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第25回甲信越支部大会の講演論文集

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第25回甲信越支部大会の講演論文集
第 25 回 日本生体医工学会 甲信越支部大会
講演論文集(電子論文集)
大
会
長
支部事務局
支 部 長
会
期
会
場
主
催
佐 藤
弥(山梨大学医学部付属病院病院経営管理部)
山梨大学大学院医学工学総合研究部整形外科学講座
浜 田 良 機
2005(平成 17)年 9 月 17 日(土曜日)
山梨大学医学部臨床講堂 小講堂
日本生体医工学会 甲信越支部
1
目次
1.癌温熱治療用立体空洞共振器の基礎研究 励振アンテナの設置箇所の検討
○佐藤剛史*,斉藤義明**,堀 潤一**
*新潟大学大学院自然科学研究科,**新潟大学工学部福祉人間工学科
2.加重加算法によるオフセット電圧の抑制
平栗隆啓*,渡邉賢太*,安藤汐視*,長野優子*,
NOORAINI*,竹本裕一*,大木 真*,橋口住久*
*山梨大学工学部電気電子システム工学科
3.反転・非反転対によるオフセット電圧の電源電圧依存性の抑制
NOORAINI*,渡邉賢太*,安藤汐視*,長野優子*,
平栗隆啓*,竹本裕一*,大木 真*,橋口住久*
*山梨大学工学部電気電子システム工学科
4.加重加算オフセットキャンセル法における重み係数の最適化
長野優子*,渡邉賢太*,安藤汐視*,NOORAINI*,
平栗隆啓*,竹本裕一*,大木 真*,橋口住久*
*山梨大学工学部電気電子システム工学科
5.2 周波発振回路による変位測定
中島竜太*,大木 真*,橋口住久*
*山梨大学大学院工学総合教育部電気電子システム工学専攻
6.アメーバの自動追跡
―同一物体の識別のためのパラメータの検討―
桑島天兵*,大木 真*,橋口住久*
*山梨大学大学院工学総合教育部電気電子システム工学専攻
7.無意識生体信号検出装置における呼吸及び心拍動波形の抽出
水口しのぶ*,斉藤義明**,堀 潤一**
*新潟大学大学院自然科学研究科,**新潟大学工学部福祉人間工学科
8.多量発汗量を計測可能とする光学発汗計の開発
坂口正雄*,大橋俊夫**
*長野工業高等専門学校電子制御,**信州大学医学部
9.運動量指示装置の開発とその応用
百瀬英哉*,坂口正雄*,大橋俊夫**
*長野工業高等専門学校電子制御,**信州大学医学部
10.頭部実形状を考慮した脳皮質電位イメージング運動関連電位へ応用
三輪俊成*,堀 潤一**,斉藤義明**, Bin He***
*新潟大学大学院自然科学研究科,**新潟大学工学部福祉人間工学科,
***ミネソタ大学
2
11.EOG を用いた文字入力インタフェースの開発
坂野幸治*,堀 潤一**,斉藤義明**
*新潟大学大学院自然科学研究科,**新潟大学工学部福祉人間工学科
12.マンモグラフィ検診支援を目的とした乳房解剖学的構造の自動分類システム
古木亜梨紗*,竹田 愛*,歸山智治*,福本一朗*
*長岡技術科学大学工学部
13.パルス光刺激による VEP メニューボードの高速化
勝山恵介*,宮田愛恵*,米澤義道*,伊東一典*,橋本昌巳*
*信州大学工学部情報工学科
14.螺旋描写を用いた振戦疾患評価に関する基礎研究
平川晋也*,松本義伸*,吉井孝博*,山田暢一*,田村正人**,福本一朗*
*長岡技術科学大学医用生体工学研究室,**長岡西病院神経内科
15.多列断層高分解能CTを用いた肺の微小病変分類手法の基礎研究
横地 洋*,古泉直也*,帰山智治*,竹田 愛*,福本一朗*
*長岡技術科学大学工学部
16.純音を用いた上肢振戦制御訓練システムの基礎研究
山田暢一*,松本義伸*,吉井孝博*,平川晋也*,福本一朗*
*長岡技術科学大学工学部
17.頚肩腕障害の客観的診断に向けた基礎研究
多田 弦*,松永哲雄**,Kum ken Chee**,相馬洋平**,
曽我 仁**,小形雄大*,内山尚志*,福本一朗*
*長岡技術科学大学工学部,**長岡技術科学大学大学院工学研究科
18.間接飛翔筋型昆虫の翅関節構造の解析およびモデル作成とその評価
三宅 仁*,白幡 淳**,砂田博幸**
*長岡技術科学大学体育保健センター,**長岡技術科学大学工学部
19.大災害時診療支援システムの基礎研究
川畑諒一*,織田 豊**,内山尚志*,福本一朗*
*長岡技術科学大学工学部,**長岡技術科学大学大学院工学研究科
20.心拍リズムの日内変動に関する研究
荒井善昭*,牛山喜久**
*長野工業高等専門学校電子情報工学科,**信州大学医学部保健学科
3
21.呼気中水分の光ファイバーセンシングによる無呼吸症候診断と
声帯機能失陥者用光ファイバー無音声マイクロホンの開発
武藤真三*,アルシャビブヌーリ*,中西拓也*,本間 聡*,森澤正之*
山梨大学工学部電気電子システム工学科
22.振幅圧伸法による電子聴診器の最適化
石川稜威男*,鈴木隆之*,大嶺賢一*,鈴木 裕*,服部 遊*
*山梨大学工学部電気電子システム工学科
23.振幅圧伸法を適用した補聴器調整補助装置の要素開発
石川稜威男*,大嶺賢一*,加藤隆之*,鈴木隆之*,鈴木 裕*,服部 遊*
*山梨大学工学部電気電子システム工学科
24.振幅圧伸法を適用した生体音による自動検査装置の要素開発
石川稜威男*,鈴木 裕*,大嶺賢一*,鈴木隆之*,服部 遊*
*山梨大学工学部電気電子システム工学科
25.日常生活動作に要する上肢の可動域測定
中村祐敬*,杉山 肇*,浜田良機*,大竹義人**,服部麻木**,鈴木直樹**
*山梨大学整形外科学教室,**東京慈恵会医科大学高次元医用画像工学研究所
4
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
癌温熱治療用立体空洞共振器の基礎研究
~励振アンテナの設置箇所の検討~
佐藤 剛史*,斉藤 義明**,丹下 裕*,堀 潤一**
*新潟大学大学院自然科学研究科,**新潟大学工学部福祉人間工学科
A fundamental study of a rectangular resonant cavity applicator for hyperthermic treatment
~Effect of positions of an exciting antenna~
Tsuyoshi Satoh* , Yoshiaki Saitoh ** , Yutaka Tange* , Junichi Hori**
*Graduate School of Science and Technology, Niigata University, **Faculty of Engineering, Niigta University
3. 立体共振器
1. はじめに
癌温熱治療法とは,癌細胞(42.5℃以上で死滅)
と正常細胞(44℃まで生存)の熱感受性の相違に着
目し,電磁波等のエネルギーで癌患部を高温にして
治療を行うものである.現在,非侵襲的な臨床用加
温装置として,RF 誘電加温装置やマイクロ波加温
装置などがある.これらの装置は,体表面近傍の癌
にのみ有効であり,深部加温用装置の開発が望まれ
る.
そこで,本研究室では深部癌温熱治療用立体空洞
3.1 立体共振器の構造
図 2 に立体共振器の構造を示す.立体共振器のサ
イズは,縦 1.3m×横 1.5m×高さ 1.45m で,厚さ
0.5mm の銅板により構成される.立体共振器内には,
ファントムを載せるために木製の机(縦 1.2m×横
0.40m×高さ 0.59m)を設置する.L 型アンテナは深
部加温の検討のため設置箇所を変更し,立体共振器
内に設置する.
1.5
共振器の開発を行った.人体筋肉の電気特性を模し
1.3
L型アンテナ
たファントムに対し加温実験を行い,立体共振器内
の L 型アンテナの設置箇所を変更することによる
1.45
深部加温の検討を行った.
ファントム
(φ0.30×1.10)
(φ
×
)
1.20
机(材質:木)
2. 加温システムの構成
z
0.59
図 1 に加温システムの構成を示す.加温システム
は,信号発生器,高周波電力増幅器 2 台,通過型電
y
0.40
x
単位:m
図 2.立体共振器の構造
力計 2 台,インピーダンス整合器 2 台,
立体共振器,
L 型アンテナ 1 本(立体共振器内)から構成される.
3.2 加温原理
高周波電力増幅器
インピーダンス整合器
立体共振器内の L 型アンテナに電力を供給し,電
信号発生器
磁界分布を生成する.それによって生じる高周波電
流がファントム内を透過する際に発生するジュー
ル熱により加温される.
4. ファントム(擬似生体)
高周波電力増幅器
図 3 にファントムの電気特性を示す.ファントム
通過型電力計
インピーダンス整合器
立体共振器
は,20℃で人体筋肉の電気特性値(比誘電率ε r=71,
導電率σ =0.7S/m)と等価になるように製作した(1).
図 1.加温システムの構成
ファントムの大きさは,φ 30cm×110cm とした.
80
1.1
σ
75
70
1
0.9
εr
65
50MHz
60MHz
70MHz
60
55
50
0.8
0.7
0.6
15
20
25
30
Temperature ( o C )
35
Electrical Conductivity σ (S/m)
Relative Permittivity εr
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
図 3.ファントムの電気特性
24
24.5
24
23.5℃
23.3
24.5
図6.ファントム長さ方向の中心側面から x 方向前
方に 45cm 平行移動して L 型アンテナを設置(励振
周波数 fr = 62.27~62.23MHz,ファントム初期温度
T0 = 21.4℃)
5.加温方法
加温実験前に,空調機を 12 時間以上使用し,室
内とファントムの温度が約 20℃になるようにした.
7.考察
L 型アンテナの設置箇所をファントム長さ方向
400W の電力で 30 分間加温後,ファントムの Z-Y
の中心側面から x 方向前方に 22.5cm,45cm と平行
断面を切断し,サーモグラフィでその断面の加温分
移動するにつれて,ファントム切断面深部の温度上
布を計測する.
昇が見られた.具体的には,L 型アンテナをファン
6.実験結果
トム長さ方向の中心側面に設置した場合,温度上昇
深部加温の可能性を検討するために,立体共振器
は 0.2℃,x 方向前方に 22.5cm 平行移動して設置し
内の L 型アンテナの設置箇所を変更した.ファント
た場合では 1.4℃,x 方向前方に 45cm 平行移動して
ム長さ方向の中心側面に L 型アンテナを設置した
設置した場合では 1.9℃であった.L 型アンテナを
実験結果を図 4 に,ファントム長さ方向の中心側面
ファントム長さ方向の中心側面に設置した場合,立
から x 方向前方に 22.5cm 平行移動して設置した実
体共振器内の電磁界分布を乱していたと考えられ
験結果を図5に,ファントム長さ方向の中心側面か
る.L 型アンテナの設置箇所をファントム長さ方向
ら x 方向前方に 45cm 平行移動して設置した実験結
の中心側面から平行移動することにより,立体共振
果を図6に示す.
器内に深部加温に適したモードが立ち,ファントム
切断面深部まで加温されたと考えられる.
8.まとめ
22.5
23
21℃
20.7
22
本研究では,人体筋肉の電気特性を模したファン
トムを被加温体とし,L 型アンテナの平行移動によ
21.5
る深部加温の検討を行った.その結果,L 型アンテ
図4.ファントム長さ方向の中心側面に L 型アンテ
ナをファントム長さ方向の中心側面より移動する
ナを設置(励振周波数 fr = 61.62MHz,ファントム初
ことにより,深部加温がより有効に行われた.以上
期温度 T0 = 20.5℃)
の結果より,深部加温用装置として有効であると考
えられる.今後の課題は,人体の形状を模したファ
23
ントムや人体各器官を模したファントムの製作と
22.5
22℃
23.5
実験が必要である.
9.参考文献
図5.ファントム長さ方向の中心側面から x 方向前
(1) Federal Communications Commission web site.
方に 22.5cm 平行移動して L 型アンテナを設置(励
http://www.fcc.gov/fcc-bin/dielec.sh.
振周波数 fr = 61.15MHz,ファントム初期温度 T0 =
20.6℃)
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
頭部実形状を考慮した脳皮質電位イメージング
―運動関連電位への応用―
三輪
俊成*,堀
潤一**† ,斉藤
義明**,Bin He***
*新潟大学大学院自然科学研究科,**新潟大学工学部福祉人間工学科
***ミネソタ大学,† 新潟大学超域研究機構
Cortical Potential Imaging of Movement Related Potential
Based on Realistic Head Model
Toshinari Miwa*, Junichi Hori**† , Yoshiaki Saitoh**, Bin He***
*Graduate School of Science and Technology, Niigata University **Department of Biocybernetics, Niigata University
***Department of Biomedical Engineering, University of Minnesota
†
1.
Center for Transdisciplinary Research, Niigata University
実頭部形状上の電極位置座標は実測し,半径1の
はじめに
球状へ投影する.次に実測された頭皮電位からこの
脳波は,MRI や PET に比べて設置環境の制限が
ダイポール強度分布を推定するためには,伝達関数
少なく無侵襲で容易に計測できるため,自然に近い
の逆関数を求める(逆問題).空間逆フィルタとして
環境で脳機能を解明するのに有効な方法である.し
パラメトリックウィーナフィルタを用いる[5].この
かし,電極数が限られる上,頭蓋骨の低電導特性の
フィルタは,信号と雑音の統計的情報を導入するこ
影響により,脳波の空間分解能は悪い.この問題を
とにより,復元精度と雑音抑制の程度を調節するこ
解決する方法として,頭皮電位から脳内の仮想表面
とができる.更にダイポール強度分布から,順問題
上における等価ダイポール信号強度分布を推定し,
を解くことにより,球状脳皮質電位を求める.
信号源を特定する脳内ダイポールイメージングが
球状の脳皮質電位分布を脳の実形状座標へマッ
提案されている[1],[2].この方法によれば,脳内に
ピングする.脳の中心点を国際 10-20 法の基準電極
発生する信号源は,その数に制限されずに,複数の
より求め,観測点までの距離をそれぞれ補正するこ
ダイポールによって等価的に表現できる.更に,脳
とによって,球状から実形状へ投影する.
表面の活動部位 をマッピングする脳皮質電位 イメ
ージング(cortical-potential imaging)が注目されてい
3.
る[3],[4].この脳皮質電位イメージングでは,解剖
実
験
頭部モデルを用いてシミュレーション 実験を行
学的活性部位を詳細に確認するために,脳の実形状
上にマッピング することが望ましい .本研究では,
った.信号源を脳内に配置して,推定されたダイポ
ダイポール 層強度分布から脳皮質電位分布を求め,
ール層強度分布並びに脳皮質電位分布は,頭皮電位
脳の実形状上に投影し,可視化する方法について検
の分布と比較して局所化されており,また真値に近
討する.また,運動関連電位へ応用し有効性を確認
似した結果が得られた.
次に,運動関連電位として指タッピング運動によ
する.
って誘発される脳波から頭皮電位分布を求め,ダイ
2.
方
ポールイメージングにおける信号強度分布を推定
法
し,脳実形状皮質マッピングを行った.片方ずつタ
脳実形状マッピングの流れを Fig.1 に示す.
ッピング運動を 0.5s 間隔で行い,それを左右各 30s,
まず頭部を頭蓋骨,頭皮,脳を考慮した不均質 3
12 セット行った.電極数は 92ch,サンプリング周
層同心球によりモデル化する.この頭部モデルの脳
波数は 250Hz とした.誘発された脳波に対し,筋電
内に仮想的にダイポール層を設置し,このダイポー
ル層から頭皮表面までの伝達関数を求める(順問題 ).
1
をトリガーとして加算平均処理を施した.
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
結果
4.
人間は指タッピング運動を行うことで,運動と反
realistic head model
spherical model
対側にある運動野(Motor Field)で電位の活性が起
こる[6].MF 発生時間である運動開始後 50ms 付近
convert
で脳実形状皮質イメージングを行った.Fig.2 に頭
brain
皮電位分布,及び実形状脳皮質電位分布の推定結果
を示す.左右各々の運動において,反対側の運動野
inverse
に正の電位が局在して現れた.
まとめ
5.
scalp
potential
brain
実形状脳皮質電位イメージングを提案した.指タ
dipolelayer
imaging
ッピング運動関連脳電位 の実形状脳皮質イメージ
forward
ングを行った.結果,脳電位が運動野を局所化して
現れ,生理学的知見と一致する結果が得られた.
convert
謝辞
brain
cortical
potential
本研究 の一部は,科学研究費補助金基盤研究 (B)
Fig. 1 Cortical potential imaging in realistic head model.
および新潟大学 プロジェクト推進経費の助成のも
とで実施した.脳実形状座標データを提供して頂い
た千葉工業大学の岡本良夫教授に感謝する.
R
L
参考文献
[1]J. Hori and B. He : Equivalent dipole source imaging
of brain electric activity by means of parametric
projection filter, Annals Biomed. Eng., vol.29, 436/445
(2001)
[2]J. Hori, M. Aiba, and B. He: Spatio-temporal cortical
souce imaging of brain electrical activity by means of
time-varying parametric projection filter, IEEE Trans.
Biomed. Eng., vol.51, no.5, 768/777 (2004)
[3]J. Hori and B. He: Cortical potential imaging of brain
electrical activity by means of parametric projection
filter, Methods Inf. Med., vol.43, 66/69 (2004)
[4]J. Hori and B. He: EEG cortical potential imaging of
brain electrical activity by means of parametric
projection filters, IEICE Trans. Inf. & Syst., vol.E86-D,
1909/1920 (2003)
[5]J. Hori, J. Lian, and B. He: Comparison between
parametric Weiner filter and parametric projection filter
in cortical equivalent dipole later imaging, EMBS &
BMES, 929-930, Houston (2002)
[6]Y. Ni, L. Ding, J. Cheng, K. Christin, J. Lian, X.
Zhang, N. Grusazuskas, J. Sweeney, B. He: EEG source
analysis of motor potentials induced by fast repetitive
unilateral finger movement, 1st Int. Conf. Neural Eng.,
Capri (2003)
RIGHT
(a)
LEFT
(b)
RIGHT
(c)
LEFT
(d)
Fig. 2 Scalp potential maps (top) and cortical potential
maps (bottom) in realistic head model in the period of
MF for right hand movement (left) and left hand
movement (right).
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
EOG を用いた文字入力インタフェースの開発
坂野 幸治*,堀 潤一**† ,斉藤 義明**
*新潟大学大学院自然科学研究科,**新潟大学工学部福祉人間工学科,† 新潟大学超域研究機構
Development of Character Input Interface using EOG
Koji Sakano*, Junichi Hori**† , Yoshiaki Saitoh**
*Graduate School of Science and Technology, Niigata University,
**Department of Biocybernetics, Niigata University
†
Center for Transdisciplinary Research, Niigata University.
はじめに
1.
コミュニケーションは人間が基本的な生活を行
うためには必須であるが,末期 ALS など残存機能が
極端に少ない患者のコミュニケーションを支援す
る実用的な装置は未だ少ない [1]-[2].
