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企業評価・組織化能力

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企業評価・組織化能力
F
企業評価・組織化能力
21 企業評価力
22 ビジネスプロセス分析・構築力
23 プロセスマネジメント・コンダクト力
24 経営計画策定力
21
企業評価・組織化能力
企業評価力
事業・組織の診断・分析を通じて、
事業・組織の価値を適切に評価する力
1)能力・知識の概要・重要性
2)能力・知識の内容
能力・知識が求められる背景
能力・知識を有する人材とは
●従来から、
企業の収益性、効率性、安全性、成長性等を定
● 本能力・知識を有する人材は、事業・組織の価値を評
量的に把握し評価する活動は経常的に行われていた。市
場環境変化が激しい現状においては、
これに加え、将来
の有効な戦略策定のための一環として、自社の強みや弱
み、他社との差別化可能な要素を明確化するための企業
評価が求められている。
価する中核となる人材・組織であり、以下のような特性
を有する。
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
1
−我が国経済の動向だけでなく、顧客特性や競合他
社の事業・組織等、自社の事業・組織およびそのレ
ベル評価を行うために必要な知識を保有し、客観的
な情報収集により業界の実態を見抜くことができる。
ヒト、モノ、
カネの全般に渡る知
● 企業評価を行うためには、
業界構造(顧客、競合等)に関する知識、洞察
2 自社および同業他社などの事業・組織の現状に関する理解・洞察
3 自社の総合的な強み・弱み・レベルの把握・理解
−競合他社と比較し、自社の経営資源や商品・サービ
スの水準を分析することができる。
識はもちろん、
自社の特徴や位置づけを把握することが必
要となる。自社の事業を適切に展開していくために、自社
の事業内容や組織体制を分析し、業界他社との比較や
位置づけ等について、企業内外の視点から把握すること
が重要である。
−自社の強みや弱みを総合的・客観的に把握し、今後
の事業展開の方向性を見出すことができる。
1
業界構造(顧客、競合等)に関する
知識、洞察
a)<業界構造(顧客、競合等)に関する知識、
洞察>とは…
◎顧客特性・動向や競合他社の事業・組織等、自社
事業・組織およびそのレベル評価を行うために必要
な知識と有効な情報の収集能力。
◎上記保有知識や得られた情報から業界の実態を見
抜く洞察力。
【ヒアリング調査からの具体例】
□タクシー業界での顧客固定化を目指すためには、
外部環境、
特に競合関係や規制緩和に関する将来性に目をむける必
要性がある。そのような動向把握・分析を通じて、
サービスの
向上・拡販運動の実施という直接的・短期的な試みや、IT
化に対応した配車システム、
高齢者への特別割引制度・福
祉車両の導入等の新しい戦略が浮かび上がってくる。
(道
路旅客運送業)
今後の経営方針実現のために企業評価力が重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
b)具体的には…
1 企業規模別
%
100
2 業種別
96.7%
86.4%
80
72.3%
53.7%
67.2%
62.1%
◎業界の顧客特性や購買状況等需要動向を正確に
把握することができる。
◎競合他社の事業・組織等供給動向を正確に把握す
ることができる。
84.2%
60.7%
60
3 経営方針別
◎顧客や競合他社の動向等から、市場環境および業
界構造を正確に探ることができる。
63.9%
59.1%
56.4%
51.0%
37.5%
40
20
0
186
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
187
企業評価・組織化能力
21
2
自社および同業他社などの事業・
組織の現状に関する理解・洞察
a)<自社および同業他社などの事業・組織の現状
に関する理解・洞察>とは…
◎自社の経営戦略、経営資源や商品・サービスなど事
業・組織の現状と水準を客観的に認識する能力。
◎同業他社の経営戦略、経営資源や商品・サービス
など事業・組織の現状を理解・洞察する能力。
【ヒアリング調査からの具体例】
□自社事業や組織の現状を、
事業領域別、
業務別および人材
別に把握している。事業領域でみると、
民間建設市場での
シェアやネットワークが弱いが、福祉施設市場でのシェアは
中上位に位置していると捉えている。事業戦略的にも、
まず
全社的な視点で能力・技術の分析評価を行い、
自社の競
◎自社の経営戦略や経営資源、商品・サービス、財務
状況など事業・組織の現状を理解・洞察できる。
◎自社同様に、同業他社の事業・組織について、幅広
い情報収集能力を有しており、現状と業界での水準
を客観的に捉えることができる。
◎業界構造および同業他社の事業・組織の現状を参
考に、業界内での自社のポジションを捉えることがで
きる。
自社の総合的な強み・弱み・レベルの
把握・理解
a)<自社の総合的な強み・弱み・レベルの把握・
理解>とは…
◎自社事業における強みや弱みを総合的かつ具体的
に分析・評価し、
ビジネスチャンスの拡大につなげる
ことができる能力。
争優位性を見出すことが重要だと考えている。
(総合工事業)
□弊社では、
国内全系列の車を扱っているが、
他のレンタカー
b)具体的には…
3
企業は自社系列の車しか扱えない。ユーザーにとっては、
選
択できる車種が増えることで、
利用目的や嗜好に応じた自動
車を利用することができる。よって、業界内での事業レベル
は高い水準にあると思っている。
(物品賃貸業)
□同業他社を買収する際に、
自社および相手先の財務状況、
組織、
顧客特性や、
業界内におけるお互いのポジションを明
確にすることが重要である。
(証券業)
企業評価力
【ヒアリング調査からの具体例】
□肉類・豆類の取り扱いが多く、
手間とコストがかかるという弱
みがある。
しかし、
逆にそれを強みとできるような保管方法を
考案すべきである。旧財閥系企業ではないため、
安定顧客
の確保が難しい反面、
どこの財閥系にも営業できるという可
能性がある。弱みを強みに発想転換し、
具体的に実行する
力が求められている。
(倉庫業)
b)具体的には…
◎同業他社の事業・組織レベルを踏まえ、自社事業に
おける総合的な強みや弱みを具体的かつ客観的に
把握することができる。
□床タイル製造に当たり、
環境に配慮したエコマーク・リサイク
ル商品が新たな強みとなっている。施工業者と製造に関し
て商品力・技術力の共同分析を行い、
他業者との差別化の
実例を施工前に顧客に説明することで、
営業戦略策定・業
◎強みを活かしたビジネスチャンスの拡大、弱みを克服
するための方向性等、今後の自社事業展開の方向
性を見出すことができる。
務改善に結び付けている。
(職別工事業)
□病院の深刻な経営難に直面し、
現状打破のため、
事業・組
織分析から、
強みと弱みを評価している。病院側に偏ること
なく、
客観的な視点で、
財務諸表等によるデータ検証とヒアリ
ング等による現場検証の両面からアプローチしている。再生
が可能かどうか、可能ならどの不採算部門をカットし、診療
分野・設備面のどこを活かさなくてはならないか。それを見
極めることが担当者の責任である。
(医療業)
188
189
企業評価・組織化能力
21
企業評価力
3)能力・知識の形成・獲得・育成
能力レベル
【能力レベルの分類】
企業評価の複雑性と規模の大きさによ
り設定される
レベル
目安となる行動
レベル1
単一事業を運営する企業の評価を適切
に行うことができる
レベル2
規模の大きな単一事業あるいは規模の
小さな複数事業を運営する企業の評価
を適切に行うことができる
レベル3
規模が大きく複雑な事業を運営する企
業の評価を適切に行うことができる
● 本能力・知識を有する人材に求められる究極的なテー
マは、規模が大きく複雑な事業の企業評価を適切に行
うことができるかということである。
