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A CAtAlytiC
StArting line
2013 AnnuAl RepoRt
B r i n g i n g J a p a n e s e i n n o va t i o n ,
i n v e s t m e n t, a n d l e a d e r s h i p t o
the gloBal fight against
infectious diseases
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(gHit Fund)
は、日本の製薬企業5社(アステラス製薬株式会社、第一三
共株式会社、エーザイ株式会社、塩野義製薬株式会社、武
田薬品工業株式会社)、日本政府2省庁(外務省、厚生労働
省)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、および国連開発計画
(UnDP)による100億円規模の資金によって2013年4月に
共同設立されました。
Copyright © 2014 by the global Health
innovative technology (gHit) Fund.
All rights reserved.
目次
代表挨拶
GHIT Fundの出発点
マイル ストーン および 初 年 度 の 成 果
財務報告
リーダ ーシップ
パ ートナ ー
1
感 染 症 制 圧に向 けた第 一 歩
gloBal strides, Bold firsts
gHit Fund は、設立初年度において、助成金の交付、画期的なパートナーシップの構築、
スクリーニング・プラットフォーム (Screening Platform) とヒット・トゥー・リード・プラットフォー
ム(Hit-to-lead Platform)の創設など、重要な成果を残すことができました。gHit Fund
の設立は、グローバルヘルス分野における変革とパートナーシップをより幅広く推進する上で、
過去に例のない初の取り組みとなっています。
グローバルヘルス分野における製品開発(グローバルヘルス r&D)支援を行う、官民パー
トナーシップの基金は世界初
複数の製薬企業がグローバルヘルス r&D の推進を目的に参画し、直接資金を拠出した
ことも世界初
日本政府がグローバルヘルス r&D に大規模資金拠出を行ったことは史上初
これら全ての初めての試みは、グローバルヘルスの分野における変革への期待を大いに高め
るものです。当基金のパートナーは、新しい医療技術の開発促進は単なる社会的責任のみな
らず、日本の将来に大きな利益をもたらす長期的な投資であると確信して、このパートナーシッ
プに参画しています。各パートナーは、開発途上国における健康の促進および健全な経済成
長と、今後の将来を密接に結び付けて展望しています。
日本政府と日本を代表する製薬企業は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団および国連開発計画
(UnDP)と共に、今までと全く異なる新たな取り組みを開始しました。各パートナーの将来
に対する展望、主体的な活動、そしてコミットメントは、世界の最貧国の人々の疾病負担を低
減するための、安価で優れた製品を創出するという私たちの目標達成に向けて大きな励みと
なっています。 皆さまにこの gHit Fund 初となるアニュアルレポートをお届けできることを光栄に思います。
2
黒川 清
スリングスビーBT
会長
CeO
「私 たちは、g H i t F u nd が 最 貧 困 層にきわめて多い感 染 症 へ の 制 圧へ
の 取り組みに対して、投 資および 協力を実 施 することを大 変 喜 ばしく思
います。g H i t F u ndによるグローバルヘルスr & D へ の 投 資は、顧
みられ ない 疾 病の 制 圧と撲 滅を実 現し 、それらの 疾 病によって
引き起こされ る窮 状 から人々を救うという目標に向けての大き
な 一助となるでしょう。」
世界 保 健 機 関 事 務局 長 マーガレット・チャン 博士
3
GHIT Fundの出発点
our launchpad
日本のイノベーション、政府開発援助の実績
gHit Fund のコンセプトは、日本の医薬品業界のリーダーによって 2011 年に生みだされました。