本研究では,EOG(Electro-Oculogram)を用いて眼
球運動 と瞬目の情報をリアルタイム で処理し 5 値
の意図情報を生成することにより,スクリーンキー
ボードにおける 上下左右 のカーソル 移動とメニュ
ー選択を任意に行う文字入力インタフェース の開
発を目指す.EOG とは眼窩周辺に貼付した電極によ
り眼球運動に伴った電位変動を検出する方法を指
し,ローコストでの実用化が可能となる.また,自
然視によるアーチファクトの削減かつ精度の向上
を図るため,3 電極 2 チャンネルから検出される活
動電位の上下に閾値を設定しチャンネル間で特徴
解析を行うことにより 5 値の意図情報を生成する.
定した4つの閾値をそれぞれの条件の通りに越え
た際に意図情報を出力する(Fig.1)
.なお,不随意
瞬目時は ChⅡでの電位変動はほとんど起こらない
ため,随意瞬目時と識別できる.ユーザに要する視
線移動は,可能な限り大きく不快にならない程度とする.
また,視線移動時間を制限することで,自然視によ
るアーチファクトを削減する.
2.3.
閾値設定
本システムの性能は設定する閾値に大いに影響
される [3].そこで ,効率の良い閾値設定法について
検討する.
まず,予備入力として,ディスプレイ上に表示し
たアニメーションの指示に従って視線移動を行う.
上下左右の眼球運動,随意瞬目,不随意瞬目時の活
動電位を取得し,各々の最大値と最小値を格納し閾
値初期値を設定する.このとき,上への眼球運動時
と不随意瞬目時の第 1 ピーク立ち上がりの鋭さを
検出・比較することにより,不随意瞬目による誤っ
2.
方
法
2.1.
システム構成
た入出力を抑制する.次に,初期値より基線に近づ
け教師データと比較していき精度が高くなる閾値
本システムでは 3 個の電極を使用し,前額部(X1),
こめかみ(X2),耳朶(A)に貼付する. A を基準とし,
X1,X2 の電位変動を検出するチャンネルをそれぞ
れ ChⅠ,ChⅡとする.これらのチャンネルから検
出される信号を AC カップリング にて増幅し,0.53
∼10Hz のバンドパスフィルタ を施す.その後,サ
ンプリング周波数 100Hz で A/D 変換し,チャンネ
ル間での特徴解析処理 により 5 値の意図情報を生
成する.
2.2.
信号処理
眼球運動によって発生した活動電位が,事前に設
Fig.1
意図情報の入出力関係
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
のシステム[3]よりも精度が向上し実用性も高まっ
たことが確認できる.
しかし,実際にキーボードを移動させる際に予備
入力での視線移動よりも 大きい距離が必要となっ
たため,今回検討した閾値設定法は不完全であると
Fig.2
スクリーンキーボード
言える.そこで 予備入力でデータの特徴を抽出し,
統計処理することにより 閾値設定法 のアルゴリズ
の組み合わせを選択する.最後に,閾値幅が最大と
ム改良を再検討している.
なるものを最適な閾値として決定する.この作業を
一括して自動で行うことにより,本システムの性能
4.
が向上する.
2.4.
文字入力実験
被験者を 20 代健常男性 4 名とし実験を行った.
その際,両眼の中央をディスプレイ中央に合わせ視
距離を約 60cm とした.使用したスクリーンキーボ
ードを Fig.2 に示す.入力してもらう文字は開始位
EOG を用いた文字入力インタフェースにおいて,
自動閾値設定法 を考案し文字入力実験を行った結
果,約 90%の意思伝達率が得られシステムの実用
性が以前よりも向上した.今後は,閾値設定法の改
善とスクリーンキーボードの配列等 もふまえ シス
テムの実用性を検討していく.
置 T で「GOOD_MORNING」とアンダーバーを含めた計
12 文字とし,被験者各自のペースでの入力を要請
した.各被験者は前もって 10 分程度練習を行った.
2.5.
まとめ
システム構築に際し,新潟大学石渡宏基技官に補
助頂いた.本研究の成果の一部は,新潟大学教育研
究支援経費の助成による.
評価方法
本研究では,意図した入力が正しく出力された割
合を意思伝達率とし,
正出力回数 意思伝達率 = × 100
[%]
全入力回数 と定義する.また,意図していない出力を誤作動と
し,誤作動率を次のように定義する.
誤作動の回数
誤作動の出現確率 = × 100
[%]
全入力回数
また,1 文字あたりの文字入力速度,ならびに実験
前後に眼疲労度を 9 段階で評価する(ポイントが高
いほど眼疲労度が高い)アンケートを実施しシステ
5.
参考文献
[1]久野,八木,藤井,古賀,内川:“EOG を用いた視線
入力インターフェース の開発,”情報処理学会論
文誌,Vol.39,No5,pp1455-1462,1998.
[2]内藤,野澤,田中,井出:“瞬目・眼球運動を用い
た意思伝達代行システム,
” FIT(情報科学技術フ
ォーラム),K-45,pp457-458,2002.
[3]坂野,堀,斉藤: “EOG を用いた文字入力インタ
フェースの開発,”電子情報通信学会信越支部大
会論文誌,7B-5,pp247-248,2004.
ムの実用性,操作性を評価した.
Table 1. 文字入力実験の結果
3.
結果・考察
被験者
意思伝達 誤作動 文字入力速度 眼疲労
率[%]
率[%]
[char/min] [points]
結果を Table 1 に示す.ただし ,予備入力におけ
A(裸眼)
95.2
0
10.9
3
る各被験者の意思伝達率は被験者 A,B,C が 100%で
B(裸眼)
90.8
0
6.7
6
C(裸眼)
90.8
0
6.0
1
D(コンタクト)
85.5
0
7.2
2
Ave±S.D.
90.6±3.9
0
7.7±2.2
3.0±2.2
あり,被験者 D においては意思伝達率 93.3%,誤
作動率 6.7%である.表から分かるように,全被験
者の意思伝達率の平均は 90.6±3.9%,誤作動率の
平均は 0%となった.閾値設定の自動化により以前
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
マンモグラフィ検診支援を目的とした乳房解剖学的構造の自動分類システム
古木
亜梨紗*,竹田
愛*,歸山
智治*,福本
一朗*
*長岡技術科学大学医用生体工学研究室
Automatic classification system of anatomical breast structure
aimed at mammography screening assistance
Arisa KOKI, Ai TAKEDA, Tomoharu KAERIYAMA, Ichiro FUKUMOTO
*Biomedical Engineering laboratory, Nagaoka University of Technology
1.
検定は Mann-Whitney の U 検定を用い,有意水準
はじめに
は 5%とした.判別分析はマハラノビス汎距離を用
マンモグラフィ画像の特徴的所見である不均一
い,3 段階で分類を行った(Fig.2).
高濃度の画像では,乳腺構造と腫瘍の形状や濃淡が
マンモグラフィ画像
酷似しており,判別が難しいため医師の負担が増大
し疲労蓄積や誤診の危険性が高まると考えられる.
STEP1
非高濃度
高濃度
本研究では画像から特徴量を算出し,マハラノビ
スの汎距離を用いて乳房構造を脂肪性,乳腺構造の
脂肪性
散在,不均一高濃度,高濃度 1)の分類を試みた.
2.
STEP2
非脂肪性
STEP3
対象
乳腺構造の散在
本研究では,内外斜位方向で撮影したマンモグラ
Fig.2
フィ画像サイズ(2370×1770pixel,DICOM 形式)
3.1.
脂肪性(FT)5 枚,乳腺構造の散在(SM)16 枚,不均一
不均一高濃度
特徴的所見の 3 段階による分類
前処理
内外斜位方向から撮影されたマンモグラフィ画
高濃度(UD)28 枚,高濃度 (DB)12 枚を対象とした.
像には胸筋が含まれているため,胸筋を除去し,そ
なお分類は放射線科医によって行われた.特徴的所
の後,2 値化により乳房領域を決定した.なお,閾
見の例を Fig.1 に示す.
値は経験的に得られた値を用いた.
3.2.
特徴量算出
画像内でθ=0°,45°,90°,135°の 4 方向に
おいて同じ輝度が続く頻度を要素とするランレン
グス行列 2)を求め,各行列から 5 種類の特徴量を算
出した(Table 1).
(a)脂肪性
(b)乳腺構造 (c)不均一
の散在
(d)高濃度
SRE
LRE
GLN
RLN
RPC
判別困難
判別容易
Fig.1
3.
Table 1
高濃度
乳房構造の特徴的所見
4.
方法
結
ランレングス行列特徴量
short runs emphasis
long runs emphasis
gray level nonuiformity
run length nonuniformity
run percentage
果
各画像に対し,前処理として胸筋の除去,乳房領
ランレングス行列で算出した特徴量を高濃度と
域の抽出を行った.抽出した画像からランレングス
非高濃度(STEP1),脂肪性と非脂肪性(STEP2),乳腺
行列を求め特徴量を算出した.
構造の散在と不均一高濃度(STEP3)で検定した結果,
有意な差が認められた特徴量を Table 2−4 に示す.
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
Table 2
番
号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
有意な差が認められた特徴量(STEP1)
特徴量
角度 特徴
0
SRE
0
LRE
0
RLN
0
RPC
45
SRE
45
LRE
45
RLN
45
RPC
90
SRE
90
LRE
90
RLN
90
RPC
135
SRE
135
LRE
135 RLN
135
RPC
高濃度 非高濃度
0.471
100.8
456579
0.564
0.475
95.16
486039
0.578
0.467
501.2
411447
0.533
0.474
93.69
487210
0.578
0.475
33.24
632078
0.725
0.478
31.39
668196
0.739
0.471
224.1
582335
0.696
0.478
30.64
670096
0.740
Table 6
p-value
1.57×10-2
8.96×10-4
7.10×10-3
4.46×10-4
2.52×10-2
8.96×10-4
9.50×10-3
9.03×10-4
3.33×10-2
6.61×10-4
3.80×10-3
4.29×10-4
1.48×10-2
8.96×10-4
8.50×10-3
4.83×10-4
対
SM,UD
FT
象
特徴量の組合せ
Table 7
SM
対
UD
象
特徴量の組合せ
5.
考
STEP2 の判別分析の結果
判別結果
FT
SM,UD
35
9
1
4
1
判別率
(%)
79.5
80.0
STEP3 の判別分析の結果
判別結果
SM
UD
15
1
4
24
判別率
(%)
93.8
85.7
1-2-3-4-5-6
察
本研究では,マンモグラフィ画像の特徴的所見に
おいて,軟部組織と脂肪の分布の違いに着目し,客
Table 3
番
号
1
有意な差が認められた特徴量(STEP2)
特徴量
角度 特徴
90
SRF
脂肪性 非脂肪性
0.476
0.471
観的手法を用いた自動分類を試みた.その結果,高
濃度の判別率は 100%であったが,その他の判別率
p-value
は 80%∼90%前後であった.本手法を自動分類シス
2.03×10-2
テムに用いるにはより高い検出精度が必要である.
Table 4
番
号
1
2
3
4
5
6
7
8
そのためには,脂肪性と乳腺構造の境界にあたる形
有意な差が認められた特徴量(STEP3)
特徴量
角度 特徴
0
GLN
0
RLN
45
GLN
45
RLN
90
GLN
90
RLN
135 GLN
135 RLN
乳腺構
造散在
10194
845929
10485
898306
10112
791470
10491
900543
不均一
高濃度
5456
52043
5590
548065
5298
470182
5596
549721
状,乳腺構造の散在と不均一高濃度の境界にあたる
p-value
形状が類似しており読影医によって分類の基準が
6.70×10-6
7.42×10-5
6.70×10-6
8.38×10-5
8.94×10-6
3.48×10-5
6.70×10-6
8.38×10-5
異なるため,脂肪性,乳腺構造の散在,不均一高濃
度を区別する基準を数値化して明確にする必要が
あると考える.
今後は,特徴的所見を分類する基準値を決定し,
数値化した基準に従って分類されたマンモグラフ
ィ画像を読影医が診断し,実際に診断精度が向上す
るか検討する予定である.
それぞれで,特徴量に対し総当りでマハラノビス
汎距離を用いて判別分析を行った結果,最も判別率
6.
がよかったものを Table5-7 に示す.なお,判別率が
謝辞
本研究にあたり,ご協力いただきました厚生連長
同等の場合は特徴量の少ないものを採用した.また,
岡中央総合病院放射線科佐藤敏輝医師ならびに放
Table5-7 での特徴量の組合せの番号は,Table2-4 の
射線科の皆様に深く感謝いたします.
番号である.
Table 5
7.
1) 大内賢明:マンモグラフィによる乳がん検診
STEP1 の判別分析の結果
対 FT,SM,UD
DB
象
特徴量の組合せ
参考文献
の手引き,日本医事新報社,p80-82
判別結果
判別率
(%)
DB
FT,SM,UD
49
0
100.0
0
12
100.0
1-2-3-4-5-6-7-8-9-14-15-16
2) 高木幹雄,下田陽久:画像解析ハンドブック,
東京大学出版会,東京
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
パルス光刺激による VEP メニューボードの高速化
勝山 恵介*,宮田 愛恵*,米澤 義道*,伊東 一典*,橋本 昌巳*
*信州大学工学部情報工学科,
Speeding up of menu board by VEP induced by light pulse stimulus
Keisuke KATSUYAMA*,Manae MIYATA*,Yoshimichi YONEZAWA*, Kazunori ITOH*, Masami HASHIMOTO*
*Department of Information Engineering, Faculty of Engineering, Shinshu University
図 2 は刺激光源から視線をそらして行く過程での
1.はじめに
視覚誘発脳波(VEP)は運動機能が眼球付近に限
n100 VEP のレベル変動を示した。横軸のそらし角
られているユーザのコミュニケーションツールとし
0°は、光源を視野の中心部に捉えて光刺激を受けて
てのメニュー型インターフェイスを実現できる可能
いる注視の状態である。これより視線をそらして行
性がある(1,2)。本研究では、複数の光源にメニ
くことは、視野の周辺への刺激となり、このレベル
ューを割り当てておき、ユーザが光源を注視した際
の減衰は視野角との関係で指数関数に近似できる。
に発生する VEP を解析することで希望事項の抽出
この特性は、メニューボードからのメニュー抽出で
を行うことを検討している。
重要な役目をするものであり、注視した光源の刺激
そこで今回、光刺激としてパルス光を用い、時間
モードあるいはタイミングが希望メニュー抽出の基
経過的に順次点灯することで視覚への負担を軽減し、
本原理となっている。この特性及び近似指数関数の
VEP に現れる短時間的な反応に注目して時間短縮
減衰距離定数も個人によって多少異なるが平均的に
を図る手法を採用して、メニューボードの高速化の
VEP レベルは 12∼15°付近から雑音レベルとほぼ
検討を行った。
同様のレベルとなる。このことから、視野内に光源
2.パルス刺激 VEP
を複数個設置して何らかの方法で個々に注視した場
合の VEP より判別しようとする場合は少なくとも
パルス刺激法では、単発のパルスによって発生す
15°以上の視野角度間隔が必要である。
な応答が観察される。この中で観察される主な反応
実験値
近似曲線
は、刺激後約 100ms に現れる負(negative)の反応
10
に起因して名付けられた n100 及び同様な n200 であ
8
り、それぞれ信号レベル中に下降応答として現れる。
6
両者の出現遅延時間(潜時)、そのレベルの大小関係
4
V = 8.3exp((-1/15)θ)
2
は個人により異なる。
雑音レベル
VEP(μV)
る VEP 応答が基本である。通常は、図 1 に示すよう
0
-24 -21 -18 -15
-12
-9
-6
-3
0
3
6
9
12
15
18
21
24
光源からのそらし角度θ(°)
図2
n100 VEP の視線そらし角特性
3.時間差パルス刺激による検討
図 3 は前節で述べた基礎特性に基づき実験に使用
したパルス刺激 VEP メニューパネルである。光源
間の視野角は 16°として、隣接光源の影響を少なく
している。1∼16 の光源は一定の時間差をおいて順
図1
次点滅していく。
パルス刺激 VEP レスポンス
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
それぞれのカーブの最大値は、各光源の点滅順番(3,
4,11 番)に対応したタイミングに現れており、注
視メニューの判定が出来る。
図 6 は図 5 の様に得られた相関値の最大値のタイ
ミングから注視光源を判別した場合の正解率と点滅
周期の関係を 3 人の被験者について示したものであ
る。但し、この場合全所要時間を 10 秒一定としてお
り、図 4 の波形の抽出のための加算平均回数は異な
図 3 光源配置図
図 4 は刺激周期を 320ms に設定し、被験者に注視
る。例えば、最大周期の 1.6 秒の場合は 6 回、最小
してもらった VEP 応答である。刺激周期とは、1∼
周期 0.16 秒では 60 回である。このため、周期時間
16 までの光源が順次点滅していき、再び 1 が点滅す
と加算回数の兼ね合いで正答率が最大となる最適条
るまでの時間であり、従って1つの光源が点滅して
件が現れており、被験者によって異なるが周期 0.32
次の光源が点滅するまでの時間は 20ms となる。そ
秒程度が最適条件であることが示されている。
れぞれ、与えた刺激の時間差に応じて n100 などが出
被験者A
現している様子がわかる。
判別は単発パルス刺激によって得られた図 1 のよ
正答率(%)
うな VEP 波形を標準データとして、計測した脳波に
対し時間を推移させて相関を取り、推移時間と相関
値の関係を見る方法を採用した。この方法では、VEP
の現れている推移時間が相関値の最大値として得ら
れるので注視メニュー光源が判別できることになる。
被験者B
被験者C
平均
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1.6s
図6
0.8s
0.32s
1周期時間
0.16s
周期時間と正答率の関係
5.結論
パルス光刺激 VEP を時間経過的に順次点滅させ
ることで複数個の光源の中から注視光源の判別の可
能性が見出せた。今後、VEP 信号からの雑音除去、
光刺激の形状、大きさ、強度などの検討により、高
図4
速で精度の高いデータを抽出してシステム性能向上
時間差刺激による VEP 応答
を図りたい。
図 5 はある被験者について得られた、注視光源を
6.参考文献
相関係数
変えた場合の相関値の推移時間依存性例である。
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1
[1] Sutter.E.E,“The brainresponse interface:
3
4
11
communication through visually-induced
lectrical brain response”
J.Microcomputer
Applications,15,pp.31-45,1992.
[2] 荒井善昭、米澤義道、伊東一典、橋本昌巳、牛
山喜久 “VEP を利用した入力インターフェイス”
0
62.5
125
187.5
時間推移(ms)
250
図5
相関係数と時間推移の関係
医用電子と生体工学、35(2),pp.12-17,1997.
312.5
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
螺旋描写を用いた振戦疾患評価に関する基礎研究
平川 晋也*,松本 義伸*,吉井 孝博*,山田 暢一*,田村
正人**,福本 一朗*
*長岡技術科学大学医用生体工学研究室, **長岡西病院 神経内科
A basic study on estimation of tremor symptoms using spiral drawing task
Shinya HIRAKAWA*
Yoshinobu MATSUMOTO* Takahiro YOSHII* Nobukazu YAMADA*
Masato TAMURA**
Ichiro FUKUMOTO*
*Biomedical Engineering Laboratory,Nagaoka University of Technology
**Clinical Neurology,Nagaoka-nishi Hospital
ータ,計測・解析ソフトウェア(National Instruments
はじめに
1.
「四肢に出現する不随意で律動的な振動」と定義
LabVIEW7.1)で構成した(Fig.1). 螺旋描写中の加速
される振戦は,高齢者に多い症状である.現在,パ
度信号を計測するために,ペン先端に 3 軸型加速度
計を取り付けた.
