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国内航空運賃・費用の計量分析: 政策変更の影響の測定

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国内航空運賃・費用の計量分析: 政策変更の影響の測定
Kobe University Repository : Kernel
Title
国内航空運賃・費用の計量分析 : 政策変更の影響の測
定(An Empirical Analysis of Japanese Domestic Airlines'
Costs and Fares : How the Policy Change in 1986
Affected Japanese Airline Industry?)
Author(s)
村上, 英樹
Citation
研究年報. 經營學・會計學・商學,40:67-92
Issue date
1994
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004179
Create Date: 2017-04-01
67
*
国 内航 空 運 賃 ・費 用 の計 量分 析
一
政策変更の影響の測定 ∼
村
1.開
皿.予
樹
備的考察
説 の展 開
皿.2.方
法 論 適 用 上 の 問題
皿.モ
デ ル と変 数 の 説 明
.皿.1.モ
デ ル の構 築
皿.2.デ
V.結
英
題
皿.1.学
IV.計
上
ー タ と変 数 め説 明
測 結 果 と評 価
語
1.開
題
我 が 国 の航 空業 に お け る航 空 憲 法(昭 和45年11月 の 閣議 了 解 と47年7月
輸 大 臣通 達)が
の運
昭和60年12月 に 廃 止 され て か ら,既 に8年 が 経 過 して い る。 航
空 憲 法 廃 止 の意 図 は,空 港 容 量 の 拡 大 を に らみ な が らの 路 線 数 の 拡 大 ,す な わ
ち競 争 促 進 で あ った。
覧
こ の よ うな政 策 変 更 は,競 争 促 進 に よ る経 済厚 生 水 準 の 向上 を 意 図 し た ,米
国 で の 航 空 規 制 緩 和 に代 表 さ れ る世 界 的 な規 制 緩 和 の潮 流 に応 え る形 で 行 わ れ
た1。 しか し,航 空 憲 法 体 制 下 よ り,す で に我 が 国 の航 空 業 で は機 材 の広 胴 化 に
*本 稿 は平 成5年9月17日
の 日本 交 通 学 会 関 西 部会 にお け る筆 者 の報 告 の際 に利 用 した ,
神戸 大 学 経 営 学 部 ワ ー キ ング ペ ーパ ‐Na9331(表
の で あ る。
1)増
井 ・山 内[12],121ペ
ー ジ。
題 は本 稿 と同 じ)を 加筆 修 正 した も
68
研
究
年
報XXXX
よ る規 模 の経 済 性 が は た らい て いた と され,実 質 運 賃 も低 下 して い た。 こ の よ
うな成 果 を根 拠 に,硬 直 的 な規 制 政 策 が あ る程 度 成 功 を 収 め た と い う解 釈 も存
在 す る2。他 方,「 昭 和61年 の 答 申 は,航 空 法 とい う制 度 的 枠 組 み を 変 更 す る こ
とな く,行 政 の 範 囲 内 で 競 争 促 進 を求 め た もの で,(中
略)規
制 の影響 が色 濃
く残 った市 場 構 造 か ら出 発 す る こ と を前 提 とす る 限 り,単 純 な競 争 政 策 が 有 効
に機 能 す る可 能 性 は そ れ ほ ど大 き い もの で は な い3。」 と い う見 解 が 示 す とお り,
政 策 変更 に よ る航 空市 場 成 果 の 向 上 は,さ ほ ど期 待 さ れて は い な い 。
本 稿 は,こ の よ うな前 途 不 透 明 と され た政 策 変 更 が,果 た して 我 が 国 の 国 内
航 空 業 の 費 用 構 造 と運 賃 決 定 行 動 に 何等 か の 構 造 的 変 化 を もた ら した の か を 計
量 的 手 法 を 用 いて 実 証 的 に解 明 す る こ とを 目的 とす る。 そ れ と同 時 に,す で に
幾 つ か の 費 用 構 造 に関 す る研 究 で と りあ げ られ た規 模 の繙 済 性,路 線 ネ ッ トワー
クの経 済 性 お よ び輸 送 密 度 の経 済 性(以 下 密 度 の 経 済 性)が,運
賃 決定 行 動 に
ど の よ うに作 用 す るか も合 わ せ て 考 察 す る。
豆.予
備 的 考 察
こ こで は本 稿 の 目的 に 関 連 す る諸 学 説 の展 開 を 追 う。 ま ず,II.1.で
は 日本
で の 航 空政 策 変更 の 引 き金 と な っ た米 国 で の 諸研 究 の 内,と りわ け費 用 と運 賃
を規 制 あ るい は規 制緩 和 政 策 と関 連 付 け た 諸 研 究 に論 及 し,次 に我 が国 の 航 空
産 業 に関 す る学説 を と り あ げ る。 ま た 皿.2.で は,諸 学 説 成 果 を 我 が 国 の 航 空
産 業 の 分 析 に 応 用 す る に あ た って生 じ るで あ ろ う問 題 点 を考 察 す る。
皿.1.学
説 の展 開
1938年 に始 ま ったCABに
2)同
上
書,117∼118ぺ
3)同
上
書,121ペ
よ る 航 空 産 業 規 制 は,市 場 の 失 敗 を 根 拠 と した
亠 ジ。
ー ジ。
国内航空運賃 。費用 の計量 分析
69
「経 済 的 規 制 」 で は な く,む し ろ 「(路線 整 備 を 通 じて の)公 正 」,「安 全 性維 持」
あ る い は 「軍 事 目的 」 の た め の 「質 的 規 制 」 で あ った と い う見 解 が,1960年
代
よ り現 れ た 。 そ して,そ の よ うな質 的 規 制 に よ り経 済 的 非 効 率 が生 じて い る こ
とを理 論 的 ・実 証 的 に 解 明 す る た め に,さ ま ざ ま な産 業 組 織 論 的 視点 か らの 研
究 が行 わ れ た4。 そ の 中 で,航 空 業 に お け る規 模 の 経 済 性 に っ い て 論 及 した の
がCaves1962で
あ った5。 しか し,Cavesの
議 論 は企 業 規 模 と営 業 費 用 水 準 と
を単 に 比較 した もの で あ り,市 場 を べ 一ス に生 産 量 と費 用水 準 とを 比 較 した も
の で は な か った 。 従 って,こ の観 点 か らの 議 論 は規 制 政 策批 判 に は必 ず し も大
きな影 響 を 及 ぼ さず,む しろ参 入 の容 易 性 や 競 争 の有 効 性 が 規 制 政 策 批 判 の 中
心 的議 論 とな り6,そ れ らが や が て1978年 の 規 制 緩 和 政 策 を もた らす こ と とな っ
た の で あ る。
そ の 後,航 空 業 の規 制 と規 模 の 経 済 性 を め ぐる議 論 は,規 制 緩 和 後 に 「ネ ッ
トワー クの 経 済 性 」,あ る い は 「密 度 の経 済 性 」 と い う概 念 を と り い れ る こ と
に よ り活 発 化 す る。 そ の 中 で代 表 的 な研 究 は,米 国 の幹 線 と ロ ー カ ル線 企 業 を
対 象 と したCaves=Christensen=Tretheway1984(以
Gillen=Oum=Tretheway1985(以
Windle1989で
下 で はCavesetaL),
下 で はGillenetal.),あ
るい はMcShan=
あ る。
Cavesetal.1984は,運
航 地 点 数,路 線 距 離,座 席 利 用 率,お よ び投 入 要 素
価 格一 定 の 下 で,ア ウ トプ ッ トの 増 加(既 設 路 線 で の 出 発 便 数 の 増 加)に
る総 費 用 の 増 加 の 弾 性 値 が1よ
対す
り も小 さ い と き に,密 度 の 経 済 性 が は た ら く と
定 義 す る。 同 時 に,彼 ら は航 空 業 にお け る規 模 の経 済 性 を,出 発 便 数 と運 航 地
点 数 の 和 の 変 化 率 に対 す る総 費 用 変 化 率 と考 え る。 す な わ ち 路 線距 離,座 席 利
4)米 国航 空 産 業 規 制 批 判 の経 緯 に っ い て は拙 稿[21] ,247∼265ペ ー ジを参 照 。
5)Caves1962は,企
業規 模 の 相 違 に よ る費 用 水 準 差 が存 在 しな い こ と ,お よ び ロ ー カ
ル線 企 業 で はむ しろ規 模 の不 経 済 性 が は た らい て い る こ とを根 拠 に ,航 空 産 業 で は
規 模 の経 済 性 は は た らか な い と主 張 す る 。Caves[7],pp.55-61.を
6)Keeler[11],pp.124-125.の
解釈 による。
参照 。
70
研
究
年
報XXXX
用 率,お よ び投 入 要 素 価 格 一 定 の 下 で,前 述 の 「総 費 用 の 出 発 便 数 弾 性 値
(εy製 に 「総 費 用 の運 航 地 点 数 弾 性 値(εp),っ
を加 え た弾性 値 の合 計(εy+εp)が1よ
ま りネ ッ トワ ー ク の経 済性 」
り も小 さ い と き,規 模 の 経 済 性 が は
た ら くとい う。 そ して,そ の定 義 を 前 提 と して,彼 らは総 費 用 を ア ウ トプ ッ ト,
投 入 要 素 価格,お よ び運 航 地 点 数 の 関 数 と考 え,そ の 総 費 用 関 数 を,2次
の項
が 導 入 で き る点 で 密 度 ・規 模 経 済 性 の推 定 に利 点 の あ る トラ ンス ロ グ型 で 近 似
した7。 そ の結 果,規 制 時代 か ら規 制 緩 和 直 後 の 米 国 内 航 空 業 で は,規 模 の 経 済
性 は必 ず し もは た らか な い けれ ど も,密 度 の 経 済 性 は と りわ け ロ ー カ ル 線 で 操
業 す る航 空 会 社 で 顕 著 に は た ら く とい う8。
この よ うな総 費 用 関 数 に よ る経 済 性 の 議 論 は,米 国 の 航 空 政 策 に対 して 次 の
よ うな示 唆 を与 え て き た。 例 え ば規 制緩 和 直 後 のCaveseta1.1984は,コ
ン
テ ス タ ブ ル市 場 理 論 を 支 持 す る こ とに よ り,た とえ 密 度 の 経 済 性 が は た ら い て
い た と して も,伝 統 的 な規 制 理 論 に則 って,参 入 あ る い は価 格 規 制 を 行 う こ と
に疑 問 を 投 げ か け た9。 ま た,後 コ ンテ ス タ ビ リテ ィ の 不 成 立 が 議 論 さ れ る よ
う に な って か らのMcShan=Windle1989は,ネ
ッ トワ ー ク の 経 済 性 を 阻 害
す る空 港 制 約 を 緩 和 す る た め に,空 港 容 量 の 増加 を 主 張 す る10。 っ ま り,政 策
7)Cavesetal.[6],pp.473-475.
