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「『家庭ごみ』と『事業系ごみ』の発生抑制と減量 化、資源の再利用を
【資料33】
2008(平成20)年4月22日
中野区廃棄物減量等推進審議会資料
「『 家 庭 ご み 』と『 事 業 系 ご み 』の 発 生 抑 制 と 減 量
化 、資 源 の 再 利 用 を す す め る た め の 具 体 的 な し く み
の考え方について」
(答
申)
(案)
平成20(2008)年8月
日
中野区廃棄物減量等推進審議会
はじめに ...................................................... 1
1.
中野区の現状と区がめざす到達点 .................................... 2
1-1
区の特徴 ...............................................................................................................................2
1-2
ごみの排出状況.....................................................................................................................2
1-3
「なかのごみゼロプラン 06」で定める到達点 ............................................................................3
1-4
区が実施してきた施策の整理.................................................................................................4
2.
家庭ごみの発生抑制策と減量化、資源化 .............................. 6
2-1
実績値からみた達成可能性 ...................................................................................................6
2-2
今後の施策の方向性 .............................................................................................................7
2-3
中野区における家庭ごみ有料化導入の必要性.......................................................................8
2-4
家庭ごみ有料化に関する具体的なしくみの考え方 ................................................................10
2-5
ごみの発生抑制及びリサイクル推進策の強化 .......................................................................14
3.
事業系ごみの発生抑制と減量化、資源化 ............................. 17
3-1
事業者処理責任の周知 .......................................................................................................17
3-2
事業者処理責任の喚起 .......................................................................................................17
3-3
ごみ減量に向けた指導の強化..............................................................................................18
3-4
排出方法の見直し ...............................................................................................................18
3-5
事業系資源のリサイクルルートの構築 ...................................................................................19
おわりに ..................................................... 20
(文中に「
*
」のある用語は、「付属資料編 用語集」で説明しています。)
はじめに
中野区は、平成 17 年度に策定した「なかのごみゼロプラン 06」の中
で、「ごみゼロ都市・なかの」をめざすことを基本理念として掲げまし
た。目標年度である平成 27 年度までに平成 16 年度比でごみ量を半減さ
せるという大胆な計画です。私たちはごみを減らすことによって、循環
型社会の形成に寄与できるだけでなく、地球温暖化対策としても貢献で
きます。高い目標ではありますが、将来の世代に、現代の便利な暮らし
の「つけ」をまわさないためにも、その達成に向けて積極果敢に挑戦し
なければなりません。
区から排出される可燃ごみ量は近年着実に減少し続けています。不燃
ごみは、これまではわずかに増加傾向にありましたが、徐々に減少の兆
しが見え始めています。しかしながら、「なかのごみゼロプラン 06」に
掲げた高い目標を達成するためには、まだまだ取り組みは十分とはいえ
ず、ごみの発生抑制やリサイクルの推進に効果のある施策の導入が不可
欠です。
本審議会は、平成 19 年 1 月 30 日に、区長より「『家庭ごみ』と『事
業系ごみ』の発生抑制と減量化、資源の再利用をすすめるための具体的
なしくみの考え方について」、諮問を受けました。以降、約1年半にわ
たり、精力的に審議を重ねてきました。加えて、区民・事業者に対する
アンケート調査を通じた意向・状況把握、日野市担当者によるごみ改革
講演、八王子市への視察訪問を通じた先進事例の情報収集、区民フォー
ラムの開催を通じた区民への説明と意見交換も実施しました。
本答申は、こうした審議を踏まえ、ごみの発生抑制と減量化、資源の
再利用をすすめるための具体的なしくみに対する基本的な考え方を取り
まとめたものです。
−1−
1.
