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Fukuoka Growth 2015-2016 GlobalCityStatus リレーコラム 12
December 15, 2015
12. 環黄海地域の交流拠点都市・青島
~福岡とともに日中韓のネットワーク強化を目指して~
✔中国国内で「幸福度の高い都市」として定評がある
✔国内企業本社だけでなく多数の外資系企業が立地している
✔環黄海対岸地域にある日本及び韓国との経済協力の拡大が進む
テキスト:主任研究員
唐 寅
11 月下旬、景観関連の国際会議に出席するために、半年ぶりに中国
の青島市を訪れました。福岡空港から直行便でわずか 2 時間で行け
る青島ですが、日本での知名度は必ずしも高くなく、青島ビールで
名前を知っている程度ではないでしょうか。
しかし、長い海岸線を有する海浜都市青島は気候に恵まれ、中国では避暑地としての人気は非常に高い地域です。またドイツが統
治していた時代に作り上げた異国情緒漂う建物や街並みは旧市街地一帯を中心に今も数多く残っており、“紅瓦緑樹、碧海藍天”(康
有為)※注1という鮮やかな都市イメージが人々を惹きつけています。2010 年以降、青島は中国国内での「幸福度の高い都市」
としてたびたび1位に選ばれ、コンパクトで「適度に田舎」であることが住みよいまちとしての定評につながっています。(青島
新聞網 http://news.qingdaonews.com/qingdao/2015-06/24/content_11121407.htm)
青島は中国の 13 の副省級都市(日本の政令指定都市に相当)の一つとして、改革開放後に大きな経済成長を成し遂げてきました。
青島ビールを始め、大手家電メーカであるハイアール(海璽)やハイセンス(海信)など、中国を代表する大手企業はここ青島に
本社を据えています。また、青島経済成長の背景に外資系企業の活躍も見逃せません。青島市はこれまでに 500 億ドル以上の海外
直接投資を受け入れ、6,400 社以上の外資系企業が現在も操業しており、そのうちの 114 社はいわゆる世界 500 強の分類に入る
有名企業です。(2014/03/27 人民日报海外版)
青島は日本との関係も非常に密接です。青島には日本総領事館、日本人学校、日本人会があり、日本企業も 1,044 社が進出してい
ます(青島日本総領事館 HP)。そのうち九州福岡から進出している企業は 21 社あります(九州経済調査協会調べ)。
現在、青島港はアジア有数の深水不凍港として、世界 130 カ国 450 以上の港とつながっていて、博多港とも毎週 4 便以上のコン
テナ定期航路を持っています。今年 5 月から、青島港を母港とするクルーズ船「ニューセンチュリー号」が就航し、青島から九州
の鹿児島、長崎、博多港等を周遊するクルージングツアーが始まりました。(2015/05/29 齐鲁晚报)
一方、福岡市と青島市は 1999 年の食品商談会などを通じて経済交流を開始し、2000 年に福岡市が青島市も加盟する「東アジア
(環黄海)都市会議」実務者会議に加わったことで定期交流のメカニズムが出来上がりました。その後、2003 年 2 月に青島市と
「経済交流に関する覚書」を結び、青島市で開かれる「中国国際電子家電博覧会」で福岡市のアイランドシティを PR するほか、
福岡国際見本市に青島市が物産を出展するなど経済交流が進められました。青島の金属部品メーカが福岡事務所を開設したことも
ありました。
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このほかにも、福岡市は、釜山、シンガポール、大連、広州、杭州、シアトルとも経済交流覚書を結んでいます。アジアに隣接す
る地理的な好条件から、中韓を中心としたアジアとの交流を加速し、福岡市の国際経済拠点化を進展させてきた経緯があります。
(2003/02/06、2007/05/25 西日本新聞)
今、九州福岡をめぐるアジア近隣都市は、急激な経済成長に伴い、所得水準の向上と都市規模の拡大がもたらされる一方、深刻な
環境問題や社会問題にも直面しています。都市間の連携や相互のネットワークの強化なくしてこれらの問題に効果的対処すること
は困難であるとの認識が深まっています。10 月に北九州市で開催された日本、中国、韓国の環黄海 11 都市が参加する「東アジア
経済交流推進機構(OEAED)」の第 10 回環境部会では、「水処理対策」をテーマに、環黄海地域の水処理対策を参加都市が共同
で推進していくことなどが確認されたばかりです(2015/10/21 環境新聞)。11 月に中国煙台市で開かれた「東アジア経済交流
推進機構総会」では、「会員都市間における経済・貿易や観光などの分野での提携を促進し、各会員都市による複数の都市との提
携を支援して、3カ国の経済発展が直面する環境などの課題の解決を目指す」『煙台宣言』が採択されました。(2015/11/26 新
華社ニュース)
青島はおよそ 10 年おきに成長のステップアップをしています。我々は関門トンネルの倍ぐらいの長さもある胶州湾海底トンネル
を通って、まだ完成していない黄島区唐島湾海浜公園一帯を案内されました。1990 年代までに南西部の旧市街地を中心に展開し
ていた青島は、その後市役所を東に移転し、道路やホテルなどの都市インフラを加速度的に整備し、かつての街並みを残す旧市街
地とは対照的な新市街地を作り上げました。
そして 2000 年以降、胶州湾大橋と胶州湾海底トン
ネルを開通させたことによって黄島新区との一体
化を図り、青島市の都市空間を大幅に拡張させ、
2020 年までに 1,000 万人都市へと成長する青写真
が描かれています。(2014/11/21 半島都市報)
その推進力の一つは環黄海対岸地域にある日本及
び韓国との経済協力の拡大です。
青島にとって日韓は主な貿易投資対象国であり、住
みよいまちづくりを目指している点で福岡と共通する部分も多いはずです。ニーズとシーズが合致し、ヒト、モノ、カネの流れが
最も多い近隣都市がこれまで築いてきた様々な交流プラットフォームを活用し、情報交換をはじめ、政策協力やニュービジネス発
掘につなげていく努力が求められています。
※注釈1:“紅瓦緑樹、碧海藍天”(康有為)…「赤い煉瓦、緑の木々、紺碧の海、青い空」の青島地域の風情を表す言葉。康有為
は中国・清末民初にかけての思想家・政治家・書家。
写真はいずれもイメージ(中国青島市、福岡市にて撮影)
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