● 従って、企業評価の複雑性と規模の大きさを能力レベ
ルの軸として設定し、各レベルについて目安となる行動
(レベル)
を設定した。
● 企業では、本能力・知識を有する人材を「現社員を育成する」により獲得している
場合が多い。また「既に社内にいる」との回答も多い。
● 就業者は、
「OJT」を中心に本能力・知識を形成・獲得している。
● OJTの実施方法として、入社後自社の業務を一通り経験させる方法と、経営陣や
上司が現場でアドバイスする方法がみられる。
能力・知識の形成・獲得・育成手法
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
◎企業の人材獲得手段としては、
「現社員を育成する」が4割強、
「既に社内にいる」が2割強と、
既存社員を対象とした能力・知識の形成・育成を行っている企業が併せて3分の2に達している。
8.0%
42.2%
25.2%
8.8%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
新たに
外部人材を
活用
無回答
9.1%
既に
外部人材を
活用している
6.7%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
◎個人の能力形成・育成手段としては、9割弱が「OJT」と回答している。その他、5割強が研修プログラム等の
「OJT以外」、3割強が、生来持っている資質や学生時代の経験等の「環境要因」と回答している。
OJT
88.9%
O J T 以外(研修など)
55.6%
環境要因(資質など)
% 0
190
33.3%
20
40
60
80
100
191
企業評価・組織化能力
21
具体的方法
【ヒアリング調査からの具体例】
□当社の特有の経営状況を論理的に分析できるようにするた
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
めに、
自社の本拠地周辺にある事業所の諸事情を把握して、
自社の業務等を分析してもらう。分析では当社の強みと弱
みを分析させる。一般論的な経営に関することについては、
● OJTは、
本能力の獲得・育成において最も重要な手段
となっている。
社長自らが指導役となってOJT形式で実施し、
日々の業務
の中で教育している。社長によるOJTでは、
自社特有の事情
と背景に通じた上で現状分析を行い、
対策を提案させる形
自社の業務内容や業界ポジション等の詳細把
● OJTは、
握において、活用されている。
入社後自社の業務を一通り経
● OJTの実施方法として、
験させる方法と、経営陣や上司が現場でアドバイスする
方法が見られる。前者については、顧客とのやり取り等
の現場に触れることで、世の中のニーズや自社が求め
られていることに触れる体験をさせている。また、後者で
は、経営者や上司が経験してきたことを担当者に伝達
することで、本人が体験だけで得るものに加えて、
フィー
ドバックを促す仕組みを作っている。
式をとっている。
(その他の事業サービス業)
□個人的なスキルとして、
会計関連の資格を取得し相当な知
識を持っている。
また、
現業で30年以上に渡って実務として、
地元企業(主に商店主中心)
に会計から企業のコンサルテ
ィングまで、幅広く実施して、幅広いネットワークの中で各種
のスキルを獲得してきている。
(その他の事業サービス業)
□本社スタッフへの経営者意識の浸透を行っている。同系列
の会社が2社あるが、
全社戦略の策定を行い、
2社それぞれ
2
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
a)研修プログラム
◎研修プログラムは、本能力の獲得・育成を助ける上
で重要な手段となっている。
◎研修プログラムは、業界構造や業界知識等の把握や、
同業他社の動向情報の収集に活用されている。
◎研修プログラムの実施方法として、自社において達
成すべきレベルを設定し、そのためのプログラムを受
講させる体系的なものと、外部機関が開催する研修
等への参加をさせるというのが主となっている。前者
については、語学や財務等の知識や自社の業務内
容で用いる知識等について、全般的に学ばせている。
また、必要に応じて資格試験等で到達度のチェック
を行っている。後者については、業界関連セミナー
等に定期/不定期に参加させ、業界知識等を学ばせ
ている。
a)出向・留学
◎留学・資格取得は、社外の資源を活用して本能力の
獲得・育成を助ける手段となっている。
◎留学・資格取得は、
「自社の特性把握能力」における
自社業務の分析や、
「自社の同業他社や社会全体
に対する強み/弱みの分析」における社会全体の動
向把握のための一般知識の獲得等に関連している。
◎留学・資格取得の実施方法は、MBAの取得や公認
会計士等の資格取得等により、世の中を専門知識
やスキルを踏まえた視点で分析する能力を身につけ
ている。また、一部では企業の研修プログラムの中で
取得したケースも見られる。
【ヒアリング調査からの具体例】
□企業評価力の獲得に役立ったのは、米国留学で取得した
MBA資格である。
これにより経営計画や組織構築、
業務改
に事業戦略を立案させている。自社における差別化ポイント
善、
リスク管理等、
経営戦略の立案業務の基礎を習得した。
(強み)
と問題点(弱み)
を経営者の感覚に近づけるよう教
また、
学生時代に取得した簿記会計関連の資格が企業経
育している。
(道路旅客運送業)
□企業内分析として、
雇用形態を中心とした労働力分析を実
【ヒアリング調査からの具体例】
営分析業務に活かされている。その他、
英検、
TOEFL等の
取得に要した知識も海外企業の評価に役立っている。
(情
□当院では、
3ヵ年計画や年度計画を策定する委員に抜擢し、
行し、雇用者数・雇用形態を再検討する。人件費を含めた
そこで実際に計画策定について、
経営において重視すべき
コストが従来商品と比較してどうか、競争力はあるのかとい
点等を教えて訓練する方法をとっている。委員会には当院
う視点で強み弱みを分析し、
企業評価力育成につなげてい
の経営陣も入るが、
実働部隊となるのは、
抜擢された委員を
る。
(職別工事業)
含めて2∼3人である。そこで策定された計画について発生
する責任はトップが取ることになっている。
また、
再建、
新規ビ
ジネス、
ハードウェア導入、
システム変更といった場面におい
ても、
スタートから成果が出るまでの一連のプロセスを体験さ
せる。各プロジェクトについて、
一つの流れとして完結できる
形のものを体験させるようにしている。
(医療業)
192
企業評価力
報サービス・調査業)
3
<環境要因>はどのように
影響しているか…
◎本能力・スキルの形成・獲得・育成において、
「学生
時代の経験」
「家庭環境」
「生来持っている性質」
といった環境要因の影響は小さい。
193
22
企業評価・組織化能力
ビジネスプロセス分析・構築力
事業目的・戦略に沿って、
ビジネスプロセスを
構築・改革できる力
1)能力・知識の概要・重要性
2)能力・知識の内容
能力・知識が求められる背景
能力・知識を有する人材とは
●ビジネスプロセスとは、顧客価値を創造し、企業や組織
● 本能力・知識を有する人材は、柔軟かつ効率的なビジ
の業績を上げるビジネスの仕組み、または一連の企業
活動の流れである。
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
ネスプロセスを構築する中核となる人材・組織であり、
以下のような特性を有する。
1 自社ビジネスプロセスの構造分析と特徴の把握・洞察
−自社のビジネスプロセスについて、問題点や課題を
見出すことができる。
不確実性の高い市場において競争
● 環境変化が激しく、
を勝ち抜くためには、自社だけでなく、顧客およびサプラ
イヤーを含めたバリューチェーン全体で、顧客が求める
付加価値を創造することが求められている。柔軟かつ
効率的なビジネスプロセスを構築するとともに、継続的
なプロセスの見直し・変革を通じて、常に商品・サービス
を最適なものに維持することが重要である。
2