中野区の現状と区がめざす到達点
1-1
区の特徴
中野区の特徴として、全人口に占める 20 代、30 代の割合が 38.6%(23
区の同比率は 32.8%)と高いこと、全世帯数に占める 1 人暮らし世帯の
割合が 57.2%と高いこと(同 45.4%)、また集合住宅比率が 74.8%(同
69.8%)と高いことがあげられます。土地利用では住宅地が 95.5%を占
めることも特徴的です。
区内の事業活動に目を向けると、事業所数は 23 区中で目黒区、荒川
区に次いで少なくなっています。業種は「卸売・小売業」、「サービス
業」、「飲食店、宿泊業」が上位を占め、23 区と同様の傾向にあります
が、続く「不動産業」が 12.5%(特別区の同比率は 7.6%)と多く、区
の特徴となっています。事業所規模は従業員数 5 人未満が 65.5%(同
56.1%)を占め、葛飾区、荒川区、北区に次いで 4 番目に多いといった
特徴があります。
今後のごみ減量・リサイクル事業のあり方を検討するうえで、中野区
は、主として集合住宅が集中する住宅都市であること、居住者層として
若年・単身層が多いこと、店舗を中心とする小規模事業所が多いことに
留意する必要があります。
(「資料編」に 23 区比較を掲載しています。)
1-2
ごみの排出状況
中野区で排出されるごみと資源の総量は、平成 13 年度の 124,740 ト
ンをピークに徐々に減少してきています。家庭ごみに着目すると、平成
18 年度の総排出量は 99,097 トンであり、最も多かった平成 11 年度
(105,724 トン)と比較して 6.3%減量しています。
資源を除く 1 人 1 日当たりの家庭ごみ排出量(可燃ごみ+不燃ごみ+
粗大ごみ)の推移を見ると、平成 11 年度の 817 グラムに対し、平成 18
年度は 684 グラムと 16.3%減量しています。
一方で、資源回収量は清掃事業移管後の平成 12 年度に大きく増加し
−2−
ました。資源化率※を見ると、平成 11 年度の 14.0%に対し、平成 12 年
度は 19.1%と約 5 ポイントも増加しました。平成 13 年度以降、資源回収
量は横ばいないし減少傾向にあり低迷していましたが、平成 17 年度から
徐々に古紙回収方式を行政回収から地域による集団回収方式に移行する
ことにより資源回収量は大幅に増加し、資源化率は 21.5%となりました。
さらに平成 18 年度には 22.7%へと増加しています。
以上から、中野区では、ごみ減量が進展しつつあること、またごみと
資源の分別も進み、資源化の取組みが拡大してきている様子がうかがえ
ます。
※ 資源化率は、資源回収量÷総排出量(ごみ+資源回収量)で算出(集団回収を含む)
1-3
「なかのごみゼロプラン 06」で定める到達点
区が平成 17 年度に策定した一般廃棄物処理計画である「なかのごみ
ゼロプラン 06」では、基本理念として「ごみゼロ都市・なかの」をめざ
すこと、将来の姿として「ごみゼロに近づけるためのさまざまな取組み
が『文化』として暮らしに根付くまち」をめざすことという目標を掲げ
ています。
図表 1
区がめざす「ごみゼロ」のイメージ
さらなる
発生抑制
さらなる
再使用
さらなる
資源化
現在のごみ量
焼却・
熱回収
有効利用
中間処理
資源化
再使用
発生抑制
現状
−3−
区がめざす到達点は「ごみをゼロにすること」であり、具体的に、ま
ずは、平成 27 年度までにごみ半減(平成 16 年度比)を目指しています。
図表 2
ごみゼロ達成のための当面のごみ半減目標値
指標
平成 16(2004)年度
平成 27(2015)年度
実績(基準年)
実績
713g
371g
19.8%
50.6%
区民 1 人 1 日あたりのごみ排出量
資源化率
1-4
区が実施してきた施策の整理
(資源化施策)
(1) 平成 11 年 5 月に、びん・缶の分別回収を区内全域で展開しました。
(2) 平成 16 年 7 月に、プラスチック製容器包装の回収を一部地域にお
いて開始しました。その後順次地域を拡大し、平成 20 年 10 月か
らは区内全域で回収を実施します。
(3) 平成 17 年 7 月からペットボトルの破砕機を区内に順次設置しまし
た。(平成 20 年 8 月現在で 10 台設置)
(4) 平成 19 年 4 月から古紙の行政回収を停止し、町会・自治会が古紙
の集団回収の全区展開をしました。
(5) ペットボトルについて、平成 20 年 10 月からは、これまでの店頭
回収に加え、びん・缶集積所での回収を始めます。
(6) リサイクル展示室を設置し、粗大ごみの展示・提供、リサイクル
に関する PR・情報提供を行う傍らフリーマーケットも開催してい
ます。
(7) その他、古布・古着や乾電池の回収も行っています。
(訪問収集)
−4−
平成 13 年 6 月から、高齢者や障害をお持ちの方など、自らごみを集積
所まで出すことが困難な世帯を対象に、職員が直接、自宅を訪問してご
みを収集しています。
(排出指導)
平成 10 年度より集積所における分別排出指導の徹底、事業系ごみ有料
化制度の定着化を図るため、集積所指導、資源回収の指導、集積所の改
善、不法投棄対策、事業用大規模建造物の立入指導を行うとともに、多
方面にわたり区民・事業者に対する相談及び広報活動を行っています。
−5−
2.
