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4.証券 - 中国日本商会

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4.証券 - 中国日本商会
4.証券
2015年末時点の世界の株式時価総額のうち、日中は、
日本取引所が4兆8,949億ドルで世界第3位(前年と同ラン
ク)、上海証券取引所が4兆5,493億ドルで第4位(前年と同
ランク)、深圳証券取引所が3兆6,387億ドルで第5位(前年
第8位)であった。中国全体では8兆1,880億ドルとなった。
2015年の世界の株式売買代金のうち、日中は、上海証券
取引所が21兆3,428億ドルで世界第1位(前年第4位)、深
圳証券取引所が19兆6,112億ドルで第2位(前年第5位)、
日本取引所(東京)が5兆5,407億ドルで第6位(前年と同ラ
ンク)であった。中国全体では40兆9,541億ドルとなった。
この間、中国市場では、2015年6月12日に上海総合指数が
5,166.35ポイントと2008年1月以来7年5カ月ぶりに高値を
つけた後、下落に歯止めがかからなくなり、中国政府は政府
系ファンドによる株式購入や大株主等の保有株式売却制限
等の株価維持政策(PKO)を発動した。2016年3月から試
行される株式発行登録制度の導入とともに、PKOの今後の
出口戦略が注視されている。
中国の証券業界状況
対内証券投資と対外証券投資
第3部
各産業の現状・建議
外国人投資家による国内証券市場への投資を認めるQFII
(適格外国機関投資家、Qualified Foreign Institutional
Investorsの略称、2002年11月導入)制度の下、2016年2月
末時点で279社が計807億9,500万ドルの運用枠を認めら
れている(2015年2月末時点では265社、計697億2,300万
ドル)。うち、日本勢は19社、26億400万ドルとなっている。
また、オフショア人民元を中国本土で運用するためのRQFII
(人民元建て適格外国機関投資家、2011年12月導入)制
度の下、2016年2月末時点で158社が計4,714億2,500万
元の運用枠を認められている(2015年2月末時点では103
社、計3,115億元)。
一方、中国国内の 金 融 機 関による対外 証 券 投 資を認
めるQDII( 適格国内機関投資家、Qua lif ied Domest ic
Institutional Investorsの略称、2006年4月導入)制度の
下、2016年2月末時点で132社が合計899億9,300万ドルの
運用枠を認められている(2015年2月末時点では13社、計
875億9,300万ドル)。
合弁証券会社および合弁運用会社の新設・再編
2015年は証券業およびアセット・マネジメント業ともに、
合弁会社の設立は無かった。
具体的な問題点と改善状況
外資による中国証券業およびアセット・マネジメント
業への参入規制緩和
外資による証券業への参入は、2001年のWTO(世界貿
250
中国経済と日本企業2016年白書
易機関)加盟以前は、個別の認可によって認められたケース
もあったが、正式に認められたのはWTO加盟後である。外
資参入は主に合弁会社設立の方式で、WTO加盟時は33%
が外資出資上限であった。また、合弁会社には、国内系証券
会社の主要業務の一つである国内投資家向け上場株式(A
株)のブローカレッジ業務やトレーディング業務が認められ
ておらず、認可取得時期も明示されていなかった。2016年
1月末時点で登録証券会社は125社あり(中国証券監督管
理委員会(証監会))、WTO加盟と前後して合計15社の証
券会社が認可されているが(うち3社は既に合弁を解消)、
WTO加盟以前に認可された中国国際金融と中銀国際証券
には、例外的にA株のブローカレッジ業務やトレーディング
業務が認められている。2012年10月には、①合弁証券会社
の外資出資上限の49%への引き上げと、②経営期間が満2
年を経過すればライセンスの拡大を申請できる内容の細則
が公布された。
中国で証券投資信託の設定・運用を行う基金管理会社
は、2016年1月末時点で101社設立されており(証監会)、う
ち45社が外資系基金管理会社となっている(うち日本勢は
3社)。証券業と同様に、WTO加盟当初、外資33%出資の
合弁による基金管理会社の設立が認められ、その後出資可
