
の日、隣に住むお姉様にばったり会いました。
ばあちゃまが開かれた「一族の女たちのための
彼女は黒いベルベットのドレスに身をつつみ、
パーティー」に誘っていただいたことがありま
どこぞの貴族かと見まごうばかり。参加者はみ
す。夜 8 時頃からどんどん女性が集まりだして、
な住民のボランティアで、1 年以上前から役所に
延々とおしゃべりが続きました。家にいる人は
申し込みをして、役がわりあてられるとか。住
全員女性で、幼児に至るまで「男」は一人もいま
民も観光客も楽しめるイベントのようです。
せん。その間アラビックコーヒーやチョコレー
(ドイツ)
ト、クッキー、ナッツ、紅茶・・・を何度も勧めら
れてずっとおしゃべり!
12 時近くなってよう
*バースデーパーティー
やくお食事をいただいて、別の部屋で今度はダ
滞在中、数々のバースデーパーティーに招待さ
ンス。ディスコダンスもありましたがアラビッ
れました。会場も自宅、乗馬、プール、ローラー
クダンスがメイン。私たちは、外の車で待って
スケート場、ボーリング場、体操教室などさまざ
くれている主人を慮ってこの辺りで失礼しまし
ま。ケーキはとても大きく、プレゼントは馬や子
たが、その後も延々と楽しいパーティーが続い
牛もあったりで、スケールの大きさに驚くばかり!
たのだと思います。 (サウジアラビア)
主役だけでなく招待された人もみんなが楽しめる
のが印象的でした。(アメリカ)
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関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
*中秋
*ジャカルタ日本人学校の体育祭
駐在員家庭が大半を占める日本人学校では、小
日本の「中秋の名月」と同じ日に、ベトナムでも
中合同で行われる体育祭を皆運転手付きの車で
「チュウシュウ」のお祭りがあります。あちこちの
見に行きます。車の運転をしなくていいので、校
祭壇に子豚の丸焼きやおまんじゅうや月餅(お肉
庭はホロ酔いのお父さんたちのくつろぎの場と
等の入った甘くない物)が供えてありました。夜
化します。日系のスーパーも心得たもので、酒や
になると、竹ヒゴで形を作ってセロファンを張っ
焼き鳥などがいい香りを漂わせながら売られて
てろうそくを入れたカラフルなランタンを提げ
います。子どもたちには、お弁当時に食べるかき
た子どもたちが行列を作ってあちこちの家を回
氷が大人気。ということで ?
ってお菓子をもらいます。(ベトナム)
色々な盛り上がり
を見せる一大イベントなのです。
(インドネシア)
*ジェラシュ・フェスティバル
首都アンマン郊外にある、ジェラシュのローマ
遺跡で夏に開かれるフェスティバルです。修復さ
*チーズ転がし祭り
毎年 5 月にチェルトナムというところで開催
れた遺跡を舞台に、ヨーロッパなどから演劇、オ
されます。数年前に日本から芸能人が参加して
ペラ、バレーなどが来演したり、民族舞踊や詩の
テレビ放送もされました。
朗読を披露したりされます。ローマンシアターで
ジャンプ台級の急な坂を、大きな丸いチーズと
のバレーを見に行ったことがありますが、夜の遺
ともに走る(転がる)競争です。救急車は待機し、
跡での公演はとても幻想的でステキでした。
坂の下ではプロレスラーのような男性たちが、
(ヨルダン)
落ちてくる人を受け止めようと待っています。
男性の部だけでなく女性の部もあり、坂を登る
*バースデーパーティー
レースや子どもの部もあります。坂の横で見物
親子で招待された初めてのパーティー。「都合
する人たちも、普通に立っていることができず
が悪かったら交換してね」という意味のギフトレ
に、転がっていく人も。あまりに危険なので、
シート付きのプレゼント。日本の小ぶりなホール
主催のチーズ会社にクレームが殺到し、最近は
ケーキくらいはありそうな大きさにカットされ
自主開催となったらしい。私も見るだけだった
たケーキは、ホイップクリームに埋もれて一人
はずなのに、すべってお尻は泥だらけになって
分。そしてテーブルクロスごとゴミ箱に捨てれ
しまいました。(イギリス)
ば、はい、お片付け終了!
アメリカの楽天的で
おおざっぱなシステムを目の当たりにし、「やっ
ていける!」と実感。(アメリカ)
日本にいたのでは、想像もしないような規模・内容のお祭り・パーティーがあるのですね。
お祭り好きとしては、ぜひとも参加してみたい!