医薬品開発、技術革新、および政府開発援助(ODA)の分野における日本のリーダーシップの経験と
実績をもとに、gHit Fund はグローバルヘルス r&D 分野における官民パートナーシップという形で
実現しました。
日本は長年にわたって、医薬品開発については世界第 3 位、というグローバル・リーダーとしての地
位を築きあげ、ODA 分野でもトップレベルの支援国として活動してきましたが、その能力をグローバル
ヘルス r&D のために十分に活かすことができていませんでした。
また、日本の医薬品業界は、日本が保有する数多くの技術、知見およびイノベーションを最貧困層
の人々を苦しめる感染症のための新しい医薬品、ワクチンおよび診断薬の開発に活用するためには、
グローバルなパートナーシップが必要であると認識していました。こうした背景が gHit Fund の出発
点となったのです。
グローバルヘルス R&D における世界との連携
HiV/AiDS、マラリア、結核および、顧みら
ム・トラストなどの主要財団と連携し、Product
れない熱 帯病(neglected tropical Diseases:
Development Partnership(PDP)の設 立等を
ntDs)は、合わせて世界人口の約 40% 近くが
通じて、世界の最貧困層から切に必要とされな
罹患しており、世界で最も深刻なアンメット・メディ
がらも、市場原理が働かないが故に未開発となっ
カルニーズの一つとなっています。ntDs は、子
てきた医薬品の開発を推進してきました。
供の成長遅延や、臓器障害、失明等の後遺症を
引き起こす可能性があるほか、時には死に至る
場合もあります。度重なる発作のために家族は働
くこともできなくなり、地域全体が貧困の窮地に
陥ることになります。
過去数十年以上にわたり、グローバルヘルス
コミュニティは、世界保健機関(WHO)、国連
機関、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカ
4
NTDs 向けの開発資金は、2009 年以降
変動が見られていません。製品などのツー
ルが存在している場合でも、供給不足と
なっていることも少なくありません。GHIT
Fund は、グローバルヘルス R&D にとって
重要な、新規の資金と技術を提供してい
きます。
日本における感染症と貧困の歴史・経験
日本は、グローバルヘルスの諸課題を解決す
感染症の撲滅に成功しました。また、この変革に
るためには、一致団結して取り組むことの重要性
よって国民の健康状態は改善され、世界有数の
を十分に認識しています。戦後の日本では、感
長寿国となり、日本は世界第二位の経済大国へと
染症の蔓延、栄養不良および貧困は、日常生活
変貌を遂げました。こうした日本の戦後の公衆衛
の一部であり、特に、マラリア、結核、住血吸
生の成功事例は、今日、WHO が進める多くの感
虫症、フィラリア症、回虫症は、国民病といえる
染症制圧戦略の基盤となっています。
ほどに蔓延していました。しかし、行政、医療
従事者、研究者、地域住民が一丸となり課題解
決に取り組み、日本は世界に先駆けてこれらの
「健康な人々が健全な経済成長を導く」
という
日本の経験を基に、開発途上国でも同様の成
功を実現すべく、
引き続き関係国への支援を行
っています。
5
政治的意志および新政策への転換
2013 年、日本政府は、グローバルヘルスが単に ODA の対象であるばかりでなく、人間の安全保障
の重要な要素であるとの認識を示す一環として、グローバルヘルスを外交政策および国内経済の再生
戦略の中心的要素として位置付けました。この政策転換は、日本が実施する海外援助の価値の最大
化を目指しており、今後、より効果的に研究開発を支援し、日本がこれまでに蓄積してきた豊富な技術
とイノベーションをグローバルな舞台で本格的に活用していく上で重要な意味をもちます。
日本政府による gHit Fund への拠出は、国連のミレニアム開発目標(Millennium Development
goals: MDgs)の達成に向けて継続的に支援を行い、また国内の研究開発能力の活用を推進すること
を基に、2013 年に策定された国際保健外交戦略や健康・医療戦略を具現化したものです。
日本政府によるグローバルヘルスへの政策関与は、日本が従来から実施してきた「健康への投資」
