...

活動要覧2 - 東北大学 流体科学研究所

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

活動要覧2 - 東北大学 流体科学研究所
2.研究課題
総評
流体科学研究所では,「極限流研究部門」,「知能流システム研究部門」,「ミクロ熱
流動研究部門」,「複雑系流動研究部門」の4研究部門および附属の「流体融合研究セン
ター」において,非常に多彩かつ新規性のある研究を行い,その成果を社会に還元し,ま
た,学理の構築に貢献している.また,それぞれ大部門を構成する研究分野を横断した研
究や国内外の研究機関および民間企業との共同研究を推進している.
○極限流研究部門
4研究分野から構成され,速度,温度,圧力,重力などの物理環境を極限にまで追求し
たときに発現する流動現象の解明,及びこれらの極限状態が複合した環境下で現れる流動
現象の解明を行う.
○知能流システム研究部門
5研究分野から構成され,周囲の温度,圧力,電磁場等の外部環境の変化を認識,判断
して動作することのできる“知能流体システム”の構築と,知能性発現機構の解明および
評価に関する研究を行う.
○ミクロ熱流動研究部門
4研究分野から構成され,強い非平衡にある熱流動現象を原子・分子レベルで取り扱い,
輸送現象や界面での相変化,結晶成長などの諸現象のメゾスコピックなメカニズムの解明
を行う.
○複雑系流動研究部門
4研究分野から構成され,流体が有する様々な時間・空間スケールでの複雑な流動現象
に対して,その理論体系を確立すると共に,数値流体情報及び実験流体情報の解析を行い,
複雑系流動システムの実現を目指して研究を行う.
○流体融合研究センター
8研究分野から構成され,従来の流体科学の独創的実験研究に高性能スーパーコン
ピュータシステムによる大規模計算研究を融合させた“次世代融合研究手法”により,エ
アロスペース,環境・エネルギー,ライフサイエンス,ナノテクノロジーなどの重点分野
に横断的に関わる流体科学研究を推進する.
本章では,各部門に所属している研究分野が現在までに取り組んでいる研究課題を示す.
極限流研究部門
・・・・28
知能流システム研究部門
・・・・36
ミクロ熱流動研究部門
・・・・44
複雑系流動研究部門
・・・・52
流体融合研究センター
・・・・60
寄附研究部門
・・・・76
25
★兼担教授
研究部門等
研究分野等
極限反応流
職名※1
H18.5.1
H19.5.1
H20.5.1
H21.5.1
H22.5.1
H23.5.1
H24.5.1
教 授
小林 秀昭
小林 秀昭
小林 秀昭
小林 秀昭
小林 秀昭
小林 秀昭
小林 秀昭
大上 泰寛
大上 泰寛
大上 泰寛
助 教
大上 泰寛
大上 泰寛
大上 泰寛
教 授
圓山 重直
圓山 重直
圓山 重直
圓山 重直
圓山 重直
圓山 重直
圓山 重直
准教授
丸田 薫
小宮 敦樹
小宮 敦樹
准教授
講 師
極限熱現象
講 師
極限流
極低温流
小宮 敦樹
小宮 敦樹
小宮 敦樹
大平 勝秀 助 教
小宮 敦樹
小宮 敦樹
教 授
大平 勝秀 大平 勝秀 大平 勝秀 大平 勝秀 准教授
徳増 崇
岡島淳之介
岡島淳之介
大平 勝秀 大平 勝秀 講 師
助 教
極限高圧流動
野澤 正和
野澤 正和
野澤 正和
教 授
林 一夫
林 一夫
林 一夫
林 一夫
准教授
伊藤 高敏
伊藤 高敏
伊藤 高敏
伊藤 高敏
助 教
関根孝太郎
関根孝太郎
関根孝太郎
関根孝太郎
関根孝太郎
教 授
西山 秀哉
西山 秀哉
西山 秀哉
西山 秀哉
西山 秀哉
准教授
佐藤 岳彦
佐藤 岳彦
佐藤 岳彦
佐藤 岳彦
佐藤 岳彦
高奈 秀匡
高奈 秀匡
高奈 秀匡
中野 政身
中野 政身
中野 政身
中野 政身
林 一夫
宮田 一司
宮田 一司
林 一夫
★ 伊藤 高敏
西山 秀哉
西山 秀哉
講 師
電磁知能流体
講 師
知的システム
助 教
高奈 秀匡
高奈 秀匡
教 授
裘 進浩
裘 進浩
朱 孔軍
朱 孔軍
高奈 秀匡
高奈 秀匡
准教授
講 師
助 教
教 授
知能流制御
中野 政身
准教授
講 師
知能流
システム
助 教
生体流動
辻田 哲平
辻田 哲平
辻田 哲平
辻田 哲平
教 授
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
准教授
太田 信
太田 信
太田 信
太田 信
太田 信
太田 信
太田 信
教 授
高木 敏行
高木 敏行
高木 敏行
高木 敏行
高木 敏行
高木 敏行
高木 敏行
准教授
内一 哲哉
内一 哲哉
内一 哲哉
内一 哲哉
内一 哲哉
内一 哲哉
内一 哲哉
三木 寛之
三木 寛之
三木 寛之
二見 常夫
鈴木 俊一
青木 孝行
古村 一朗
青木 孝行
髙松 洋
石塚 勝
川野 聡恭
安岡 康一
鈴木 雄二
講 師
助 教
知的流動評価
講 師
知能流体物性
電子気体流
助 教
三木 寛之
三木 寛之
(客員教授)
松岡 浩
稲田 文夫
教 授
★ 小原 拓
准教授
米村 茂
三木 寛之
講 師
助 教
非平衡分子気体流
教 授
★ 小原 拓
★ 小原 拓
★ 小原 拓
★ 小原 拓
★ 小原 拓
★ 小原 拓
准教授
米村 茂
米村 茂
米村 茂
米村 茂
米村 茂
米村 茂
小原 拓
小原 拓
小原 拓
小原 拓
小原 拓
小原 拓
菊川 豪太
菊川 豪太
助 教
菊川 豪太
菊川 豪太
菊川 豪太
菊川 豪太
教 授
★ 寒川 誠二
★ 寒川 誠二
★ 寒川 誠二
★ 寒川 誠二
★ 寒川 誠二
★ 寒川 誠二
准教授
徳増 崇
徳増 崇
徳増 崇
徳増 崇
徳増 崇
徳増 崇
佐藤 岳彦
佐藤 岳彦
講 師
助 教
教 授
ミクロ
熱流動
分子熱流
小原 拓
准教授
講 師
ナノ界面流
講 師
助 教
教 授
生体ナノ反応流
准教授
講 師
助 教
吉野 大輔
研究部門等
研究分野等
複雑系流動シス
テム
計算複雑流動
職名※1
H18.5.1
H19.5.1
H20.5.1
H21.5.1
H22.5.1
H23.5.1
H24.5.1
教 授
井小萩利明
井小萩利明
井小萩利明
井小萩利明
井小萩利明
井小萩利明
★ 圓山 重直
准教授
伊賀 由佳
講 師
助 教
伊賀 由佳
伊賀 由佳
伊賀 由佳
伊賀 由佳
伊賀 由佳
伊賀 由佳
教 授
井上 督
井上 督
井上 督
服部 裕司
服部 裕司
服部 裕司
服部 裕司
中野わかな
中野わかな
中野わかな
★ 小濱 泰昭
★ 早瀬 敏幸
伊藤 高敏
伊藤 高敏
伊藤 高敏
准教授
講 師
複雑系流動
大規模環境流動
助 教
畠山 望
教 授
★ 小濱 泰昭
★ 小濱 泰昭
徳山 道夫
徳山 道夫
助 教
寺田 弥生
寺田 弥生
教 授
土山 正
助 教
保科 栄宏
准教授
講 師
助 教
教 授
流体数理
清水 浩之
清水 浩之
★ 徳山 道夫
★ 徳山 道夫
★ 徳山 道夫
★ 徳山 道夫
★ 徳山 道夫
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
寺田 弥生
寺田 弥生
寺田 弥生
寺田 弥生
寺田 弥生
准教授
講 師
寄附研究部門
先端環境エネルギー工学
寄附研究部門
衝撃波学際応用
教 授
(客員)高山 和喜 (客員)高山 和喜 (客員)高山 和喜
流体融合研究センター
教 授
大林 茂
准教授
融合流体情報学
大林 茂
大林 茂
大林 茂
大林 茂
大林 茂
大林 茂
鄭 信圭
鄭 信圭
鄭 信圭
鄭 信圭
鄭 信圭
鄭 信圭
下山 幸治
下山 幸治
★ 大林 茂
★ 大林 茂
★ 大林 茂
竹島由里子
竹島由里子
竹島由里子
★ 大林 茂
★ 大林 茂
★ 大林 茂
講 師
助 教
鄭 信圭
基幹研究部
下山 幸治
大谷 清伸
教 授
融合可視化情報学
藤代 一成
藤代 一成
★ 大林 茂
竹島由里子
竹島由里子
竹島由里子
★ 小濱 泰昭
★ 小濱 泰昭
★ 大林 茂
准教授
講 師
助 教
教 授
学際衝撃波
★ 小濱 泰昭
准教授
孫 明宇
講 師
助 教
超高エンタルピー流動
複雑動態
教 授
★ 大林 茂
教 授
藤代 一成
准教授
講 師
極限流体環境工学
プロジェクト
研究部
超実時間医療工学
助 教
竹島由里子
教 授
小濱 泰昭
小濱 泰昭
小濱 泰昭
講 師
加藤 琢真
加藤 琢真
加藤 琢真
助 教
吉岡 修哉
吉岡 修哉
吉岡 修哉
教 授
早瀬 敏幸
早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
★ 早瀬 敏幸
早瀬 敏幸
早瀬 敏幸
早瀬 敏幸
早瀬 敏幸
早瀬 敏幸
白井 敦
白井 敦
白井 敦
白井 敦
白井 敦
白井 敦
船本 健一
船本 健一
船本 健一
船本 健一
船本 健一
寒川 誠二
寒川 誠二
寒川 誠二
寒川 誠二
寒川 誠二
寒川 誠二
寒川 誠二
大竹 浩人
大竹 浩人
大竹 浩人
久保田智広
久保田智広
講 師
大竹 浩人
大竹 浩人
助 教
久保田智広
久保田智広
久保田智広
黄 啓賢
黄 啓賢
岡田 健
岡田 健
胡 衛国
胡 衛国
丸田 薫
丸田 薫
准教授
准教授
講 師
白井 敦
助 教
教 授
准教授
知的ナノプロセス
教 授
エネルギー動態
丸田 薫
丸田 薫
丸田 薫
丸田 薫
准教授
講 師
助 教
※2
実事象融合計算
中村 寿
中村 寿
中村 寿
中村 寿
中村 寿
教 授
★ 大林 茂
★ 大林 茂
★ 大林 茂
★ 大林 茂
★ 大林 茂
★ 大林 茂
石本 淳
准教授
石本 淳
石本 淳
石本 淳
石本 淳
石本 淳
石本 淳
白谷 正治
吉田 憲司
徳川 直子
溝渕 泰寛
青山 剛史
藤井 啓介
川添 博光
吉田 義樹
永田 雅人
成瀬 一郎
平井 秀一郎
姫野 武洋
口石 茂
Srinivas Karkenahalli
郭 志雄
Xu Tianfu
羅 雲
陳 振茂
Vladimir Saveliev
Minaev Sergry
Proulx Pierre
Vladimir L. Saveliev
Hui Meng
張 信栄
Gerd Dobmann
Minaev Sergry
李 和平
講 師
助 教
流体融合研究センター客員教授
Fridrici Vincent
Ju Yiguang
※1:平成18年度は、准教授を助教授、助教を助手にそれぞれ読み替える
※2:平成18年度までは基幹研究部の研究分野である
渡部 正夫
極限反応流研究分野
教授
小林 秀昭
講師(H21.4~H23.12)・助教(~H21.3)大上 泰寛
高圧乱流燃焼の基礎特性解明
高効率,低環境負荷燃焼システム構築を目指し,代表的高負荷燃焼器であるガスタービ
ン燃焼器を再現できる,高圧環境における乱流燃焼現象を解明する研究を行っている.予
混合乱流燃焼バーナを高圧容器内に設置して連続燃焼させ,レーザー計測を駆使して火炎
構造,乱流燃焼速度の圧力依存性を求める.燃料は天然ガス主成分であるメタンをはじめ,
石炭改質ガスである一酸化炭素・水素混合ガス,更には次世代バイオ燃料であるプロパノ
ールを用い,多様な燃料種に対する高圧乱流予混合火炎の特性を明らかにしている.
20 mm
CO05
CA05
<c>=0.9
<c>=0.5
<c>=0.1
CH05
-1
 (m )
20 mm
図1
高圧乱流予混合火炎の OH-PLIF 画像
CO05
図2
CA05
CH05
画像解析による火炎面密度分布
燃料改質装置内の要素過程に関する研究
気体燃料を改質して化学プロセスの原料としたり,液体燃料に転換してエンジン燃料と
する改質技術は,新エネルギーシステムにおける重要な役割を担っているが,安全性を担
保するため高圧下の多孔体燃焼あるいは純酸素燃焼の現象解明が必要とされる.本研究で
は,高圧下において直径 10 mm 程度のペブルによる充填層を伝播する予混合火炎や,燃料
雰囲気に純酸素を噴射させた噴流拡散火炎の構造と安定限界に関する研究を行い,高圧下
で作動する改質装置内の基礎現象と安全な設計指針を明らかにしている.
Igniter
Flame
region
Quartz
tube
Flame
propagates
CH4 /air
mixture
t = 20 ms
図3
t = 40 ms
t = 60 ms
高圧ペブル充填層内の火炎伝播
図4
高圧下の純酸素噴流拡散火炎
超音速燃焼における衝撃波干渉に関する研究
極超音速飛翔体の推進系として,飛行マッハ数が 6 を超えても高い比推力を維持する超
音速燃焼エンジンが有望である.特にエンジン内に発生する斜め衝撃波は燃焼領域と干渉
し,着火および保炎に影響を与えるため,衝撃波干渉の基礎現象解明が重要である.本研
究では超音速燃焼試験設備を用い,マッハ数 2.5 の空気流に燃料が垂直噴射あるいはキャビ
ティー内に噴射される火炎に対して,斜め衝撃波が入射された場合の火炎安定限界測定と
火炎構造のレーザー計測を行うと共に,スパコンを用いた数値解析による現象解明を行っ
ている.
Fluorescence intensity: 0.05 0.25 0.45 0.65 0.85
30
Extended line of incident shock wave
Y
20
10
0
-10
0
10
20
30
40
50
60
X
図5
衝撃波が入射した火炎の OH-PLIF 画像
図6 数値解析による OH ラジカル濃度
関連する学術論文

M. Jangi, S. Sakurai, Y. Ogami and H. Kobayashi, On the Validity of Quasi-steady
Assumption in Transient Droplet Combustion, Combustion and Flame, Vol. 156, 99-105,
(2009).