8)Ibid.,pp.483-485.密
度 の 経 済 性 に よ り,便
あ た り費 用 は,幹
線 企 業 の そ れ よ り も45%高
1985とMcShan=Windle1989も,基
く な る と い う 。 ま た,Gilleneta1.
本 的 に はCavesetal.1984の
し て い る 。GillenetaLは
的 小 規 模 な 航 空 会 社(例
数 密度 の 希 薄 な ロ ー カ ル 線 企 業 の 単 位
分析手法 を踏襲
カ ナ ダ 国 内 航 空 業 を 対 象 と し で,密
え ば ケ ベ ッ ク航 空 や ノ ル デ ィ ア 航 空)で
度 の経 済性 が 比較
は た ら く 故,そ
れ
ら の 企 業 の 費 用 が 相 対 的 に 割 高 に な る こ と を 実 証 し た 。Gillenetal.[8],pp.118135.を 参 照 せ よ 。 ま た,McShan=Windle1989は,ネ
ッ トワ ー ク の 経 済 性 の 測 定
尺 度 と して
「総 費 用 の 運 航 拠 点 数 弾 力 性 」 の み な らず,「
ネ ッ トワ ー ク化 率 」 を 導
入 して い る 。 そ れ は あ る航 空 会 社 が 拠 点 と す る 空 港 の 内,連
%の
結 路 線 数 の 多 い 上 位3
空 港 か らの 出発 便 数 の 割 合 で あ る と定 義 さ れ る 。 そ して ハ ブ ア ン ドス ポ ー ク化
率 の+1%の
変 化 に 対 す る 総 費 用 の 変 化 は 一 〇.1%で
Windle[13],pp.211-223.
9)Cavesetal.,op.cit.,pp.483-484.
10)McShan=Windle,op.cit.,pp.223-226.
あ る と い う 。1VlcShan=
国内航空運賃 。費用 の計量 分析
71
提 言 と して は,厚 生 水 準 決 定 関 数 を用 い たBaileyetai.1985以
降 の 研 究u
と ほぼ 同 じよ うな政 策 提 言 を 行 って き た と解 釈 で き る。
以 上 の よ うに,規 制緩 和 以 降 の 費 用 関 数 を 用 い た規 模 の経 済性 の讒 侖は,ネ ッ
トワ ー ク要 素 や 便 数 密 度 要 素 を 新 た に包 摂 す る形 で 展 開 さ れ た 。 一 方Bailey
etaL1985以
降 の 諸 学 説 も,次 第 に ネ ッ トワ ー ク要 素 を 運 賃 決 定 関 数 に 組 み
込 む よ うに な った 。 そ の 代 表 的 な もの は,米 国 国 内線 の 直 行便 都 市 間 市 場 を 対
象 と したHurdleetal.1989あ
eta1.1989は
運 賃(イ
る い はBrueckneretal.1992で
あ る。Hurdle
ー ル ド)決 定 関 数 に お いて 大 き な説 明 力 を 持 っ も の は
費用 要 因 で あ る と した 上 で,路 線 距 離(一)や
平 均 機 材 規 摸(一)と
い った従
来 か ら供 給 側 の要 因 と され て い た要 素 の み な らず,座 席 利 用 率(一)と
度(有 償 旅 客 数,一)も
力 の 符 号)。
需要 密
費 用 要 因 と して 導 入 す る(括 弧 内 は運 賃 へ の 予 想 影 響
この うち 平 均 機 材 規 摸 は規 模 の 経 済 性 の,ま た需 要 密 度 は 範 囲 の
経 済 性12の運 賃 へ の影 響 力 を 見 る もの で あ る13。
ま た,Brueckneretal.1992も,全
米267空 港 にか か わ る路 線 を23428の4セ
11)学 説 の 系 譜 に関 して は拙 稿[22]
,5∼6ペ
ー ジを 参 照 。Baileyetal.1985以
下の
主 な 学 説 は,コ ンテ ス タ ブル 市場 理 論 に基 づ き,集 中 度 と運 賃(ま た は そ れ に代 わ
る厚 生水 準 評価 尺 度),あ
る い は現 実 的 ・潜 在 的 参 入 と運 賃 と の 間 の 因 果 関 係 を 求
め,最 終 的 に は空 港 制 約,合 併,CRS,常
顧 客 優 待 制 度(FFP)な
どの コ ンテ
ス タ ビ リテ ィ阻 害 要 因 の 弊 害 を 克服 す るた めの 政 策 提 言 を 行 っ て き た 。Baileyet
al.[1],pp.156-171.,Morrison=Winston[15],pp.55-65.,Moore[14]
,pp.16
-23 .,あ るい はMorrison=Winston[16],pp.389-393
.を見 よ。
12)原 語 はEconomiesofScopeで
あ る。 こ こで の場 合 ,費 用 の逓 減 を も た らす 結 合
生 産 とは宣 伝 広 告 や 空 港 施 設 で あ り,そ れ に よ る需 要 の増 加 が旅 客 あ た り費 用 の 低
下 に結 び付 く とHurdleetal.は
考 え て い る。Hurdleetal.[9],pp.123-124.
13)こ れ らの 内 ,平 均 機 材規 模 と需 要 密 度 はOLSで
の推 定 の結 果,運 賃 に対 して 負 の
影 響 力 を持 っ とい う仮 説 は棄 却 され た 。 な お 運 賃 決 定 関 数 に は この他 に も集 中 度 や
潜 在 的 競 争 者,コ ミュー ター の存 在 の有 無,ス ロ ッ ト制 約 の 有 無 等 の 要 因 が 取 り入
れ られ て い る。最 終 的 な 結 論 は完 全 な コ ンテ ス タ ビ リテ ィは成 立 し な い こ と ,お よ
び規 模 の経 済 性 と範 囲 の経 済 性 に よ る参 入 阻 止 の 影 響 を受 け な い場 合 に は 潜 在 的 競
争 者 は運 賃 引 き下 げ 圧 力 を 持 っ,と
pp.128-137.
い う こ と で あ る 。Hurdleetal,op.cit
.,
72
研
る
グメ ン ト市 場 と6319の2セ
究
年
報XXXX
グメ ン ト市 場 に 分 割 し,ネ ッ トワ ー ク形 成 と運 賃
との因 果 関 係 を実 証 して い る。 そ れ に よれ ば,「4セ
グ メ ン ト市 場 内 の 需 要 量
の増 加 」 と 「あ るハ ブア ン ドス ポ ー ク 内 の ,あ る4セ グメ ン ト市 場 の需 要量 シ ェ
ア の増 加」 は,共 に運 賃 に対 して負 の影 響 力 を 持 っ と い う。 そ の 原 因 は,ネ
ッ
トワー クの形 成 に よ る需 要量 の 増 加 が,旅 客 あ た り運 航 費 用 を 低 下 させ るか ら
で あ る15。
と こ ろが この よ うな ネ ッ トワ ー ク の概 念 は,従 来 の運 賃 決 定 関 数 に お け る 需 .
要 側 の要 因 と供 給 側 の要 因 の 境 界 を不 明瞭 に し,運 賃 決 定 関 数 の 導 出 を 困 難 に
す る。 そ の原 因 とな る もの は 「ネ ッ トワー クの 外 部 性 」 で あ る16。榊 原1990
は航 空 会 社 のハ ブア ン ドス ポ ー クの 形 成 を例 に挙 げ て,ネ ッ トワ ー ク形 成 の 経
済 効 果 が 「ネ ッ トワー ク形成 利 便 性 向 上(正
の 外 部 性)→ 需 要 量 の 増 加17」 を
通 じて 需 要 側 へ 影 響 す る と共 に 「需 要 量 増 加 → 座 席 利 用 率 の 向上,機 材 の 大 型
化,運 航 頻度 の増 加 に よ る機 材 の効 率 的 運 航 → 単 位 あ た り費 用 の 低 下 」 を 通 じ
て 供 給 側 に も影 響 す る と して い る。 一 方 で 榊 原 教 授 は ネ ッ トワ ー クの 形 成 は参
入 障壁 とな り,「独 占 ス ラ ッ ク」 が 生 じる可 能 性 を 示 唆 して い る。 っ ま り,ネ ッ
トワー ク効 果 は需 要 側 の 要 因 か,あ るい は供 給 側 の 要 因 か と い っ た分 類 上 の 問
14)4セ
グ メ ン ト(都 市 間)市 場 と は,あ る ノ ンで・ブ空 港 か ら出発 し,ハ
ブ空港 で乗 り
継 ぎ を行 って 目的 地 に至 る旅程 の 往 復(RoundTrip)を
い う。 ま た ニ ュ ー ヨ ー ク
eシ カ ゴ間 の よ うな大 都 市 間 の 直 行 便 路 線 の往 復 旅 程 を 「2セ グメ ン ト市 場 」 と定
義 して い る 。仮 説 で は,2セ
グ メ ン ト市 場 よ り も需 要 密 度 の少 な い4セ グ メ ン ト市
場 に お い て,需 要 密 度 の増 加 に 伴 う旅 客 あ た り費 用 の 低 下 効 果 が 大 き い と い う 。
Brueckneretal.[5],pp.312-314.