を補完するものです。日本政府は、世界的な感染症の課題を g8 参加国として初めてサミットの議題と
して取り上げ、global Fund の設立を後押しし、過去何年にもわたって MDgs の達成に向けて貢献し
てきました。日本の ODA の支援先の国や地域にも、感染症の患者が圧倒的に多いという事実認識の
高まりと共に、1990 年代半ば以降、外交政策を通じて、より積極的に感染症対策が行われるようになっ
MILESTONES
ていきました。
•
•
•
•
•
GHIT Fund 発足
第 1 回助成金案件の公募
2013 年 4 月
6
スクリーニング・プラットフォームの
発足
第 1 回スクリーニング・プラットフォー
ム案件の公募
マラリア、結核および NTDs を対
象とした化合物の探索研究を目的
として、日本と海外機関との間で
13 のパートナーシップが締結される
2013 年 6 月
2nd RFP for collaborative R&D
•
第 2 回助成金案
件の公募
2013 年 8 月
D
•
•
マラリア、結核およびシャーガス病の
治 療 薬およびワクチン開 発、 合 計
6 件 に 対し、 総 額 US$5,450,975
(¥560,469,256) を助成
第 2 回スクリーニング・プラットフォーム
案件の公募
2013 年 11 月
•
Hit-to-Lead Platform launched
•
ヒット・トゥー・リード・プラット
フォームの発足
2014 年 2 月
住 血 吸 虫 症、 シャーガ ス
病、 寄 生 性 線 虫 に 対 する
治 療 薬、 結 核ワクチンの開
発、 合 計 4 件 に 対し、 総
額 US$12,107,156 (¥1,244,857,831) を助成
2014 年 3 月
7
初年度の成果
first fruits
g H i t F u n d は 、日本 のイノベ ーションを活 用した 新 薬 開 発を目指して 、 す でに 2 0 を超 える
r & D パ ートナーシップを推 進して います 。 そ の 中 で 3 つ の 代 表 的 なパ ートナーシップとヒット・
トゥー・リード・プラットフォームに つ い てご 紹 介します 。
住血吸虫症の小児用製剤の開発
〜プラジカンテル小児コンソーシアム〜
アステラス製薬株式会社
オズワルド・クルス財団
メルク株式会社
シムシップ
スイス熱帯公衆衛生研究所
トップ・インスティテュート・ファーマ
1970 年代の半ばにメルク株式会社とバイエルの共同
研究によって開発された住血吸虫症の代表的治療薬プ
ラジカンテルは、成人および年齢の高い児童を対象とし
た経口の錠剤のみで、4 歳以下の児童は臨床データが
不足していることもあり、適切な治療が行われていませ
ん。このような背景により、正確な小児用量で、服薬コ
ンプライアンスが改善された就学前児童、乳幼児を含む
低年齢の児童に適したプラジカンテル小児製剤の開発が
強く求められています。こうした問題を解決するために、
2012 年 7 月に「プラジカンテル小児コンソーシアム」が創
I N N OVAT I O N
CHALLENGE
乳幼児を含む低年齢の児童に
は、現状のプラジカンテル錠の
サイズが大きく、かつ苦味があ
るために、喉に詰まらせる危険
が少なくありません。 安全性、
受容性および入手環境の改善
の見地からも、小児用製剤の
開発が急務となっています。
設されました。
このコンソーシアムに参画するアステラス製薬は、革
新的な製剤技術を提供することにより、乳幼児を含む低
年齢層の児童向けのプラジカンテル口腔内崩壊様製剤
候補の開発に極めて重要な役割を果たしています。
同コンソーシアムでは、すでに 2 種類の小児用新製剤
の試験用バッチを製造済みであり、まずは成人を対象に
試験を実施し、その後乳幼児を対象とする味覚試験を
行う予定です。gHit Fund による支援は、本プロジェ
クトの進捗を加速するのみならず、同コンソーシアムがこ
れら新製剤の第 ii 相臨床試験を実施するにあたっての
準備にも役立てられます。
「 6団 体 が 参 画 する当コンソーシアムは、 アフリカで 2 番目に多い n t D s の 撲 滅 に 最 善を尽くして
おり、 この目標 の 達 成に 向 け て、 アステラス製 薬 が 持 つ 製 剤 技 術 の 専 門 性を活 用できることを 光
