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飼料作物優良品種選定調査試験の概要 香川県畜産試験場 主席研究員 飼料環境担当 白川 朗 はじめに 自給飼料の増産を推進するにあたって、畜産農家の労働力不足に対応した省力栽培技術、 転換畑等不良条件に適応する草種・品種の育成、単収向上を図る栽培技術の高度化等が求 められている。その中で、単収向上を通した飼料作物増産と生産コストの低減を図るため に本県では奨励品種の選定事業を実施し、収量生産が大きく作業効率の高い品種の栽培普 及を推進している。当場においては奨励品種選定における栽培成績等の情報提供をおこな う目的で「飼料作物の優良品種選定調査試験」を実施しており、3年毎の見直しにあわせ 成績の取りまとめをおこなっている。そこで今回、平成18年度から新たな品種選定のた めに、平成15年度から17年度の3ヵ年継続実施した栽培試験の成績の取りまとめた結 果について報告したい。 目的 本年での飼料作物の栽培利用形態や気候風土に適し、収量性や品質が安定し、作業性、 経済性の高い品種を選定し、県下の畜産農家に普及し自給飼料増産を図ることを目的とす る。 材料および方法 1.供試草種及び品種名 夏作 トウモロコシ(34 品種)、ソルガム(29 品種)、スーダングラス(14 品種) 冬作 イタリアンライグラス(25 品種)、 エンバク(16 品種)、ライムギ(9 品 種)、オオムギ(4 品種) 品種名 2.試験期間 3.試験圃場 表1−1、1−2、1−3 平成15年度∼17年度(3ヵ年) 夏作:各年度 5月∼9月 冬作:各年度 前年10月∼5月 畜産試験場内圃場 4.試験区面積・区制 1区面積8㎡・2区制(2反復) (イタリアンライグラスのみ1区面積6㎡) 5.調査項目 生育調査(発芽良否、初期生育、出穂期、病虫害程度等)、収量調査(草丈、生 草収量、乾物収量等)を飼料作物系統適応性検定試験実施要領に準じて実施し た。 調査結果の概要 1.トウモロコシ 生育及び収量調査の結果は表1−1に示した。 発芽及び初期生育は、平成17年に播種後の少雨でやや不良となった以外、概 ね良好であった。平成15・16年は台風による倒伏と折損が甚だしく発生した。 早生では、初期生育はロイヤルデント117、ゴールドデントKD640が良好で、耐倒伏性はスノー デント110、ゆめちからが高かった。収量は、ロイヤルデント117が生草収量、乾物収量と もに最も多かった。次いでZ−corn120とサイレージコーンFC118YPが多収であった。 中生では、初期生育はスノーデント123とクミアイデント125が良好で、耐倒伏性はサイレージコー ンFC124GPが最も高かった。収量は、生草収量はサイレージコーンFC124GPが最も多く、次 いでゆめそだちで、乾物収量ではスノーデント123が最も多く、次いでゆめそだちが多 かった。 晩生では、初期生育はゆめつよし、ゴールドデントKD777が良好で、耐倒伏性はZ−c orn130とゴールドデントKD772スーパーが高かった。収量は、生草収量はロイヤルデント130とゴ ールドデントKD772スーパーが多く、乾物収量ではZ−corn130、スノーデント127Sが多かった。 乾物収量 生草収量 900 800 700 収量(kg/a) 600 500 400 300 200 100 サイ レー シ ゙コ ーン F C1 03 ロイ ヤル GP デ ント 11 スノ サイ 0 ーテ レー ゙ン ジ ト1 コー 10 ンF C1 13 GP Zco rn 11 スノ 3 ー ゴ デ ール ント 11 ド デ 4 ント KD 64 ゆ 0 め ち か パ ら イオ ニア セ ロイ シリ ヤル ア デ ゴ ール ント 11 ド デ 7 ント KD クミ 67 サイ アイ 0 レー デ ント ジ コー 11 8 ンF C1 18 YP Zco rn 12 0 0 早生の収量(H15∼17の平均) 乾物収量 生草収量 800.0 700.0 500.0 400.0 300.0 200.0 100.0 中生の収量(H15∼17の平均) co rn 12 5 Z- 25 ーテ ゙ン ト1 7 スノ オニ ア3 1N 2 ち だ め そ ゆ パ イ 25 ト1 P クミ アイ デ ン C1 24 G 23 コー ンF サイ レー ジ スノ ーテ ゙ン ト1 ト1 クミ アイ デ ン ール ドテ ゙ン トK D7 20 23 0.0 ゴ 収量(kg/a) 600.0 400.0 300.0 200.0 100.0 0.0 サイ レー ジ コー ンN S9 9A クミ アイ デ ント 12 7 ゆ め つ よ スノ し ー デ ント ゴ 12 ール 7S ド デ ント KD 77 7 は た サイ ゆ レー た か ジ コー ンN ロイ S8 ヤ 8A ルテ ゙ン トT X1 ロイ ゴ 28 ール ヤ ルテ ド デ ゙ン ント ト1 KD 30 77 2ス ーハ ゚ー Zco rn 13 0 収量(kg/a) 乾物収量 生草収量 800.0 700.0 600.0 500.0 晩生の収量(H15∼17の平均) 2.