M. Okuyama, T. Suzuki, Y. Ogami, M. Kumagami, H. Kobayashi, Turbulent Combustion
Characteristics of Premixed Gases in a Packed Pebble Bed at High Pressure, Proceedings of
the Combustion Institute, Vol. 33, 1639-1646, (2011).

Y. Ichikawa, Y. Otawara, H. Kobayashi, Y. Ogami, T. Kudo, M. Okuyama, S. Kadowaki,
Flame Structure and Radiation Characteristics of CO/H2/CO2/air Turbulent Premixed Flames
at High Pressure, Proceedings of the Combustion Institute, Vol. 33, 1543-1550, (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H20~H22),14,700 千円
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H23~H25),14,100 千円
学会賞等
日本機械学会賞(論文),小林秀昭,
(H18.4.7)
日本機械学会熱工学部門業績賞,小林秀昭,
(H20.10.15)
極限熱現象研究分野
教授
圓山 重直,准教授 小宮
助教授(~H19.3)丸田
敦樹,助教 岡島
淳之介
薫
海洋緑化計画 ‐Laputa Project‐
流体の温度差と濃度差で生じる自然対流(ストンメルの永久塩泉の原理)を,海洋物理
における大規模自然対流に応用し,海洋深層水を汲み上げることで,海洋砂漠と呼ばれる
領域での海洋緑化を行っている.海洋緑化計画とは,海洋砂漠の海域に鉛直パイプを設置
し,海洋深層水を汲み上げ,表層域の肥沃化すなわち緑化を目指す計画である.当研究室
は世界で初めて永久塩泉による海水汲み上げを成功した.海洋でのフィールド実験だけで
なく,CFD による湧昇量の推定などを行い,海洋深層水の無動力汲み上げを沖ノ鳥島海域
に実施にすべく,東京都と実用化に向けた共同研究を行ってきた.
図1 海洋緑化計画
図2
研究船白鳳丸
ナノ・マイクロ粒子を用いた波長選択性機能膜の開発
ナノ・マイクロ粒子が持つふく射の散乱現象を利用し,波長選択性を発現させたコーテ
ィングの理論解析および開発を行っている.ナノスケール現象を利用し,マクロスケール
へ応用を展開した研究である.見かけ上は黒色,すなわち可視光を選択的に吸収するが,
熱に大きく作用する近赤外光を選択的に反射するクールブラックコーティングの開発に成
功した.ナノ・マイクロ粒子として直径約 1μm の CuO 粒子を用いて,適切な厚さで基板に
塗布することにより選択的に近赤外光を反射でき,その温度は一般黒色塗料よりも 20˚C 程
低くなることを実験的に示した.
図3 波長選択性機能膜
図4 CuO 膜の可視・近赤外領域における反射率
高精度光干渉計を用いた物質拡散現象の解明
通常は目で観ることのできない熱の移動や溶液内での物質の移動を,光を使って“可視
化”し,極限環境下における物質移動現象の研究を行っている.本研究では,干渉計と呼
ばれる光学システムを改良利用し,微小領域を高精度に可視化できるシステムを開発して,
ヒト体内を模擬した諸条件下でタンパク質の非定常拡散場を観察し,物質拡散係数を高精
度に測定している.また,ヒト体内の環境が消化過程においてタンパク質の物質輸送現象
にどのような影響を及ぼすかについての評価を行い,生体内環境下でのタンパク質物質拡
散現象のモデリングおよびその機構解明を実験的に行っている.
図5
非定常拡散場の可視化
図6 分子量と物質拡散係数の関係
関連する学術論文

S. Maruyama, T. Yabuki, T. Sato, K. Tsubaki, A. Komiya, M. Watanabe, H.
Kawamura and K. Tsukamoto, Evidences of increasing primary production in the
ocean by Stommel's perpetual salt fountain, Deep-Sea Research I, Vol.58, 567-574,
(2011).

M. Baneshi, S. Maruyama, H. Nakai and A. Komiya, A new approach to optimizing
pigmented coatings considering both thermal and aesthetic effects, Journal of
Quantitative Spectroscopy & Radiative Transfer, Vol.110, 192-204, (2009).

Komiya, J.F. Torres and S. Maruyama, Measurement of Mass Diffusion Coefficient
of Multi-Component System in Aqueous Media by Phase Shifting Interferometer,
Defect and Diffusion Forum, Vol.297-301, 624-630, (2010).
関連する研究費
受託研究費
東京都 (H19~H23), 139,999 千円
科学研究費補助金 若手研究(A) (H21~H23), 14,950 千円
学会賞等
新聞記事 日経産業新聞 テクノオンライン 21 件,圓山重直,
(H18~H23)
日本熱物性学会賞(奨励賞), 小宮敦樹,(H19.10.24)
極低温流研究分野
教授
大平 勝秀,助教
宮田 一司
助教(H18.10~H22.3)野澤 正和
極低温スラッシュ流体の管内流動時の圧力損失低減,伝熱劣化に関する研究
水平伝熱円管,収縮・拡大管,コルゲート管を流動するスラッシュ窒素の圧力損失低減
および熱伝達劣化メカニズムを実験および数値解析により明らかにした.圧力損失低減は,
スラッシュ流体をポンプで配管輸送する際の所要動力低減に貢献するので重要である.
28
2
20
Fitted Curve
(Subcooled LN2)
8
16
6
12
4
8
2
4
0
Pressure Drop per Unit Length ⊿ P/L[kPa/m]
10
24
50
Pressure Drop per Unit Lengthhh
ΔP /L [kPa/m]
Prandtl-Karman Eq.
Subcooled
10-20 [wt%]
20-30 [wt%]
30-40 [wt%]
12
h [kW/m K]
Local Heat Transfer Coefficienttt
14
0
0
1
2
3
4
5
40
30
20
10
Subcooled LN2
0
6
0
Mean Velocity u mean [m/s]
図1
Subcooled LN2
10-15 [wt.%]
15-25 [wt.%]
25-35 [wt.%]
Prandtl-Karman Eq.
Hawthorne, et al. Eq.
0.5
1
1.5
2
2.5
3
Mean Velocity v [m/s]
3.5
4
圧力損失低減(左:円管,右:コルゲート管)と熱伝達劣化
サブクール極低温流体のキャビテーション流動不安定現象に関する研究
スロート径 1.5 mm と 2.0 mm の収縮・拡大ノズルを用いてキャビテーション試験を行い,
飽和状態およびサブクール状態での液体窒素のキャビテーション流動不安定現象について
解明を行った.一成分系気液二相流体の音速によってスロート流速が制限されるチョーク
現象の観点から検討を行い,チョーク現象とキャビテーション挙動の関係が明確となった.
キャビテーション挙動は,スロート径に依存することなく液体窒素温度が低下するに伴い,
25
α=0.03
α=0.06
Throat velocity [m/s]
20
15
Non-cavitation
Continuous
Intermediate
Intermediate
Intermittent
Speed of sound (α=0.03)
Speed of sound (α=0.06)
Speed of sound (α=0.09)
Speed of sound (α=0.12)
10
5
0
66
図2
68
α=0.09
α=0.12
D th = 2.0 mm
70
72
74
Throat temperature [K]
76
78
連続モード(左),間欠モード(右)と音速によるキャビテーションモードの変化
76 K を境に連続的モードから間欠的モードに変化する.
極低温気液二相流体の管内流動・伝熱に関する研究
水平円管および正方形管を流動する気液二相沸騰液体窒素の圧力損失,熱伝達係数を実
験により明らかにした.圧力損失については,水など常温流体で使用される均質流モデル,
分離流モデルを用いて評価を行った.熱伝達係数については,高クオリティ域において
Gungor-Winterton 式を用いて±30%以内で評価できる.
Liquid
Bubbly
Plug
Slug
4
Slug - Annular
Wavy - Annular
Wavy
+ 30 %
Gungor-Winterton eq.
2
Bottom
q = 5, 10, 20 kW/m2
1.5
3
hcal / hexp [-]
Pressure drop per unit length (Calculation)
ΔP/Lcal [kPa/m]
5
- 30 %
2
0.5
Butterworth’s model
1

  1  0 . 28 X tt
0
Slug
Annular - Slug
Annular - Wavy
Wavy

0 . 71  1
q = 5, 10, 20 kW/m2
0
1
1
2
3
4
Pressure drop per unit length (Experiment) ΔP/L exp [kPa/m]
0
5
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
Thermal equilibrium quality xeq [-]
Butterworth モデルによる圧力損失評価(左)と G-W 式による熱伝達係数評価(右)
図3
関連する学術論文

K. Ohira, A. Ota, Y. Mukai, T. Hosono, Numerical Study of Flow and Heat-transfer
Characteristics of Cryogenic Slush Fluid in a Horizontal Circular Pipe (SLUSH-3D),
Cryogenics, Vol. 52, 428-440, (2012).

大平 勝秀,奥山 惇,中込 圭,高橋 幸一,収縮・拡大管およびコルゲート管を流動
するスラッシュ窒素の圧力損失低減,低温工学,Vol. 47, 240-250, (2012).

K. Ohira, K. Nakagomi, N. Takahashi, Pressure-drop Reduction and Heat-transfer Deterioration
of Slush Nitrogen in Horizontal Pipe Flow, Cryogenics, Vol. 51, 563-574, (2011).

K. Ohira, T. Nakayama, T. Nagai, Cavitation Flow Instability of Subcooled Liquid Nitrogen in
Converging-diverging Nozzles, Cryogenics, Vol. 52, 35-44, (2012).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H21~H23)
,16,510 千円
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H18~H19),10,920 千円
学会賞等
低温工学・超電導学会(論文賞),大平 勝秀,(H23.5.19)
日本混相流学会(技術賞),大平 勝秀,(H20.8.9)
極限高圧流動研究分野
教授(~H24.3)林 一夫,准教授(~H21.12)伊藤 高敏,助教(~H23.3)関根 孝太郎
能動的地熱抽出のための内部を流体で満たされた三次元き裂の振動特性
能動的地熱抽出では,フラクチャリングに
よって作成された貯留層き裂の大きさや特
性を評価することが重要である.本研究は,
フラクチャリング時に貯留層き裂から放射
される波動を,き裂評価に利用する方法を検
討した.そこで,Laplace 像空間で,き裂面
上で成立する特異積分方程式を導き,その数
値解に基づいて,二次元き裂,三次元軸対称
き裂,三次元き裂のダイナミクスを調べ,そ
れらの間の相互の違いを明らかにした.さら
図1
に理論で予測されたき裂面に生じる定常波
の変位ギャップ
液体で満たされた円板き裂面
の存在を室内実験によって検証した.
結晶成長に伴って発生する膨張圧力の定量評価
塩化ナトリウム結晶が閉塞空間において
晶出する際の拘束材料内部の応力分布を,光
弾 性 法 に よ り 可 視 化 し , Crystallization
Halite crystal
Channel
pressure の定量評価を行った.すなわち,
PDMS マイクロ流路内で塩化ナトリウム結
晶を成長させたところ,過飽和溶液から成長
する結晶は,PDMS 流路壁面を押しのける
ことがわかった.また,その結晶成長過程は
非平衡であり,時間経過と共に結晶・流路壁
面界面の形状が変化する.結晶成長に伴う
Crystallization pressure は,PDMS のリタ
ーダンス変化により定量化できることがわ
図 2
かった.
600m)内の結晶成長
観測されたマイクロ流路(幅
大深度に適用可能な水圧破砕地殻応力測定法の開発
研究では,大深度測定に係わる様々な問題を
回避できる,新たな手法(BABHY 方式)を
提案した.この方法はフラクチャリング法を
応用したものであり,掘削ロッド内部でツー
Latch
900
870
Drill rig
3490
地殻応力情報が必要となっている.そこで本
Well GF-2 804 m
1415
る地層を対象とする.このため,相当深度の
Hydraulic pump
いし海表面からキロメートル級の深度にあ
Control and d ata acquisitio n system, and p ower supp ly
留などの地殻開発フロンティアは,地表面な
P isto n and cylinder
かの非在来型化石資源開発や CO2 の地中貯
Wireline
深海底面下にあるメタンハイドレートほ
1495
615
功した.
Winch
(ad justable)
ルを試作して深度 811 m での実施試験に成
Packers and
test section Scratcher
ルを昇降させることに特徴がある.測定ツー
図 3 試作ツール(左)とその試験を行
ったフィールド実験の写真(右)
関連する学術論文

T. Ito, K. Omura, and H. Ito, BABHY – A new strategy of hydrofracturing for deep stress
measurements, Scientific Drilling, Special Issue No.1, 113-116, (2007).