家庭ごみの発生抑制策と減量化、資源化
目標の達成に向け、区内で発生するごみの多くを占める家庭ごみの減
量化、資源化を強力に推進しなければなりません。そのためには、現行
施策を強化することはもとより、家庭ごみ有料化など、より大きな効果
を生み出す新たな施策の導入が必要です。
2-1
実績値からみた達成可能性
(1)
1 人 1 日当たりの排出量
区収集ごみ量は減少傾向にあります。
しかし、現在の減少率のままでは、平成 27 年度までに区収集ごみ量
を 371g/人日まで削減することは困難です。大きな減量効果のある施策の
導入が必要です。
(2)
資源化率
区の資源化率を見ると、平成 11 年度の 14%に対して平成 12 年度は
19%に上昇し、以降平成 16 年度までは 19%∼20%とほぼ横ばいで推移し
てきましたが、平成 17 年度は 22%に、さらに平成 18 年度には 23%へと
上昇を続けています。これは、古紙の集団回収への移行やプラスチック
製容器包装などの資源を増やしてきたことによる効果です。
しかし、現在の資源化率の伸びでは、平成 27 年度までに約 51%にま
で引き上げることは困難です。資源化率を高める施策の導入が必要です。
(3)
ごみ半減目標の達成可能性
平成 27 年度の目標を達成するためには、資源化率を引き上げながら、
ごみ・資源の総量を削減する発生抑制策、ごみ減量策の導入を進めなけ
ればなりません。
実績値を見ると、ごみ減量効果、資源化推進効果は徐々に現れている
と考えられますが、平成 27 年までという限られた期間を考えると、より
大きな効果が得られる施策を導入することが不可欠です。
−6−
2-2
今後の施策の方向性
(1)
発生抑制策の推進
まずは、ごみそのものを出さない暮らしの工夫を、生活の中に根付か
せていく必要があります。たとえば、消費者として、レジ袋を辞退する
こと、マイバックを持参すること、過剰包装品を選択しないこと、また
事業者として、簡易包装を推進すること、ごみ削減のための情報提供を
することなどがあげられます。
また、祭りなどのイベントで、繰り返し使える容器(リターナブル容
器やリユース容器)を使うことなども考えられます。
さらに、幼稚園や小・中学校と連携して、園児や児童・生徒に対する
環境教育を継続して実施することも必要です。
(2)
リサイクルシステムの拡充
不用となった物を、ごみではなく資源としてリサイクルするためには、
資源として分別排出できるように仕組みを拡充する必要があります。
新聞・雑誌などの古紙やびん、缶といった資源の分別は、広く区民に
根付いてきています。
さらにごみ減量につなげるためには、店頭がリサイクル拠点となって
いるペットボトル、不燃ごみとして排出されているプラスチック製容器
包装のリサイクルシステムを拡充することとあわせ、紙製容器包装をご
みにしない働きかけを行う必要があります。
(3)
ごみゼロやごみ半減目標の共有
区では、究極の目標として「ごみゼロ」を、また平成 27 年度までの
具体的目標として「ごみ半減」を掲げています。しかし、こうした目標
は、区民には十分に浸透していないようです。
そこで、まずはこうした目標を広く区民に知ってもらい、ごみ減量の
ムーブメントを起していく必要があります。
さらには、区民がごみ減量やリサイクルに対する責任感を持ち、自発
−7−
的に行動できるようにしなければなりません。
2-3
中野区における家庭ごみ有料化導入の必要性
上記の施策を実施したとしても、平成 27 年度までにごみ半減を達成
することは容易ではありません。各種施策を複合的に実施することを前
提に、ごみ減量の有力な手段の一つとして、家庭ごみ有料化を導入する
必要があります。施策を複合的に実施することによって、有料化も他の
施策も、より大きな効果が生み出せることになります。
すでに全国市区町村の 53%で家庭ごみが有料化されており、多摩地域
はもとより、人口規模の大きな政令指定都市でも有料化が導入され始め
ています。有料化を導入した市町村ではごみの減量効果が得られており、
また市民の減量意識も向上しています。
ごみ半減目標を掲げている中野区にあっては、ごみ減量のため資源の
リサイクルルートを整備すること、不法投棄・不適正排出対策を講じる
こと、収集方式の見直しをすること、事業系ごみ対策を講じること、清
掃ボランティア活動や紙おむつが多く出る子育てのための支援など社会
