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自動車燃料技術の開発動向(2004/8~12)<燃料・排ガス規制

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自動車燃料技術の開発動向(2004/8~12)<燃料・排ガス規制
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
平成 17 年 1 月 27 日
PISAP ミニレポート 2004-030
自動車燃料技術の開発動向(2004/8∼12)
<燃料・排ガス規制>
数年以内に世界各国で厳しい自動車燃料硫黄規制が実施されることになる。これに対応
するため超クリーン自動車燃料プログラムが各国で進行している。本ミニレポートでは石
油系自動車燃料に限定して、石油精製技術のアップグレードや精製設備の増強および自動
車排出ガスのクリーン化対策について、最近 5 ヶ月間の動向をインターネットで収集した
情報に基づいてまとめた。
1.石油精製技術のアップグレードおよび精製設備の増強
米国、カナダ、欧州をはじめ世界各国で数年以内にガソリンおよびディーゼル燃料中の
硫黄含量を 10∼30ppm 以下にすることが義務づけられており、
一部ではすでに 2004 年から
実施されている。このような厳しい規制に対応すべく、石油企業では石油精製技術のアッ
プグレードや精製設備の増強が実施・計画されている。
米国では BP、
Equilon、Tosco、Murphy
Oil、Holly 等が、欧州では独 BP、英コノコ、フィリップス、BP、蘭 Petroplus、仏トター
ル、伊 IPLOM SPA、ノルウェーStatoil 等が超低硫黄燃料の使用開始時期を早めてすでに生
産を始めている。(資料 1)時期を早めている理由の一つに、燃料中の硫黄分が PM トラップ
を阻害することが挙げられる。
即ち、
連続再生式トラップ(CRT)搭載車に対する対策である。
技術的には接触分解装置、水素化脱硫装置、水素化分解装置のアップグレード、硫黄吸収
剤によるガソリン脱硫が多い。独 BP の独自技術は、FCC ナフサ留分中のチオフェン類を高
沸点留分に接触転換してガソリン留分から蒸留分離することにより、ガソリン中の硫黄分
を 10ppm 以下とするものである。(資料 2)米国では環境保護局(EPA)による 120 以上の製油
所のデータ分析の結果、2006 年の超低硫黄ディーゼル(ULSD)のサルファー規制(15ppm 以
下)に対する精製会社側の準備は順調であり、米国内の 95%で規制対応燃料が入手可能と考
えられている。精製会社以外にエンジンメーカーや排ガス後処理設備メーカー等ディーゼ
ル業界も、PM90%削減および NOx87%削減を伴う 2006 年の ULSD 指令に向かって努力してい
る。(資料 3)
超低硫黄燃料の製造を目的とした製油所のアップグレードおよび精製設備の増強に関す
る最近 5 ヶ月間の動向として次の 12 件が挙げられる。米国の 5 件をはじめとして、カナダ
2 件、南米 3 件、南ア、ロシア、韓国各 1 件となっている。
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
まず米国では 2005 年から 2006 年にかけて完成が予定されている製油所アップグレード
は 3 件である。
1 件目は Velero Energy 社のテキサス州 McKee 製油所における 3.5 万 BPD のガソリン脱
硫装置の新設である。米 EPA ガソリン規制「Tier 2」(2005 年までに硫黄分 30ppm 以下)に
適合することが目的で、投資額はエンジニアリング会社 CB&I 社(Chicago Bridge & Iron
Company)との EPC 契約料が 4,000∼6,000 万ドルで、2005 年秋に完成の予定である。
CDTECH(Catalytic Distillation Technologies)からライセンスされた重質 FCC ガソリンの
水素化脱硫技術を採用する。(資料 4)
2 件目は Frontier El Dorado Refining 社のカンザス州 El Dorado 製油所における 2.4
万BPD の超低硫黄ディーゼル水素化処理装置と94 万Nm3/日の水素製造装置の新設である。
Velero 社と同じく CB&I 社と EPC 契約した。2006 年春に完成の予定である。水素製造装置
は CB&I 社所有の HYFORMING 技術を、水素化処理装置はデンマーク Haldor Topsoe A/S 社の
ディーゼル選択性の高い水素化触媒と CB&I 社のプロセスデザインの組み合わせ技術を採
用する。(資料 5,6)