伊藤
伸, 関根孝太郎, 森谷祐一, 林
一夫, 有限弾性体中の流体で満たされたき裂に
生じる振動特性の検討(き裂に生じる定常波を測定するための最適な条件の検討)日
本機械学会論文集, Vol. 76, 158-163, (2010).

K. Sekine, A. Okamoto, and K. Hayashi, In situ observation of the crystallization pressure
induced by halite crystal growth in a microfluidic channel, American Mineralogist, Vol. 96,
1012-1019, (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B) 林 一夫(H20~H22),12,090 千円
科学研究費補助金,若手研究(A) 関根孝太郎(H21~H23),11,440 千円
学会賞等
日本地熱学会論文賞,伊藤高敏(H18.11.29)
電磁知能流体研究分野
教授 西山 秀哉,講師 髙奈 秀匡,
准教授(~H23.3)佐藤 岳彦,助教(~H19.3)髙奈 秀匡
流動制御による高機能ハイブリッドプラズマ流動システムの最適化
小電力型DC-RFハイブリッドアルゴンプラズマ流動システムに関して,電力条件を
変えずにヘリウムガスの混合比や下流からの水滴注入量を最適化し,プラズマエンタルピ
ーの増加,ノズル形状による粒子滞留時間の増加,脈動流の付与による伝熱促進によりア
ルミナ粒子球状化率を100%近くに向上させた.また,チェコ科学アカデミープラズマ
物理研究所との共同研究により,バイオマスガス化用水安定化ハイブリッドアークシステ
ムに関して,亜音速から超音速領域で2種の放射モデルによる熱流動場の差異,実機での
実験・計算統合解析,さらには,エネルギー変換効率の評価を行った.
図1 小電力型DC-RFハイブリッド
図2
水安定化ハイブリッドアークトーチ
プラズマ流動システム
燃焼促進用反応性プラズマジェットの実験・計算統合解析
小電力型大気圧DBDジェットトーチを開発し,誘電体材料や電極構造を考慮し,オゾ
ン生成量が最大となる最適な比投入エネルギーが存在することを示した.㈱本田技術研究
所との共同研究により,小型内燃機関の吸気部に装着し,吸入空気一部を高活性化するこ
とによる燃費改善効果を検証した.また,数値シミュレーションによりエンジン内の高温・
図3 燃焼促進用小電力型DBDジェット
高圧下での酸素ラジカルやオゾンの寿命評価やナノ時間スケールで生成される高活性化学
種の濃度場も明らかにした.
高機能化気泡プラズマジェットによる水質浄化
小電力放電で高活性空気を内包するマイクロバブルジェットに紫外線を照射したり,パ
ルス放電により直接気泡内でストリーマ放電させ,活性種を生成した気泡ジェットにより,
メチレンブルー等の難分解性有機物の高効率な分解技術を確立した.
図4 放電気泡ジェットによる水質浄化
関連する学術論文

H. Nishiyama, H. Takana, H. Shimizu, Y. Iwabuchi and Y. Nakano, Integrated
Experimental and Numerical Analysis of an Atmospheric Pressure Reactive Air
Plasma Jet Generated by Dielectric Barrier Discharge, International Journal of
Emerging Multidisciplinary Fluid Sciences, Vol. 1, 101-114, (2009).

H. Takana, J. Jang, J. Igawa, T. Nakajima, O. P. Solonenko and H. Nishiyama,
Improvement of In-Flight Alumina Spheroidization Process Using a Small Power
Argon DC-RF Hybrid Plasma Flow System by Helium Mixture, Journal of Thermal
Spray Technology, Vol. 20, 432-439, (2011).

H. Nishiyama, R. Nagai and H. Takana, Characterization of a Multiple Bubble Jet
with a Streamer Discharge, IEEE Transactions on Plasma Science, Vol. 39,
2660-2661, (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(A)(H18~H19)
,19,370 千円
科学研究費補助金,基盤研究(A)(H23)
,19,240 千円
学会賞等
日本機械学会流体工学部門賞,西山秀哉,
(H20.10. 15)
オゾンで燃焼効率化,小型ガソリンエンジン共同試作,東北大・ホンダ,日刊工業新
聞掲載,
(H21.9.10)
知能流制御研究分野
教授
中野 政身,助教
辻田 哲平
電界応答スマート流体・材料の創製・評価とその MEMS への応用
電場に反応して粘性が変化するER(Electro-Rheological)流体のMFPS(Micro-Fluid
Power System)への応用を目的に,マイクロ粒子やナノ粒子を分散したER流体を創製し,
それらの微小隙間でのER特性を把握するとともに,MFPSの一例としてマイクロERバル
ブで制御されるダイアフラムマイクロアクチュエータを用いた6個の凸ピンからなる点字
表示システムをフォトリソグラフィ法によって実現している.また,非導電性の微粒子を
ゼラチンに分散して硬化させたポリマーコンポジットからなるディスクロータを誘電体の
液体中に浸し,DC電場印加によって回転数とトルクを制御できるMEMS技術に適したマイク
ロモータを実現している.
2.5
Pins
E=
2
Torque τ( Nm)
Channels
2.00kV/mm
1.5
1.67kv/mm
1.33kv/mm
1
0.5
0
ER valves
ER fluid
図1
Braille display
ER fluid
0
500
1000
1500
Rotational speed N(rpm)
ER流体液圧駆動点字表示システム
図2
DC 電界応答マイクロモータ
MR流体・コンポジットの創製・評価とその先進スマートマシンへの応用
磁場によって粘性が可変なMR(Magneto-Rheological)流体をその粒子沈降が問題とな
る免震・制振装置へ応用することを目指し,MR流体を多孔質材(スポンジ・不織布等)
に含浸させたMR流体コンポジット,さらに強磁性体粒子をゴム材に混入したMRゴムコ
ンポジットを創製し,多孔質体の選定や粒子配向制御等によってそれらのせん断モードに
おけるMR効果を著しく向上できることを見出している.先進スマートマシンとして,永
久磁石を用いてダンパ変位や速度に依存して減衰力が変化する信頼性の高いパッシブ式の
MR流体ダンパ,MRブレーキを活用した随意制御大腿義足,MR流体アクティブ負荷機
を活用した下肢リハビリ用筋力評価・訓練システムなどを開発している.
Non-woven cloth
Maximum Shear Stress τ [kPa]
Polyurethane foam
Check valve
MR fluid
MRF132-AD
20
Sliding Plate
---Iron
―Aluminum
0
図3
Permanent magnet
<Nonwoven cloth>
12891 G=45.5[kPa]
S-21K G=38.1[kPa]
60
SS-72KE G=37.1[kPa]
K-16 G=34.5[kPa]
<Polyurethane foam>
No.52560 G=28.0[kPa]
12891 G=16.1[kPa]
K-16 G=12.1[kPa]
40
S-21K G=11.8[kPa]
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Magnetic Flux Density B [T]
0.6
0.7
MR流体多孔質コンポジットの創製
Bypass orifice
図4
MR circular orifice
パッシブ式MR流体ダンパ
ホールトーン自励発振現象の発振機構の解明と制御
円形空気噴流が同軸同径の穴の開いた平板に衝突して発生する噴流の自励発振現象であ
るホールトーン現象を対象に,直接数値シミュレーション(DNS)によって現象を数値的に再
現し,噴流せん断層に形成される組織的渦構造の平板エッジへの衝突とそれに伴う圧力波
の上流への噴流内部伝播やその圧力波の発生メカニズムを明らかにしている.また,その
低減化を目的に,下流の穴の開いた平板にリング状の突起を設けることによるパッシブ制
御法を提案し,噴流の自励発振現象を効果的に消滅できることを実験的に見出し,DNS によ
る数値シミュレーションによってもこの低減効果を再現しそのメカニズムを解明している.
(a)突起がない場合
図5
(b)突起を設けた場合
ホールトーン現象の下流穴付き平板へのリング状突起設置によるパッシブ制御の
噴流流れ場への影響(直接数値シミュレーション)
関連する学術論文
 T. Tsujita, M Kobayashi, M. Nakano, Design and Development of a Braille Display Using
Micro Actuators Driven by ER Suspension, International Journal of Applied Electromagnetics
and Mechanics, Vol.33, No.3-4, 1661-1669, (2010).

T. Murakami, M. Nakano, Numerical Evaluation Method for Semi-Active Damping
Characteristics of a Passive-Type MR Damper with Functional Damping Force, J. of Intelligent
Material Systems and Structures, Vol.22, No.4, 327–336, (2011).

K. Matsuura, M. Nakano, Direct Computation of a Hole-Tone Feedback System at Very Low
Mach Numbers, Journal of Fluid Science and Technology, Vol.6, No.4, 1-14, (2011).
関連する研究費
共同研究費,コスモ石油ルブリカンツ㈱(H21~H23),5,060 千円
共同研究費,㈱本田技術研究所四輪 R&D センター(H23),4,950 千円
学会賞等
油空圧機器技術振興財団「学術論文賞」
,村上貴裕,酒井理哉,中野政身,(H22.5.19)
日本機械学会流体工学部門「部門賞」
,中野政身,
(H22.10.30)
生体流動研究分野
准教授
太田
信
ポリビニルアルコールハイドロゲル (PVA) を用いた血管モデルの開発
血流状態を生体外で再現することで,医療従事者が治療法を検討したり練習したり,血
流測定を詳細に行ったりすることができることから,血管モデルの作製はとても重要とさ
れている.本研究分野では,生体軟組織に似た力学的機械的性質を持つ高分子材料 (ポリビ
ニルアルコールハイドロゲル)を用いて血管モデルを作製し,治療法の確立に貢献している.
今では,血管のみならず,口腔粘膜,心筋,骨など,他の生体組織の開発も手がけ,様々
な医療デバイスの評価に用いられるとともに,練習用として幅広く用いられている.
図 1 動脈瘤血管モデル内にカテーテルが挿入された様子
脳動脈瘤用ステントデザインが血流に与える影響
脳動脈瘤の血管内治療において,ステントはコイルでは治療できない脳動脈瘤へ適用が
可能とされ,近年注目を浴びている.しかしながら,ステントと血流との影響はまだまだ
分からないことが多く存在する.そこで私たちは,MRI や CT から得られた医療診断画像
を基に再構築した血管の 3 次元形状に,コンピュータ上でステントを配置して血流シミュ
図2
動脈瘤用ステントが留置されたときの血流の様子
レーションを行う方法を構築した.これによりコンピュータ上でのステントの評価が可能
になった.現在は,血流を効率よく減少させるデザインを提案している.
膜タンパク質周りの流動
膜タンパク質は細胞膜に存在し,細胞間同士の情報のやりとりを行っている.さらに,
膜の脆弱性にも大きく影響していると考えられる.これらの知見は,膜タンパク質の力学
的および構造的特性を考慮した新しいデバイス(ナノメディスン)の創成に寄与すると期待
されている.本研究では,膜タンパク質の立体構造および力学的特性の解明を細胞膜との
関係とともに研究している.
関連する学術論文

M. Ohta, A. Handa, H. Iwata, D. A. Rüfenacht, S. Tsutsumi, Poly-vinyl alcohol
hydrogel vascular models for in vitro aneurysm simulations: the key to low friction
surfaces, Technology and Health Care, Vol. 12, 225-233, (2004).

H. Anzai, M. Ohta, J.-L. Falcone, B. Chopard, Optimization of flow diverters for
cerebral aneurysms, Journal of Computational Science, 3, 1-7, (2012).