15)こ の よ うな ネ ッ トワー ク形 成 に よ る費 用 低 下 効 果 は,合 併 問題 に も示 唆 を 与 え る 。
す な わ ち,彼 らは合 併 を 懸念 しな が ら も,あ る程 度 の 競 争 者 が 存 在 す れ ば,合 併 に
よ る反 競 争 的 な圧 力 よ り も,ネ ッ トワ ー ク形 成 に よ る費 用 低 下 圧 力 が 強 くはた らき,
運 賃 が 低 下 す る か も しれ な い と い う。Ibid.,pp.328-332.
16)あ る財 の ユ ー ザ ー の効 用 が,同 一 財 を消 費 す る他 の ユ ー ザ ー数 の 増 加 と と も に増 加
す る場 合,ネ ッ トワー ク の 正 の 外 部 性 が は た ら く。Katz=Shapiro[10],p.424.
17)Borenstein1990は,空
港 支配 に よ り行 わ れ る航 空 会 社 の様 々 な マ ー ケ テ ィ ン グ ・
デ バ イ ス(FFPや,自
らの 航 空 券 を 多 く販 売 した代 理 店 に対 す る報 奨)に よ り,
一 層 顧 客 を 吸 引 で き る とい う
。 そ の 程 度 は 競 争 者 数 に 依 存 す る 。Borenstein[3],
pp.343-365.,あ
る い はBorenstein[4],pp.400-404.
国内航空運 賃 ・費用 の計量分析
73
題 の み な らず,運 賃 低 下 効 果 を持 っ の か,あ るい は上 昇 効 果 を持 っ の か と い っ
た運 賃 へ の影 響 力 の予 想 を も困 難 に す る。 米 国 国 内 航 空 業 で の空 港 支 配 の 問題
を と りあ げ たBerry1990は,こ
の よ うな影 響 力 予 想 の 困 難 さ を挙 げ て,従 来
か ら行 わ れ て き た よ う な余 剰 分 析 は,今 後 は 困難 で あ ろ う と述 べ て い る18。 こ
の考 え 方 に則 れ ば,脚 注13で 述 べ たHurdleetal.のOLSに
よ る推 定 結 果
が,必 ず し も良 好 で な か った よ う に,ネ ッ トワ ー ク要 素 を直 接 取 り入 れ た 運 賃
決 定 関 数 の 構 築 は困 難 で あ る と考 え る。
さて,我 が 国 の航 空 業 に 関 す る研 究 の 内,規 模 の経 済 性,範
囲 の 経 済 性,密
度 の 経 済 性,あ るい は ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 を 中心 的 な 課 題 と して と りあ げ た
実 証 的 研 究 に は高 橋1985,増
高 橋1985は,1978∼83年
井 ・山 内1990,あ
の 日本 の航 空6社
る い は吉 田 ・澤 田1992が あ る19。
に つ い て コ ブ=ダ
グ ラ ス総 費 用 関
数 を想 定 し,総 費 用 の 生 産 量 弾 力 性 を も とに,日 本 の航 空業 で は企 業 規 摸 の 経
済性 が,と りわ け 機材 規 模 の 経 済 性 を通 じて はた ら くこ と を実 証 した。 そ して,
そ の結 果 を踏 ま え た上 で,も し も規 制 が 存在 しな い場 合 に,小 規 模 企 業 が 機 材
規模 の経 済 性 を達 成 した場 合 に は企 業 間 の費 用 格 差 はな くな るか も しれ な い,層
とい う政 策 的 な示 唆 を 行 って い る2°
。 ま た,増 井 ・山 内1990も,生
産 量(有
効
トンキ ロ)・ 機 材 規 模 共 に実 質 単 位 費 用 を 低 下 させ る と して い る21。
また,吉 田 ・澤 田1992は,Cavesetal.1984の
方 法 論 を 踏 襲 し,ト ラ ン ス
ロ グ型総 費 用 関数 を も と に交 通 密 度 の経 済 性 ,ネ ッ トワ ー クの経 済 性,規 模 の
18)Berry[2],pp.394-397.そ
れ に よ れ ば,空 港 に お け る市 場 支 配 力 は 運 賃 を 上 昇 さ せ
るが,反 面 需 要 の 増 加 が 旅 客 あ た り費 用 を 引 き下 げ る と い う。
19)い ず れ も生 産 量 あ る い は生 産 要 素 価 格 と費用 との 因 果 関 係 を回 帰 分 析 を 用 い て 求 め
て い る。
20)高 橋[18],67∼76ペ
ー ジ。対 象 企 業 は 日本 航 空,全 日本 空 輸,東 亜 国 内航 空(当 時),
日本 近 距 離 航 空(当 時,現 エ ア ー ニ ッ ポ ン),南 西 航 空(当 時,現 日本 トラ ン ス オ ー
シャ ン航 空),お よ び 日本 ア ジア航 空 で あ る。 従 って,国 際 線 の デ ー タが 入 る。 推 定
期 間 は1978∼83年 で,パ ネ ル デ ー タ数 は36。
21)増 井 。山 内,前 掲 書,76∼79ペ ー ジ。推 定 期 間 は 日本 航 空 が1972年 か ら87年,全
本 空 輸 と 日本 エ ア シス テ ム が1974∼87年 。
日
74
研
究
年
報XXXX
経 済 性,お よ び範 囲 の経 済 性 を測 定 して い る。 そ の 結 果 規 模 の経 済 性 を除 いて ,
そ れ ぞ れ の 経 済 性 が 概 ね は た ら くこ とを 実 証 して い る22。
この よ う に,日 本 の航 空 業 にお いて も,規 模 の 経 済 性(機
材の大型 化 に よ る
経 済性,生 産 量 の増 加 に対 す る経 済 性,企 業 規 模 の 経 済 性),ネ
ッ トワー クの 経
済 性,あ る い は密 度 の 経 済 性 が は た らいて い る可 能 性 が 強 い。 しか し,こ れ ま
で の研 究 で は政 策 変 更 の 影 響,あ る い は米 国で は行 わ れ て い る規 模 に関 して 収
穫 逓 増 を もた らす生 産要 素(例
え ば ネ ッ トワ ー ク要 素 な ど)あ 運 賃 に対 す る影
響 力 は未 だ測 定 され て い な い状 況 に あ る。
皿.2.方
法 論 適 用 上 の 問題
さて,以 下 で の 分 析 に あ た って は,こ れ まで の 研 究 成 果 の 幾 っ か を 取 り入 れ
る こ とが 必 要 で あ る。 しか し,方 法論 を 適 用 す る に あ た って,幾 っ か の 問 題 が
生 じる。 代 表 的 な もの は 以 下 の と お りで あ る。
①
市 場 構 造 ・市 場 行 動 が 日米 で は異 な る こ と。 既 に 述 べ た よ うに,日 本 の 航
空市 場 は,政 策 変 更 前 後 と もに政 府 規 制 を 受 け る供 給 寡 占市 場 で あ り,し か
もそ の市 場 構 造 は政 策 に よ り人 為 的 に作 られ た もの で あ る。 従 って,規 制 緩
和 後 市 場 の 再 寡 占化 が 進 ん だ と は い え,競 争 的 な 米 国 の航 空 市 場 構 造 と 日本
の そ れ と は明 らか に異 な るの で ,米 国 で の研 究 成 果 と同 様 の測 定 結 果 が 現 れ
る と は限 らな い。 例 え ば,政 策 変 更 後 の 路線 進 出 を 例 に と って み て も,米 国
の場 合 に は企 業 の 意 思 で一 層 需 要 量 の多 い市 場 へ 企業 が 参 入 を 果 た したが23,
日本 の場 合 は企 業 自 らの意 思 と い うよ り もむ しろ政 策 に よ る路 線 割 当 に よ る
進 路 線 進 出 と い っ た感 が強 い 。
②
数 と質 に お いて デ ー タの 制 約 が あ る こと。 例 え ばCavesetal.1984な
ど
22)吉全 田 ・澤 田[19],85∼92ペ
ー ジ。推 定 期 間 は1980年 ∼89年 ,対 象 企 業 は 日本 航 空,
日本 空 輸,お よ び 日本 エ ア シス テ ム の3社 で,パ ネ ル デ ー タ数 は30。 規 模 の 経 済
性 は 日本 航 空 の み,ま た ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 は 日本 航 空 以 外 で はた ら く と い う。
23)こ れ はBaileyetal
.1985の 説 に基 づ く。 拙 稿[21],267∼272ペ
ー ジを 参 照 。
国内航空運賃 ・費用 の計量 分析
75
の トラ ンス ロ グ型 費 用 関 数 は,推 定 式 の変 数 の数 が10以 上 と多 くな る。 しか
し,計 測 を可 能 に した もの は,米 国 で の 研 究 の サ ンプ ル数 が100L:1上 と,自 由
度 を十 分 高 く保 て る ほ ど 多 い こ とで あ る24。一 方 日本 の場 合 に は,政 策 変 更
後 の 入 手 可 能 な デ ー タの期 間 が 短 く,企 業 数 が少 な い か ら,パ ネ ル デ ー タ を
利 用 して も デ ー タ数 は非 常 に 限 られ る。 ま た,輸 送 実 績 と費 用 に 関 す る情 報
の 中 に は,国 際線 に 関 す る もの と国 内線 の もの とが分 離 され て い な い もの も
あ る。
③
ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 と,規 模 の経 済 性 ・密 度 の経 済 性 との 関 連 と定 義 の
問 題 。 既 に述 べ た榊 原1990を
