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A 人的資本管理力

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A 人的資本管理力
A
人的資本管理力
01 人材評価・育成能力
02 人材管理能力
03 人材調達力
04 ダウンサイジングノウハウ
01
人的資本管理力
人材評価・育成力
人材のレベルや特徴を把握し、事業合理的に
育成していく力
1)能力・知識の概要・重要性
2)能力・知識の内容
能力・知識が求められる背景
能力・知識を有する人材とは
● 企業の事業再生・拡大や新規事業の推進には、経営
● 本能力・知識を有する人材は、
各社員の能力・特徴を的
資源の最重要要素である「人」の有効活用が求められ
る。特に、社内人材を継続的に有効活用するため、高
度な人材評価・育成が必要とされている。
確に把握し、事業合理的に育成できる人材であり、以
下のような特性を有する。
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
1 自社の事業上重要な評価項目
(職種毎の能力、成果など)
を設定できる
−職種毎の能力や成果など、自社の事業上重要な評
価項目を設定することができる。
● 企業の競争力や経営効率の向上には、各人材のレベ
−個々の人材の能力、適性、性格、志向等を見極める
ことができる。
ルや特徴を正確に評価した上で、事業戦略達成のため
に必要なスキルをもった人材を育成することが不可欠
である。
−自社の事業や戦略に最も適した育成手法を開発し、
実際に使用することができる。
の割り当てをすることは、各個人の仕事への意欲を高
め、結果的には会社の業績向上につながる。
個々の人材の能力、適性を見極める
3
育成、人材開発手法に関する知識、経験を有する
4 自社に適した育成手法を開発・実行できる
−人材育成や人材開発の具体的な手法に関する知
識や経験を有している。
●さらに、
社内人材の適性を見抜き、その人に適した仕事
2
1
自社の事業上重要な評価項目(職種
毎の能力、成果など)を設定できる
a)<自社の事業上重要な評価項目を
設定できる>とは…
●そのため、社内人材の適性を見極めた評価を行い、
そ
◎自社の事業内容および事業方針を踏まえ、職種別
の能力や成果など、事業上重要な評価項目を設定
することができる能力。
の上で事業戦略達成のために必要な人材を育成する
本能力へのニーズが高まっている。
【ヒアリング調査からの具体例】
□人材の能力を見極め、
引き出すためには現在の事業戦略
に対する理解が重要である。事業戦略をブレイクダウンし、
どのような能力を持った人材が必要かを特定した上で、
その
ような人材を評価するための項目を設定している。
(情報サ
ービス・調査業)
□個々の売上見込みを設定し、成果を出せた人材には報酬
b)具体的には…
今後の経営方針実現のために人材評価・育成力が重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
1 企業規模別
%
100
2 業種別
3 経営方針別
99.0%
◎各社員の業績に加えて、資格、過去の職務経験、人
柄、ITや語学のスキル等、複数の評価項目の中から
自社の事業内容や事業方針に最も適した評価項目
を選び出すことができる。
94.4%
83.5%
80
69.3%
75.9%
78.3%
73.2%
70.1%
81.4%
79.6%
74.0%
70.8%
60
36.9%
40
◎自社の事業を発展させていく上で重要と思われる人
材像を同定し、その人材を評価・育成していくのに必
要な要素を導き出すことができ、評価項目として設
定できる。
◎具体的な評価項目の設定、
さらには公的資格等の
一般的な評価基準を利用することによって、現在の
事業戦略にそった明確な評価基準を設定できる。
を与えるといった成果主義を導入した。
しかし、
評価の際には、
成果のみを評価するのではなく、成果、能力、人柄の3つの
軸から総合的に評価している。
(職別工事業)
□社員の評価をする際には、
マインドとスキルの二面から評価
を行う。このうち、
マインド面は、
事業戦略の理解、
仕事への
モチベーション、
コミュニケーション力の三つに分けられる。
(専
門サービス業)
□資格、職務経験(職種、職務内容、期間等)、IT技能、語学
等により基本的な能力評価を行う。ただし、
これらの項目は、
社員一人一人の自己申告に頼る部分が大きい。そこで、
上
司や関係先(顧客等)
に仕事の成果の客観的な評価を聞く
ことで、
より適正な評価を行っている。
(専門サービス業)
20
0
16
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
17
人的資本管理力
01
□社員のやる気を引き出すことを目的として、
評価項目は社員
【ヒアリング調査からの具体例】
が評価されたいと思われる項目をもとに作成した。
「責任感」
や「粘り強さ」
「独創性」など246項目の評価ポイントがあり、
□各個人が本当にやりたいと感じている仕事が何なのかを見
極めた上で、
人を仕事に就けている。例えば、
2年目に入社
項目ごとにプラス3からマイナス1まで5段階の点数をつけ評
した人物については、彼の「枠組みを作りあげていくことが
価している。
(一般機械器具製造業)
好き」
という資質を見極めた上でCFOを任せ成功した。
4年
□飲食業界ではこれまで用いられていなかった「サービス接
目に入社した人物については、
「アイデアをビジネスモデルに
遇検定」を活用することで評価・育成にあたっている。飲食
実現することに長けている」
という能力を見極めてビジネス
業では営業成績などはっきりとした数字を算出しにくいので、
モデルの開発を担当させ成功した。
(広告業)
「サービス接遇検定」を評価する上での一つの手段として
活用している。
(一般飲食店)
□面談において将来像や過去の経験を聞くことで、特性・思
b)具体的には…
◎OJT、研修プログラム、通信教育、留学等の人材育
成・開発手法のそれぞれの優位点や有効活用方法
などに関する知識がある。
◎豊富な知識や経験をもとに、それぞれの事業内容や
事業方針に対して、最も適した人材育成・開発手法
が何かを理解できる。
◎各社員の能力・特性・資質などを踏まえた上で、人材
を効果的に育成する手法や仕組み作りの経験やノ
ウハウをもつ。
考等を見極め、適材適所に人材配置を行っている。さらに
配置後も、
企業の目標に沿って、
各社員のレベルを把握し事
業合理化を推進している。
(専門サービス業)
□入社時点では飛びぬけた能力を持ち合わせていない社員
2
個々の人材の能力、適性を見極める
a)<個々の人材の能力、適性を見極める>とは…
◎( 1で設定した評価項目を用いて)個々の人材がど
のような能力をもっているか、
どのような業務が適し
ているかを見極める事ができる能力。
れぞれの部門の業務内容に専門的な技術分野の知識と、
後の成長性を評価することにしている。その際には、
結果だ
その専門に適応した技能検定資格を理解している。
(廃棄
けで評価するのではなく、
その社員の向き不向きを見抜き、
物処理業)
と感じている。
(非鉄金属製造業)
□当社は、
100%能力給の全員年俸制(賞与・退職金なし)
で
あり、
評価は社員の自己申告を基に、
上司と社長の2段階で
決定するという体制を取っている。複数の評価項目に従っ
て社員が自己採点を行い、
その結果を上司と社長がチェッ
b)具体的には…
クしている。社長と上司とのチェック内容も本人にフィードバ
◎仕事の成果や仕事を遂行するプロセスを通じて、各
社員の持っている能力や適性等を見極める事がで
きる。さらには、仕事の成果やプロセスから、各社員
の能力・適性を見極める仕組み作りができる。
◎本人だけではなく、他者からの評価や場合によって
は各種アセスメントツールなどを活用することにより、
客観的に個々の人材の能力、適性を判断することが
できる。
◎個々の人材が、
どのような仕事を求めており、将来的
にどうなりたいかを具体的に把握した上で、その人の
能力を最大限発揮できる仕事を見極める事ができる。
◎業務にフィードバックできるようなより実践的で効果
的な評価が実施できる。
18
□各部門の業務内容に一番適した資格を勧めるために、
そ
に対しても、
それぞれの部署に配属になり、
実務を経験した
人材の能力を活かす道筋を作ることが評価者として重要だ
◎人材の能力、特性、性格、志向、特技、適性等、個々
の人材の質について適切に見極めることができる。
【ヒアリング調査からの具体例】
ックするので、社員はどの点が足りないのか、
自分の長所が
何かを把握することができる。
(一般機械器具製造業)
□社内の人間全員が連帯感を持ちながら意識を高めていく
気が付いた。
(一般飲食店)
□社員教育のうち、高度なコミュニケーションスキルが要求さ
れる販売テクニック、客とのコミュニケーション、
メーカーとの
交渉などは、
ある程度レベルアップするまでマンツーマンで指
導し向上するまで教えることが効果的だと考えている。
(そ
の他の小売業)
変革が求められている。組織変革のためには、管理職クラ
a)<育成、人材開発手法に関する知識、経験を有
する>とは…
◎OJT、研修プログラム、通信教育、留学等の人材育
成・開発の手法に関する専門的・総合的な知識。
◎自社に適した育成手法を開発するにあたり検討の
ベースとなる経験を有している。
自社に適した育成手法を
開発・実行できる
a)<自社に適した育成手法を開発・実行できる>
とは…
◎自社の事業形態や従業員の能力スキルの現状を踏
まえた上で、適した育成手法を開発し、具体的に実
行できる能力。
b)具体的には…
◎自社の現状を的確に把握し、現状において最も欠け
ている人材・能力を見極めた上で、その人材・能力を
効果的に育成できる教育プログラムや研修プログラ
ム等を開発できる。
◎自社の事業内容や事業方針を軸に、従業員の能力・