的な配慮をすることなどを前提条件に、消費者の購買行動の変化による
環境配慮型の生活様式への誘導効果や発生抑制によるごみ減量効果があ
り、また負担の公平化を図ることができる家庭ごみ有料化を、以下の理
由から実施すべきです。
なお、中野区で考えられる有料化のしくみについては 2-4 で提案して
います。
(1)
ごみ処理施設が中野区内に所在しないこと
自区内処理の原則からいうと、中野区から出るごみは中野区内で処理
しなければなりません。しかし、中野区を含む東京 23 区は、東京二十三
区清掃一部事務組合において総括的にごみ処理を行っています。現在、
中野区内には一部事務組合の清掃工場は所在していないため、区内から
出るごみは、他区に立地するごみ処理施設で処理されています。
中野区のごみが他区に所在する清掃工場で処理されているという状
況を考慮すれば、区民一人ひとりが自ら出すごみに責任を持ち、積極的
−8−
に減量に取り組む必要があります。中野区において家庭ごみ有料化を導
入する必要性は高いと言えます。
(2)
発生抑制・資源化促進策が必要であること
現行施策だけでは、ごみ減量の目標達成は困難です。ごみの量を減ら
すためには、区民一人ひとりの意識改革が必要です。家庭で出るごみを
減らす工夫だけでなく、買い物の段階でごみにならない商品を選択する
ような工夫が求められます。今までごみ問題に関心の無かった人も含め、
ごみ問題に正面から向き合うことが大切です。また、資源をきちんと分
別し、排出ルールを守ることが必要です。そのための促進策として、家
庭ごみ有料化は効果的です。
(3)
取り組みの成果が実感できる仕組みが必要であること
中野区は、若年層・単身層が多いという特徴を持っています。こうし
た層には、区からの情報が届きにくく、それによって一部にはごみ出し
マナーが守られないといった問題点も生まれています。こうした若年
層・単身層を含め、広く区民がごみ減量の努力を実感できるような仕組
みを構築することが必要です。
家庭ごみの有料化によって、ごみを多く出すほど経済的な負担は増し、
逆にごみを減らせば少ない負担で済むことになります。一人ひとりがご
みを減らす努力の成果を実感できる仕組みとして、家庭ごみ有料化が必
要です。
(4)
地球温暖化対策としてごみ減量の重要性を認識すること
ごみを減らすことは、最終処分場の延命化や資源の有効利用だけでな
く、地球温暖化対策としても効果があります。
排出された可燃ごみはごみ処理施設で焼却処理されますが、水分を含
む生ごみなどが多く含まれると燃えにくいため、燃料(助燃材)を使わ
なければなりません。また、ごみに含まれるプラスチック類は焼却処理
により水と二酸化炭素、すなわち温室効果ガスとして大気中に放出され
ます。
−9−
ごみを減量化することでこれらを回避することができます。ごみ減量
は地球温暖化対策として重要であることを認識する必要があります。
2-4
家庭ごみ有料化に関する具体的なしくみの考え方
家庭ごみ有料化を導入するに当たっては、次の具体的な考え方にたっ
て制度を作る必要があります。
(1)
課金体系
家庭ごみ有料化の制度設計に当たっての 1 つ目の要素は、どのように
手数料を課金するか(課金体系)です。
家庭ごみ有料化の課金体系としては、ごみ袋に課金することを前提と
し、①1 枚目から課金が始まる単純方式(単純従量制)、②一定枚数を超
えると課金が始まる超過量方式(超過量従量制)、③一定枚数を超える
と単価が高くなる二段方式(二段階従量制)の 3 つの方式が考えられま
す。
中野区は人口や世帯数が多い、転入・転出が多い、単身層が多い、30
代以下の年齢層が多いといった特徴があります。
こうした特徴を考慮すると、区民にとってしくみがシンプルで分かり
やすいこと、事務処理上煩雑でなく取り扱いが容易であることなどを考
慮する必要があります。
そこで、課金体系としては、単純方式が望ましいといえます。
(2)
手数料水準
家庭ごみ有料化の制度設計に当たっての 2 つ目の要素は、基準となる
手数料をいくらにするか(手数料水準)です。
必要となる経費総額を試算した上で、区民の支払い可能額や減量効果
などを考慮して手数料を決定することになります。
この場合の妥当な手数料水準については、総合的に勘案すべきです。
すなわち、減量効果が期待できる一方で、区民に対して過剰な負担にな