能な比率が49%まで引き上げられた。
外資参入規制については、2014年1月の証監会による全
国証券期貨監管工作会議で、
「証券・先物業の外資参入規
制を段階的に開放し、外資金融機関の出資比率規制を撤廃
し、外資証券・先物経営機関による独立子会社や支店の設
立を容認し、合弁証券会社のライセンス制限を撤廃する」と
の方向性が確認された。続いて同年5月、国務院は「資本市
場の健全な発展をさらに促進するための国務院の若干の意
見」
(新9条意見)を公表し、
「外資が資本参加・支配する国
内の証券・先物経営機関の経営範囲を適時に拡大する」と
の方向性を確認した。しかしながら、2015年3月13日に国家
発展改革委員会および商務部が公表した「外商投資産業指
導目録(2015年改正)」では、証券会社・基金管理会社とも
に、現行規制が継続する内容となっており、外資参入規制の
段階的開放の方向性が確認できない。加えて、中国本土-香
港間のCEPA(経済貿易緊密化協定)補充協議十では、香港
資本の証券会社による合弁証券会社の設立について、進出
地域を限定されている。それにもかかわらず、フルライセン
ス、外資出資比率51%以上、証券会社以外の中国側合弁相
手の容認といった優遇条件が設定されており(マカオ資本の
証券会社も同様)、内外無差別の扱いがされてない。
また、2013年10月から始まった「中国(上海)自由貿易試
験区」
(上海FTZ)では、ネガティブリストを採用したサービ
ス業の対外開放の実験を行っている。2015年3月からは、
天津市、福建省、広東省にもFTZが拡大された。FTZでは証
券分野も実験対象となってはいるが、証券業およびアセッ
ト・マネジメント業への外資参入は、2015年版ネガティブリ
ストでも既存の中央レベルの参入規制が課され、実効性の
ある実験ができるかどうか課題である。
他に証券業では、証券投資顧問会社について、CEPA補充
協議六の下で香港証券会社のみを対象に、①中国本土証券
会社との合弁形式(中国本土証券会社の子会社扱い)、②
外資出資上限は33%、③ライセンスは投資顧問業務、④設
立地は広東省、との条件での外資進出が容認されている。
一方、中国証券業協会は2015年1月19日、上記の新9条意
見を受け、証券投資顧問会社のライセンスの範囲に、①全
国中小企業株式譲渡システム(いわゆる新三板)での登録
スポンサーおよびマーケットメイク業務、②私募業務、を追
加した。香港以外の外資の参入が制限された中での証券投
資顧問会社のライセンス拡大は、サービス業の対外開放に
おける内外無差別の観点から課題である。
2015年10月の第18期5中全会で可決された第13次5カ年
規画の建議および2016年3月の全人代で可決された同規画
の要綱には、
「銀行・保険・証券・年金等での外資の市場参
入を拡大する」との方針が盛り込まれている。以上に対し、
日本では法制上、外国金融機関の進出を内外無差別で取り
扱っている。
「戦略的互恵関係」の証券分野における進展の
ために、また中国の証券業およびアセット・マネジメント業の
業界の発展への貢献や中国企業の資金調達への貢献の観
点から、各種規制緩和と規制緩和日程の公表を期待する。
国内外投資規制の緩和
第3部
各産業の現状・建議
252
QFIIの運用枠は、2013年7月、既存の500億ドルから
1,500億ドルへと大きく引き上げられた。2016年2月4日に
は、QFIIの投資上限枠を資産規模の一定割合に設定するよ
う変更し、ロックアップ期間の短縮化(1年から3カ月)を図
る等の規制緩和が行われた。また、同年2月24日には、銀行
間債券市場への海外機関投資家の投資が解禁され、QFII・
RQFIIによる同市場での債券投資の際の上限枠も課されな
いこととされた。但し、QFIIにせよQDIIにせよ、依然としてラ
イセンスと運用枠の制限がある。また、非公開市場でのPE
(プライベート・エクイティ)投資や不動産投資に関する法
令も整備されてきてはいるが、外国人投資家による申請手
続や認可基準等が必ずしも明確になっていない。
国内投資規制の緩和による外国人投資家を含む機関投
資家の参画は、
(1)市場の流動性提供、
(2)新たな投資手
法や評価手法の導入、
(3)企業のガバナンスの改善、等の
効果が期待され、市場の質的向上に繋がるものである。し
かしながら、中国の株式市場では、外国人投資家の株式保
有比率は0.91%に過ぎない(2015年11月末)。一方、日本は