同業他社等、ベンチマーク先のビジネスプロセスの把握・洞察
3 ビジネスプロセスの構築と改善戦略の立案・実行
−同業他社のビジネスプロセスの最新動向やその強
み、弱み等を把握することができる。
−自社の競争力を向上する、柔軟かつ効率的なビジネ
スプロセスを構築することができる。
1
自社ビジネスプロセスの構造分析と
特徴の把握・洞察
企業にとって何がコアビジネスなのか見直し、
●そのため、
a)<自社ビジネスプロセスの構造分析と特徴の 把握・洞察>とは…
個別の部署や一社単位の効率化のみならず、バリュー
チェーン全体の観点から、現状のビジネスプロセスの長
所や課題を見極め、効率的なビジネスプロセスを構築で
きる本能力へのニーズが高まっている。
◎自社のビジネスプロセスが有する特徴を明らかにし、
長所、課題等を把握する能力。
今後の経営方針実現のためにビジネスプロセス分析・構築力が重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
%
100
2 業種別
3 経営方針別
95.5%
71.2%
54.0%
61.1%
58.1%
63.1%
62.9%
61.4%
34.7%
20
194
メーカーの下請けをしながら、
ノウハウを蓄積することにした。
当初の予想通り、
自社のビジネスプロセス上に重大な弱点
があることが分かり、
それを改善するために設備を一新し、
作業フローの転換も行った。
(精密機械器具製造業)
□大手企業から自動車・二輪車の電装部品の製造を受託し
ている。顧客から製造依頼を受けるたびに、要望事項と実
施諸条件を確認し、
どのようなライン構成、
製造工程により製
造業)
49.7%
40
0
◎今後の事業や製品に対する経営資源の配分方向
を明確にする「事業ポートフォリオ分析」、顧客のニ
ーズ・充足度等を把握する「ステークホルダー分析」
、自社の強み・弱み・機会・脅威等を把握し、事業の
向かうべき方向性を見定める「SWOT分析」等、一
連の経営分析を行うことができる。
◎担当者およびプロセスそのものから情報を収集し、
現状のビジネスプロセスが経営戦略に沿い、顧客の
求める付加価値を形成できているかについて分析す
ることができる。
70.2%
59.3%
60
場に参入すべく、
事業を転換していった。
しかし、
ノウハウも
なくいきなり参入することは無謀なので、
2∼3年をメドに先行
造することが最も効率的か検討する。
(輸送用機械器具製
87.7%
80
□日本ではまだ手がけているところの少ない半導体の金型市
先行メーカーの工場設備やビジネスプロセスと比較すると、
b)具体的には…
1 企業規模別
【ヒアリング調査からの具体例】
◎自社のビジネスプロセスにおける有効な点と非効率
な点を把握し、長短所の原因となっている要素を把
握することができる。
◎自社のビジネスプロセスが自社の強み・弱みに及ぼ
している影響を分析することができる。
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
195
企業評価・組織化能力
22 ビジネスプロセス分析・構築力
2
同業他社等、ベンチマーク先の
ビジネスプロセスの把握・洞察
a)<同業他社等、ベンチマーク先のビジネスプロ
セスの把握・洞察>とは…
◎同業他社のビジネスプロセスを把握する能力。
◎世の中の変化と自社のビジネスプロセスとの関係を
分析する能力。
b)具体的には…
◎同業他社のビジネスプロセスに関する情報を入手す
ることができる。
◎優れた効率性を発揮している同業他社のビジネスプ
ロセスと、自社のビジネスプロセスを比較し、差異・要
因分析を行うことができる。
◎同業他社と自社のビジネスプロセスを比較する際の
評価指標を構築することができる。
◎各種メディアや業界内のネットワーク等を通じて、世
の中が変化していく方向を認識し、そこで必要となる
ビジネスプロセスの変化について把握することができる。
196
【ヒアリング調査からの具体例】
□夏季観光の不振、法人宴会の減少および大手ホテルの進
出等、
地方ホテルを取り巻く環境変化は厳しく、
利益が著し
く減少した。保有資産の売却、
経営損失補填等のリストラを
行うとともに、
健全経営への復帰に向けて、
ビジネスプロセス
分析・再構築に向けて取り組んだ。他社と比較して、
自社に
は経営陣や各部門担当者から問題提起を一元的に管理
する機能・工程が欠けていることが判明した。そこで、経営
企画室を設置し、
総合的な改善策の立案に向けて、
各部門
間の連携を強めることとした。
(旅館)
3
ビジネスプロセスの構築と改善戦略の
立案・実行
a)<ビジネスプロセスの構築と改善戦略の立案・
実行>とは…
◎既存の問題点・課題を解決し、自社のコアコンピタ
ンスを伸張するビジネスプロセスを構築する能力。
◎世の中の動きやニーズに対応する新しいビジネスプ
ロセスを構築する能力。
b)具体的には…
◎顧客設定、顧客に提供すべき価値の明確化、バリュ
ーチェーンの組み立て方、顧客・パートナーとのリレ
ーションシップの構築方法、収益構造の設定等、ビ
ジネスプロセス構築方法に関する知識と経験を有し
ている。
【ヒアリング調査からの具体例】
□高齢者向けの弁当は調理に手間がかかってしまい、
弁当の
単価がどうしても高くなってしまう。そこで、
自社で行っていた
調理工程を別会社にアウトソーシングする変更を行い、
他社
の工場で一括調理した商品を急速冷凍し、各店舗に配送
するフローを採用した。これにより、調理の手間と人件費を
大幅に削減し、競争力のある価格で採算が取れるようにな
った。一方、
高齢者を対象としていることから、
価格だけでは
なく健康面にも配慮し、
防腐剤や着色料を一切使用せずに
新鮮で安全な弁当を提供できるよう、
プロセス管理を徹底し
ている。
(その他の食料品業)
◎既存の問題点や課題の解決を図るとともに、効率的・
適切な運営・管理が可能なビジネスプロセスを構築
する。
◎業界の動向や顧客のニーズを踏まえた上で、自社内
でできること(コアビジネス)
とできないことを判断し、
新しいビジネスプロセスを構築する。
197
企業評価・組織化能力
22 ビジネスプロセス分析・構築力
3)能力・知識の形成・獲得・育成
能力レベル
【能力レベルの分類】
事業の複雑性と規模の大きさにより設
定される
レベル
目安となる行動
レベル1
単一事業企業のビジネスプロセス分析・
構築を適切に行うことができる
レベル2
規模の大きな単一事業あるいは規模の
小さな複数事業企業のビジネスプロセス
分析・構築を適切に行うことができる
レベル3
規模が大きく複雑な事業のビジネスプロ
セス分析・構築を適切に行うことができる
● 本能力・知識を有する人材に求められる最終的な目標
は、規模が大きく複雑な事業のビジネスプロセス分析・
構築を適切に行うことができるかということである。
● 従って、事業の複雑性と規模の大きさを能力レベルの
軸として設定を行い、各レベルについて目安となる行動
(レベル)
を設定した。
●
●
●
企業では、本能力・知識を有する人材を「現社員を育成する」により獲得している
場合が多い。また「既に社内にいる」との回答も多い。
就業者は、
「OJT」を中心に本能力・知識を形成・獲得している。
特に、当該能力・スキル形成には、仕事の仕組み・流れ(プロセス)の把握が必要と
なるため、
日々の仕事を通じて、業務上の具体的な知識・ノウハウを身に付けていく
ことが求められている。
能力・知識の形成・獲得・育成手法
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
◎企業の人材獲得手段としては、
「現社員を育成する」との回答が4割強と最も多く、
次いで「既に社内にいる」が2割強となっており、既存社員の育成を主とした人材獲得が行われている。
10.2%
42.0%
25.5%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
9.2%
無回答
8.5%
新たに
既に
外部人材を
外部人材を
活用
活用している
4.6%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