栄に 思います。 g H i t との 連 携 は、 住 血 吸 虫 症 で 苦しむ 乳 幼児や小児に治 療 薬をいち 早く届ける
ための 取り組みを加 速し拡 大 するために重 要であると考えています。」
アステラス製 薬 株 式会 社 代 表 取 締 役 社 長( C E O) 畑 中 好 彦
住血吸虫症
住血吸虫症(別名ビルハルツ住血吸虫症)は、寄生虫を介して広がる疾病で、貧血、成長阻害、学習能力の
低下などを引き起こし、
時には死に至ることもあります。78ヵ国で感染が広がっており、
小児 1 億人を含めた2 億 4,000
万人以上が罹患しており、
寄生虫感染症による影響面ではマラリアに次ぐものとなっています。年間の経済損失は、
世界規模で 6 億 4,000 万ドルを超えると推定されます。
8
新規結核ワクチンの開発
「初 期に実 施した研 究の 結 果 、ヒトパラインフルエンザ 2 型
ウイルスベクター 技 術( r h P i V 2)には 大 変 大きな可 能 性 が
秘 められていることがわかりました 。このパートナーシップ
は、グローバルヘルスコミュニティの 究 極の目標である結 核
予 防のための 新しいワクチン戦 略 の 確 立に向け た 一 助とな
るでしょう。」
独 立行政 法人 医 薬 基 盤 研究 所
アエラス (AERAS)
株式会社クリエイトワクチン
独立行政法人医薬基盤研究所
(NIBIO)
霊 長 類 医 科 学 研 究 センター 長 保 富 康 宏
本パートナーシップは、独立行政法人医薬基盤研究所、株式会
企業)およびアエラス(ワシントン郊外に本部を置き、各国の研究
現在使用可能な唯一の結
核ワクチンである BCG は、
機関や企業と連携しながら結核ワクチン開発を進める官民パート
90 年以上前に開発された
ナーシップ)による結核ワクチンの共同研究開発です。このパート
もので、結核による負荷が
ナーシップでは、医薬基盤研究所の霊長類医科学研究センターに
よって開発された rhPiV2 に基づいてワクチン候補の同定を進め、
前臨床研究段階を経て前へ進め、臨床試験における安全性と免
特に高い 10 代の若者や
成人では十分な防御効果
が得られません。
I N N OVAT I O N
CHALLENGE
社クリエイトワクチン(大日本住友製薬と日本ビーシージーの合弁
疫原性の評価に至ることを目指しています。
各パートナーは、多様な抗原を発現する新規 rhPiV2 ワクチンコ
ンストラクトの評価、最も有望な新規ワクチン候補を同定するため
の免疫学的試験の実施と新規結核ワクチンの製造管理および品質
管理に関する基準の確立等を含めた開発クライテリアの策定を実
施しています。
結核
WHO の推定では、2012 年に年間で新たに 860 万人が結核を発病し、130 万人が死亡しています。結核は、人生
で最も働き盛りである年代(15 歳から 44 歳まで)の人々の命を最も多く蝕んでいます。結核の治療とケアに費やされ
る費用は、世界規模で年間 80 億ドルと推定され、多剤耐性結核 (MDr-tB) および超薬剤耐性結核 (XDr-tB) が
世界各地で発生・拡大したことによって生じた人的および経済的損失は甚大であり、薬剤感受性を有する結核の治療
コストの 200 倍以上にも及びます。
9
新規マラリア治療薬の開発
gHit Fund を介して締結されたこのパートナー
メディスンズ・フォー・マラリア・
ベンチャー (MMV)
シップは、武田薬品工業が持つ専門的な製剤技
武田薬品工業株式会社
けることによって新規の抗マラリア薬を開発するこ
術および知見を、MMV の有望な化合物と結び付
とを目指しています。マラリア原虫のジヒドロオロ
I N N OVAT I O N
CHALLENGE
ト酸脱水素酵素を選択的に阻害する DSM265 と
抗マラリア薬として広く使われている
いう薬剤は、抗マラリア薬の候補の一つとして、
いくつかの薬剤に耐性が生じたこと
すでに第 i 相臨床試験の段階に入っています。現
により、治療上の課題はますます複
在までに、安全性についての結果は良好で、かつ
雑化しています。 市場にはまだ新し
いクラスの薬剤が存在しないため、
マラリアの制圧および撲滅に向けて
これまでに培ってきた知見が脅かされ
ています。
化合物の作用時間も長いため、DSM265 は単回
投与の治療薬として期待されています。
もう一つの候 補薬としては、elQ300 という、
キノロン誘導体 ( 抗生物質 ) による前臨床段階の