らず受け入れてもらえる可能性の高い水準を探ることとなります。また、
減量に成功している他の有料化導入自治体の水準なども参考にすべきで
−10−
す。
平成 19 年度に実施した区民アンケート調査によれば、ごみ処理サー
ビスが有料となった場合に支払ってもよいと考える額(支払い意思額:
WTP)※は、月あたり平均で 1 世帯「270 円まで」でした。
ごみ半減に向けて、より大きな発生抑制効果を得るためには、「支払
い可能」とする WTP を上回り負担感を生ずる額を手数料水準とする必要
があります。
そこで、属性による WTP の違いにも着目し、標準で世帯あたり月額 500
円程度となるような額を手数料水準とすることが望ましいといえます。
ごみ1リットルあたりにすると約2円の負担であり、これは、多摩地域
の平均的な水準でもあります。
(3)
収集方式(集積所収集/戸別収集)
家庭ごみ有料化の制度設計に当たっての 3 つ目の要素は収集方式で、
従来どおりの集積所方式と、新たな戸別収集とがあります。
集積所方式は、すでにしくみが確立していること、収集コストが低く
抑えられること、といった長所がありますが、排出者が特定できないた
め有料化した場合にルール違反を取り締まりにくいこと、集積所の管理
者が必要であること、近隣関係が希薄な地域では集積所が設置できない
こと、などの短所も見受けられます。
戸別収集には、排出者が特定できるためルール違反が起こりにくくご
みに対する一人ひとりの責任感が高められること、事業系ごみを排除で
きること、まちの美化につながること、といった多くの長所があります。
一方で、収集コスト増への対策や、狭隘道路などでの収集方法の工夫な
ど検討を要する点もあります。
家庭ごみ有料化に当たっては、一人ひとりの排出者責任に委ねる部分
が多く、戸別収集を採用することが望ましいといえます。この場合、資
源については当面は集積所収集を継続する、プラスチック製容器包装の
資源回収やサーマルリサイクルによる不燃ごみ量の減少を前提に不燃ご
み収集頻度を少なくするなどによって、収集作業負荷やコストを削減す
る工夫が必要です。
−11−
(4)
社会的配慮のための措置
家庭ごみ有料化の制度設計に当たっての 4 つ目の要素は、社会的配慮
のための措置を講ずることです。乳幼児などがいる世帯は紙おむつを使
うことが多く、その分、他の世帯より可燃ごみが多く排出されることに
なります。紙おむつを使わざるを得ない状況の世帯に対しては、無料で
紙おむつが出せるような配慮をしなければなりません。また、ごみを出
すたびに経済的負担が発生することになるため、生活保護世帯などに対
する配慮が必要です。
あわせて、道路や公園等の公共スペースを清掃するボランティア活動
から出るごみについても、無料で排出できるような仕組みが不可欠です。
なお、これら無料の仕組みが該当者以外に使われることがないよう、
しっかりとした管理の仕組みをあわせて構築しなければなりません。
(5)
徴収手数料収入の運用方法、及び地域への還元
家庭ごみ有料化の制度設計に当たっての 5 つ目の要素は、徴収した手
数料収入をどのように運用するか、です。
徴収した手数料収入の使途については、区民にきちんと公表、説明さ
れなければなりません。そのためには、他の税収入とは別に管理・運用
できるようにする必要があります。
そこで、徴収した手数料収入を基金化することを一つの選択肢として、
収支を明確にでき、またごみ減量やリサイクル活動を中心とする特定用
途の財源として活用できるようなしくみを検討することが望ましいとい
えます。
中野区は、行政が従来行っていた古紙回収を町会・自治会による集団
回収に全面的に移行するなど、地域の「がんばり」に大きく期待してい
ます。また、町会・自治会側も、地域の問題は地域で解決しようという
強い自治意識を持っています。
こうした状況を踏まえると、有料化で得られた手数料収入を、「ごみ
減量・リサイクル活動による地域コミュニティの形成」に活用すること
が考えられます。
−12−
(6)
情報公開及び点検・見直し等チェック機能
家庭ごみ有料化にあたっては、区民に対して、導入前の念入りな説明
はもちろんのこと、導入後にも得られた効果や課題、徴収手数料の使途
などについて十分な説明を行うことが不可欠です。また、新たな負担の
代わりに得られるメリット(Value for Money)についてもきちんと説明
しなければなりません。