ーキンソン病(PD:Parkinson Disease),本態性振戦
はじめに,各被験者に対して螺旋描写課題を与え,
疾患(ET:Essential Tremor)などを含む各種振戦疾患
線上をなぞるように指示した.その際,描写図形ト
には様々な治療薬が用いられている.しかし,その
レース中のペン先端加速度を計測した.次に,いす
症状の判別から薬の量や種類の決定は,医者の経験
に座り肘掛に手を置いた状態を安静時,手を水平に
によりなされており,症状に応じた的確な薬の量や
伸ばした状態を姿勢時として,両手拇指基部に取り
種類の決定が困難である.これまでの報告で,我々
付けた 3 軸型加速度計から加速度をそれぞれ 1 min
は 3 軸型加速度計を用いた各種振戦疾患の鑑別を
計測した.各計測状態の加速度計測結果からパワー
行ってきた2).
スペクトルを算出した(Fig.2).
本研究では,螺旋描写課題時における各種振戦重
症度の定量評価を行うことを目的として,3 軸型加
速度計を用いた計測システムを製作し,本態性振戦
の重症度の視診に用いられている螺旋描写課題に
より,各種振戦疾患に見られる周波数の特徴を検討
した.
2.
方
2.1.
対象
法
Fig.1 計測システム
対象は,長岡西病院神経内科を訪れた本態性振戦
疾患患者,パーキンソン病疾患患者とした.また
Control として健常な本学学生も参加した(Table1).
Table1 対象
ET
PD
Control
人数(男/女)
1 名(0/1)
2 名(1/1)
5 名(4/1)
(平均)年齢
74
69.5±4.9
22.2±1.6
Fig.2 パワースペクトルの算出
2.2.
実験手順
計測システムは,3 軸型加速度計(TEAC612‐ZS),
チャージアンプ,A/D ボード,パーソナルコンピュ
3.
結
果・考 察
3.1.
螺旋描写課題遂行時におけるピーク周波数
Control5 名における振戦加速度のパワースペク
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
トルについて,すべての被験者において 0-2 Hz に
るえは遅くなる.そのためピーク周波数は低周波側
周波数ピークが見られた.また,これらのピーク以
へシフトすると考えられる.PD患者について,今
外にはピークは見られないので,螺旋描写動作によ
回の実験では,すべての計測状態においてPDに特
る周波数ピークは 0-2 Hz に現れることが認められ
徴的な周波数域でピークが検出された.また,描写
た.
時と姿勢時の周波数ピークが等しい結果であった.
ET 患者の 1 例を Fig.3 に,PD 患者における 1 例
これは,PDは主として安静時に出現するふるえで
を Fig.4 に示す.すべての患者において病的振戦に
あり,描写動作時にペン鉛直方向に加わる力が少な
よると考えられるピークが検出された.ET の病的
いためであると考えられる.
振戦由来の周波数ピークの特徴として,狭い帯域の
今回の実験により各種振戦疾患において特徴的
ピークが見られた.PD の病的振戦由来の周波数ピ
な周波数ピークを検出できた.今後は,被験者数を
ークの特徴としては,広い帯域のピークが見られた.
増やし,重症度評価に繋げていきたい.
Table2 各計測状態における周波数ピーク
ET1
PD1
PD2
9
ET 患者のパワースペクトルの 1 例
ピーク周波数 [Hz]
Fig.3
周波数ピーク [Hz]
螺旋描写時 姿勢時
安静時
5.5
6.8
None
8.8
8.8
5.8
6.4
6.4
4.0
8
7
6
螺旋
描写時
姿勢時
5
4
3
2
ET1
PD1
PD2
Fig.5 螺旋描写時と姿勢時の周波数ピークの比較
Fig.4
3.2.
まとめ
4.
PD 患者のパワースペクトルの 1 例
本研究では,螺旋描写課題を用いた計測システム
各計測状態による周波数ピークの比較
ETにおける振戦は姿勢時において出現し,その
を製作し,ET,PD 患者の振戦加速度波計のパワー
周波数域は 8-10 Hzといわれている.PDにおける
スペクトルを算出した.その結果,各種振戦疾患に
振戦は安静時において出現し,特徴的であるとされ
特徴的な周波数ピークが検出された.今後は,被験
ている周波数域は 4-6 Hzである.また,PDには動
者数を増やし,重症度評価に繋げていきたい.
作時振戦あるいは姿勢時振戦を伴うこともあり,こ
5. 参考文献
1) 金沢一郎 著:パーキンソン病,ライフサイ
の種の振戦は 5-12 Hzの周波数域に出現するとさ
エンス(1994)
れている1).そこで,螺旋描写時,姿勢時,安静時
2)
それぞれの振戦周波数ピークを比較した結果を
高井俊輔
松本義伸
田村正人
西塘
修:三次元加速度解析を用いたパーキンソン自
Table2 に示す.
動診断支援システムの研究,長岡技術科学大学
ET患者について,螺旋描写時と姿勢時で振戦周
研究報告第 25 号(2003)
波数ピークが異なる結果となった(Fig.5).書痙患者
において書字時に筆圧が強くなる報告3)があること
3)
井上博紀
谷万喜子
高田あや
赤川純一
から,描写動作においてふるえを自制しようと,ペ
鈴木俊明 若山育郎:書痙患者に対する鍼治療
ン鉛直方向に加わる力のために,ペン先端部でのふ
効果,関西理学 4:115-121,2004
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
多列断層高分解能 CT を用いた肺野微小病変分類手法の基礎研究
横地 洋*,古泉 直也*,** 歸山 智治*, 竹田 愛*, 福本 一朗*
*長岡技術科学大学医用生体工学研究室,
**新潟大学大学院医歯学総合研究科遺伝子制御講座腫瘍放射線医学分野医歯学系
Basic research for classification method of small lesion in lung field using MDCT
Hiroshi YOKOCHI , Naoya KOIZUMI, Tomoharu KAERIYAMA, Ai TAKEDA, Ichiro FUKUMOTO*
* Biomedical Engineering Laboratory, Nagaoka University of Technology
**Division of Radiation Oncology, Department of Molucular Genetics, Graduate School of Medical and Dental Science,
Niigata University
1.
3.
はじめに
近年,肺癌の CT 検診では厚さ 10mm での撮影か
方 法
3.1.
病変領域の抽出
ら厚さ 0.5~2mm の薄層での撮影を行う施設が増加
CT 撮影画像(サイズ:512×512 ピクセル,階調
しており,今後は薄層による撮影が主流になると言
数:4096,形式:DICOM)から読影医のもと,病
われている.薄層による CT の撮影では,切除径
変の存在する箇所を 35×35 ピクセルで切り出し,
5mm 以下の微小病変が読影医の目視によって大量
病変領域のみを手動で抽出した(fig.1)
.
に検出されている1).検出された微小病変は外科的
切除等により病理学的に診断された例が少なく,ま
た画像解析された症例が少ないためコンピュータ
による微小病変の分類はあまり行われていない2).
そこで本研究では、微小病変を判別するためのコ
ンピュータ支援診断システム(CAD)を設計するた
めに,病理学的に確認された微小病変の細気管支肺
(a)BAC
(b)AAH
Fig.2 抽出病変
胞癌(BAC)と異型腺腫瘍過形成(AAH)におけ
る判別特徴量の検討を行った 3).
2.
3.2.
対 象
特徴量の算出
特徴量は病変領域に対し形状特徴量として面積,
肺癌により切除予定の肺の一部を多列断層高分
周囲長,円形度,不整度,フラクタル次元とテクス
解能 CT で撮影した画像と,その後切除された肺を
チャ特徴量としてθ方向に同一の輝度が続く頻度
読影医が比較検討し CT 画像上で微小病変とされた
を要素とするランレングス行列,ある点からθ方向
25 例(BAC:10 例、AAH:15 例)を対象とした.
に距離r離れた輝度が同一である確立を要素とし
た同時生起行列を算出した(table1,2)4).なお角度
θは 0°,45°,90°,135°とし,距離 r は 1 とし
た.
Fig.1 対象画像
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
5.
Table1 ランレングス行列特徴量
SRE
LRE
GLN
RLN
RPE
Short runs emphasis
Long runs emphasis
gray level nonuniformity
run length nonuniformity
run percentage
考 察
本研究では切除径 5mm 以下の微小病変に対する
CAD を設計するため,BAC と AAH の判別を行っ
た.有意水準 1%以下の判別特徴量は全てテクスチ
ャ特徴量であり,それらを用いた正判別率は 100%
であった.このことからテクスチャ特徴量を用いて
微小病変の分類が可能であると考えられる.
Table2 同時生起行列特徴量
ASM
CNT
CRR
VAR
IDM
SAV
SVR
SEP
EPY
DVR
DEP
IM1
angular second moment
Contrast
Correlation
variance
inverse difference moment
sum average
sum variance
sum entropy
entropy
difference variance
difference entropy
information measure of correlation
6.
まとめ
本研究で判別特徴量にテクスチャ特徴量を用い
ることで微小病変 AAH と BAC の分類が可能であ
ることが示唆された.今後は,微小病変領域を自動
抽出するシステムを構築する予定である.
7.
参考文献
1) 石川浩志:切除径 5mm 以下の限局性肺病
変における病理組織と高分解能 CT の対比,
日本医放会誌 62,8:15-22, 2002
2) Hiroaki Nomori : Differentiating Between
Atypical
3.3.
Bronchioloalveolar
評価方法
the
44,6:675-682, 2004
め判別分析を行った.
4) 高木幹雄、下田陽久:画像解析ハンドブッ
ク,東京大学出版会,東京, 2004
結 果
検定した結果,テクスチャ特徴量 30 種類で有意
差が認められた.有意差の認められた特徴量を用い
て総当りで判別分析した結果を table3 に示す.正判
別率 100%であった組み合わせが多数存在したため
特徴量の少ないものを採用した.採用した特徴量は
RLN(θ=0°,90°),ASM(θ=0°),CRR(θ
=0°,90°)
,VAR(θ=0°)
,SVR(θ=0°)
,SEP
(θ=0°)
,EPY(θ=0°)
,IM1(θ=0°)の 10
種類であった.
Table3 判別結果
判 別
AAH
30
0
Using
3) 野 口 雅 之 : GGO と 肺 癌 の 病 理 , 肺 癌
められた特徴量に対し,マハラノビスの汎距離を求
AAH
BAC
Carcinoma
and
Ann Thorac Surg 76:867-871, 2003
い,有意水準は 1%以下とした.また,有意差の認
対象
Hyperplasia
Computed Tomography Number Histogram,
特徴量の差の比較は Mann-Whitney の U 検定を用
4.
Adenomatous
結 果
BAC
0
10
判別率(%)
100
100
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
純音を用いた上肢振戦制御訓練システムの基礎研究
山田暢一*,松本義伸**,吉井孝博*,平川晋也*,福本一朗*
*長岡技術科学大学医用生体工学研究室
A basic study of upper limb tremor control training system using pure tone
Nobukazu YAMADA*, Yoshinobu MATSUMOTO*, Takahiro YOSHII* , Shinya HIRAKAWA* , Ichiro FUKUMOTO*
*Biomedical Enginieering Laboratory, Nagaoka University of Technology
この純音は加速度振幅が小さくなる(ふるえが小さ
はじめに
1.
くなる)と周波数が低く,または音圧が小さく出力
現在,病理振戦を有する患者に対する治療とは主
されるようプログラミングした.
にL-DOPAなどの薬剤の投与が行われている.しかし
2.2. 測定方法
薬剤投与による長期治療には,幻覚,妄想の副作用
Fig.2 に示す訓練チャートにより実験を行った.
や,薬効の低下といった問題がある.そこで我々は
薬剤を投与することなくこれらの不随意運動の制
御を可能とする方法としてバイオフィードバック
(Biofeedback:BF)に着目し,研究を行ってきた1).
本研究では上肢振戦の加速度波形の振幅を聴覚
情報としてフィードバックすることにより振戦抑
制の訓練を行うシステムを作製した.前実験として
健常者を対象として実験を行い,システムの有用性
Fig.2
の評価および病理振戦患者への活用を検討した.
2.
方
2.1.
訓練システム
BF 訓練チャート
被験者の利き手拇指基部に 3 軸型加速度計,両耳
法
にヘッドホンを装着し,腕を台の上に置き上腕を上
方に 45°傾けた姿勢で計測を行った.被験者は訓
本システムは圧電式の3軸型加速度計,パーソナ
練中,姿勢を保持,および出力される純音の周波数
ルコンピュータ,A/D ボードから構成されている.
が低く,または音圧が小さくなるように訓練目標を
また,
計測・解析プログラムは Lab VIEW7.1(National
与えた.
Instruments)を用いて作成した.Fig.1 に BF 訓練シス
2.3.
被験者
テムのブロックダイアグラムを示す.BF 指標には
前実験として健常学生により実験を行った.被験
加速度計より得られた加速度波形の振幅に対応し
者数は音圧変化による BF 訓練 5 名(平均年齢 23.8
て,変化する周波数または音圧の純音を使用した.
±3.4 歳)
,周波数変化による BF 訓練 5 名(平均年
齢 23.0±0.6 歳)の計 10 名とした.Control 群とし
て加速度波形に対応しないランダムな周波数と音
圧の純音を出力する実験を同一被験者で行った.
3.
結果
BF 訓 練前後の 振戦加速度 の実効値の 変化を
Fig.3,Fig.4 に示す.訓練前後の実効値の変化を t検定を用いて統計学的に検定した結果,どちらも危
険率 0.05 で有意差が得られなかった.また,
Fig. 1
BF 訓練システムのブロックダイアグラム
Control 群に対しても同様に t-検定を行ったところ,
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
訓練前後ではどちらも危険率 0.05 で有意差が得ら
4.考察
実験後のアンケート結果によると、BF訓練に用
換(FFT)により周波数解析を行ったところ,訓練後
いた 2 つの指標において,音圧変化は全ての被験者
の計測結果から,2つの実験において 5Hz 付近に
で音圧の変化がわかりやすいという回答を得た.周
ピーク周波数が現れる傾向を示した(Fig.5,Fig.6).
波数変化によるBF訓練においては2名が音の周波
また,Control 群でも同様に 5Hz 付近にピーク周波
数変化がわかりにくかったという回答を得た.この
数が現れた.実験後にアンケートを取ったころ、2
ことから音圧変化によるBF訓練が,不随意運動の
つの実験に対して体調の変化、音に対しての不快感
呈示情報として有効であると考えられる.しかし,
を感じた被験者はいなかった.また周波数変化によ
訓練前後では加速度波形の実効値に有意差が見ら
る音の高低が判別しにくいとの意見があった.
れなかった.これは生理振戦が微小であるため訓練
実効値(V)
れなかった.得られた加速度波形を高速フーリエ変
0.004
効果が得られなかったと考えられる.測定から得ら
0.003
れた加速度波形をFFTにより周波数解析を行った
0.002
結果,Control群,Bf群共に,訓練後の振戦周波数は
5Hz付近に多く見られた.これまでの研究で疲労性
0.001
振戦は 5Hz前後に見られることが明らかになって
0
いる2)ため,訓練後の測定結果に疲労性振戦の影響
訓練前 訓練後
実効値(V)
が含まれている可能性が考えられる.これより,訓
BF 訓練前後の実効値(周波数変化)
Fig.3
0.004
練後の測定の際に,より長い休憩を取る必要がある
0.003
と考えられる.
0.002
5.まとめ
本研究より、今回作製した訓練システムにより健
0.001
常者の生理振戦が抑制された結果は得られなかっ
0
た.しかし,病理振戦には有効である可能性がある
訓練前 訓練後
Fig. 4
ピーク周波数(Hz)
14
ため,病理振戦患者へ同様の実験を行う必要がある.
BF 訓練前後の実効値(音圧変化)
12
また,休憩時間が短く,疲労性振戦が含まれてしま
10
う可能性があるため,休憩時間を検討しなおす必要
8
がある.
6
6.展望
4
2
アンケート結果により,訓練による体調の変化お
0
よび不快感がなかった事から,病理振戦患者へ本シ
訓練前 訓練後
ピーク周波数(Hz)
Fig.5 BF 訓練前後のピーク周波数(周波数変化)
ステムを用いた実験を行う予定である.
14
7 . 参考文献
12
1) 松本義伸, 権平幸代, 半戸志麻
10
他 :上肢振戦周
8
波数バイオフィードバックシステムを用いた振
6
戦の制御,バイオフィードバック研究 VOL.25,
4
1998
2
2) 福本一朗 :疲労振戦の実験的研究,長岡技術科学
0
大学研究報告,VOL.17,1995
訓練前 訓練後
Fig.6 BF 訓練前後のピーク周波数(音圧変化)
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
頚肩腕障害の客観的診断に向けた基礎研究
多田 弦,松永 哲雄,Kum Ken Chee,曽我 仁,
相馬 洋平,小形 雄大,内山 尚志,福本 一朗
長岡技術科学大学医用生体工学教室
A basic research for objective diagnosis of cervicobrachial disorder
Gen TADA,Tetsuo MATSUNAGA,Kum Ken Chee,Jin SOGA,
Yohei SOMA,Yudai OGATA,Hisashi UCHIYAMA,Ichiro FUKUMOTO
Bio Medical Engineering Laboratory Nagaoka University of Technology
2.3.
はじめに
1.
Fig.1 の線分の中点から僧帽筋の表面筋電図信号
首や肩,腕にかけてのこりや痛みといった症状に
を導出し,FFT による周波数解析を行った.その値
代表される頸肩腕障害の重症度の診断には,叩打痛
から式(1)を用いて平均周波数(MPF)を求めた.
∫ f ⋅ F ( f )df . (1)
MPF =
∫ F ( f )df
検査や圧痛点検査,問診などが用いられている.
[1,2]しかし,これらは医師や患者の主観に依存し
たものが多く客観性に乏しい.
2.4.
そこで本研究では上記検査法に代わる重症度を
労部位調べを用いた.
硬度計,疲労部位調べを用いて,生体の疲労と筋硬
2.5.
結の関係および疲労感の有無を調べ,筋電図及び筋
2.1.
状態で鉄アレイを保持させた.この際,顔は正面を
法
向くように,また肩から手を結んだ直線が地面と垂
被験者
直になるように指示し,これを負荷とした.
事前に実験に関する説明をして,同意を得られた
実験前に 1 回,負荷中 10 分毎に 3 回,その後無
健常成人ボランティア学生 3 名(平均年齢 22.5 歳)
負荷状態で負荷時と同一姿勢で 10 分毎に 3 回,各指
に協力してもらった.
2.2.
実験手順
被験者を椅子に座らせ,両腕を前方に下垂させた
硬度の客観的評価指標としての有用性を検討した.
方
疲労部位調べ
主観評価として日本産業疲労研究会[3]選定の疲
客観的に評価する方法の提案のために,筋電図,筋
2.
表面筋電図
標の記録を行った.
筋硬度測定
結
3.
測定には TRY-ALL 社製 筋硬度計 TDM-N1 を用
3.1.
いた.測定位置は,Fig.1 のとおりである.測定時
果
表面筋電図
Fig.2 及び Fig.3 に,両肩の MPF の推移を以下に
には同じ部位で 5 回の測定を行い,40%トリム平均
示す.
MPF は経時とともに減少する傾向にあった.
を用いた値を測定値とした.
250
MPF [Hz]
200
150
100
50
Sub.1
Sub.2
Sub.3
0
Fig.1
実験前 10分後 20分後 30分後 40分後 50分後 60分後
筋電図及び筋硬度の測定部位
Fig.2
1
左肩の MPF の推移
MPF [Hz]
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
250
実験前の値との比較から,負荷を与えている間は
200
疲労感が増加し続け,無負荷状態に移行しても疲労
150
感が持続していた.