◎個人では、4分の3が本能力・知識を「OJT」により獲得したと回答しており、
次いで約半数が研修プログラム等「OJT以外」の手段も利用したと回答している。
OJT
76.5%
O J T 以外(研修など)
50.0%
環境要因(資質など)
% 0
198
41.2%
20
40
60
80
100
199
企業評価・組織化能力
22 ビジネスプロセス分析・構築力
具体的方法
【ヒアリング調査からの具体例】
□前職で経営コンサルティングを行っていたため、
従来の住宅
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
産業のビジネスモデルを適確に把握し、
自社独自のビジネス
モデルの改善策を考案することが可能となった。
また、
以前
2
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
a)研修プログラム
◎OJTによる能力・知識向上を補完する形で、外部の
研修プログラムへの参加が広く実施されている。
に自宅の建設を依頼し、
自身がクライアントとなった際に、
自
● OJTは、
本能力・スキルの形成・獲得・育成の中核を担
う手段として活用されている。
分の要望にあった家を建てることができなかったことがきっ
かけとなって、各専門家(建築士や建材業者等)
にその専
門業務のみをアウトソーシングすることの重要性を実感し、
そ
「自社のビジネスプロセスの構造分析と特徴の
● OJTは、
把握・洞察」
「同業他社等、ベンチマーク先のビジネス
プロセスの把握・洞察」
「ビジネスプロセスの構築と改
善戦略の立案・実行」の3つのいずれの能力・知識(キ
ーセンテンス)獲得にも有効である。
の考えを自社ビジネスプロセスで実現した。
(総合工事業)
□長く法律に関わっていたため、
ロジカルかつシンプルにモノ
を考えていくという訓練はできた。これをするにはどうしたら
良いかと、
ひとつひとつ紐解きながら考えていくということは
◎ビジネスプロセス分析・構築に特化したプログラムと
いうよりも、経営管理等の研修により経営に関する
理解を深め、経営全般を俯瞰する能力を身に付ける
ことを目的としている。
◎さらに外部の研修や異業種交流会において様々な
業界の人達に触れることで、情報交換の場ができ、
世の中の変化に対応する新しいビジネスプロセスの
ヒントとなるような知識や情報を得る。
セス)の把握が必要となるため、日々の仕事を通じて、
業務上の具体的な知識・ノウハウを身に付けていくこと
が求められている。本知識・ノウハウは、自ら体験して習
得するだけでなく、会社の様々な部門・地位の人の意
見に耳を傾けることによっても獲得される。さらに、物事
をロジカルに考える訓練が必要とされ、これらは例えば、
コンサルティング、法律関係、SE等の仕事に携わること
によって身に付けられたケースが多く見られる。
ビジネスプロセス分析・構築に必要な法務、財務
●また、
等の専門知識が、業務を通じながら習得されていくこと
が望ましい。
<環境要因>はどのように
影響しているか…
a)生来持っている資質
◎ビジネスプロセス分析・構築力の高低は、好奇心、
俯瞰的に物事を見る視点等、元来備わった特性や
性格に影響を受ける部分がある。
◎企業側は、経営に興味を持ち、自分のことだけでなく
他人に指示を与えながら仕事をするといった視点から、
将来経営を任せられる人を選ぶ傾向がある。
【ヒアリング調査からの具体例】
□他人のしていないことをすることが面白く感じる性格で、思
法学から身につけたと思う。また、冷静、客観的な視点も法
仕事の仕組み・流れ(プロ
● 当該能力・スキル形成には、
3
いついたことは必ずやることにしていた。
ビジネスプロセスに
学により得られたものと思う。
(その他の小売業)
ついても、普段から革新的な業務方法を探すことに努めて
【ヒアリング調査からの具体例】
いたために、
プロセス構築に辿り着けた。
(一般飲食店)
《企業側の意見》
□特にビジネスプロセスということに特化したものではないが、
異業種交流会に毎年3名程度派遣している。期間は3ヶ月
間週1度で、
ある商品を売り出すとしたらどのようにするか?と
いう内容である。他にはビジネススクールに通い、実際のケ
ースを扱った模擬経営者会議により、経営者感覚を育てて
b)生来持っている資質
◎実家が経営者の場合、子供の頃から商売というもの
に触れ、運営にも関わっていくことで経営の全体像
が見える能力が培われる。
いる。
(各種商品小売業)
□経営に関する知識は外部に委託した研修で経営管理、生
産プロセス管理等を学んでもらう。30才から35才までの人に
研修を受けさせることで、
若いうちから経営に関する知識を
身に付けてもらうようにしている。
(その他の製造業)
【ヒアリング調査からの具体例】
□自らの実家が中小企業の経営者であったということ、外資
系企業において新規事業立ち上げの支援に従事していた
こと等を通じて、
経営知識や会社全体の業務フロー改善の
重要性について早くから認識することができた。
(教育)
□父親が工務店を営んでいるという環境で設計というものを自
然に学び、
学生時代からは店舗運営にも関わっていくことで、
店舗計画や人材管理等店舗運営の全体像が見えるように
なり、全社的観点からのビジネスプロセスマネジメントができ
るようになった。
(専門サービス業)
200
201
23
企業評価・組織化能力
プロセスマネジメント・コンダクト力
ビジネスプロセスを事業目的に沿った形で適切に
管理・運営していく力
1)能力・知識の概要・重要性
2)能力・知識の内容
能力・知識が求められる背景
能力・知識を有する人材とは
●ビジネスプロセスとは、
顧客価値を創造し、企業や組織の
● 本能力・知識を有する人材は、事業環境に応じ、
ビジネ
業績を上げるビジネスの仕組みまたは一連の企業活動の
流れをいう。
スプロセスの見直し、改善等の管理・運営を行うことが
求められ、以下のような特性を有する。
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
1 ビジネスプロセスごとの役割等の分析・把握
−ビジネスプロセスごとの役割等の分析、把握ができる。
市場動向や自
●企業が事業活動の成功を収めるためには、
2
−各プロセスおよびプロセス全体の運営、管理ができる。
社経営状況等経営環境変化に合わせた企業活動の改
善を継続的に行うことを可能にする体系的かつ透明性の
あるマネジメントの取り組みが必要である。
各プロセスおよびプロセス全体の運営・管理
3 ビジネスプロセスの改善・改革の方向性提示
−既存のビジネスプロセスの欠点や課題を把握し、
最適化に向けた改善・改革の方向性が提示できる。
硬直化したプロセスマネジメ
●ビジネスプロセスにおいては、
ントでなく、市場や自社経営等のビジネス・ニーズの変化に
対して適応できるプロセスマネジメントが必要となる。さらに
全社に関わる重要なビジネスプロセスだけでなく、専門部
署や個々の従業員のプロセスマネジメントも重要である。
1
ビジネスプロセスごとの役割等の
分析・把握
a)<ビジネスプロセスごとの役割等の分析・把握>
とは…
◎既存のビジネスプロセス全体の特性を把握し、その
中で各プロセスが果たすべき役割を正確に認識す
る能力。
ビジネスプロセスを正確に把握することによっ
●このように、
て企業全体の調和を図り、継続的なビジネスプロセスの運
営改善を実現していく本能力へのニーズが高まっている。
b)具体的には…
%
100
2 業種別
3 経営方針別
96.1%
83.7%
68.3%
63.6%
60.3%
49.7%
53.2%
63.7%
55.1%
59.2%
54.3%
50.2%
◎顧客ニーズの理解に基づき、付加価値を提供するビ
ジネスプロセスのあり方を認識できる。
◎現在の自社のビジネスプロセスが顧客に対してどの
ような付加価値を提供しているのかについて理解で
きる。
◎自社のビジネスプロセスの特性を認識し、それぞれの
プロセスに関する役割を把握できる。また、各プロセ