特に、有料化導入後には、ごみの発生抑制や資源分別促進等の効果を
確実なものとするために、効果の検証や点検、見直し等のチェックを行
う必要がありますが、こうした機能を持つ組織には、区民が参加するこ
とが望ましいといえます。
さらに、指導員や監視員、あるいは「ごみアドバイザー」といったよ
うな区民中心の組織を形成し、地域自治のさらなる向上につなげるべき
です。
VFM(Value for Money)について
家庭ごみ有料化は区民に新たな費用負担を強いる施策となります。区
は、新たな負担に対して得られるメリットを十分に区民に説明しなけれ
ばなりません。
本審議会では、家庭ごみ有料化によって得られた手数料(徴収手数料)
を、区民や地域によるごみ減量・リサイクル活動に還元するという観点
から議論を行いました。
(7)
不法投棄対策
従来は無料で処理されていたごみが有料になると、空地へのポイ捨て、
公共の場所や店頭にあるごみ箱への家庭ごみの投入などといった不法投
棄が増加する、という意見があります。
全国調査の結果を見ると、「増加した」が 36%、「増加していない」
ないし「減少した」が 47%となっています。また、有料化に伴う不法投
棄に関する苦情や通報については、「増加した」が 43%、「増加してい
ない」ないし「減少した」が 44%となっています。「有料化すると空き
−13−
地や道端などに不法投棄されたごみが気になって、行政への苦情や通報
件数は増加する傾向がある」との分析がなされており、必ずしも家庭ご
み有料化と不法投棄増加の関連性※は明らかになっていません。
しかしながら、平成 19 年度の区民アンケート調査結果によれば、「十
分な不法投棄対策を講じること」が配慮事項の上位にあがっており、こ
うした不安を払拭するためにも、またフリーライダー※を排除し、公平な
運用を行えるようにするためにも、不法投棄防止の措置を講じることが
不可欠です。
2-5
ごみの発生抑制及びリサイクル推進策の強化
家庭ごみ有料化の実施に当たっては、ごみの発生抑制とリサイクルの
推進で最大の効果が期待できるよう、次のような対策を併せて実施する
ことが必要です。
(1)
集合住宅対策
集合住宅の居住者がルールを守ってごみ出しできるよう、十分な対策
を講じなければなりません。
現在区は、「中野区共同住宅等建設指導要綱」※により、用途地域や
階数、住戸数に応じてごみの排出場所とあわせ、資源の回収場所を敷地
内に設置する義務を定めています。家庭ごみ有料化を導入する際には、
要綱の改正を視野に入れ、すべての集合住宅に対し、敷地内へのごみ排
出場所の設置を指導するべきです。
賃貸住宅居住層は地域活動への参加がほとんどないことから地域情
報が得られず、そのためにごみ出しルールを守りにくいという傾向があ
ります。個々の居住者に働きかけることとあわせ、集合住宅の所有者や
不動産会社、管理会社の協力を得て、賃貸契約時にごみ出しルールなど
必要事項を説明してもらえるような措置を講ずる必要があります。
(2)
若年層対策
区の特徴として、集合住宅居住層が多いことに加え、単身層・若年層
が多いことがあげられます。アンケート調査結果からも、これらの層は
−14−
特徴的な意識・行動パターンを持っていることが明らかになっています。
単身層・若年層などでは、まだ資源化のための分別をしていない傾向
が少なからずあります。2008 年 10 月からの、廃プラスチック等の不燃物
から可燃物への分別区分変更にあたり、改めて新しい分別方法とあわせ
資源化の必要性について、ていねいな説明や適切な情報提供に努めるべ
きです。
また今後、ごみ減量・リサイクル施策の強化や、さらには家庭ごみ有
料化の導入を念頭に置けば、特にこれらの層をターゲットとして、どの
ように参加・協力を得るかを十分に検討しなければなりません。
そのためには、こうした層の意見を直接取り込めるような検討組織
(たとえば検討メンバーとして参加してもらうなど)を立ち上げて、よ
りメッセージを届けやすい手法を模索するなどの対策を講じる必要があ
ります。
(3)
紙類のリサイクルシステム拡充
中野区では、新聞や雑誌等の古紙類については行政収集を廃止し、地
域による集団回収に一本化しました。町会・自治会側もこうした回収の
仕組みを支えるために、体制を強化するなどの措置を講じています。そ
の結果、古紙類のごみへの混入率は著しく低くなってきています。
