Comments
Description
Transcript
第 43 講 地誌:東アジア
基礎からわかる地理 第 43 講 地誌:東アジア 自然環境 ① 地 形 ・新規造山帯 → チベット高原からヒマラヤ山脈にかけ大山脈。 ・古期造山帯 → 中部から北部にかけての山脈。 西の山脈は新期造山帯の活動の影響から再隆起。 ・安定陸塊 → 他の地域は大部分が安定陸塊。 ※華北平原 ホワイ川と黄河の流域の平原地帯。タイハン山脈とチンリン山脈の → 間。黄河は天井川となり,断流も見られる。 ※ 主な 地形 :ヒマ ラヤ山 脈 チ ベッ ト高原 スーチョワン盆地 アム ール川 アル タイ山 脈 大シンアンリン山脈 アムノッ ク川 ホ ワイ川 黄河 テ ンシ ャン山脈 長江 黄土平原 メコン川 タリム盆地 タクラマカン砂漠 ゴビ砂漠 ケイリン(カルスト地形) ② 気 候 ・モンスーンアジアに属し、季節風の影響を受ける。 内陸部は水分が供給されず乾燥 沿岸部は北から Dw→Cw→Cfa(上海)→Cw(香港)と変化 301 第 43 講 地誌:東アジア 産業と生活 ① 中国の農業 ・チンリン山脈とホワイ川を結んだ線をチンリン=ホワイ線という。 降水量1000㎜程度を示す。 以北が畑作地帯、以南が稲作地帯 ・農業地域 → 北東部(東北部):大豆,コウリャン、春小麦 華北(黄河下流付近) :肥沃 冬小麦 綿花 華中(長江下流):世界的稲作地 二毛作も 華南(南部):狭い平野で稲作、二期作、サトウキビ、茶など 西部:遊牧、オアシス農業 ※生産体制 → かつては人民公社のもと集団農業体制 1982年に解体されて以降、生産責任制に 生産意欲の向上によって生産量急増 富裕層(万元戸)の登場 ② 中国の工業 ・以前の工業 → 社会主義政策下での5カ年計画実施 重化学工業が中心 三大鉄鋼基地(アンシャン ウーハン パオトウ) ・改革開放政策 → 臨海部に経済特区や経済技術開発区等を設置。 (1980 年代以降) 海外からの資本や技術の導入 企業責任制による経営改善 郷鎮企業(農村部の小規模企業)の発展 ・急速な工業化と電力・資源不足 → 鉱工業生産の急増 例 家電製品 粗鋼 化学繊維 セメント他多数で世界1位 302 基礎からわかる地理 世界の工場、世界の市場として経済力向上 都市部と地方との経済格差が拡大 ・都市への人口流入(盲流) 都市問題発生 電力不足→サンシャダム建設 資源輸入へ 西部大開発計画:チベット等西方の開発 (西電東送 西気東輸 青蔵鉄道 南水北調) ・経済特区 →広東省のシェンチェン、チューハイ、スワトウ 福建省のアモイ ハイナン島(経済特別省) 経済技術開発区 → 1984年に14カ所。現在内陸部にも拡大。 ※主な工業地域 東北→アンシャン(フーシュン、フーシンの炭田) チャンチュンの自動車 華北→北京、テンチン、チンタオでの工業発達 (カイロワン炭田、ロンイエン鉄山、ターカン油田) シーアンの綿工業 内陸→パオトウの鉄鋼 ランチョウの石油化学 華中→上海が発達。他にもナンキン、ハンチョウで工業化 上海のプートン地域は金融センターとしても発達 ウーハンの鉄鋼、チョンツーも重工業 華南→経済特区の発達 香港:イギリス植民地から1997年返還 特別行政区として一国二制度(社会、資本主義併用) 中継貿易、金融センターとして発達 ③ 中国の人々 ・民族 → 9割以上が漢民族、他に55の少数民族が共存 5つの自治区を設置 (チョワン、ホイ、ウィグル、チベット、モンゴル) 303 第 43 講 地誌:東アジア モンゴルとチベットはラマ教、ホイとウィグルはイスラーム 言語は中国語(一般的に北京語に近い) 儒教・道教が精神的基盤 ・人口問題 → 現在13億人。 1979年以降一人っ子政策実施 → 人口抑制 無戸籍子の増加や性比の均衡が崩れ, 過保護や少子高齢化が問題 ※ 歴 史 → 1949 年共産党支配中央集権の中華人民共和国誕生 以降台湾を含め23省5自治区 4直轄市(北京、上海、テンチン、チョンチン) 現在は特別行政区として香港、マカオも 一時ソ連と対立し、自立重視の自力更生政策や 資本主義、伝統を廃止する文化大革命など混乱期も 1978年以降四つの近代化等、改革・解放政策へ ※ 食文化 → 北京料理:濃厚な揚げ物等,まんじゅう、餃子 上海料理:魚介類中心。 