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管理栄養士国家試験準備講習会(2006 年度) 担当 高橋セツ子 「食べ物

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管理栄養士国家試験準備講習会(2006 年度) 担当 高橋セツ子 「食べ物
管理栄養士国家試験準備講習会(2006 年 度)
担当
高橋セツ子
「食べ物と健康」―食事設計と栄養
(調理学とその関連分野)
管理栄養 士国家 試験
出題数
第 19 回までは 150 題、第 20 回からは 200 題
時間配分
第 19 回までは午前の部の問題数 80 題、試験時間 2 時間、
午後の部の問題数 70 題、試験時間 1 時間 45 分
午前・午後ともに 1 題に付き 1 分 30 秒
第 20 回以降、午前の部の問題数 105 題、試験時間 2 時間 40 分、1 題に付き 1 分 31 秒
午後の部の問題数 95 題、試験時間 2 時間 25 分、1 題に付き 1 分 32 秒
「食べ 物と健 康」
教育目標
食品の各種成分を理解する。また、食品の生育・生産から、加工・調理を経て、人に摂取
されるまでの過程について学び、人体に対しての栄養面や安全面等への影響や評価を理解す
る。
1. 人間と食べ物のかかわりについて、食品の歴史的変遷と食物連鎖の両面から理解する。
2. 食品の栄養特性、物性等について理解する。
3. 新規食品・食品成分が健康に与える影響、それらの疾病予防に対する役割を理解する。
4. 栄養面、安全面、嗜好面の各特性を高める食品の加工や調理の方法を理解して修得する。
5. 食品の安全性の重要性を認識し、衛生管理の方法を理解する。
出題のね らい
専門科目における学習内容を効果的に修得し、実践に向かう、より高度な応用力を身につ
けるために、基本的な食品ならびに食品のもつさまざまな情報について理解していることが
求められる。それゆえ、専門基礎科目である「食べ物と健康」では、その基礎となる食に関
する基礎概念と知識・技能に関する事項を評価することを出題の狙いとする。
食品に含まれる各主成分の化学構造ならびに物性、その栄養素供給源としての働きや健康
に対する働きかけ(食品の機能性)について理解できているかを問う。食品の生産から加工・
調理を経て、人に摂取されるまでの一連の過程および人体に対しての栄養面や安全面等への
影響に関する項目について出題する。
また、管理栄養士の実践活動としての表現形である食事設計の基本について、栄養素補給、
嗜好特性、安全性、合理性の向上という諸側面を理解しているかを評価する。いわゆる、
「健
康食品」の有効性・安全性については、科学的根拠に基づいて対応できることが管理栄養士に
期待されることから、少なくとも、その重要な用語とその概要を理解していなくてはならな
い。
さらに、食生活の基盤を支える食品の安全性について、その重要性と安全性確保の方法、
衛生管理の方法などについて知識を問う内容とした。
1
[食べ物 と健康]
25 問 (全体 に占め る割合は 12. 5%)
第20回(2006/3)
管理栄養士国家試験問題について
◎ 全体的に難易度は高くなく、解答しやすい問題が多かった。
◎ 「食品の分類」6 題、「食品成分の化学構造と物性」2 題、
「食品の機能性」4題、「食品の
規格」1 題、
「食品の生産・加工・流通と栄養」2 題、
「食事設計と栄養」3 題、
「食品の安全
性」7 題である。
◎ 旧「食品加工学」や旧「調理学」の分野は大幅に圧縮され、過去の類題が出題された。
3.食べ物と健康
大項目
中項目
小項目
7.食事設計と栄養
A
a
食事設計の内容
b
食べ物の嗜好性と生態利用性
c
料理の形態的特徴と栄養
d
「日本人の栄養所要量(食事摂取基
食事設計の基本知識
準)
」の活用
B
C
調理器具
調理操作と栄養
〈公衆栄養学:11D〉
e
対象に適した対応
a
エネルギー源
b
非加熱用器具
c
加熱用器具
d
冷蔵庫
a
調理操作による組織・物性と栄養成
分の変化
b
食素材の調理と栄養(電子レンジ、
クックチル、ゲル食品、物性の利用
など)
D
食品成分表の理解
c
調理による栄養学的・機能的利点
a
食品成分表の校正と内容(フォロー
アップも含む)
E
献立作成と栄養
2
b
食品成分表利用上の注意点
a
食品構成の作成
b
献立作成条件と手順
c
供食、食卓構成、食事環境
d
献立作成のシステム化
「食事設計と栄養」過去の出題数
第 15 回
第 16 回
第 17 回
第 18 回
第 19 回
第 20 回
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
A.食事設計の基本知識
110
B.調理器具
57
55
57
57
54,57
52∼56
52,53
54∼56
56
52,55
C.調理操作と栄養
52
56,57
D.食品成分表の理解
133,137
66,67
56
133
133,134
133
68
E.献立作成と栄養
2006年(平成18年)第 20 回
(第 20 回、平成 18 年(2006 年)国試 66
調理操作と栄養)
調理操作による栄養成分の変化に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a じゃがいもを丸ごと 40 分蒸したとき、還元型ビタミン C は 50%以上減少する。
b 野菜のβ‐カロテンの損失は、炒め物で 3∼5%程度である。
c キャベツの千切りを浸漬するとき、水道水より 1%食塩水の方がカリウムの溶出が多い。
d 網焼き操作によって、豚ロースの脂肪の約 60%が減少する。