適性を踏まえた上で、マンツーマン指導や自己啓発
を促すなど適した育成手法を実行できる。
◎事業戦略達成上で中核となると思われる人材に必
要な業務経験を見極めた上で、育成を前提とした人
材配置・異動を実施することができる。
検定・資格や研修カリュキュラムを導入することが有効だと
スに「問題意識を課題としてかたちにする力」
「解決策を提
3
4
には、共通の目標を持つことが重要である。そのためには、
□社長が交代し、外資系企業のグループになったことで組織
育成、人材開発手法に関する知識、
経験を有する
人材評価・育成能力
示する力」
「それを推進する力」
を身に付けてもらうことが重
要であり、
これらの能力を形成するための手段としては、
ケー
ススタディや体験学習が適していることを経験上知っている。
(その他の卸売業)
【ヒアリング調査からの具体例】
□本人の能力を少し超える程度の仕事を任せて、責任感を
持たせることにより自己啓発を促している。最初は苦しむが徐々
に効率を上げるようになってくる。また、一つ平均点より低い
ものがあっても、一つ平均点より優れているものがあったら、
個人のよいところを伸ばして、
後から足りないところをフォロー
するやり方を取っている。
(情報サービス・調査業)
□部下の教育ができるリーダー層の育成をするために、
リーダ
ー層の役割分担を明確にした上で、
リーダー層がやるべきこ
とを提示した。例えば、
部下が指示したことが出来ない場合
に手助けをするのではなく、
なぜ出来ないのか、
それはスキ
ル不足なのか理解の欠如なのかはっきりさせて問題解決さ
せるようにリーダー層に心掛けさせた。さらに、
リーダー層に
部下の教育のための具体的なノウハウを身に付けてもらう
ため、
サービス講習会、
リーダーシップ研修会などを定期的
に実施した。
(一般飲食店)
19
人的資本管理力
01
人材評価・育成能力
3)能力・知識の形成・獲得・育成
□社員に対してはまず興味のあることから順にスキルを習得
するように仕向けている。興味があることから始めれば、習
得が早く効率的な人材育成を行えるためである。
(運輸に
附帯するサービス業)
● 企業では、本能力・知識を有する人材を「現社員を育成する」
「新たに採用する」ことよ
り獲得している場合が多い。
● 就業者は、
「OJT」と研修プログラム等「OJT以外」の方法で、本能力・知識を形成・獲
得・育成している。
● 特に、
“必要な人材像”を自分の中で明確に定めた上で実務経験に取り組むことが、人
材評価・育成力の形成・獲得に効果的である。
□当社の事業であるガス設備に関する設置・施工・修理は、
資
格を保有していないと携われない業務が多い。
また、
資格を
保有することが各人材のレベルアップにも直結する。そこで、
資格取得の補助として、
一度目の受験料の負担、
講習会費
用の負担ができる資格支援システムを構築した。
また、
費用
を会社側から負担することで、
「ガス配管工事」資格では、
保有率80%を維持することができた。
(ガス業)
□自社にとって中核となる人材を早い段階で見極め、国内の
事業部だけでなく、
海外勤務を経験させることで、
自社の活
能力・知識の形成・獲得・育成手法
動を総括的に把握させていく。さらには、複数の部署への
異動と適したタイミングでの昇進を経験させることによって、
組織の責任者として育成している。
(非鉄金属製造業)
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
◎企業の本能力・知識を有する人材の獲得方法は、
「現社員を育成する」との回答が4割と最も多く、
次いで「新たに採用」とする回答が3割弱と続く。
能力レベル
【能力レベルの分類】
人材評価・育成の総合性および汎用性
と運用の実効性により設定される
● 本能力・知識を有する人材に求められる究極的なテー
マは、事業内容や職種・職階に関わらず総合的な人材
評価・育成の仕組みを構築し、運用出来るかということ
である。
レベル
目安となる行動
レベル1
組織内の特定の事業内容、職種・職階
において評価・育成の仕組みを作り、運
用することができる
レベル2
● 従って、
人材評価・育成の総合性と運用の実効性を能
事業横断的な(全社レベルでの)職種・
職階での評価・育成の仕組みを作り、運
用することができる
26.5%
40.0%
13.1%
13.0%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
新たに
外部人材を
活用
レベル3
自社・他社、
および職種・職階に関わりな
く総合的・汎用的な仕組みを作り、運用
することができる
◎ヒアリングを実施した個人(就業者・経営者)によると、本能力・知識の形成・獲得・育成方法として
「OJT」と研修プログラム等「OJT以外」が利用される傾向がみられる。
66.7%
O J T 以外(研修など)
57.6%
環境要因(資質など)
% 0
20
既に
外部人材を
活用している
3.8%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
OJT
力レベル設定の軸として以下のように設定する。
無回答
3.6%
45.8%
20
40
60
80
100
21
人的資本管理力
01
具体的方法
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
□当該スキルについては、先任の上司と組ませて、等級制人
事考査制度の運用開始事業等を一緒にやらせることで人
材育成をしている。特に、
年功序列的な人事制度からの変
● OJT(自己研鑽も含む)
は、当該スキル・能力形成の基
本であり、
「自社の事業上重要な評価項目(職種毎の
能力、成果など)の設定」
「個々の人材の能力、適性を
見極める」
「育成、人材開発手法に関する知識、経験」
「自社に適した育成手法を開発・実行」といった全ての
能力要素の形成・獲得に必須である。
更があった時は、
現場サイドとの厳しいやり取りを通じながら
スキルアップをさせていった。
(電気機械器具製造業)
成プログラム作成の業務から培われることが多い。その
際に、
“ 必要な人材像 ”を明確に定めた上で業務に取
り組むことが、当該スキル・能力形成の飛躍的な向上に
つながる。また、自身の部下の育成など、評価・育成が
直接自分の業務に影響するようなケースであると、OJT
の効果がより期待できる。
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
複数の部署に在籍して多数の人間と共同で仕事をして
きた、などの経験が人材評価・育成に必要な人を見る
目を養うのに役に立つ。
態勢が十分に整っていないことが考えられる。そこで、
人材
育成担当者や管理職が、
部下を育てる意識を持つような勉
a)研修プログラム
◎当該スキル・能力の形成には、OJTと共に、社内外
の研修プログラムへの参加が広く実施されている。
主な効果としては汎用的な知識が学べることであり、
「自社の事業上重要な評価項目の設定」や「育成、
人材開発手法に関する知識、経験」等の形成獲得
に寄与している。
ダーとして人材評価・育成する立場になってからの数年は、
強会を月に一回実施している。
(一般飲食店)
《就業者側の意見》
□人材評価や育成が求められる営業所長時代に、人事・労
務等の知識の必要性を痛感した。そこで、
独自に社外研修
人事部の人間を交えた三者面談の方式をとることによって、
判断能力を養ってもらう。
(情報サービス・調査業)
や通信教育を受講しながら現在のスキルを獲得した。
(道
◎とくに人材評価についての知識は、自社で蓄積され
たノウハウだけでなく、一般的にも通用する汎用的な
ノウハウも重要である。この点では、研修プログラム
が重要視されている。
路貨物運送業)
□新規事業部へ人材配置をする業務には、
チームリーダーと
して部下を持ったことがある人間が任務にあたる。なぜなら、
チームリーダーとしての経験が、
どのような能力をもった人材
が新規事業を推進するために必要かを見定めるのに役立
つからである。
(情報サービス・調査業)
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
□社内で人材・採用に関する研修会を定期的に行っている。
内容は自社にとっての必要な人材像や育成方法、採用の
チームリーダーとして部下を持ったことがある、
●その他、
□飲食業が人材流動の激しい理由の一つには、人を育てる
□当社の人事考課は、
面談方式により実施する。グループリー
部下を評価する立場としての業務内容評価や人的評価の
● 特に、当該スキル・能力は、実際の人事考課や能力育
2
人材評価・育成能力
《就業者側の意見》
2 金融・保険業務に精
□1 SEとしての基本的業務ができる、
3課題解決能力や対人関係能力を向上させる、
通している、
の3つを目的としてSE研修プログラムを作成している。毎年
方法などである。意見を交換することにより、会社全体の育
成力を高めるようなシステムになっている。
(衣服・その他の
3
<環境要因>はどのように
影響しているか…
● 本能力・スキルのうち、
「個々の人材の能力、適性を見
極める」
「自社に適した育成手法を開発・実行」の形成
・獲得・育成に関しては、学生時代における指導的な立
場での評価・教育経験や、反対に評価や指導を受けた
経験が役に立つことも多い。
繊維製品製造業)
□全社的な人事評価を行うためには、
汎用性のある基準を設
プログラムの改定をしているが、
「必要な人材像」を明確に
定する必要がある。そのため、
一般的な人事評価方法など
することで能力開発プログラム作成能力が向上した。
(情
も参考とするため、
社内で勉強会を開いている。
(飲食料品
報サービス・調査業)
卸売業)
【ヒアリング調査からの具体例】
□学生時代のクラブ活動(サッカー部)
において、副部長をし
ていた。サッカーという連携スポーツを通して、部員1人1人
□グループ企業の総務、
経理業及び、
