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インドネシア大森林火災と昆虫相の変遷

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インドネシア大森林火災と昆虫相の変遷
インドネシア大森林火災と昆虫相の変遷
槙原 寛(森林総合研究所)
1.大森林火災
インドネシア東カリマンタン州では 1997 年 12 月 30 日から 4 月 16 日まで 117 日間連続して無降雨であった。
これはエルニーニョ南方振動現象の影響により異常乾燥が起こった結果である。この間に 2 度の森林火災が起
こり 500 万haの森林が被災した。筆者はこの森林火災前後にブキットスハルト、ムラワルマン大学演習林とブキ
ットバンキライ天然林で 2 年間の長期に亘り、カミキリムシを主とした昆虫相調査を行った。
2.2年間の調査から得られた成果
この 2 年間で得られた成果をまとめると次のようである。
1)インベントリーの作成:ブキットスハルトのカミキリムシ 500 種以上の目録を作成した。
2)カミキリの異常発生の確認:森林火災後にカミキリムシ個体数が異常に増加したが、その後減少に転じたこと
を確認した。
3) タワーを利用しての調査法の確立:60mタワーに各種トラップを設置して調査を行い、調査法を確立した。特
にライトトラップでの調査で樹冠部に多くの変わったカミキリムシが生活していることが明らかになった。
4)トラップの開発:各種のトラップを作成し使用したが、アルトカルプストラップを開発したことは特に大きな成果
である。
5)好適な森林環境指標種の特定:ブキットバンキライ天然林と火災を受けたブキットスハルトの比較をして、好適
な森林環境の指標種の特定ができた。
6)焼け跡での調査法の確立:森林火災後に燃えた樹木の樹皮を剥ぐ、材内を削る、焼けた丸太の下部を調べ
る等を行い、焼け跡での昆虫調査法を確立した。調査の結果、タマムシは火災に強く、カミキリムシはあまり強く
ないことが明らかになった。しかし、食樹の調査には役に立った。
7)海を見たこと:マーカム川下りをして海を見たことで、ウオーレス線の見方が変わった。
8) ブキットスハルトのカミキリムシ相の復元状況:ブキットスハルトでの森林火災後 2 年経過した時点での地上
部 4 ヶ所に設置したマレーズトラップで捕獲されたカミキリムシ類の種・個体数から見て、カミキリムシ相は火災
前の状態に戻っていないことが明らかになった。
9) 石炭火の消火活動:昆虫とは関係ないが、石炭火消火のノウハウを地元民に伝えたことは、この 2 年間でイ
ンドネシアに果たした最大の貢献かもしれない。
3.成果の利活用 (2002 年以降)
2002 年以降、私は以下のプロジェクトへ参画した。
「熱帯林修復に関する研究」2002∼2004 マーカム川中流域の住友林業スブルー実験林を試験林とした。
「CDM 植林が生物多様性に与える影響評価と予測技術の開発」2004∼2008 スンガイワイン保護林および、そ
の周辺地域を試験林とした。
これらの試験林での森林の荒廃度や回復に関しては、これまでの調査で得られたインベントリーや生態的な
情報を活用してカミキリムシを同定し、特定した森林環境指標カミキリムシを利用し評価することができた。
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