(1)a と b
(2)a と c
(3)a と d
(4)b と c
(5)c と d
正解:( 4)
a じゃがいもを丸ごと 40 分蒸したとき、還元型ビタミン C の減少は 50%以下である。ビタミ
ン C は加熱調理で破壊しやすい。しかし、切断面の少ない丸ごとで、水溶性ビタミンが溶出
しにくい蒸す調理では水溶性であるビタミン C(酸化型・還元型の総計)の減少率は 25%程
度である。
cキャベツ以外の大根、りんごでも、水道水よりも食塩水に浸漬したほうがカリウム、マグネ
シウム、カルシウムの溶出率が高くなる。
d脂肪の減少率は肉の厚みによって異なり、厚ければ薄切りより少なくなる。
(第 20 回、平成 18 年(2006 年)国試 67)
調味料に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)減塩しょうゆの食塩濃度は、2∼3%である。
(2)イノシン酸は、こんぶの旨味成分である。
(3)ターメリックは、酸味を強めるために使われる。
(4)糖アルコールの甘味度は、砂糖より高い。
(5)減塩のための調理では、食酢を活用できる。
正解:( 5)
3
(1)減塩しょうゆの食塩濃度は、約 9%である。濃口しょうゆの食塩濃度は、14.5%である。
(2)イノシン酸は、鰹節や獣肉魚肉などのうまみ成分である。昆布のうまみ成分はグルタミン酸
である。
(3)ターメリック(うこん)は黄色色素を有する香辛料で、カレーやピラフなどに用いられる。
(4)糖アルコールの甘味度は砂糖(蔗糖)より低い。蔗糖より甘味度の高いものには果糖の 1.2
∼1.3 がある。
(第 20 回、平成 18 年(2006 年)国試 68
食品成分表の理解
)
五訂増補日本食品標準成分表に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)炭水化物は、糖質ならびに繊維の項目別に成分値が収載されている。
(2)ビタミン A は、
「日本人の食事摂取基準(2005 年版)」との整合性を確保するために、レチノ
ール当量の算出方法が改められた。
(3)ビタミン D は、効力を国際単位(IU)で表示されている。
(4)無機質の成分項目として、マンガンは収載されていない。
(5)アルコールのエネルギー換算係数として、3.5kcal/g を適用している。
正解:( 2)
(1)炭水化物の成分値には、食物繊維も含まれている。炭水化物の成分値は 100g‐(水分+た
んぱく質+脂質+灰分)で示してある。
(2)日本人の食事摂取基準(2005 年版)がレチノール当量の算出方法を変更し、かつ、レチノ
ール当量を指標にしていることを踏まえて改められた。
(3)ビタミン D は効力をμgで表示されている。
(4)無機質の成分項目として、マンガンは収載されている。「第 6 次改定日本人の栄養所要量―
食事摂取基準」においてマンガンの所要量が示されたことより収載された。
(5)アルコールのエネルギー換算係数として、7.1kcal/gを適用している。
☆学習のポイント☆
第21 回( 2007)
管理 栄養士 国家試 験に向 け ての傾向 と対策
「食事設 計と栄 養」
「調理器 具」、「 調理操 作と栄 養」、「 食品成 分表 の理解」 などが 重点項 目。
喫食者の嗜好を満たし、栄養素の適切な摂取を実現させるためには、調理器具、調理操作、食
素材の変化や物性などについての広い知識が要求される。
「調理」をする際に必要な基本事項を
十分に理解しておく必要がある。
4
1. 食事設計の基本知識
(第 17 回、平成 15 年(2003 年)国試 52
関連問題
食事設計の基本知識)
食事に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a
日本人の日常献立には、和、洋、中の調理技術が取り込まれている。
b
治療の目的で作る特別食では、喫食者の嗜好は考慮しない。
c
食事には、生命維持機能のみでなく団らんその他の機能もある。
d
喫食者の注文によって作られる食事を、供応食という。
(1)a と b
(2)a と c
(3)a と d
(4)b と c
(5)c と d
正解:( 2)
b 治療の目的で作る特別食であっても喫食の嗜好も考慮に入れる。
d 供応食は食事をすすめてもてなすこと。供応(饗応)食では食事をともにし、親しくなる意も
含まれる。
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 52
関連問題
食事設計の基本知識)
おいしさの要因に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 食べ物側の要因のみがおいしさを決定する。
(2) 食べ物をおいしく感じる温度は、体温
25∼30℃である。
(3) 食べ物のテクスチャーに対する嗜好は、年齢の影響を受けない。
(4) 甘味に対する感知は、温度の影響を受けない。
(5) 甘味は、液状よりもゲル状の食べ物の方が強く感じる。
正解:( 2)
(1)「食べ物」と「食べる人」の両側の要因がおいしさを決定する。食べ物の持つ化学的要因と物理的
要因、及び食べる人の生理・心理的要因、それらを取り巻く文化・環境的要因が総合されておい
しいと判断される。
(2)熱いものは熱く(60℃前後)、冷たいものは冷たく(10℃前後)がおいしい。
(3)食べ物のテクスチャーに対する嗜好は、年齢の影響を受ける。加齢に伴う生理的機能、咀嚼・
嚥下機能等の変化が嗜好に関与する。
(4)温度の影響を受ける。甘味は物質によって異なる。温度の影響を受けないのは酸味である。
(5)弱く感じる。塩味も旨味も同様な傾向が見られる。
