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K12. 気体の自由膨張

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K12. 気体の自由膨張
埼玉工業大学
テーマ K12:
機械工学学習支援セミナー(小西克享)
気体の自由膨張-1/2
気体の自由膨張
図のように,真空中(p=0)で気体が熱の供給も系の外部にする仕事もなしに膨張するこ
とを自由膨張といいます.理想気体と実在気体で温度の変化が異なります.
真空 p=0
圧力 p1
圧力 p2 < p1
状態 1
状態 2
1.理想気体
理想気体の自由膨張では,膨張後の温度は変化しません.一般的な気体の膨張では,気
体の温度が低下することを考えると,不思議に感じるかもしれません.この理由を考える
ため,まず,ある圧力下で気体が膨張するとなぜ,気体の温度が低下するのかその理由に
ついて考えてみましょう.
ある圧力下での理想気体の膨張
一般にある圧力下で理想気体が膨張する場合,膨張仕事分のエネルギーを必要とします.
このエネルギーが系の外から供給されない場合,気体は自分が持つ内部エネルギーを排除
仕事のエネルギーとして利用するため,熱力学第 1 法則から,気体は膨張の過程で温度が
低下します.このことを式で表すと,次のようになります.
熱力学第 1 法則の第 1 基礎式は
dq  du  pdv  cv dT  pdv
1 から 2 に状態変化するとき, w12 を絶対仕事として
q   dq   cv dT   pdv  cv T2  T1   w12
2
1
2
1
2
1
となります.熱を与えないとすると, q  0 なので
0  cv T2  T1   w12
よって
T2  T1 
w12
 T1
cv
埼玉工業大学
機械工学学習支援セミナー(小西克享)
気体の自由膨張-2/2
となり,T2 は T1 より小さくなることがわかります.では,気体に仕事をさせなければ w12 は
0 になり, T2  T1 となるのでしょうか?
残念ながらそうはなりません.ある圧力下で気体が膨張する場合,たとえ外部仕事とし
てエネルギーを取り出さない場合でも,少なくとも周囲の気体を押しのけて膨張する排除
仕事のためのエネルギーが必要となるため, w12 は絶対に 0 にはならないのです.
理想気体の自由膨張
理想気体が自由膨張する場合,押しのけるべき圧力を持った気体が周囲に存在しないた
め,そもそも排除仕事が発生しません.しかし,膨張する以上は膨張仕事が発生してもよ
さそうなものですが,系の外に外部仕事としてエネルギーを取り出さなければ,エネルギ
ー保存の法則から,系のエネルギーを消費することはありません.
(理想気体の膨張自体は
エネルギーを必要としません)そこで,排除仕事も外部仕事も 0 である以上 w12  0 となり,
熱力学第 1 法則から
0  cv T2  T1 
すなわち
T2  T1
となって,温度が変化しないことがわかります.
2.実在気体
実在気体の自由膨張では,膨張後に気体の温度が低下します.これをジュール効果とい
います.なぜ温度が低下するかというと,実在気体の場合に分子間力が作用し,気体の膨
張時にこの分子間力に逆らって分子と分子の距離を広げるという仕事をしなければならな
いからです.この場合, w12  0 となり,ある圧力下で理想気体が膨張する場合と同じ結果
になります.当然,実在気体がある圧力下で膨張する場合も,気体の温度は低下します.
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/FreeExpansion.pdf
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