営業支援の仕事を十数
□年数回、業界団体により研修担当者のための研修が開催
を適材適所のポジションへ配置し、部員の性格や行動パタ
年経験したことが、
現在の人事での評価や人材育成のスキ
されており、
それに担当者は参加している。研修内容はその
ーンを観察しその部員に合った方法で指示やアドバイスを
ル形成の基礎となっている。その経験があったおかげで、
ど
年により業界内で重要と思われる研修テーマについてのレ
与えてきた。さらに、
味方・敵の動きを観察し即座に判断し、
のような人材を育成していけばよいかイメージがはっきりとつ
クチャーが中心である。その内容を担当者が持ち帰り、
自社
的確な指示を大声で伝えなければ負けてしまうため、試合
かめている。
(物品賃貸業)
の研修メニュー立案に役立てさせている。
(銀行・信託業)
内外を問わず全体を把握し一人一人を指示する能力が、
ク
□部下の採用を行うようになってから当該スキルが飛躍的に
□講習会や研修会を通して、
自社にとっての必要な人材像や
向上した。この採用での判断が自身の業務実績にある程
育成方法の意見を交換することが、会社全体の人材育成
度効果が及ぶ可能性を考え、
人材の持つ素地についての
力を高めていくことに繋がる。
(その他の小売業)
より深い考慮を行うようになった。
(専門サービス業)
ラブ活動で大いに培われた。
(総合工事業)
□部下の特性を見抜き、
誉めていくべきか、
叱るべきかを判断
し実行に移すことで、部下は能力以上の成果をあげること
ができる。そのことは、
「小さい頃、
誉められて伸びるタイプだ
ったが、
反対に誉められると調子に乗ってしまいそれ以上の
能力が発揮されない友人もいた」
という体験を通じて培わ
れてきたものだと考えている。
(電気機械器具製造業)
22
23
02
人的資本管理力
人材管理能力
適切な人事制度を構築、運用、管理できる力
1)能力・知識の概要・重要性
2)能力・知識の内容
能力・知識が求められる背景
能力・知識を有する人材とは
● 事業再生・拡大等の事業戦略推進のためには、
適切な
● 本能力・知識を有する人材は、
企業内の人材が効率的
人材の管理が重要であり、人事、労務等に関する制度
を適切に構築、運用、管理することが求められる。
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
に働けるような人事制度を構築・運用・管理できる人材・
組織であり、以下のような特性を有する。
1
2 自社の人材特性に関する知識(スペック、
タイプ)
−多岐にわたる人事制度の体系、内容に関する知識
と経験を有している。
● 人材管理の幅は広く、評価・育成制度、昇進や異動等
の処遇制度の設計から給与、退職金等の賃金制度、
福利厚生に関することまで多岐にわたる。制度運用の
際には、制度に関する幅広く、かつ専門的な知識の保
有を前提とした上で、自社の特性に適応した制度に改
良していく必要がある。
−自社の人 材 特 性やスペックに関する知 識を有して
いる。
−自社戦略を踏まえた上で、人材マネジメントの方向性
を決定することができる。
−人材マネジメントシステムを、効果的に構築、運用、
管理することができる。
●さらに、
事業戦略推進に向けた効果的な制度運用をして
いくには、事業戦略に適合する人材マネジメントの方向
性を的確に定めた上で制度運用することが重要である。
人事制度の体系、内容に関する知識と経験
1
3
人材マネジメントの方向性(ポリシー)
を決定する
4
人材マネジメントシステムを効果的に運用する
人事制度の体系、内容に関する
知識と経験
a)<人事制度の体系、内容に関する
知識と経験>とは…
◎人事管理制度の体系や内容、
また労働基準法等の
関連法規に関する専門的・総合的な知識。
●そのため、事業戦略および社内人材の特性を踏まえた
上で、適切な人事制度を構築・運用・管理できる、本能
力へのニーズが高まっている。
2 業種別
3 経営方針別
96.2%
87.4%
62.7%
55.8%
43.5%
48.3%
49.9%
◎賃金・処遇制度や評価・育成制度、配置転換等の
人事制度全般に関する基本的な知識・ノウハウを保
有している。
◎裁量労働制や能力主義人事制度、職能資格制度
等、今の時代に求められている人事制度に対する専
門的な知識を有している。
79.7%
80
60
のモチベーションの低下が懸念されるため、
「職能給+職
務給」
という自社独自の人事管理制度を構築した。この制
度を効果的に実施するには、賃金と業務内容の割合や職
50.0%
53.1%
いたので、
制度構築の際には注意した。
(情報サービス・調
査業)
□社会保険、労災保険の手続きに関することや労働基準法
b)具体的には…
%
100
□成果主義導入の際、
従来の職能給制度で培ってきた人材
能給と職務給の割合の調整を図ることが課題だと理解して
◎人事管理制度を導入、構築、管理していく上でのベー
スとなる経験の蓄積。
今後の経営方針実現のために人材管理能力が重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
1 企業規模別
【ヒアリング調査からの具体例】
50.8%
◎新たに人事管理制度を構築する手順を把握してお
り、
さらに新人事制度導入の経験がある。
44.9%
40
について習熟している。従業員のカウンセリング等の職務を
担当する中で、労働基準法に沿った人事管理・運営を行う
ことが、
従業員の雇用環境を守ることにつながることを理解
している。
(飲食料品小売業)
□社員が働きやすい環境をつくるため、
時間単位で取れる有
給制度やフレックス勤務制度を導入することにした。法律的
な問題や他社との兼ね合いもあるので、
他業種であっても経
営者と接触する機会があれば、人事制度に関する情報を
得てきた。
(電気機械器具製造業)
27.3%
20
0
24
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
25
人的資本管理力
02 人材管理能力
□グループ企業の統廃合が進んでおり、
人材管理面において
も、
グループ会社個々がバラバラの制度を運用するのではな
く、
グループ企業全体を視野に入れた制度を整備する必要
がある。そこで、
現在は、
子会社の新人事制度導入の仕事
をしている。ポイントは、
親会社の制度とこれまでの子会社の
制度をいかに融合させて、
新たな制度をつくるかにある。そ
のためには、
評価制度・報酬制度・資格制度の各制度が、
ど
2
自社の人材特性に関する知識
(スペック、
タイプ)
a)<自社の人材特性に関する知識>とは…
◎職種、業務内容、保有スキル、
目標、企業への貢献等、
自社従業員の特性に関する知識。
◎事業戦略に合致した人事制度を導入するために必要
となる自社人材の特性情報の把握。
のような特徴をもっているか把握している必要がある。
(情
報サービス・調査業)
□給与制度の見直しを図った際、
法改正の情報や人事制度
の法律面での問題点等を常に意識しながら業務を遂行した。
(一般機械器具製造業)
3
人材マネジメントの方向性( ポリシー)
を決定する
a)<人材マネジメントの方向性( ポリシー)を
決定する>とは…
◎事業戦略の達成に向けた人事管理方針、人事マネ
ジメントポリシーを策定できる能力。
◎上記の人事管理方針、人事マネジメントポリシーを
具体化するための目標項目等を作成できる能力。
b)具体的には…
◎従業員の意見や要望を聞きながら、人事制度に反
映するための情報収集ができる。
◎業務進捗状況の詳細なチェックや業務成果のラン
ク付けを図ったりすることによって、自社の人材特性
を把握できる。
果主義を導入して欲しいという要望があった。彼らの意見
を採用することで、
モチベーションの向上や業績アップにつ
人材マネジメントシステムを
効果的に運用する
a)<人材マネジメントシステムを効果的に
運用する>とは…
◎社内人材の特性と人材マネジメントの方向性(ポリ
シー)
を踏まえて、効果的な人材マネジメントシステム
を運用できる能力。
◎事業戦略に適合した新人事制度を設計・導入し、社
内で定着できる能力。
b)具体的には…
◎経営層との話し合いにより事業戦略に必要な人材
像を明確にし、
その上で人事制度の構築・変革方針、
人材育成方針等を作成できる。
◎企業の競争力向上にむけた人材マネジメントを実施
するために、モチベーション向上につながる制度導
入を人事マネジメントポリシーとして設定できる。
【ヒアリング調査からの具体例】
□営業・販売職の場合、
若手社員から年功序列を廃止し、
成
4
【ヒアリング調査からの具体例】
□会社の事業が原子力発電事業という特異性のある業種の
ながる利点があると判断し、新人事制度の構築・運用を図
ため、
自社独自の人事管理制度が必要となった。そのため、
った。
(その他の小売業)
コンピテンシー作成のために、
各部門の上層部にヒアリング
b)具体的には…
◎人材マネジメントポリシーに沿って構築した人事制度
およびマネジメントシステムを通じて、事業目的が達
成できるよう、効果的な制度運用を行うことができる。
◎事業戦略、社内人材の特性を踏まえ、自社にとって
必要な人材を安定的に確保・定着させるための、適
切な人事管理、運営、労務、教育体制を構築するこ
とができる。
◎有資格者に営業課題を与えたり、信頼関係を築く努
力をしたり、風土に根ざした規律を作成して浸透させ
たりすることによって、人材マネジメントの仕組みを
効果的なものにできる。
を行い、優秀・理想な人物像を描いてもらい、
それを元に独
□新人事制度を導入するには、
会社業務に関する総合的知識、
さらにそれを踏まえた上で行動に移せる実行力が必要になる。
自のコンピテンシーを作成した。その結果、
自社独自の行動
特性による能力評価制度を構築し、
運用に至った。
(電気業)
さらに、
各従業員の特性を把握することが必要になるため、
ビジネスソフトを導入し、
各従業員の業務進捗状況を毎日把
□仕事をする上で、
家族の理解も必要であると考え、
