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I ICG Report
I
ICG Report
2013年10月16日発行 第366号
発行:ICGインベストメント
ICGレポート編集部
沢井智裕/山本信幸/藤居玲子
NISAは投資家の味方なのか?
~14年1月から始まる少額投資非課税制度の使い方~
何が起こっているのか?
2013年12月末で証券優遇税制が終了し、14年1月からは税率が本来の20%に戻る。同時に「NI
SA」(ニーサ)と呼ばれる少額投資非課税制度が2014年から2023年までの10年間、利用できる
ようになる。証券会社や銀行の勧誘合戦が激化しているが、果たしてNISAは投資家の味方にな
れるのか?
どう対処すべきなのか?
一人 1 口座の NISA 口座は家族で開く
まず知っておきたい現時点での基本情報は、
①20 歳以上の日本の居住者が開設できる
②NISA 口座では 1 年で 100 万円、最大 5 年で 500 万円まで投資できる
③NISA 口座に入れられるのは上場株式(外国株を含む)、ETF、REIT、株式投資信託等
20 歳以上の日本居住者(外国籍でも可)一人につき 100 万円なので、夫婦で開設すれば年間 2
00 万円までの枠になる。また贈与税の非課税枠が年間 110 万円あるので、20 歳以上の子どもに
開設させて、100 万円ずつ投資資金を贈与していくこともできる。
口座開設できる金融機関は証券会社、銀行(ゆうちょ銀行、信用金庫等も含む)、生命保険会
社、投信会社等。しかしこれらすべての金融機関が NISA 口座を扱うわけではない。
また証券会社以外は株式を扱わないので、株式投資を考えるのなら証券会社に開設することに
なる。
NISA 口座は特定口座と異なり、一人 1 口座しか開けず、口座の変更も 4 年間はできない。つ
まり 14 年に A 証券に NISA 口座を開設すると、17 年までの 4 年間分の NISA 口座が毎年 1 月 1 日
に自動的に開設される。そして 18 年に再度、開設手続きが必要になる。この時、B 証券に変更
することは可能だが、A 証券で保有した株や投信を B 証券に移すことはできない。
ただし 15 年頃には NISA 口座に国債などの債券を入れることができるようになりそうだ。また
金融庁は「2014 年度税制改正要望事項」で、①1 年単位で NISA 口座を開設する金融機関の変更
を認めること。②NISA 口座を廃止した場合、翌年以降に NISA 口座を再開設することを認めるこ
とを求めている。③NISA 口座開設時の重複口座確認については社会保障・税番号制度を用いる
こととし、口座開設時における住民票の写し等の提出を不要とすることを自民党に要望している
ので、一部制度の手直しが行われるだろう。
売却して空いた枠は再利用できない
非課税期間は 5 年間である。14 年に投資した分は 18 年末に満了する。だが引き続き非課税枠
を使いたい時は 19 年分の枠に移して非課税期間を通算 10 年にすることができる。18 年末まで
に 100 万円の株が 120 万円に値上がりした。19 年分に引き継げるのは 100 万円が上限なので差
し引き 20 万円は売却するか課税口座へ移管することになる。
逆に 80 万円へ下がってしまった時は 20 万円の空きができるので、20 万円追加投資すること
1
ができる。
ただし例えば 14 年 1 月に 100 万円投資して、8 月に 50 万円分売却すると、50 万円の空きがで
きたように思えるが、100万円以内であっても、この枠を使うことはできない。最初に枠を使い
切っているからだ。そうではなくて1月に20万円、3月に20万円、5月に20万円……というように
積立方式で少しずつ枠を使っていくのであれば、100万円に達するまで何度でも追加できる。
みなし譲渡価格によって明暗が分かれる
非課税期間満了後に株を課税口座へ移す場合、100万円の株が120万円(D)まで上昇して非課
税期間を満了したので課税口座へ移し、そこからさらに値上がりして150万円で売却した。100万
円が150万円になったのだから50万円の利益に見えるが、みなし譲渡価格は120万円なので、30万
円の譲渡益だけが課税対象になる。
100万円の株が非課税期間満了時に150万円まで値上がりしてたが、課税口座へ移したら120万
円まで下がって損切りした。最終的には20万円の利益を得ているが、みなし譲渡価格より値下が
りして売却したので課税されることはない。
しかし良いことばかりではない。
