...

1. 県職員海外派遣研修 2. 景観形成の技法が 駆使された街・パリ 3. 中世

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

1. 県職員海外派遣研修 2. 景観形成の技法が 駆使された街・パリ 3. 中世
●ミュンヘン・モールを走る路面電車(トラム)
●ミュンヘン・モールの賑わいの様子
4. 自動車を排除したモールの
形成・ミュンヘン
●ローテンブルグの街並み
せる大きな観光資源になるなど、大成功
少ない。
を収める結果となった。今では、モール
このような中で、富山県では、五箇山
ミュンヘン・モールは、ミュンヘンの
の総延長は10倍以上の15kmになって
の合掌集落が依然生活の場となっている
れるの関係ができあがっている。また、
都心部で整備された全長15km、総面積
いるが、当初の1.2km以外は全て沿道の
こと、従来どおりの生活の中で高岡市金
パのまちづくりの変遷、街並みや景観の
シャンゼリゼ通りから眺めると、凱旋門
10haにも及ぶ歩行者専用のショッピン
店主らが市に対しモール化を要請し、自
屋町や井波町八日町通りが古い街並みに
保存等について見聞する機会をいただ
が高台にそびえていることがわかる。尊
●凱旋門を望むシャンゼリゼ通り
グ空間である。
ら費用負担した結果である。
再整備されていること、また、富岩運河
き、4カ国7都市を訪問した。そのうち特
厳なものを仰ぎ見るという仕掛けであ
街並み再生:第二次大戦により、街の象
自動車交通問題:きっかけは、1960年
に印象の残った3都市の紹介と、地図を
る。両側歩道に等間隔で植栽されている
徴である市庁舎のルネサンス様式部分を
前後に課題となった増加する都心部の自
片手に街を歩いて自分なりに感じたこと
プラタナスが、凱旋門を飾る装飾品とし
含め市域の40%が焼失した。戦後の再
動車交通問題であり、自動車を排除し歩
今回訪問したいずれの都市も、長い歴
を、この誌面を借りて報告する。
ての縁取り効果を発揮していた。
建にあたり、旧市街の再生を目指すか、
行者優先の活気あるまちづくりを目指す
史の中で民族間の侵略による破壊が繰り
新しい街を創造するかの激論の末、市民
べきといった対策案が、商店街の大反対
返され、景観や街並みにとって重要な要
パリの凱旋門はシャンゼリゼ通りを通
は戦災前の市街地に再生することを選択
を振り切って採用され、1972年のオリ
素である歴史的建築物・建造物が破壊さ
して仰ぎ見ることができるような高台に
することとなった。現在はそう言われな
ンピック開催を目指して整備されること
れてきた。しかし、その都度、それらは
建っていた。富山県には、どこから見て
1. 県職員海外派遣研修
県職員海外派遣研修
平成14年10月の約2週間、ヨーロッ
2. 景観形成の技法が
景観形成の技法が駆使された街・パリ
駆使された街・パリ
視点となっており、歩行者との見る見ら
3. 中世の街並みが残る
観光都市・ローテンブルグ
中島閘門が復元され本来の機能を取り戻
5. 景観や街並み形成のヒント
景観や街並み形成のヒント
したことなど、外観だけでなく元来その
ものが持つ機能とともに復興される取り
組みがなされてきている。
エッフェル塔:シャイヨー宮からエッフ
中世の宝珠:ローテンブルグは、
「中世
ければわからないほど中世の姿が忠実に
となったものである。
もとの姿のまま復興されている。そして、
も仰ぎ見ることのできる立山連峰という
ェル塔に向くと、シャン・ド・マルス公園、
の宝珠」と言われるほど赤い屋根と石畳
再現され、厳しい建築条例により、街並
3つの施策:計画成功の可否をにぎる歩
それら古いものが現在の街並みの中で見
宝がある。これを生かすも殺すも、立山
さらにその向こうに陸軍士官学校があ
が広がり、ドイツで最も中世の面影を残
みを保存するための並々ならぬ努力が払
行者交通量増加のため、市は、この計画
事に活きている。人々によって活かされ
連峰と見るものの間にある空間がこの景
り、これらがセットになって景観を形成
す街である。13世紀に帝国自由主義と
われている。
と並行して3つの都市交通施策を実施
ているといった方がいいかもしれない。
観にどのように関わってくるか、その空
している。さらにエッフェル塔の手前を
なり商業で繁栄したが、17世紀の三十
世界的観光都市:19世紀後半からは
した。
さらに、歴史的建造物を中心に、道路
間をどのように関わらせるかということ
流れるセーヌ川が、大きな建造物を映し
年戦争で痛手を受けて衰退し、歴史から
観 光 都 市 と し て 発 展 し 、今 で は 人 口
1)自動車交通の排除
や公園、街路樹、建物の連続性など、相
出すことによって見栄えがし、エッフェ
忘れ去られていた。しかし、そのおかげ
12,000人の街に年間観光客は250万
モール内には路面電車しか走らせない。
互の関連性が重視され、優れた景観が生
ル塔をますます引き立たせて、景観を豊
で中世の姿を完全に残していた街は、
人を数え、城内の人口4,000人に対し、
2)鉄道によるアクセスの確保
み出されていると感じた。
かなものにしている。立体的には、シャ
19世紀にロマン派の画家によって描か
一晩の宿泊客の最高は5,000人を数え
近郊鉄道と地下鉄の全路線をモールの地
イヨー宮の地盤面がエッフェル塔の地盤
れ、広く世界に知れるようになった。
ることもある。
下を経由させる。
建築物・建造物を見いだすことはできる
面より少し高いことが、エッフェル塔を
3)駐車制限
が、本来の機能を期待されているものは
眺めたときにその見込み角度をより大き
パーク・アンド・ライドの推進により中
く感じさせ、雄大さを際だたせている。
心部への交通手段を公共交通機関に切り
シャンゼリゼ通りと凱旋門:セーヌ川右
替える。
岸にあるシャンゼリゼ通りは、コンコル
大成功:とりかかりとして、1.2km区間
ド広場から凱旋門のあるシャルル・ド・
を全て市の負担で整備したところ、沿道
ゴール広場までの延長約1880メートル
の小売店の売り上げが2倍、3倍と伸
の幹線道路である。カフェテリアやレス
び、市民からも都心のくつろぎとショッ
トランなどが歩道上に張り出し、人々が
ピングを楽しめる空間となったことが喜
飲食を楽しんだり、街を眺めるのによい
48
●ローテンブルグの風景
●パリの夜景(エッフェル塔の展望台より)
ばれ、さらにこの空間が観光客を呼び寄
一方、日本では、100年以上にわたる
に尽きると思う。
今後、街並みや景観を考える中で、こ
のような見方の中に、なにか一つのヒン
トがあるような気がしている。
川上 孝裕(かわかみ たかひろ)
1967年氷見市生まれ。
都市計画課、高岡土木事務所、2度目の都市
計画課を経て、現在、富山土木センター主任。
職場の外では、中学時代からハンドボールを
続け、現在富山県選抜チームのスタッフとし
て活動中。
49
Fly UP