2. 調理器具(エネルギー源、非加熱・加熱用器具、冷蔵庫)
1) エネル ギー源
燃料の種類
気体燃料:都市ガス、プロパンガス(LPG)
、天然ガスなど。
液体燃料:石油(灯油)、重油、燃料アルコールなど。
固体燃料:石炭、薪、木炭など。
その他
:電力(電気)、赤外線、マイクロ波など。
※ 電力(電気)エネルギーは電子レンジ、電磁調理器、電気コンロなどの熱源として
利用される。
5
燃焼温度
比重
都市ガス
プロパンガス
1, 700∼ 1, 900℃
1, 900℃
0.6
1.5∼1.8
空気より比重が小さい
空気より比重が大きい
着火温度
プロパン<都市ガス<灯油<木炭<薪炭
低い―――――――――――――→高い
(着火温度が高いほど火がつきにくい)
2) 非加熱 用器具 ・設備
加熱前の下処理として、洗う、切る、こねる、混ぜる、こすなど多くの操作がある。
(食器洗浄機、食器乾燥機、包丁、はかり、食品庫、調理台、へら、フードプロセッサー、
すり鉢、裏ごし器、粉ふるい、ゼリー型など)
3) 加熱用 器具・ 設備
熱エネルギーを供給する熱源用機器(ガス・電気コンロ、電磁調理器、電子レンジ、オーブント
ースター、ロースターなどとオーブンレンジやグリルつきコンロなどの複合機器)、や熱源内臓
機器(炊飯器、ホットプレート、電気鍋、フライヤーなどとコーヒーメーカーや餅つき器、パ
ン焼き器などの複合機器)、受熱器(鍋、蒸し器、焼き網など)などに分けられる。
鍋の条件
① 高温に対し安定であること
② 熱伝導率が高いこと
③ 食品成分に対して安定であること
④ 温度変化や衝撃に強く、取り扱いやすいこと
鍋の素材
鍋の素材により熱伝導率が異なる。
銅> アルミ ニウム >鉄> ステン レス
6
電子レン ジと電 磁調理 器の違 い
電子レンジ(マイクロ波加熱)
電磁調理器
食品に高周波を照射し、そのエネルギーで
コイルに交流電流(20kHz)を流し、磁力
食品を発熱させて加熱する。
線を発生させて加熱する。
1.温度上昇が早く、食品の酵素失活が早い
1. 熱効率が高く、温度調節が簡単
2.栄養素の損失が少ない
2. 引火、不完全燃焼の心配がなく、安全性
3.甘味や風味は増加しない
が高い
4.形が崩れにくく、色の変化が少ない
3. 鍋の素材が限定され、アルミ、銅、土鍋
5.金属やアルミホイル類は容器に適さない
は適さない
※ 最近では、非磁性のステンレス鍋でも的
確に熱を伝える高出力のIH(induction
heating)機器も販売されている。
4)冷凍 冷蔵庫
食品を低温(平均 0∼10℃)で貯蔵し、品質を保持させる(食品の冷却や菓子作りにも利用)
冷蔵庫とマイナス 18℃以下に保存できる冷凍室を備えたものをいう。
関連問題
冷蔵室
3∼6℃(一般食品)
冷蔵室ドアポケット
6∼8℃
野菜室
5∼9℃(野菜、果実、熟成チーズなど)
パーシャルフリージング室
‐1∼‐5℃(微凍結状態での保存)
チルド室
‐1∼0℃(低温による保存期間の延長)
冷凍室
‐18∼‐20℃
(卵、ビール、牛乳など)
(第 16 回、平成 14 年(2002 年)国試 55
調理器具)
調理の設備・器具に関する記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
a. 家庭用冷蔵庫の野菜室は、0∼‐2℃に設定されている。
b.強制対流式ガスオーブンは熱伝達がよく温度が速やかに上昇する。
c.ステンレス鍋の熱伝導度は、アルミニウム鍋より小さい。
d.電子レンジは、マイクロ波による放射熱を利用する加熱機器である。
(1)a とb
解答(3 )
a
(2)a と d
(3)b と c
(4)b と d
(5)c と d
加熱調理操作の特性を整理しておくこと
基本的には 5℃程度に保たれており、食品が凍らない程度に冷えることが理想。誤り。
b,c は記述のとおり。
d
高周波による振動または回転させることによる摩擦熱で食品が加熱される。誤り。
7
(第 12 回、平成 10 年(1998)国試 57
調理器具)
調理の設備・器具に関する記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
a. 冷蔵庫のパーシャルフリージング室の温度は‐10℃前後である。
b. 家庭用電子レンジのエネルギー効率はほぼ 50%である。
c.
電磁調理器は発熱が早く、任意の温度を長時間安全に保持できるが鉄鍋を使えないのが
欠点である。
d. 自動炊飯器の保温温度は、腐敗菌の生育を避けるため 70℃以上と決められている。
(1)a と b
(2)a と d
(3)b と c
(4)b と d
(5)c と d
解答(4 )
c
a ‐1∼‐5℃
鉄鍋は使用可能
(第 15 回、平成 13 年(2001 年)国試 57
調理器具)
加熱用器具に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)ホーロー鍋は、熱伝導率が低く温度分布が不均一になる。
(2)圧力鍋で炊飯すると、飯は粘りの少ないテクスチャーとなる。
(3)ガスコンロは、対流伝熱や伝導伝熱加熱には適さない。
(4)電子レンジは、温度上昇速度がはやいので食品の酵素失活が早い。
(5)電磁調理器の熱効率は、電気コンロに比べて低い。
解答(4 )
(1)熱はむらなく徐々に伝わる。
(2)粘りの強いテクスチャーとなる。
(3)対流伝熱や伝導伝熱加熱に適する。
(第 19 回、平成 17 年(2005 年)国試 57
(5)電気コンロに比べて高い。
調理器具/加熱用器具)
鍋の材質を熱伝導率の大きい順に並べたものである。正しいものはどれか。
(1) 銅
>
ステンレス
(2) ステンレス
>
(3) アルミニウム
(4) 銅
>
>
アルミニウム
