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タイ・ベトナム・ミャンマーにおける 食品市場環境
特集 食品産業の海外市場展開を考える 2 ●The Comparative Analysis of Food Sector in Thailand, Vietnam and Myanmar タイ・ベトナム・ミャンマーにおける 食品市場環境 ㈱大和総研 アジア事業開発本部 シニアコンサルタント 中村 はじめに 大和総研では、 「平成24年度東アジ 1.外国企業の進出に対する 各国の姿勢 昌宏 Economic Needs Test(ENT)と呼 ばれる審査がある。ミャンマーでは、外 国投資法の細則からは100%外資で参 ア食品産業海外展開支援事業」 として、 (1)外資の出資規制 国内企業の競争力が外国企業に比 「タイ・ベトナム・ミャンマーにおける食 入できるとも、合弁が強制され外資比 品市場環境調査」を行った。本報告書 べて劣る場合、政府は外国企業の進出 ある。ただし、店舗面積の条件や国産 は、経済発展段階の異なるタイ(1人あ を防ぐために、外国資本の出資比率に 商品を優先的に調達・販売するとの条 たりGDP[2011年] :5,395ドル)、ベトナ 規制を課す場合がある。特にサービス 件がある。なお、ミャンマーの場合は合 ム (同:1,374ドル)、 ミャンマー (同:824ド 業の規制は多い(表1)。 弁(上限60%) で進出できたとしても、特 ル)の3ヵ国に焦点を当て、食品市場の 食品加工(製造業)では3ヵ国とも外 別決議を採択できる議決権数(出席議 実態や法規制、商慣行など、日本の食 資規制のハードルは低い。タイとベトナ 決権数の75%以上)を確保できている 率の上限が60%であるとも解釈可能で 品企業のビジネス機会を高める情報を ムでは100%子会社の設立が可能であ わけではない。 収集・調査・分析し、まとめたものである。 る。ミャンマーでは、具体的な品目は不 (2)優遇税制 また、先行するタイの状況は、後続する 明だが、 「伝統的な食品製造」分野で 法人税率は、タイが20%、ベトナムとミ ベトナムやミャンマーにおけるライフスタ の外 国 企 業の参 入は不 可であるもの ャンマーが25%であるが、産業育成の イルの将来動向等を予測する上でも有 の、ビスケット、ウエハース、穀物加工食 観点から、ASEAN諸国では法人税の 益と考えられよう。 品、飲料等、その他多くの食品加工分 免除期間を設ける国が多い。食品加 本 稿では、報 告 書 の中から、 「外 野では、外資比率上限80%の条件付き 工業は、一部適用外の分野はあるもの 国 企 業の進出に対する各 国の姿 勢 」 で参入が可能である。 の、タイで8年間、ミャンマーで5年間の 「 外 国 企 業の進出動 向 」 「 市 場の特 食品小売では各国で参入のハード 法人税の免除期間を享受できる。ベト 徴」 「商慣行」について紹介する(本報 ルは異なる。タイでは100%子会社の設 ナムでは、対象分野が瓶ジュースや缶 告書は農水省のウェブサイト、http:// 立が可能だが、1億バーツ(約3億円) ジュースであることや、進出地域によっ www.maff.go.jp/j/shokusan/ 以上の資本金が必要となる。ベトナム ては対象外となることもあるが、法人税 kaigai/pdf/h25daiwa.pdf をご参照 でも100%子会社の設立は可能だが、2 免除の優遇策はある。 頂きたい)。 店舗目の許可については、出店地域の 一方、サービス業での優遇は少ない。 小売店舗数や市場の安定性等を含む ミャンマーでは製造業と同様に5年間の 免除期間があるが(条件により適用が 表1 業種別の外資の出資上限と優遇税制の有無 食品加工 外資の出資上限 食品小売 外食 総会決議 優遇税制 法人税率 タイ ベトナム 100% 100% 49% 条件により100%可能 49% 100% ホテル建設との併存で可 2015年以降は100%可 ミャンマー 80% 一部には進出禁止あり 除期間はない。 (3)業態別ライセンス 60% 食品加工では、工場に関連する「製 条件により100%可能 造許可」や「建築許可」、生産品に係 記載なし る「食品登録」や「表示」、使用する原 普通決議 50%超 65%以上 50%超 材料の輸入に関する「輸入許可」、販 特別決議 75%以上 75%以上 75%以上 売のための「広告」が主なライセンスで 食品加工 ○ ○ ○ ある。タイとベトナムでは、全てにおいて 食品小売 × × ○ 外食 × × ○ 許可を取得するか、規定に従う必要が 通常 20% 25% 25% 8年間免除 進出地域による (例:4年) 5年間免除 優遇の概要 注:○=あり、 ×=なし 出所:Euromonitor、各種資料より大和総研作成 8 ない場合もある)、タイとベトナムでは免 ある。一方、ミャンマーでは、法規制が 未整備なため、食品表示や広告などの ライセンスがない(表2)。 食品小売では、小売業を営むため 食品と開発 VOL. 48 NO. 8