マラリア予防薬兼治療薬があります。この抗マラ
リア薬は、まだ開発の初期段階ですが、これまで
の研究結果では、月 1 回の投与でマラリア感染の
「 この 度、 M M V は 武 田 薬 品 工 業との パ ート
ナ ーシップ を大 変 光 栄 に 思います。 このパー
トナーシップを通じて、 日本 の 新しい 化合 物、
知 見 および 支 援を得ることで、 画 期 的な 抗 マ
予防と治療の効果が認められ、マラリアの低用量
治療・予防の重要なツールになるものと思われます。
ただし、実際に患者を通して臨床試験を実施でき
ラリア薬 の 開 発 が 可 能 になりました。 これ に
る段階に至るには、処方に関してさらなる研究が
より、マラリアによって人々の 命 が 無 用に失わ
必要となります。武田薬品工業は、この研究に関
れ ることを防ぎ、 マラリアの 制 圧と撲 滅 へ の
道 筋が 開けるものと期 待しています。」
し、固形経口剤形の開発にかかわる製剤技術に
関する知見を提供しています。
M M V デイヴィッド・レディ C e O
マラリア
マラリアの感染者は現在 2 億人を超え、
毎年約 65 万人が死亡しており、
そのうち 86% が子供です。国によっては、
公衆衛生に関する全支出の 40%、入院患者の 30-50%、また、外来患者の 60% をマラリアに関する支出が占め
ているところもあります。この病気による GDP の損失額はアフリカ全体で年間 120-300 億ドルに達します。
10
なぜ新薬開発のためのパートナー
シップが必要とされるのか ?
WHy parTnersHIps For producT
deVelopMenT?
グローバルヘルスの問題はきわめて大きな課題であり、一製薬企業、
一研究機関ないしは一国家が単独で対処できるものではありません。
世界には、新しい治療薬、ワクチン、診断薬を切実に必要としながらもその代金を支払う
ことができない、あるいはほんのわずかしか支払うことができない人々が 10 億人もいます。
また一方で、こうした治療薬、ワクチン、診断薬等のツールを作り出すためには莫大な
資金と時間を投資する必要があり、複雑な研究開発も必要です。これらのツールを最も
必要としている国や地域では、科学的複雑性に加え、インフラ環境が整っていないこと
に起因するツール採用時の不確実性が増します。こうした条件の下で、世界の最貧困
層を苦しめる感染症に対する新薬の不足という課題を解決しなければならないのです。
市場原理がうまく機能しない開発途上国の感染症の製品開発には、パートナーシッ
プが必要不可欠です。パートナーシップの多くは、政府、産業界、アカデミアお
よび国際機関によって形成され、個々の組織がそれぞれのニーズおよび制約
を認識した上で各自の強みを最大限に活用します。製品開発を目的とした
パートナーシップの多くは、GHIT Fund と同様に、公的資金および慈
善団体からの資金を利用することによって、R&D に参画する企業
および研究機関の負担となりえるリスクを軽減しています。こうし
たパートナーシップを通じて、最貧困層の人々の健康に恩恵
をもたらす画期的な製品を、より迅速に、そしてより安価
に開発することが可能になるのです。
11
緊急性
マラリア、結核、リーシュマニア症、およびシャーガス病に対する初期段階の創薬パイプラインは、これらの疾病に
伴う医療上の負担や経済的負担、および国際社会が開発を目指している薬剤数を考慮したとしても盤石とは言え
ず、この創薬パイプラインを安定化させる為にも、新しい化学物質や化合物が必要とされています。
12
創薬探索プラットフォーム
顧みられ ない 疾 病に対 する創 薬 パイプラインの 拡 大
学物の創製に関して世界的にも優れており、開発途
上国における感染症制圧に必要な新薬の候補化合
物となりうる化合物が膨大に存在していると考えら
れています。
2013年6月、日本の製薬企業および研究機関
は、gHit Fund のスクリーニング・プラットフォーム
日本が保有する化合物ライブ
ラリーはユニークであり、欧米で
発見された化合物とは構造が大
きく異なるため、感染症制圧に
向けた新たな資源となり、期待を
もたらすものです。
を通じて、結核、
マラリア、リーシュマニア症、およ
I N N OVAT I O N
OPPORTUNITY
日本の製薬企業、大学、研究機関などは、新規化