個人投資家が17.3%、外国人投資家が31.7%となっている
(2015年3月末)。国外投資規制の緩和は、中国投資家に
分散投資の機会を提供し、国内市場の過熱を押さえる効果
がある。こうした中で、2014年11月から上海・香港相互株式
投資制度が始まり、個人投資家も上海・香港の現物株を双
方向で売買できるようになった。今後、国内では上海以外、
海外では香港以外を対象とした同制度の整備も期待した
い。2015年12月からは、中国本土・香港ファンド相互販売
制度の下で、事前に登録された公募投信の中国本土-香港
間での双方向での売買が始まった。なお、いずれの制度開
始の直前にも、個人投資家に対するキャピタルゲインの免
税措置が明確にされたが、既存のQFIIやRQFIIが上海・香
港相互株式投資制度の開始前に取得したキャピタルゲイン
に対しては中国当局から遡及課税の方針が出されたため、
中国経済と日本企業2016年白書
外国人投資家からは対中証券投資の制度リスクとして認識
される結果となっている。
中国国内での外資企業のファイナンス緩和
外資企業が中国国内で資本市場を使って資金調達を行
おうとする場合、制限的に運用されているか、そもそも関連
制度が無い場合がある。先ず株式市場では、合弁企業の国
内上場に関する法令は整備され、日本企業(事業法人)の
上場実績もあるが、非居住者については上海証券取引所の
国際板の開設を待たなければならない。次に外資企業の中
国国内での債券発行のうち、非居住者のパンダ債について
は、2015年11月のIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出
権)構成通貨への人民元の採用の前後に、銀行間債券市場
で外国政府や外国金融機関・事業会社の発行が相次いだ
ものの、関連法令は公表されておらず、あくまで個別認可に
留まっている。また、居住者については、自主規制機関(中
国銀行間市場取引者協会、英文略称NAFMII)の会員資格
を得ることを条件に容認されている(これまでに日系商社
のCP発行、日系自動車金融会社の金融債や資産証券化商
品の発行実績あり)。
中国国内での株式発行にせよ債券発行にせよ、世界有数
規模となった中国の発行市場を外資企業は活かしきれてい
ない。中国国内での外資企業のファイナンス緩和は、発行
体の多様化を通じた中国資本市場の発展を促し、投資環境
の改善にも繋がるものである。
中国企業の海外での株式上場規則改正・緩和
中国企業のグローバル化に伴って、柔軟な財務戦略を
確保できることが益々重要になっている。以前は、中国企
業が海外で上場する場合、海外でタックスヘイブンのSPV
(Special Purpose Vehicle)を設立し、当該SPVが上場する
スキームを組むことが出来た。
一方、2006年に制定・施行された「外国投資家による国
内企業の合併・買収に関する規定」
(いわゆる10号令)によ
り、SPVの設立や海外上場に関し審査・認可が厳格に行わ
れるようになった。また、資本取引の面からは、国家外為管
理局が2005年10月の75号令により、SPVが海外上場によっ
て調達した資金を国内に持ち込む方法が制約を受けること
となった。この結果、新規にSPVを設立して中国企業が海外
で株式上場を行うことは事実上困難となった。2012年12月
には、中国企業の海外上場の条件を緩和しているが(純資
本4億元以上、過去一年の税引き後利益6,000万元以上、
資金調達額5,000万ドル以上をそれぞれ廃止)、業種によっ
ては証監会以外の部門の認可が残っている。その後2014年
12月、証監会から中国企業の海外上場時の財務審査の取
消し等の緩和策が、また国家外為管理局から海外上場時の
調達資金の両替審査の取り消し等の規制緩和がそれぞれ
行われた。今後も中国企業の海外での全面的な株式上場規
制改正・緩和を期待する。
外国指数ETF市場の早期開設
外国指数ETF(Exchange Trade Funds、上場投資信託)
の中国国内上場は、中国投資家に分散投資の機会を提供
し、国内市場の過熱を押さえる効果がある。また、中国投
資家に対外投資を解禁するにあたり、個別銘柄であると発
行体情報、証券情報の提供の問題が生じるが、株価指数の
ETF経由の投資であれば、情報アクセスの問題が生じず、リ
スク分散効果もある。加えて、ETFは原指数との連動性が高
いことが信頼性のキーとなるが、中国と同一時間帯で取引
が行われており、指数との連動性が実感しやすい日本株は