NISA口座で生じた損益は、特定口座や一般口座などそれ以外の取引の損益と損益通算すること
ができない。例えばNISA口座で100万円で買った株が90万円まで下がった時に売ると10万円の損
失が出るが、他の特定口座や一般口座等とは損益通算ができないので、他の口座で出ている利益
(譲渡益や配当等)にはまるまる20%課税されることになる。
100万円で買った株が70万円まで下がって非課税期間を終えた場合、みなし譲渡価格は70万円
となり、特定口座や一般口座へ移した時、70万円の新規投資とみなされれる。現実には30万円の
損失が出ているのに考慮されないため、70万円が100万円に戻った時に売却すると、30万円の利
益が出たと見なされる。
最も幸福な例は2014年に100万円で買った株が5年後に大きく上昇しているケースだろう。1000
万円に上昇していた場合、課税口座であれば900万円の譲渡益に対して180万円の税金がかかるが、
NISA口座であれば非課税になる。180万円の税金分だけでも、相当いろいろ楽しめそう。ぜひNIS
A口座を有効活用して非課税の恩恵を存分に受けていただきたい。
NISA口座の非課税期間は5年間
出典:日本証券業協会
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Q&A
Q. 日本株の安定が続きますか?
A. 為替の動向や企業業績を見極める必要がありますが、長期金利が低位安定(0.65%)している
ことが大きいと思います。もちろん米量的緩和の縮小が延期されたことがありますがリスクマネー
が息を吹き返していることは間違いないでしょう。
Q. ユーロ高になりましたが、ユーロ圏は問題ないですか?
A. シリアの化学兵器使用問題や米財政問題でユーロ圏にスポットが当たっていません。ユーロ
圏では金融機関のストレステストや金融機関救済ファンドの設定等、問題は何も解決していませ
ん。前述の問題が落ち着いてくれば、ユーロ圏の問題が再び蒸し返されることもあると思います。
Q. 中国人民元を購入したいのですが、香港のHSBCの口座で購入出来ますか?
A. 非居住者の方が、口座を通じて購入出来る人民元は1日1口座に付き2万香港ドル相当額(約24
万円)と決まっています。ただ中国政府の意向で人民元取引を世界の金融市場に拡大していく方
向ですので購入限度額の引き上げが予想されます。
NEWS
カジノ法案は来春の通常国会で成立!?
日本のカジノ解禁が現実味を帯びてきた。一般には東京五輪開催を機に東京臨海副都心(お台
場周辺)をカジノ特区に指定すれば良いと理解されているが、実は特区は優遇措置を受けるため
の場所の指定に過ぎず、解禁するためには刑法に抵触しないように法改正しなければならない。
そこで議員立法によって法改正を目指す動きが本格化している。中心となるのは自民、公明、
民主、日本維新の会など超党派で構成されている国際観光産業振興議員連盟(IR議連)。10月15
日に招集された臨時国会に議員立法として提出・可決される見込みという報道が目立つが、IR議
連側は臨時国会の会期が約1カ月半と短く、消費税問題や景気対策など優先度が高い法案が数多
く審議待ちしているため、来年1月に招集される通常国会での成立を目指すというスタンスでい
る。IR議連には安倍首相や麻生副総理が最高顧問として名を連ねているだけに、審議が始まれば
成立する可能性が高い。候補地は東京、大阪、沖縄など。東京都は猪瀬直樹知事は6月の都議会
の所信表明で臨海副都心地区でカジノ設置を目指す考えを改めて表明したほど積極的で、法的な
問題が解決すれば実現する可能性が高いといえる。その他には橋下徹大阪市長も前向き。アジア
のリゾートとして観光振興を目指す沖縄も有力候補となる。
東京にカジノを中心とした複合リゾートを開設した場合、直接的な売り上げは年間数千億円か
ら約1兆円に及び1万人以上の雇用を生むと試算されている。なおマカオでカジノを運営する企業
の多くも日本進出を目論んでおり、その代表であるメルコ・クラウン・エンターテインメント
(香港)は50億ドル以上を投資する計画といわれており、日本の警備会社や通貨処理機会社など
カジノ銘柄も恩恵を受けそうだ。(東京 証券アナリスト)
シンガポール航空とキャセイ航空
国際航空輸送協会の調査によると、今年の旅客数は、前年から6%程度のアップが見込めるもの
の、2013年のアジア太平洋地域の航空会社の収益は従来の予想よりも3分の1のレベルの31億米ド
ルに留まるとの試算が発表された。昨年比では23%の減益となり、2年前の111億ドルからも3分の
