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平成 17 年度戦略的基盤技術力強化事業 研究開発成果報告概要

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平成 17 年度戦略的基盤技術力強化事業 研究開発成果報告概要
平成 17 年度戦略的基盤技術力強化事業
研究開発成果報告概要
事業管理法人名
(財)岡山県産業振興財団
(代表者氏名)
(理事長 青井 賢平)
技術区分
所在地
〒700-1221
技術分野
ロボット部品分野
アクチュエータ
テーマ名
医療用コンパクト型センサ・駆動ユニットの開発
岡山市芳賀 5301
(Tel:086-286-9651)
研究開発課題
小型・軽量化技術
研究開発期間
平成 17 年
1.委託業務の概要
外科手術では、患者の負担軽減、術後の早期回復、感染の防止を目的とした低侵襲手術が求められている。こ
のような低侵襲手術は人間では手の大きさや疲労等から限界があり、その期待はロボット手術(ロボティック・
サージェリ)に委ねられている。
このような背景のもと、国産の手術ロボットの開発に着手してきたが、過去の開発経験と臨床医師の意見等に
より、手術ロボット共通の問題点が明らかとなった。
問題点1:既存のガイド等ではロボットが大きくなり、一般的な手術室には適用が困難
問題点2:診断機器との共存不可(例えば、MRI では磁気フリーが要求される)
問題点3:現状のセンサ、駆動ユニットは滅菌・洗浄が不可能
問題点4:エンドエフェクタ(骨切除工具/屈曲鉗子など)の力センシング技術
問題点5:欧米製医用ロボットは極めて高価(2∼3 億円以上)であるため導入が困難
これらの問題点を解決し、手術ロボットを臨床の場に提供するためには、高信頼性、小型・軽量・高出力化な
「①医療用ガイド/アクチュエータ」
、
「②医療用センサ」の研究開発は必須である。
上記の開発事項を実現することで、潜在的需要のある医療分野へのロボット適用を促進する。海外製手術ロボ
ットの開発は現在停滞状態にあり、先駆けて実用化開発を実現することで、国内市場の創出だけでなく、国際的
競争力も強化され、国内ロボット産業の活性化が可能となる。
2.技術目標値
上記のロボティック・サージェリの問題点を解決するため、実用化を目指す医用センサ・駆動ユニットは下記
の技術目標を満たすものとする。
1)総重量 200kg(下肢用)
、30kg(上肢用)以下の手術ロボットの実現(コンパクト化)が可能な小型・高
出力駆動ユニット
2)小型高分解能力センサ(分解能 1µV、S/N 比 80dB)
3)滅菌・洗浄が可能なセンサ、駆動ユニット
4)診断機器による撮像で 1mm 以内の精度
3.目標値を達成するための解決策と具体的方法
1)小型・軽量化のため本事業では①ガイドに軽量・比強度の大きい材料の採用、②並進・回転一体型アクチュ
エータによる駆動ユニットの多自由化(2 自由度)で対応する。
2)滅菌・洗浄環境下で腐食等による性能低下を防止するため耐食性ガイドを開発する。この材質面の考慮とと
もに、アクチュエータを空力または水力駆動とすることでシールの問題を解決する。
3)高分解能ストレインアンプを小型化することで、アナログ回線を短絡化しデジタル出力とすることによって
高精度力センシングを達成する。
4)撮像範囲を考慮して手術ロボットのマニピュレータを設計するとともに、撮像環境下でハレーション等の影
響の少ない材料で要素部品を構成する。
平成 16 年度戦略的基盤技術力強化事業
4.当該年度における技術目標値の達成状況と意義
A)医用ガイドの開発
要素部品に対する軽量化、撮像性、滅菌・洗浄等の要求は、
手術ロボットの仕様や適用箇所により異なる。このため、本年
度は医用ガイドの実用化を目指して複合仕様を満たす医用ガ
イドの開発を実施した。
下肢人工関節置換術支援ロボット、低侵襲上肢手術支援ロボ
ットで要求される複合仕様を満たす医用ガイドの開発過程に
おいて、本事業内でその設計・製造指針を確立した。
図1.低侵襲上肢手術支援ロボット用ガイド
B)医用アクチュエータの開発
1)医用スピンドル
昨年度までに滅菌・洗浄可能な機構を達成し、切削物の進入防止、部品の構成材料等を検討して複数回の滅菌・
洗浄に対して耐久性を有する機構を試作・評価した。本年度は、スピンドルのアタッチメント部及びモータ部と
もに小型軽量化を施し、また工具自体をアタッチメントでカバーする構造を採用することで、回転部を刃先のみ
とし低侵襲手術に対する安全性を高めた。
2)医用アクチュエータ
本年度は、実用化に向けて位置検出のための制御方法の確立を
検討した。具体的には、ロッドパッキンからの漏れ出し量の低減