100
4.
50
Sub.1
Sub.2
Sub.3
MPF は筋疲労にしたがって低周波域にシフトす
0
る.[4]この事から,被験者らは疲労課題によって筋
実験前 10分後 20分後 30分後 40分後 50分後 60分後
右肩の MPF の推移
Fig.3
3.2.
筋硬度
30
疲労を起こしていると考えられる.
筋硬度
しかし,疲労部位調べによる自覚症状と比較した
Fig.4 および Fig.5 に両肩の筋硬度の推移を示す.
場合, 自覚症状は実験終了時には回復傾向が見ら
28
れたが,MPF の上昇は見られなかった.この事から,
26
筋の機能的な回復と,ヒトの感覚的な回復には時間
24
差があるものと考えられる.
22
20
Sub.1
Sub.2
他方で筋硬度には他の指標と一致する傾向は見
Sub.3
られず,また極端な筋硬結を観察することもできな
18
実験前 10分後 20分後 30分後 40分後 50分後 60分後
Fig.4
32
かった.この事から筋硬結は,筋疲労とは別の生理
左肩の筋硬度の推移
作用や障害によって起こるものと考えられる.
30
筋硬度
考察
5.
まとめ
28
26
筋疲労と筋硬結の関係を,筋電図の MPF と筋硬
24
度から調査した結果,筋疲労と筋硬結に関係が少な
22
Sub.1
Sub.2
いことが推察された.本実験で課した程度の負荷で
Sub.3
20
は被験者に筋硬結は誘発できず,客観的指標として
実験前 10分後 20分後 30分後 40分後 50分後 60分後
Fig.5
評価はできなかった.
右肩の筋硬度の推移
今後は実験結果をふまえ,誘発課題の工夫や評価
実験結果より,筋硬度に傾向は現れなかった.ま
指標の模索,検討を行い,更に実際の患者様を対象と
た,極端な筋硬結を誘発できなかった.
3.3.
した実験を実施したいと考えている.
疲労部位調べ
6.
疲労部位調べによる両肩の,主観評価の推移を
Fig.6 および Fig.7 に示す.
3
参考文献
[1]大谷 透, 宇土 博:頸肩腕障害および腰痛症の
Sub.1
Sub.2
Sub.3
発生例からみた養護学校教員の作業負担につ
いて,産業保険人間工学研究,2,86-91,2000.
2
[2]渡辺 靖之:職業性頸肩腕障害の診断のポイン
1
ト,(Online Documentation)
0
http://www.mmjp.or.jp/shibadaimon/karou/karou32
実験前 10分後 20分後 30分後 40分後 50分後 60分後
Fig.6
左肩の主観評価
3
-1.html
Sub.1
Sub.2
Sub.3
[3]日本産業疲労研究会,http://square.umin.ac.jp/of/
[4]木竜 徹:局所筋疲労を表面筋電図でみる,バイ
2
オメカニズム,21 巻,2 号,1997
1
0
実験前 10分後 20分後 30分後 40分後 50分後 60分後
Fig.7
右肩の主観評価
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
間接飛翔筋型昆虫の翅関節構造の解析およびモデル作成とその評価
白幡
淳*,砂田
博幸*,三宅
仁**
*長岡技術科学大学,**長岡技術科学大学体育保健センター
Structural Analysis and Thorax-Vibration Model Evaluation of
the Indirect Flight-Muscle type Insect's Wing-Joint
Jun Shirahata*, Hiroyuki Sunada *,Hitoshi Miyake**
*Nagaoka Univ. of Tech.,**Physical Education and Health Care Center, Nagaoka Univ. of Tech.
4.
研究背景
1.
結果
翅が打ち上げ状態・打ち下ろし状態にあるハチ
間接飛翔筋型昆虫であるセイヨウミツバチ(Apis
の翅関節付近の断面画像をそれぞれ Fig.2,Fig.3 に
Mellifela)はその筋収縮の周波数に比べて,約 6~7
示す.
倍の振動数で翅をはばたかせ,飛行している.これ
までセイヨウミツバチを研究対象とし,様々な測定
や解析を行ってきたが,周波数増幅現象の原理は解
明されていない.そこで, 周波数増幅現象の原理を
解明するため,胸部・翅関節箇所の断面を観察した.
また,これまでの研究結果を基に,動力の周波数
に対し,翅および外骨格部分が数倍の周波数で振動
Fig.2 打ち上げ状態
Fig.3 打ち下ろし状態
する胸部振動モデルを作成した.
翅間接構造の解析
2.
これより,円内部の弾性膜のような組織が翅の上
翅の上下動に伴う関節の動きを観察するために、
下動に伴い伸縮していることが確認できた.また,
翅が打ち上げ状態・打ち下ろし状態にあるセイヨウ
カギ状の組織については,翅が打ち上げ状態にある
ミツバチの翅関節付近断面の CT 画像を撮影し,翅
時は胸部内側に傾き,翅が打ち下ろし状態にある時
関節構造の変化について解析した.
は胸部外側に傾いていることが確認できた.
3.
胸部振動モデルの作成
胸部振動モデルにおいては,動力に対して数倍の
胸部振動モデルはセイヨウミツバチの全長約
周波数で外骨格および翅部分が振動することが確
4mm に対し,100 倍の 400mm で作成した.飛翔筋
認できた.
による運動はモータと運動形式の変換機構を用い
5.
まとめ
て置換した.また,外骨格および翅の部分は弦を用
翅関節箇所の CT 画像より,翅の上下動に伴って
いて置換している.作成した胸部振動モデルを
伸縮する組織と胸部内側・外側に傾くカギ状の組織
Fig.1 に示す.
があることが確認できた.
胸部振動モデルにおいては,周波数増幅現象を再
現したモデルが作成できたと考えられる.
6.
1)
参考文献
砂田
博幸、白幡
淳、三宅
仁:間接飛翔筋
型昆虫の翅・外骨格接合メカニズムの解析, 日
本機械学会[No.047-1]北陸信越支部 第 42 期
総会・講演会論文集 147-148,2005
Fig.1 胸部振動モデル
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
大災害時診療支援システムの基礎研究
川畑 諒一*,織田 豊*,内山 尚志*,福本 一朗*
*
長岡技術科学大学医用生体工学教室
A basic study of medical assistant equipment during major catastrophe
Ryouichi KAWABATA*
Yutaka ODA*
Hisashi UCHIYAMA* Ichiro FUKUMOTO*
*Biomedical Engineering Laboratory, Nagaoka University of Technology
2.3.
はじめに
1.
使用機器
Table 1 に血圧測定と電池の消耗割合を調べるため
大災害時には多数の負傷者や,避難所生活により
に用いた血圧計を示した.
体調不良を訴える人が増加する.そのような状況下
Table 1
で電池切れや故障することなく簡便に血圧・体温・
機種名(社名)
卓上水銀血圧計 5G07E
(KOUSAN)
デジタル自動血圧計
HEM-806F(オムロン)
手首血圧計
EW3003(松下電工)
デジタル自動血圧計
HEM-737(オムロン)
電子血圧計
ES-P2000A(テルモ)
脈泊等のバイタルサインの計測が行え,かつ堅牢性,
操作性を備えた機器が開発されれば医師をはじめと
した救護者の負担は軽減される.
本研究では大災害時のバイタルサイン計測に最良
な方法,手段を検討するために,市販されている数
種類の血圧計を用いて計測時の電池消耗の割合,計
測時間,および機器の測定部位,計測原理の違いに
よる血圧値への影響を比較検討した.
2.
方
法
2.1.
被験者
測定機器
3.
結
3.1
血圧測定値
測定部位
測定方式
上腕
聴診法
指
振動法
手首
振動法
上腕①
振動法
上腕②
聴診法
果
午前 14 回分,午後 18 回分の其々の拡張期、収縮
被験者は実験に関して事前に説明を行い,同意を
期の平均値を Fig.1,Fig.2,Fig.3,Fig.4 に示した.
得た健常学生のボランティア 5 名とした.
140
血圧値[mmHg]
120
2.2.
測定方法
血圧値の測定については水銀柱,指式,手首式,
上腕式①,
上腕式②の計 5 種の測定を午前 14 日間(14
100
80
60
40
20
回計測)と午後 18 日間(18 回計測)行い,測定する
0
機器の順番はランダムとした.
水銀柱
各機器の血圧測定に要する時間及びアルカリ電池
Fig.1
血圧値[mmHg]
が消耗する割合を調べるために、測定 20 回毎に使用
した時の電池電圧を測定し,
それぞれの機器で計 200
回の電圧変化を調査した.血圧測定に要した時間は
各機器 5 回測定を行った平均の時間とした.
また,午前と午後の血圧値の関係を調べるために
Fig.2
1
手首
上腕①
上腕②
平均収縮期血圧値(午前)
140
120
100
80
60
40
20
0
水銀柱
Spearman の順位相関係数を求めた.
指
指
手首
上腕①
上腕②
平均収縮期血圧値(午後)
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
3)
血圧値[mmHg]
100
80
Fig.7 に1set につき 20 回使用した時の電圧値の変
60
化を示す.
40
1.65
20
指
上腕②
1.60
0
指
手首
上腕①
上腕②
電圧(V)
水銀柱
Fig.3 平均拡張期血圧値(午前)
100
上腕①
手首
1.55
1.50
1.45
1.40
80
1.35
60
0
40
20
1
Fig.7
2
3
4
5
set
6
7
8
9
10
血圧測定器の電圧値の経時変化
0
水銀柱
指
手首
上腕①
上腕②
考察
4.
Fig.4 平均拡張期血圧値(午後)
Fig.1 から Fig.4 及び順位相関図(Fig.5)より,血圧
値全体としては相関が見られるが,指式血圧計と水
統計学的解析
3.2
Fig.5 は血圧値の午前,午後の関係を調べた図であ
銀血圧計を比較すると大きな差があり,相関は見ら
る.収縮期及び拡張期の相関係数はそれぞれ
れなかった。また,指式以外の血圧計と水銀血圧計
r=0.7,r=0.9 であった.
との間には差異は見られなかった.
測定時間(Fig.6)に関しては手首式血圧計が最も速
130.0
収縮期 rs=0.7
いが電池消耗(Fig.7)は他機と比べると著しく低下す
拡張期 rs=0.9
110.0
午後平均血圧値
血圧値[mmHg]
電池消耗
る.指式血圧計の場合,電池消耗は手首式血圧計以
外と変わらないことから消費率は比較的良いと考え
90.0
られるが,測定時間において他機と比べると最も遅
70.0
い.
50.0
50.0
Fig.5
70.0
90.0
110.0
午前平均血圧値
130.0
5.
午前と午後の血圧値(収縮期、拡張期)の関係
まとめ
本実験結果より災害時に適当な方式は手首計測で振
動法を用いるのが最も妥当であると考えられた.し
3.3
血圧測定に要した時間
かし,血圧値の結果については被験者数が少ないの
Fig.6 に各機器 5 回測定時の平均時間を示す.最も
で,今後は被験者数を増やすことによるデータの蓄
測定時間が短いのは手首式であり,以降は上腕式①,
積及び電池消耗の測定を更に行う必要がある。また、
上腕式②,指式の順であった.
今後はこの基礎データを用いて実際の測定機器の開
+18.81
+7.91
+3.78
32.13秒
発についても検討していきたい。
47.16秒
36.26秒
6.
28.35秒
参考文献
[1] 横山 正義ほか:Clinical Engineering,臨床工学ジ
ャーナル,Vol.13 No.2 2002,秀潤社
手首式
Fig.6
上腕式①
上腕式②
[2]高血圧治療ガイドライン 2004:日本高血圧学会発
指式
行,初版 2004,ライフサイエンス出版
血圧測定に要した時間の平均値
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
加重加算法によるオフセット電圧の抑制
平栗 隆啓
渡邉 賢太
安藤 汐視
長野 優子
NOORAINI
竹本 裕一
大木 真
橋口 住久
山梨大学 工学部
Suppression of offset voltage by weighted sum of multiple amplifier outputs
Takahiro HIRAGURI, Kenta WATANABE, Shiomi ANDO, Yuko NAGANO, NOORAINI, Yuichi TAKEMOTO,
Makoto OHKI, Sumihisa HASHIAUCHI
Faculty of Engineering, University of Yamanashi
程式を同時に満足させるには,アンプ数 m はオフセ
1. はじめに
ットを 0 にしたい動作条件の数 n より 2 つ大きいこ
直流アンプのオフセット電圧とそのドリフトを抑
と(m = n + 2)が必要である.
制する方法の一つとして,複数のアンプの出力を重
みをつけて加算することで総合のオフセット電圧と
AMP1
pa1
RF
ドリフトを抑制することを試みた.
AMP2
pa2
ADDp
AMPm
pam
vi
2. 方法
SUT
+
図 1 において,共通の入力 vi に接続された n 個の
アンプの出力に pa1~nam(重み係数)を乗じ,加算
na1
回路で加算し,正負それぞれの和を減算回路で差を
na2
vo
DIFF
RF
−
ADDn
とる.いま,動作条件#1 における各アンプの出力オ
フセット電圧を v11∼v1m とし,重み係数を a1~am と
nam
すると,
m
∑
図 1 オフセットとドリフトを抑制する構成
(1)
ai v1i = 0
i =1
3. 実験
とするすべてが同時には 0 ではない ai の組が存在す
る.他の動作条件
温度ドリフトを除去することを目的として,
#k (k=1~n)についても同様に
0~50℃の間の 6 点でのオフセットを 0 にすることを
n≦m−1 であれば
m
∑
試みた.電圧利得 100 倍のアンプ 32 個用意し,全て
(2)
ai vki = 0
のアンプのオフセット電圧を同時に測定する.この
i =1
オフセットデータを基に,32 個のアンプから次の 3
とすることが可能である.すなわち,n 個の動作条
つの条件を満足する 8 個のアンプを選別する.
件下でのオフセットを 0 にすることができ,#1 から
1) 0℃,10℃,室温(約 23℃),25℃,40℃,50℃
#n への動作条件の変化に対してオフセットが 0 であ
において,式(2)を満足すること,
るからドリフトが除去できたことになる.正の ai は
2) 電圧利得係数 A≧1 であること,
pai,負の ai は nai である.
3) 入力換算ノイズ係数 Nv/A≦1 であること.
総合の電圧利得係数 A とノイズ係数 Nv はそれぞ
4.結果
れ次のようになる.
A = a1 + a 2 + L + a m
Nv =
a1 + a 2 + L + a m
2
2
2
(3)
図2は各アンプとグループ A,B,C,A+B+C の
(4)
オフセット電圧の温度依存性である.図3は組み合
わせ A,B,C,A+B+C のみを拡大して示してある.
A をできるだけ大きく,Nv をできるだけ小さくす
ることが望ましい.この二つの条件と式(2)の連立方
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
1500
入力オフセット電圧 [µV]
入力オフセット電圧 [µV]
1000
500
0
40
A+B+C
30
A
B
20
10
0
-500
-10
-1000
C
-20
0
25
温度
50
0
25
50
温度 [℃]
[℃]
図2 各アンプのオフセット電圧
図3 A,B,C,A+B+C のオフセット電圧
表 1 アンプグループの特性値
アンプ
グループ
図2~3
での表示
A
細い実線
B
破線
C
A+B+C
温度係数
オフセット VOFF
T(µV/℃)
@25℃(µV)
c
利得係数
A(倍)
Tc/A
入力換算
ノイズ比 Nv/A
VOFF/A
0.68
11.8
3.2
0.21
0.59
3.69
0.59
‐0.58
12.6
‐1.6
2.6
2.0
0.23
‐0.29
0.74
一点鎖線
0.98
4.85
‐0.80
太い実線
0.68
22.8
7.8
0.09
0.43
2.92
細い実線はグループ A,破線はグループ B,一点
されているが,VOFF/A はグループ C が最良となって
鎖線はグループ C,太い実線は A+B+C である.表
いる.
1はアンプグループの特性値である.図 2 において
A+B+C のようにアンプの数を増やすことによっ
単体アンプのオフセットは−800∼+1500µV,温度係
て,利得係数,温度係数,ノイズ係数は改善される
数は−5.29∼+3.45µV/℃の範囲にあるのに対して,
が,オフセットそのものは必ずしも小さくはならな
組み合わせアンプでは表 1 のように,オフセットは
い.オフセットを重視する場合には A,B,C に重
−1.6∼+22.8µV,温度係数は−0.58∼+0.68µV/℃に
みをつけて加算するなどの工夫が必要である.それ
改善されている.
によってオフセットは小さくできるが,利得係数の
表 1 の Tc /A,Nv/A,VOFF/A は組み合わせアンプの
低下やノイズ係数の増加を伴う.すべての特性値を
単位利得当りの温度係数,オフセット電圧,ノイズ
所望の値にする重みの設定についてはさらに検討が
係数であり,いずれも小さい方がよい.
必要である.
6.おわりに
単体アンプの入力信号ノイズ電圧にノイズ係数を
複数アンプの出力の重み付き加算を作ることによ
乗じたのもが組み合わせアンプの入力換算ノイズ比
って,オフセットとその温度係数を改善することが
である.
できた.
A+B+C は,各グループより Tc/A,Nv/A ともに改善
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
心拍リズムの日内変動に関する研究
荒井 善昭*,牛山 喜久**
*長野工業高等専門学校,**信州大学
A simplified detection method on circadian rhythm in heart rate variability
Arai Yoshiaki *, Ushiyama Yoshihisa**
* Dept. of Electronics and Computer Science, Nagano National College of Technology, Nagano
** Dept. of Biomedical laboratory Sciences, School of Health Science, Shinshu Univ., Matsumoto
1.
はじめに
方
2.
健康に対する関心の高まりから様々な健康器具,
法
心拍数と自律神経の活動との関係を調べるため,心
装置が開発されている.心拍数はヒトの生理的指標
拍数と心電図 R-R 間隔を同時計測を行い,その相関
の中で,最も代表的なものの一つであるが,短時間
を調べた。
の心拍数から運動の程度を測ったり,局所的リズム
次に健常被験者の概日心拍数変化の様子を知る
の乱れを捉えて心臓そのものの異常を検査するな
ため健常人 51 名について一日の心拍数変化の記録
どは盛んに行われている。しかし一日単位の比較的
をおこなった。個々の時系列データから,共通の特
長い周期から心拍数変動を評価し,そこに現れる自
性は見出しにくいため,すべての平均を算出し,さ
律神経の活動状況を推察し,健康を評価する試みは
らに高い周波数成分を除去しながら相関を見た。こ
少ない.
れによりどの周波数成分までが重要であるのか検
我々は腕時計タイプの 24 時間脈波計測計から自
討した。
律神経変動の記録および解析をおこなうための基
最後に徹夜をした場合の変動を見た。
礎データの検討および解析アルゴリズム決定を目
24 時間心拍数平均データと心電図 RR 間隔に
2.1.