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1のレベルとなる。理由ははっきりとしている。1バレル=100ドルを超える燃料代の高騰と競争
の激化である。アジアの優良航空会社であるシンガポール航空とキャセイ航空の苦戦が続いてい
る。シンガポール航空は、ドル箱である欧米への長距離路線の伸長を停止し、短距離のアジア路
線を強化している。キャセイ航空も長年、長距離路線におけるファーストクラスとビジネスクラ
スで収益を拡大させてきたが、格安航空会社の台頭によって旅客を奪われる構図となっている。
ベトナムの格安航空会社のべトジェットエアは現在6機を所有して運航を続けているが、フラ
ンスのエアバス社に92機の航空機を発注して勝負に出ている。マレーシアのエアアジアやインド
のジェット航空も低価格戦略で旅客を取り込んでいる。大手航空会社で旅客収容量で世界3位の
エミレーツ航空はアジア地域の5拠点に参入した。そして同じく中東のカタール航空も3路線増設
をした。今後も長期的に成功の見込めるアジア地域ではあるが、競争激化により経営難に追い込
まれるところも出てきそうだ。(アジア株 ファンドマネジャー)
豪州の住宅バブルが終わる
数年前までの通貨オーストラリアドルの高騰や資源価格の上昇によって、好景気を演出してい
た豪州経済がここにきて帰路を迎えようとしている。過去2年間は8回の利下げによって何とか景
気後退を凌いできたが、そろそろ金融政策も万策が尽きそうだ。8回の利下げで政策金利は2.5%
にまで低下。しかし先進各国に比較するとまだまだ魅力的な金利水準に見えるが、これ以上利下
げが進むようだと海外資本の流入にも悪影響が起こるであろうし、国内に留まる外国資本の流出
も心配される。
通貨安に転じれば今度は輸入インフレが懸念されて、金融政策の転換を迫られる可能性がある。
そうなると心配されるのは高止まりしている住宅価格である。シドニーでワンルームアパートを
購入するのに、平均50万豪州ドル(約4600万円)で購入出来る物件は少なくなった。
シドニーを中心とした8主要都市の住宅価格は、2003年から2004年を100とすると、現在は150.
50ポイントの水準で高止まりしている。9月は単月で前月比1.6%上昇し、前年比では5.5%上昇し
ている。逆に経済成長率は、第2四半期は2.6%成長に留まり、前年同期比の4%から減速感は否め
ない。景気の減速は、小売や住宅市場に悪影響を及ぼす。
そんな中での米FRBによる量的緩和縮小の延期はいいニュースであったに違いない。ただ資源
価格が低迷し、新たな産業の育成もままならない状況の中で、時間が経過するのを待つことは豪
州経済にとって大きなリスクとなる。住宅価格の急落は、かねてから心配されている豪州の金融
機関の不良債権の膨張に繋がる。(シンガポール 投資コンサルタント)
インド株指数は10年で8万ポイントへ
この夏の新興国の「負け組」と言えばインドネシアとインド。両国共に株価と通貨が急落し、
一時は97年のアジア通貨危機の再来かと心配された。特にインドは中国と並ぶ人口大国ではある
が、投資情報が不足していること、不安定な政治、インフラの未整備もあり、投資行動を回避す
る海外投資家が多かった。通貨ルピアは一時、1ドル=68ルピア台まで売られ、3年間で30%以上
も下落した。株価指数も8月21日に17905ポイントの直近安値を付けた後、20646ポイントの年初
来高値を付けた。その後、経常赤字の拡大や景気の減速を見越してヘッジファンドがルピア売り
を仕掛けてルピア安が進行したものの、10月4日にラグラム・ラジャン新中銀総裁が就任した直
後から株価が戻り始めた。10月10日の時点でインドのセンセックス指数は2万277ポイントとなっ
ている。ラジャン氏はアメリカのサブプライム問題を国際通貨基金(IMF)で最年少の調査局長
を歴任するなど輝かしい経歴を持つが、何と言ってもサブプライム問題が深刻化するかなり前か
ら警告を発していた人物として金融界では著名な人物である。また初仕事でマーケットの予想を
覆し、政策金利を0.25%引き上げて7.5%にした。
景気後退局面では通常利下げに動くものであるが、ルピア安に歯止めを掛けてインフレ退治に
舵を切ったことが高評価を得た。インドに対する信認は、ラジャン氏によって再評価されている。
それが株価に反映された。インドの一人当たりのGDPはまだ1500ドル程度で中国の6000ドルに対
して4分の1の水準に過ぎない。今後、インドが例え先進国の水準にまで国民の生活レベルを上
げることが出来なくても、今の中国の生活水準まで上昇してくれば、GDPは4倍に増える。その時