3 件目は Flint Hills Resources 社が昨年買収したアラスカ North Pole 製油所における
超低硫黄燃料製造装置の新設で、1.7 億ドルを投資する。建設は 2005 年に開始、2007 年 1
月から北極の極低温地域でも作動する超低硫黄ガソリンとディーゼルを製造する。この燃
料は触媒コンバーターの寿命を長く保持するために重要である。(資料 7)
4 件目は加 Suncor Energy 社の米コロラド州 Commerce City 製油所をアップグレードす
る計画で、3 億ドルを投資する。2006 年初旬に完成の予定である。(資料 8)
また脱硫技術の開発例として、超音波技術開発会社 SulphCo 社の高出力の超音波により
低温、低圧下で原油を脱硫・アップグレードする技術がある。この技術は水と炭化水素混
合物に強力な超音波を当てると化学反応により脱硫されるというもので、
「ジアルキルエ
ーテルの存在のもとでの化石燃料の超音波脱硫」とのタイトルで米国特許を取得した。こ
の技術はアップストリームおよびダウンストリームの両方に適用でき、したがって超低硫
黄燃料規制をクリアする燃料の製造が可能である。装置建設までには至っていないが、
ChevronTexaco Energy Technology 社との間で共同開発契約が締結されている。
(資料 9,10)
カナダでは 2006 年 6 月 1 日に発効する連邦規制(オンロード・ディーゼルの硫黄含有量
15ppm 以下)に先立って、シェルカナダが 2006 年初頭までにモントリオールとエドモント
ンの製油所に2 基の水素化処理装置を新設する。
最近5 ヶ月間の2 件は次のとおりである。
1 件目は加 Imperial Oil 社が、連邦規制遵守のために、同社のアルバータ州、オンタリ
オ州、ノバスコシア州の 4 製油所で脱硫対策を展開中であったが、この度約 5 億カナダド
ル(約 4 億米ドル)を投資すると発表したものである。現在の硫黄レベルをほぼ 95%削減で
き、また 2007 年型モデル車エンジンを使用することで NOx や PM もほぼ 90%削減できる。
本計画の完成までには 2 年を要するという。(資料 11)
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他の 1 件は加 Ultramar 社(Velero Energy 社の子会社)がケベック市近郊の Jean-Gaulin
製油所における低硫黄ガソリンプロジェクトを間もなく完了させ、別途、低硫黄ディーゼ
ルプロジェクトを計画していることである。この計画は新規精製装置の建設、多くの既存
設備の改良、新規フレアの建設を含んでおり、カナダのディーゼル新規格に沿うよう 18
カ月以内に完成する予定である。なお、ガソリン低硫黄化は 3.00 億カナダドル、ディーゼ
ル低硫黄化は 3.50 億カナダドルのプロジェクトである。
製品はカナダ東部と米国北東部に
供給される。(資料 12)
南米ではチリ、アルゼンチン、ブラジルで次のとおり各 1 件づつが報告されている。
チリ Enap Refinerias 社の Bio Bio 製油所はフランスの総合エンジニアリング会社
Technip に約 2,100 万ユーロで水素化処理装置新設工事を発注した。この装置は低硫黄デ
ィーゼルを製造し、首都サンチアゴ周辺の硫黄分 50ppm 以下という新規制に対応するもの
である。この装置の能力は 1.2 万 BPD、2006 年 7 月初旬完成の予定である。(資料 13)
アルゼンチンにあるスペイン Repsol 社のラプラタ、
メンドーサの 2 製油所は FCC 装置改
造の基本設計をエンジニアリング会社 KBR(Halliburton の子会社)とエクソンモービルに
依頼した。2 基の FCC の改造には Automax-2 フィードノズル、接触時間を短くするライザ
ー、触媒クーラーなどが含まれる。これらの技術は KBR-エクソンモービル所有のもので、
特にライザーは FCC ガソリンの選択性および生産性の向上に貢献する。(資料 14)
ブラジルのペトロブラスはディーゼル中の硫黄分を 500ppm 未満に下げるために、
クリテ
ィーバ製油所(18 万 BPD)に 37,500BPD のディーゼル水素化脱硫装置を稼働させた。さらに
同社は Repar, Regap, Reduc の 3 製油所にディーゼル燃料のアップグレードのためにディ
ーゼル設備の改造を 2005 年 2 月までに開始することとなった。これらはディーゼル・ガソ
リンアップグレード 5 カ年計画(20 億ドル)の一環である。(資料 15,16)
南アでは Caltex Oil South Africa 社が Foster Wheeler South Africa 社とケープタウ