アルミニウム
銅
銅
>
ステンレス
アルミニウム
>
ステンレス
(5) ステンレス
>
>
>
銅
>
アルミニウム
正解:( 4)
鍋の材質の熱伝導率(単位[W/(m・K)])は、銅:401、アルミニウム:237、ステンレス(18-8):
16.0 である。
銅鍋は熱伝導率がよいのでゆでる・煮る調理に適するが酸、塩に弱く緑青が発生しやすい。
アルミニウムは熱伝導率がよく、軽くて扱いやすい。ゆで物に適するが、酸、アルカリ、塩に弱
い。
ステンレスは熱伝導率が悪い。18Cr 鋼は磁性があるので電磁調理器で使用でき、さびにくい。
練習問題(正誤解答)
1)□鉄鍋は熱伝導率が高く、温度分布が不均一になりやすいので、煮物などの部分的な焦げ付き
が生じにくい。
8
<基本事 項>
図.熱の移動
表.加熱調理操作の種類
川端晶子編「調理学」学建書院,1997
ガスコン ロの加 熱
①熱源からの放射伝熱→②鍋を伝わる伝導伝熱→③鍋の中の水(油)による対流伝熱→
④食品の表面に伝わった熱が外部から内部へ伝導
ガスオー ブン加 熱
① 庫内の空気を熱媒体とした対流伝熱→②庫壁からの放射伝熱→③天板の熱からの伝導
伝熱→④食品の表面に伝わった熱が外部から内部へ伝導
9
(第 17 回、平成 15 年(2003 年)国試
57
調理器具・加熱用器具)
調理器具に関する記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
a
ステンレス製の鍋は電磁調理器に使用できる。
b
圧力鍋を用いると、加熱時間が短縮できる。
c
陶器の鍋は熱伝導度がよい。
d
強制対流式のオーブンは、放射熱によって加熱される。
(1)a と b
(2)a と c
(3)b と c
(4)bとd
(5)cとd
解答(1 )
a
使用可能鍋∼鉄、鉄鋳物、鉄ホーロー、ステンレス
使用不可能鍋∼耐熱ガラス、陶磁器、銅、アルミ
b
圧力鍋は一定の圧力になるまで蒸気を鍋内に閉じ込めて加熱温度を高くし(沸点 110∼
120℃)食品を加熱する。
c
熱伝導は悪いが保温性に優れている。
d
オーブンの加熱は熱した空気の対流伝熱と庫壁の放射伝熱、天板の伝導伝熱の複合。
(第 19 回、平成 17 年(2005 年)国試 54
調理器具)
加熱調理における熱の伝わり方についての記述である。正しいのはどれか。
(1) オーブン加熱では、鉄板からの伝導のみで熱が伝わる。
(2) 電子レンジ加熱では、食品中の水が対流して熱が伝わる。
(3) 蒸し加熱では、水蒸気が対流して熱が伝わる。
(4) 炒め加熱では、油の対流で熱が伝わる。
(5) 直火焼きでは、空気の対流のみで熱が伝わる。
正解:( 3)
(1)鉄板からの伝導に加え、空気の対流、庫壁からの放射で熱が伝わる。オーブン内の空気が加熱
され、熱は空気の対流とオーブン庫壁からの放射と天板からの伝導によって食品に伝えられる。
さらに食品自体は、高温部(外側)から低温部(内側)へ伝導で熱が移動していく。
(2)主として食品中の水がマイクロ波により発熱する。電子レンジは、マグネトロンから発する
2,450
50MHz のマイクロ波が食品中の水の分子を振動して発熱し、食品の温度が急速に上昇す
る。
(3)蒸気は温度が低いものに触れると潜熱を食品表面に与えて加熱するので、あわせて覚えておく
とよい。
(4)鍋からの伝導と熱せられた油からの伝導で熱が伝わる。熱源の熱が放射・対流によって鍋に伝
えられ、油脂と鍋の高熱による伝導によって食品を加熱する方法である。攪拌しながら加熱する
調理法で、高温短時間で仕上がる。
(5)熱源からの放射と空気の対流で熱が伝わる。食材への熱の伝わり方は、熱源からの放射熱、空
気の対流によって食品内部まで達する。また食品を支持している金串や焼き網などを通しても伝
導熱が伝わる。
10
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 57
調理器具・加熱用器具)
電磁誘導加熱に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)鍋底に発生する渦電流は、磁場発生コイルによる。
(2)熱効率は都市ガスに比べて低い。
(3)初期発熱速度は電気コンロに比べて遅い。
(4)鍋の最高温度は、400℃に設定されている。
(5)鍋は、強磁性体丸底鍋が適している。
解答(1 )
(2)高い
(3)速い
(4)200℃
(5)平底鍋
(第 14 回、平成 12 年(2000 年)国試 57
調理器具)
エネルギーに関する記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
a
炭は燃焼により熱と水蒸気を発生する。
b
プロパンガスの比重は都市ガスより大きい。
c
都市ガスは燃焼により 2,000∼3,000℃の温度になる。
d
電磁調理器は高周波による磁力線によって発熱する。
(1)a と b
(2)a と c
(3)b と c
(4)b と d
(5)c と d
解答(4 )
a
炭は燃焼により熱と炭酸ガスを発生する。
c
都市ガスの最高温度は約
1,700℃である。
練習問題(正誤解答)
2)□ガスの熱効率は約 70%である。
3)□都市ガスはプロパンガスに比べ比重が大きいので床にたまりやすく、爆発しやすい
4)□ 電子レンジ加熱はマイクロ波により食品中の荷電分子が振動することによって起こる摩擦
熱を利用する。
5)□電磁調理器は磁力線により鍋自体が発熱して加熱する方法で、熱効率がよい。
6)□練り製品はパーシャル室で保存するのが最も適している。
7)□生鮮食品を凍結する際には、0∼-5℃の最大氷結晶生成帯をゆっくり通過させると、解凍時
にもとの状態に戻りやすい。
11