解 釈 す れ ば,ネ
ッ トワ ー ク の 経 済 性 は,機 材
規 模 の 経 済 性 あ る い は密 度 の 経 済 性 を 通 じて の 単 位 あ た り費 用 低 下 効 果 で あ
る。 従 って,ネ ッ トワー クの 経 済 性 に は,機 材 規 模 の 経 済 性 と 密 度 の 経 済 性
も同 時 に包 含 され る。 以 下 で は機 材 規 模 の 経 済 性,お よ び密 度 の経 済 性 を 個
別 に 測 定 す るた め に,こ の2っ の 経 済 性 を ネ ッ トワー クの経 済性 と分 離 して
考 え る。 そ して ネ ッ トワ ー クの経 済 性 を 「路 線 数 の 増 加 に よ る単 位 あ た り費
用 の低 下」 と定 義 す る25。ま たCaveseta1.1984に
お け る規 模 の経 済 性 は
路線 数 と運 航 頻 度 と を合 計 した,い わ ゆ る企 業 規 模 の経 済 性 で あ り,有 償 ト
ンキ ロ と総 費 用 との 因 果 関 係 を求 め た 高 橋1985も
山 内1990で
同様 で あ る。 一 方 増 井 ・
行 わ れ た 規 模 と費 用 と の因 果 関 係 は,企 業 規 模 で は な く機 材 規
模 の経 済性 で あ る。 以 下 で規 模 の 経 済 性 を 測 定 す る に あ た って は,こ の2っ
を 区 別 す る。
④
ネ ッ トワ ー ク要 素 の導 入 に よ る運 賃 決 定 関 数 の 符 号 予 測 の問 題 。 前 節 で 述
べ た よ うに ,ネ ッ トワー クの 運 賃 に対 す る影 響 力 は,正
・負 両 方 向 が 含 ま れ
るの で,運 賃 決 定 関数 に お け る ネ ッ トワー ク要 素 の変 数 の符 号 は予 想 で き な
24)例
え ばCaveseta1.1984の
たMcShan=Windle1989は258で
25)吉
田 ・澤 田,前 掲 書,89ペ
パ ネ ル デ ー タ 数 は208,Gilleneta1
あ る。
ー ジ と同 じ立場 を と る。
.1985は117,ま
76
研
究
年
報XXXX
いo
以下 の モ デ ル と計 測 で は,こ の4項 目が 考 慮 さ れ る。
皿.モ
皿.1.モ
デ ル と変 数 の 説 明
デ ル の構 築
前 章 で 述 べ た よ うな ネ ッ トワー クの経 済 効 果 の運 賃 に 対 す る影 響 力 の 予 測 不
可 能 性 を 克 服 す る た め に,ネ ッ トワー ク要 素 を 供 給 側 の 要 因 と考 え て,路
線数
一 旦 費 用 関 数 の説 明 変 数 と して導 入 す る。 次 に 航 空業 の 運 賃 が フ ル コス ト原 理
で 決 定 され ると考 え る とい う前 提 に立 って26,平 均 費 用 推 定 値 を 運 賃 決 定 関 数
に導 入 す る 。 これ に よ りネ ッ トワー クの経 済 効 果 の 運 賃 に対 す る符 号 予 想 が可
能 に な る。
まず は じめ に 費用 の推 定 モ デル を 考 え る。 航 空 会 社 が 投 入 要 素 価格 に対 して
プ ライ ス テ イ カ ーで あ る と と も に,生 産 費 用 を最 小 化 す る と して,航 空 会 社 の
総 費 用 関数 を 次 の よ う に コ ブ=ダ グ ラ ス型 で 近 似 す る。
a°
総 費 用=定 数 ×(資 本 費 用)×(可
一一.b
変 費 用)
しか し,実 際 に は機 材 や 空港 ター ミナ ル な どの 固 定 費 用 と,運 航 に 要 す る 固 定
費 用 を 厳 密 に区 別 す る の は困 難 で あ る。 従 って,総 費 用 関 数 を次 の よ う に 考 え
る27。
ab
総 費 用e定 数 ×(資 本 用 役)×(可
変 費 用)
厂資本 用 役 」 に含 ま れ る もの と して は,例 え ば年 度 の航 空 会 社 の 平 均 機 材 規 模
(以 下 機 材 規 模),あ る年 度 の 路 線 数(以 下 路 線 数),あ
る路線 あ た りの 出 発 便 数(以 下 便 数 密 度)を
26)航
る い は あ る年 度 に お け
と りあ げ る。 また 総 費 用 は営 業 費
空 業 の 運 賃 が フ ル コ ス ト原 理 に よ わ 決 定 さ れ る と い う考 え 方 は,規
空 業 の 運 賃 が,平
均 費 用+マ
説 に 基 づ く 。 拙 稿[21],254∼256ペ
27)Varian,佐
藤 訳[20],187∼188ペ
制 下 の米 国航
ー ク ア ッ プ で 決 定 さ れ る と い うBaileyetal.1985の
ー ジを 参 照 。
ー ジを参 照 。
国 内航空運賃 ・費用 の計量 分析
77
用 の 内 の 航 空 機 運 航 関 連 費 用 で,営 業 費 用 か ら直 接 航 空 機 の 運 航 に関 係 し な い
費 用(一 般 管 理 販 売 費,代 理 店 手 数 料,そ の他 の費 用)を 除 い た 人 件 費,燃 料
費,機 材 減 価 償 去卩費,整 備 費,飛 行 場 費,航 空 保 険費 の合 計 で あ る。
さて,航 空 会 社 は あ る年 度 の投 入 要 素 を 最 適 に 組 み 合 わ せ て 輸 送 サ ー ビス の
生 産 を 行 う と仮 定 す る。 そ の 生 産 量 を有 償 座 席 キ ロ と し,総 費 用 関 数 の 両 辺 を
生 産 量 で 除 せ ば,次 の よ うな平 均 費用 関数 が 得 られ る。
平 均 費 用 =定 数 ×生 産 (1-a-b)/(a+b)
な お,定 数 は投 入 要 素 価 格 の関 数 で 一 定 とす る。 こ こで ,も し もa+b>1
で あ れ ば,投 入 要 素 価 格 一 定 の下 で,生 産 量 の増 加 に対 して 平 均 費 用 が 逓 減 し,
規 模 の 経 済 性 が は た ら く。 す なわ ち,こ の 平 均 費 用 関 数 の 両 辺 に対 数 を 取 り,
規 模 の 経 済 性 が は た ら く場 合 に は,次 の よ うな 平 均 費 用 関 数 と符 号 条 件 が 得 ら
れ る。
(1)平 均 費 用ef(一
生 産 量)
さ ら に,前 述 の 資 本 用 役 の,平 均 費 用 に対 す る 直接 的 な 影 響 力 を 見 る た め に 総
費 用 関 数 の 両 辺 を生 産 量 で 除 して,次 の3種 類 の 平 均 費 用 関 数 を考 え る。
(2)平 均 費 用=f(一
機 材 規 模,+平
均 可 変 費 用)
(3)平 均 費 用=f(一
路 線 数,+平
均 可 変 費 用)
(4)平 均 費 用ef(一
便 数 密 度,+平
均 可 変 費 用)
な お,第(2)式
で,第(1)式
は 「機 材 規 模 の拡 大 に よ る経 済 性 」 を検 証 す るた め の 推 定 式
と区 別 す るた め,こ こで は 機 材 規 模 の経 済 性 と 呼 ぶ こ と とす る。
一 方 ,第(1)式
は企 業 規 模 の 経 済 性 の 推 定 式 と呼 ぶ こ と とす る。 さ ら に第(3)式
は ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 を,ま た 第(4)式 は密 度 の 経 済 性 を 検 証 す る た め の 推
定 式 で あ る。 資 本 用 役 の 符 号 条 件 は そ れ ぞ れ規 模 に 関 して 収 穫 逓 増 の 場 合 で あ
る。 そ れ ぞ れ の 経 済 性 は次 の よ うに定 義 さ れ る。
第(2)式:あ
る都 市 間 市 場 で単 一 サ ー ビス を 提 供 す る航 空 会 社 の 平 均 的 な 機 材
規 模 の 拡 大 が,投 入 要 素 価 格 一 定 の下 で平 均費 用 を 低 下 させ る と き,こ れ を 規
78
研
究
年
報XXXX
模 の 経 済 性 とす る。
第(3)式:単
一 サ ー ビス を 提 供 す る航 空 会 社 の 操業 路 線 数 の 増 加 が,投
入 要素
価 格 一 定 の下 で 平均 費 用 を低 下 させ る と き,こ れ を ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 と す
る28。
第(4)式:あ
る航 空 会 社 の 効 率 的 運 航 は,他 路 線 へ の 進 出 の み な らず,同
一路
線 で の 出発 便 の 増加 に よ って も達 成 され る。 す な わ ち,単 一 サ ー ビス を 提 供 す
る航 空 会 社 の 路 線 あ た り出 発 便 数 の 増 加 が,投 入 要 素 価 格 一 定 の下 で 平 均 費 用
を 低 下 させ る と き,こ れ を 密 度 の経 済 性 とす る。
な お,そ れ ぞ れ の 経 済 性 を 別 々 の 推 定 式 で計 測 す る理 由 は,上 述 の 榊 原1990
の ネ ッ トワ ー ク効 果 の 因 果 連 鎖 の 概 念 に基 づ き,変 数 間 の 相 関 を回 避 す る た め
で あ る。 実 際 に,以 下 の 実 証 分 析 で利 用 す る デ ー タか ら機 材 規 模,路
よ び便 数 密 度 間 の 偏相 関 係 数 を とれ ば,表1の
(表1)変
機材規模
機 材 規 模
路
線
便 数
密
数
度
線 数,お
よ うな 結 果 が 得 られ た 。
数間の相関
路
線
数
便 数 密 度
1
一 〇
1
.751
一 〇
i:一.