的に研究をおこなっている。
よる自律神経変動の比較
表 1 心拍数と自律神経の働き
subject
(n=13)
RR - HR
HF - HR
L/H - HR
A
-0.992
**
-0.898
**
0.844
**
B
-0.989
**
-0.875
**
0.937
**
C
-0.890
**
-0.197
ns
0.908
**
D
-0.983
**
-0.823
**
0.955
**
E
-0.991
**
-0.968
**
0.830
**
F
-0.981
**
-0.900
**
0.760
**
Sensor of pulse
G
-0.976
**
-0.927
**
0.824
**
wave
H
-0.986
**
-0.869
**
0.687
**
I
-0.983
**
-0.831
**
0.723
**
J
-0.959
**
-0.588
**
0.758
**
K
-0.992
**
-0.978
**
0.959
**
今回正常心拍数変動に関する検討と,それを基に
L
-0.979
**
-0.878
**
0.663
**
徹夜を行い強制的にリズムを乱した場合の変化を
M
-0.994
**
-0.778
**
0.351
*
Pulse graph (PROA-4A2;SEIKO)
図 1 腕時計式脈波計測装置
Mean±SD
比較検討した。
*P<0.05,
1
-0.975±0.028
**P<0.01
-0.801±0.215
0.779±0.170
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
以前発表しているが,13 名の健常者について,
心拍数の変動に対する R-R 間隔より算出した HF 成
2.4.
徹夜賦課被験者の心拍数変化
同一の被験者 11 名に関して,普通の生活と,徹
分,LF/HF 成分との相関係数を各人について算出し
夜をした場合の心拍数データを 180 分周期の周波
たのが表 1 である。
数成分までの波形で比較した。
心拍数は交感神経の働きを示すといわれる
LF/HF 成分と正の相関が見られることがわかる[1]。
カットオフ周波数と相関係数
2.2.
100
100
95
10_8ji_tetsu
(BPM)
75
80
H.R.
(BPM)
H.R.
85
70
10_8ji
90
D
E
85
90
80
95
70
75
65
60
65
55
60
50
55
0
50
0
9:00
200
400
600
800
time
1000
(min)
21:00
15:00
1200
3:00
200
400
15:00
9:00
1400
600
800
time
(min)
21:00
1000
3:00
1200
1400
9:00(hr)
9:00(hr)
図 4 通常生活心拍(D)と徹夜時心拍数(E)
図 2 心拍数変動平均
午後の 3 時くらいまでは両者は非常に一致した
かたちであるが,その後差が大きくなっているのが
Correlation Coefficient
1.00
わかる。
0.95
3.
0.90
果
心電図 RR 間隔から求めた自律神経変動と,心拍
0.85
A
数から求めたデータの比較から,心拍数変化はおお
0.80
むね自律神経の変動を反映しているものと考えら
れる。また変動の周波数成分は,周期およそ 3 時間
0.75
0
50
100
Cutoff Frequency
150
200
250
までの低周波数成分が,概日リズムの主要な成分で
-6
(×10-6
(×
10 Hz)Hz)
あると考えられる。異常を示す指標の一つとして,
図3
一日を通した心拍数波形の振幅が低下することが
51 名の健常人の 24 時間心拍数を平均した時系列
考えられる。
データを,図 2 に示した。平均値データの高い周波
数成分を除去しながら,平均値データそのものとの
4.
相関を見たのが図 3 のグラフである。 グラフの A
まとめ
今後自律神経の異常を示す患者などのデータを
で示した位置より右側で比較的高い相関で安定し
検討することにより,今回の基準が正しいのか検討
ていることがわかる。
2.3.
結
していく必要がある。
5. 参考文献
1. Task force of the European Society of Cardiology and
the North American Society of Pacing and
Electrophysiology: Heart rate variability: standards of
measurement, physiological interpretation and
clinical use, Circulation, Vol.93, pp.1043-1065,
(1996)
正常心拍数リズム変動検討
正常の心拍数変化の一般形をとして 2.2 の結果に
加え,睡眠中にその深度変化がおよそ 90 分周期で
起こることを意識し,今回は両者の間を取り 180 分
周期の成分までを残したデータとすることとした。
1
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
振幅圧伸法による
振幅圧伸法による電子聴診器
による電子聴診器の
電子聴診器の最適化
○鈴木隆之,大嶺賢一,鈴木
裕,服部
遊,石川稜威男
山梨大学大学院医学工学総合教育部
Optimization of Electronic Stethoscope by an Amplitude Compansion Method
T. SUZUKI, K. OHMINE, Y. SUZUKI, A. HATTORI, I. ISHIKAWA
Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering, ES-B, University of Yamanashi
1.はじめに
聴診器の性能を評価する際に重要な点は,微弱
な病変による音を聞き取ることができることであ
ると云われている.しかし,人の聴覚特性にはマ
スキング作用があり,大きな音に付帯した小さな
音は聞き取りにくい性質がある.この状況を改善
するため,現在いくつかのメーカーから電子聴診
器が発売されている.しかし,これらは基本的に
信号を線形増幅するものであり,大きな音の部分
をクリップさせても,微少な音を相対的に大きく
する作用は小さく,聞き取りを改善する効果は限
定的である.そこで,人の聴覚器官における非線
形増幅を参考にした振幅圧伸法1)を信号処理に用
い,微弱な病変による音をより容易に聞き取るこ
とができる電子聴診器の開発に取り組んでいる.
本報告では,振幅圧伸法を適用した電子聴診器の
構成と,信号処理の特長について示す.
は閾値以上では圧縮,以下では伸長という処理を
行い,ノイズの影響を減らしている.振幅圧伸処
理の入出力関係を図 1 に示す.①は n =1,②は vc
= vmax として n =0.6 とした場合であり,③は 60dB
に相当する値に vc を設定し,それ以上で n =0.6,
それ以下で n =2.5 とした場合である.実際に聴診
器として使う場合には,n と vc の値を変化させ,
最適値を求めて設定する.
②
①
③
図 1. 振幅圧伸法の入出力関係. ①未処理
2.振幅圧伸法
人が感じる音の大きさ S と音の強度 I の関係は
StevensとDavisによってS = k I 0.3 であたえられて
いる.2)ここで k は定数で被験者や装置に依存す
る定数である.つまり,聴覚器官で小さな音ほど
増幅率を高める処理を行い,60 dB に及ぶ音圧帯
域の音を約 20 dB に圧縮して知覚している.この
人の音圧帯域を圧縮する機能をモデルとし,次の
式(1)の処理を行う.
w = sgn( v ) c | v / vc | n
②振幅圧縮(n =0.6) ③閾値60 dB以上では n =0.6
で圧縮,それ以下では n =2.5 で伸長.
3. 振幅圧伸型電子聴診器の構成
振幅圧伸型電子聴診器の構成を図 2 に示す.生
体音をチェストピースに取り付けたマイクで電圧
信号に変換し,ディジタル変換した後で振幅圧伸
処理を施し,アナログ変換後増幅してヘッドフォ
ンに出力する.また,本研究では点線で囲んだ部
分に TI 社の DSP 評価ボード DSK5510 を用いている.
(1)
ここで,v は入力する音圧に相当する電圧信号の
瞬時値,w は圧縮・伸長後の信号である.また,
sgn( v )は符号関数で v の符号を返す.cを変える
ことで線形増幅率を調節し,n を変えることで振
幅帯域の圧縮・伸長の程度を調節する.ここで,
0<n<1 で圧縮,n>1 で伸長作用となるので n を圧
縮・伸長係数と呼ぶ.また,vc は圧縮・伸長の切
替を行う閾値である.聴診器では病変の音以外に
微小なノイズが含まれているため,振幅圧縮をす
るとそのノイズも大きく増幅される.そのため病
変の音を聞き取りにくくなる.そこで,本研究で
生体音
マイク
音圧帯域圧縮処理
D/A 変換
アンプ
アンプ
A/D 変換
ヘッドフォン
図2.処理の構成.
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
4. データ処理結果と考察
現在,聞き取りにくい特徴的な病変を含む初期
病変データを所持していないため,呼吸音のCD
音源3)を使用している.しかしこの音源の音は病
変に伴う音が顕著であり,振幅圧伸処理を行う必
要がなかった.
そこで病変に伴う音が小さな状態であると仮定
し,「健常者の肺胞呼吸音」に「肺線維症」の 320~
5120 Hz の周波数帯域(呼吸音以外の部分:図 3)
の振幅を 1/20 に減衰させたものを合成し作成し
た.ここで,「肺線維症」を選んだ理由としては,
不可逆的であり早期発見の必要な病変であること,
呼吸音を含まない周波数帯域に病変に伴う音があ
り病変に伴う音のみが抽出できることからである.
また,1/20 の減衰率は,病変に伴う音が僅かに聞
こえる状態となるように選んだ.
5.まとめ
聴診器を用いた診断においては,大きな音に付
随する病変に伴う小さな音を聞き取ることが重要
であるという点に着目し,非線形増幅により小さ
な音の増幅率を相対的に高める方法を用いて電子
聴診器の開発を行っている.初期病変データを模
したデータを作成して振幅圧伸処理の有用性を確
認したが,今後は,実際の病変データで確認を行
うことが必要であり,医師の協力を得てより有用
で使いやすい電子聴診器の開発を行いたいと考え
ている.
2000
a b
shoki/20-5_6_7_8
1500
1000
Amplitude
500
0
-500
-1000
-1500
-2000
0
20000
40000
60000
80000
100000
120000
140000
160000
DataNumber
図 4.作成した初期病変の周波数帯域
320~5120 Hz での時間変化.
2000
A B
shoki/20-tcomp0.6_2.5_60-5_6_7_8
1500
1000
図 3.肺線維症の周波数帯域
作成した初期病変の全周波数帯域に対し,振幅
圧縮・伸長処理を行った.その処理前と処理後の
波形を比較したが,全周波数帯域で表示した場合
には違いが見られなかったので,周波数帯域 320
~5120 Hz を抜き出したものを図 4,図 5 に示す.
ここで,x 軸はデータ点数(時間に相当)
,y 軸は
振幅を示す.図 4 は作成した初期病変のデータで
あり,図 5 は閾値 60 dB 以上では圧縮係数 0.6 で
圧縮,それ以下では圧縮係数 2.5 で伸長したとき
のデータである.なお,処理後のデータの電力と
処理前の電力とが等しくなるように音量を合わせ
てある.この2つの図から,処理する前には小さ
な信号が(図4:a,b 部)
,音圧帯域圧縮・伸長処
理により図5の A,B の部分のように増幅されてい
ることがわかる.このデータの音を実際に試聴し
比較すると,後者では病変に伴う音を明瞭に聞き
取ることができることを確認した.
500
Amplitude
320~5120 Hz での時間変化.
0
-500
-1000
-1500
-2000
0
20000
40000
60000
80000
100000
120000
140000
160000
DataNumber
図 5.音圧帯域圧縮処理後の作成した初期病変の
周波数帯域 320~5120 Hz での時間変化.
(閾値 60 dB 以上では圧縮係数 0.6 で圧縮,
以下では圧縮係数 2.5 で伸長)
.
参考文献
1) 石川稜威男:聴覚特性に倣った音圧圧縮法とそ
の応用, 電子情報通信学会技術報告,
EA 2001-47,2001.
2) B.J.Moore: An Introduction to the Psychology of
Hearing, 5th-EDITION, pp.131-133, ACADEMIC
PRESS, 2003.
3) 石原恒夫:CD による聴診トレーニング,
南江堂, 2003.
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
呼気中水分の光ファイバーセンシングによる無呼吸症候診断と
声帯機能失陥者用光ファイバー無音声マイクロホンの開発
シャビーブ
ヌーリ, 中西
拓也, 本間
聡, 森澤
正之, 武藤
真三
山梨大学大学院医学工学総合研究部
Development of Optical Diagnosis for Apnea-Syndrome and Devoiced Microphone for
Verbally Handicapped People Based on Plastic Optical Fiber Moisture Sensing
Noori Al-shabib, Takuya Nakanishi, Satoshi Honma, Masayuki Morisawa, Shinzo Muto
Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering, University of Yamanashi
1.
はじめに
吸波形の光センシングが可能となる[2]。
最近,環境の悪化などに伴う呼吸不全や無呼吸症
Core: P MMA 0 . 5mm
候群の患者などが急増していて社会問題の1つと
Clad: HEC/ P VDF(4 : 1)
Change in lig ht inten si ty (rel .)
なっており,その状態の常時あるいは夜間モニタリ
ングが必要となっている。そのためには、負担をか
けずに,かつ,簡単に取り扱える安価な呼吸状態モ
ニタリングシステムの開発が不可欠と考えられる。
そこで本研究では,呼気中の水分を高速,高感度に
検 出 で き る プ ラ ス チ ッ ク 光 フ ァ イ バ ー (Plastic
Optical Fiber:POF)水分センサーを開発し,無呼吸症
候などの異常呼吸の光診断について検討した。また,
5
Exh al e
In h ale
Exh al e
0
そのマルチセンサー化による無音声呼吸時の口の
Inh ale
1
40
20
60
Rela tive hu midi ty (%RH)
図 1.
形状に対する水分分布の光センシングパターンを
80
呼吸波形のセンシング原理
3. 無呼吸状態のモニタリング
検出し,声帯機能失陥者のための光ファイバー無音
実験系を図2に示すが,極めてシンプルでかつ非
声マイクロホン開発の可能性についても追求した。
接触な測定システムとなっていることがわかる。
2.
POF 水分センサーの構造と動作原理
本センサーは呼気水分による POF 型センサーヘ
セ ン サ ーヘ ッ ド
( 鼻 呼吸 用 )
ッドのリーキー構造から導波構造への変換を用い
ている。その構成としては,市販の POF(PMMA,
POF
LED 光
n1=1.49)の一部(長さ数 cm)のクラッド層を適当な有
出 力光
機溶媒で溶かして除去し,代わりに呼気中水分に対
( 口 呼吸 用 )
して膨潤性を示すポリマー(セルロースを含む)を
センシングクラッド層として数μm の厚さでディ
図 2.
ップコートした。その際,膨潤性クラッド層の初期
無呼吸状態測定システム
鼻口から約 2cm 離れた鼻呼吸用か口呼吸用のい
屈折率 n2 をコアの屈折率 n1 よりわずかに大きく設
ずれかのセンサヘッドに息がかかると透過光強度
定しておくと,検知対象の水分がない状態では
の変化を生ずるので,それをフォトダイオードで受
n2>n1 でリーキー構造となるが,水分が存在すると
光し、毎 0.05 秒サンプリング値をとって透過光強
n2<n1 の導波構造に変化するので出力光強度は急激
度波形を測定する。ここでは,無周期波形が 30 秒
に増加する[1]。その応答は1秒以下と短いので,図
間続いたときを無呼吸状態として診断した。その1
1に示すように鼻口付近の水分変化にも応答し,呼
1
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
ろ無音声母音のみであるが,今後無音声子音の認識
Transm
itted Light
Intensity
[rel.]
Transmitted
Light
Intensity[rel.]
例を図3に示す。
の可能性まで追求し,これに音声合成回路を組み合
Stop breath
わせたシステムの構成を目指したい。
Transmitted Light Intensity[rel.]
1.5
1.5
Exhale breath
1
1
0
20
40
40
Time[sec.]
Time
[sec]
図3.
無呼吸状態波形の1例
4. 光ファイバー無音声マイクロホンの検討
3.5
:Sensor1
:Sensor2
:Sensor3
3
2.5
2
1.5
1
Devoiced Breath
0.5
0
上述の結果を応用してセンサーヘッドのマルチ化
1
を行うと,無音声呼吸時の口の形状に対する水分分
Transmitted Light Intensity[rel.]
れは声帯機能失陥者のための光ファイバー無音声
マイクロホン開発につながると考えた。図4にモデ
ル化したその構成図を示す。また,図5は無音声母
音 あ と い を例にとって各センサーヘッドの
応答例を示したものである。
センサー
ヘッド
検出 器
PO F
3
4
Time[sec.]
無音声呼吸
布の光センシングパターンの検出が可能となる。こ
L ED光
2
あ
5
6
7
のパターン
2.5
:Sensor1
:Sensor2
:Sensor3
2
1.5
1
Devoiced Breath
0.5
0
出 力光
1
2
3
4
5
Time[sec.]
6
7
無音声呼吸
い
のパターン
図5.無音声母音
あ
と
い
の応答
信 号 処 理 系へ
1cm
セ ンサ ー
ヘ ッド
5. まとめ
No .3
No .2
No .1
高感度高速化した POF 型光水分センサーを基に
した「無呼吸症候の光診断」と「声帯機能失陥者の
2cm
ための光ファイバー無音声マイクロホンの開発」に
ついて検討した。本システムは簡便かつ安価に構成
できるので,実用応用も十分に期待できる。
図4. 光ファイバー無音声マイクロホンモデル
謝辞
本研究の一部は文科省科学研究費(16560362)
無音声母音 あ の場合は各センサーヘッドの出力
の補助による。
光強度は全体に高く,なかでも中心の N0.2 が強い
参考文献
こと,無音声母音 い の場合は呼気が下側に出る
1) S. Muto, O. Suzuki, T. Amano and
ので最下部のセンサーヘッド N0.1 の出力光強度の
A plastic optical fibre sensor for real-time humidity
み高く,他は非常に弱い,などの特徴が観測できて
monitoring, Meas. Sci. Technol. 14, 746-750 (2003).
いる。無音声母音 あ ∼ お に対する波形パタ
2) M. Morisawa and S. Muto: A Novel Breathing
ーンをニューラルネットワークで認識処理したと
Condition Sensor Using Plastic Optical Fiber, 2004
ころ,80%以上の認識率で区別できた。現在のとこ
IEEE SENSORS, 1277-1280 (2004).
2
M. Morisawa:
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
振幅圧伸法を
振幅圧伸法を適用した
適用した補聴器調整補助装置
した補聴器調整補助装置の
補聴器調整補助装置の要素開発
○大嶺賢一, 加藤隆也, 鈴木隆之, 鈴木
裕, 服部
遊, 石川稜威男
山梨大学大学院医学工学総合教育部
Elemental study of an amplitude compansion method that facilitates
the adjustment of a hearing aid
K. OHMINE, T. KATO, T. SUZUKI, Y. SUZUKI, A. HATTORI, I. ISHIKAWA
Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering, University of Yamanashi
1. はじめに
現在日本では約 800 万人の難聴者がおり,
補聴器の調整が不良のため所有者の 70 %は使
用していないと言われている.そこで我々は
補聴器の調節を補助する手段として,補聴器
の出力を難聴者の聴覚特性に合わせて伸長
し,その音を聴くことで健聴者が補聴器のフ
ィッテイングを的確に行う装置の開発を行
うことにした.1,2)難聴者の聴覚特性をシミ
ュレーションする方法としては,AGC 回路 3)
や包絡線 4) を用いる方法があるが,本研究で
は波形の歪みを抑えることができる音圧帯
域伸長法を利用した.以下,音圧帯域伸長法
を用いた補聴器調整補助装置の構成と方法,
並びに被験者による試聴実験と結果につい
て記す.
2. 補聴器調整補助装置の構成と方法
補聴器調整補助装置の構成を図 1 に示す.
先ず,補聴器の出力を得るために,適切な音
源を用意して再生し,補聴器に入力する.そ
の出力を外耳道を模したカプラを使用して
採音し,A/D 変換して PC に取り込む.次いで,
予め聴力試験をしておいた使用者の聞こえ
に合わせて難聴処理を行う.その処理した出
力を再生し,健聴者である補聴器調整者が聞
き取る.なお,この処理では,外耳道を模した
装置(カプラ)と健聴者の外耳道の二つが重
なるので,健聴者の外耳道の周波数特性をキ
ャンセルする必要がある.