食品素材の調理と栄養
1.デン プンの 糊化と 老化
生デ ンプン (β‐ デンプ ン)
特徴①水も入ることができない緻密な構造
②X線回折で微結晶構造(ミセル構造)を有する。
糊化 デンプ ン(α ‐デン プン)
特徴
①消化酵素(アミラーゼ)による消化性の向上
③X線回折で微結晶構造の消失
②透明度が上昇
④急激な粘度の上昇
生デンプン→糊化 →糊化デンプン→放置→老化デンプン
・ 一般に糊化は 60℃前後から始まる。
・ デンプン量の少なくても 30%の水が必要
老化の起 こりや すい条 件
②水分 30∼60%
①温度2∼4℃
③アミロース含量の多いもの
老化を遅 らせる 方法
①糊化状態のまま水だけを除去する(ビスケット、せんべい、干し飯)
ど親水性大なものを多量に加える(羊羹、あんもち)
②糊化状態で砂糖な
③高温(60℃以上)保持または急速凍
結し、冷凍保存(‐25℃以下)(冷凍パン)
3. 米の調理
1)炊飯 時の加 水量、 吸水量 、炊き 上がり 重量
加水量(米重量)
吸水率
炊き上がり重量(米重量)
1.5 倍
25∼30%
2.2∼2.4 倍
0.7∼1.0 倍
30∼40%
1.7∼1.9 倍
うるち米
もち米
(蒸しこわ飯)
2)味付 け飯 (炊き込み飯)の調味は炊く直前に(米の浸漬中の吸水速度を遅らせるので)。
塩分添加量は米重量の 1.5%、炊き上がり飯の 0.6∼0.7%を基準とする。副材料の添加
量は一般に米重量の 30∼40%量。
すし飯 の加水量は米重量の 1.2∼1.3 倍(米容量の 1.1 倍)、酢は飯の 5∼7%、砂糖は飯の 1
∼2%、塩は飯の 0.7∼0.9%。(米重量に対して、酢 10∼15%、砂糖 5∼8%、塩 1.5
∼2%)
ピラフ の油脂量は米重量の約 7%
炒飯 の油脂量は飯重量の 7∼10%
3)粥( 米の容 量に対 して)
形態
全粥
七分粥
五分粥
三分粥
加水量
5倍
7倍
10倍
20倍
五分粥、三分粥をこして米粒を取り除いた汁を重湯(おもゆ)という。
12
4)もち 米の調 理
十分に浸漬すると、米重量の 30∼40%吸水する。 ②嗜好的に好まれる出来上がり重量は米の
1.7∼1.9 倍で、加水量は 0.7∼1.0 倍。③一般に対流加熱法は適さない(低温短時間加熱で粘り
を生じ、焦げやすい)ため、蒸し加熱を用い、足りない水は「ふり水」で補う。最近は電子レ
ンジで短時間に仕上げる工夫もされている。
5)米粉 の種類
白玉粉:寒晒粉ともいう
もち米
求肥粉:もち米を杵式製粉機で粉砕し、ふるい分けした粉
生
うるち米
上新粉:100∼120 メッシュの粒度の粉
上用粉:200 メッシュ(平均)の粒度でより細かい粉
道明寺粉
もち米
寒梅粉
糊化したもの
うるち米粉
重要事項
※デン プンの 糊化と 老化
※旧「調理 学 」では これま で特に 米、小麦粉 、卵、魚 、肉など につい て多く 出題さ れた 。
関連問題(第 16 回、平成 14 年(2002 年)国試 57
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
もち米の調理に関する記述である。誤っているのはどれか。
(1) もち米は、2時間の水浸漬で 30∼40%吸水する。
(2) 炊きこわ飯では、米の容積の 80%を加水量とする。
(3) 蒸しこわ飯では、ふり水により硬さの調整を行う。
(4) こわ飯の炊き上がり重量は、もち米重量の 2.2∼2.3 倍である。
(5) 新粉で作る団子は、白玉粉を加えると軟らかさが増す。
解答(4 )
解説
(1)、(2)、(3)、(5)は記述のとおり。
(4):こわ飯の炊き上がり重量は、もち米重量の 1.7∼1.9 倍で、うるち米の場合は
2.2∼2.4 倍である。
練習問題(正誤解答)
8)□白玉粉はうるち米の粉で、熱湯でこねて団子状にする。
※米の種類(もち米とうるち米)と調理の特性を整理しておくこと。
(第 19 回、平成 17 年(2005 年)国試 55
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
13
米の調理についての記述である。正しいのはどれか。
(1) 全粥を炊くときの加水量は、米容量の約 5 倍である。
(2) 炊き込みご飯には、米重量の 1%の食塩を添加する。
(3) すし飯の酢の量は、飯重量の約 20%である。
(4) 炒め飯の油脂の量は、飯重量の約 15%である。
(5) バターライスのスープストックの量は、米重量と同量である。
正解:( 1)
(1)粥の加水量は、7分粥が約7倍、5分粥が約 10 倍、3分粥が 13∼20 倍である。重湯は 5 分粥
または 3 分粥を裏ごすなどして粥粒を除去したものである。
(2)米重量の 1.5%の食塩を添加する。炊き込みご飯は炊き上がり倍率(米の約 2∼2.2 倍)を勘案
して飯の 0.6%前後の塩分を調味することが多い。また、調味は食塩だけでなく、しょうゆと塩分
を分けて行うことも多い。あるいは、水重量の1%の食塩でもよい。(炊く直前に加える。
)
(3)飯重量の 5∼7%である。すしのあわせ酢に加える酢の量は、すしの種類(ちらしやいなりなど
のやや濃厚な味と、にぎりや棒ずしのためのさっぱりした味)を問わず 5∼7%である。砂糖や塩
は、種類によってかえる。
(4)飯重量の 7∼10%である。
(5)米重量の 130%である。精白米の炊飯に必要な水分の量は、炊飯器の場合、容量では、同容量、
重量では、約 130%である。
3.小麦 粉の調 理
1)小麦粉の種類と用途
小麦粉の種類
たんぱく質含有量(%)
調理例、小麦粉成分の作用
強力粉
11.5∼15.0
パン、パイ皮、中国料理の皮(グルテンを生かした調理)
中力粉
7.5∼10.5