.657
i
次 に,運 賃 決定 関数 を次 の よ うに 考 え る。
運 賃=f(+平
均費 用((1)∼(4)式で の推 定 値),+座
席 利 用 率,+集
中度)
28)「 ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 」 は,あ る路 線 の増 加 が 当 該 路 線 と それ に連 結 され る他 の路
線 の需 要 を も増 加 させ,そ れ が最 終 的 に旅 客 あ た り費 用 の低 下 を も た ら す 讐 と い う
考 え方 で あ る 。 と こ ろ が,こ こで い うネ ッ トワ ー クの 経 済 性 は需 要 側 の 要 因 を 考 慮
して い な い 。従 って,こ れ は厳 密 な 意 味 で の ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 で は な く,路 線
数 増大 に よ る経 済 性 で あ る 。 あ るい は範 囲 の 経 済 性 に お け る 「結 合 生 産 」 を,複 数
路 線 で の操 業 と定 義 す れ ば,こ こに お け る ネ ッ トワ ー ク の経 済 性 は,あ る意 味 で 範
囲 の経 済性 で あ る と もい え る。
国内航 空運賃 ・費用 の計量分析
79
フ ル コ ス ト原 理 で 運 賃 が決 定 さ れ る と仮 定 した場 合,平 均 費 用 と運 賃 と は正
の 因 果 関 係 を持 っ 。 ま た座 席 利 用 率 は景 気 変 動 の運 賃 に対 す る影 響 力 を見 る も
の で,運 賃 とは 正 の 因 果 関 係 を持 っ と仮 定 す る。
ま た,集 中度 は航 空 憲 法 廃 止 後 の運 賃決 定 に 対 す る市 場 支 配 力 の 変 化 を 見 る
もの で あ る。規 制 緩 和 後 の 米 国 で の 例 で は,集 中度 は運 賃 と正 の 因 果 関 係 を 持
つ か ら,コ ンテ ス タ ビ リテ ィは必 ず し も成 立 しな い。 しか し,新 規 参 入 後 の 競
争 に よ る 集 中 度 の 低 下 が 運 賃 の 低 下 を も た らす か ら,規 制 緩 和 後 の 状 況 は
"W
orkabllyContestable"で
あ る とさ れ て い る。 我 が 国 の場 合 で も航 空 憲 法
廃 止 後 の 路 線 参 入 条 件 の 緩 和 後 の トラ ッキ ン グの 増 加 に よ り有 償 座 席 キ ロの 集
中 度 が 低 下 して い る。 これ に よ って実 質 運 賃 が 低 下 す る と仮 定 す る。
以 上 の モ デ ルを 用 いて,
①
規 模 の 経 済 性,ネ ッ トワ ー クの 経 済 性,お よ び密 度 の経 済 性 が 我 が 国 の 航
空 業 で 存 在 す る のか 。
②
上 記 ① の3っ
の経 済 性 に対 して 政 策 変 更 が 構 造 的 変 化 を もた ら した の か。
③
平 均 費 用,集 中度,お よ び座 席 利 用 率 が 運 賃 決 定 に どの 程 度 影 響 力 を持 っ
のか。
④
上 記 ③ の3要 素 の運 賃 決 定 へ の 影 響 力 が,政 策 変 更 後 に変 化 し た の か,ま
た変 化 が あ った とす れ ば,そ れ は政 策 変 更 後 の どの 時 期 で あ った か 。
と い う4点 にっ いて,政 策 変 更 前 後 の期 間 で 検 証 し,政 策 変 更 の意 義 を問 う。
皿.2。
デ ー タ と変 数 の 説 明
実 証 的研 究 を行 うに あ た って の 推 定 期 間 は1980∼91年 で あ り,対 象 企 業 は 日
本 航 空,全 日本 空 輸,お よび 日本 エ ア シス テ ム(旧 東 亜 国内航 空)で あ る。従 っ
てパ ネル デ ー タ数 は36で あ る。 推 定 期 間 の 内,後 半6力 年 は政 策 変 更 後 の 状 況
を説 明 す る もの で,各 年 度 に っ い て 係 数 と定 数 項 に対 しダ ミー変 数 を 導 入 して
産業 の構 造 変 化 を 比較 検 討 す る。 デ ー タの 出所 は財 団 法 人 日本 航 空 協 会 「航 空
80
研
究
年
報XXXX
29
統 計 要 覧 」 の 国 内 線 旅 客 輸 送 の デ ー タ と経 済 企 画 庁 調 査 局 編 厂経 済 要 覧 」 で
あ る。
次 に利 用 す る変 数 を 次 の よ うに 定 義 す る。 た だ し これ らは指 数 で,全 て1979
∼81年 の全 日本 空 輸 の平 均 値 を100と す る。 ま た ,実 測 値 の推 移 を表1に
F:各
示 す。
航 空 会 社 の年 平 均 実 質 イ ー ル ド指 数 。 旅 客 収 入 を 有 償 座席 キ ロで 除
し,さ らに 消 費 者 物 価 指 数 で除 した もの 。
ASK:各
航 空 会 社 の 年 間 有 効 座 席 キ ロ指 数 。
RSK:同
有 償 座 席 キ ロ指 数 。
AC:各
航 空 会 社 の 年 間 総 費 用(皿
一(1)モ デ ル の構 築 を 参 照)を
消 費者 物
価 指 数 で 除 し,さ らに年 閤 有 償 座席 キ ロで 除 した指 数 。
AVC:年
間 総 費 用 か ら航 空 機 減 価 償 却 費,航 空 保 険 費,お よ び飛 行 場 費 を 除
き,そ れ を 消 費 者 物 価 指数 で 除 し,さ らに年 間 有 償 座 席 キ ロ で 除 した
指数 。
SIZE:各
航 空会 社 の 年 平 均 機 材 規 模 指 数 で,各 企 業 の年 間総 有効 座席 キ ロ を
年 間運 航 距 離 で 除 した もの 。 距離 あ た り有 効 座 席 数 を表 す 。
MKT:各
航 空 会 社 の 年 度 毎 の運 航 路 線 数 の 指 数 。 臨 時 休 止 路線 は除 く。
DNS:各
航 空 会 社 の 路 線 あ た り出 発 便 数 の 指 数 。
LF:各
航 空 会 社 の 年 平 均 座 席 利 用 率(=RSK/ASK)指
STR:各
年 度 毎 の 有 償 座 席 キ ロの ハ ー フ ィ ンダ ー ル指 数 。
D:航
空 憲 法 廃 止 後 の産 業 の 構造 変 化 を 見 る ダ ミー 変数 で,1986∼91年
っ いて 各 社 で1,他
ANA:パ
に
の 年 度 は0。
ネ ル デ ー タを 固 定 効 果 モ デ ル で推 定 す る に当 た っ て の企 業 ダ ミー 変
数 で,各 年 度 の 全 日空 にっ い て1,他
JAS:上
数。
は0。
に同 じ く,日 本 エ ア シス テ ム にっ い て1,他
は0。
29)費 用 に 関 す る デ ー タに は国 際線 と貨 物 輸 送 の も のが 含 ま れ る。
国 内航 空 運 賃 ・費 用 の計 量 分 析81
JLD1985年8月
の 日 航 機 墜 落 事 故 ダ ミー 変 数 で,1985年
本 空 輸 に っ い て1,他
QWT・
は0。
イ ラ ク の ク ウ ェ ー ト侵 略 に よ る 燃 料 価 格 上 昇 を 反 映 し た ダ ミー 変 数 で
1990年
と91年 に つ い て1,他
次 に,表2に
は0。
変 数 の実 測 値 を 示 す 。
(表2)変
数 の 実 測 値 の 動 向.1979∼81年
'80
'85
'90
の 全 日空 をgooと した 指 数 。
'80
'85
70.3
67.1
灘 膝
驫糶
N、
105.9
100.7
105.4
籔戀 霞
100.3
120.0
貔鶏
饑難
127.9
'80
110.1
'85
105.4
'90
鑛蟠
20.1
'80
35.6
'85
鑾簸變
409
38.8
甕繍纛
.;
is
議,
難轢蓬
'
轟難
鐵嬢
靆羅鑾
:・1
21.1
'80
..
一..
灘.
50.5
'90
63.0
142.1
49.0
'90
696
鐸灘蓬
386
as.s
150.4
韈繍 醸
102.4
102.2
126.9
248
'80
31.7
'85
40.8
'90
..
32.5
'85
51.5
586
63.2
靆鐵彎
39.6
262
27.9
85.2
893
灘繕鬻
102.5
861
92.1
83.3
'90
靉濺蠶
23.9
'80
27.2
'85
S
'90
戀纏
難糠鑠
102.1
覊欝
飆繊
鸚轢
123.3
'80
969
67.5
40.1
謹難戀
166.2
193.2
灘魏養
104.3
79.4
61.3
戴潤轟
996
118.7
135.7
覊醗
113.4
'80
83.7
'85
57.8
'90
覇欝
41.1
'80
62.3
'85
'90
鑾鏤鑓
16.5
17.9
289
繹欝聾
135.2
114.0
952
鐵織 震
99.1
97.7
92.2
戮掘欝
11
99.7
100.0
鸚
醸
'钁'騰
99.1
'80
908
'85
894
'90
饕譲鬱
67.4
79.4
80.9
96。6
866
鑷難
876
76.6
110.2
嫁難濺
97.7
・11
105.6
護钁謹
104.4
91.1
1048
鸞 獲鬣
1,;
の 日本 航 空 と全 日
...