各国のお祭り時期に合わせて旅行するのも贅沢な楽しみかもしれませんね。
15
海外の学校を紹介します
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
海外の学校を紹介します
「MY PAST TIMES」
MANAdaBANANA
私は小学時代に 6 年間イギリスのニューカッスルに住ん
でいて、現地の学校に毎日通っていました。私の通ってい
た小学校、Fatfield Primary School について話したいと思
います。
この学校だけではなく基本イギリスの学校はどこでも制
服があります。私服の学校は一度も聞いたことがありませ
ん。また日本のように 1 学年に何クラスもあるというのは
すごくめずらしいことです。学年に1クラスなので最初か
ら最後までクラスメートは変わりません。ターム(学期)ごとに一回ペースで HALF TERM っていう一
週間の長い休みがあります。本来、これは学期試験のための休みなのですが、いつの間にかホリデ
ーになっています。日本では放課後当番式で教室の掃除などをするのが普通ですが、イギリスでは
掃除をやってくれている人がいます。休み時間の時は雨の時以外寒くても絶対外に出ないといけま
せん。このようにうれしい違いや悲しい違いががいっぱいです。
それでは、この学校の一日について語っていきたいとおもいます。まずは親の送り迎えから一日
が始まります。親がどんな交通手段でもついていくのが原則です。学校につくと、決まった始まり
の時間になるまで外で待ちます。時間になったら、入り口から、みんな並んで順に中に入っていき
ます。学校は平屋建てで、子供の場という感じですごくカラフルです。教室で出席をとります。教
室は机がグループごとに 5、6 個島みたいに設置されています。出席を確認したら、お決まりの 30
分の長い朝礼が待っています。みんなでホールに集まり毎日違う歌を歌います。そして校長先生の
お話を聞いて最後にお祈りをして終わります。
お祈りが終わるとみんな外に駆け出して休み時間の始まりです。たいていこの時はバナナやりん
ご、みかんなどのフルーツが食べられます。外では鬼ごっこ、サッカー、逆立ちや花飾りなどクラ
スのみんなで遊びます。いつもクラスで遊んでいたので表彰されたこともあります。休み時間が終
わると授業が始まります。
昼休みはみんな食堂で食べるのが原則です。お弁当の人と食堂でランチを買う人とでテーブルが
別れます。昼食を食べ終わると再び1時間半の昼休みがあります。昼休み中にいろいろなクラブ活
動があります。私はギターとクラリネットをやっていました。その後、2 時間授業があって1日が
終わります。今思ったらどれだけ楽な時間割なのだろうって思います。宿題も正直先生の都合で全
然出なかったこともあってすごく楽でした。勉強も遊びも休みもできてすごく充実していたと思い
ます。でも、何よりもこの学校で楽しかったのは、年に数回行われるパーティーです。ハロウィン
の仮装とお菓子で盛り上がる HALOWEEN DISCO、チョコレートと甘さ一杯の VALENTINE DISCO、最後
に卒業生を思いっ切り祝う LEAVER’S DISCO。どれも DISCO というかパーティーです。毎日が楽し
い学校でした。
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関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
海外でのお稽古
足つぼマッサージのうれしい効能
かけはし会員
宮本 みゆき
「上海になった」と夫から次の赴任先を告げられ、未知の国、中国に帯同家族として行くことにな
りました。ニーハオとシエシエしか分からないまま上海に行った私は、先ず中国語学校の初級クラ
スに入りました。1 人で外出できるようにと、あわせて個別指導も受けました。
もともと好奇心旺盛な私は、異文化に触れたくてうずうずしていました。そこで、すぐに一番や
りたかった中国楽器の二胡を習い始めました。これは上手い人が弾くとウットリする美しい音色で
すが、下手な人が弾くと・・・です。練習している私の音を聞き、息子たちに「お母さん止めて、耳が
痛い」と言われる始末。仕方がないので練習は子どもたちが学校に行っている日中にしました。ち
なみに、帰国までの 4 年間練習を続けたので、ウットリはさせられませんが、聞き苦しくない程度
の演奏はできるようになりました。その他、太極拳・中国書道・中国茶道・中国楽器の楊琴など興
味のあるものは何でも挑戦しました。良い先生に恵まれ、それぞれを楽しく習うことができました。
そんな中、家族に喜ばれた習い事は「足部健康法」、足つぼ
マッサージです。中国では足つぼや全身マッサージがとても
安価で受けられるので、私も週に 2、3 回は通っていました。
そこで自分でも習ってみたいな、と軽い気持ちで、習い始め
たのですが、これが家族に大うけ。授業の前半は講義で反射