ソルガム 生育及び収量調査の結果は表1−2に示した。 発芽及び初期生育は概ね良好であった。出穂はスーダン型ではラッキーソルゴ ーⅡ、ソルゴー型ではクミアイソルガム2号、兼用型では葉月が最も早かった。 虫害はアブラムシが発生し、特にソルゴー型の出穂時期が遅い品種ほど甚だしか った。 収量は、スーダン型では生草・乾物収量ともにスダックスとキングソルゴーが 多く、次いでクミアイソルガムハイパーであった。ソルゴー型では生草収量はス ーパーシュガーソルゴーが最も多く、次いで甘味ソルゴーとクミアイソルガム1 号であった。乾物収量ではクミアイソルガム1号が最も多く、次いでスーパーシ ュガーソルゴーと甘味ソルゴーが多収であった。兼用型ではハイグレンソルゴー が生草・乾物収量ともに最多で、次いでゴールドソルゴーであった。 2番草 1番草 200 150 100 50 イハ ゚ー ルカ ゙ム ハ クミ アイ ソ スタ ゙ッ クス ゴ ー グ ソル キン キー ソル ラッ キー ソル ゴー ゴ ーⅡ 0 ラッ 乾物収量(kg/a) 250 スーダン型の乾物収量(H15∼17の平均) 350 300 2番草 1番草 乾物収量(kg/a) 250 200 150 100 50 トウ 秋 ミツ 立 A ビ ッ ク 号ソ ゙シ ルコ ュカ ゙ー ゙ー ソル ゴ ー 天 アイ ソル 高 カ ゙ム 1号 クミ 風 立 クミ アイ ソル カ ゙ム 2 三 尺 号 ソ 高 ルコ 消 化 ゙ー クミ ソル アイ コ ソル カ ゙ ゙ー ムハ 甘 チ ミツ 味 ソル コ ミ ニ ゙ー ソ ルコ 高 糖 ゙ 分 ー ソル コ スー BM ゙ ー パ ーシ Rス ュカ ィー ゙ー ト シ ュ ソルコ ガ ゙ ーク ー ゙レ イス ゙ 0 ソルゴー型の乾物収量(H15∼17の平均) 乾物収量(kg/a) 200 150 100 50 カル ソル ゴ ー トロ ピ ー マイ ロソ ルコ ゙ ソル ゴ ー ー ゴ ール ド ネル ギ ネオ エ ハイ グ レン ソル ゴ ーソ ルコ ゙ ー 月 葉 スス ゙ ホ 0 兼用型の乾物収量(H15∼17の平均) 3.スーダングラス 生育及び収量調査の結果は表1−2に示した。 発芽及び初期生育はトップスーダンがやや劣った以外、概ね良好であった。出 穂期はHIRO-1が最も早く、次いで乾草スーダン、ドライスーダン、スーダン グラス乾草であった。全体の穂時期に大きな差はなかった。刈取り時にうまかろ ーるは未出穂であった。倒伏は平成16年に台風によりかなり発生した。 収量は、生草収量ではドライスーダンⅡ、うまかろーるが多収で、次いでベー ルスーダン、ロールベールスーダンであった。乾物収量は1、2番草も収量の多 かったベールスーダンが最も多く、次いでヘイスーダン、乾草スーダン、ドライ スーダンⅡが多収であった。 250 2番草 乾物収量(kg/a) 200 1番草 150 100 50 HI R O1 ヘイ スー ダ ン シュ カ ゙ー サマ スリ ーヘ ム ゙ー ラー 細 茎 乾 草 スー ダ ン ド ライ スー スー ダ ダ ンク ン ゙ラ ス乾 草 ベ ール スー ダ トッ ン プ スー ダ ン パ イハ ド ゚ー ライ スー ロー ダ ルヘ ンⅡ ゙ー ルス ータ ゙ン ベ スト スー う ダ ま ン か ろ ー る 0 乾物収量(H15∼17の平均) 4.イタリアンライグラス 生育及び収量調査の結果は表1−3に示した。 発芽は全体に良好であった。初期生育はワセフドウ、シワスアオバ、タチマ サリ、タチムシャがやや不良で以外、概ね良好であった。倒伏は極早生品種で かなり発生したが、さちあおば、ハナミワセ、ニオウダチ、スーパーワセ、ド ライアンの耐倒伏性は高かった。。病害は特にみられなかったが、虫害は早生 と中晩生でムギダニの発生がみられた。 生草収量は、極早生ではミナミアオバ、ウヅキアオバ、早生ではグリーンファー スト、はるかぜ、ワセアオバ、中晩生ではテティラ、ヒタチヒカリが多かった。 乾物率は、極早生ではハナミワセ、シワスアオバ、早生ではタチワセ、ワセアオ バ、ワセユタカ、中晩生ではドライアン、タチムシャが高かった。乾物収量は、 極早生ではミナミアオバ、ウヅキアオバ、早生ではグリーンファースト、はるか ぜ、ワセアオバ、中晩生ではテティラ、タチムシャが多かった。 