雑紙については、新聞や雑誌と同じようにリサイクルできるにもかか
わらず、その多くが可燃ごみに混入してしまっています。最も大きな要
因は、雑紙がリサイクル可能であることを区民が認知していないという
ことです。今後は、雑紙リサイクルを広く区民に知ってもらうための周
知を行い、地域と連携して既存の集団回収の拡充を図り、雑紙を含めて
紙類のリサイクルが徹底できるよう、措置を講じなければなりません。
中野区では、古紙類のリサイクルシステムは、地域による集団回収が
基本となります。平成 19 年度に実施した区民アンケート調査によれば、
「しくみがよくわからない」とする割合が 20.5%あり、また「回収時間
や曜日が生活時間と合わない」も 12.5%あります。したがって、こうし
た課題の改善に向け検討する必要があります。
−15−
(4)
ペットボトル回収の検討
中野区では、ペットボトルのリサイクルはスーパーやコンビニ等の店
頭回収を基本としながら、回収拠点を増やすために、商店街等にペット
ボトル回収機を徐々に設置してきました。
平成 20 年 10 月からは、びん・缶集積所での行政回収も始まります。
しかしながら、ペットボトルの発生抑制を念頭に置いた拡大生産者責
任の追求や、容器包装リサイクル法の活用を含む回収したペットボトル
の引き渡し先など検討すべき課題も残ります。
(5)
生ごみ減量対策
各種資源物のリサイクルシステムが構築される中で、さらなるごみ減
量に向けて、いかに生ごみの減量対策を講じるかが大きなカギとなって
きています。
生ごみ対策の一つに堆肥化がありますが、できた堆肥の用途を確保す
るという出口問題を解決しなければなりません。住宅地域が区域の約
96%を占める中野区内では、これを利用できる農地等を確保することは
できません。
当面、学校での給食残菜等の堆肥化の取り組みや、団地における生ご
み堆肥化の取り組み等、ごみ減量につながる地域の取り組みを区が支援
する措置を検討すべきです。先行事例を見ると、家庭ごみが有料化され
ると、家庭内でできる生ごみ処理需要が高まると考えられることから、
家庭内での生ごみ処理に起因する炭酸ガスの排出量にも留意しながら、
区民の生ごみ減量の取り組みを支援する工夫を講じるべきです。
−16−
3.
事業系ごみの発生抑制と減量化、資源化
東京二十三区清掃一部事務組合の「ごみ排出原単位等実態調査報告書
(平成 19 年 3 月版)」によると、中野区から排出される全ごみ量のうち
約 35%が事業系ごみとなっています。23 区全体でみると、約 62%が事業
系ごみであり、中野区の数値が低いのは住宅地域が多くを占めるといっ
た特徴が大きく起因していると考えられます。しかし、家庭ごみの減量
だけでは、中野区のごみを大幅に削減することは困難です。事業系ごみ
についても発生抑制と資源化を促進する具体的なしくみが必要です。
3-1
事業者処理責任の周知
廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、事業活動に伴って生じた廃
棄物は、事業者が自らの責任において処理しなければならないとする「事
業者処理責任」を定めています(付属資料 37 頁)。
当審議会が事業所に行ったアンケート調査によれば、この事業者処理
責任を、「知らなかった」あるいは「よくわからない」と回答した事業
所が約 3 割ありました(付属資料 48 頁)。事業系ごみの排出抑制と資源
化を進めていく前提として、まずは事業者に廃棄物の事業者処理責任が
あることを周知していく必要があります。
3-2
事業者処理責任の喚起
毎年策定する「中野区一般廃棄物処理実施計画」の中で、事業系ごみ
の排出については、「従業員 20 人以下および 1 日の平均ごみ排出量が 50
㎏未満の事業者で、自主回収ルートをもつことが困難な場合には、例外
的に有料シールを貼って区収集に排出することができる」としています。
アンケート調査では、区内事業所の実に6割強がこの例外的な排出に依
存しています。
本来あるべき独自処理を原則とする「事業者処理責任」について事業
者の関心を喚起していくことにより、事業者の発生抑制の意識も高めて
いく必要があります。
−17−
3-3
ごみ減量に向けた指導の強化
大規模・中規模事業所対策としては、現行制度での指導対象である延
べ床面積 3,000m2 以上という規定を 1,000m2 以上に拡大・改正し、よりき