ンでの低硫黄ディーゼルプロジェクトの EPC 契約を締結した。投資は 3,200 万ドル。この
プロジェクトは 2006 年 1 月 1 日から開始される南アのディーゼル燃料品質規制(硫黄分上
限値 500ppm)に対応するため、ディーゼル水素化処理装置の改造と水素精製装置の増設を
行うもので、運転開始は 2005 年 11 月の予定である。(資料 17)
ロシアでは SNOS 社(Salavatnefteorgsintez)がサラバト製油所で FCC 装置群を建設する
ことで Foster Wheeler 社とエンジニアリング契約を結んだ。FCC 以外はガソリン水素化装
置、随伴ガス処理装置、専用フレアなどである。(資料 18)
韓国ではLGカルテックス社が麗水製油所に超低硫黄ディーゼルを製造するために2基の
水素化処理装置(6 万 BPD、7 万 BPD)を改造する契約をデンマークの Haldor Topsoe A/S 社
と交わした。改造内容は Topsoe 社のリアクターインターナルと触媒を採用し、硫黄分を
8ppm 以下にするほか色相も改善する。(資料 19)
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2.排ガス処理
各国の自動車排ガス規制の強化と共に従来設備の改良や新たな排ガス処理対策の必要性
が生じている。最近 5 ヶ月の開発動向は以下のとおりであるが、尿素による選択接触還元
法(SCR)が多く、4 件報告されている。
まずスウェーデンの ETG 社(Emission Technology Group)は重負荷車両用ディーゼルエン
ジン向けに尿素を使った SCR プロセスを開発した。開発技術は、NOx と反応する尿素量を
適正にコントロールするシステムを含むもので、PM 除去率 90%以上、NOx 除去率 80%以上の
両立を狙う。現在の Euro 3 ディーゼル車を Euro 4(2005 年)、Euro 5(2008 年)排ガスレベ
ル適合車に変更できる。(資料 20)
2件目は米Tenneco Automotive社のサイレンサーと尿素SCRを一体化した装置の開発で、
サイレンサーの中に SCR 触媒を挿入する。同装置は Euro 4 の排ガス・騒音規制に準拠して
おり、ダイムラークライスラー社の車に使用される予定である。ダイムラーは Euro 5 も目
指す。この技術は尿素を排ガス中に精密に投入し、アンモニアとした上で窒素酸化物を分
解するものである。(資料 21)
3 件目は自動車部品のサプライヤーArvin Meritor 社によるオランダ・ルールモント工場
における尿素 SCR の製造ラインの設立である。同システムは SCR 触媒セルと SCR マフラー
セルから成り立ち、価格は 300 万ドルで、2005 年前半から供給され、2005 年の Euro4、2008
年の Euro5 をクリアできる。(資料 22)
4 件目は米 CDT 社(Clean Diesel Technologies)が CCA 社(Combustion Component
Associates)に対して尿素注入ディーゼルエンジン NOx 削減システム(ARIS システム)のラ
イセンス契約の適用拡大を承認したもので、これにより CCA 社は同システムをディーゼル
エンジン排出ガスの尿素 SCR 処理に採用できることとなり、コストが低減する。(資料 23)
ただ、最近キャタピラー社は尿素 SCR 法がいくつかの理由によりハイウェー使用には必
ずしも最善の方法ではないと発表した。因みに同社は NOx 吸蔵触媒系を検討している。
(資料 24)
NOx 吸蔵触媒系に関しては、米 Catalytica Energy Systems 社が、NOx 吸蔵触媒装置と組
合わせたディーゼル燃料プロセッサーの試験を実車エンジンで実施し、NOx 除去率は 90%
以上という好結果を得た。触媒の改良により排ガス温度を 200℃という低温に抑えられた
事で、硫黄で被毒された触媒からの硫黄除去が容易となり、その結果触媒寿命は延びたと
いう。(資料 25)
また、世界的な触媒技術会社 Johnson Matthey 社のディーゼル酸化触媒技術を適用した
触媒コンバーター(DCC:diesel oxidation catalyst)およびマフラー(CEM:Catalytic
Exhaust Muffler)が米 EPA で認可された。この技術により硫黄濃度 500ppm 以下のディーゼ
ル燃料を使ってエンジン排ガス中の炭化水素、CO、PM をそれぞれ 50%、40%、20%に減らす
ことができる。(資料 26)
(TT)
PEC 海外石油情報(ミニレポート)
(参考資料)
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