スの理想像と現状の差異を分析できる。
80
60
□国際営業部の責任者である彼は、海外ユーザーとの打ち
合わせ、海外代理店のサービスマンに対する技術指導か
ら世界中の代理店を集めて行うワールドセールスミーティン
グまで、海外における販売、サービスのプロセスをマネジメ
ントしてくれている。また海外出張も多い部下への健康面
の心配りも忘れず、順調に仕事が進むように努力してくれ
今後の経営方針実現のためにプロセスマネジメント・コンダクト力が重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
1 企業規模別
【ヒアリング調査からの具体例】
34.7%
40
ている。
(その他の製造業)
□自社の事業内容を、数値的に無駄がないか、適切な人員
配置がされているか、収益性があるか、分析・把握する。
経営改善は最終的に会社全体の問題であり、全体を総括
する視点が求められる。業務運営、設備安全、人事教育、
経営戦略における課題を抽出し、改善策を検討している。
(倉庫業)
◎分析や普段の管理活動を通じて、各プロセスやプロ
セス全体の問題点や課題を把握できる。
20
0
202
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
203
企業評価・組織化能力
23 プロセスマネジメント・コンダクト力
2
各プロセスおよびプロセス全体の
運営・管理
a)<各プロセスおよびプロセス全体の運営・管理>
とは…
◎ビジネスプロセスを常に効率のよい状態に維持するた
めの運営・管理能力。
◎一連のプロセスに関する主要な戦略課題や管理方針
に基づき、全体的な視点から業務を再編・遂行する能力。
b)具体的には…
◎既存のビジネスプロセスの役割を踏まえ、達成目標や
客観的な評価指標を定め、定期的に活動状況を測定し、
適切な評価ができる。
◎自社の経営理念や事業環境等を踏まえ、目標達成の
ためのプロセスを常に効率良い状態で維持できるよう
に運営・管理プランを作成・実行できる。
◎既存のビジネスプロセスの戦略課題や管理方針に基
づき、全体的な視点から、
タスクレベルでのビジネスプ
ロセス変更を継続的に実施・運営することができる。
204
【ヒアリング調査からの具体例】
□当社では銀行システム開発に際しては、
ウォーターフォール
モデル方式をとっている。銀行でのシステム開発者(依頼者)
と銀行系のコンサルタント、当社プロジェクトリーダーとでシ
ステムに関する設計図を起こす。そこから実際の開発に入
り、
その後は仮完成、
テスト稼動、修正等のいくつかのステ
3
ビジネスプロセスの改善・改革の
方向性提示
a)<ビジネスプロセスの改善・改革の方向性提示 >
とは…
◎既存のビジネスプロセス全体の欠点や、各プロセス
の課題を把握し、適切なビジネスプロセスへの改善・
改革の方向性を提示する能力。
ップを踏んで完成まで持っていく。一般企業向けシステム
開発の場合は、小さなプロジェクトチームを結成し、
プロトタ
イピングモデル方式でシステム開発を行っている。銀行系
のシステムと違い仮完成でクライアントへ納品し、
クライアン
ト側でテスト稼動を行い、
システム開発部門でサポートやバ
ージョンアップを行うものである。システム開発方式は異な
るが、
いずれの場合も、
プロジェクトチーム以外に進捗状況
を見守る管理部門、
プロジェクトチーム内にいながら全体
【ヒアリング調査からの具体例】
□半期に一度は、
組織の見直しをする。そのために、
組織の隅々
を知ることに常に気を配る努力をしている。
ミーティングを頻
繁に持ち、
特に普段の業務では耳に入りづらい負の情報(危
うく失敗するところだった、
士気が落ちている等)
を取り入れ
て、
事が大きくなる前の対処に努めている。
(専門サービス業)
□お客様の手間を少しでも省くことを考え、顧客電話番号を
b)具体的には…
◎自社の経営理念や事業環境、
さらに既存プロセス
の欠点等を踏まえ、ビジネスプロセスの最適化に向
けた改善・改革の方向性を提示することができる。
◎ベストプラクティス事例の蓄積等により、成功のポイ
ントを把握し、より効率的に遂行するためのビジネス
プロセス改善・改革の方向性を提示することができる。
登録するコンピューターシステムの導入に踏み切った。非
常に効率が良く従業員も満足している。
(道路旅客運送業)
□減益の理由を検証するため、
社内各部門の業務内容を見
直すことから始めた。低迷期の損益シートの分析とともに、
経営企画委員会においては社内情報収集や利用客意識
調査を徹底的に行った。調査結果から、損益が減少傾向
像(受託システムの依頼目的の合致・スケジュール管理)
を
にある部門でも顧客ニーズに沿ったサービスの向上を図る
管理する者を設けて質の高いシステム開発を行っている。
ことで、
同業他社に対してアドバンテージを構築できると判断。
(情報サービス・調査業)
社員の意識向上プログラムに取り組み、
ホテル業務全体を
活性化するビジネスプロセスの再構築を行うよう提言した。
(旅館)
205
企業評価・組織化能力
23 プロセスマネジメント・コンダクト力
3)能力・知識の形成・獲得・育成
能力レベル
【能力レベルの分類】
事業の複雑性と規模の大きさにより設
定される
レベル
目安となる行動
レベル1
単一事業のビジネスプロセスを適切に管
理・運営できる
レベル2
規模の大きな単一事業あるいは規模の
小さな複数事業のビジネスプロセスを適
切に管理・運営できる
レベル3
規模が大きく複雑な事業のビジネスプロ
セスを適切に管理・運営することができる
● 本能力・知識を有する人材に求められる究極的なテー
マは、規模が大きく複雑な事業のビジネスプロセスを適
切に管理することができるかということである。
● 従って、事業の複雑性と規模の大きさを能力レベルの
軸として設定し、各レベルについて目安となる行動(レ
ベル)
を設定した。
● 企業では、本能力・知識を有する人材を「現社員を育成する」により獲得している
場合が多い。
● 就業者は、
「OJT」と研修プログラム等「OJT以外」を中心に本能力・知識を
形成・獲得している。
● OJTでは、特に、上司や先輩社員等についての実践指導と、経営者レベルとの
ミーティングが実施されている。
能力・知識の形成・獲得・育成手法
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
◎企業の人材獲得手段としては、
「現社員を育成する」との回答が4割強と最も多く、次いで「既に社内にいる」が2割強となっており、既存社員の
育成を主とした人材獲得が行われている。一方で、
「新たに外部人材を活用」「新たに採用」も1割弱ずつを占めており、外部人材の活用も行われている。
8.1%
44.8%
24.3%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
9.5%
無回答
8.7%
新たに
既に
外部人材を
外部人材を
活用
活用している
4.7%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
◎個人では、4分の3が本能力・知識を「OJT」により獲得したと回答しており、
次いで6割強が研修プログラム等「OJT以外」の手段も利用したと回答している。
OJT
76.5%
O J T 以外(研修など)
64.7%
環境要因(資質など)
% 0
206
52.9%
20
40
60
80
100
207
企業評価・組織化能力
23 プロセスマネジメント・コンダクト力
具体的方法
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
□個々のジョブレベルでのPDCA(計画、
実施、
監視、
改善)サ
イクルの指導を行い、営業担当にも経営者の視点・感覚を
植えつけていく。
「経営者だったらこういう風に感じる」
とい
● OJTは、
本能力・スキルの形成・獲得・育成の中核を担
う手段として活用されている。
「ビジネスプロセスごとの役割等の分析、把握」、
●OJTは、
「ビジネスプロセスの改善・改革の方向性提示」、
「各