め細かに指導できるような仕組みづくりが必要です。
また、中小規模事業所対策としては、区は区内にある NPO 等と協力し
て、次の対策を講ずるべきです。
z 事業系ごみがリサイクルできるよう、必要な情報を提供できるよ
うにすること(リサイクル情報提供機能)
z 排出量が少ない事業所でも複数を束ねることで、民・民でリサイ
クルできるような仕組みを構築すること(リサイクルコーディネ
ート機能)
3-4
排出方法の見直し
区では、現在でも、有料シール貼付を前提に、区収集を実施していま
す。しかしながら、アンケート調査によれば、可燃ごみ、不燃ごみとも
に、「有料シールを貼らず区収集に排出」するとする回答が、約 15%存
在しています。
このように、事業所が事業活動から出るごみを家庭ごみとして不適正
に処理してしまうことへの対策として、「事業系ごみについては、区は
一切収集しない」とする切り離し方式が考えられます。また、多摩地域
で導入されているように、登録制を前提に原価に近い事業系有料指定袋
を購入してもらい、従来どおり区収集によって対応する方法も考えられ
ます。
前者は、区による事業系ごみ収集を全廃し民間委託を徹底するという
考え方です。中野区の場合、小規模事業所が多く、約 2/3 の事業所は区
収集に依存していることから、切り替えのための十分な移行期間を設け
るなど慎重な対応が必要となります。
後者は、事前に区に登録する等管理のしくみを導入することでフリー
ライド※を排除しつつ、フルコストチャージ※に基づく確実な費用負担を
求め、区収集を継続する方法です。
−18−
小規模事業所が多いという中野区の特性や事業者の意向等を十分に
考慮したうえで、いずれかの方法による現行制度の見直しを行う必要が
あります。
3-5
事業系資源のリサイクルルートの構築
現状では、事業者が古紙をリサイクルしようとする場合、集団回収へ
は排出できず、自ら資源回収業者等へ委託せざるを得ません。しかしな
がら、量がまとまりにくい中小事業所の場合はこうした委託が困難であ
り、結果的にごみとして排出せざるを得ない状況となっています。有料
シール貼付による区収を行っているびん・缶等もあわせ、事業系資源の
リサイクルルートを構築する必要があります。
中小規模の事業所がまとまってリサイクルに取り組むオフィス町内
会※等事業系資源をリサイクルするしくみの形成が必要であり、そのため
の支援等が求められます。
また、事業所から排出される生ごみについては、食品リサイクル法の
枠組みに沿って事業者自らが取り組みを進めることになりますが、こう
した取り組みが円滑に進められるよう、情報提供など行政による支援も
必要です。
−19−
おわりに
本審議会は、区長からの諮問に基づき、「ごみゼロ都市・なかの」の
実現に向けて、「『家庭ごみ』と『事業系ごみ』の発生抑制と減量化、
資源の再利用をすすめるための具体的なしくみの考え方について」、以
上のとおり答申をとりまとめました。
区が掲げる大きな目標を達成するためには、現行施策の評価や見直し
が必要であるのはもちろんですが、ごみ減量・リサイクルに効果のある
新たな施策の導入も不可欠であると考えます。さらに、こうした効果に
加え、地球温暖化防止の視点も持たなくてはなりません。特に、日常的
に排出されるごみに起因する温室効果ガスの排出量が削減できるよう、
総合的な視点から検討する必要があります。
本審議会では、ごみそのものの排出量の削減及びリサイクルの推進に
効果のある有力な手段の一つとして、家庭ごみ有料化の導入および有料
化と併せて取り組むべき施策の実施について提案しています。
中野区では地域自治が積極的に推進されており、町会・自治会を核に
区内の随所で「自らの地域は自らが良くしていく」取り組みが展開され
ています。ごみ半減、さらにはごみゼロの実現に向け、地域もこれまで
以上に力を発揮しなければなりません。
中野区には、本審議会答申を尊重され、不退転の決意で「ごみゼロ都
市」の実現に向けて取り組まれるよう強く要望します。また、区と区民、
地域、事業者、NPO 等の関係者が連携して取り組める場づくりが必要とな
ってきます。多くの区民や地域等の主体的な参画を促すことで、所期の
目標が達成されるよう期待します。
−20−
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