片方の聴力は正常で他方の耳が中等また
は高度難聴である人の聴力特性 5,6)を参考に
して,次の式を適用して難聴処理することと
した.
w = sgn(v)c | v |n
こ こ で ,sgn(v) は 符 号 関 数 で v の 符 号 を 返
す.c と n は定数であり,それぞれ増幅率と伸
長の程度を与える.式(1)を適用する処理を
振幅圧伸法と呼ぶが,本研究では難聴者の聴
力特性に合わせて n > 1.0 とし,伸長処理の
み使用する.
3. 実験結果と考察
一般に難聴者は,老人性難聴など両耳共に
聴力が低下していため,正常耳と比較する方
法は使用できない.そこで我々は,最近の補
聴器のフィッテイングに使われる方法 7)を参
考にして,健聴者と難聴者の最小可聴値
(HTL)と快適値(MCL)から難聴者の聴力
特性を求めることにした.
3.1 聴力試験
聴力試験結果を図 2 に示す.騒音レベル 24
dB SPL 以下の環境下で聴力試験を行った.◆
と◇は7人の健聴者の最小可聴値と快適値
の平均値であり,▲と△は,実験に協力して
頂いた難聴者の最小可聴値と快適値である.
音源
再生
難聴処理
補聴器
周波数の校正
採音
D/A変換
A/D変換
再生
図 2 健聴者と難聴者の聴力検査結果.
図 1 補聴器調整補助装置の構成
(1)
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
最小可聴値から重度難聴者であること,可聴
周波数帯域は 125 Hz~500 Hz と狭いことが
わかる.
この結果を元にして,難聴処理するための
伸長係数を求める.横軸に難聴者の聴力を取
り,縦軸に健聴者の平均聴力を取る.◆,△と
□は,それぞれ 125 Hz,250 Hz と 500 Hz に
おける最小可聴値と快適値をプロットした
ものである.それぞれの傾きから式(1)の伸
長係数 n を求めると,125 Hz では n = 2.7, 250
Hz は n = 1.9, 500 Hz は n = 3.4 となる.
等度の難聴者が望ましいと考える.また今回
の実験は 1 音節の音声で行ったが,ゆっくり
とした会話では意志の疎通が可能であった.
従って,実験には抑揚のある多音節の音声を
用いることが必要である.
Level in average of normal-hearing subjects [dB SPL]
120
125Hz
250Hz
500Hz
100
80
60
40
20
図 4 音節「な」の伸長処理例.
0
0
20
40
60
80
100
120
Level in hearing-impaired subject [dB SPL]
図 3 難聴特性
3.2 試聴実験結果
調整補助装置の有効性を確認するため,1
音節の音声を用いて,補聴器使用者と健聴者
の聞こえの比較を行った.難聴者には補聴器
を装着した状態で音源の最大再生レベル 105
dB SPL とし再生した.その結果,正答率は
18 %となった.これは日常会話ができるレベ
ル(65 %)と比べてはるかに低い正答率となっ
た.また補聴器出力を難聴処理した音声を健
聴者が聞き取ることことはできなかった.
そこで一連の音声波形を比較検討した.語
音「な」の伸長処理前と後の波形を図 4 に示
す.(a)は補聴器に入力するオリジナルの波
形であり,(b)は被験者の可聴周波数帯域 80
~640 Hz の BPF を通した波形である.この
難聴者の可聴帯域外の成分が多いことがわ
かる.(c)は補聴器の出力であり,振幅が一
定であることから判るようにクリップして
いて,子音母音の区別がつかない.(d)は(c)
の出力を 80~640 Hz の BPF を通した波形で
あり,(e)は(d)を難聴者の聴力に合わせて伸
長処理した結果である. (e)は本来, (b)に等
しいはずであるが,方絡線が全く異なってい
る.以上の結果から,クリップさせた結果か
らは有効性の確認ができないこと,従って中
4. まとめ
本研究では,健聴者が補聴器を調整する際
に使用者の聞こえを確認するための補助装
置の開発を目指している.そこで補助装置の
仕様を検討し,その装置の有効性を確かめる
方法を検討した.今後は補聴器を使用中の中
等度の難聴者に協力してもらい補助装置の
有効性を確認したい.
参考文献
1) I. Ishikawa, A. Takeuti, T. Murano, K.
Ohmine, T. Kato, Medical Engineering and
Physics, pp.59-62, 2005
2) 加藤,村野,大嶺,石川,日本福祉工学
会第 7 学術講演会講演論文集,pp.17-18,
2004
3) P. Duchnowski and PM. Zurek J. Acoust.
Soc. Am. 1995; 98:pp3170-3081
4) B.C.J. Moore and B.R. Glasberg J. Acoust.
Soc. Am. 1993;64:pp2050-2062
5) B.C.J. Moore, “An Introduction to the
Psychology of Hearing”, ACADEMIC
PRESS, 2003
6) B.C.J. Moore, B.R. Glasberg and D.A.
Vichers J Acoust. Soc. Am. 1999;106:p901
7) H. Hosoi, T. Yoshiaki, Auris Nasus Larynx
26, pp.22, 1999
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
振幅圧伸法を適用した生体音による自動検査装置の要素開発
○鈴木裕,大嶺賢一,鈴木隆之,服部遊,石川稜威男
山梨大学大学院医学工学総合教育部
Elemental study of health monitoring equipment by an amplitude compansion method
Y. SUZUKI, K. OHMINE, T. SUZUKI, A. HATTORI, I. ISHIKAWA
Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering, ES-B ,University of Yamanashi
1.はじめに
2. 検査装置の特徴
2.1 聴覚特性を考慮した検査装置の処理の流れ
人による音の処理過程を参考にして考えた音響
検査装置の流れを図1に示す.基底膜における周波
数分割に対応させて周波数解析(FFT 解析)を行
う.NNW の入力層ニューロン数に合わせて周波数
解析結果のスペクトル数を削減するためデータの
平均化を行うが,その際,音の高さに関する聴覚特
性を参考にして配分した.聴覚における非線形増幅
をモデルとし,周波数解析したデータを振幅圧伸法
を用いて非線形に増幅させる.その結果を脳に対応
させた NNW に入力し、学習・判断させる.
音響信号
鼓膜で機械的な振動へ変換
マイクで採音、電圧信号へ変換
デジタル信号へ変換
基底膜で周波数分析
周波数解析
外有毛細胞で非線形な増幅
音圧帯域の圧縮処理
入力層
X1
V1,1
中間層
出力層
Y1
W1
入力データ
ニューラルネットワーク(NNW)を用いた音響検
査装置は,検査対象の音響的な特性を解析する必要
がなく,いわばブラックボックス的な取り扱いがで
きるメリットを有している.また,単純なパターン認
識では判断できない検査対象を比較的高い精度で
処理することが可能である.1)我々はこれまでに,聴
覚器官の非線形増幅作用をモデルとし,周波数解析
したスペクトル振幅を圧縮処理して NNW に入力・
判断させる装置を開発して,熟練者でも判断が難し
い工業製品の欠損を95%を越える精度で検査可
能なことを確認している.2)このような利点を有す
る音響検査装置を適用し,生体音による異常の有無
を自動的に判断させる装置の開発に着手した.医師
は,心音,呼吸音,血流音などの生体音を聞き取って
病変の有無を判断するが,それには経験が必要とさ
れる.それは,一般に病変に伴う信号のレベルが心音
などに比べて低いためであり,従来の音響検査装置
では判断できないことが多いが,それを打破するこ
とを目指している.本報告ではこの検査装置の処理
方法と特長について示す.
2.2 NNW の構成
NNW は脳の仕組みを模倣したコンピュータシミ
ュレーション上のネットワークで,判断基準となる
教師信号を学習させることで類似したデータを判
別することができる.本研究では図2のような三層
型フィードフォーワード NNW を用い,学習則には
バックプロパゲーションを用いた.出力層ニューロ
ン数は1個(0or1),中間層ニューロン数は5個,入
力層のニューロン数は 100 個である.学習用データ
セット,教師信号により学習させ,学習に用いない
評価データセットにより正答率を求め,評価する.
Z
Xi
Vj,i
Wj
Yj
YJ
WJ
XI
VJ,I
図 2. 三層型フィードフォワード NNW
2.3 振幅圧伸法
NNW を用いた音響検査器では,音響信号を周波
数解析し,そのスペクトル強度または振幅を入力し
ている.しかし,人の聴覚器官には非線形な増幅作
用があり,60 dB SPL の音圧帯域は約 20 dB に圧縮
されてパルス化され,脳で処理されている.この非
線形な増幅機能を損傷すると難聴となる.従って,
従来の振幅を NNW に入力して処理する方法は難聴
状態で判断していることに相当する.そこで,人の
感覚量としての音の大きさ(loudness)Sf [sone]が
音の強度を If [wb/m2]の 0.3 乗に比例する3)ことを
考慮して,次式の非線形処理することとした.
(1)
S f = kI nf [sone]
ここで k と n は定数である.図 3 は圧縮係数 n を変
えたときの振幅スペクトルを表している.圧縮する
と小さな信号が相対的に大きくなる.従って判断に
必要な信号成分が小さな場合には,圧縮処理すると
判断がし易くなることがわかる.
1
0.8
Amplitude [arb.units]
n=0.1
0.6
内有毛細胞で神経パルスへ変換
0.4
脳で判断
ニューラルネットワークで判断
n=0.4
0.2
図1. 人が音響信号を判断する場合の処理の流れ
と,それを模した診断装置のデータ処理の流れ
0
n=1
0
5000
図 3.圧縮の効果
10000
Frequency [Hz]
15000
20000
第25回日本生体医工学甲信越支部大会(Sep.2005)
2.4 周波数軸の変換
音の高さに関係する聴覚特性を参考にして,
「mel」「bark」「ERB」「ERBs」に周波数軸変換し,
平均化する.一例として mel に変換して処理する方
法について示す.mel とは f =1000[Hz],40dB SPL の
純音を 1000 mel とし,2 倍の高さを 2000 mel,1/2 の
高さを 500 mel としたもので式(2)で表される.
Mel=2595 log10(1+ f /700) [mel] (2)
周波数軸を式(2)で換算して,その帯域を単純に 100
等分する.次にそれぞれの帯域内のスペクトル強度
の平均値を求め,NNW に入力する.
図 4 は周波数軸を線形,mel,対数の各スケールで
表示した周波数スペクトルである.対数変換すると,
線形表示した場合と比べ,低い周波数部分が大きく
拡大されていることがわかる.また,mel は線形に比
べると低い周波数が拡大されているが,対数と比べ
るとその拡大の割合は小さく,線形と対数の中間的
なスペクトル分布になっていることがわかる.判断
に必要な信号が高い周波数領域に有る場合には線
形,低い場合には対数処理が望ましく,メルは両者の
中間に位置する.
1
表 1. 各周波数軸,圧縮率による正答率[%]
n
線形
mel
ERBs
bark
0.1
0.4
1
正答率[%]
0.7
0.6
0.5
0.4
平均化なし
線形
mel
0.1
0
2000
4000
6000
8000
10000 12000
Frequency[Hz]
14000
16000
20000
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
圧縮率n
(b)mel
0.8
図 5. 圧縮率による正答率
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
500
1000
1500
2000
Mel [mel]
2500
1
3000
3500
4000
"c01010_dfn_f.txt"
0.9
(c)対数
0.8
Amplitude [arb.unit]
75
0
"c01010_dfn_m.txt"
0.9
Amplitude [arb.unit]
18000
85.5
77.75
87.5
85
80
0.2
1
91.5
87.5
87.75
90
0.3
0
91.5
93
91.75
95
(a)線形
0.8
85.5
86
84.75
対数
85.75
87.75
84
100
"c01010_dfn_f.txt"
0.9
Amplitude [arb.unit]
分である mel,ERBs とし,かつ圧縮したときに,正答
率は相対的に高くなった.
図 5 に mel,線形,NNW の入力層ニューロンを 4096
点とし,平均化しないときの圧縮率の違いによる正
答率を示す.最も高い正答率が得られるのは平均化
せず,圧縮したとき(n=0.4)であるが,平均化しないと
きはデータ点数が多く,処理時間がかかり,ま
た,NNW の設定によってローカルミニマムに陥る
ことが平均化を用いた場合よりも多かった.一方,周
波数軸を mel にすると,正答率は上がり,かつ,圧縮す
ることで,より判断が正確になった.
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
100
1000
Frequency[Hz]
10000
図 4. 周波数軸変換の効果
3. 検査結果と考察
検査対象として,誰が聴いても容易に判断ができ
るものは使わないこととした.熟練した人でなけれ
ば判断が困難なもの,または熟練した人でも困難な
ものに限定すると,検査対象の選定が難しかった.
ここでは,コーラ瓶を用い,飲み口の部分を欠いた
ものを欠損として,瓶を叩いたときの打音とそのエ
コーの違いにより欠損の有無を診断する.
それぞれの打音を各周波数軸変換を用いて処理
をし,圧縮率を変化させたときの正常,欠損の診断結
果を表 1 に示す.周波数軸を線形,対数の中間的な配
4. まとめ
病変による生体音の差異は微小であり,その違い
を判断するには経験が必要とされる.また,生体音に
よる音響検査は患者にかかる負担の少ないこと,検
査装置が小型・軽量で低コストであること等のメリ
ットも大きい.加えて,多点を同時計測することがで
きるので,診断の精度を高めることも期待できる.そ
こで心音などの大きな正常音に付帯する小さな病
変信号を検出することができること,検査結果を処
理する最適条件を自動的に設定できること等を目
標として検査装置の開発を始めた.このような自動
検査装置の実現には,周波数軸変換と振幅圧縮とを
組み合わせて最適条件を求める方法が有効である.
今後,様々な生体音に適用することにより,病変の早
期発見に役立つことが期待される.
参考文献
1) R. P. Gorman, T. J. Seinowski : Analysis of Hidden Units in
a Layered Network Trained to Classify Sonar Targets,
Neural Networks Vol. 1, pp. 75-89,1988
2) 鈴木裕 : 音圧圧縮を用いた打音検査器の評価Ⅲ, 日
本福祉工学会第 7 回学術講演会講演論文集, pp. 27-28,
2004.11.27
3) Brian C. J. Moore : An Introduction to the Psychology of
Hearing ACADEMIC PRESS, pp. 72-74, , 2003
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
日常生活動作に要する上肢の可動域測定
中村 祐敬*,杉山 肇*,浜田 良機*,大竹 義人**,服部 麻木**,鈴木 直樹**
*山梨大学医学部整形外科学教室,**東京慈恵会医科大学高次元医用画像工学研究所
Measurement of range of motion for daily life actions
Masahiro Nakamura*, Hajime Sugiyama*, Yoshiki Hamada*, Yoshito Otake**, Asaki Hattori**, Naoki Suzuki**
* Department of Orthopaedic Surgery , University of Yamanashi.
**Institute for High Dimensional Medical Imaging Research Center for Medical Sciences , Jikei University School of Medicine.
はじめに
1.
上肢の日常生活動作で必要とされる最大関節可動
域は、静止している状態の各々の関節を万能角度計を
用いて計測したものに基づいている。複数の関節が密
接に連携して日常生活動作が行われるが、その角度
は動作の中で連続的に変化するため、各動作におけ
る可動域は従来の方法では計測できない。そこで歩行
解析に利用されている光学式三次元位置計測システ
ムを用いて、日常生活動作での肩、肘、前腕、手関節
の可動域を同時かつ連続的に計測したので報告す
る。
2.
方 法
計測では各動作において被験者の動作の妨げにな
ってはならないように、被験者が身につけるものは小型
軽量である必要がある。また多角的かつ連続的に計測
が可能で、なおかつ測定精度はできるだけ高いことも
必須条件である。その条件に当てはまるものとして光
図 1 ①VICON を用いてマーカーの3次元位置を得
る。②それぞれのマーカーはできるだけ骨と体表が近
い部位に設置してあり骨との相関は取れている。③簡
単な動作により関節中心を求める。④関節中心とマ
ーカーの位置より関節角度が計測する。
学式三次元位置計測システムを選択した。
使用した光学式三次元位置計測システムは Vicon
Motion Systems 社製 VICON モーションキャプチャー
今回の被験者は 22~48 歳の健常男性 7 人で、対象
システム(以下 VICON)で、計測は肩甲骨、上腕骨、前
とした動作は①第一ボタン掛け②洗顔③洗髪④書字
腕、手にそれぞれ 3 個、3 個、3 個、2 個のマーカーと
⑤ドアのノブを回す、の 5 つである。
呼ばれる赤外線を反射するφ14mm の小球を貼り付け
3.
て行う。これらは軽量で内蔵電源を必要とせず、被験
結 果
者の動きを妨げることがないので自然な動きが可能で
それぞれの動作における肩関節、肘関節、手関節
ある。サンプリングレート 120Hz の 6 台の赤外線カメラ
の可動域を被験者ごとにリアルタイムに測定した。各々
により得られた画像をもとに各マーカーの位置座標が
関節の可動域で最大値を示す動作は、肩関節屈曲:
自動で計算される。各々のマーカーは体表の骨から近
書字(84.7゜)、肩関節外転:洗髪(69.3゜)、肘関節屈曲:
い位置に設置されており、専用に開発したソフトウェア
洗髪(133.7゜)、手関節掌屈:第一ボタンのボタン掛け
を用いて処理することにより肩関節、肘関節、手関節の
(17.0゜)、手関節背屈:洗顔(42.9゜)、手関節橈屈:洗顔
可動域を測定することが可能になる(図 1)。
(21.9゜)、手関節尺屈:ドアのノブを回す(27.4゜)であった
(表 1)。
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
光学式三次元位置計測システムは動作によってはカメ
表 1 各動作の最大値の平均値 (橙色は各動作の最
大値を示す)
ボタン掛
け
ドアノブ
を開ける
肩屈曲
4.27
肩外転
ラからマーカーが隠れるためデータの欠落を招く欠点
がある。しかし、動作を行う方向やマーカーの設置位
洗顔
洗髪
書字
28.03
43.23
29.12
84.68
34.3
63.23
35.34
69.26
34.36
肩内旋
28.75
22.31
34.55
0
63.88
より充分信頼に足るものであるとされている 3)。以上より
肘屈曲
122.35
33.17
120.03
133.67
59.31
上肢の可動域測定には有用なシステムであると考えら
手掌屈
17
0
15.22
0
2.48
手尺屈
5.62
27.37
14.54
8.25
22.74
手背屈
27.25
35.5
42.88
30.93
29.06
手橈屈
21.06
11.98
15.32
21.93
17.28
置を工夫することにより検出精度を向上させることは可
能である。さらに測定精度については辺見らの検証に
れ、これを利用した。
ボタン掛け動作において被験者ごとに比較した場合、
各関節で可動域にばらつきを見たが、各関節可動域
の合計ではその差は減少していた。これは1つの関節
が障害されても他の関節により動作を補完しうる可能
ボタン掛け動作において被験者ごとの詳細を比較し
性を示唆するものである。さらに洗顔、洗髪でも同様の
た場合、手関節の掌屈で最も大きい値を示す被験者と
傾向を認めた。一方、ドアの開閉や書字では各関節可
最も小さい値を示す被検者では、24.38゜の差がある。
動域の合計でその差は減少しなかったが、これは先の
しかし肩関節、肘関節、手関節の可動域の合計を求め
3 動作と比較して、体幹の移動が加わったためと考えら
ると 4.64゜とその差は減少していた(表 2)。
れる。
5.