はインドのセンセックス指数は、現在の4倍の8万ポイントの水準に留まらないだろう。
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(香港 証券ブローカー)
FUND
10月17日の危機
米財務省によると10月17日の時点で連邦政府の債務上限額の引き上げが実現しなくても、この
日にデフォルトが発生するワケではない。 17日の時点で300億ドルの資金が残されており、月末
までやり繰りすることが可能なようである。ただ今回は野党・共和党にまったく折れる気配がな
く協議の行方は予断を許さない。
そして注目されていた米FRB議長の後任が、ジャネット・イエレン副議長に内定したことは市
場に多少の安心感を与える要因となっている。量的緩和にネガティブなローレンス・サマーズ氏
とは対照的にイエレン氏は量的緩和に寛大だと言われており、米国の住宅市場や個人消費の動向
を見極めながら対処すると考えられる。
Pictet-Emerging Corporate Bonds-P USD
短期★★★★
量的緩和の縮小により、再び債券投資への意欲が強まっている。ユーロ圏でもスペイン、イタ
リア、ギリシャ等の南欧諸国の国債が買われる傾向にあり、株式市場から債券市場への資金の流
入が続きそう。
長期★★★★★
米景気の持続的回復は容易ではない。住宅市場は長期金利の上昇が懸念され、個人はクレジッ
トカードの使用や自宅を担保に入れて借り入れを起こすホームエクイティローンを避ける傾向に
あることから、想像以上に量的緩和の縮小の時期はずれ込み、また段階的な規模縮小のスピード
も緩慢になると想像される。 債券相場が持続する根拠となる。
総評★★★★★
TOKYO
OSAKA
ICGファンドの運用成績
Gold Nugget Fund
2008
2009
2010
2011
2012
2013
Jan
Feb
5.20%
-2.51%
-6.94%
10.81%
-0.52%
1.91%
2.35%
5.07%
0.21%
-5.46%
Mar
Apr
May
Jun
-6.86% -6.39% 1.66% 4.59%
-2.24% -4.92% 13.13% -6.33%
0.43% 5.31% 1.54% 2.35%
1.56% 6.37% -1.69% -3.22%
-5.90% -1.11% -6.03% 1.79%
0.57% -9.09% -5.44% -14.68%
Jul
Aug
Sep
Oct
Nov
Dec Year-to-date
-3.11% -9.07% 3.10% -19.72% 12.17% 8.28% -17.89%
1.06% 0.79% 5.67% 2.45% 11.28% -6.08% 21.75%
-5.94% 6.78% 4.89% 3.03% 3.02% 1.72% 24.75%
6.80% 8.99% -11.26% 5.36% 0.45% -10.17% -1.30%
0.86% 2.02% 7.15% -3.27% -0.58% -3.84% 0.73%
9.64% 6.15% -5.61%
Jul
Aug
Sep
Oct
Nov
Dec Year-to-date
-0.33% -0.86% 0.25% -2.03% -0.46% -0.57% -4.62%
4.30% -4.31% 6.56% -2.06% -4.97% 3.60% -12.17%
-5.35% -8.96% -15.17% -0.67% -3.63% -6.45% -39.19%
-7.20% 2.42% -0.45% -0.64% 0.23% 5.92% -9.09%
6.82% -4.66% 5.06%
Clean Tech Fund
2009
2010
2011
2012
2013
Jan
Feb
Mar
Apr
-2.73%
3.45%
5.28%
4.21%
-1.71%
-1.66%
-0.71%
-3.37%
1.30%
2.42%
-3.46%
-1.01%
1.03%
-3.59%
-5.06%
16.00%
May
Jun
0.00% -0.70%
-10.54% -2.16%
-5.73% -1.92%
-6.70% 1.89%
13.29% -3.62%
本レポートは十分に注意深く編集していますが、完全に誤りがないことを保障するものではあり
ません。本レポートはあくまで投資決定上のひとつの材料とお考えください。
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