びシャーガス病の感染症制圧に取り組むPDP(tB
アライアンス、DnDi、MMV)と契約を結び、その膨
大かつ先進的な化合物ライブラリーのスクリーニン
グを開始しました。このスクリーニング・プラットフォー
ムを活用することにより、数万から数十万に及ぶ化
合物の中から効果が期待される候補化合物の探索
を行っています。日本側のパートナーが保有する化
合物ライブラリーのスクリーニングを開始し、それら
の化合物が寄生虫および細菌に及ぼすインパクト
の評価を実施しています。
スクリーニングのパートナー pdp
GLOBAL ALLIANCE FOR
TB DRUG DEVELOPMENT
顧みられない病気のための新薬イニシ
アティブ
(DRUGS FOR NEGLECTED
DISEASES INITIATIVE: DNDi)
Medicines for Malaria Venture
: MMV
ライブラリー
民間企業
研究機関
アステラス製薬株式会社
微生物化学研究所
第一三共株式会社
北里研究所
エーザイ株式会社
塩野義製薬株式会社
武田薬品工業株式会社
13
財務報告書
lf e
eers s h i p
i na
ad
nc
14
2013 年度 決算概要 ( 監査済 )
収益源
利益
政府機関、国際機関
¥1,099,454,485
財団
¥510,997,000
企業
¥500,000,000
収益合計
52.1% 政府機関、国際機関
24.2% 財団
23.7% 企業
¥2,110,451,485
費用配分
97.4% プログラム業務
2.6% 支援業務
費用
プログラム業務
¥1,858,405,323
支援業務
¥49,670,254
費用合計
¥1,908,075,577
資産、負債、および純資産
資産
助成金投資(単位:円)
現金および現金同等物
¥839,961,130
固定資産
¥252,097,223
資産合計
¥1,092,058,353
疾患別
¥440,469,256 マラリア
¥634,962,000 結核
¥729,895,831 ntD
負債および純資産
負債合計
¥860,026,222
純資産
¥232,032,131
負債および純資産の合計
製品別
¥1,039,775,431 治療薬
¥765,551,656 ワクチン
¥1,092,058,353
上 記の決 算 概 要は、新日本 有 限 責 任 監 査 法 人の監 査に基づく
gHit Fund の監査済み財務諸表から抜粋したものです。gHit
Fund は、2014 年 6 月 1 日より、公益社団法人として日本国内に登
記されています。
研究段階別
¥909,418,331 前臨床段階
¥895,908,756 臨床段階
15
リーダ ーシップ
leadership
評議会
評議委員は、理事会を監督する
と同時に gHit Fund のミッション
の提唱者としての役割を担って
います。民間企業の評議委員
は、業務執行に関する意思決
定や助成金交付に関わる意思
決定には一切関与しません。そ
のため、gHit Fund の助成金
は、評議委員である民間企業
に割り当てられるとは限りません。
gHit Fund の助成金交付は、
すべて、日本の団体と海外の団
体とのパートナーシップを対象と
します。日本国内の組織とパー
トナーシップが提携されている場
合、いかなるパートナーシップも
援助の対象となる可能性があり
ます。
香川 剛廣 外務省 地球規模課題審議官
牛尾 光宏 厚生労働省 大臣官房審議官
トレバー マンデル ビル&メリンダ・ゲイツ財団 グローバルヘルスプログラム プレジデント
アステラス製薬株式会社:代表取締役社長(CeO) 畑中 好彦
エーザイ株式会社:代表執行役社長 内藤 晴夫
塩野義製薬株式会社:代表取締役社長 手代木 功
第一三共株式会社:代表取締役社長兼CeO 中山 讓治
武田薬品工業株式会社:代表取締役社長 長谷川 閑史
評議会、
理事会、
選考委員会、
アドバイザリーパネルのメンバーの所属および役職は、
2014年6月1日時点のものです。
16
理事会
gHit Fund の理事を務める
グローバルヘルスの専門家は、
選考委員会に対するガバナンス
と信任に基づく監督の実施、ポ
リシーの策 定、および gHit
Fund の総合的な事業評価を
行います。
会長
黒川 清
政策研究大学院大学アカデミックフェロー、
日本医療政策機構代表理事
スリングスビー B.T.