'85
鍵癒
b
騰
(「航 空 統 計 要 覧 」 と 「経 済 要 覧 」 よ り筆者 が 作 成 。)
う
・
黛1100.5
298
'90
.,
.;
82
研
究
IV.計
年
報XXXX
測 結 果 と評 価
計 測 の手 順 は 以 下 の とお りで あ る。 まず(1)∼(4)で は平 均 費 用 関 数 を 自然 対
数 形 で推 定 し,我 が 国 の航 空業 にお け る,企 業 規 模 の 経 済 性,機
材 規模 の 経済
性,ネ ッ トワ ー ク の経 済 性,お よ び密 度 の経 済 性 の 存 在 の有 無,並
びに政 策変
更 の 影 響 の有 無 を 検 証 す る。
さ らに(5)∼(8)式 は,(1)∼(4)の
各 々 の 平 均 費 用 推 定 値 を 用 い て測 定 した 運
賃 決 定 関 数 推 定 式 で あ る。 斜 体 字 は推 定 値,RB2は
自由 度 修 正 済 み決 定係 数,
SEは 標 準 誤 差,括 弧 内 はt値 で,そ れ ぞ れa=1%,b=5%
,c=10%,d=
20%で 有 意 で あ る こ とを 示 す 。 な お,ダ ミー変 数 の 内 で,t値
が20%で
有意で
な い もの は表 記 を 省 略 した。
(1)企 業 規 模 の経 済 性
Ln(AC)=7.270‐{0.738-0.149(D)-0.172(ANA)-0.482(JAS)}Ln(ASK)
(13.707a)(-5.456a)(3.250a)(7.748a)(3.632a)
-1
.710CJAS)-0.763(D)......................................................Ql
(-3.290a)(-3.897a)RB2=0.9305E=0.056
Ln(AC)=5.186‐{0.202-0.146(D)-0.086(ANA)-0.087(JAS)十
〇.025(JLD)}
(38.542a)(-5.925a)(4.399a)(12.614x)(12.720a)(-2.257b)
xLn(RSK)-0.880(D)......................................................○
(-6.240a)RB2=0.9195E=0.060
① 式 は生 産 量 を 有 効 座 席 キ ロと した 場 合 の 推 定 式 で あ る。 ま た② 式 は有 償 座
席 キ ロ と した 場 合 で あ り,両 式 と も増 井 ・山 内1990と
同様 説 明変 数 は生産
量 の み で 推 定 した30。両 式 か らい え る こ と は,政 策 変 更 前 で は 日本 航 空,全
日空,お よ び 日本 エ ア シ ステ ムの3社
と も生 産 量 の 増 加 に対 して 平 均 費 用 が
低 下 し,か っ弾 性 値 は企 業 規 模 が 大 き い ほ ど大 き い と い う こ とで あ る。 従 っ
30)増
井 ・山 内,前
掲 書,78ペ
ー ジ。
国 内航 空運賃 ・費用 の計量分析
て,企
業 規 模 の 経 済 性 が 存 在 す る 可 能 性 が 強 い 。 し か し ,政 策 変 更 の 影 響 を
表 すLn(ASK)とLn(RSK)の
係 数 ダ ミ ー 変 数Dの
値 は両 式 と も正 で あ る
か ら,政 策 変 更 後 は む し ろ 企 業 規 模 の 経 済 性 が 弱 く な っ て い る 。 しか も ② 式
を 見 る 限 り,全
日 空 と 日本 エ ア シ ス テ ム で は,む
し ろ 「規 模 の 不 経 済 性 」 に
転 じて い る 。
さ て,年
間 総 有 効 座 席 キ ロ,有 償 座 席 キ ロ は,共
に 機 材 規 模,路
航 回 数,お
よ び 運 航 距 離 の 要 素 を 含 む 。 従 っ て,と
りわ け政 策 変 更 前 に は た
ら い て い た 企 業 規 模 の 経 済 性 は,こ
た と 考 え られ る 。 そ う す る と,こ
線 数,運
れ らの要 素 の経 済 性 に よ って もた ら さ れ
れ ら の 要 素 に 対 す る政 策 変 更 の 影 響 は,や
は り(1)式 の 結 果 同 様 経 済 性 を 抑 制 す る 方 向 に は た ら く こ と が,以
下 の(2)∼
(4)式 で も予 想 さ れ る 。
(2)機
材 規 模 の経 済 性
Ln(AC)=2.558‐{0.077-0.011(D)‐0.320(ANA)}Ln(SIZE)十{0
.518
(7.983a)(‐1.918c)(2.134b)(3.490a)(12.806a)
-0
.011(QWT)}Ln(AVC)-1.437(ANA)
(-3.117a)(-3.294a)
RB2=0.9845E=0.026
(2)式 を み る と,政 策 変 更 以 前 で は 日本 航 空 で 機 材 規 模 の 経 済 性 が は た ら い
て い た け れ ど も,弾 性 値 は 小 さ い 。 ま た(1)式
響 を 示 すLn(SIZE)の
係 数 ダ ミ ー 変 数Dの
の 結 果 と 同 様,政
策 変更 の影
符 号 は 正 で あ る か ら,機
経 済 性 も政 策 変 更 後 は 弱 ま っ て い る 。Ln(SIZE)の
材 規模 の
係 数 ダ ミ ー 変 数 の 内,日
本 エ ア シ ス テ ム の も の は 有 意 で は な か っ た け れ ど も31,全
日空 の 場 合 に は 政
策 変 更 以 前 か ら機 材 規 模 の 不 経 済 性 が は た ら い て い た こ と が わ か る 。
(3)ネ
ッ トワ ー ク の 経 済 性
Ln(AC)=2.679‐{0.152-0.099(D)-0.078(ANA)}Ln(MKT)十{0.499-0.246(D)
31)ダ
ミ ー 変 数JASの
係 数 は+o.013,t値
は1.245。
研
究
年
報XXXX
(11.686x)(-3.414a)(-3.104a)(4.637a)(11.662a)(-3.007a)
-0 .009(QWT)+0.179(JAS)}Ln(AVC)+0.681(D)-0.419(JAS)
(-3.176a)(5.535a)(2.549b)(-2,983a)
RB2=0.990SE=0.021
(3)式 の 結 果 も 傾 向 と して は(2)式
と 同 様 で あ る 。 す な わ ち,政
策 変 更 前 後 で,
幹 線 の み で 操 業 す る 日本 航 空 で は ネ ッ トワ ー ク の 経 済 性 が は た ら い て い た け
れ ど も,幹 線 の み な らず ロ ー カ ル 線 で の 操 業 も 多 い 全 日本 空 輸 で は,相
対 的
に平 均 費 用 の ネ ッ トワ ー ク弾 性 値 が 小 さ い こ とが わ か る。 さ らに政 策 変 更 以
降 に は,日 本 航 空 で 弾 性 値 が 一 層 小 さ く な り,更
に全 日 本 空 輸 で は ネ ッ トワ ー
ク の 不 経 済 性 が 発 生 して い る 。
(4)密
度の経済性
Ln(AC)=1.788‐{0.001-0.124(D)-0.212(ANA)}Ln(DNS)十{0.604-0.125(D)
(8.503x)(-0.008)(1.967b)(2.829a)(7.253a)(-1.827c)
-0
.197(ANA)-0.009(QWT)}Ln(AVC)・
….............................(]
(-2.345b)(-2.800a)
RB2=0.990SE=0.021
(4)一 ① 式 で は,密 度 の 経 済 性 が は た ら い て い る か ど う か は 判 断 で き な い 。
し か し,総 費 用 の 輸 送 密 度 弾 力 性 を み る た め に,総
費 用 関 数 を 推 定 す れ ば,
次 の よ う な 結 果 が 得 られ た 認。
Ln(TC)=2.812‐{0.258-0.030(D)‐1.142(ANA)‐1.203(JAS)}Ln(DNS)
(5.845a)(‐2.381b)(4.704a)(2.464b)(4.715a)
+{0.563+0.026(QWT)}Ln(VC)-4.822(ANA)-5.358(JAS)・
・
・
…○
(8.762a)(3.791a)(-2.246b)(-4.746a)
RB2=0.996SE=0.037
(4)一 ② 式 で は,日 本 航 空 に 関 し て は 輸 送 密 度 の 上 昇 が 総 費 用 を 減 少 さ せ て
い る。 け れ ど も,全
性 値 は ほ ぼ1で
32)総
日空 と 日 本 エ ア シ ス テ ム で は 輸 送 密 度 に 対 す る総 費 用 弾
あ り,密 度 の 経 済 性 は ほ と ん ど は た ら か な い 。 そ の 上,政
費 用 関 数 か ら 密 度 の 経 済 性 を 求 め る 方 法 はCaveseta1.,op.ctt.,pp.473-475.