うどんなどの麺類
薄力粉
6.5∼9.5
天ぷらの衣、ケーキ、クッキーなど(デンプンが主とな
る調理)
14
2)小麦粉調理におけるスポンジ状膨化
種類
B.P
膨化機
構
2NaHCO3
卵白泡
パン酵母(イースト)
熱
・たんぱく質分子が薄膜と
イースト中の酵素
水
なり気泡のまわりを包む
2 糖 類 !! ! ! !!" 単 糖
・表面変性
類
Na2CO3
!"#$%&'(
!!"#$%&'(
! ! ! !!" ア ル コ ー ル
+H2O+CO2
+CO2
諸条件
・酸性剤
・主にコンアルブミン、グ
生地を中和する
・Saccharomyces
cerevisiae に属する単細胞
ロブリンが関与
速効性(酒石酸など)
・砂糖の添加(卵白重量の
の菌
中間性(酒石英)
50∼100%)により安定 ・イーストの発酵には小麦粉
遅効性(ミョウバン)
性が大となる。
中の糖のみでは不十分→
・緩衝剤(デンプン)
必ず砂糖を加えることが
必要
・生地熟成中に生成するアル
コール、カルボニル化合物
などがパンの風味に関与
3)調理条件と小麦粉生地の物性
調理条件
小麦粉生地の物性
薄力粉:たんぱく質が少ない→生地のコシが弱い
小麦粉の種類
加水量
ドウ
:50∼60%(手でまとめられるかたさ)
バッター:100∼200%(流動性がある生地)
低い→生地はやわらかい、高い→かたい、70℃を超えるとデンプンの糊
水温
化の影響で吸水率が大幅に増加
混ねつ
ねかし(熟成)
食塩
砂糖
副
材
料
強力粉:たんぱく質が多い→生地のコシが強い
油脂
卵
乳化剤
混ねつによりグルテンが発達して伸長抵抗が大きくなる。さらに混ねつ
すると伸長抵抗が減少して伸びやすくなる。
ぬれぶきんに包んで一定時間おくと生地が軟らかく伸びやすくなる。
グルテンの粘弾性を増し、ドウや製品のコシを強くする
保水性が高くグルテン形成を制限するので、生地の粘弾性は低下し、製
品はもろい食感になる。
グルテン形成を阻害し、製品にショートネス(歯もろさ)が付与される
材料を均一に分散させる
材料を分散させ、生地を安定にして操作性を高める。製品のきめを細か
く軟らかくし、老化を抑制する効果がある。
副材料の換水率は水1に対して、牛乳 0.9、卵 0.8、砂糖 0.4∼0.6、バター0.8
15
4)汁のとろみ付けの種類と特徴(デンプンを主とする調理)
とろみ付けの種類
① 生小麦粉のまま水溶きして、②小麦粉を炒めて、③油脂と練り混ぜて(ブール・マニエ)、
④油脂と炒めて(ルウ)
とろみ付けの効果:油脂が加わると強められ、炒め程度が激しいほど弱められる傾向にある。
4)小麦粉を用いた汁の、とろみづけの濃度
種類
スープ
ソース
和え衣
クリーム
濃度(%)
2∼4
3∼6
7∼9
8∼10
コロッケ(クリーム)
12∼15
5)天ぷらの衣の材料、分量と働き
材料名
小麦粉(薄力粉)
揚げ材料の 15∼20%
分量
・ 衣の網目構造の骨
格としてグルテン
が作用
生地中での作用
・ グルテン量多い→
吸水性大→脱水不
その他
卵水
炭酸水素ナトリウム
小麦粉の 1.5∼2.0 倍
特に、カラリとした衣にした
(必要水量の 1/3∼1/4
いときに用いる。小麦粉の
は卵を使用
0.2%前後
・ 卵がグルテン形成
・ 加熱中 CO2 を発生する
の抑制に役立つ
と共に水の蒸発を促す
・ 加熱時に熱凝固し
→カラリとした衣を長
ながら膨化し、脱
時間保つ(市販の天ぷ
水を促す。
ら)
十分→衣がカラリ
・ 揚げたてはカラリとし
と揚がらない
関連問題
過ぎてかたい
(第 12 回、平成 10 年(1998)国試 53
調理操作と栄養)
小麦粉の調理についての記述である誤っているのはどれか。
(1) 小麦粉にその約 50%の水を加えてこねると粘弾性のあるドウが得られ、同量以上の水を加え
ると流動性のあるバッターとなる。
(2) ドウの性質はファリノグラフやエクソテンソグラフで測定され、強力粉は薄力粉に比べて弾
力、コシがあり、伸びやすい。
(3) グルテンはドウを作っていく過程で形成されるもので、食塩の添加はドウのコシを強くし、
ねかせておくと伸びやすくなる。
(4) ホワイトソースはルーに牛乳を加えて加熱するが、小麦デンプンは糊化温度が低いので調製
しやすい。
(5) 小麦粉に炭酸水素ナトリウム(重曹)を加えて膨化させると、生地にアルカリ臭や味が残り、
小麦粉中のフラボノイド色素を黄色化する。
解答(4 )小麦でんぷんは糊化温度が高いので十分な加熱が必要である。
16
(1) ファリノグラフは一種の混ねつ機で、小麦粉に一定の硬さになるまで水を加え、その後、
混ねつを続けた時のドウの硬さ、こね上げ時間、弾性、安定度を測定する機器、エクス
テンソグラフはドウを棒状に形成し、その中心部を引っ張って切れるまでのドウの弾性、
伸長度、伸張抵抗を測定する機器。(3)グルテンは小麦粉中に含まれているたんぱく
質ではなく、ドウをつくっていく過程で形成される。小麦たんぱく質の約 90 パーセン
トを占めるグルテニンとグリアジンが水和してグルテンの網目構造をつくる。食塩はグ
リアジンの粘性を増し、グルテンの網目構造を密にし、こしを強くする。
練習問題(正誤解答)
9)□薄力粉を油脂で炒めてルーを作るとき、加熱温度が低いほうが粘性の高いルーができる。
(第 19 回、平成 17 年 2005 年)国試 56
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
小麦粉の調理についての記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
a. 小麦粉に約 50%の水を加えてこねたものをドウという。
b. ドウは、ねかすことで伸展性が増す。
c.