家族との
握することにした。加えて、従業員のメンタル的な部分を把
時間が取れるような人事制度構築を目指した。具体的には、
握する必要もあるので、
従業員とは頻繁に会話を交わすよう
男性社員にも育児休暇を使える制度を構築した。また、取
にしている。
(食料品製造業)
引先にアメリカ系の企業が多いため、
英会話教室に通える
時間の確保ができる様、人事制度自体を調整した。この働
□制度改革を行う上では、
押し付けになってしまわないように、
社員全員から話を聞きより良い方法があれば何でも取り入
きやすい職場環境を確立したことで、退職した従業員は創
業以来10年間で1人である。
(電気機械器具製造業)
れたいと考えていた。そこで、
コミュニケーション能力を活用
して仕事上でも仕事を離れても社員からの情報収集を行った。
(電気機械器具製造業)
□自動車販売を行う当社では、
営業職300人、
整備職300人の
体制で県内全域をカバーしている。各営業所における整備・
営業社員の配置については、
従業員のモチベーション向上
□従業員の業績や保有スキルをランク付け、
データベース化を
図ることで、
自社の人材の特徴、
強みや課題を常に把握し、
制度変更に反映させやすい環境を構築した。
(その他の事
業サービス業)
26
と効率的な人材育成を目的とし、
営業は基本的に異動させ
ないこと、
整備はエリアを区切って配置替えを行う、
という方
針に基づいた人事管理を行っている。
(自動車・自転車小
【ヒアリング調査からの具体例】
□会社が求める人材と社員が今現在持っている能力が明確
でないため適材適所が図れていないことから、今までの制
度を見直し、
「コンピテンシーマネジメント」を導入した。これ
により、個々人が自分自身の実力を把握することができ、
より
効果的かつ効率的な人材マネジメントが可能になった。
(電
気機械器具製造業)
□業務知識・能力・行動力を要素とし、
それらを総合的に判断
した上で、役職に順次ステップアップしていく制度を導入し
ている。具体的にはビジネスソフトを用い、
業務の進行状況、
さらには一日毎の行動をできるだけ詳細に報告させている。
上司が部下の行動を把握するなど、
情報共有の一面もあり、
人材管理システムの中核としてフル活用している。
(食料品
製造業)
売業)
27
人的資本管理力
02 人材管理能力
□技術を有する職種の場合、
一度必要とされる資格を取得し
てしまうと怠惰してしまうことも考えられ、向上心が低下する
□給与制度の見直しを行っている。給与制度の見直しは、
立
案を組合に交渉して成立すれば条文化していく。立案は、
恐れがある。そのため有資格者には、
営業課題を与えるなど、
年齢給、
勤続給、
能力給、
退職金のマイナス方向への見直
業務意識を向上させることに注力している。
(設備工事業)
しであるが、世の中の動き、個々人の質、
また誰がそれを評
□給与制度を変更するには自社の実態を把握する必要があ
るので、
他部署とのコミュニケーションを頻繁にとっている。
ま
た、会社全体で部署間でのミーティングや会議で給与の問
題点について話を聞くことで会社の現状を常に踏まえるよう
にしている。さらに、
会社における給与の全体像を常にチェ
ックし、
特に部署間で給与の差が大きい部分を把握している。
価するのか、
成果を評価できる能力のある者の絞り込みをし
ながら立てていく。給与制度の見直しをしている担当者は、
組合との交渉に長けている。会社の現状を踏まえ、問題点
や改善点を常に把握している。
(一般機械器具製造業)
□社内の風土を把握した上で、
会社の規律をつくり、
この規律
を各個人へ浸透させ厳守させた。
(その他の卸売業)
(一般機械器具製造業)
3)能力・知識の形成・獲得・育成
● 企業では、本能力・知識を有する人材を「現社員を育成する」ことで
獲得している場合が多い。
● 就業者は、
「OJT」と研修プログラム等「OJT以外」の方法で、
本能力・知識を形成・獲得している。
● 管理職もしくは人事セクションにおける人材マネジメント経験が、能力形成の基礎となる。
さらに、人事制度導入等の実務経験がスキル向上につながる。
能力・知識の形成・獲得・育成手法
能力レベル
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
【能力レベルの分類】
人材管理システムの複雑性と運用の出
来・不出来により設定される
レベル
目安となる行動
レベル1
自社内の目の届く範囲(身近な範囲)に
おける人材管理を実行することができる
◎企業の本能力・知識を有する人材の獲得方法は、
「現社員を育成する」との回答が4割と最も多く、
次いで「新たに採用」とする回答が続く。
● 本能力・知識を有する人材に求められる究極的なテー
マは、自社や事業内容に関わらず多種多様な事業に関
わる人材を管理するシステム(仕組み)を構築し、効果
的に運用できるかということである。
レベル2
自社限定および単一事業での人材管理
の仕組みを作り、運用することができる
レベル3
自社・他社、および事業に関わりなく多
様な人材を管理するシステムを作り、運
用することができる
● 従って、人材管理の複雑性と管理の仕組み運用の出
来・不出来を能力レベル設定の軸として、能力レベルを
以下のように設定する。
17.5%
42.0%
17.4%
12.6%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
新たに
外部人材を
活用
既に
外部人材を
活用している
4.1%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
◎ヒアリングを実施した個人(就業者・経営者)によると、本能力・知識の形成・獲得・育成方法として
「OJT」と研修プログラム等「OJT以外」とが利用される傾向がみられる。
OJT
75.8%
70.5%
O J T 以外(研修など)
38.9%
環境要因(資質など)
% 0
28
無回答
6.4%
20
40
60
80
100
29
人的資本管理力
02 人材管理能力
具体的方法
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
□日々の業務で制度への理解、
運用実務の能力を鍛えている。
制度の大きな見直しをする際には作業チームを作り、制度
改革の実務に触れさせる。
(総合工事業)
● 本能力・知識の形成・獲得・育成手法の主となっている
OJT(自己研鑽も含む)は、
「人事制度の体系、内容に
関する知識と経験」
「自社の人材特性に関する知識(ス
ペック、
タイプ)」
「人材マネジメントの方向性(ポリシー)
を決定する」
「人材マネジメントシステムを効果的に運
用する」の全ての能力要素の形成・獲得に有効である。
● 管理職もしくは人事セクションにおける部下等の人材
管理・活用経験が、人材管理力形成の基礎となること
が多い。さらに、専門的知識や人事制度の効果的活用
といった当該スキル・能力の応用部分は、人事制度導
入などの実務経験で形成される。
□親会社で3ヶ月間席を移して業務研修を受けさせ、知識と
経験の蓄積を図る。業務の流れを直接見ることで、
どのよう
な手順、
方法で制度設計したらよいかを学習する。
(情報サ
ービス・調査業)
《就業者側の意見》
ている人事制度への高い関心や人事労務関連の書籍
での自己研鑽が、能力向上に役立つ。
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
□グループ企業の統廃合が進んでおり、
人材管理面において
も、
グループ会社個々がバラバラの制度を運用するのではな
く、
グループ企業全体を視野に入れた制度を整備する必要
a)研修プログラム
がある。そこで、
現在は、
子会社の新人事制度導入の仕事
◎研修プログラムは、OJTと共に当該スキル・能力の
主要な形成・獲得手段として実施されている。
をしている。ポイントは、
親会社の制度とこれまでの子会社の
制度をいかに融合させて、
新たな制度をつくるかにある。そ
◎社内での人事・労務管理の基本研修や、社外にお
ける労働法や人事事例集、新人事制度等の専門研
修が、人事制度についての汎用的・専門的な知識
習得につながる。
◎さらに、他社の人材マネジメント運用の経験談を聞く
ことが、
「人材マネジメントシステムの効果的な運用」
能力の拡大に役立つ。
のためには、
評価制度・報酬制度・資格制度の各制度が、
ど
のような特徴をもっているか把握している必要がある。
(情
報サービス・調査業)
□給与制度の見直しを図った際、
法改正の情報や人事制度
の法律面での問題点等を常に意識しながら業務を遂行した。
(一般機械器具製造業)
□(人材管理能力の獲得については、
)20年に及ぶIT関係会
社において管理職を勤めていた経験が多いと思う。ある時
は200人ほどのマネジメントをする立場にあった。その経験
から人に関することについて、
デジタル思考では捉えきれな
いという持論を持つに至った。数値化されたものだけではな
● 特に、実務経験によるOJTの際には、実際に運用され
2
く、
物事を総合的に捉えていく思考方法を忘れてはならない
と考える。
(情報サービス・調査業)
□人事に関する職務に移った際、
労務関係、
退職予定者から
の社会保険について等に対応するために様々な関係書を
読んだ。かつレベルアップの必要性を感じ、計数管理の自
己学習等の取り組みを行い、
人事・労務の通信教育を受講
した。
(協同組合)
□前職の時、先輩リーダーの下で、職務分析・職務給策定の
業務に携わり、
その過程を通じて職務記述書を多数書き、
ど
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
□人事に関しての知識の習得は、
金融機関や各教育機関の
実施する社外セミナー、
人事課が行う社内セミナーによって
これまで行われてきた。
(情報サービス・調査業)
□民間企業の研修会を利用している。入社してから最初の
一年くらいの間に、