を参照。
策
国内航 空運賃 ・費用 の計量分析
85
変 更 は密 度 の経 済 性 の費 用 に 対 す る影 響 力 を 弱 め る方 向 に は た らい て い る。
以 上 の よ うに,日 本 の 航 空 業 の 中 で,日 本 航 空 の み で 企 業 規 模 の 経 済 性 ,
機 材 規 模 の経 済 性,お よ び密 度 の経 済 性 が確 認 され るけ れ ど も,他2社
では
企 業 規 模 の経 済 性 以 外 は 存 在 しな い こ と,お よ び政 策 変更 後 に はそ れ らの 経
済 性 が 一 層 は た らか な くな って い る こ とが わ か る。 政 策 変 更 後 に この よ うな
現 象 が 起 こ った理 由 は,国 内 の空 港 容 量 の 制 限 か ら追 加 的 な 生 産 量(例
路 線 数 や運 航 頻 度)の 増 加 に要 す る費 用 が,む
えば
しろ増 大 す るか らで あ ろ う と
い う こ と,あ る い は政 策 変 更 後 の路 線割 当 が ,競 争 に よ る効 率 性 向 上 を 伴 わ
ず に,単 に路 線 数 増 加 に よ る費 用 上 昇 の み を 伴 ったか らで あ ると考 え られ る認。
な お平 均 費 用 の平 均 可 変 費 用 弾 性 値 は,全 社 で 政 策 変 更 後 に 小 さ くな っ て い
る。
次 に,運 賃 決 定 関 数 を推 定 す る。
(5)運 賃 決 定 関 数(① 式 は(1一 ①)の,ま
た② 式 は(1一 ②)の 平 均 費 用 推 定 値
を代 入)訓
Ln(F)=-2.643十{0.579十
〇.052(ANA)十
〇.066(JAS)}Ln(Aの
一 〇.318Ln(LF)
(‐0.998)(1.718c)(4.122a)(4.981a)(‐0.642)
+{1.275-1.527(D)}Ln(STR)①
33)イ 値 ラ ク の ク ウ ェ ー ト侵 略 に よ る 燃 料 価 格 高 騰 の 影 響 も考 慮 し た が ,ダ
ミ ー 変 数 のt
は 有 意 で な い か,ま た は ダ ミ ー 変 数 を 導 入 して も経 済 性 の 符 号 は 変 化 し な か っ た 。
34)生
産 量 の 運 賃 に 対 す る符 号 の 予 想 は で き な い け れ ど も ,生 産 量 を 直 接 運 賃 決 定 関 数
の 説 明変 数 に導 入 す る と次 の よ う な結 果 が得 られ た。
Ln(F)=1.145‐{0.305-0.110(D)-0.133(ANA)-0.111(JAS)}Ln(ASK)‐{0.532-0.755(D)}
(0.408)(-3,368a)(2.770b)(6.915a)(9.888a)(-2.250b)(2.053b)
xLn(LF)十{1.470‐1.621(D)}Ln(STR)
(2.565b)(-2.088b)RB2=0.9655E=0.042
Ln(F)=-0.217‐{0.189-0.081(D)-0.115(ANA)-0.130(JAS)}Ln(RSK)-0.130Ln(LF)
(-0.070)(-5.664a)(2.4916)(16.335a)(18.545a)(-0.496)
+{1.274-1.570(D)}Ln(STR)
(1.672d)(-1.485d)RB2=0.942SE=0.055
こ の推 定 結 果 に お け る生 産 量 の 運 賃 に対 す る影 響 力 と,(1)式
合 の影 響 力 に大 きな 差異 は な い(表3参
照)。
を(5)式 に代 入 し た 場
86
研
究
年 報XXXX
(1.751c)(-1.621d)RB2=0.953SE=0.050
Ln(F)=-1。525十{0.659十
〇.042(ANA)十
〇。057(JAS)}Ln(、4の
一 〇.142Ln(LF)
(-0.703)(2.779a)(3.903a)(4.940a)(-0.437)
+{0.784-1.314(D)}Ln(STR)..........................................00
(1.321d)(-1.728e)RB2=0.967SE=0.042
(6)同(2)式
の 平 均 費 用 推 定 値 を 代 入 し た 場 合35
Ln(F)=4.330十{0.942十
〇.034(ANA)十
〇.046(JAS)}Ln(、4σ)-0.098Ln(LF)
(3.225a)(7.515a)(4.830a)(6.457a)(‐0.415)
-0
.813Ln(STR)
(-1.430d)RB2=0.979SE=0.033
(7)同(3)式
の 平 均 費 用 推 定 値 を 代 入 し た 場 合36
Ln(F)=5,338十{0.952十
〇.031(ANA)十
〇.043(JAS)}Ln(、4の+0.038Ln(LF)
(3.005a)(6.778a)(4.297a)(5.712a)(0.187)
-1
.175Ln(STR)
(-2.337b)RB2=0.985SE=0.028
(8)同(4)式
35)機
の 平 均 費 用 推 定 値 を 代 入 し た 場 合37
材 規 模 の運 賃 に 対 す る直 接 的 な影 響 力 の推 定 結 果 は以 下 の とお り。
Ln(F)=5.724‐{0.429-0.095(D)-0.699(ANA)}Ln(SIZE)‐{0.918-1.203(D)十
〇.031(JLD)}
(3.675a)(-15.363a)(2.795a)(5.485a)(-3.493a)(4.192a)(-4.715a)
xLn(LF)十{1.080-1.109(D)}Ln(STR)-3.091(ANA)
(2.686b)(-3.673a)(-5.056a)RB2=0.9785E=0.034
機 材 規 模 の 運 賃 に 対 す る 弾 性 値 は,日 本 航 空 の 場 合(2)式 の 平 均 費 用 推 定 値 を(6)式
に代 入 し た 場 合 の 値 よ り も 大 き く な って い る 。 しか し 全 日 空 の 場 合 に 機 材 規 模 の 不
経 済 性 が は た ら い て い る こ と,お よ び 政 策 変 更 後 機 材 規 模 の 経 済 性 が 一 層 は た ら か
な くな って い る点 にっ いて は差 異 は な い 。
36)路
線 数 の運 賃 に対 す る直 接 的 な影 響 力 の推 定 結 果 は 以 下 の と お り。
Ln(F)=0.080‐{0.130-0.078(D)-0.122(ANA)-0.136(JAS)}Ln(MKT)‐(0.004十
〇.020(JLD)}
(0.035)(-1.120)(1.470d)(2.8fila)(3.222a)(-0.008)(-1.784c)
xLn(LF)十1.020Ln(STR)
(1.482d)RB2=0.9505E=0.051
(3)式
の 平 均 費 用 推 定 値 を(7)式 に 代 入 し た 場 合 に は 得 られ な か っ た,日 本 エ ア シ ス
テ ム の 路 線 数 の 運 賃 に 対 す る 影 響 力 が 判 明 し た 。.同 社 に 関 し て は 運 賃 の 路 線 数 弾 性
値 は ほ と ん ど ゼ ロ に 近 い 。、ま た 全 日空 の 場 合 と 同 様,政
策 変 更 後 に は弾 性 値 は小 さ
いが ネ ッ トワ ー ク の不 経 済 性 が は た ら くよ うに な って い る 。
37)便
数 密 度 の 運 賃 に対 す る 直接 的 な 影響 力 の推 定 結果 は以 下 の とお り。
Ln(F)=-2.404+{0.097+0.438(D)十
〇.099(ANA)十
〇.136(JAS)}Ln(DNS)‐{0.841-1.322(D)
(-1.010)(0.629)(2.820a)(17.531a)(11.462a)(-2.096b)(2.901a)
十〇.027(JLD)}Ln(LF)十{2.186‐1.760(D)}Ln(STR)
(-2.407b)(3.147a)(-3.595a)RB2=0.948SE=0.052
87
国内航 空運賃 ・費用 の計量分析
Ln(F)=4,764十{0.943十
〇.031(ANA)十 〇.043(JAS)}Ln(Aの 十〇.025Ln(LF)
(3.064a)(7.629a)(4.891a)(6.520a)(0.138)
-1 .029Ln(STR)
(-2.346b)RB2=0.988SE=0.026
(5)∼(8)の 運 賃 決定 関 数 か ら,日 本 の 航 空 運 賃 は フ ル コス ト原理 で 決 定 さ れ て
い る こ とが わ か る。 また,(5)∼(8)式
の 結 果 と脚 注34^37の
推定結果を照 合 し
た と き,政 策 変 更 後 に企 業 規 模,機 材 規 模,ネ ッ トワ ー ク,お よ び 密 度 の 経 済
性 が一 層 は た らか な くな った こ と,も し くは そ れ らの 不 経 済 性 が そ の ま ま運 賃
決 定 に 反映 され て い る こ とが推 測 され る。 平 均 費 用 推 定 値 を 通 じた 場 合 の,運
賃 の 各 説 明 変 数 弾 性 値 を表3に
示す。
また,座 席 利 用 率 と集 中 度 の運 賃 へ の影 響 力 は極 めて 不 安 定 で あ る 。 こ の よ
うな 現 象 が 生 じた原 因 は,日 本 の航 空 業 の 市 場 構 造 が 供 給 寡 占 で あ る と い え ど
も,政 府 規 制 を 強 く受 け て い る か らで あ る と考 え られ る。 従 って 産 業 と して は
景 気 の 動 向 に敏 感 に対 応 す るわ け で もな く,ま た市 場 支 配 力 を通 じた 運 賃 決 定
が 行 え る と い うわ け で もな い,と 考 え られ る認。
最 後 に,政 策 変 更 前 後 で 産 業 構 造 に変 化 が あ った か ど うか につ いて 逐 次 チ ョ
ウ ・テ ス トを行 った 結 果,表4の
ホ う な結 果 が得 られ た 。 これ を 見 れ ば,と
わ け 日本 航 空 と全 日空 の 費 用 決 定 関 数 に つ いて,政 策 変 更 後1∼2年
り
の時点 で
38)た だ し,脚 注34,35お よ び37の 推 定 結 果 で は,政 策 変 更 後 は 座 席 利 用 率 の 運 貨 に 対
す る影 響 力 が 正 に,ま た集 中度 の 運 賃 に対 す る影 響 力 が ゼ ロに近 く な っ て い る 。 こ
れ らの 結 果 を 見 る限 りで は,政 策 変 更 後 は運 賃 決 定 が一 層 景気 の 影 響 を受 け る よ う
に な った こ と,並 び に運 賃 決 定 に対 す る市 場 支 配 力 の影 響 が 弱 ま った こ と が 推 測 さ
れ る。
88
研
究
年
報XXXX
のF値 が も っ と も大 き くな って い る。 従 って,ほ ぼ この 時 期 に政 策 変 更 に よ る
産 業 構 造 の 変 化 が 見 られ た と判 断 す る。
(表3)説
明変数の実質運賃 に対す る弾性 値
実質 運賃(F)
RSK
讖鑾嬾 孅 鑞 簔
前
ASK
後
一 〇
.114
一〇
.032
写 一 〇.073
十 〇.ois
一〇
.074
十 〇.ozo
SIZE
前
後
後
一〇
.486
一〇
.388
‐o
‐o
‐o
十 〇.zss
.ssr
一〇
。183
.zsz
MKT
前
前
一 〇
.Ofi2
.ma
一 〇
.144
十 〇.aaa
111
一 〇
後
一〇
.050
十 〇.oza
十 〇.006ネ 十 〇.136*
,(ン79
実質運賃(F)
DNS
靄膿孅 纛鬻轗 蒹
前
AVC(2u4)式
前
後
1刃.001?