砂糖の添加は、グルテンの形成を促進させる。
d. グルテンの形成は、低温で促進される。
(1)a と b
(2)a と c
(3)a と d
(4)b と c
(5)c と d
正解:( 1)
a 加水量 50∼60%の手でまとめられる硬さの生地をドウといい、加水量 100∼200%の流動性の
ある生地をバッターという。
b ドウは、加水直後よりもねかすことによりグルテンの網目構造が緩和され、生地の抵抗が減少
し、伸ばしやすくなる。
c グルテンの形成を抑制する。砂糖は親水基を多く持ち、生地中の水分を奪うので、グルテン形
成を抑制し、粘弾性を低下させる。
d 30∼40℃で促進される。冷蔵庫のような低温では促進されない。また、70℃以上になるとでん
ぷんの糊化とともに、たんぱく質の熱変性が進むので、グルテンの形成は悪い。
<過去の 出題>
グル テン形 成時に 加えら れる 食塩の効 果やね かし効 果につ いて 、汁の と
ろみづけ に用い るホワ イトソ ースの 小麦デ ンプ ンの糊化 温度に ついて
4.いも 類の調 理
1)じゃがいもの調理
①調理目的によって品種、成熟度を考慮する。
(男爵いもはでんぷんが多く煮くずれしやすい
ため、粉ふきいも、マッシュポテト、サラダに向く。メークインは粘性が高く、煮くずれ
しにくいので煮物、揚げ物、炒め物に向く。)
粉質いも:男爵いも、農林 1 号
粘質いも:メークイン、紅丸
② 未熟いもは環元糖やアミノ酸を多く含むため、ポテトチップスには適さない。
17
③ 成熟いもは水溶性ペクチン(高温時に流動性を有する)を多く含むため細胞分離しやすい。
粉ふきいも、マッシュポテトに適する。
④ 裏ごしいもは、ゆでたじゃがいもが熱 い う ち に つ ぶ す 。冷えるとペ ク チ ン が粘性を増
し、裏ごししにくくなる。
⑤ イモ類は水から茹でたほうが内部を徐々に温めて滑らかに仕上がる。
⑥ じゃがいもやさつまいもは加熱を中断して再加熱すると、組織が硬くなり煮えにくい。
⑦じゃ がいも の褐変:チロシン(じゃがいもの細胞中にあるアミノ酸の一種)がチロシナー
ゼによって酸化され褐変する。チロシナーゼは水溶性で、切ってすぐに水に浸漬すると溶出
し、褐変を防ぐことができる。
2)さつまいもの調理
① ミョウバン〈明礬〉の効用(ゆで水の 0.5%量):さつまいも中のフラボノイド色素と、
ミョウバン中の Al イオンとが塩を作り、黄色に発色する。また、ゆで水の浸透圧が高ま
り、液中のイオンが、いものたんぱく質やペクチンと結合し、組織を引き締めるため、
煮くずれしにくくなる。
② β‐アミラーゼの作用:保存中や加熱でβ‐アミラーゼ(最適温度 55∼65℃)がいもに
作用するため、糖量が増し、甘味が強くなる。さつまいもは大きいままゆっくりと加熱
したほうが糖の生成量が多く、甘味 が増 す。反対に電子レンジ加熱では糖の生成量が少
ないため甘 味は少 なくな る。
③ 重曹(炭酸水素ナトリウム)を加えた衣でさつまいもの天ぷらを作ると、さつまいもに
含まれるクロロゲン酸がアルカリと反応してさつまいもの周囲が緑色 になる。
関連問題
(第 15 回、平成 13 年(2001 年)国試 53
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
じゃがいもの調理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) じゃがいもを茹でるとビタミンCはほとんど失われる。
(2) じゃがいもの芽の部分をとるのは酸化酵素チロシナーゼを取り除くためである。
(3) 粉ふきいもには粘質のメークインが適する。
(4) マッシュポテトを作るときの裏ごしはいもが冷めてから行う。
(5) フライドポテトの褐変を防ぐには、切ったいもを水に浸けてから揚げる。
解答(5 )
(1)損失は 10∼20%程度
イン→粉質の男爵いも
(2)酸化酵素チロシナーゼ→ソラニン
(4)いもが冷めてから→熱いうちに
(3)粘質のメーク
(5)水につけると、切り
口から糖質やアミノ酸などが水に溶出するため、高温で揚げてもアミノカルボニル反
応による褐変が生じにくくなる。
18
5.豆類 の調理
1)含有成分による豆の分類
たんぱく質 30%以上で脂質量も多い豆
大豆、落花生
デンプンを含み、たんぱく質量が 20%前後の豆
小豆、いんげん豆、そら豆
水分、繊維量が多く、野菜に属する豆
さやえんどう、さやいんげん、グリンピース
2)煮豆を短時間で軟らかくする方法
① 煮汁に豆重量の 0.2 %の重 曹( 炭酸水 素ナト リウ ム)を加えて煮汁をアルカリ性にする。
皮の軟化に役立つが、アルカリ性が強くなると豆のビタミン B 1 の 損失 が大きくなる。
② 圧力鍋 を利用する。
③ 大豆の場合、浸漬水に 1∼ 2%の 食塩 を加える。
覚えておきたい基本事項
① 小豆のゆで汁に含まれるサポニンなどのアク成分を除く目的で沸騰後のゆで汁を捨てるこ
とを「渋切り 」という。
② 小 豆 、 さ さ げ は 種 皮 が 硬く 、 吸 水 に 時 間 がか かり 、 吸 水 後 加 熱 す る と 胴割 れ し や す
いため、 直接加 熱する 。( 煮豆ではささげより小豆が胴割れしやすい)
③ 黒豆を煮る際、鉄くぎを入れるのは皮に含まれるアントシアン色素が金属イオンと結合し
て色よく仕上げるため。
④ 豆類の吸水速度は温度の上昇に伴って増大し、豆が新しいほど吸水速度、吸水率が大きい。
⑤ 豆類は最初から調味液で吸水させてから煮上げる方法と、水煮して軟らかくなってから調
味する方法がある。後者の場合、一度に多量の砂糖を加えると豆にしわがより、かたくな
りやすいので、2∼3回に分けて入れる。
関連問題
(第 13 回、平成 11 年(1999 年)国試 57
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
豆の調理についての記述である。誤っているのはどれか。
(1) 豆の吸水に要する時間は大豆、いんげん豆は 12 時間と長いが、小豆・ささげは 5∼6 時間で
短い。
(2) 大豆は約1%の食塩水に浸漬した後、煮熟すると軟らかくなりやすい。