180 2番草 160 1番草 140 収量(kg/a) 120 100 80 60 40 20 0 ミナミアオバ ワセフドウ メリット ウヅキアオバ シワスアオバ 極早生の乾物収量(H15∼17の平均) ハナミワセ さちあおば 180 2番草 1番草 160 乾物収量(kg/a) 140 120 100 80 60 40 20 ーン ファ ース ト ーワ セ 200 グ リ 早生の乾物収量(H15∼17の平均) スー パ チ ウタ ゙ ニオ ワセ ユタ カ 王 ワセ タチ マサ リ ゙ ワセ アオ ハ タチ ワセ は る か ぜ 0 2番草 1番草 180 乾物収量(kg/a) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 タチムシャ ドライアン マンモスB エース テティラ アキアオバ ヒタチヒカリ ジャンボ ムサシ 中晩生の乾物収量(H15∼17の平均) 5.エンバク 生育及び収量調査の結果は表1−3に示した。 発芽は、改良グレイオーツ以外概ね良好であった。初期生育は、コモンと改 良グレイオーツはやや不良であった。 出穂は極早生ではスーパーハヤテ隼、 ハエイブキ、早生ではコモンが早かった。草丈は極早生ではスーパーハヤテ 隼、極早生スプリンター、早生ではスピーディヘイ、ヘイオーツ、中晩生で はニューオールマイティが最も大きかった。倒伏 は、極早生でかなり発生し た。 生草収量は、極早生ではベストエンバク、ハエイブキ、極早生スプリンタ ー、早生では改良グレイオーツ、スタンドオーツ、ヘイオーツ、中晩生では ニューサビシラズ、ニューオールマイティが多収であった。乾物収量は、極 早生ではハエイブキ、極早生スプリンター、スピードスワロー、早生ではス ピーディヘイ、コモン、ヘイオーツ、中晩生ではクィーンエンバク、ニュー サビシラズ、ニューオールマイティが多かった。 250 乾物収量(kg/a) 200 150 100 50 ロー スヒ ゚ ート ゙ スワ スト ニュ ーウ エ ツヨ シ サヒ ゙ イフ ゙キ ハエ ク スト エン バ ベ ンタ ー 極 早 生 スフ ゚リ スー パ ーハ ヤテ 隼 0 極早生の乾物収量(H15∼17の平均) 165 155 150 145 140 ヘイオーツ スピーディヘイ オーツワン コモン 改良グレイオーツ 早生の乾物収量(H15∼17の平均) 175 170 乾物収量(kg/a) 乾物収量(kg/a) 160 165 160 155 150 ニューオールマイティ クイーンエンバク ニューサビシラズ 中晩生の乾物収量(H15∼17の平均) スタンドオーツ 6.ライムギ及びオオムギ 生育及び収量調査の結果は表1−3に示した。 ライムギの発芽及び初期生育はほぼ良好であった。出穂はライ太郎が最も 早い。草丈は、ライ太郎、春一番、青刈りライ麦が大きかった。耐倒伏性はラ イスター、改良ライコーン、ライダックスが高かった。生草収量は改良ライコ ーン、ライダックス、ハルミドリが多かった。乾物率はライスターが最も高 く、乾物収量はライスターとライダックス、改良ライコーンが多かった。 二条大麦の発芽及び初期生育は全体に良好であった。出穂はワセドリ2条 が最も早かった。草丈、稈長はダイセンゴールドが最も大きく、収量でもダ イセンゴールドが生草・乾物収量とも最も多かった。 160 乾物収量(kg/a) 140 120 100 80 60 40 20 クス ライ ダ ッ ッ コ イ コ ラ ー 改 良 ライ コー ン ライ スタ 早 春 ゙リ ハル ミト ギ ライ ム 青 刈 り ラ イ 春 一 番 太 郎 0 ライ麦の乾物収量(H15∼17の平均) 乾物収量(kg/a) 200 150 100 50 0 ワセドリ二条 ダイセンゴールド 飼料用二条大麦 のぞみ二条 オオムギの乾物収量(H15∼17の平均) 7.文献 農林水産技術会議事務局・草地試験場:「牧草・飼料作物系統適応性試験実施 要領(改訂5版)」平成13年4月 おわりに 県では、平成18年3月に選定会議を開催し、平成18年度見直しを行なう奨励品種 について選定を行ないました。見直しに当たっては、上記の優良品種選定調査試験の結 果から①収量性の高さ、②耐倒伏性の高さ、③初期生育の良さを主な選定基準とし、更 に実証圃での栽培成績や種子の流通状況等を勘案しました。「トウモロコシ」で10品 種、「スーダングラスを含めたソルガム」で12品種、「イタリアンライグラス」で1 0品種、「エンバク」で5品種、「ライムギ・オオムギ」で5品種の合計42品種が選 定されています。(別記一覧表)今後、牧草・飼料作物の栽培に当たっては、これらの 品種を利用されることで増収と品質向上に役立てていただけることを期待します。