十 〇.116
十 〇.533
十 〇.205
鼕+0.199
十 〇.317
十 〇.319
111:
蜑+0.233*
十 〇.671*
十 〇.475
十 〇.147
(表4)逐
第(i一 ①)式
(企 業 規 模)
期間
畑蒹
鼕1韈
、
≡
韈 雛鼕
F値
次 チ ョウ ・テ ス トの結 果
第(2)式
(機 材 規 模)
期間
F値
:.
10.677a
'87 ∼88
14.768a
::
10.132a
'86 ∼87
10.699a
5.879b
'84 ∼85
6.495b
..
(推 定 期 間1980∼91年,a;1%,b=5%で
(な お,表3に
平均
後
第(3)式
(ネ ッ ト ワ ー ク)
期間
..
....
::
F値
第(4)式
(密
期間
度)
F値
4.052
..
4.488
5.113b
..
6.195b
1.912
::
2.059
有 意 で あ る こ と を 示 す 。)
お け る数 値 は平 均 費 用 推 定 値Ln(AC)を
通 じた,実 質 運賃 へ の 間 接 的 な
予 想 影 響 力 で あ る。 また,日 本 エ ア シス テ ム の空 欄 は,企 業 ダ ミー変 数(JAS)が
有意で
なか っ た た め に,数 値 入 力 を省 略 した こ とに よ る もの で あ る 。 ま た 日本 エ ア シ ス テ ム の
数 値 の*印
は,そ れ ぞ れ脚 注36と37のLn(MKT)とLn(DNS)の
V.結
偏 回 帰 係 数 。)
語
標 本 数 が 少 な く,関 数 も単 純 で あ る こ とか ら,必 ず し も断 定 的 な こ と は い え
な い け れ ど も,以 上 の計 測 か ら国 内 航 空 運 賃 と費 用 に 関 して,次 の よ うな 結 果
が得 られ た 。
国内航空運賃 。費用 の計 量分析
①
89
政 策 変更 前 後 にわ た っ て,有 効 座 席 キ ロの 増 加 に対 す る経 済 性 は全 社 で 存
在 す る 。 しか し有 償 座 席 キ ロの増 加 に対 す る経 済 性,機 材 規 模 の 経 済 性,お
よ び ネ ッ トワー クの 経 済 性 が 存 在 す るの は 日本 航 空 の み で あ り,全 日本 空 輸
で は,政 策 変 更 前 で は ほ ぼ 規 模 に 関 して収 穫 一 定 で あ る 。 しか も政 策 変 更 後
に は む しろ規 模 の 不 経 済 性 が 存 在 す る。
②
密 度 の経 済性 は,日 本 航 空 で さ え政 策 前 後 の 期 間 を通 じて存 在 す る か ど う
か は不 明 で あ る。
③
規 模 に 関 す る上 記4種 類 の 経 済 性 は,前 者 と も政 策 変 更 後 一 層 弱 ま って い
る(も
④
し く は規 模 に関 す る不 経 済 性 が 強 くな って い る)。
国 内航 空 運 賃 は,ほ ぼ フ ル コ ス ト原 理 に 則 り決 定 され て い る。 しか も,運
賃 の平 均(運
航)費 用 弾 力 性 は,企 業 規 模 が小 さ くな る ほ ど大 き い。
⑤
上 記4種
類 の 経 済 性(ま
た は不 経 済 性)は,運
賃 決 定 に反 映 さ れ る。
⑥
景 気 動 向 と市 場 支 配 力 の運 賃 に 対 す る影 響 力 は不 安 定 で あ る けれ ど も,政
策 変 更 後 に は前 者 の 運 賃 に対 す る影 響 力 は正,後 者 は負 の方 向 に 向 か っ て い
る と思 わ れ る。 っ ま り,運 賃 決 定 に関 して は政 策 の 硬 直 性 が 幾 分 緩 和 さ れ た
とみなせる。
政 策 変 更 後 の規 模 に 関 す る不 経 済 化 の 傾 向 の 原 因 の1っ
と して,本 稿 に お け
る分 析 が 国 際 線 の デ ー タを 含 ん で い な い とい う ことが考 え られ る。 国際線 の デ ー
タを 含 ん だ場 合,政 策 変 更 後 に全 日本 空 輸 と 日本 エ ア シ ス テ ム で見 られ た 「不
経 済 化 」 とい う結 果 が,あ る い は 異 な っ た もの に な るか も しれ な い。 国 際 線 を
含 ん だ 場 合 の分 析 が筆 者 に 課 せ られ た今 後 の 研 究 課 題 で あ る。 しか し,不 経 済
化 の 傾 向 を導 い た も う1つ の 原 因 と して考 え られ るの は,政 策 変 更 後 の 路 線 割
当が 政 策 の主 導 に よ る もの で あ っ た,と い う こ とで あ ろ う39。 っ ま り',航 空 会
39)例
え ば 日本 航 空 の1991年 度 の 国 内 新 規 開 設 路 線 は秋 田∼ 羽 田,羽 田 ∼ 長 崎,羽
田∼
熊 本,大 阪 ∼ 松 山,お よ び 大 阪 ∼ 鹿 児 島,全 日本 空 輸 の 場 合 に は 富 山 ∼ 札 幌,松 山
∼ 札 幌 ,鹿 児 島∼ 札 幌,東 京∼ 庄 内,お よ び大 阪∼ 庄 内 で あ る 。 い ず れ も ロ ー カ ル
線 へ の進 出 で あ る点 が,よ り採 算 性 の あ る路 線 へ と進 出 した米 国 で の 規 制 緩 和 後 の
状 況 と は異 な る 。
研
90
究
年
報XXXX
社 に と って 一 層 採 算 面 で 魅 力 的 な路 線 に進 出す る と い うよ り もむ しろ,企 業 間
の利 害 調 整 の た め の 路 線 配 分 が 行 政 主 導 で実 施 され た と考 え れ ば,費 用 面 で の
効 率 性 促 進 は政 策 変 更 の 際 に必 ず し も考 慮 され な か った と思 わ れ る40。 す な わ
ち,航 空 会 社 の 効 率 的操 業 を意 図 して 行 わ れ た政 策 変 更 は,必 ず し も そ の 目 的
を 達 成 して い な い と いえ る。 ま た,規 模 に関 す る不 経 済 化 を もた ら した も う一
っ の 原 因 と して,空 港 容 量 の 制約 と高 い施 設 利 用 料 が 考 え られ る。 効 率 性 を考
慮 しな い 路 線 割 当 政 策 と共 に,こ の 点 に関 して も行 政 側 に と って 政 策 の 再 考 が
求 め られ よ う。(1993.9.22)
参 考 文 献
[1]Bailey,E.E.,Graham,D.R.,andKaplan,D.P.,DeregulatingtheAirlines,
MITPress,1985.
[2]Berry,S.T.,"AirportPresenceasProductDifferentiation",American
EconomicReview,Vol.80Na2,1990.
[3]Borenstein,S.,"HubandHighFares:DominanceandMarketPowerin
t}1eU.S.Airlinelndustrジ,RANI)Journal(ゾEcorzomics,Vo1.20Na3,1989.
[4]Borenstein,S,"AirlineMergers,AirportDominance,andMarketPower",
AmericanEconomicReview,Vo1.80Na2,1990.
[5]Brueckner,J.K.,Dyer,N.J.,andSpiller,P.T.,"FareDeterminationin
AirlineHub-and-SpokeNetworks",RANDJournalofEconomics,Vol.23
Na3,1992.
40)一 方,と りわ け全 日本 空 輸 と 日本 エ ア シス テ ム に 関 して は,不 採 算 な ロ ー カ ル 線 か
らの撤 退 が費 用 水 準 を低 下 させ た こ とが,路 線 数 と平 均 費 用 と の 間 に 正 の 因 果 関 係
を もた ら した と考 え られ る。
(後記)本 稿 の作成段 階 にお いて,有 益 な コメ ン トとご指導 をいただ いた神 戸大 学経 営
学部宮下國生教授,正 司健一助教授,並 びに得津一郎 教授,ま た平成5年9月17日
の日
本交通学会 関西部会 での筆者の本稿 の報告 に対 し,建 設 的かっ貴重 な御教 示 を頂 いた京
都大学経済学部 山田浩之教授,近 畿大学商経学部斎藤 峻彦教授,大 阪 市立 大 学経 済研 究
所松澤俊雄 教授,並 び に神戸大学経済経営研究所 富田昌宏助教授,さ らに出 版 に際 して
ご協力 を頂 いた神戸大学経営学部第一 資料室 助手牛 田貴子 さんに対 し,こ こに記 して感
謝 の意 を表 します。
国内航空運賃 ・費用 の計量 分析
91
[6]Caves,D.W.,Christensen,L.R.,andTretheway,M.W.,"Economiesof
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92研
究
年
報XXXX
[21]拙 稿,「米 国航 空 輸 送 業 の 規 制 緩和 に 関 す る学 説 史 的 研 究 」,r神 戸 大 学 経 営 学 部 研 究
年 報 』 第39巻,1993年
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[22]拙 稿,「米 国 内航 空 市 場 成 果 の 評価 モ デ ル の 系 譜 」,『
神 戸 大学経 営 学 部 ワ ーキ ングペー
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