や循環原理、反射区(つぼ)や揉む際の注意などを習い、後半
は友人とペアで実践を学びました。夜、復習のつもりで子ど
もたちに実践すると、「気持ちいい」と喜ばれ、「今日もやって」と、たびたびせがまれるほど。痛い
と言う箇所で、「ウーン、ひざ関節が弱っているね、胸部リンパの流れも悪いね」と指摘すると、「そ
んなことも分かるの」と尊敬のまなざしで見つめられ、私もいい気持ちに。指導してくださってい
る先生にそのことを伝えると、「親子のコミュニケーションの場ともなり、よい関係が保てますね」
と言っていただきました。
帰国してからも「部活で疲れたからやって」、「明日の試合で活躍できるようにやって」とせがまれ、
もう大きくなって足も臭くなった息子たちに、「じゃあ、足を洗っておいで。タオルとクリームを
用意しなさい」と命令しても、「ハイ」と元気よく返事をしてテキパキと準備をする姿に、内心ニヤ
リ。しかし、やってもらう方は気持ちいいでしょうが、やる方の私は結構疲れます。息子たちに「や
り方を教えるからお母さんにもやって」というと、「いや、お母さんみたいに上手くできないから」
と逃げられています。まあ私のこの特技を、子どもたちを繋ぎ止める奥の手として大切にしていこ
うと思っています。
海外赴任した夫は、言葉や文化、習慣の違いの中で苦労も多かった
と思いますが、ついて行く妻が現地の生活を楽しんで明るく暮らして
いれば、夫のストレスも軽減するのではと自分に都合の
いいように解釈していた私。とても楽しい上海太太(奥
様)生活を過ごすことができました。
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関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
学校案内編集部より
『帰国生への学校案内《関西》2014』の発刊を終えて
今年もおかげさまで無事に学校案内を発刊することができました。ご支援ご協力くださった皆さまに心よ
り御礼申し上げます。今年のテーマ「帰国生と苦手科目」は、母親である私どもとしても日頃から頭を悩ませ
る大きな関心事でした。本誌制作を通じて、セミナーでのご講演や取材先でうかがったお話、かけはし内で
の話し合いなどの中で多くを学ぶことができ、感謝しております。読者の皆さまにも少しでもご参考になる
ことがあれば幸いです。熱い想いで制作に取り組みました編集部員の声をお届けいたします。
◇暑い夏に会員一丸となってつくりあげていった過程をいとおしくありがたく思い出しています。
◇海外で暮らす子どもたちに安心して帰国してほしい、学校案内を通じてそんな気持ちが伝わるといいな。
◇全員安打の全員野球達成!みなさん一人ひとりの力の結集ですね。
◇グレードアップした本をお届けできたら嬉しいです。つながりやご協力に感謝します。
◇子育ての合間を縫っての記事作成、悩みながら同時進行。とても励みになりました。
◇一人ひとりに合った学校を・・・
帰国生の母たちの想いがいっぱい詰まった本です。
◇子育て、介護、仕事、家事・・・
さまざま抱えながらがんばったかけはし全員の力の結集です。
レッツトーク 2013 秋
2013 年 10 月 17 日
心配した台風も去り、絶好のおしゃべり日和となった今秋のレッツトーク。
たくさんのゲストの方をお招きしてにぎやかにスタートしました。
参加者の中にはこれからが本番となる帰国生入試を控えた方も多く、書類
の書き方、エッセイの指導、面接のポイントなど、在校生を子どもに持つか
けはし会員に熱心に尋ねられていました。また、帰国後在籍した学校での過
ごし方、勉強方法、英語の保持などは参加者共通の関心事で、みんなで有意
*写真はプライバシー保護のため画像処理をしています
義な体験談を交換することができました。
スポーツを通じて自分の居場所を見つけた男の子。帰国生ということを隠し、服装や持ち物も目立たない
ように気を付けているという女の子。帰国生の多い学校を受験させたいと考えているお母さんの思いとは別
に、みんなと同じ公立中学に行きたいという男の子。新しい環境を一生懸命受け入れようと頑張るお子さん
たちの姿を想像し、何度も胸が熱くなりました。
まだ帰国して間もない方の中には、海外生活を語れる環境になく、
「ずっとこんなお話を気楽にしたかった」
とおっしゃる方もおられました。子ども以上に自分が適応できずに辛い思いをされたお話などを聞くと、「帰
国後の子どもたちの学校選びや適応ばかりに目を向けがちですが、その陰で子どもたちを支えるお母さんの
心のケアも必要なのだ」と、改めて感じました。現在の悩みや心配ごとがその後どのように変化し、乗り越え
ることができたか。そんなお話の続きをまたの機会におうかがいできたら、そして次に同じように悩んでお
られる方へと人の輪がつながっていけば、こんなうれしいことはありません。
皆様のおかげで、子どもたちにとって「帰国生である自分に自信を持つこと」が大切だと再確認できるよい