「研修制度の流れについて」や「給与、
賞与、退職に関する人事の事例」等についての企業研修
a)学生時代の経験
◎学生時代のクラブ活動経験、法学部で労働関連の
法令を学生時代に学んだこと等、学生時代に人事
管理に関連することを経験することにより、これら能
力を得たケースが多くみられた。
金運用について」や「労働基準法について」や「社会保険法」
等といった具体的内容のもの、
法律について等の企業研修
会に参加させる。
(情報サービス・調査業)
【ヒアリング調査からの具体例】
□学生時代に部員200名の音楽部で庶務責任者として対人
調整力を身につけることができた。
(電気業)
《就業者側の意見》
った。
このように実務を通じて習得したものが役に立っている。
(その他の事業サービス業)
<環境要因>はどのように
影響しているか…
会に行かせる。次の段階としては、
入社後2-3年くらいに「資
のように人事制度を策定するかを習得した。その他自分で
人事労務関連の書籍や他社における事例集での勉強も行
3
□会社から、
人事制度の再構築並びに賃金体系の見直し業
□法学部で労働関連の法令について学んだことが人事関連
の仕事を志すきっかけとなった。
(総合工事業)
務のために一年間、
外部機関の講義に出席するよう要請さ
□新人事制度システム導入時、
中小企業大学校のコンサルタ
ント指導の下、
賃金制度評価制度、
人材開発制度等を自社
れた。これを受け新しい人事制度を作り上げ、賃金体系の
見直しを行った。
(協同組合)
に合わせた制度として構築し、
それを社員全員に開示する
ことにより納得のいく制度導入を実現させてきた。
(電気機
械器具製造業)
□勉強会において、様々な企業の社長や取締役と話し、
その
会社の人材管理プロセスを勉強する中で、特に失敗談が
参考になっている。例えば責任と達成度を数値化し、内部
で競争させた場合、
会社が右肩上がりのときはいいが、
ある
程度安定期になると逆に過当競争に陥り足の引っ張り合い
になりマイナスになるという実例が知識となった。
(その他の
サービス業)
30
31
03
人的資本管理力
人材調達力
事業に必要な人材を特定し、惹きつけ、採用する力
1)能力・知識の概要・重要性
2)能力・知識の内容
能力・知識が求められる背景
能力・知識を有する人材とは
● 知識の専門分化がより進んでいる状況では、人材を全
● 本能力・知識を有する人材は、事業に必要な人材を特
て内部で育成することは難しくなっている。そのため、事
業再生・拡大を進めていく上では、内部での人材育成と
共に、外部から優秀な人材を獲得することが期待されて
いる。
定し惹きつけ、採用するための仕組み作りの中心となる
人材・組織であり、以下のような特性を有する。
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
−自社の戦略を踏まえた上で、必要とする人材像を設
定することができる。
−必要な人材を獲得するのに適切な採用手段を選定
することができる。
●自社の事業戦略や組織体制によって必要となる人材
の内容は変化する。将来の経営ビジョンを見据えて、自
社に必要な人材を具体化し、その人材を採用するのに
適した方法を特定させることが重要である。さらには、採
用した人材を、自社に定着させる仕組みの構築も必要
となる。
1
必要とする人材像を設定する
2
適切な採用手段を選定する
3
企業にとって適切な人かどうかを判断する
4
効果的な採用活動ができ、企業に定着させる仕組みをつくる
−採用面接等において、企業にとって適切な人かどう
かを判断することができる。
−効果的な採用活動ができ、企業に定着させる仕組み
をつくることができる。
1
必要とする人材像を設定する
a)<必要とする人材像を設定する>とは…
必要な人材像を明確にし、適切な手段で確
●このように、
◎自社の企業特性、人材特性、事業戦略等を踏まえ
た上で、現在及び将来にわたって自社に必要な人
材像を明確に設定することができる能力。
保することのできる本能力へのニーズが高まっている。
【ヒアリング調査からの具体例】
□今後の事業目標としては年率15%以上の成長を目指して
2006年に売上高1000億円の事業拡大を実現することである。
そのためには、会社の求める人材像を考慮しながら採用し
ていくことが重要であると考える。具体的には、
①率先してリ
ーダーシップを発揮できる人、②高い目標を絶えず自らに課
b)具体的には…
今後の経営方針実現のために人材調達力が重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
1 企業規模別
%
100
2 業種別
3 経営方針別
91.0%
85.6%
80
72.5%
68.1%
60
57.2%
60.8%
59.1%
◎経営戦略や将来の事業目標に対して、
どのような人
材の補充があれば目標が達成できるのかを詳細に
設定できる。
◎自社の事業内容や経営状態、事業戦略等の状況
を的 確に把 握し、どの部 門においてどのようなスキ
ルをもった人 材が不 足しているのか、見 極めること
ができる。
たるようにしている。
(その他の製造業)
◎事業戦略の達成のために必要とする人材像とその
規模(人数)
を、具体化し明確にすることができる。
65.9%
61.1%
60.3%
54.6%
題し、
その達成の為の努力を惜しまない人、
③失敗のリスク
を恐れないチャレンジ精神の旺盛な人、④最終顧客である
患者に対して、何をすべきか、
どうするのがベターかを考え
続けられる人、
が会社の求める人材であると考え、
採用にあ
□当社の仕事は、
クライアントが売りたい商品を効果的に消費
者に訴えていくという業務である。消費者の動向を的確に
つかみ、
クライアントの企業イメージを高めていくことが求めら
れる。そのため、市場動向や商品動向、
さらには今の若い
人たちが何に興味があるか等、
常に関心を持って情報を取
り入れることができる人が必要となる。
(広告業)
42.3%
□現場の人員要求の情報をタイムリーに捉えて、
すばやく現場
40
29.0%
とやりとりできないと、人材の供給は上手くできない。年度を
通して各部門の新しい業務計画と、
それに伴う大まかな人
20
員要求が出されてくるので、
それに基づいて大体の人材調
0
32
達計画を立てている。採用する人材は営業職と技術職に
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
分かれる。営業職の場合は人柄・人物像が、
技術職の場合
は保有する能力・技術が重要となる。
(情報サービス・調査業)
33
人的資本管理力
03 人材調達力
2
適切な採用手段を選定する
□当社では店舗・住宅等のデザインを行なっているが、
求人情
【ヒアリング調査からの具体例】
報誌やハローワークでは調達しにくい「空間プロデュースが
できる人材」
を、
「登録スタッフ制度」
という形で集めることが
a)<適切な採用手段を選定する>とは…
できる。才能はあるが、
どこに就職したら空間プロデューサー
◎ターゲットに合った適切な採用マーケットおよび効果
的な採用手法を選定することができる能力。
になれるのかわからない人に、
自社HPに登録してもらっている。
登録スタッフの中からプロジェクトごとに適切と思われる人材
b)具体的には…
を選び、
プロジェクトに参加させている。期日通りに良い物が
◎業界や職種、年齢層等、自社が必要とする人材の
いる人材マーケットを特定することができる。
つくれた人にはアルバイトとしてチャンスを与え、
さらにチャン
スをものにできた人材を採用するようにしている。
(専門サー
ビス業)
◎求人広告、人材紹介会社、ハローワーク、知人の紹
介等、複数ある採用手段のうち、必要とする人材を
獲得するための適切な手段を選定できる。
交流会」において様々な業種の人物に声をかけ、
現在業務
に必要な様々な分野のエキスパートと関係を持つことに成
および実際の人材調達に役立っている。
(専門サービス業)
□中途採用では、
どのような媒体を通して募集するかが重要
である。当社では、
①求人会社のwebサイト、
②人材紹介会
社、
③「転職フォーラム」への参加、
等を利用している。人材
紹介会社を通した募集では、紹介会社で基本的な人物像
や職業適性等を事前にチェックしてくれるので、
当社の負担
は軽減されるメリットがある。
「転職フォーラム」では、
各社が
ブースを設置し、
そこに応募者が訪れて面接することになる。
求人側にとっては、
フォーラムの場で応募者のスクリーニング
ができ、求めている人材に対してだけ後日本格的な試験や
面接を行うことができるというメリットがある。
(情報サービス・
調査業)
研究できるような、
社会的意識の高い人材を調達する。
(そ
の他の製造業)
a)<企業にとって適切な人かどうかを
判断する>とは…
◎自社の企業特性や事業戦略に沿って特定した人材
タイプと照らし合わせ、採用しようとする人材が適切
かを判断できる能力。
a)<効果的な採用活動ができ、
企業に定着させる仕組みをつくる>とは…
◎採用上のアピールポイントを理解・伝達でき、採用
競合と比べて効果的な採用ができる能力。
◎自社にとって望ましい人材を効果的に採用し、定着
させる仕組みをつくることができる能力。
□最初のスクリーニングで中小企業診断士の資格を持ってい
やインタビュー調査等の調査業務に適した人材かどうかを
企業にとって適切な人かどうかを
判断する
効果的な採用活動ができ、
企業に定着させる仕組みをつくる
断している。
また、
利益を追求するのではなく、
患者のために
断する。加えて、
1年間の研修期間を通じて、
ヒアリング調査
功した。半年以上に渡る開業準備段階で構築した人的ネ
ットワークが、現在の人材調達をする上でのマーケット特定
薬品開発において、
適切な薬を作るための執念を重要視し、
さらに当該分野に対して最先端の技術を有しているかを判
人物が、仕事に対して高い意欲をもっているかを面接で判
3
□学生時代、前職時代の交友を基盤にして始めた「異業種