N. Tomita, K. Abe, Y. kamio, M. Ohta, Cluster-forming property correlated with
hemolytic activity by staphylococcal γ-hemolysin transmembrane pore, FEBS
Letters, Vol. 585, 3452-3456, (2011).
関連する研究費
経済産業省委託
国際標準開発事業、外科用インプラント、これに関連する器具及び計
装装置の検査等に用いる力学的安全性評価用模擬骨に関する国際標準化 (平成 23 年〜平
成 25 年)15,000 千円
日本学術振興会
先端研究拠点事業-拠点形成型-、「血流・血管・材料における界面流
動ダイナミクスの先進医工国際研究コンソーシアム形成」(平成 20 年度~平成 21 年
度)20,000 千円
学会賞等
第 19 回日本脳血管内治療年学会
ポスター銀賞「ステントのセルデザインが脳動脈瘤内
の血流に与える影響:有限要素法による解析」(H15.11.17)
International Conference on Flow Dynamics2010 Outstanding Award「Analyzing
Blood Flow in Bifurcated Artery with Cerebral Aneurysm Using Two Stents」, 安西眸,
(H22.11.1)
知的流動評価研究分野
教授
高木 敏行,准教授 内一 哲哉,准教授(H24.3~H24.4)
・講師(H21.4~H24.3)・
助教(~H21.3)三木 寛之
き裂の診断技術の確立
– 材料劣化からき裂の評価まで −
電磁現象を用いた非破壊検査法である渦電流探傷法は,材料の表面の検査に有効であるこ
とが知られており,非接触である,信号が電気的に得られる,水中でも利用できる,などの
特徴がある.本グループでは,きず近傍の電磁現象に着目し,渦電流探傷法に特化したきわ
めて高速な信号予測法の開発に成功した.さらに,きず信号から逆問題としてきずの形状を
求めることが可能になった.また,アレイ形のプローブの走査特性を生かし,応力腐食割れ
の迅速な検出と長さのサイジングを可能にした(図 1, 2009 年 3 月日本原子力学会賞技術賞).
一連の研究により逆問題を含めた数値電磁非破壊評価学が構築された(2007 年 9 月 ISEM
Award および 2011 年 4 月文部科学大臣表彰科学技術賞).
き裂の検出や評価に加え,材質や材料劣化に関する研究についても取り組んできた.電磁
非破壊評価法に基づき,片状黒鉛鋳鉄,球状黒鉛鋳鉄の硬さ,フェライト/パーライト率,
黒鉛組織,チル組織等の定量的評価法を確立した(2009 年 4 月文部科学大臣表彰若手科学者
賞).また,インコネル 600 合金の鋭敏化や高クロムフェライト鋼のクリープ損傷の非破壊評
価法についても開発している.
図1
マルチコイルアレイプローブによる大規模試験体の探傷
長寿命化・高効率化のためのコーティング-機能性を有する硬質炭素膜
大型化,複雑化が進んだ現在の機械・構造システムではシステムの簡素化と省資源化,省
エネルギー化が社会の要請として注目されている.このような課題に対しては,新しい機能・
機械を生み出すことがひとつの解法であるが,従来のシステムを高性能化し,さらに多機能
化を図ることも目標達成への重要な鍵である.本グループでは,「材料と機械システムの
QOL(Quality of Life)」をキーワードとして提案し,機械を構成する個々の材料の機能性を高
めることによって,機能面だけでなくシステムとしての信頼性と安定性を向上させることを
目指している.
エネルギー効率の向上や稼動コストを低減し,機械システムの寿命や信頼性の向上をもた
らす,高機能性材料を研究開発している.具体的には,①金属を含む非晶質炭素膜を用いた
導電性摺動要素の開発,② 研磨ダイヤモンド膜による流体潤滑を利用した超低摩擦技術の研
究に取り組んでおり,最新の成果は国際会議(流動ダイナミクス国際会議 ICFD)のセッシ
ョン(1st-5th Functionality Design of the COntact Dynamics: (DECO2007-2011))や他の
国際会議を通じて世界に発信している.
図2
硬質炭素膜による機能性システム
関連する学術論文
 H. Miki, T. Takeno, T. Takagi, Tribological Properties of Multilayer DLC/W-DLC
Films on Si, Thin Solid Films, Vol.516, 5414-5418, (2008).

T. Uchimoto, T. Takagi, T. Abe, Electromagnetic Nondestructive Evaluation of
Graphite Structures in Flake Graphite Cast Iron, Materials Transactions, Vol. 51,
1114-1119, (2010).

S. Xie, Z. Chen, T. Takagi and T. Uchimoto, Efficient Numerical Solver for
Simulation of Pulsed Eddy Current Testing Signals, IEEE Transactions on
Magnetics, Vol. 47, 4582-4591, (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(A)(H23~H26),47,580 千円
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H23~H25),18.720 千円
学会賞等
文部科学大臣表彰科学技術賞研究部門(電磁現象を用いた定量的非破壊検査法の高度化
研究),高木 敏行,(H23.4)
文部科学大臣表彰若手科学者賞(電磁非破壊評価法に基づく鋳鉄材質評価の研究)
,内一
哲哉,(H21.4)
非平衡分子気体流研究分野
准教授
米村
茂
マイクロ・ナノスケールで現れる気体潤滑に関する研究
部分研磨されたダイヤモンド薄膜を回転金属円盤上で摺動させた場合に,摩擦係数が劇
的に低下する現象が見られることが報告されている.この実験の際に摺動音が発生しなか
ったことから,摺動する両面が接触せず,薄膜が浮上する気体潤滑現象になっていると考
えられる.本研究では,両面間に挟まれるマイクロ・ナノスケールの気体流れに注目し,
その数値シミュレーションおよび理論的考察を行うことによって,両面間に高圧力が発生
し,気体潤滑状態に至るメカニズムを明らかにした.また,表面の材質がダイヤモンドで
なくても圧力発生が得られることを明らかにした.この圧力発生は両面間の寸法がマイク
ロからナノへと小さくなるにしたがって顕著となり,マクロなスケールでは消失してしま
う.つまり,マイクロ・ナノスケールでのみ現れる気体潤滑現象であり,従来の気体潤滑
機構と全く異なることを示している.本研究の成果により新しいタイプの気体潤滑システ
ムの開発が可能となる.
図1 計算領域
図2 圧力分布への面間距離の影響
高周波マグネトロンプラズマにおける自己バイアス電位に関する研究
高周波マグネトロン放電はスパッタリングなどの半導体デバイス製造工程で広く用いら
れている.スパッタリングプロセスにおいては,電場により加速した高エネルギーイオン
をターゲットにぶつけて,ターゲットから原子を弾き出し,基板などに蒸着させて薄膜を
生成する.イオンは高周波で振動する電場の時間的変化に追随できず,時間平均化された
電場に従って運動する.つまり,時間平均化されたプラズマ電位とターゲットに現れる自
己バイアス電位の電位差により加速される.スパッタリング率は入射イオンのエネルギー
に大きく依存するため,自己バイアス電位の特性を理解することが重要である.磁場のな
い容量結合プラズマにおいては自己バイアス電位の研究は理論的にも実験的にも多くの知
見が得られているが,マグネトロン放電のように強磁場を伴う場合にはよく分かっていな
い.本研究では,自己無撞着な数値シミュレーションを行うことにより,平行平板電極間
に立てられた高周波マグネトロン放電における放電構造および自己バイアス電位の特性を
明らかにした.
マイクロプラズマに関する研究
プラズマ CVD 技術は液晶ディスプレイや太陽電池などの電子デバイス作成に必要な薄膜
生成に用いられている.μ-TAS や MEMS などで見られるように,近年の装置サイズの縮小
化に伴い,マイクロプラズマ技術が注目を集めている.本研究ではガラス細管の両端に電
極を配置して生成するシランガスのマイクロプラズマの構造を自己無撞着な PIC/MC シミ
ュレーションにより調べた.細管の管壁とプラズマバルクの強い相互作用が観察された.
大部分の電子は細管に沿うシースエッジ付近で生成され,従来の大きさのプラズマ装置と
は全く異なる放電構造が観察された.また,管の半径を 1.5mm から 0.5mm まで縮小させ
た場合に,得られる電子数密度が高くなり,プラズマを発生させるために必要な印加電圧
が低下することを示し,そのメカニズムを理論的に明らかにした.
関連する学術論文

S. Yonemura and K. Nanbu, DC Self-bias Voltages in Radio Frequency
Magnetron Discharges, Thin Solid Films, Vol. 506-507, 517-521, (2006).

L. Tong, S. Yonemura, H. Takana and H. Nishiyama, Effect of Configuration on
Microdischarge Structure in a Narrow Channel, Physics Letters A, Vol. 371,
Issues 1-2, 140-144, (2007).

S. Yonemura, M. Yamaguchi, T. Takeno, H. Miki and Toshiyuki Takagi, Effect of
Micro Gas Flow on Low Friction Properties of Diamond Coating with Partly
Polished Surface, AIP Conference Proceedings, Vol. 1084, 1153-1157, (2008).
関連する研究費
科学研究費補助金,若手研究(B)(H17~H19),2,500 千円
科学研究費補助金,基盤研究(C)(H20~H22),4,550 千円
科学研究費補助金,基盤研究(C)(H23~H25),5,330 千円
分子熱流研究分野
教授
小原 拓
講師(H23.4~)・助教(H19.4~H23.3)・助手(H19.1~H19.4)菊川 豪太
ポリマー液体及びソフトマターの熱輸送特性を支配する分子動力学機構
様々な分子による液体において熱輸送特性を支配する分子動力学機構を明らかにするこ
とは,その液体がなぜその熱伝導率を示すのかという問いに対する根本的な答えとなるだ
けでなく,所望の特性をもつ液体に必要な分子の特性を示し,熱伝導あるいはその媒体の
「設計」につながる.本研究では,新たに導出した熱流束の分子動力学表現式により,典
型的な長鎖状ポリマーであるアルカンの飽和液に対して,分子間相互作用や各種の分子変
形に対応した分子内相互作用が熱輸送になす寄与を定量的に評価し,分子鎖長の増大に伴
って分子内相互作用の寄与が支配的となり,分子量数百で過半に達することを見出した.
この結果は,ポリマーが一定の配向で自己組織化したソフトマターにおいて分子方向に選
択的な異方性熱伝導が生じることを示唆するものであるが,実際に水中の脂質膜について
解析を行い,
膜面垂直方向の熱伝導率が平行方向に比べて約 5 倍高いことを明らかにした.
(a)
(b)
図 1 (a)アルカン飽和液における分子鎖の増大による分子内エネルギー伝搬の増大
(b)長鎖状の脂質分子が自己組織化により形成した脂質二重膜
自己組織化単分子膜界面における輸送特性
自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer, SAM)をはじめとした有機分子薄膜材
料は,固体表面の修飾技術として広く応用が志向されており,表面の物理化学的特性を分
(a)
(b)
図 2 分子動力学シミュレーションによるアルカンチオール SAM と水溶媒の界面.
(a)メチル末端 SAM(疎水性表面)および(b)OH 末端 SAM(親水性表面).
子スケールから柔軟に制御する技術として注目されている.これら表面修飾技術のナノ工
学,バイオデバイス技術への応用に際しては,界面における熱や物質などの輸送特性を明
らかにすることが重要となる.本研究では分子動力学法を利用し,典型的な金基盤上での
SAM と種々の溶媒との界面における熱輸送を詳細に解析した.結果として,SAM 修飾に
より金界面と有機溶媒との熱抵抗が低減することを明らかにした.また,SAM と溶媒との
親和性の界面熱抵抗への影響や,有機分子薄膜として分子スケールで高い配向秩序を持つ
SAM 層内部での特異な熱輸送機構を明らかにした.
固液界面近傍の物質輸送特性
固液界面における溶媒あるいは溶質分子の吸着・脱離や,界面近傍の液体構造と物質輸
送特性は,微細構造の薬液処理やダイナミックコーティングなどにおいてプロセスの成否
を決定する重要な因子である.半導体製造過程における SiO2 の表面処理やアルコール置換
を対象に,物質輸送を支配する自由エネルギー分布を分子動力学シミュレーションにより
計測し,液体中の分子スケール構造と物質輸送特性との関連を解析している.
(a)
(b)
図 3 (a) SiO2 (011)面-水界面に挿入した IPA 分子の運動解析による自由エネルギー計
測 (b) SiO2 表面近傍における IPA による水の置換
関連する学術論文
 D. Torii, T. Ohara and K. Ishida, Molecular scale mechanism of thermal resistance
at solid-liquid interfaces (Influence of interaction parameters between solid and
liquid molecules), Transaction of ASME, Journal of Heat Transfer, Vol. 132, 012402,
(2010).
 T. Nakano, G. Kikugawa and T. Ohara, A molecular dynamics study on heat
conduction characteristics in DPPC lipid bilayer, Journal of Chemical Physics, Vol.
133, 154705, (2010).
 T. Ohara, Tan C.-Y., D. Torii, G. Kikugawa and N. Kosugi, Heat conduction in chain
polymer liquids: Molecular dynamics study on the contributions of inter- and
intramolecular energy transfer, Journal of Chemical Physics, Vol. 135, 034507,
(2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(C)(H18~H20),3,500 千円
科学研究費補助金,基盤研究(C)(H21~H23),4,680 千円
学会賞等
日本機械学会奨励賞(研究),菊川豪太,(H21.4.7)
日本機械学会賞(論文賞),小原 拓,
(H21.4.7)
日本機械学会熱工学部門賞(業績賞),小原 拓,(H23.3.31)
日本熱物性学会賞(論文賞),小原 拓・菊川豪太,
(H23.11.22)
ナノ界面流研究分野
准教授
徳増
崇
大規模分子シミュレーションによる次世代燃料電池システムの開発
地球温暖化問題に対する解決策の 1 つとして, 燃料電池内部の反応物質の輸送現象をス
ーパーコンピュータを用いた大規模分子動力学シミュレーションにより解析し, 効率よく
反応物質を輸送できる材料・システムの開発を行うことを目的として研究を行っている. 固
体高分子形燃料電池の効率向上のためには反応物質である水素(プロトン), 酸素, 水をでき
るだけ効率よく電極触媒表面に輸送させる必要があるが, これらの物質はナノメートルか
らマイクロメートルのサイズを有する流路内を移動するため, 通常の連続体理論ではその
挙動に対する知見を得ることが困難である. 本研究では燃料電池内部の様々なナノスケー
ルの物質輸送現象を分子動力学法によりシミュレートし, 輸送現象の特性や支配要因を明
らかにしてこれら反応物質の輸送に最適な構造・性質を有する材料・システムの設計指針
を構築するための研究を行っている. この研究はさまざまな企業や研究機関との共同研究
であり, 世界に先駆けて日本がこの分野の技術を確立するための一翼を担っている.
MPLナノ多孔体内の
水分の蒸発・凝縮現象
MPLナノ多孔体内の液滴輸送現象
6
]
olm
/l
a
ck
[
yg
re
n
E
][
2
s 200
leu
ecl
oM 100
fo
0
-2
-4
-6
0.0
][
y 1.0
t
il
i 0.8
ab
b 0.6
ro
P
n 0.4
oi
t 0.2
ai
c 0.0
os
s 0.0 4
Di
4
0. 2
0.4
0. 6
0.8
.m
u
N
1.0
Q [A]
0
1
2
3
0
1000
2000
3000
Time [ps]
15
12
]
[?
2
: Pt-Fix
: T=0 K
: T=300 K
0.06
0 .0 8
0.1 0
0.12
DS
M
]
m
/g
k
[
9
6
yt
i
sn
e
D
3
0 .1 4
0
Initial Translational
Energy
白金表面上での水素分子の解離吸着現象
3000
800
]
m
/g 600
k
[
3
0
1
2
3
4
5
3
2000
0
7
0
Time [ps]
10
20
30
Distance [A]
3
5
7
yt 400
i
sn
e 200
D
3
5
1000
40
0
0
10
20
30
40
Distance [A]
PEM内のプロトン輸送現象 触媒層内アイオノマーの酸素透過現象
図 1: 燃料電池の各要素内部における物質輸送特性の分子動力学的解析
分子の量子性を考慮したシミュレーション手法の開発
流体を構成する分子は,多かれ少なかれ「量子性」を有しており,その量子性が熱流動
現象に影響を与える状況が少なくない.たとえば燃料電池の発電効率を左右するプロトン
の輸送現象に関しては,プロトンと水分子との解離・再結合を伴う輸送機構(Grotthus
Mechanism)がその輸送性能を決定している.また液体水素の物性値に関しては,水素原子
の質量が軽いことによる不確定性原理が液体水素
の圧力に大きな影響を及ぼし,古典論ではその物性
を記述できない.このような流れ場に対して,分子
動力学法にその原子・分子の「量子効果」を取り込
むことにより,より現実に近い流れ場をシミュレー
ションで再現させることや,その量子効果の流れ場
への影響を把握することを目的として研究を行っ
ている.現在の所,量子効果を考慮した計算手法を
用いて低温水素の状態方程式を構築し,従来の古典
MD 計算より得られたものと比較することにより,
量子効果が低温水素に与える定性的影響を明らか
図 2 CMD 法による液体水素の分
にする事に成功した.
子シミュレーション
関連する学術論文