機会となりました。本当にありがとうございました。
18
(Calley)
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.30 (2013 年秋冬号)
会員のつぶやき
美味しい食べ物が溢れている日本。帰国後は忙しさのあまりその恩恵を最大限に受け、日々の食事も手
抜きになりがちだったある日、子どもからの痛い一言が・・・ ママの手作り料理の方が美味しい!! この
言葉に一発奮起。手抜きは週末の 1 回と決め、食事作りに励んでいる日々です。(ママリン)
人間ドックで胃カメラ検査を受けました。検査室で咽喉の麻酔薬を飲み、さあ、次は胃カメラ挿入です。
身構え、目をつむり、口を開けじっと待ちます。「そろそろかな?」と目を開けてみると、そこはさっきと
違う部屋。手にはナースコールを握りしめています。恐る恐る、ブザーを押すと、看護師さんがやってき
て、「1 時間半寝ましたね~、ふらふらしますか?」ですって! 鎮静剤を使った検査って、こんなにも楽な
のですね! 鎮静剤を注入された記憶さえありません!(Maria ママ)
関西と関東を移動する生活を始めて 1 年半。20 数年前に比べて、関西・関東間の差が少なくなってきた
と感じます。昔は薄口しょうゆや青ネギも近所のスーパーにはありませんでした。でも、せっかくの機会、
関東ならではの美味しいものにいろいろチャレンジしたいです。お勧め教えてくださいね。(けおりん)
2 年前から犬を飼っている。息子たちに相手にされなくなった夫は彼女にサッカーを仕込み、週末はた
っぷり遊んでもらっている。夫婦 2 人の会話もお出かけも彼女が一緒だと不思議と平和になる。まさに「犬
はかすがい」の今日この頃。(Abby's mom)
最近、近所に引っ越しました。いやいや、イギリス的いい加減さに直面すること度々。ロンドン生活一
年の布袋寅泰さんは「ロンドンは不便で思い通りにいかないことも多々あるけれども、そうした不便さと
向き合う時に、これまで忘れていた人間らしさのようなものを感じる・・・」とおっしゃっていますが、遅々
として生活が整わない中、いつそんな大人の心境になれるやら・・・ (まるりん)
ハリーポッターを息子と見ていたら、「お母さん、日本語に替えてあげようか?British English だし
ね」と優しい息子に聞かれたけれど、日本語すら出てこなくなった母には英語も米語も関係なく、「?」の
連続。あなたの解説さえあれば大丈夫!(アップルサイダー)
この間、久しぶりにおはぎを作ったら沢山できてしまったので近所の友人にお裾分けしたら、「えっ?!
あんこまでつくるの?!」と言われて一言・・・ 「元駐在員夫人をあなどるでない!」 普段は忘れているん
ですけど・・・ (アルカマル)
編集後記
☆ 来春からの研修先が決まった長男。これで子育て無事終了か。ちょっとうれしい。初任給で何を買っても
らおうかと次男と相談していたら「人の給料の使い途を勝手に決めるな」と長男に怒られた。母や弟へのプ
レゼントは想定外らしい・・・ (ままったり)
☆ 自分では、クールな母を自負していたはずだったのにいざ、娘が大学生になって家を出ていくとやたら寂
しくなって、寒さが身にしみる今日この頃です。(ごくみ)
☆ 初めての富士山 5 合目。感動~するかと思いきや、遠くから見る富士山の方がきれいだなぁと思ってしま
うのは、私だけ?
(マッキー)
☆ 自宅まで 200m 付近。前方から「大きな犬が走ってくるなぁ」と思っていた。「気をつけて!」と叫ぶ声に、
ふと立ち止まり見回したら、後ろに 3 匹、左に 1 匹、イノシシが・・・ 「車に乗って」と言われ、送ってもら
った、という娘。「白髪で、ダンディーで、フェラーリだったヨ~」 (トホホの母)
会報 Vol.30、お楽しみいただけましたか?
ご意見、ご感想をかけはし事務局までお知らせください。
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編集テーマ 「帰国生と苦手科目」
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・学校基礎知識~出国から帰国まで~:出国前に気をつけること、帰国への準備
国立/私立/公立校の受け入れ事情
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かけはし賛助会員のみなさま (敬称略)
・パナソニック株式会社
・関西学院中学部
・川崎重工業株式会社
・早稲田摂陵中学校・高等学校
・須磨学園高等学校・中学校
・立命館守山中学校・高等学校
・高槻中学校・高等学校
・関西インターナショナルハイスクール
・梅花中学校・高等学校
・NPO 法人
日韓アジア教育文化センター
・藤内博(元大海研会長・現リオデジャネイロ日本人学校長)
・匿名(個人)
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