り認識することである。面接では、
当社の主要業務である医
る人物を集めることで、
レベルを確保している。さらに、
その
◎人的ネットワークや独自の採用方法等、優秀な人材
を調達するためのより多くの手段をもっている。
【ヒアリング調査からの具体例】
□採用を行う上で重要なのは、採用する人の価値観をしっか
4
見極める。
(情報サービス・調査業)
□採用にあたっては、
できる限り個性的な人物、
これまで会社
にいる人材と違う種類の人物であることを重視している。C
OO
(最高執行責任者)
は、会社の業務が軌道に乗り始め
社員が増大していく組織には不可欠だが、
これまで適任者
がいなかった。これまでは社長がCOOを勤めていたが、社
b)具体的には…
◎経営ビジョンや事業の社会的な価値、自社事業の
優位性、社風等、
自社の採用上のアピールポイントや、
採用対象となる人材が「何故、必要なのか」を、対
象に的確に伝えることによって、優秀な人材を獲得
することができる。
◎採用段階において、待遇や人事制度等の各種制度、
職場環境、社風などを具体的かつ正確に理解させる
ことができる。さらには、採用後のフォローの仕組み
など、入社後の自社環境に対する疑問・不満などに
真摯に対応する仕組みを用意できる。
長の組織運営は熱意にあふれ気持ちが先行してしまうので
論理整合性に欠けることがあった。そこで、
(これまで会社に
b)具体的には…
◎採用面接でのコミュニケーションにおいて、仕事に
対する価値観やキャリアの志向性などを把握でき、
さ
らに自社の企業理念や経営方針等に対する理解度
などを把握できる。
◎採用面接でのコミュニケーションにおいて、職務経験、
技術・知識、資格や人柄など、必要な人材像に照ら
し合わせて、自社にとって望ましい人材かを見抜くこ
とができる。
◎研修期間を設けて業務遂行能力を把握したり、他者
評価や各種アセスメントツールによる評価を行うなど、
採用した人材を再評価する仕組みを用意し、本当に
必要な人材かどうかを判断できる。
いないタイプの)論理性に長けており説明も上手な人材をC
OOとして採用した。採用したCOOは、
方針が論理的で一
貫しているので社員も従いやすく、
その結果、
これまでの欠
点を補った円滑な組織運営ができるようになった。
(広告業)
□面接合格後、半年間のテスト期間を置き、
その間に数回設
けられるチェックに全て合格して初めて正社員となる。この
ような採用手法で現在のところ失敗はない。
(その他の小
売業)
【ヒアリング調査からの具体例】
□当社に欲しい人材は他社でも欲しい人材となるので、同一
応募者が複数の求人企業から採用通知をもらうこともある。
そのような場合、
当社は、
特定のソフト開発では業界のNo.1、
No.2の実力者が2人いるので、人事採用の際、彼らを企業
PRに使い、
「有名開発者と一緒に仕事ができる」
を訴求する。
(情報サービス・調査業)
□当社は、
システムとアートの融合という新しい発想の中での
コンサルティング事業を展開しており、採用活動の際にもこ
の点をアピールしていった。これによって、
多くの優秀な人材
の興味をひきつけることができ、最終的には採用することが
できた。
(専門サービス業)
□多くの優秀な人材から興味をもってもらうためには、企業そ
のものの知名度を上げる必要があった。知名度を上げる手
段として、
バナー広告を活用したり、
HPのデザインを工夫した。
また、
業務内容をできるだけ分かりやすく伝えることを心掛け
ている。
(情報サービス・調査業)
34
35
人的資本管理力
03 人材調達力
3)能力・知識の形成・獲得・育成
□社員が、
職場環境に対してどのような要望を持っているかを、
できる限り把握するようにしている。さらには、
「能力給」
「時
間拘束が少なく、好きな時間に働きたい」等の要望にあわ
せて、
働きやすい環境を整備してきた。
(その他の事業サー
ビス業)
● 企業では、本能力・知識を有する人材を「新たに採用する」
「現社員を育成する」ことより
獲得している場合が多い。
● 就業者は、
「OJT」で、本能力・知識を形成・獲得している。
● 特に、本能力・知識の基礎となる人を見定める能力は、人事職、営業職、管理職等で
人と接する経験を積み重ねることにより形成・獲得されている。
□採用担当者は、
配属を決定した後も、
入社して10ヶ月経過し
た頃にフォローアップ面接を実施し、
改めて適性を見極める。
そして内定後も希望を色々聞いている。入社後間もない人
だけでなく、本社から離れている場所にある事業部の社員
も記憶するほど歩きまわっており、
その甲斐もあって入社3年
後の離職率は1%以下と非常に低い。
(化学工業)
能力・知識の形成・獲得・育成手法
能力レベル
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
◎企業の本能力・知識を有する人材の獲得方法は、
「新たに採用する」との回答が3割強と最も多く、
次いで「現社員を育成する」とする回答が2割強と続く。
【能力レベルの分類】
人材の採用難易度と組織化により
設定される
レベル
目安となる行動
レベル1
効率的・効果的な採用戦略を立案し、実
行することができる
35.0%
24.0%
12.2%
18.9%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
新たに
外部人材を
活用
● 本能力・知識を有する人材に求められる究極的なテー
マは、採用難易度の高い職種等においても有能な人
材を採用できるとともに、定着させるための組織的採用
力強化ができるということである。
レベル2
採用難易度の高い職種、不人気業種等
において効率的・効果的な採用戦略を
立案し、実行することができる
レベル3
上記に加え、組織として採用力を強化し、
適切な定着策を実行することができる
◎就業者は、本能力・知識の形成・獲得・育成方法として「OJT」との回答が多い。
OJT
76.9%
O J T 以外(研修など)
45.1%
環境要因(資質など)
% 0
36
既に
外部人材を
活用している
3.5%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
● 従って、
人材の採用難易度と組織化をレベル設定の軸
とする。
無回答
6.5%
47.3%
20
40
60
80
100
37
人的資本管理力
03 人材調達力
具体的方法
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
□社内で、
定期的な人事ローテーションが確立されており、
2∼
3年で担当業務が変わる仕組みから前任者と1∼2年間、
一
緒に業務を行う事で採用活動ノウハウを引き継いでいる。
(貸
● 当該スキル・能力の形成・獲得・育成手法の主となって
いるOJT(自己研鑽も含む)は、
「必要とする人材像を
設定する」
「適切な採用手段を選定する」
「企業にとっ
て適切な人かどうかを判断する」
「効果的な採用活動
ができ、企業に定着させる仕組みをつくる」といった全
ての能力要素の形成・獲得に必要となる。
● 当該スキル・能力の基礎をなす人を見抜く能力は、
人事
職、営業職、管理職等で人と接する経験を積み重ねる
ことにより獲得されていく。さらに、実際の採用活動を積
み重ねることで、当該スキル・能力は形成されていく。
●また、
当該スキル・能力を活かす業務は、人材像の設定
から獲得・定着までを考えれば、
「人材」を対象としたタ
ーゲットマーケティングといえ、その意味でも高度な営業
経験や企画・販促などの業務経験は、当該スキル・能
力の形成にも活かされる。
金業、
投資業等非預金信用機関)
□採用する側は、現場の経験を多く積むことによって、人を見
2
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
a)研修プログラム
◎当該スキル・能力の形成・獲得・育成はOJTを中心
に行われているが、OJTの補助的な位置付けで研
修プログラムも効果的に利用されている。特に、
「適
切な採用手段を選定する」
「効果的な採用活動が
でき、企業に定着させる仕組みをつくる」能力の獲
得に寄与している。
3
<環境要因>はどのように
影響しているか…
● 学生時代にリーダー的な立場にたって多くの人間をまと
めてきたことが、本能力・スキルの形成・獲得に役に立
ったケースもみられる。
【ヒアリング調査からの具体例】
る目を養うことになる。仕事の種類から見て豊かな感性を磨
くことも大切である。
(専門サービス業)
◎研修プログラムの内容は、主として雇用に関する知
識習得を目的とするものが多い。
□学生の頃、
イベントやパーティー等の司会をアルバイトで経験
した。多くの人々を飽きさせずにまとめあげるには、
いかに興
□現在の採用担当者は、
コンビニエンスストアで直営店店長や、
味を引き付けるように分りやすく物事を説明することであり、
各店舗を回ってアルバイト店員を指導する社員の教育担当
それが現在でも活かされていると感じている。
(その他の卸
を行ってきた。数多くの人と接する経験の中で、
必要な人材
を見極める力、効率的な採用・定着の仕組み作りを学んで
いる。さらに、以前勤めていたコンサルタント会社において、
クライアントに対しての企画提案業務を経験してきたことによ
って、
必要な人材を惹きつける能力や提案力の高い人材を
探す能力等が引き出されたといえる。彼自身が相手の能力
を引き出し、
セルフコントロールできる力を持っていることも大
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
□学生時代は生徒会長や学級委員に選ばれることが多かった。
学校内やクラスで問題が起きた時は、
まず自分としては相手
□社内では、
「採用のプロが選ぶ人材とは」
という内容の本を
に不快感を与えず、相手の話をよく聞くことに注意した。人
テキストとして、勉強会を実施している。社外研修では「失
の話に耳を傾けることで、