プロセスおよびプロセス全体の運営、管理」の3つのい
ずれの能力・知識(キーセンテンス)獲得にも有効である。
う感覚がなければ、
自社の製品・サービスが経営のどの部
分に役立つのか代理店や顧客とのやり取りができないから
である。
(情報サービス・調査業)
□彼は入社後、生産管理部に配属された。現場で2年間、原
価計算業務や品質管理業務を行い、
その後、経営企画室
では戦略立案、組織構築、業務改善等の実務経験を積ん
でいくことで、現場のことから会社全体のことまで幅広い知
● 当該能力・スキルの基本となる仕事のプロセス把握は、
上司や先輩社員等についての実践指導が行われる。
これにより、現場の工程管理から会社全体に渡る経営
管理までを把握していくこととなり、結果として上記3つ
の能力・知識(キーセンテンス)に関連する一連のプロ
セスを理解し、効率的なマネジメントができる能力の基
本を培っていく。さらに、経営者レベルとのミーティング
を重ね、経営計画や組織構築、業務改善、
リスク管理
等の経営戦略の立案業務を遂行していきながら、組織
運営に関する知識・ノウハウが身に付く。
識を身に付けていったと考えられる。
(非金属鉱業)
2
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
a)研修プログラム
◎当該能力・スキルの獲得には、幅広い知識が必要な
ため、OJTとともに、経営戦略、人的資源管理、マー
ケティング、業界知識等の獲得を目的に研修プログ
ラムが利用されている。
◎OJTの補助的手段として位置付けられる研修は、業
界知識・人的資源管理・マーケティング等修得する
手段として外部専門家の意見を用いて「ビジネスプ
ロセスの改善・改革の方向性提示」をより強固なも
のにする。
◎専門家(税理士、社会保険労務士等)からの指導を
受けることで、コストや能力の活用、人事制度等の
面から問題点を抽出し対処するためのスキル獲得に
役立てる。
《就業者側の意見》
組織の知識、社員を管理する能力の向上等が重視され
るが、
これらは短期間に形成・獲得・育成できるものでは
なく、日々問題意識を持って業務に取り組むことにより、
当該スキルのみならず各種スキルの向上に繋がる。
a)生来持っている資質
◎プロセスマネンジメント能力の高低には、実行力、調
整力、責任感等、元来備わった特性や性格が影響
する部分がある。
◎企業側は責任感が強く、情報収集にも意欲的で、人
の意見を体系化することができる人材を選び、
トップ
マネジメントに係わる会社経営全般の企画と立案を
任せる傾向がある。
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
□彼は、
どんなに忙しくても引き受けた仕事は期日通りに提出し、
いる。実行力もあり、部下への心配りもできる能力が見込ま
【ヒアリング調査からの具体例】
れて、
責任者に抜擢された。
(電気機械器具製造業)
時間は自社の参考になると感じている経営コンサルティング
企業のホームページからマーケティングツールの情報収集を
行っている。仕事に活用すべき情報の収集と整理を常に心
掛けている。
(専門サービス業)
□当該能力については、
営業所支援を目的とする部署での特
別研修が設けられている。内容的には、
人材派遣のシステム・
プロセスの構築方法、教育訓練の仕組み・プロセスの構築
方法等を学ぶ。
(その他の事業サービス業)
経営に関する知識、自社事業と
● 当該能力・スキルでは、
<環境要因>はどのように
影響しているか…
与えられた役割において成果を出す等責任感が備わって
□プロセスマネジメント・コンダクト力の根底にあるのは、
日々の
努力であり、
不断の情報収集である。PCに向かって1日1∼2
3
□前職のコンサルのときに、
客先に常駐する形で業務を行って
いたことで、
組織運営の能力の形成に大きな影響を与えた。
《就業者側の意見》
□学生時代から、他人の意見を体系化やケーススタディーを
図式化することは得意だった。現在もCOOとしてビジネスプ
ロセスを構築・運用していく際に、
体系化能力が役に立って
いる。
(専門サービス業)
すなわち、
客先の会社に常駐して会社が変化していく過程
を実際に体験したことで、組織運営のノウハウが身に付い
たと考えており、
コンサル会社が提案を出すだけで結果を見
届けないケースもあるが、
そうした提案には説得力がなく空
虚であると考えている。過去に学んできた経営理論が検証
される現場に数多く遭遇してきたことで、以前とは異なった
視点で解釈をすることができることとなった。
(専門サービス業)
208
209
24
企業評価・組織化能力
経営計画策定力
事業戦略を構築し、株式公開や企業再生に
向けての具体的な計画を企画立案する力
1)能力・知識の概要・重要性
能力・知識が求められる背景
2)能力・知識の内容
能力・知識を有する人材とは
●グローバル競争の激化、
ビジネスのソフト化等、現在、
能力・知識の具体的内容(キーセンテンス)
● 本能力・知識を有する人材は、具体的かつ現実的な経
産業構造は本質的な変化を遂げている。その中で、従
来の成功パターンが通用しなくなってきており、時々刻
々と変化する市場環境に適した事業展開が求められて
いる。また、同業種でありながら、業績の優れた企業とそ
うでない企業の企業間格差が拡大しており、この格差
は事業展開の巧拙によるところが大きい。
営計画を立案する中核となる人材・組織であり、以下の
ような特性を有する。
1
−事業戦略や経営計画の必要項目・要素に関する知
識を有している。
2 自社の戦略・現状の理解・洞察と同業他社等ベンチマーク先の経営計画の知識・洞察
3
−自社の戦略・現状の理解・洞察ができ、同業他社等
ベンチマーク先の経営計画の知識・洞察ができる。
●このような不確実が多い市場環境においては、先を読
−自社戦略・現状を踏まえた、具体的かつ現実的な経
営計画策定ができる。
み、大胆な戦略を打ち出す企業が成功する一方、戦略
不在の多くの企業は低迷していく。そのため、市場の変
化に適切に対処するための経営計画・事業計画の策
定能力が、かつてないほどに重要視されている。
事業戦略や経営計画の必要項目・要素に関する知識
1
現実的な経営計画の策定
事業戦略や経営計画の必要項目・
要素に関する知識
a)<事業戦略や経営計画の必要項目・要素に関す
る知識>とは…
株式公開や企業再生・拡大、新規事業分野
●そのため、
◎経営計画の具体的内容および策定プロセス等、事
業戦略や経営計画立案に必要な要素に関する総
合的知識。
への進出等に向けて、事業戦略を構築し、具体的な計
画を企画・立案ができる、本能力へのニーズは高い。
b)具体的には…
今後の経営方針実現のために経営計画策定力が重要だとする企業の割合( 人材ニ ーズ調査結果より)
1 企業規模別
%
100
2 業種別
3 経営方針別
◎企業再生にむけた事業戦略を構築する上で有効な
競争戦略理論等に関する知識を保有している。
96.2%
90.6%
66.5%
70.1%
64.3%
59.6%
60
◎外部環境分析⇒自社経営資源の分析⇒経営戦略
立案⇒利益計画策定⇒経営計画作成、
までの継続
的更新を可能にする経営計画策定プロセスに関す
る知識を有している。
75.7%
76.3%
80
◎株式公開にむけた経営戦略と事業計画を策定する
ために必要となる具体的な項目・要素を把握してい
る。
68.9%
69.6%
59.9%
51.3%
43.0%
化してくる。
(その他の各種商品小売業)
□事業計画を策定するには、
外部環境分析⇒自社経営資源の
分析⇒事業戦略立案⇒利益計画策定⇒事業計画とりまとめ、
といった一連の流れを把握し、
それぞれに対して、
経験をもって
課題等を理解しておく必要がある。
(銀行・信託業)
□福祉タクシー分野への進出に伴い、
経営計画を作成している。
経営計画では、
売上・利益の目標設定、
それを実現するための
展開方法、
組織体制、
人員計画などを取りまとめていく。
また、
計
画策定には、
a.自社のマーケットシェアの知識、
b.新規事業分野
の状況と先行企業の成果、
c.法的規制と法的支援の知識、
d.