T. Tokumasu and D. Ito, The Dynamic Effects of Dissociation Probability of
H2-Pt(111) System by Embedded Atom Method, Journal of Applied Physics, Vol.
109, 063509, (2011).

T. Tokumasu, I. Ogawa, M. Koyama, T. Ishimoto and A. Miyamoto, A DFT Study of
Bond Dissociation Trends of Perfluorosulfonic Acid Membrane, Journal of
Electrochemical Society, Vol. 158, B175-B179, (2011).

T. Tokumasu, M.-H. Meurisse, N. Fillot and P. Vergne, A Molecular Dynamics Study
of a Nanoscale Liquid Bridge under Shear, Tribology International, accpted, (2012).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H24~H26),19,282 千円
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構からの受託研究「固体高分子形燃料電池実用
化推進技術開発/基盤技術開発/MEA 材料の構造・反応・物質移動解析」(H22~H24),
70,161 千円
学会賞等
日本電気化学会
第 75 回大会
ポスター賞,徳増崇, 小川和泉, 船本聖絵, 古山通久, 宮
本明,(H20.3.30)
「中小政策・基盤技術で勝ち抜く」日刊工業新聞, (H24.07.30)
生体ナノ反応流研究分野
教授
佐藤 岳彦
大気圧プラズマ流による細胞の活性化・不活性化機構
プラズマ流の機能性を利用した医療への応用は,近年「プラズマ医療」として世界的に
立ち上がりつつある.本研究ではその学理構築を担うべく,プラズマが水中に生成する安
定な化学種のがん細胞への影響について,細胞生存率,形態変化(図1),細胞内の酸化状
態,遺伝子発現応答(図2)などから明らかにし,過酸化水素が主たる細胞不活化因子に
なっていることを世界で初めて明らかにした.
図1 がん細胞の顕微鏡写真.
(a) 未処理,(b) プラズマ照射培
地暴露.
図2 遺伝発現強度のスキャッ
タープロット.プラズマ照射培地
と過酸化水素添加培地の比較.
大気圧プラズマ流による滅菌機構と化学輸送機構
新型インフルエンザや院内感染などの感染症対策に向けた新しいプラズマ滅菌装置の開
発またその滅菌機構などの解明を進めている.プラズマ流中のラジカル生成輸送機構(図
3)を流体工学的視点からの実験・数値解析により解明するとともに,プラズマ照射後の
大腸菌の細胞質の漏出や変形(図4)から損傷状態を世界で初めて数値化し,滅菌因子や
滅菌機構を明らかにした.
図3 (a)大気圧プラズマ流の可視化
写真,(b)励起窒素分子の発光分布.
図4 大腸菌の SEM 画像.(a)
未処理,(b)プラズマ照射.
気液プラズマ流の熱流動場解析と水の高機能化
バイオ・医療や環境問題では,気液界面を含む熱流動場や反応場が課題を解決する鍵を
握ることが多い.本研究では,液面上に形成したプラズマ流の熱流動場を可視化すること
で,気相中にガス流(図5)や水中に循環流が形成されることを明らかにした.また,水
中プラズマ発生後に酸化還元電位(ORP)や水質が変化する機構の解明を進め,水の高機能
化を目指している.
図5
プラズマ発生時に気相中に形成されるガス流
関連する学術論文

T. Sato, T. Miyahara, A. Doi, S. Ochiai, T. Urayama and T. Nakatani, Sterilization Mechanism
for Escherichia Coli by Plasma Flow at Atmospheric Pressure, Applied Physics Letters, Vol.89,
073902, (2006).

T. Sato, S. Ochiai and T. Urayama, Generation and Transport Mechanisms of Chemical Species
by a Post-Discharge Flow for Inactivation of Bacteria, New Journal of Physics, Vol.11, 115018,
(2009).

T. Sato, M. Yokoyama and K. Johkura, A key inactivation factor of HeLa cell viability by a
plasma flow, Journal of Physics D: Applied Physics, Vol.44, 372001, (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(A)(H21~H23),36,200 千円
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H19~H20)
,15,600 千円
学会賞等
日本機械学会環境工学部門研究業績賞,佐藤岳彦,(H23.6.30)
特許第 4902842 号,
「プラズマ発生方法およびプラズマ発生装置」
,佐藤岳彦,他 2 名,
(H24.1.3 登録)
複雑系流動システム研究分野
助教
伊賀 由佳
教授(~H24.3)井小萩
利明
高速液滴衝突現象の数値解析
高速気液二相系の流体システムでは流動現象によって健全性が損なわれることがある.例
えば,原子力発電プラント冷却水系などの高圧蒸気を作動流体とするシステムにおいては,材料
表面への高速液滴衝突現象により液滴衝撃エロージョンが引き起こされ,配管減肉が発生するこ
とがある.本研究では,高速液滴衝突の三次元流体・材料連成数値解析を行い,衝撃弾性領域と
いう新たな評価指標を導入することによって,損傷体積と液滴径および衝突速度の関係のべき指
数を数値的に予測した.これらの関係は既存の減肉予測実験式と良く符合した.また,材料表面
に液膜が存在する場合は,液滴衝突時の最大圧力と最大相当応力が液膜厚さに対して指数関数的
に減衰することを示した.この研究は,原子力発電システムの高経年化対策に直結しており,流
体システムの安全性評価技術の進展に寄与するものである.
(a) 平面の場合
図1
(b) 液膜のある場合
(c)くさび状の損傷がある場合
各種固体壁面への高速液滴衝突時の圧力波および応力波伝播の様相
キャビテーションエロージョンの数値予測法の開発
ポンプなどの高速液流中ではキャビテーション気泡の崩壊現象によりエロージョンが引
き起こされ,それの数値予測手法の確立が期待されている.本研究では,翼形まわりのキャ
ビテーション流れの均質的数値解析,流れ場中の球状気泡追跡,壁面近傍の非球状単一気泡崩壊
の数値解析,実験的壊食モデルを連成し,さらに流れ場中の気泡数密度分布も考慮して,翼面で
の壊食量を定量的に求めるという数値予測手法を開発した.本手法による遷移キャビテーション
状態での翼形まわりの壊食量の予測値は,実験結果のそれと定量的に良く一致した.
図2
壁面近傍における単一気泡の非球形崩壊と再膨張の様相
液体ロケットターボポンプに発生するキャビテーション不安定現象の研究
液体ロケットエンジンのターボポンプでは,キャビテーション不安定現象により安全性を脅かす振
動現象がしばしば発生し,これを抑止するための工程がロケット打ち上げコストを増大させている.
ターボポンプは超高速,超高圧の流体機械であるため,実験のみによる現象解明は容易ではない.本
研究室では,JAXA角田宇宙センター・ターボポンプチームにおける実験と,流体研におけるスー
パーコンピューティングとの両面から,この現象解明に取り組んでいる.数値計算では,ターボポン
プ入口の三枚羽根インデューサを三枚周期平板翼列で模擬し,旋回キャビテーションの発生メカ
ニズムの解明,キャビテーションサージにおける脈動の伝播メカニズムの解明,キャビテーショ
ン不安定現象に及ぼす打上げ時の加速度の影響,タンデム翼列における不安定性制御手法につい
て,解析を行った.
図3
三枚周期平板翼列に発生する超同期旋回キャビテーションの様相
関連する学術論文

H. Sasaki, Y. Iga, T. Ikohagi, Study of Droplet Impingement Phenomena by Fluid/Solid Coupled
Simulation, Proc. Joint International Conference on Supercomputing in Nuclear Applications
and Monte Carlo 2010/SNA+MC2010, Tokyo JAPAN (2010), No. 10189.

N. Ochiai, Y. Iga, M. Nohmi, T. Ikohagi, Numerical Analysis of Nonspherical Bubble Collapse
Behavior and Induced Impulsive Pressure during First and Second Collapses near the Wall
Boundary, Journal of Fluid Science and Technology, Vol. 6, 860-874, (2011).

Y. Iga, Y. Yoshida, Mechanism of Propagation Direction of Rotating Cavitations in a Cascade,
Journal of Propulsion and Power, Vol. 27, 675-683, (2011).
関連する研究費
(株)インテリジェントコスモス研究開発機構,高経年化対策強化基盤整備事業(H18
~H22)49,329 千円
荏原製作所共同研究,
「流体機械性能予測・壊食予測への応用も考慮したキャビテーショ
ン流れ解析技術に関する研究」(H21~H23)1,985 千円
学会賞等
日本機会学会奨励賞(研究),「実事象再現化を重視した数値解析モデルによるキャビテ
ーション不安定現象の解明とその抑制の研究」
,伊賀由佳(H18.4.7)
日本機械学会流体工学部門賞,井小萩利明(H20.10.15)
計算複雑流動研究分野
教授
服部 裕司,助教
中野 わかな
教授(~H20.3)井上 督,助手(~H18.9)畠山 望
複雑形状・移動物体を含む流れの高精度数値解法の開発と応用
自然現象や工業的な場面でわれわれが遭遇する流れは,一般に複雑な形状をもつ物体や
運動・変形する物体を含んでいる.これを高い精度で数値解析により捉えることは従来の
方法では困難であった.これに対しわれわれは埋め込み境界法の一種である Volume
Penalization 法(VP 法)を基本手法とする複雑形状物体を含む流れの高精度数値解法を開
発と応用に関する研究を行った.まず,精度の検証に関する基礎研究を行い,VP 法の精度
向上を実現した.さらに非圧縮性流れへの応用として,ピストン運動による渦対の形成過
程および楕円流中の局所擾乱成長の高精度解析を VP 法により行った.また,圧縮性流れに
おける VP 法の基礎研究として,角柱まわり流れにおいて発生する空力音の直接解析を行い,
基準圧に比べて微弱な音波を高い精度で捉えられることを実証した.
図1
渦対の形成過程
図2 角柱まわり流れにおける空力音の発生
乱流の統計的性質の解明
乱流の統計的性質の解明は,数値流体力学において広く必要とされる乱流モデルの改良
のほか,流体関連機器の性能向上や現象の解明のために重要である.非圧縮性乱流と圧縮
性乱流の統計的性質を主に直接数値シミュレーションにより研究した.まず,3 次元非圧縮
図3
非圧縮性乱流の渦構造
図4
圧縮性乱流の密度分布
性乱流の大規模直接数値シミュレーションを行い,渦構造の動的 3 次元可視化により,高
渦度領域の移流/変形,生成/消滅,融合/分裂などのダイナミクスを解明した.次に,2
次元圧縮性乱流の直接数値シミュレーション研究を行い,初期においてエントロピーが一
様であるか否かによって密度スペクトルのスケーリング則が異なること,さらに非一様の
場合には密度分布にシート状の構造があらわれることを明らかにした.
渦構造のダイナミクス
流動現象の解明のために渦運動の理解は重要な役割を果たす.渦の動力学の立場から,
渦構造のもつ特性・多様性・普遍性を解明することを目標とし,さまざまな渦構造の性質
とダイナミクスについて研究した.まず,渦の曲りに直接的な起源をもつ曲率不安定性の
性質を理論的に解明した.渦輪および回転翼端渦のモデルであるらせん渦を具体的な対象
とし,曲りに加えて,捩り・回転・軸流の効果が不安定性にどのようにあらわれるかを明
らかにした.また,楕円流において,局所的に与えた擾乱の成長を直接数値シミュレーシ
ョンにより解析し,楕円型不安定性による線形成長から非線形過程を経て乱流に至る過程
の詳細を解明した.局所擾乱は小さいエネルギーで導入することができるため,渦流れの
制御への応用が期待される.
図5 曲率不安定性の成長率
図6
楕円流中の局所擾乱の成長
関連する学術論文

Y. Hattori and Y. Fukumoto, Short-Wavelength Stability Analysis of a Helical
Vortex Tube, Physics of Fluids, Vol. 21, 014104, (2009).