相手が何を伝えたいのか、
本当の
敗しない採用」等セミナーの受講による知識のレベルアップ
事を話しているのか判断できるようになった。
(情報サービス・
の推奨を行っている。
(その他の卸売業)
調査業)
きなポイントである。
(専門サービス業)
《就業者側の意見》
売業)
《就業者側の意見》
□前職の流通関係の会社は、
急激に成長した会社でもあった
□会社設立3年目に入社したが、
当時、
人事採用は社長が知
り合いを通じて他社から引き抜きを行っていた。その際、社
長との同行で社長が会社に必要な人材がどのようなタイプ
かを教えられた。
(その他の飲食店)
□人材紹介会社での経験で、求人ニーズと求職ニーズの双
方を見る力と、人を見る目を培うことができた。
(証券業、商
品先物取引業)
□前職の時、
営業という立場から多くの人に自社の旅行製品
について説明する機会があり、
客との日常的なやり取りの中で、
多少なりとも人間を見る目が養われてきた。その経験が、
当
ため、
外部の研修に参加し1週間缶詰状態の中で学んだ。
雇用以外を中心テーマとした外部研修にも、
人材マーケット
に対する知識を深めるために参加している。
(その他の事
業サービス業)
□必要な知識を習得するために、
人事関連セミナーや人事関
連他社事例の研究会等に参加している。
(情報サービス・
調査業)
□採用に関する知識は、
中小企業大学、
その他各種セミナー
における研修に参加しスキルを獲得している。
(その他の卸
売業)
病院に必要な人材タイプを特定する能力につながっている。
(医療業)
□人材調達の職務では面接等で応募者に与える印象が重
要である。そうした面接の技術は経験を積みながら身につ
けてきた。特に、
自分としては相手の話をよく聞くこと、不快
感を与えないように努力した。
(情報サービス・調査業)
38
39
04
人的資本管理力
ダウンサイジングノウハウ
適切な代謝の仕組みを構築し、社内の人的資源の
質的・量的な最適化を実現する力
1)能力・知識の概要・重要性
2)能力・知識の内容
能力・知識が求められる背景
能力・知識を有する人材とは
● 経営を安定化させ企業競争力を向上させるには、
社内の
● 本能力・知識を有する人材は、
社内の人的資源の質的・
人的資源を、質的・量的に最適化するダウンサイジング
が必要となる場合がある。ダウンサイジングは、短期的な
コスト削減ではなく、新たな経営環境に適合するための
適切な人材代謝の仕組みが構築されることが求められる。
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
量的な最適化を実現できる人材であり、以下のような特
性を有する。
−事業の方向性を洞察した上で、自社に必要な人材
の質と量を把握する。
なくてよい社員を削減し、逆に削減する必要のある社員を
削減しない等、企業競争力の低下につながる恐れがある。
事業の方向性を洞察し、必要な人材の質と量を把握する
2
適切な人材の配置、流動化を行う
リスク管理ノウハウ
3 ダウンサイジングの法的知識、
−適切な人材の配置、流動化を実施できる。
ダウンサイジングを実行した場合、実際には削減し
●また、
1
−ダウンサイジングの法的知識、
リスク管理ノウハウを
有し、法的リスクを回避できる。
余剰社員の解雇、給与の大幅カット等の施策は、
「法
●さらに、
1
的に訴えられる」、
「労働組合との間でトラブルを引き起
こす」等のリスクを背負うことになる。また、無理なダウン
サイジングは、社員の士気も大きく低下させることとなる。
事業の方向性を洞察し、
必要な人材の質と量を把握する
a)<事業の方向性を洞察し、必要な人材の
質と量を把握する>とは…
◎自社事業の方向性や、将来の姿を洞察し、量、質両
面から各部署・職種ごとに人員の過不足状況を把
握する能力。
経営戦略に沿った社内の適切な人員配置を設
●そこで、
定し、社内人材を質的・量的に最適化できる本能力への
ニーズが高まっている。
今後の経営方針実現のためにダウンサイジングノウハウが重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
2 業種別
3 経営方針別
74.1%
62.6%
60
44.7%
◎自社の経営方針や将来ビジョン等から自社の事業
方向性を洞察し、各部署に必要とされる人材像およ
び規模を具体的に把握することができる。
◎管理職会議等の定期的な開催や各部署の責任者
の説明、普段からの現場とのコミュニケーション等を
通じて、現状の人員配置状況および各部署・職種
の過不足状況について把握し、事業方針を実現す
るために必要な人材を確定できる。
%
100
80
77.9%
55.9%
□自社の事業方針としてコストパフォーマンスの改善が掲げら
れており、人材の量や規模等を適正化する人事計画が重
要課題となっている。当社の基本事業は航空機の整備で
あるが、
フライトスケジュールの都合で、
航空機は整備を完了
させるまでの時間が全て決まっている。そこで、
機材の整備
に必要となる人員は、
親会社(航空会社)
との調整の上、
算
b)具体的には…
1 企業規模別
【ヒアリング調査からの具体例】
54.8%
48.9%
41.9%
52.6%
□売上が伸び悩む中で、職種により、社員、
アルバイト・パート、
派遣社員とうまくバランスミックスさせ効率を高めることが必
要になってきている。自社の業務は、
主力のビル清掃、
設備
やビルの保守管理、
警備員派遣、
受付スタッフ派遣、
ホテル
事業関係等、
多岐にわたっている。その中で、
どのようにして
バランスを取りながら人材を配置していくかを計画している。
(その他の事業サービス業)
□会社側の人員不拡張という方針から、
採用を抑えると共に、
53.8%
内部人材の効率よい配置を行っている。人員の流動的配
45.8%
45.5%
出し直している。
(機械・家具等修理業)
35.4%
40
置の管理で、
システム開発業務ごとの仕事量や納期といっ
た問題を考慮し、
どの程度の量の業務ができるかを把握で
きれば、今後の事業見通しを元に人員の規模を定めること
20
ができる。
(情報サービス・調査業)
0
40
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
41
人的資本管理力
04 ダウンサイジングノウハウ
□次長・部長会を定期的に開催し、
各事業部において、
現在、
【ヒアリング調査からの具体例】
人員が足りている、足りない、余剰人員が出ている等、責任
者から会議で報告してもらう。その結果をもとに、
どのような
人員調整を行うかを決定する。
(総合工事業)
□客室の稼働率や繁忙期・閑散期等を考慮しながら、
業務委
託や派遣等の人件費予算が算出される。これをもとに、業
務のピークボトムにあわせて人員を配置している。特に、一
□人事部人事課にて社員の配置を行っている。社員の配置
人が複数の業務を対応するような形をとることによって無駄
については、
社員の意思を尊重する形をとっている。意思表
な人件費を発生させないようにしている。
(旅館、
その他の
示は各部署の責任者から人事部にあがり、四半期に一度
宿泊所)
の人事会議で、
異動を決定する。基本的には、
人事部や管
理職主導での異動は行わない。
(道路貨物運送業)
□単にリストラを進めて経費を節減するだけでなく、人材の質
の向上に対する視点を持って業務を行っている。そのため
闇雲に人員を削っていくのではなく、適材適所に人材を配
置し一人一人に明確な役割を担ってもらうという視点で要
員の見直しを行っている。
(医療業)
2
適切な人材の配置、流動化を行う
a)<適切な人材の配置、流動化を行う>とは…
◎必要な人材の質と量を把握した上で、事業の方向
性に沿った適切な人材配置、流動化を実現すること
ができる能力。
□新聞の配達が事業の中心である。
3∼5年に最低1回は配
達のエリア変更が新聞社よりなされ、
その都度従業員数を
増減する必要がある。具体的には、
正社員と契約社員のバ
◎会社全体での人員調整方針、重点事業分野への
人員投入や縮小事業分野の人員削減等、事業の
方向性に応じて保有能力を活かした効果的な人員
調整を行うことができる。
◎人員削減をすべき部署に対して、自社の人員調整
方針を各現場に納得してもらった上で、他部門の不
足状況の説明等を行い、人員の異動を実現すること
ができる。
◎関連会社への出向や転籍、早期退職制度の導入、
あるいはアウトプレイスメントサービスの活用など、余
剰人員削減のためのさまざまな手段を把握した上で、
自社にとって最適な方策を講じることができる。
ダウンサイジングの法的知識、
リスク管理ノウハウ
a)<ダウンサイジングの法的知識、
リスク管理ノウハウ>とは…
◎解雇等による人員削減に関する法的知識と、法的リ
スクを回避するための適切な管理ノウハウ。
b)具体的には…
◎円滑な人員削減を実現するため、関連する法的知
識やリスクを認識し、法的リスクを負わないダウンサ
イジングを実行できるノウハウを有している。
◎人員削減を実施する際に、労働法や就業規則に照
らし合わせ、適切な人員削減方法を検討できる。
◎整理解雇の必要性、整理解雇回避の努力、人選の
合理性、労働者側との協議等の条件をクリアして、
適切な整理解雇を実行できる。
ランスを上手く調整する事が主な業務となる。なるべく正社
員数を少なくし、契約社員を中心に雇用調整を行うのを原
則としている。
(情報サービス・調査業)
□日々変化する需要に対して社内の人材をフレキシブルに活
b)具体的には…
3
用し、
対応しているが、
会社としては現在いる現場の当社社
員数を減少させ、
アウトソーシング等を活用していく方向で
進めている。人員は製造部門の採用枠を減らす自然減と早
期退職制度・転職支援会社の活用等で行っている。また、
人員削減の際には、
再就職支援(アウトプレースメント)会社
を活用している。
(電気機械器具製造業)
□人員調整には、
50歳を過ぎた社員に対し、
関連会社の社長
【ヒアリング調査からの具体例】