関連業界の知識、
e.資金調達の知識、
が必要な知識であると
判断している。
(輸送用機械器具製造業)
□経営計画には、
自社の経営の健全性を表現できる内容につい
ても記載しなければならない。例えば、
得意先を3つに分類する
三分法を採用し、
得意先が1つに偏らないようにすることで、
経
核としている弊社ならば、
銀行
(不動産登記の宝庫である)
、
住
【ヒアリング調査からの具体例】
20
□経営計画策定には、
自社の業界内ポジションを理解し、
商品・サ
210
により必要な土地の広さ、
資金、
取扱商品、
仕入れルート等が変
営の健全性をアピールすることができる。不動産登記を事業の
40
0
るが、
まず長期的にどの業態に力を入れるのか的を絞る。それ
0∼4人 5∼99人 100∼
999人
1000人 建設業 製造業 運輸・
以上
通信業
卸売・ 金融・ サービス業
小売・ 保険業
飲食業
拡大・
再生
新規
事業
統合・
縮小
宅メーカー
(不動産登記)
、
商業登記関連
(公認会計士や税理
士と手を組んでいる。1つの公認会計士がだいたい100程度の
企業顧客をもつ)
の3つに分類する。
(専門サービス業)
ービスの特性や優位性等の評価を通じて、
収益性を評価でき
ることが重要であり、
その関連知識は不可欠である。例えば、
小
売業界では大きな店からコンビニレベルまでさまざまな業態があ
211
企業評価・組織化能力
24
2
自社の戦略・現状の理解・洞察と
同業他社等ベンチマーク先の
経営計画の知識・洞察
a)<自社の戦略・現状の理解・洞察と同業他社等 ベンチマーク先の経営計画の知識・洞察>とは…
◎自社の経営戦略や業界内でのポジション等の理解・
洞察力。
【ヒアリング調査からの具体例】
担当者同士で話し合いを日常的に行うことで、
当社にとって
緊急かつ重要な課題を把握している。過去の延長線上で
ものを考えないようにし、
他社の成功事例の情報を分析する
ことで、
計画自体が活性化したものになる。経営全般から課
スポンスによる変化を、
自社の経営計画にフィードバックする
ようにしている。
(情報サービス・調査業)
□事業計画は、
業種や経営陣のタイプや社員のタイプ、
目標と
b)具体的には…
◎経営理念、ビジョン、
ミッション等、経営計画に影響
を及ぼす自社戦略に関する知識を有し、自社の経営
資源や事業活動状況に関して把握している。
◎経済動向や業界動向等経営に影響を与える外部
要因と、それを踏まえた自社の人材・組織力、生産能
力、情報システム、商品・サービス、収益状況等の現
状と戦略を理解・洞察できる。
◎自社の競争優位性や継続性を高めるために必要な
具体的計画策定のため、ベンチマークとなる同業他
社の経営計画の具体的内容や策定プロセス等の
知識を有する、
または洞察できる。
◎競合他社と比較した自社の強みや競争優位性を分
析できる。
現実的な経営計画の策定
□綿密な事業計画を立てることで、
自社を売上高前年比
200%以上の伸び率を保ちながら成長させた。手元に資金
□業界の情報等を積極的に収集し、
トップを含めた計画作成
題を捉える発想を駆使し、
情報のクイックアクション・クイックレ
◎自社の競争優位性や継続性を高める経営計画策
定のための、同業他社等ベンチマーク先の経営計
画に関する知識・洞察力。
3
経営計画策定力
する成長のレベル・スピードや競合先など様々な状況によっ
て異なるので、
各状況を把握した上で事業計画を策定して
いくことが必要となる。特に、事業計画は、
データ収集→分
析→仮説構築→戦略立案というプロセスを踏んで構築され
るが、
実際は最初のデータ収集の段階で正しい情報を得て
いないので、
事業計画が成り立たなくなってしまうという経営
者が非常に多い。そこで、
論理的思考力および情報収集力
を駆使して、正しいデータを得るようにしている。
(情報サー
ビス・調査業)
a)<現実的な経営計画の策定>とは…
◎自社状況および競合他社等の動向を踏まえた現実
的かつ魅力的な経営計画を策定する能力。
が5千万∼1億ほどあったので、
目先の利益にこだわらず1年
間事業の拡大を断念してでも綿密な事業計画を立てた。
ベンチャー企業の悩みは、
資金調達と販路獲得の2つに集
約されると考えている。特に資金が最重要であり、
例え売上
b)具体的には…
◎自社の人材・組織力、生産能力、情報システム、商品・
サービス、収益状況等の現状と戦略を踏まえ、ある
べき将来像を実現するための具体的かつ現実的な
計画を策定することができる。
◎自社事業の業界動向、業界内のポジション、商品・
サービスの特性、技術の優位性など競争優位性の
観点、
さらに利益構造および利益管理体制などを加
えた自社の継続性・収益性、企業経営の健全性の
観点について明確に示した事業計画を構築できる。
◎各事業部門のどこを強化していけばよいのかを判断
し、経営改善に向けての施策案、経営強化案を提示
しながら、長期ビジョンに沿った中期経営計画を策
定できる。
げがなくとも手元に資金があれば会社をつぶさずに経営す
ることが可能である。そこで、
手元に資金がある状態で綿密
な事業計画を構築すれば会社は発展してゆくものだと考えた。
(情報サービス・調査業)
□当社はリース事業を行っている企業であり、
通常の販売のよ
うに一度に高い利益を確保できるものではなく、
長期間利用
してもらわなければ利益を確保することはできない。そのため、
経営計画を立案していく上では、長期ユーザーの確保やリ
ース継続のための提案などが必要となり、
ユーザーニーズに
適切なタイミングで対応しなければならない。
リースしている
商品の耐久状況を想定して、
適切なタイミングで新しい商品
の提案ができればユーザーの囲い込みが可能となり、具体
的な経営計画の立案は可能となる。
(物品賃貸業)
□店舗事業において、
5∼10年計画と単年度の計画を事業収
□ITソリューション事業部を3年前から立ち上げた。推進体制
はできあがったが、
成果としては、
まだ途上状態である。そこで、
経営計画の見直しを図っている。そのためには、
大手クライ
支を見ながら作成している。自社の業態は大型店舗からコ
【ヒアリング調査からの具体例】
ンビニレベルまであるが、
長期計画ではまずどの業態に力を
入れるのか的を絞る。それにより必要な土地(大きさ)、
資金、
アントニーズの再確認、今後の各クライアントの方向性に合
□弁護士の立場から、私的ガイドラインによる倒産・事業再生
並べる商品、仕入れルートが限定されてくる。今回、打ち出
致するかどうか、
情報の分析力が大きな要件となる。現状ク
において、
事業面・収益構造・営業面でそれぞれがどのよう
した計画は、大型のショッピングセンターをやっていくのは収
ライアントを中心とした関係強化のための情報分析、
情報分
に再生していくか再生計画を作成することができる。ファイ
支面で無理があるので、
中規模で日々の買い物ができる食
析に基づいたサービス体制強化、サービス商品内容の精
ナンス、
マネジメント部分ではデット
・エクイティ
・スワップ
(DES:
品を中心とした店舗に切り替えていくという内容である。単
査と収支バランスの検証を行っている。
(情報サービス・調
債権者が企業に対して有している債権を、
その企業の株式
年度の計画では出店に伴う商圏調査を行い、調査結果を
査業)
と交換する手法)で債務免除を行い、
資産と借金がかみあ
みて採算がとれるかを読み取る。単年度の事業計画ができ
う方向に進め、財務リストラを行うことをポイントとしている。
ると、
店舗から共同購入等の別事業(当社は事業分野が広
内部の組織構造については、
組織のスリム化、
中間管理職
い)
を手がけられる。
(協同組合)
□自社独自で商品開発をするための足がかりとして経営戦略、
事業計画を1・3・5年計画と中・長期に立てた。経営戦略、
事
業計画の作成のために、
同業他社の事業戦略や経営計画、
商品情報収集、市場調査・リサーチを定期的に実施し、他
社との差別化を計った。
(食料品製造業)
をカットし、
フラットな組織化等の組織面の見直しを心がけて
計画策定を行う。営業面では収益性の低い組織は早期に
撤退させ、
利益の上がる分野に集中させ、
構造的にどのよう
に展開していく必要性があるかという再生計画提案を行う。
(専門サービス業)
212
213
企業評価・組織化能力
24
経営計画策定力
3)能力・知識の形成・獲得・育成
能力レベル
【能力レベルの分類】
経営計画の先見性、
インパクトの大きさ
により設定される
レベル
目安となる行動
レベル1
今後1年程度を適切に見通す経営計画
を立案することができる
レベル2
3∼5年の中期を見据えた先見性のある
経営計画を立案することができる
レベル3
中期を見据え、株価上昇につながるなど
インパクトのある経営計画を立案するこ
とができる
● 本能力・知識を有する人材に求められる最終的な目標