Y. Hattori and Y. Fukumoto, Short-wave Stability of a Helical Vortex Tube: the
Effect of Torsion on the Curvature, Theoretical and Computational Fluid Design,
Vol. 24, 363-368, (2010).

Y. Hattori and K. Hijiya, Short-wavelength stability analysis of Hill's vortex
with/without swirl, Physics of Fluids, Vol. 22, 074104 (2010).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H19~H20),8,970 千円
科学研究費補助金,基盤研究(C)(H20~H23),3,900 千円
大規模環境流動研究分野
教授
伊藤 高敏,助教
清水
浩之
CO2 地中貯留のための反応性グラウトによる人工バリアー形成法
CO2 地中貯留の上部を覆うキャップロッ
クの欠陥を通して漏洩が起きた場合に,その
漏洩を人工的に修復するための方法として
Porous layer filled with
reaction grout
原位置反応法を提案した.これは,漏洩箇所
の近くにある観測井,あるいは新たに掘削し
80
50
10
8
5
1
0.5
0.1
0.001
た坑井を通じて注入した反応性グラウトと
漏洩した CO2 が混合して生じる反応生成物
によって漏洩箇所を充填するものである.そ
CO2 leakage path
(Fracture)
こで,同法の基本原理を室内実験で検証する
と共に,フィールドに適用した際の挙動を数
値シミュレーションで予測し,その有効性を
図1
検証した.
が低下し漏洩箇所が修復された様子
CO2 とグラウトの反応で浸透率
微小地震に基づく地熱貯留層の流路構造評価
地熱開発の可否は,地下にある地熱貯留層
内の流路構造をいかに正しく把握できるか
に大きく依存する.しかし,貯留層は一般に
深度数 km に位置するため,その状態を地表
から直接評価することはできない.一方,貯
留層形成の為に大量の水を高圧で地下に圧
入する作業,つまりフラクチャリングがしば
しば実施され,それに伴って微小地震が発生
Injection well
する.そこで本研究では,微小地震が既存き
裂内の水圧上昇によって発生することに着
目して,微小地震の発生状況から水圧破砕に
伴って発生した貯留層内の水圧分布を評価
し,さらには,その結果から流量の分布を評
価する方法を構築した.
図 2 評価された地熱貯留層の圧力分布
(豪州試験サイト,深度 4 km)
未固結地層フラクチャー形成挙動の解明とメタンハイドレート開発への応用
エネルギー新資源と注目されるメタンハ
SH
イドレート(MH)からのメタンガス生産手
Slit
Casing
pipe
法として,流体圧によって地層を破壊するこ
Sh
とでフラクチャー型の流路を人為的に作成
する技術(フラクチャリング)の利用が期待
されている.そこで室内実験と数値シミュレ
Sh
ーションによってフラクチャー形成挙動を
調べた.これにより,MH 開発の対象となる
1cm
未固結体では,加圧流体の粘性・圧入レート,
SH
試験片の浸透率等の組み合わせによって破
壊形態が引張型から圧縮型に変化し,さらに
図 3
フラクチャーの形状が直線状から枝分かれ
ー.固結体では見られない分岐が起きて
状に変化するなど,固結体には見られない特
いる.
室内実験で形成されたフラクチャ
有の現象が起こることが明らかとなった.
関連する学術論文

H. Shimizu, M. Murata, T. Ishida, The Distinct Element Analysis for hydraulic fracturing in
hard Rock considering fluid viscosity and particle size distribution, International Journal of
Rock Mechanics and Mining Sciences, Vol. 48, 712-727, (2011).

T. Ito, K. Yamamoto, S. Nagakubo, Effect of anisotropic confining stresses on
hydraulically-induced fracture, Proceedings of the 45th US Rock Mechanics / Geomechanics
Symposium, San Francisco, ARMA 11-247 , (2011).

T. Ito, T. Shono, K.
Sekine, K. Yamamoto, A new laboratory test for shear fracture formation
and its permeability measurement, Proceedings of the 12th ISRM International Congress on
Rock Mechanics, Beijing, Vol.1, No.1, pp.645-648, (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B),伊藤高敏(H21~H23),14,950 千円
石油天然ガス・金属鉱物資源機構,伊藤高敏(H22~H23),4,250 千円
学会賞等
ARMA 2010 Award for Research in Rock Mechanics, Takatoshi Ito, (H22.6.30)
岩の力学連合会論文賞,清水浩之,(H23. 6. 9)
流体数理研究分野
教授(兼担)徳山 道夫
助教
寺田 弥生
ガラス転移近傍におけるゆっくりとした緩和現象
-薄膜中に閉じ込められた磁性コロイド鎖と一層膜磁性コロイドの横拡散-
流体を結晶化をさけつつ冷やすことによりガラスと呼ばれる非晶質となる.近年,コロ
イドガラスや,バルク金属ガラスなど新たなガラスが合成され,その優れた材料特性など
から,ガラス転移現象は注目を集めている.しかし,液体が過冷却液体状態を経てガラス
へと至るガラス形成過程は,未だ,理論的に解明されていないため,ガラスの作成は経験
的な手法に頼らざるをえない.そこで,大規模計算機実験を行うことによって,ガラス転
移や液体―結晶転移近傍の流動相における拡散過程のダイナミクス,および,空間構造に
ついて,系に寄らない普遍的な性質と系特有の性質を明らかにすることにより,将来的に
工学的応用に役立つ基礎物性の解明を目指してきた.
ガラス転移を生じる系の一例として,薄膜に閉じ込められた希薄な磁性コロイド分散系
において,多分散・単分散・2 成分などサイズ分布が異なる場合に,外部磁場をコントロー
ルすることにより,1層膜コロイド,および,コロイド鎖の横拡散のダイナミクスや系の
状態がどのように変化するのかを明らかにした.その結果,ガラス転移近傍でのボンドオ
ーダー関数などの角度依存性を持つ空間構造を表す物理量にはサイズ分布の影響が現れる
が,長時間自己拡散係数の磁場依存性はサイズ分布によらず,一つのマスターカーブで記
述できることを明らかにした.そのマスターカーブは徳山の提案した平均場理論ともよく
一致する.すでに高濃度領域での応用がすすむ磁性コロイド分散系であるが,本研究によ
って希薄な領域でのコロイド分散家のダイナミクスを解明することにより,将来的により
高度な制御などができるようになることが,期待される.
2 次元剛体円盤と 3 次元剛体球におけるガラス転移近傍におけるダイナミクス
多分散剛体円盤系と多分散剛体球系において密度を変化させて,ガラス転移を実現し,
ガラス転移に関わる物性の次元性を明らかにした.図2は,ガラス転移に関わる複数の特
性時間と長時間自己拡散係数の関係を示したものである.β緩和過程については徳山の提
案した平均場理論を基に特性時間を求め,α緩和過程については,中間自己散乱関数の緩
和過程の解析などから特性時間を求めた.長時間自己拡散係数を基準にすると,特性時間
に次元性はみられないことがわかる.一方,ノンガウシアンパラメータや粒子が自由に動
ける平均自由長など粒子の配置の幾何学的な構造が重要となる物理量には次元性が現れる.
図2:剛体円盤と剛体球における特性時間の
長時間依存性.時間が短い方から平均自由時
間(tf),β緩和過程に関わる時間(tγ, tβ),α
緩和に関わる時間(tα, tα 2),長時間自己拡散
図 1:磁性コロイド一層膜のスナップショ
の緩和時間(tDSL).中抜シンボルは剛体球系
ットとコロイド鎖の長時間自己拡散係数
の計算結果.中塗シンボルは剛体円盤の計算
の磁場コントロールパラメータ依存性
結果.
関連する学術論文

Y. Terada and M. Tokuyama, Universalities in the dynamics of suspensions of
magnetic colloidal chains confined in thin films, Journal of the Physical Society of
Japan, Vol. 78, 084803, (2009).

Y. Terada and M. Tokuyama, Lateral diffusion of magnetic colloidal chains confined
in thin films and monolayer colloids, Journal of the Physical Society of Japan, Vol.
79, 034802, (2010).

Y. Terada and M. Tokuyama, Spatial Dimensionality Dependence of Long-Time
Diffusion on Two- and Three-Dimensional Systems near Glass Transition,
Intermetallics, Vol. 18, 1834-1836, (2010).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(C)(H23~H25),5,300 千円
学会賞等
The 12th International Conference on Magnetic Fluids, Best Poster Award, 寺田
生,(H22.8.5)
弥
融合流体情報学研究分野
教授 大林 茂,准教授 鄭 信圭,助教 下山 幸治,大谷 清伸,三坂 孝志
革新的高速輸送を目指した超音速複葉機の研究
次世代超音速機開発における克服すべき重要課題として,ソニックブーム騒音問題があ
る.本研究では複葉翼理論に基づき,ブーム騒音問題の解決を目標に定め,図1に提案す
る超音速複葉機の機体成立性について計算と実験の両面から研究を進めている.図2は模
型の支持干渉を避けるために弾道飛行装置を用いて計測した軸対象飛行体の近傍場圧力波
形を,既存の風洞試験での測定結果と比較したものである.
1.5E-02
Wind tunnel Exp by Carlson
Present Exp
1.0E-02
ΔP/P∞
5.0E-03
0.0E+00
-5.0E-03
-1.0E-02
-1.5E-02
-2.0E-02
-0.05 0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
t [ms]
図1 超音速複葉旅客機概念図
図2 超音速弾道飛行実験による圧力波形
革新的航空安全に寄与する次世代融合研究手法を用いた乱気流シミュレーショ
ンの研究
数値流体力学から一歩踏み出した新しい技術シードとして,実験における計測技術の短
所を補い計算におけるモデル化の短所を補う「計測融合シミュレーション」の開発を進め
ている.図3は仙台空港に設置されたドップラーライダによる後方乱気流観測値をデータ
同化法により数値シミュレーションに融合した例である.図4は庄内空港周辺の地形を考
慮した局所気象シミュレーションの結果である.
図3 後方乱気流のライダ計測融合計算
図4 庄内空港の局所気象計算
革新的ものづくりのために進化的計算法をベースに設計空間に関する知識の構
造化と可視化を行う「多目的設計探査(Multi-Objective Design Exploration)」
の研究
設計者の知識や経験・勘に捕われることなく,多種多様な性能を同時に改善するための
設計情報を抽出するために,進化的計算・データマイニングをベースとした「多目的設計
探査」を提案し,様々な工学設計問題への実用展開している. 図5はリージョナルジェッ
トへの多目的設計探査の適用例であり,図6のスポーツ用シューズの例では使用者の走り
やすさを左右する複数の機能(ソール剛性・重量)に着目し多目的設計探査を行った.
図5 国産リージョナルジェットへの適用例
図6 スポーツ用シューズへの適用例
関連する学術論文

S. Obayashi, S. Jeong, K. Chiba, and H. Morno, Multi-Objective Design Exploration and its
Application to Regional-Jet Wing Design, Transaction of the Japan Society for Aeronautical
and Space Sciences, Vol. 50, 1-8, (2007).

K. Sugimura, S. Jeong, S. Obayashi, and T. Kimura, Kriging-Model-Based Multi-Objective
Robust Optimization and Trade-Off Rule Mining of a Centrifugal Fan with Dimensional
Uncertainty, Journal of Computational Science and Technology, Vol. 3, 196-211, (2009).