化と摺動抵抗の低減化を図るために、ロッドパッキンの材料及び
潤滑処理の選定を行った。選定した要素部品を実装し、摺動抵抗
測定、押込み動作時の推力測定、並びに連続往復動動作時のスト
ローク特性測定を実施した。評価の結果、制御性向上にとってチ
ューブの潤滑処理と面粗さが最も重要な要素であることを明ら
かにした。さらに、1500 回の連続往復運動(動作時間 5 時間)に
おいても、アクチュエータのもつ性能が低下しないことを確認し
た。
図2.医用アクチュエータ
C)並進回転一体型アクチュエータの開発
駆動ユニットの多自由度化(並進・回転)により、機構のコンパクト化を図ることで、手術ロボット全体の小
型化に寄与する。昨年度までに基本性能は実証済みであるため、本年度は滅菌・洗浄容易性、手術ロボットへの
組込みのための仕様変更を行った。具体的には、低侵襲手術のためのロボット鉗子の直線回転運動に対応したア
クチュエータを実現した。
D)医用センサの開発
1)靭帯バランスセンサ
人工膝関節においては、CT や MRI 等の術前診断画像からは取得できない、軟部組織バランス(特に、靭帯バラ
ンス)を適正化することが術後成績に大きく影響する。昨年度までに滅菌・洗浄可能な靭帯バランスセンサを試
作完了したため、これをベースとして本年度は下肢人工関節手術支援ロボットの 1 機能として、術中に軟部組織
バランスを測定して術前に決定した人工関節設置位置の修正が可能なように、システム化を目的としてデータ取
得部の試作・評価を実施した。
平成 16 年度戦略的基盤技術力強化事業
2)小型歪アンプ
昨年度までに 3ch にて目標値を達成したため、本年度は商品化を目的
として部品調達、使いやすさ、取付け、配線容易性を考慮した設計・試
作を実施した。また、低侵襲手術ロボットのマスタ・マニピュレータ等
に搭載して適用評価を実施し、体感的には十分な性能であることを確認
した。今後は、この歪アンプの高精度力センシングを活かして、ロボッ
トへの適用事例を増やしていきたいと考えている。
E)ロボットの製作
1)下肢人工関節手術支援ロボット
昨年度試作機を模擬臨床試験及び手術室適用実験にて評価した後、実
用化を目指して他の術式への適用(人工股関節・人工肘関節置換術)
、操
作性を考慮してハードウエアの試作を実施した。具体的には、軸可動域
の再考、及び可搬性向上のためのステアリング機構の追加、滅菌・洗浄
図3.小型歪アンプ
を考慮した不潔部/中間部/清潔部の機構的区分と脱着機構を設け、メンテナンス性を向上させた。これにより、
臨床応用可能なハードウエアを構築した。
また、手術ロボットの実用化には手術計画機能、エンドエフェ
クタ経路生成機能、レジストレーション等の各種機能が要求され
る。このため、これらの機能を統合して手術遂行支援を行う術前
/術中支援ソフトウエアの試作を行い、上記ハードウエアととも
に統合システムを構築した。模擬臨床試験により、予定された手
術工程を遂行し、最終的な人工関節設置用骨切除が可能であるこ
とを確認した。
2)低侵襲上肢手術支援ロボット
周辺機器(術前/術中支援ソフトウエア、上肢把持治具)の汎
用化を図り、幅広い普及を目的としてガイド、モータ、配線など
を隠すためのカバーの設置、X 線撮像性を高めるために医用ガイ
ドの導入、ワイヤの軸方向脱着構造による不潔域/清潔域の分離
図4.下肢人工関節手術支援ロボット
とメンテナンス性向上を念頭に、新規設計・改造設計に合わせた低侵襲上肢手術支援ロボットの試作・評価を実
施した。
一方で、術前/術中支援ソフトウエアにおいてもディフォーマブルモデルの適用による症例の拡大、手術工程
の簡略化を実現して臨床応用可能な統合システムを構築した。
5.事業化の目標と当該年度に把握した事業化を取り巻く環境変化
現在外科領域では術中に医師にリアルタイムで情報提供するナビゲーションシステム等の手術支援機器の導
入が盛んであり(矢野経済研究所 2004 年度調査)
、今後もこのような手術支援機器市場は拡大傾向にある。さら
に、従来技術である欧米メーカーは本事業で提起した諸問題により適用が伸び悩んでおり、このような環境のも
とに低価格・高機能・適用容易性を兼ね備えた手術支援ロボットを開発実用化すれば、潜在的な需要を満たすこ
とができるだけでなく世界市場参入の好機であると考えている。
新規医療用具(機器)の実用化には、治験/厚生労働省の認可が必要であるが、現在医工連携・産学官共同で
研究会等を実施、治験の実施環境は整備されており早期臨床実用化を目指す予定である。
平成 16 年度戦略的基盤技術力強化事業
平成 16 年度戦略的基盤技術力強化事業
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