グローバルヘルス技術振興基金 CeO
理事
ピーター ピオット
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長
元 UnAiDS 事務局長
アン ヴェネマン
元ユニセフ事務局長
山内 和志
厚生労働省 大臣官房国際課国際協力室長
山谷 裕幸
外務省 国際協力局 国際保健政策室長
監事
石黒 光
日本医療政策機構 理事・事務局長
コー ヤン タン
モリソン & フォスター シニアカウンセラー
オブザーバー
キム ブッシュ
ビル&メリンダ・ゲイツ財団
ライフサイエンス・パートナーシップ ディレクター
17
選考委員会
gHit Fund の選 考 委員会
の委員は、申請 者から提出
される助成金申請書および進
捗報告書の評価、理事会に
対する助成金交付先の推薦、
審査および推薦プロセスにお
ける独立性、アカウンタビリティ
および透明性の確保などを行
います。 選 考 委員会は、当
基金の支援者と助成金受給
者との間の利益相反を避ける
ため、 大 手 製 薬 企 業のメン
バーを構成員から外しておりま
す。
マヒマ ダトラ バイオロジカル・イー・リミテッド社 シニアヴァイスプレジデント
ケン ダンカン ビル&メリンダ・ゲイツ財団 Discovery & translational
Sciences 部門次長
ペニー ヒートン ビル&メリンダ・ゲイツ財団 ワクチン開発 & サーベイランス ディレクター
北 潔 東京大学大学院医学系研究科 国際保健学専攻 生物医化学教室 教授
アレックス マター シンガポール科学技術研究庁実験治療センターおよび
D3 (Drug Discovery & Development) CeO
森 康子 神戸大学大学院医学研究科感染症センター臨床ウイルス学 教授
デニス シュマッツ
米国メルク・リサーチ・ラボラトリーズ 感染症研究所 元所長 および
日本 MSD 研究所 元所長
アドバイザリーパネル
アドバイザリーパネルのメンバー
は、理事会の会長および CeOに
対して戦略的な助言を行います。
ピーター アグレ ジョンズホプキンス大学 マラリア研究所 所長
ハーベイ V ファインバーグ 米国医学研究所 所長
穂積 大陸 PAtH 保健システムと政策 シニアアドバイザー
カレスタス ジュマ ハーバード大学ケネディスクール国際開発学部教授、
科学技術・グローバリゼーションプロジェクトディレクター兼任
マイケル ライシュ ハーバード大学公衆衛生大学院国際保健政策武見太郎 教授
佐藤 玖美 コスモ・ピーアール 代表取締役
ピーター シンガー グランド・チャレンジ・カナダ CeO、トロント大学 サンドラ・ロトマン・
センター ディレクター
18
外部審査員
世界中の感染症専門家が gHit Fund の外部審査員として協力し、プロポーザルの審査を行っています。
Dr. richard Adegbola
Dr. yukihiro Akeda
Dr. Pedro Alonso
Dr. Peter Andersen
Dr. W. ripley Ballou
Dr. Clif Barry
Dr. Marleen Boelart
Dr. Maria elena Bottazzi
Dr. nancy le Cam Bouveret
Dr. tom Brewer
Dr. David Brown
Dr. Simon Campbell, CBe FrS
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Dr. Michael J. Free, OBe
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Heras
Dr. glenda gray
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Dr. lee Hall
Dr. yoshihisa Hashiguchi
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gray Heppner
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Punnee Pitisuttithum
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Donato Zipeto
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当基金のパートナーおよびスポンサーに感謝申し上げます。
パートナー
外務省
厚生労働省
アステラス製薬株式会社
第一三共株式会社
エーザイ株式会社
塩野義製薬株式会社
武田薬品工業株式会社
ビル&メリンダ・ゲイツ財団
国連開発計画
スポンサー
株式会社コスモ・ピーアール
森ビル株式会社
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世界の健康のために、日本発のイノベーションを。
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金
〒106-0032 東京都港区六本木1丁目9番10号
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