T. Misaka, T. Ogasawara, S. Obayashi, I. Yamada, and Y. Okuno, Assimilation Experiment of
Lidar Measurements for Wake Turbulence, Journal of Fluid Science and Technology, Vol.3,
512-518, (2008).
関連する研究費
科学研究費補助金 基盤研究(A),革新的ソニックブーム低減技術の地上実証研究, (H23~
H27),28,860 千円
科学研究費補助金 基盤研究(A), 超音速複葉翼理論に基づくサイレント超音速機の基盤
研究, (H19~H21),48,750 千円
学会賞等
日本機械学会賞(論文)
,杉村和之,鄭信圭,大林茂,木村剛,
(H22.4.23)
Newton 別冊ハイテクの世界,超音速複葉旅客機 MISORA 紹介,
(H24.2.28)
融合可視化情報学研究分野
講師
竹島 由里子
教授(~H21.3)藤代 一成
融合データ可視化支援環境の開発
数値解析や実験によって得られたデータの解析に,可視化が広く用いられている.しか
し,これらのデータを生成する研究者は可視化の専門家であるとは限らないため,すべて
の可視化技法において使用法,特徴,利害得失などを把握することは困難である.そこで
本研究では,可視化の専門家の知識を知識ベースに格納することにより,対象データの性
質や可視化目的を考慮し,それに適した可視化アプリケーションをユーザに呈示する可視
化支援環境を開発した.本環境では,新たに可視化オントロジーを定義し,これに基づい
て分類した可視化技法,可視化アプリケーションなどの情報を知識ベースに格納している.
これにより,ユーザは可視化目的を入力するだけで,従来のように一から可視化アプリケ
ーションを構築する必要がなくなるだけでなく,これまでに見落としていたその他の可視
化技法を利用することも容易となった.また本環境では,可視化パラメタや結果の画像/ア
ニメーション,得られた知見の出自管理を行うことにより,マルチユーザの視覚探求プロ
セスの活性化を実現している.
大規模粒子系可視化システムの開発
粒子系の可視化では,計算結果が大規模になるにつれ,可視化に要する計算コストが膨
大になり,対話的な解析が困難になってきている.そこで本研究では,描画精度を維持し
ながら対話的な操作が可能な,粒子系データのための可視化システムの開発を行っている.
人間の視覚特性として,注目している領域以外では対象の光を認識することはできるもの
の精密な情報を認識できないことから,ユーザが注目している領域(視点に近い領域)は
精度よく描画するが,それ以外の領域(視点から離れた領域)は精度を落として高速に描
画するように二種類の描画手法を併用することにより,全体の可視化処理に要する速度を
調整する方法を提案した.また,PID 制御を用いて描画手法を切り替える距離を動的に制
御することにより,安定した描画速度を維持することに成功した.これより,ユーザは対
話的に操作をしながら,従来の全体を精密に描画した場合とほぼ同等の精度で解析を行う
ことが可能となった.
関連する学術論文

竹島由里子, 藤代一成, GADGET/FV:流れ場の可視化アプリケーション設計支援システ
ム,画像電子学会誌, 第 36 巻, 796-806, (2007).

小田川雅人, 竹島由里子, 藤代一成, 菊川豪太, 小原拓, GPU を用いた適応的粒子系可
視化, 日本機械学会論文集 B 編, 第 77 巻, 1767-1778, (2011).

S. Takahashi, I. Fujishiro, Y. Takeshima and C. Bi, Previewing Volume Decomposition
Through Optimal Viewpoints, Scientific Visualization: Interactions, Features, Metaphors,
Dagstuhl Follow-Ups, Vol. 2, 346-359, (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H18~H20),14,400 千円
科学研究費補助金,若手研究(A)(H19~H21),18,070 千円
学会賞等
Most Cited Paper Award for the Journal Graphical Models, Shigeo Takahashi, Yuriko
Takeshima, and Issei Fujishiro, (2007.1)
平成 18 年度情報処理学会論文賞,竹島 由里子,高橋 成雄,藤代 一成,
(H19.5)
*;~平成 18 年 10 月(旧研究分野名称;複雑動態研究分野)
学際衝撃波研究分野
准教授(兼)
孫 明宇
可視化光学系の解析技術
光の屈折を利用したシャドウグラフやシュリーレンなどの可視化光学系の解析技術を開
発した.流れ場を含む光学系全体を通過する光線を追跡し,可視化の画像生成原理に忠実
に基づき,光学素子の配置・特性による可視化画像への影響を解析できた.
光学系の数値解析例
レーザー誘起液体ジェットの数値解析技術の開発
レーザー誘起液体ジェット(Laser-induced Liquid Jet :
LILJ) を用いた場合,軟部組織内を切除する際に,血管が
温存され,肝臓手術などでその有用性が報告されてきた.
LILJ は従来のポンプ式等に比べ,レーザーパルスを使用す
るために間欠駆動が可能である点や,周囲の医療機器に電
磁的な影響を与えないという点で優れている. 現在,市場
化を目指し,応用領域を広げつつある.本研究グループは
LILJ の基盤解析技術を確立した.
チャネル内高圧液中気泡の破砕現象に関する研究
火山噴火の際のマグマ噴出挙動は,マグマと高圧気泡
の気液二相現象と捉えられる場合が多い.本研究で開発
した計算手法は,界面追跡手法もとに界面法線ベクトル
を界面の移流方程式で求め,火山噴火現象について気泡
の膨張や変形の影響を考慮した数値模擬を行い,火山噴火
ノズル形状によるレーザー誘
起液体ジェットの変形
現象に及ぼすマグマ圧力及びボイド率の影響を解析できた.
火山噴火の直接シミュレーション(青色が気体の領域,赤色が液体の領域)
関連する学術論文


D. Igra, M. Sun, Shock-Water Column Interaction, from initial impact to
fragmentation onset, AIAA Journal, Vol.48, 2763-2771, (2010).
M. Sun, Volume-tracking of subgrid particles, International Journal for Numerical
Methods in Fluids, Vol. 66, 1530-1554, (2011).
関連する研究費
共同研究 「キャビテーション流れ解析に関する研究」(H21~H24),4,000 千円
学会賞等
ベスト CFD グラフィクスアワード,菊池大,孫明宇(H19)
生体医工学学会荻野賞,
「細血管温存下に組織破砕・切開可能な内視鏡デバイス:レーザー
ジェットメスの開発」 中川敦寛. 中野徹,山本裕朗,松永忠. 雄,孫明宇,新家光雄
(H22)
極限流体環境工学研究分野
教授(~H21.3)小濱 泰昭,講師(~H21.3)加藤 琢真,助教(~H21.3)吉岡 修哉
環境親和型高速輸送システム“エアロトレイン”の開発
NEDO エネルギー使用合理化技術,先導研究補助金を得て,2 人乗り,200km/h 走行時
の消費エネルギー35kCal/人/km を実証した.この値は,同じ速度で比較すると新幹線の半
分以下,リニアモーターカーの 5 分の1であり,超省エネルギーの高速輸送システムであ
ることをデータを以て実証した.
図1
エアロトレインのイメージ
図2 NEDO プロジェクトで開発した 3 号機 ART003
バイオディーゼル燃料(BDF)事業化
大崎市バイオマスタウン構想(会長として5年務める)の一つのプロジェクトとして大
崎市,千田清掃などと協力して廃油の回収からバイオディーゼル燃料化,販売までを一貫
して行う事業を立ち上げた.大崎市のバイオマスタウン構想の主要な事業として現在規模
も拡大しつつある.
バラスト水処理装置の開発
東北大学農学研究科,晃和工業,ヤマニシ造船などと研究組織を構築,大型運搬船向け
のバラスト水処理装置の研究開発を行った.その結果を受け,現在は事業化目的の実証設
備を経済産業省の補助金を得て推進中である.
関連する学術論文

S. Yoshioka, S. Kikuchi, F. Ohta, T. Kato, J. Song and Y. Kohama, Measurement of Ground
Effect and Boundary Layer Transition by Towing Wind Tunnel, Fluid Dynamics Research,
Vol.41, 21408, (2009).

Y. Sugahara, Y. Ikeuchi, R. Suzuki, Y. Hirata, K. Kosuge, Y. Noguchi, S. Kikuchi and Y.
Kohama, Levitation Control of AEROTRAIN: Development of Experimental Wing-in-Ground
Effect Vehicle and Stabilization along Z Axis and about Roll and Pitch Axes, Journal of
Robotics and Mechatronics, Vol. 23, 338-349, (2011).

菊地聡,中川徹,今尾茂樹,小里泰章:翼の地面効果に対する翼型と翼端板の影響,
日本機械学会論文集 B 編,Vol. 77, 2105-2116, (2011).
関連する研究費
NEDO「高効率高速輸送システムに関する研究」(H20~H22),20,400 千円
学会賞等
日本機械学会
創立 110 周年記念功労者表彰(H19)
日本機械学会
流体工学部門 部門賞(H19)
超実時間医療工学研究分野
教授
早瀬 敏幸,准教授
白井 敦,助教
船本 健一
超音波計測融合シミュレーション手法と血流可視化システムの開発
循環器系疾患の診断に広く用いられている超音波計測と数値解析を一体化した超音波計
測融合シミュレーション手法を開発した.胸部大動脈瘤内の 3 次元血流場の再現に関する
数値実験を行い,本手法の過渡特性と定常特性を明らかにし,血流解析に対する有用性を
示した.さらに,超音波計測融合シミュレーションの臨床応用を目的に,超音波カラード
プラ計測の臨床データを解析する血流可視化システムを開発した.本システムにより,頚
動脈内の血流による壁せん断応力等の血行力学パラメータが正確に得られるようになった.
図1
超音波計測融合シミュレーション(左図)と頚動脈内血流の解析結果(右図)
血球と血管内皮細胞の相互作用の解明
毛細血管内における血球(赤血球や白血球)と血管内皮細胞との間の複雑な相互作用を
解明するため,任意の傾斜遠心力の作用下でガラス平板上を移動する血球の観察を可能に
する傾斜遠心顕微鏡を開発した.ポリマー材料等のコーティングの有無による血球の摩擦
特性を明らかにするとともに,ガラス平板上に血管内皮細胞を培養し,その表面形状が血
球挙動に与える影響を明らかにした.
図2
傾斜遠心顕微鏡の模式図(左図)と血管内皮細胞上を移動する好中球の軌跡(右図)
計測融合シミュレーションの理論解析
計測融合シミュレーションのフィードバック則を制御理論に基づいて設計するための基
礎として,線形誤差ダイナミクス式と固有値解析の基礎式を導出し,正方形管路内の乱流
を対象にした数値実験によりその有効性を確認した.また,過大なフィードバックゲイン
を用いた場合に計測融合シミュレーションが発散する不安定化現象の発生原因を明らかに
し,不安定化現象が生じない新たな解析手法を確立した.
図3
正方形管路内乱流の計測融合シミュレーションの固有値解析結果(左図)と
計測融合シミュレーションにおける時間刻みと臨界ゲインの関係(右図)
関連する学術論文

K. Funamoto, T. Hayase, Y. Saijo, and T. Yambe, Numerical experiment for
ultrasonic-measurement-integrated simulation of three-dimensional unsteady
blood flow, Annals of Biomedical Engineering, Vol. 36, 1383-1397, (2008).

T. Kandori, T. Hayase, K. Inoue, K. Funamoto, T. Takeno, M. Ohta, M. Takeda, and
A. Shirai, Frictional characteristics of erythrocytes on coated glass plates subject to
inclined centrifugal forces, Journal of Biomechanical Engineering, Vol. 130, 051007,
(2008).

K. Imagawa, and T. Hayase, Eigenvalue analysis of linearized error dynamics of
measurement integrated flow simulation, Computers & Fluids, Vol. 39, 1796-1803,
(2010).
関連する研究費
JST 先端計測分析技術・機器開発プログラム,(H18~H23),282,200 千円
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H19~H21),15,300 千円
学会賞等
日本機械学会賞(論文),白井 敦,藤田 亮,早瀬 敏幸,(H19.4.6)
日本機械学会奨励賞(研究)
,船本 健一(H19.4.6)
知的ナノプロセス研究分野
教授
寒川 誠二,准教授
久保田 智広,助教 和田 章良,胡 衛国,岡田 健
准教授(H20.4~H22.1)・講師(~H20.3)大竹 浩人,助教(H21.4~H23.3)黄啓賢
バイオテンプレート極限加工による無欠陥ナノ構造作製と革新的ナノデバイス
開発
究極のダメージフリートップダウン加工技術である独自技術・中性粒子ビームとバイオ
テンプレートを組み合わせることで,従来まったく作製不可能であった,無欠陥・均一サ
イズ・高密度・規則配列したシリコンのサブ 10nm 円盤状量子ドット(ナノディスク)配
列の作製に成功した(図1)
.作製したシリコンナノディスクアレイの量子特性を膜厚・直
径・間隔によって制御できること,ナノディスク同士の波動関数の重なりによりミニバン
ドができていることを示した.実際に太陽電池構造を作製し,シリコン量子ドット太陽電
池としては世界最高の変換効率 12.6%を得ることに成功した.この結果は,ナノディスク
積層化やバンドギャップ制御によりさらに高効率な太陽電池が作製できることを示してい
る.
solar light
SEM像
Top View
n形
Quantum dot
Eg=2eV (~600nm)
p形
n形
Quantum dot
Eg=1.5eV (~800nm)
Si bulk
Solar spectrum
図1
ナノディスクアレイ
p形
n形
Eg=1.1eV (~1100nm)
p形
図2 量子ドット太陽電池の概念図
中性粒子ビームによる次世代デバイスの研究
次世代の高性能トランジスタとして注目される Fin 型 FET やゲルマニウムトランジスタ
を実現するため,中性粒子ビームを用いた加工・表面改質プロセスの研究を行っている.
原子層レベルで平坦かつ欠陥を作らないエッチング(図3)と低温で高品質な酸化プロセ
スを実現し、シリコン FinFET の電子移動度を 30%向上させることに成功した。またゲル
マニウム酸化膜の作製にも中性粒子ビームが有効であることを実証し,従来にない低界面
準位密度・極薄ゲルマニウム酸化膜の作製に成功した.さらに 4 端子シリコン FinFET の
作製に成功した(図4).
図3
中性粒子ビーム(NBE)による
図4
4端子シリコン FinFET
原子層レベルで平坦なエッチング
オンウェハモニタリングによるリアルタイムプロセスダメージ計測と予測
プラズマプロセスにおいて,基板表面に入射する活性種等のセンシングを行うオンウエ
ハーモニタリングシステムの研究を行っている.測定されたデータを基にシミュレーショ
ンを行うことでプロセスダメージが予測できるシステムを構築した。2010 年度に、みずほ
情報総研㈱による事業化を行った。
関連する学術論文

M. F. Budiman, W. Hu, M. Igarashi, R. Tsukamoto, T. Isoda, K. M. Itoh, I.
Yamashita, A. Murayama, Y. Okada, and S. Samukawa, Control of optical bandgap
energy and optical absorption coefficient by geometric parameters in sub-10 nm
silicon-nanodisc array structure, Nanotechnology, Vol. 23, 065302, (2012).