広東料理:食材豊富。チャーシューや飲茶で有名。 四川料理:辛み。麻婆豆腐など。 ④ 韓国(大韓民国) ・肥沃な平野が多い。地下資源は乏しく,かつては稲作中心の農業国。 ・セマウル運動→農村の近代化運動(生産力上昇) ・工業の発達 → 外資導入によって輸出指向型工業へ 軽工業中心に急速発達を遂げる 財閥や大企業が核となっての経済成長 NIES の一つ。現在では工業も重工業、ハイテク化。 304 基礎からわかる地理 ・ハングル(表音文字)と漢字を使用。儒教が精神的支えだが、キリスト教を信仰す る人も多い。 ・民族衣装(チマ、チョゴリ)、伝統的家屋(オンドル:床暖房設備)が有名 ※経済停滞 → 急成長後,賃金上昇で競争力低下、通貨危機以降は構造改革へ ※工業都市 → ソウルと隣のインチョンが最大工業地帯 第2の都市プサンの造船 ポハン,クワンヤンの製鉄 ウルサンの自動車、マサンの繊維 テグの繊維 クワンジュの繊維 ヨスの化学 ⑤ モンゴル ・高原の内陸国。羊や馬の遊牧が盛ん。 移動式住居(ゲル)→定住化が進んでいる ⑥ 台 湾 ・台湾 → 九州と同面積。新規造山帯。北回帰線が通過。先住民はポリネシア系の カオシャン族。カオシュンでの輸出加工区での工業発達。 安価労働力を背景に、組み立て部門を強化。 305 第 43 講 地誌:東アジア 【ワーク】 地図に、次の主要都市の位置を示そう。 1 ペキン 2 シャンハイ 5 ソウル 6 タイペイ 3 チョンチン 4 シーアン 306 基礎からわかる地理 次の問に答えよ。 (1)中国南西部の標高 5000m 近い高原を何というか。 (2)中国国内を流れる河川のうち、特に長さが長いものを3つ挙げよ。 (3)チンリン山脈とホワイ川を結んだ線は、降水量何㎜の等値線と等しいか。 (4)前問(3)より南の地域では、どんな農業が発達しているか。 (5)中国が飼育頭数世界一位ではない家畜は何か。 (6)1970 年代後半以降とられた、市場経済を導入し、様々な分野で新しい技術を取り入れ ようとした中国の政策を総称して何と呼ぶか。 (7)前問(6)の一環として、中国南東部沿岸に指定された海外の輸出系企業を優遇する地 域の名称を答えよ。 (8)前問(7)は何カ所、指定されたか (9)現在の韓国の工業の特徴を2つ挙げよ。 (10)韓国と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の気候区を答えよ。 307 第 43 講 地誌:東アジア 次の各文には誤りがある。誤りを訂正し、正しい文に書き換えよ。 (1)中国の国土は北に行くにつれて標高が高くなる。 (2)中国では主食になる穀物の生産が多いが、その他の作物の生産は乏しい。 (3)中国は大資源国で、国内需要を満たすだけ生産されている。 (4)中国では 1960 年代より、市場が開放され、急速な経済成長が続いている。 (5)韓国では 2000 年以降、安価な労働力を背景に繊維や組み立て工業が発達した。 次の問に答えよ。 (1)中国では近年、内陸部の開発が積極的に行われている。 その背景を 60 字以内で述べよ。 (2)韓国では、対日貿易が赤字となっている。その背景を 60 字以内で述べよ。 中国の工業化について述べた文として誤っているものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。 (2007 年センター本試) ① 1960 年代後半から、文化大革命の影響が全国各地に広がり、その間の社会の混乱に ともなって、工業生産は伸び悩んだ。 ② 1980 年代に入り、経済特区が沿岸部に指定され、外国企業の誘致による輸出指向型 工業への転換がはかられた。 ③ 1980 年代後半には、余剰労働力を非農業部門で活用する郷鎮企業が急増し、農村部 に普及していった。 ④ 2000 年代に入り、政府は沿岸部との格差是正を目的に、西部大開発を推進した結果、 内陸部では自国資本による先端技術産業の集積が進んでいる。 308