□安易に人員削減すると会社側に法的リスクが生じるため、
人員削減するには、
労働法や就業規則に照らし合わせ、
正
当な解雇理由があるか検討する必要がある。
よって当社では、
①人員削減の前に、
残業代のカット、
新規採用の凍結、
パー
ト・アルバイト社員の打ち切り、
再就職の斡旋等、
解雇を回避
するための努力を行った。②事前に労働組合や従業員に
人員整理をする必要性を説明した。③人員削減しなけれ
ば会社が存続できない状況にある旨を説明し、説得にあた
のポストを用意するといった「早期退職制度」を活用した。
った。これにより、
法的リスクを負わずにダウンサイジングを実
関連会社である運送会社では、
現在、
後継者問題を抱えて
行することができた。
(電気機械器具製造業)
おり、
経験豊富なベテラン社員の需要が高まっている。この
ような状況を予測した上での人事戦略であった。
(道路貨
物運送業)
□会社側の人員不拡張という方針を各現場に納得してもらう
ことから始まり、他部門の不足状況の説明等により、人の異
動の実現につなげることになる。
(情報サービス・調査業)
□社員と派遣社員とを上手く組み合わせて、
効率を高めること
が必要になってきている。派遣法の改正に伴って、飛行機
整備という今まで介入していなかった特殊な分野に契約社員、
パート、
アルバイト等の雇用ソースを活用しながらパフォーマ
ンスを向上させている。
(機械・家具等修理業)
□採算のとれていない事業を1つ廃止し、
その事業を受け持
っていた職員3人に辞めてもらった。このときは退職金を全
額支払い、
更に1割5分上乗せした。3人の職員は、
退職金
の上乗せで自主的に辞めた。再就職についても協力したた
め、
辞めた従業員はむしろ喜んでいた。
(協同組合)
42
43
人的資本管理力
04 ダウンサイジングノウハウ
3)能力・知識の形成・獲得・育成
能力レベル
【能力レベルの分類】
ダウンサイジングのスムーズさ、残った社
員のモチベーション
(モラル)維持により
設定される
レベル
目安となる行動
レベル1
法的リスクを回避しながら、
ダウンサイジ
ングを実行することができる
レベル2
事業合理的、
かつスムーズにダウンサイ
ジングを実行することができる
レベル3
効果的なダウンサイジングの実行とともに、
残った社員のモラルダウンを招かず、社
内求心力を強化することができる
● 本能力・知識を有する人材に求められる究極的なテー
マは、円滑なダウンサイジングの実行および、残った社
員のモチベーション(モラル)が維持できるかどうかとい
うことである。
● 企業では、本能力・知識を有する人材を「現社員を育成する」
「新たに採用する」こと
により獲得している場合が多い。
● 就業者は、
「OJT」と研修プログラム等「OJT以外」で、本能力・知識を形成・獲得している。
● OJTでは、特に、人事での適正な人材採用・配置業務の経験や、
リーダー職でのマネージメ ント経験が、
「必要な人材の質と量の把握」
「適切な人材の配置」能力の形成・獲得に役立つ。
ダウンサイジングのスムーズさ、残った社員のモチ
● 従って、
ベーション(モラル)維持を能力レベル設定の軸とする。
能力・知識の形成・獲得・育成手法
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
◎企業の本能力・知識を有する人材の獲得方法は、
「現社員を育成する」との回答が3割強と最も多く、
次いで「新たに採用する」とする回答が2割強と続く。
23.2%
33.8%
15.1%
16.5%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
新たに
外部人材を
活用
無回答
7.7%
既に
外部人材を
活用している
3.8%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
◎ヒアリングを実施した個人(就業者・経営者)によると、本能力・知識の形成・獲得方法として
研修プログラム等「OJT以外」と「OJT」が利用される傾向がみられる。
OJT
66.7%
73.8%
O J T 以外(研修など)
54.8%
環境要因(資質など)
% 0
44
20
40
60
80
100
45
人的資本管理力
04 ダウンサイジングノウハウ
具体的方法
《就業者側の意見》
2
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
3
<環境要因>はどのように
影響しているか…
□前の企業では、人事・総務に所属し、特に採用に関する業
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
● 当該スキル・能力の形成・獲得・育成手法の主となって
いるOJT(自己研鑽も含む)は、
「事業の方向性を洞察
し、必要な人材の質と量を把握する」
「適切な人材の
配置、流動化を行う」
「ダウンサイジングの法的知識、
リ
スク管理ノウハウ」といった全ての能力要素の形成・獲
得・育成に有効である。
● 人事での適正な人材採用・配置業務の経験や、
リーダ
ー職でのマネージメント経験が、当該スキル・能力の根
幹をなす「必要な人材の質と量の把握」
「適切な人材
の配置」能力の形成・獲得に役立っている。
務を行ってきた。その業務を通じて、無駄の無い効率的な
人材配置、
その人材に合った適切な業務を与える事の重
要性を学ぶことができた。
(その他の事業サービス業)
□経営企画室に所属する中で、終身雇用・年功序列体制を
見直す人事制度改革を10年前に実行し、
各部署に部門長
というポストを設け、
社員の実力を把握し、
責任体制の明確
化を計った経験が当該スキル・能力に役立った。特に、
早期
退職制度を活用した人員削減の実行に活かされている。
(総
合工事業)
み重ねることによって、当該スキル・能力をより強固なも
のにしていく。
品を作り出すために、
制作に関る業務の中から資金配分の
比重を考え、作品に合うスタッフ・人物の人選からチームを
材の配置を行うスキルを培うことができた。
(映画・ビデオ制
作業)
□10年間、
チームリーダーとしてスケジュール管理・調整を行っ
理を行ってきた。
このような経験から、
ミッションに合わせた最
【ヒアリング調査からの具体例】
適なリソース配置を行う力を身につけることができた。
(専門
《企業側の意見》
サービス業)
を正確に予測し、
計画的な人員調整を実施することを期待
している。当該スキル・能力の教育ついては、
実際の業務経
験をつむことが一番有効だと考えており、各部門の責任者
や先輩社員によるOJTで対応している。(教育)
□適正規模・配置については、
ある程度経験に基づいた解決
法等、
経験のある人から受け継ぐ必要がある。そこで、
人材
育成としては、
OJT、
特にこのような能力・経験のある人の下
につけて一緒に学ばせることで対応している。
(教育)
46
◎研修プログラムとしては、労働法に関する知識、雇
用調整・ダウンサイジングの事例等の内容が挙げら
れている。
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
□キャッシュフロー管理ノウハウの持ち主で、
仕事の効率性を
追及する人材でもある業務部長に、雇用調整について外
◎当該スキル・能力における「事業の方向性を洞察し、
必要な人材の質と量を把握する」
「適切な人材の
配置、流動化を行う」の獲得においては、効率性や
冷静な判断力、決断力、業務に私情を挟まない公平
性等の元来備わった特性や性格が役に立っている
ケースがみられた。
【ヒアリング調査からの具体例】
い業務である。
しかし、会社が最小限の体力を回復するた
めにとドライに割り切った。肩に力が入ると危険であり、
やる
気を出してしまうと、
却って相手に誤解を招いてしまう。自分
なりに割り切って前向きなエネルギーに変えるようにした。
(精
密機械器具製造業)
部の研修に参加させ、
本人の知人である大手企業人事部
クラスの人からレクチャーを受けさせてもらい、
ノウハウを身に
付ける努力をしてもらった。
(その他の事業サービス業)
《就業者側の意見》
□運送業において、
無駄なルートによる増員は死活問題となる。
□社内で労働法や就業規則に関する勉強会を実施したり、
ダ
30年の配送員経験による配送ルートの土地勘を活用して、
ウンサイジングに関する最新事例を紹介する社外研修に参
計画どおりの人員配置、
配送ルートによる最も効率的な人員
加し、
スキルを獲得・形成してきた。
また、
マネージメント・労働
配置を行ってきた。この経験が、現在のダウンサイジング業
問題等のセミナーにも参加した。
(教育)
務にも活きている。
(道路貨物運送業)
a)生来持っている資質
□人員調整業務は、人の生活に関わることなので、非常に辛
限られた少ない予算の中で相手のニーズに合う最高の作
てきた。さらに、後半の5年間には、複数ミッションの進行管
□当該スキル・能力の保有者には、各事業部門の売上・費用
◎研修プログラムは、OJTと共に当該スキル・能力の
形成・獲得・育成の主要な方法である。特に、専門
的知識が必要となる「適切な人材の配置、流動化を
行う」
「ダウンサイジングの法的知識、
リスク管理ノ
ウハウ」能力獲得には、研修プログラムへの参加が
欠かせない。
□以前、
勤務した会社ではCM制作に携わっていた。その際に、
組み取り組む経験をしてきた。その経験の中で、適切な人
●さらに、
上司や先輩社員について実際の業務経験を積
a)研修プログラム
□当該業務に従事したころは、
ダウンサイジングの基礎となる
人事に対する知識が全くない状態であった。そこで、
人事に
関係する社外研修に積極的に参加して知識を蓄えていった。
さらには、
本を読んで業界や業務等の勉強をし、
知識を蓄え
た。また、再就職支援会社からアドバイスを受け、参考にし
ている。
(一般機械器具製造業)
47
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