A. Wada, R. Zhang, S. Takagi, and S. Samukawa, High-quality germanium dioxide
thin films with low interface state density using a direct neutral beam oxidation
process, Applied Physics Letters, Vol. 100, 213108, (2012).

M. Igarashi, M. F. Budiman, W. Pan, W. Hu, N. Usami, and S. Samukawa,
Quantum dot solar cells using 2-dimensional array of 6.4-nm-diameter silicon
nanodisks fabricated using bio-templates and neutral beam etching, Applied
Physics Letters, Vol. 101, 063121, (2012).
関連する研究費
戦略的創造研究推進事業(CREST)
「バイオテンプレート極限加工による3次元量子構造
の制御と新機能発現」
(H21~H26),430,000 千円
先端融合領域イノベーション創出拠点の形成「マイクロシステム融合研究開発拠点」
(H19-H28),60,000 千円
学会賞等
市村学術賞(功績賞)
,寒川誠二,(H20.4.25)
科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)
,寒川誠二,
(H21.4.14)
American Vacuum Society, Plasma Prize, Seiji Samukawa (2010)
エネルギー動態研究分野
教授
丸田 薫,助教
中村 寿
熱源用マイクロコンバスタの研究開発
スイスロール式バーナにより強度の熱再生を行うことで,燃焼熱に基づく熱源用小型燃
焼器の開発(NEDO 事業)に成功している(図1)
.裸火を出さず,燃焼器筐体を発熱体と
する熱効率 85%程度,400~900℃の熱源として使用できる.±1℃の精度で温度制御でき,
電気ヒータに比べて二倍かそれ以上の効率(一次エネルギーからの変換損失を考慮)とな
る.雰囲気を汚さず,また無磁場加熱も可能である.手のひら大から小型コインサイズま
での基礎研究を終えた後,共同開発を行った IHI がユーザ企業と組んで実証研究(工業加
熱用途向けの大型燃焼加熱器)を進めており,現在,実用化一歩手前の段階にある.
図1
スイスロール式燃焼器(内部可視化)
図2
コインサイズ燃焼器
温度分布制御マイクロフローリアクタ
石英細管に外部熱源によって常温から 1000℃程度に至る温度勾配を与えることで,管内
部の可燃性混合気の着火・燃焼特性の解明を可能にする全く新しい原理のリアクタである.
混合気は,自己発熱では無く外部から与えた温度分布に従って反応する.ガソリン成分燃
料ではノッキング発生やオクタン価と密接な関連のある低温酸化反応と主反応が分離し,
そこからオクタン価推定が可能となる.天然ガスでは各成分の定量的な効果を計測できる.
自動車メーカの要望に基づき,計測器メーカに技術移転後,計測器として市販に至ってい
る.現在は燃焼の化学反応研究への適用に傾注している.
T最高温度(1000℃)
max
温度
T
室温
Test section
o
x
d < 消炎距離
d
可燃混合気
図3
同リアクタの概念(左)と分離された反応帯の様子(右:数字はオクタン価)
燃焼限界の統一理論構築に向けた ISS「きぼう」における対向流火炎の宇宙実験
壁等への熱損失の無い理想的な一次元極低速対向流火炎と,微小重力場における静止混
合気中でのみ観察される Flame ball とを包含し,それらの燃焼限界を統一的に記述するこ
とを目的に宇宙実験を計画している.国際宇宙ステーションにおける実験に先立ち,まず
航空機実験による概念実証を行っており,これまでに平面から球状火炎への遷移現象確認
に成功している.今後は,セル状火炎と火炎解分岐現象との競合,また酸素燃焼条件での
燃焼限界特性の解明も目指しており,別に進めている高温酸素燃焼の研究開発への貢献も
図りつつ,燃焼限界の統一理論構築を目指していく.
図4
航空機による微小重力実験や機内のようす
関連する学術論文

N.I. Kim, S. Aizumi, T. Yokomori, S. Kato, T. Fujimori and K. Maruta, Development
and scale effects of small Swiss-roll combustors, Proceedings of the Combustion
Institute, Vol. 31, 3243-3250, (2007).

K. Maruta, Micro and mesoscale combustion, Proceedings of the Combustion
Institute, Vol.33-1, 125-150, (2011).

M. Hori, A. Yamamoto, H. Nakamura, T. Tezuka, S. Hasegawa and K. Maruta,
Study on octane number dependence of PRF/air weak flames at 1-5 atm in a micro
flow reactor with a controlled temperature profile, Combustion and Flame, Vol.159,
959–967, (2012).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(A)(H23~H27),32,500 千円
省エネルギー革新技術開発事業,NEDO 先導研究(H23~H25)122,790 千円
学会賞等
日本燃焼学会論文賞,丸田 薫,(H23,12, 9)
特許第 4689425 号(マイクロコンバスタ),特許第 4494345 号(燃焼加熱器)等
実事象融合計算研究分野
教授
石本 淳, 助教(H21.4~H24.3)松浦
一雄
超断熱二流体ノズル方式による極低温マイクロ固体窒素粒子連続生成法の開発
と異分野融合領域への応用
次世代新エネルギー開発に直結した,高密度・高機能性を有するエネルギー媒体として
の利用が期待される極低温マイクロ固体窒素粒子の生成に関し,高精度レーザー計測結果
の取り込みによる新型融合数値解析法を開発するとともに,超断熱二流体ノズルを用いた
微細固体窒素粒子連続生成技術に関する基礎実験を世界に先駆けて成功させている.マイ
クロ固体窒素粒子の噴霧流は高発熱密度を有する次世代大型コンピュータープロセッサ用
超高熱流束冷却,アッシングレス・ドライ型半導体ウエハー洗浄としての応用が期待され,
また,固液混相型スラッシュ流体として適用することにより高温超伝導(HTS)ケーブルの新
型冷却法の開発が期待されている.
図 1 マイクロ・ナノ固体窒素連続生成用超断熱二流体ノズル
図 2 超断熱二流体ノズル内におけるマイクロ・ナノ固体窒素生成に
関する超並列融合数値計算結果
マイクロキャビテーションを伴う微粒化メカニズムに関する融合計算
マイクロキャビテーションを伴うインジェクターノズル微粒化メカニズムに関し,キャ
ビティ形成と微粒化液滴形成に至るまで一連のマイクロキャビテーション噴霧混相流動場
Micro-cavitation
図3
インジェクターノズル微粒化プロセスの融合計算
に関し,バロトロピックモデルに基づく圧縮性二相噴霧流の基礎方程式系を新たに構成し
た.さらに,LES-VOF 数値解法を用いた高解像度コンピューテーションと実験からなる最
新の一体型融合シミュレーション技法を用いて数値流体解析を行った.その結果,ノズル
内微粒化に伴うマイクロキャビテーション生成をクリアに捉え,マイクロキャビティの発
生部位とその生成から消滅までの超高速非定常挙動を可視化することに成功した.
原子力発電所における配管内液滴衝撃エロージョン予測システムの開発
本研究は,(株)東北電力との共同研究により配管内液滴衝撃エロージョン予測システムの
開発を行ったものであり,スーパーコンピューテーションの活用による超並列融合計算に
より,原子力発電所の配管系と高速熱流動をスーパーコンピュータ上に再現し,経年劣化
による配管内脆弱箇所・減肉エロージョンの発生箇所・原因を事前に計算予測することが
可能となっており,事故を未然に防ぐだけでなく丈夫な配管の設計にも貢献している.
図4
原子力配管エルボー部に生じる LDI エロージョンレートに関する計算結果
関連する学術論文
 J. Ishimoto, Numerical Study of Cryogenic Micro-Slush Particle Production Using a Two-Fluid
Nozzle, Cryogenics, Vol. 49, 39-50, (2009).
 J. Ishimoto, F. Sato and G. Sato, Computational Prediction of the Effect of Micro-cavitation on
an Atomization Mechanism in a Gasoline Injector Nozzle, Trans. ASME, Journal of
Engineering for Gas Turbines and Power, Vol. 132, 082801, (2010).
 J. Ishimoto, S. Akiba, K. Tanji, K. Matsuura, Integrated Super Computational Prediction of
Liquid Droplet Impingement Erosion, Progress in Nuclear Science and Technology, Vol. 2,
498-502 (2011).
関連する研究費
科学研究費補助金,基盤研究(B)(H20~H22),20,020 千円
科学研究費補助金,若手研究(A)(H17~H19),29,510 千円
学会賞等
Cryogenics Best Paper Award 2009, Jun Ishimoto (H22.7.22)
原発配管の劣化箇所予測 新システムで画像化(日経産業新聞)(H23.6.21)
衝撃波学際応用寄附研究分野
客員教授(H20.4~H23.3)高山 和喜
複雑衝撃波現象実験法の確立
気体,液体,固体とこれらの混相媒体中の,衝撃波実験法の開発を実施している.従来
の衝撃波管,点爆発,高速衝突,レーザー光収束,放電等による実験法の精緻化,再現性
向上を実施し,それぞれの発生法に最適な計測法を開発している.中でも,光学可視化に
よる画像は,国際学術誌に公表され,良い評価を得ている.二次元準定常ないし定常流れ
の衝撃波現象の研究は,ほぼ完了している.しかし,三次元複雑形状まわりの非定常な衝
撃波現象の解明は,理論的にも,実験的にも未だ完成には遠い.ホログラフィー干渉計法
を用いて,三次元衝撃波現象を可視化し,また,数値解法との対比を実施している.
図1
三次元くさび上を通過する衝撃波
気泡と衝撃波の干渉に関する研究
水中あるいは溶液中の単一気泡ないし気泡群と衝撃波干渉の素過程を明らかになってい
る.成果は,レーザーを照射し水中で岩石を掘削する実用装置開発に結びつけている.ま
た,微細気泡群に衝撃波を作用させ,気泡群が連鎖反応的に崩壊し,パルス状の高圧が長
秒時発生する現象を確認し,これをバラスト水中に含まれる,微生物の死滅除去法に結び
つけ,実用装置設計の実用研究を実施している.
図2
レーザ光を用いた水中岩石掘削実験
図3 マイクロバブル衝撃波干渉高圧発生
衝撃波医療に関する研究
水中でのレーザー光照射は,衝撃波を発生する.この知見を発展させ,カテーテル先端
から間欠的に高速水ジェットを発生し,低観血的に生体難組織を切開する装置を開発し,
装置は臨床試験に用いられ良い治療効果を上げている.それを,アクチュエータ駆動の水
ジェット発生装置の開発に発展させ,特性の最適化,応用範囲の拡大など実用研究を実施
している.また,衝撃波照射を伴う生体組織損傷の研究成果を援用し,衝撃波収束を用い
る不整脈治療装置の開発の基礎研究を行っている.
図4
レーザー水ジェットメス装置開発
関連する学術論文

M. Nakada, V. Menezes, A. Kanno, S.H.R. Hosseini, K. Takayama, Shock Wave
Based Biolistic Device for DNA and Drug Delivery, Japanese Journal of Applied
Physics, Vol. 47, 1522-1526, (2008).

D. Numata, K. Ohtani, K. Takayama, Diffuse holographic interferometric
observation of shock wave reflection from a skewed edge, Shock Waves, Vol. 19,
103-112, (2009).

A. Abe, K. Ohtani, K. Takayama, S. Nishio, H. Mimura, M. Takeda, Pressure
Generation from Micro-Bubble Collapse at Shock Wave Loading, Journal of Fluid
Science and Technology, Vol. 5, 235-246, (2010).
関連する研究費
受託研究費,日本海洋掘削(H20~H23),31,500 千円
民間共同, セイコーエプソン(H20~H23),4,950 千円
学会賞等
日本航空宇宙学会 名誉員,高山和喜,(H20.4.3)
Aeroballistics Range Association 弾道学研究賞(Ballistic Award), 高山和喜,
(H23.11.14).
Fly UP