は、社員のモチベーションを高め、投資家にアピールす
る、先見かつ実行性があり、インパクトが大きい経営計
画を立案できるかどうかである。
● 企業では、
「現社員を育成する」ことで本能力・知識を有する人材を獲得している
場合が多い。
● 就業者は、
「OJT」、研修プログラム等「OJT以外」を中心として本能力・知識を
形成・獲得している。
● OJTの実施方法として、
自社の中核または中核となりうる人材に対して、経営計画に
関連する部門での勤務や経営計画策定の体験をさせる方法が主となっている。
経営計画の先見性と実行可能性、インパクトの
● 従って、
大きさを軸として設定する。
能力・知識の形成・獲得・育成手法
企業による本能力保有人材の獲得手段(人材ニーズ調査結果より)
◎企業の本能力・知識を有する人材の獲得方法は、
「現社員を育成する」との回答が
4割強と最も多く、次いで「既に社内にいる」とする企業が3割弱と続く。
9.0%
41.8%
28.4%
新たに採用
現社員を育成する
既に社内にいる
無回答
8.0%
8.4%
新たに
既に
外部人材を
外部人材を
活用
活用している
4.4%
就業者(経営者)からみた本能力・知識の形成・獲得方法(ヒアリング回答より)
◎ヒアリングを実施した個人(就業者・経営者)によると、本能力・知識は
「OJT」と研修プログラム等「OJT以外」を中心に形成・獲得される傾向がみられる。
OJT
59.2%
51.0%
O J T 以外(研修など)
42.9%
環境要因(資質など)
% 0
214
20
40
60
80
100
215
企業評価・組織化能力
24
具体的方法
□当社においては、
2∼3年の現場作業を経験させている。現
場の視点からも物流全体の業務を把握させる目的がある。
事業サイクルを的確に把握することが、
当該スキルの獲得に
1
<OJT>はどのように
実施されているか…
● OJTは、
本能力の獲得・育成において最も具体的な重
要な手段となっている。
つながる。
(倉庫業)
《就業者側の意見》
□中期経営計画作成に中心的メンバーとして参加したことは、
とても意味のあることとなった。約1年間という長期の準備期
「事業戦略や経営計画の必要項目・要素に関
● OJTは、
そのなかで、企画力・分析力の必要性と、
その能力で私に
自社の中核または中核となりう
● OJTの実施方法として、
□中途採用で入社し、経理課5年・総務課10年・企画課5年
る人材に対して、経営計画に関連する部門での勤務や
経営計画策定の体験をさせる方法が主となっている。
OJTの対象者となるのは、経営に関する適性として、企
画や分析、経理や資産関係の業務ができる人が抜擢さ
れている例が多い。
の勤務を経て現職に至る。その間、
会計・財務・税務の経理
の維持と、足りない知識への飽くなき探求が必要となった。
不足する部分を肌で感じることができた。
(証券業、
商品先
物取引業)
業務、
固定資産等の資産管理や社内外への調整役として
の業務、
経営計画立案への参加・実行・調整等の業務に従
事し、
それが基本となり企画課長としての知識および経験が
構築された。
(総合工事業)
□仕事が経営感覚の醸成に直接役立ったという感覚はない。
《企業側の意見》
□経営計画能力の社員育成については、OJTを中心に実施
している。経営計画作成時は、
企業の将来の方向あるいは
企業の意思決定の指針を示すもの、
企業における様々な決
定を行うルールでなければならない、
という視点で作成する
ように指導している。財務状況の明示、将来性や収益性に
ついての明示をするという視点で作成することを指導して
いる。
(映画・ビデオ制作業)
→2級(主任レベル・在庫管理等基礎的な数字)→1級(店
長レベル・経営者として必要な知識)
と段階的に取得するこ
とにより、
販売業における経営・販売の体系を学んだ。
(専門
サービス業)
◎研修プログラムは、
「現実的な経営計画の策定」に
おける経営計画策定のための知識やノウハウを習
得させることが、本能力の獲得・育成と密接に関連
している。
◎研修プログラムの実施方法として、業務関連の研
修に参加させ、専門家から講義を受ける方法が多い。
経営やマネジメントに関する内容が中心だが、財務
等に関する研修も実施されている。
【ヒアリング調査からの具体例】
《企業側の意見》
□業界団体では、
今年から経営者育成のための研修プログラ
ムを開始した。継承者候補8、9人を集めて、決算書の見方
から指導してくれる。専務にも参加してもらい、経営計画の
題点を見極める目は社員の方が優れていると感じることも少
作成に必要な基礎知識を身につけさせた。
(電気業)
なくない。経営計画立案に関して上司から具体的な指導を
□社内では「育成塾」を希望者対象で行い、
マネジメントにつ
受けた経験はないが、
予算等ある程度の決裁権を持つこと
いての研修を行い、有望な社員については経営会議に参
が許される管理職に就いた頃から、経営のことを考える機
加させる。また技術、生産、営業、各分野でコンサルタントに
会が必然的に多くなった。
(その他の専門サービス業)
よる社外研修(月1∼2回)
を受けさせ、
モチベーションを上げ
□過去の仕事(営業)
を通じて、
「伸びる会社」
と
「伸びない会
社」を数多く見て、伸びる会社は、確かなビジョンを持ち、
目
3
<環境要因>はどのように
影響しているか…
a)学生時代の経験
◎学生時代の経験は、
「現実的な経営計画の策定」
をするための基本的な能力の獲得・育成に関連して
いる。
◎学生時代の経験としては、親が行っている商売を引
き継ぐことを子供の頃から意識させられることで手伝
いの中でもどのようにあるべきかを考える習慣付けが
なされている。
やキャッシュフロー管理の方法等を、
月1回、会計士が基礎
させている。経営幹部になってからも、経営の向上セミナー
等積極的に受講している。
(電気機械器具製造業)
【ヒアリング調査からの具体例】
□高校生の時、商売をしていた父親を亡くしてから、
自分も商
売をするのだという観点で考えるようになった。そのためには
何が必要かと考えた上で、
コンピュータと経営の両方が学
べる学校に行き、
家業が縫製業であった繊維業界に就職し
た。趣味であったフライトスーツに目を付け、
オーダーシステム
を作った。最終の形がまずあって、
それに対しどういう情報
標に向かってひたすら努力していることを知った。創業から
□当該スキル獲得の一環として、財務会計分析の知識を習
が今あって、
どういう情報がないのか、
それを補うために何
の日は浅くても、企業買収、商品の特化、資金・資本面の強
得させる。役割を与えて必要な知識は「財務会計処理・分析・
があって何が必要なのか考える力が身についた。
(繊維・衣
化等、
ダイナミックな展開をしている企業もあった。
この経験は、
改善計画の提案」であることを伝え、研修プログラムなどに
服等卸売業)
現在の事業計画を作成する上で、
非常に役に立っている。
(精
通わせ習得させた。
(その他のサービス業)
□父が運送業を営んでいたことも影響し、
中学生の頃から、
運
送会社を自分でやりたいと思うようになった。高校卒業と同
□将来的に経営計画作成を任せようと考えている担当者には、
216
販売士の資格を取得した。3級(店員レベル・初歩的な販売)
◎研修プログラムは、OJTと共に、重要な育成手段と
して用いられている。
密機械器具製造業)
会社方針に沿った予算計画の立案・遂行業務を担当させ
□販売業における経営プロセスに関する知識の獲得のため、
a)研修プログラム
現在でも計画の立案は試行錯誤のようなところがあるし、
問
企業の存在意義に一定の指針を与えるものであるべきだと
考えているし、
その点に留意して作成するように指導している。
<OJT以外>はどのように
実施されているか…
間を伴う仕事は初めての経験であったので、
モチベーション
する知識」、
「自社の戦略・現状の理解・洞察と同業他
社等ベンチマーク先の経営計画の知識・洞察」、
「現
実的な経営計画の策定」の全ての能力要素の獲得・
育成と密接に関連している。
【ヒアリング調査からの具体例】
2
経営計画策定力
《就業者側の意見》
ている。そのため、
経営戦略立案に向け、
現状の課題・問題
□研修は自分で見つけて、
会社の承認をとる形で参加している。
点を抽出し、
事業の収益状況を分析・解析する能力が身に
コンサルティング会社が開く経営セミナー等は大変レベルが
ついている。
(その他のサービス業)
高い。
(情報サービス・調査業)
時に家の手伝いを始め、
運送業の経営や車のことが頭にあ
り、
いつも配送する製品や配達の効率化、
自分が運送業を
経営した時のことを考えていた。
(道路貨物運送業)
217
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