表2 ボタン掛け動作における各被検者の比較(マーカ
ー検出不全によってデータが欠落したものは省いた)
まとめ
それぞれの動作における肩関節、肘関節、手関節
肩屈曲
被験者
①
4.39
被験者
②
5
被験者
③
3.42
最大値と最
小値の差
1.58
肩外転
33.21
33.89
35.8
1.9
肩内旋
27.45
25.8
32.99
7.19
肘屈曲
116.5
119.22
131.34
12.12
手掌屈
18.35
28.52
4.14
24.38
運動により動作が補完されている可能性を示唆するも
手尺屈
12.38
-7.81
12.28
20.19
のである。今後は臨床への貢献として人為的に関節を
手橈屈
23.34
28.83
11.01
17.82
拘束することで、他の関節による補償動作を計測する
合計
235.62
233.45
230.98
4.64
の可動域をリアルタイムに測定することができた。各関
節の可動域は被験者によって差が大きかったが、3 関
節の最大可動域の総和では個人差は小さくなった。こ
のことは、1つの関節が障害されても他の関節の協同
予定である。
6.
考 察
4.
参考文献
1) 長尾徹 他:箸での食事動作における前腕回旋
一般に関節可動域を測定するためには万能角度計
運動と動作時間に関する予備実験. 神戸大学医
が用いられる。これは静止した単関節には有効だが多
学部保健学科紀要 15:61-67,1999
関節でなおかつ連続的に動作する対象を計測すること
2) 長尾徹 他:スプーンを使用した食事動作にお
は不可能である。リアルタイムに多関節の角度を計測
ける肩関節外転・肘関節屈曲・前腕回旋運動の
する方法として磁場を用いた位置センサーを利用した
特 徴 . 神 戸 大 学 医 学 部 保 健 学 科 紀 要 18 :
もの
1)2)
や今回使用した光学式三次元位置計測システ
77-83,2002
ムが現在利用可能である。いずれの方式であっても被
3) 辺見俊一 他:光学的三次元位置計測システム
検者に装着するマーカーは小型であるが、磁場を用い
を用いた脊椎上肢協同運動の動作解析. リウマ
たものはマーカーと計測装置本体をコードでつなぐ必
チ科 32(6):621-626,2004
要があるため、自然な動作の妨げになる恐れがある。
また測定範囲が1~3m以内と狭い範囲に限られ、金
属や外来磁場の影響を受けやすい欠点もある。一方、
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
反転・非反転対によるオフセット電圧の電源電圧依存性の抑制
NOORAINI
渡邉賢太
安藤汐視
長野優子
山梨大学
平栗隆啓
竹本裕一
大木真
橋口住久
工学部
Suppression of Supply Voltage Dependence of Offset by Non-inverting-Inverting Pair
NOORAINI, Kenta WATANABE, Shiomi ANDO, Yuko NAGANO, Takahiro HIRAGURI, Yuichi TAKEMOTO,
Makoto OHKI, Sumihisa HASHIGUCHI
Faculty of Engineering , University of Yamanashi
1.
して出力の差を作ると信号電圧は加算され,オフセ
はじめに
ット電圧は減算される.各アンプの出力への重み係
IC アンプのオフセットの電源電圧依存性は,同一
数を適当に選ぶことによって,オフセット電圧を小
品種では同じ傾向をもっている.2 つのアンプを反
さく抑えることができる.
転アンプと非反転アンプとして動作させ,その出力
の差を作ることによって,信号は加算され,オフセ
Vi
ット電圧は相殺される.ここでは,直流アンプのオ
vp
フセット電圧の電源電圧依存性を抑制することを検
vn
討する.
2.
+
vo=A(vp-vn +Vi)
A
-
図 2 オフセット電圧の等価表現
vin
方法
Vi1
+
図 1 は LM741CN のオフセット電圧の電源電圧依
R1
-
RF
RI
存性である.いずれも同様の傾向を持っており,等
価的に図 2 のように入力側に挿入した入力オフセッ
Vi2
+
ト電圧源 Vi で表示できる.このアンプを反転アンプ
R2
A
A
+
vout
A
-
R3
R4
として動作させても非反転アンプとして動作させて
RI
も出力のオフセットの符号は変化しない.したがっ
て,図 3 のように反転アンプと非反転アンプを用意
図 3 反転・非反転対によるオフセット抑制回路
2.74
-14
-13
-12
-11
2.86
入力換算オフセット電圧[mV]
2.86
2.8
RF
-10
2.8
2.74
10
11
12
13
電源電圧+V CC[V]
(b)非反転側(−V CC=−12V)
電源電圧−V CC[V]
(a)非反転側(+V CC=12V)
図 1 オフセット電圧の電源電圧依存性
1
14
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
図 3 において,出力電圧 vout は,
NON-INVERTING

v in

(1)
2.8
 R4

R2
+ 
Vi2 −
V i1 
R1 + R 2
 R3 + R 4

入力フセット電圧 [mV]
 R + R I  R1 + R 2 


v out =  F
 R I  R1 

R4
RF
R2
−
 −
 R3 + R 4 R I + R F R1 + R 2
2.86
2.74
-14
-13
である.式(1)の{}内第 2 項が小さくなるように各抵
-12
-11
-10
電源電圧−V CC[V]
(a)非反転側
抗の値を決定する.
3.
実験と結果
INVERTING
図 2 の前段アンプの電圧利得は 1+RF/RI=101 倍と
した.図 4 は室温(約 25℃)における負側電源電圧
1.34
−VCC とオフセット電圧 VOFF の関係である.電源電
圧−VCC=−10V∼−14V の間で,非反転側(a)はオフ
入力オフセット [mV]
1.4
1.28
セットは 2.75mV∼2.85mV であり,依存性は 25µV/V
-14
-13
である.反転側(b)はオフセットは 1.30mV∼1.38mV
-12
-11
-10
電源電圧−V CC[V]
(b)反転側
であり,依存性は 20µV/V である.
式(1)から,vout のオフセットの傾きをゼロにする
図 4 オフセット電圧入力側電源電圧依存性
ために,オフセットの変化分 ∆VOFF に対して,
-0.58
(2)
とする.いま,重み係数 a 2 を,
a2 =
R4
= 0.5
R3 + R4
-0.57
(3)
とすると,反転アンプと非反転アンプのオフセット
の傾向の比率 20μV/V:25µV/V=0.8:1 であるので,a1
-0.56
は
-14
a1 =
R2
= 0.5 × 0.8 = 0.4
R1 + R 2
総合入力オフセット [mV]
R4
R + R 2 ∆V OFF1
⋅ 1
=
∆V OFF 2
R1 + R 4
R2
-13
-12
電源電圧−V CC[V]
-11
-10
(4)
図 5 反転・非反転対のオフセット電圧の電源電圧
依存性
となる.
この係数を設定すると図 3 のシステムのオフセッ
小さく抑える重み係数を決定することも可能である.
トは図 5 のようになり,オフセットは-0.56mV,依
存性は 0µV/V である.
総合利得は 146 倍(単体の 1.46
4.
倍)である.
このように非反転アンプと反転アンプとを組み合
まとめ
入 力 オフセ ッ トの 電源 電 圧依 存性 25µV/V と
わせて電源電圧依存性がほぼ 0 のものが実現できた.
20µV/V の 2 つのユニットアンプを反転アンプと非
この例では,電圧電源依存性を抑制することを主眼
反転アンプとして動作させて差を作ることによって
としているので,オフセット電圧そのものは最小と
入力オフセット−0.56mV,電源電圧依存性 0µV/V が
はなっていない.オフセット電圧も依存性もともに
実現できた.
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
加重加算オフセットキャンセル法における重み係数の最適化
長野優子
渡邉賢太
安藤汐視
NOORAINI
山梨大学
平栗隆啓
竹本裕一
大木真
橋口住久
工学部
Optimization of weighting factors for suppression of offset voltage
Yuko NAGANO,
Kenta WATANABE,
Yuichi TAKEMOTO,
Shiomi ANDO,
Makoto OHKI,
NOORAINI,
Takahiro HIRAGURI
Sumihisa HASHIGUCHI
Faculty of Engineering, University of Yamanashi
1.
結合を満足するように an を決定すれば,m 個の動作
はじめに
条件下で総合のオフセットをゼロに近づけることが
直流アンプのオフセットを所望の複数の動作条件
できる.
下でゼロにする加重加算法[1]では,オフセット電圧
 a 1 v 11 + a 2 v 12 + L + a n v 1 n → 0
 a v + a v +L + a v → 0
 1 21
2
22
n
2n

M

 a 1 v m 1 + a 2 v m 2 + L + a n v mn → 0
をゼロにすることを優先して重み係数を決定するの
で,利得が低くなることがある.ここでは,利得を
重視し,オフセット電圧をゼロではなく許容できる
(1)
総合の電圧利得 A は
程度まで抑える重み係数を決定し,オフセット電圧
A = a1 + a 2 + L + a n
の電源電圧依存性の低減を試みた.
(2)
であり,総合のノイズ電圧は,ノイズ係数
2.
方
N
法
v
=
a1 + a 2 + L + a n
2
2
(3)
2
に比例する.信号対ノイズ比(S/N 比)は,
サンプル IC(LM741CN)のオフセット電圧の電源
S / N = A 2 / N v2 =
電圧依存性は図 1 のようである.負側電源電圧変化
の影響の方が正側電源電圧依存性より大きいので,
( a1 + a 2 + L + a n ) 2
a12 + a 22 + L + a n2
であり,これをできるだけ大きくしたい.
前者を抑えることを試みる.
これらを考慮すると,アンプの数 n は動作条件の
m 個の異なる動作条件下の n 個のアンプのオフセ
数mより2つ大きいこと(n=m+2)が必要である.
ット電圧を vij(i=1∼m,j=1∼n)とすると,次の一次
−VCC=−12V
+VCC=+12V
1.4
0.9
0.4
-0.1
-13
-12
-11
入力オフセット電圧[mV]
1.4
-14
(4)
0.9
0.4
-0.1
-0.6
-0.6
-1.1
-1.1
10
-10
− V CC[V]
11
12
+V CC[V]
図 1 入力オフセット電圧の電源電圧依存性
1
13
14
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
3.
した場合である.総合利得は 4.5,ノイズ係数は 14 ,
結果
オフセットは 1.2mV である.傾きがゼロである複数
表 1 は,負側電源電圧依存性(傾き)の大きい順に
のアンプ群を組み合わせれば,オフセットをゼロに
並べたものである.依存性の大きい少数のアンプと
することができ,オフセットもドリフトもない直流
小さい多数のアンプとを組み合わせて依存性を小さ
増幅器ができる.
くし,利得の減少を抑えることを試みる.
表 1 で,傾きを上から順に加え合わせたものと下
4.
から順に加え合わせたものがほぼ等しいところは,
A(上から 5 番目と下から 10 番目まで),B(上から 6
まとめ
本研究では,オフセット電圧を許容できる程度ま
番目と下から 11 番目まで)の 2 つの場合が得られる.
で抑える重み係数を決定し,オフセット電圧の電源
これらについて各アンプの重み係数を 1 と−1 とし,
電圧依存性の低減を試みた.実験結果から,電源電
総合利得,ノイズ係数,傾き,オフセット電圧を求
圧依存性の低減を重視した場合は,B が良いことが
める.
わかり,ノイズ係数とオフセットを重視した場合は
表 1 は,A と B の 2 通りの組み合わせの結果であ
A が良いことがわかる.これから,ノイズ係数,傾
る.総合利得はいずれも単体の 5 倍である.A は,
き,オフセットのどれを優先して考えるかで選ぶア
係数−1 のアンプが 5 個,+1 が 10 個であり,ノイ
ンプを変える必要があることがわかる.
ズ係数は最小 15 ,傾きは最大 8μV/V,オフセット
は最小 1.3mV,B は係数−1 のアンプが 6 個,+1
5. 参考文献
が 11 個であり,ノイズ係数は 17 ,傾きは最小
[1]平栗隆啓 他,”加重加算法によるオフセット電
0μV/V,オフセットは最大 2.6mV である.A’は総合
圧の抑制”,第 25 回日本生体医工学会甲信越支
の傾きをゼロにするために,正の係数を 0.95 に設定
部大会
個別
AMP
No.
傾き
µV/V
12
3
20
28
13
24
8
9
15
19
21
31
6
27
23
32
18
31
30
30
30
29
29
21
21
19
19
18
16
15
15
14
11
10
#2,2005.9.17
表 1 使用するアンプと重み係数・利得・傾き・オフセット電圧
A
B
傾きの累積
総合
総合
上から 下から 重 ノイズ 傾き
オフセット 重 ノイズ 傾き オフセット 重
µV/V µV/V み 係数 µV/V
mV
mV
み 係数 µV/V
み
31
61
91
121
150
179
179
158
137
118
99
81
65
50
35
21
10
-1
-1
-1
-1
-1
0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
15
8
1.28
1
-1
-1
-1
-1
-1
-1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
17
0
2.59
-1
-1
-1
-1
-1
0
0
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
0.95
A’
総合
ノイズ 傾き オフセット
mV
係数 µV/V
14
0
1.20
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
2 周波発振回路による変位測定
中島 竜太
大木 真
橋口 住久
山梨大学大学院
A position sensor using a dual frequency oscillator
Ryuta Nakashima,Makoto Ohki,and Sumihisa Hashiguchi
University of Yamanashi
1.
はじめに
3.
方法
2 つの周波数で発振する 2 周波発振回路の発振周
一般に,コア位置対温度平面に等周波数線を模式
波数の温度依存性とコア位置依存性が異なること
的に描くと図 3 のようになる.2 つの発振周波数 fH
を利用して,広い温度範囲にわたって誤差が少ない
と fL を実測して,対応する等周波数線の交点を求め
位置センサを開発する.
れば,コア位置と温度が求められる.
発振周波数 fH,fL のコア位置 d による変化が図 4
2.
のように直線とみなせるときには,次のように簡略
2 周波発振器
化できる.
図 1 の回路は,LC 型発振器で決定される周波数
これらの直線の傾き mH,mL と縦軸の切片 fH0,fL0
fL と,ドレイン電流がオフになるときの過渡応答振
は,位置と温度の関数であり,d は
動の周波数 fH で発振し,図 2 のような波形を発生す
f H = mH d + f H 0
る.2 つの発振周波数 fL と fH の温度依存性とコア位
置依存性が異なることを利用して,コア位置 d を温
から,
度 T によらず決定することを試みる.
d=
output
L3 1.18mH
2SK1771
(1)
f L = mL d + f L 0
A
f H − f H0
f − f L0
= L
mH
mL
(2)
C1 50nF
となる.各温度での mH と mL,fH0 と fL0 を代入して
B
等号が成り立つ温度を探索し,そのときの式の値と
L2 0.3mH
してコア位置 d を求める.
コア挿入方向
R1 39kΩ
R2 10kΩ
低周波側周波数
温度
C2 0.1µF
Vcc 10V
図 1 2 周波発振器
高周波側周波数
fH1
fL1
fH2
fL2
fH3
fL3
T
高周波側振動 fH
コア位置 d
低周波側振動 fL
図 3 コア位置対温度平面上の等周波数線(模式図)
図 2 2 周波発振器の発振波形
1
高周波側周波数f H(kHz)
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
温度
T1
fH
周波数
T2
T3
T1
fL
−15℃
−14℃
−12℃
−9℃
−7℃
909
905
900
−5℃
895
−3℃
−1℃
890
0
T2
1
2
3
コア位置d (mm)
T3
図6
コア位置 d
高周波側周波数のコア位置依存性
表 1 fHと fL の傾きと切片
図 4 発振周波数とコア位置の関係
温度
-15℃
-14℃
-12℃
-9℃
-7℃
-5℃
-3℃
-1℃
結果
4.
4
図 5 と図 6 は,温度範囲−15℃∼0℃における低
周波数 fL と高周波数 fH の測定結果である.低周波
数 fL はコア位置 d と温度 T の両方に依存しているが,
高周波数 fH はコア位置 d に依存しておらず温度 T
にのみ依存しており,傾き mH=0 である.
いずれも,
mH
fH0
mL
fL0
0
0
0
0
0
0
0
0
909
907
906
904
902
899
895
892
-0.39
-0.42
-0.42
-0.44
-0.43
-0.39
-0.45
-0.42
27.5
27.32
27.02
26.74
26.22
25.9
25.64
25.32
ほぼ直線になっており,前述の方法が適用できる.
表 1 は,図 5 と図 6 から求めた高周波数 fH と低周波
表 2 コア位置の算出誤差[mm]
数 fL の各温度での傾きと切片である.
コア位置
表 2 は,高周波数 fH と低周波数 fL の実測値と表 1
温度
-15℃
-14℃
-12℃
-9℃
-7℃
-5℃
-3℃
-1℃
の値から算出したコア位置 d の誤差である.
−15℃∼0℃において,最大誤差は−0.18mm,平均
誤差は 0.069mm,誤差の標準偏差は 0.05mm となっ
た.
低周波側周波数f L(kHz)
28
0mm
1mm
2mm
3mm
4mm
0.00
0.05
0.05
0.09
0.05
0.00
0.09
0.05
0.03
0.00
0.00
0.00
-0.02
0.03
-0.02
0.00
0.05
-0.05
-0.05
-0.09
-0.09
0.05
-0.13
-0.05
-0.18
-0.10
-0.10
-0.18
0.07
-0.18
-0.02
-0.10
0.10
0.10
0.10
0.18
0.00
0.10
0.09
0.10
27
26
−15℃
−14℃
−12℃
−9℃
−7℃
−5℃
−3℃
−1℃
25
24
23
5.
おわりに
温度依存性とコア位置依存性の異なる 2 つの周
波数を利用した位置センサによって,−15℃∼0℃
に お い て , 最 大 誤 差 は − 0.18mm , 平 均 誤 差 は
0.069mm,誤差の標準偏差は 0.05mm でコア位置 d
0
1
2
3
4
を決定することができた.温度範囲を高温側に拡大
コア位置d (mm)
することが今後の課題である.
図5
低周波側周波数のコア位置依存性
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
アメーバの自動追跡
−個体識別のためのパラメータの検討−
桑島 天兵
大木 真
橋口住久
山梨大学大学院
Tracking of Amoeba
−Parameters for identification−
Tenpei Kuwajima,
Makoto Ohki, and
Sumihisa Hashiguchi
University of Yamanashi
1.
はじめに
顕微鏡下の微生物の自動追跡において,同一の対
象のフレーム間での対応付けが必要である.
E
フレーム間差分を用いた追跡方法[1]では,対象の
位置をパラメータとしてフレーム間で対応付けを
B
行ったが,対象の運動速度が速い場合やフレームレ
C
D
A
ートが低い場合に対応できない.
図 1 粘菌アメーバ
この問題を解決するために,特徴的な色がなく,
このようにして,あるパラメータで重なるものも,
形状変化を伴う対象の個体識別に用いるパラメー
別のパラメータで区別できるので,これらのパラメ
タを検討した.
2.
ータを用いれば対応付けが可能である.
運動速度が速い場合への対応
なお,はじめの数フレームで対応付けができれ
パラメータとしては,個体間の差が大きいことと,
ば,個々の対象の位置と速度と加速度がわかるので,
変化が緩やかであることが望ましい.
次のフレームでの推定位置を決定でき,推定位置付
ここでは,周囲長,縦寸法,横寸法,長軸長,短
近のみを検索すればよい.したがって,後半での重
軸長,面積,複雑度,平均輝度をパラメータとして
なりは大きな問題ではない.
検討する.
3.
