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(3) 《Biological Clocks》 グローサリー advanced sleep phase syndrome, ASPS: 睡眠相前進症候群 睡眠覚醒障害の一つで、朝は早すぎる時刻に目覚め、夕方や夜早すぎる時刻に眠くな る疾患。常染色体優性遺伝様式で家族性に発症する家系が報告されており、時計遺伝子 である Per2 遺伝子の 662 番目のセリンがグリシンにかわる変異で、このアミノ酸置換 により、PER タンパクがカゼインキナーゼ1イプシロンなどによるリン酸化を受けにく くなり、概日リズム周期が変化することが知られている。また、別の家系では、カゼイ ンキナーゼ1デルタの 22 番目のスレオニンがアラニンに変化する変異で、時計タンパ クのリン酸化が低下すると考えられる。 actogram: アクトグラム、活動記録図 行動リズム解析に用いる図で、横に48時間の運動量や(げっ歯類の場合)輪回しの 回転数をグラフ化し、縦に記録日ごとに並べたもの(ダブルプロット)を用いることが 多い。 circadian rhythm: 概日リズム circadian time, CT: サーカディアン時刻 内因性リズムの位相を特定するための時刻。フリーランニング周期を 24CT とし、主 観的明期の開始を CT0、主観的暗期の開始を CT12 とする。 chromatin: クロマチン、染色体 クロマチンは 4 種類のヒストン蛋白質(H2A, H2B, H3, H4)各 2 分子ずつから構成 されるヒストン八量体に 146bp の DNA が巻きついたヌクレソームコア(nucleosome core)を構造の基本単位とする。このヌクレソームが数珠状(beads on string)に繋が ったファイバーがさらに高度に凝集されることでクロマチンという構造体が形成される。 clock gene: 時計遺伝子 正常な circadian rhythm を形成維持するために必要となる遺伝子。すなわち、時計 の本体(振動体: oscillator)を構成する因子である。 clock-controlled gene: 被時計制御遺伝子 時計本体からの出力(output)としてリズミックに発現する遺伝子。それ自身は時計 本体の機能(リズムの形成維持)には関与しない。細胞に発現する遺伝子群の実に 5-10% が時計の支配を受けてリズミックに発現する ccg であることが知られており、これらが 様々な生理現象にリズム性(rhythmicity)を与えている。 Drosophila: ショウジョウバエ entrainment: 同調性 epigenetics: エピジェネティクス 塩基配列の変化ではなく、遺伝子の発現を活性化/不活性化する後生的修飾で、かつ 細胞分裂後も継承される仕組み。DNA のメチル化やヒストンの修飾などによる。 histone acetylation: ヒストンアセチル化 ヒストンのアミノ末端領域(N-terminal)に存在するリジン残基のε-アミノ基ヘアセ チル基を転移する反応のこと。ヒストンの化学修飾を介した epigenetic な制御のひとつ。 (3) 特に、ヒストン H3 のアミノ末端から 9 番目と 14 番目に存在するリジン残基がアセチル 化されると、それをきっかけにクロマチンの構造変換が起こり、DNA からの転写 (transcription)が可能な状態になると考えられている。 histone acetyltransferase (HAT): ヒストンアセチル基転移酵素 ヒストンのアセチル化(Histone acetylation)を触媒する酵素。アセチル基の供与体 はアセチル CoA である。 histone code: ヒストンコード ヒストンのアミノ末端領域(N-terminal)はアセチル化、リン酸化、メチル化などの 化学修飾を受ける。特定のアミノ酸残基に対するこれらの修飾の有無は、クロマチンの 凝縮や転写活性の状態によく対応して変化することから、クロマチンの構造・機能調節 のための epigenetic な目印として機能すると考えられており、ヒストンコードとよばれ る。 hypothalamus: 視床下部 まさに視床の下部にあたる脳部位で、ホルモン分泌、体温調節、睡眠・覚醒、食欲、 性欲等、恒常性維持に必要な領域。概日リズムの中枢視交叉上核(SCN)もここに存在 する。 locomotor activity rhythm: 活動リズム マウス、ハムスター、ラットなどのげっ歯類を用いた研究鵜で用いられる動物の行動 量のリズム。ケージの中での行動量を赤外線ビームで測定したり、回転かごの輪回し数 をカウントしたりして測定する。 mood disorder: 気分障害 oscillator: 振動体、発振体 phase response curve, PRC: 位相反応曲線 phase shift: 位相変化(シフト) promotor: プロモーター、遺伝子の発現調節領域 protein kinase: 蛋白質リン酸化酵素 蛋白質のリン酸化(protein phosphorylation)を触媒する酵素。リン酸基の供与体は ATP である。 protein phosphorylation: 蛋白質リン酸化 蛋白質のセリン、スレオニンまたはチロシン残基の側鎖に存在するヒドロキシル基ヘ リン酸基を転移する反応のこと。蛋白質が翻訳後に受ける修飾(post-translational modification: 翻訳後修飾)のひとつ。このリン酸化が起きる事で、その蛋白質の機能が 修飾前後で変化し、それをきっかけにシグナル伝達(signal transduction)が細胞内に 走り、生物学的変化がもたらされる。 seasonal affective disorder, SAD: subjective day (night): 季節性うつ病 主観的明期(暗期) subparaventricular zone, SPZ: 傍室傍核領域 視交叉上核(SCN)の背側にある視床下部領域で、SCN からの直接の出力部位と考 (3) えられる。 suprachiasmatic nucleus, SCN: 視交叉上核 まさに視交叉の直上にある視床下部内の神経核で、哺乳類体内時計の中枢である。 SCN を破壊すると生理現象の概日リズムが消失する。 temperature compensation: transcription: 温度補償性 転写 DNA から RNA へ合成が進むプロセスのことで、蛋白質合成への橋渡しに必要。 translation: 翻訳 RNA から蛋白質へ合成が進むプロセスのこと。転写、翻訳のプロセスを終える事で 遺伝子の発現が完了する。 Zeitgeber time, ZT: ツァイトゲーバー時刻 環境の周期性に規定される時刻をさす。明暗サイクルの1周期を 24ZT、明期開始時 刻を ZT0 とし、明期開始からの時刻をさす。