ETFを使った投資の入り口として適している。
以上の背景に加え、外国指数ETFの中国国内上場は、中
国証券取引所の国際化や中国投資家の対外投資を定着さ
せていくことにも繋がるものである。既に上場している香港
株、米国株、ドイツ株のETFに続き、今後は日本株ETFの早
期認可を念頭に、外国指数ETFの上場申請手続の簡素化を
期待する。
クロスボーダー人民元取引規制の緩和
第3部
各産業の現状・建議
254
<建議>
①外資による中国証券業、アセット・マネジメント業
への参入規制の緩和について、以下を要望する。
・参入規制の緩和と業務範囲の拡大
・投資銀行業務と関連するホールセール業務(機
関投資家向けブローカレッジ業務、リサーチ業
務、投資顧問業務等)の拡大やクロスボーダー
M&A業務の展開支援
・外資の出資比率の規制緩和、中国側合弁相手の
業種の完全自由化、もしくは既存形態の中での
親子証券会社間の競合禁止ルールの撤廃
・証券投資顧問会社への外資参入規制の緩和と
業務範囲(新三板業務、私募業務等)の拡大
人民元建て対内証券投資制度としてのRQFIIの運用枠が
配分されている国・地域は、2014年末の10から2015年末に
は17にまで拡大した。うち、韓国に対しては2015年10月に
400億元が追加配分され計1,200億元に、シンガポールに
対しては同年11月に500億元が追加配分され計1,000億元
に運用枠がそれぞれ拡大された。
・上海等自由貿易試験区のネガティブリストから証
券業、アセット・マネジメント業を削除
また、人民元建て対内直接投資は2011年の907億元か
ら2015年には1兆5,871億元に拡大した。2011年10月に公
布・施行されたルールでは、出資金額が3億元以上の場合
は中央の商務部が審査することとなっていたが、2013年12
月の新たなルールでは当該審査が撤廃された。それでも外
・申請手続・報告方法の簡略化
国企業は、ルールの運用に関する安定的運用や予見可能性
の向上に引き続き関心を有している。
対内証券投資にせよ、対内直接投資にせよ、オフショア人
民元の中国本土への還流ルートの整備・拡充は人民元の
国際化にも資するものである。このため、東京市場も含めた
RQFIIの運用枠の一層の拡大や外国金融機関へのライセン
ス付与、人民元建て対内直接投資に関する認可規制の緩和
やルールの安定的運用を期待する。
中国国有企業の新規公開や株式売出しに関する日本
の金融機関の主幹事獲得への協力
これまで中国国有企業の大型の新規公開案件では、欧
米の金融機関を中心とした主幹事選定が行われている。一
方、中国の隣国である日本には、約1,700兆円に上る個人金
融資産があり、中国国有企業は日本から多額の資金を有利
な条件で調達することが可能である。同時に、日本は中国
国有企業の経営に理解を示す株主となり、長期的視野での
安心できる企業経営の基礎を提供することができる。こうし
た日中の事情に通じた日本の金融機関は、円建てであれ人
民元建てであれ、中国国有企業の資金調達において重要な
役割を果たすことができる。2016年2月末には、中国工商
銀行が東京プロボンド市場で40億ドルを限度額とするプロ
グラム上場の承認を受けており、今後も中国の発行体によ
る東京市場の活用を期待したい。
中国経済と日本企業2016年白書
・緩和日程の公表
②国内外投資規制の緩和について、以下を要望する。
・QFII・PE・不動産投資の規制の緩和
・投資に関する税制の明確化
・QDII等の対外投資の規制緩和
・上海・香港および深圳・香港相互株式投資制度(滬
港通、深港通)の他地域(香港以外)への拡大
③中国国内での(独資を含む)外資企業のファイ
ナンス緩和について、以下を要望する。
・中国国内市場への株式上場、具体的には新三板
への株式上場や、上海証券取引所・国際板の開
設とその日程の公表
・中国国内での債券発行
④中国企業の海外での全面的な株式上場規制の
改正・緩和を要望する。
⑤日本株を対象としたETFの早期認可を要望する。
・外国指数ETFの上場申請手続の簡素化
⑥クロスボーダー人民元取引規制の緩和につい
て、以下を要望する。
・RQFIIの規制の緩和
・オフショアからの人民元建て直接投資の規制の
緩和
⑦中国国有企業・金融機関の新規公開や株式売出
を通じた資金調達支援のため、日本の金融機関も
貢献すべく、主幹事獲得への協力を要望する。
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