図 1 は粘菌アメーバ[2](以下アメーバと称する)
まとめ
周囲長,面積,複雑度,平均輝度,縦寸法,横寸
であり,A∼E が追跡対象である
図 2 はアメーバ A∼E の各パラメータの時間変化
法,長軸長,短軸長の変化を調べてパラメータとし
である.アメーバ A は途中で A1 と A2 に分裂し,
ての有効性を示し,面積を主として粘菌アメーバを
アメーバ B は B1 と B2 に分裂した.
対応付けできることを示した.
謝 辞
面積は個体差が大きく,変化も緩やかであるので,
追跡に利用したアメーバの画像[2]の使用を許諾
パラメータとして有効である.一方,複雑度は個体
された弘前大学農学生命科学部の畠山幸紀先生な
差が小さく,変化が激しいので使いにくい.
らびに関係各位に感謝する.
これから,面積を主とした対応付けが可能である
ことを図 3 に示す.
参 考 文 献
図 3 は面積(a)と平均輝度(b)である.図 3(a) ①で
1) 桑島天兵,大木真,橋口住久,“アメーバの自
動追跡”,
第 33 回画像電子学会年次大会 05-02,
2005.6
2) http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/2/celltech
は B と C,②では A1 と A2,③では C と D,④で
は B1 と B2 が区別できないが,図 3(b)では①,②,
/nenkin/
③,④のように区別できる.
1
第25回日本生体医工学会甲信越支部大会(Sep.2005)
画素数
画素数
A
180
周囲長
130
E
B
80
C
D
長軸長
45
40
A2
35
A1
25
30
20
B1
B2
30
50
15
10
900
50
面積
縦寸法
40
700
30
500
20
300
10
100
40
38
横寸法
複雑度
35
30
28
25
Y
20
18
15
10
8
26
210
短軸長
200
22
190
18
平均輝度
180
170
14
160
10
150
1
11
21
31
41
Frame Number
51
1
11
21
N
31
41
Frame Number
51
N
図 2 アメーバ A∼E の各パラメーバの変化
210
(a) 面積
A2
(b) 平均輝度
A1
200
500
B
A1
②
①
④ B1
B2
②
①
190
③
③
C
180
300
D
④
B2
170
B
A2
D
C
B1
160
100
1
11
21
1
31
図 3 対応付けの例
1
11
21
31
第 25 回日本エム・イー学会甲信越支部大会(Sep.2005)
無意識生体信号検出装置における呼吸および心拍動波形の分離
水口しのぶ*,斉藤 義明**,堀 潤一**
*新潟大学大学院 自然科学研究科,**新潟大学工学部 福祉人間工学科
Separation of
Respiration wave form
and Heart beat wave form
of Unaware Detection System for Living body signal
Shinobu Mizukuchi*,Yoshiaki Saitoh**,Junichi Hori**
*Graduate School of Science and Technology, Niigata University, **Faculty of Engineering, Niigata University
1.
2.2.
はじめに
導電シート
導電シートには,磁性材料であるアモルファ
病院および在宅医療における患者監視では,
昼夜を問わず患者の状態を把握する必要があ
ス箔(Allied Signal 社製
る.また,高齢社会において,社会において寝
使用した.厚さは 0.05mm であり,形状を自由
METGLAS 2605S )を
に変化させることができる.
たきり老人の人口も増加し,在宅患看護の必要
2.3.
性が増している.さらに看護者・介護者の不足
無意識生体信号検出装置の構成
図 2 に無意識生体信号検出装置の構成を示
が深刻化し,少ない看護人数で多くの患者の状
す.電気容量センサを発砲スチロールに埋め
態を把握しなければならない.これにより,自
込み,その上に導電シートをおく.さらに布
動的かつ人が傍にいなくても患者の状態を知
団やマットレスなどの寝具を敷き,被験者に
ることが必要となる.
寝具の上に横になってもう.
以上の様な状況から,無意識生体信号検出装
呼吸や心拍動に伴うわずかな動きにより,導電
置が活用される.本研究の無意識生体信号検出
シートの形状が変化する.それにより,電気容
装置は,患者がベットに横たわるだけで,呼吸
量が微弱に変化し,これを電気容量センサによ
および心拍動を,同時に検出でき,非侵襲かつ
って検出計測し,波形表示プログラムによりパ
無拘束であり,電極等を一切つけないため,患
ソコンに表示させる.
者に余計な苦痛,負担,不自由さを与えない.
さらに,ナースステーションにいながら,病
室の患者の状態を,同様に病院にいながら在宅
患者の様子を把握もでき,遠隔医療,在宅医療
にも適している.
2.
無意識生体信号検出装置
2.1.
電気容量式センサ
図 1 無意識生体信号検出装置の構成
本装置では LC 発振器を用い,コイル L で
3.
生体の微少振動を検出しそれによって生ずる
検出システム
3.1. 検出装置
発振器の発振振幅変動を利用する1).従来の
検出装置は,電気容量センサを発泡スチロー
方法では,発振周波数の変動を用いたものが
ルに埋め込み,その上に電動シートを敷く.電
あったが,f-v 変換器(周波数-電圧変換器)を用
気容量センサを埋め込んだ発泡スチロールは,
いる必要があり,回路が複雑であった.本装
頭部から胸部にかけて設置する.
置は発振器の発振振幅の変動を利用するので
3.2. 検出方法
高感度であり,回路が簡単化された.
図 2 に検出システムのブロック図を示す.
1
第 25 回日本エム・イー学会甲信越支部大会(Sep.2005)
無意識生体信号検出装置により検出され
呼吸波形
3500
電
圧(mV)
た信号を A/D コンバータ(Pico ADC-11)を
用いて A/D 変換し,パーソナルコンピュー
0
0
タに取り込む.信号は数値データとして配に格
2
4
6
8
10
時間(sec)
納された後,原波形としてディスプレイに出力,
心拍動波形
2000
電
圧
(mV)
表示される. FIR フィルタを用いて,原波形
から呼吸波形と心拍動波形を抽出し 2),原波形
0
0
と同様にディスプレイに出力,表示する.配列
4
6
8
10
時間(sec)
を利用することにより,メモリの容量を小さく
考察
5.
抑えることが可能な上,ある一定時間分の数値
リアルタイムで原波形,呼吸波形および心拍
データを保持できるという利点がある.
動波形を分離,表示した.
呼吸と心拍動では,周波数と振幅が異なるた
A/Dコンバータ
め,呼吸波形は原波形に LPF を,心拍動波形
A/D変換
検出信号
2
は BPF をかけることで呼吸と心拍動をそれぞ
パーソナルコンピュータ
れ分離できたと考えられる.
しかし,呼吸波形にくらべて,心拍動波形は
呼吸波形
呼吸波形抽出
明瞭に分離できておらず,今後 FIR フィルタ
心拍動波形抽出
の次数を高めたり,個人によるカットオフ周波
抽出
数の設定などのプログラムの改善を行い,心拍
動波形をさらに明瞭に分離したいと考える.
ディスプレイ
まとめ
6.
呼吸波形
心拍動波形
呼吸波形
原波形
無意識生体信号検出装置を用いて生体信号
の計測を行い,呼吸波形および心拍動の分離を
行った.従来の検出プログラムの改善により,
図 2 検出システム
4.
生体計測実験
4.1.
計測方法
現在最も主流な OS の 1 つである Windows 上
での表示や,タイムラグが少なく計測された原
波形を表示することが可能となった.また,呼
電気容量センサを発泡スチロールに埋め込
吸波形および心拍動波形の分離においては,
み,その上に電導シート,マットレスを敷き,
FIR ディジタルフィルタを用いて LPF・HPF・
被験者が横たわった状態で実験を行う.
BPF を作成し,このフィルタをオンラインプ
FIR フィルタは,100 次の LPF,BPF を用いた.
ログラムに組み込むことで,タイムラグが少な
計測結果
4.2.
く呼吸波形および心拍動波形を表示すること
計測結果を図 3 に示す.
が可能となった.
原波形
参考文献
7.
3500
電圧(mV)
1)
特許願「生体信号検出装置」
特願 2005-216289 平 17.7.26
0
0
2
4
6
8
10
2)
時間(sec)
ビギナーズデジタルフィルタ
著中村尚五 電機大出版局
2
多量な発汗を計測可能とする光学発汗計の開発
坂口正雄1
大橋俊夫2
1
国立長野高専電子制御工学科 2 信州大学医学部
1. はじめに
汗が浸透したシート (合成繊維 )に近赤外領域の特
定波長光を照射・受光して多量な発汗を簡便に測定
できる光学発汗計を開発した(1)。本装置の特徴を要
約すると次のようになる。(1)プローブの開口面にシ
ートが設置されていて、シートが吸収した汗を光学
的に検出する。(2)プローブに形成されたハウジング
にエアーを供給してシートが吸収した汗を発散させ、
シートの湿分飽和を避けている。
本装置の概要と若干の実験結果を報告する。
2. 光学発汗計の概要
本装置は、水分子の吸収スペクトルのピークに一
致する 1.45μm 波長の発光ダイオード(LED)を発
光させ、その反射光を受光するフォトダイオード
(PD)と照射・受光面に設置したシートからなるプロ
ーブを構成し、LED・PD 駆動電子回路、エアーポ
ンプからなる。エアーをプローブに形成されるハウ
ジング内に供給・排出することによりシートが吸収
した汗を発散させ、
シートの湿分飽和を避けている。
光学的にヒトの発汗量を測定する場合、プローブ
開口面にシートを設置したとしても皮下に存在する
水分をも検出する。そこで、発汗量測定用プローブ
のほかに皮下に存在する水分のみを検出するプロー
ブを隣接して、両者の受光信号の差分から発汗量を
測定する光学発汗計を試作した(2)。本装置のブロッ
ク図を図 1 に示す。同図に示すように、プローブB
の吸湿シートをラップで覆い、シートに汗が浸透し
ないようにした。二つのプローブの受光増幅回路出
力を差動増幅器に導き、差分をとって直流化後、装
発汗量
(シート水分量)
置出力を得ている (3)。
3. 吸湿シートとその特性
汗を浸透させる吸湿シートは水分を繊維表面で吸
収するとともに、素早く拡散し、発散する生地が望
ましい。吸湿シートとしてソフィスタ((株 )クラレ )
を採用した。ソフィスタは合成繊維でありながら親
水基(OH 基 )を持つ繊維で親水基があるため、汗・
水分を繊維表面で吸収し、素早く拡散・発散する。
吸湿シートの評価実験を図 1 に示したプローブ A
を使用し、空気流量 0.8? /min で行った。図 2 は評
価用のプローブ写真である。プローブ開口面積は
1.3cm 2で、吸湿シートは(b)図のように O リングで
固定する。図 3 は発汗量解析ソフトを用いて得られ
たマイクロシリンジによる水滴の水分量解析記録で
ある。図3の塗りつぶし部分はソフィスタ(DA896)
に浸透した水分量 (10μ? )に相当する。
図 4 は図 3 に示した実験をソフィスタ 100%およ
びポリエステルと混紡した生地(DA896)を吸湿シー
トに選んで水分量(図3の塗りつぶし部分相当)と装
置出力の関係を求めたものである。同図から水分量
と装置出力の間には良好な直線関係があることが判
明した。
(a)プローブ開口面写真
差動増幅回
路
1.45μm
フォト
LED
ダイオード
排出口
プローブB
1.45μ mLED
駆動回路
プローブA
空気流入パイプ
皮膚
ラップ
図1
吸湿シート
光学発汗計ブロック図
(b)開口面にシート(ソフィスタ 100%)
を装着した写真
図2
プローブ写真
4. 温熱発汗量の測定
健康な男子の前額における運動中の発汗量を測定
した。プローブを両面テープを用いて前額に固定し、
温度 28℃、湿度 70%RH の室内において、5分間
のステップ運動を負荷した。比較のため市販の発汗
計 (SKK2000 スキノス )のカプセルをプローブの近
傍に装着した。吸湿シートにソフィスタ 100%を採
用し、空気流量は 0.8? /min とした。
図3
吸湿シート水分九州・発散記録
図5は二つの発汗計の装置出力を A/D 変換器を介
してパーソナルコンピュータに導き、発汗量解析ソ
フトを用いて表示した CRT 画像である。汗をシー
トに浸透させて検出するため、瞬時的な応答は難し
いものの、市販装置に記録される飽和傾向は認めら
れず、多量な発汗量が測定できることを示している。
5. おわりに
光学発汗計の開発第一段階として、水滴の水分量
を種々な生地で形成したプローブを用いて測定し、
シートの特性を調べた。
なお、本装置は生地の吸湿、
吸水、拡散性の評価にも有用であることがわかった。
本装置をヒトの発汗量測定に適用した場合、シー
トに浸透した汗のほかに皮下水分をも計測する。そ
こで、開口面をシートで覆ったプローブを 2 個作成
し、
一つのプローブの皮膚面シートをラップで覆い、
汗が浸透しないようにして受光増幅回路出力の差分
から発汗量を測定する新しい発汗計を提案し、実験
的に検討した。
謝
辞
面積:出力
本研究にあたり、繊維生地(ソフィスタ)を提供してい
ただいたクラレトレーディング(株)衣料カンパニー衣料
2
1.8
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
DA896
Sophis
ta
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
線形
(DA89
6)
線形
(Sophi
sta)
開発部の滝沢
参考文献
(1) 特許:光学発汗計 特願 2005-1244622 出願人 (独)
国立高専機構長 発明人 坂口正雄 2005.4
(2) 坂口正雄,青木幸子,大橋俊夫:光学発汗計の開発.第
13 回日本発汗学会総プログラム・予稿集,pp17,2005
水分量(
μl
)
図4
水分量と面積(装置出力)の関係
生地Sophista 100%
前額 シート
SKK-2000
光学発汗計
ステップ運動
図5
清氏に深謝する。
ステップ運動負荷時の前額発汗量の変化(市販発汗計との比較)
適正運動量指示装置の開発とその応用
百瀬 英哉*
小林英敏**
坂口正雄*
小野伸幸*
大橋俊夫***
*長野工業高等専門学校,**(株)西澤電機計器製作所,***信州大学大学院医学研究科
Development of the Apparatus for Indicating of Exercise under
Optimum Quantity And Application of That.
Hideya Momose*
*
Hideki KOBAYASI **
Masao SAKAGUCHI*
Nobuyuki ONO*
and Toshio OHHASHI***
Nagano National College of Technology ,** Nishizawa Electrnic Measauring Co.Ltd.,* * * Shinshu University School of Medicine
量の計算式がいくつか存在する。その中でも、年
はじめに
1.
齢を加味する点、心拍数に個人差の影響が小さい
近年、糖尿病を代表とする生活習慣病患者が急
ため、信頼性の妥当性が高いことから多くの医師
増すると共に、その治療として運動が果たす役割
がカルボーネンの式を紹介している。
は大きくなっている。糖尿病患者は、インスリン
本装置において、適正運動量となる心拍数範囲
抵抗性改善薬の投与、食事療法だけでなく、毎日
の計算式は、使用者の運動継続期間、体調などを
の運動が必要となるケースが多い。我々はそのよ
加味できるよう、カルボーネンの式に運動強度を
うな運動療法の指導や自己管理に応用できる適
可変するパラメータを追加した変形式を採用し
正運動量指示装置を開発した。[1][2]
た。[2]
運動生理学、運動療法の分野において心拍数と
本装置で採用したカルボーネンの式の変形式
運動強度、心拍数と酸素消費量( VO2 )との間には
は、
直線的関係があるといわれる。そこで我々は、心
HR TR = HR R +( HR MAX − HR R )× k ×α
:安静時心拍数
HR R
:最大心拍数(=220−年齢)
HR MAX
:トレーニング心拍数
HR TR
k :0.6∼0.8
拍数から適正運動を誘導した適正運動量指示装
置を開発した。
本装置の特徴は、双極誘導を利用した確度の高
い心拍数計数と、個人差の影響が少ない、信頼性
の高いカルボーネンの式を利用して適正運動量
否かを音声指示すること、運動中の心拍数推移が
α :運動強度(0.6∼1.0)
・・・(1)
上式において、
k =0.6 のとき、トレーニング心拍数の下限: HR R (L)
保存できること等である。これにより、運動療法
k =0.8 のとき、トレーニング心拍数の上限: HR R (H )
指導を処方した患者が院外において、装置に基づ
本装置は、 HR R (L) と HR R (H ) 間の心拍数で行
う運動を適正運動として評価している。
を求めていること、実行中の運動が適正であるか
き毎日の運動を行い、装置に記録された運動の様
3.
子から、医師は適切な運動を実行したか確認でき
装置概要
本装置は、運動中の心拍数を計数する機能を有
る。
今回は、最も基本的な機能を搭載した適正運動
し、使用者の年齢、安静時の心拍数を式(1)に代
量指示装置の装置概要と装置の実用性について
入して得られた適正運動心拍数と、運動中の心拍
報告する。
数と比較し、ブザー音によりその運動が適正な強
2.
度かを使用者に知らせるものである。
適正運動
運動中の装置動作フローを図 1 に示す。
現在、運動量と心拍数の相関関係から、心拍数
装置は、電源投入後、LCD にセットアップメ
によって運動量を評価することが一般的であり、
ッセージが表示され使用者設定を促す。使用者は、
運動生理学や運動療法の領域において適正運動
1
心拍数(BPM)
User input old , α and HR R
into the apparatus. Then, the
apparatus calculate HR TR .
音声あり
音声なし
170
160
150
140
130
120
110
100
START!!
図3
11
Calculate hart rate and
display it.
9.5
8
6.5
5
3.5
2
0.5
70
時間( 分)
実験結果
Compare
計数した心拍数と式(1)より算出された目標心拍
More than
In the goal
Less than
数を比較し、適正、過剰、不足の各場合に異なっ
the goal.
range.
the goal.
た音声を出力する。また、同時に計数した心拍数
5Hz Beep
1Hz Beep
の推移を EEPROM に保存する。
2Hz Beep
装置構成のブロック図を図 2 に示す。本装置は
ディスポーザブル電極を用いた心拍検出回路、適
Sleep.
正運動量演算のためのマイクロコンピュータ、
Catch pulse?
図1
LCD、タクトスイッチ、イヤーホン、EEPROM、
RS-232C レベルコンバータ、電源回路から構成
運動時の装置動作
される。
4.
パソコン
イヤーホン
ディスポ電極
21 歳男子の被験者は 80%の運動強度で、装置
RS-232C レベルコンバータ
音声
回路
から出力される音声を聞きながら 10 分間ステッ
LCD
プ運動を行なった。翌日、音声を聞きながら行な
ったステップ運動と同じペースを心がけ、再び
マイクロコンピュータ
検出
回路
10 分間のステップ運動を行う。両者の心拍数の
EEPROM
タクト
スイッチ
推移を図 3 に示す。なお、被験者の適正運動とな
る心拍数は、運動強度 80%のとき、上限 147、下
RTC
限 127 である。(図中点線の範囲)。
電源回路
図2
実験
同図から音声指示に従った運動が実行できる
装置構成
ことが確認できた。
タクトスイッチを押し、名前、年齢、安静時心
参考文献
[1] 坂口正雄,小野伸幸他“携帯型適正運動量指
示装置の試作,”1992 信学技報,MBE92-05
[2] 坂口正雄,小野伸幸他“携帯型適正運動量指
示装置の開発,”2000 医用電子と生体工学,
Vol.38 No.3
拍数、運動強度を入力する。なお、運動強度は入
力範囲を1から5とし、式(1)のαに対し、 0.6 か
ら 1.0 に対応する。運動強度入力確認後、使用者
により入力された値を式(1)に代入し、適正運動
となる心拍数範囲の算出をする。運動中は装置が
2
Fly UP