(3) 小豆のゆで汁に含まれるサポニンなどのアク成分を除く目的で、沸騰後のゆで汁を捨てるこ
とを渋切りという。
(4) 小豆は種皮よりも子葉のほうが吸水膨張するので、胴切れや煮くずれを起こしやすい。
(5) 黒豆を煮る際に鉄くぎを入れると、黒豆のアントシアン色素はFe2+と結合して錯塩をつく
り美しい黒色を呈する。
解答(1 )大豆・いんげん豆は 5∼6時間、小豆・ささげは 12 時間以上。
<過去の 出題>
豆の 浸漬・ 吸水を 含む調 理性 について
練習問題(正誤解答)
10)□大豆や小豆は、浸水初期の数時間の吸水速度が大きい
11)□豆類にはたんぱく質の消化を妨げるトリプシンインヒビターが存在するが、加熱により失
活する。
19
6.野菜 、果実 の調理
水分を 90∼95%含み、固形物は少ない。
(1) 特殊成分(アク成分を含む)
えぐ味:たけのこ、ほうれん草など(ホモゲンチジン酸、シュウ酸塩など)
苦味:パセリ、ゆり根、コーヒーなど(からし油配糖体、ヘスペリジンなど)
渋味:未熟な果実、花など(タンニン類)
(2) ビタミンの種類と特徴
ビタミンCが破壊しやすい調理操作:①細かく切る
る
③長時間水に浸す
④長時間加熱する
②おろし金でおろす、機械にかけ
⑤アルカリ性液で加熱する
(3) 野菜果実の色
①クロロフィル系(「緑色」、緑色を呈するほとんどの植物でほうれん草、ブロッコリー等)
・緑色の植物は細胞内にクロロフィルとカロテノイドを3:1で含有
クロロフィリ
アルカリ性側
クロロフ ィル
ン
緑色
酸性側
pH6.3 以下
フェオフィチ
ン
鮮緑色
黄褐色
・茹でる場合、茹で水の 1∼2%の食塩を加える。(クロロフィル構造中の Mg イオンが
Na イオンと置き換えられ安定する。
②カロテノイド系(「黄色∼赤色」、かぼちゃ、にんじん、柿、鮭、バター、パパイヤ等)
・酸、アルカリ、熱などに対して安定
・光(紫外線)により酸分解するので、長期の保存や加工に関して気をつける
・カロテン、クリプトキサンチンはプ ロビ タ ミンA としての効力を有する。(→油脂と
共に調理するとよい。
)
③フラボノイド系(「無色∼黄色」、小麦粉、玉ねぎ、柑橘類、栗、大豆、紅茶等)
・美しい色をもつものや中性では呈色せず、アルカリ性側で発色するもの等がある。
・金属イオン(Fe)とキレートをつくり発色するものもある。(青∼青紫色)
④アントシアン系(「赤∼紫色」、赤∼紫色を呈する果実(いちご、ぶどう等)
、黒豆、赤キ
ャベツ、ナス、赤じその葉等)
・ p H によ り色調 が変化 する。
青色
アルカリ 性側
紫色
紅∼赤色
中性
酸性側
(梅酢・食酢を用いてきれいな紅色に仕上げる→梅干、筆しょうが)
・水溶性色素で熱にも不安定なため、加熱調理により褪色しやすい)
・ナスニン(ナス)は Al、Fe イオンと錯塩をつくり安定化
20
関連問題 (第 17 回、平成 15 年(2003 年)国試 55
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
植物性食品の調理についての記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
a マッシュポテトは、ゆでたじゃがいもを熱いうちに裏ごす。
b 天ぷらの衣として小麦粉を溶くには、温水を用いる。
c
小麦粉ドウをねかせると、伸びがよくなる。
d
あんかけのとろみには、コーンスターチが適する。
(1) a と b
解答
(2)a と c
(3) a と d
(4) b と c
(5) b と d
( 2)
a
じ ゃが い も は冷 め る とペ ク チン 質 が固 化 し 、細 胞 が 結着 し てい る た め、 裏ご
すと細胞 壁が破 れ、で んぷん 質が流 出して 粘り が出る。
b
温水→冷水、温水を用いると小麦粉のグルテンが促進され粘りが出る。
c
ねかせるとグルテン形成が促進され伸びがよくなる。
d
コーンスターチは粘度、透明度が低い。あんやくず汁には透明度と粘度が高いじゃ
がいもデンプンが適している。
練習問題(正誤解答)
12)□切った野菜を水に漬けると浸透圧の作用で水が細胞内に吸収され、歯切れがよくなる。
13)□きざんだ野菜を水に浸すと食塩水に漬けるよりもカリウム、カルシウム、マグネシウムの
溶出率が高くなる。
14)□キャベツをせん切り後、10 分間水にさらすと、50%以上のビタミン C が水に溶出する。
15)□にんじんと大根のもみじおろしでビタミン C が減少するのは、にんじんに含まれるアスコ
ルビン酸酸化酵素の作用による。
16)□野菜を煮るとき、やわらかく仕上げるためには 60∼70℃で長時間加熱するとよい。
17)□ほうれん草を沸騰水中で 3 分ゆでたときのビタミン C の残存率は約 50%である。
18)□レンコンを酢水でゆでるのは変色防止とやわらかくするためである。
7.ゲル 化素材
寒天、ゼラチン、カラギーナン、ペクチンなどはゾル化、ゲル化という化学反応を示し、凝
固剤として使用される。
1)ゾルとゲルの性質
ゾル:分散媒が液体で分散相が固体の混合系で、冷却によりゲル化する。
ゲル:ゾルの粒子(分散相)が分散媒を離すことなく網目構造をつくりかたまったもの。
素材によっては砂糖や酸の影響で状態が変化する。
(高メトキシルペクチンは砂糖と酸が
なければゲル化しない)
※分散媒:分散させている物質、粒子を囲んでいるもの
※分散相:分散の状態にある物体の中で散らばっている粒子(物質)のこと
21
寒天
ゼラチン
カラギーナン
ゾル
加水加熱
ゲル
冷却
流動性がある
ペクチン
(ドロドロ、トロトロ)
弾性がある
(固まった状態)
寒天とゼ ラチン の比較
寒天
ゼラチン(コラーゲンを熱変性させたもの)
原料
海藻(てんぐさ、おごのりなど)
動物の骨や皮
溶解温度
90∼100℃
40∼50℃
融解温度
70∼90℃
25∼35℃
使用濃度
0.5∼1.5%
2∼4%
冷却凝固温 度
砂糖の影 響
28∼40℃(室温で凝固)
3∼8℃(要冷蔵)
・ 硬さや弾力性を上昇させる
・ 凝固温度、融解温度を高める
・ 透明度を高くして離漿を少な
・ 透明度、硬さ、粘稠度を増し、崩壊を遅
くする。
酸の影響
らせる。
・ 酸味の強い果汁を加えてから
・酸味の強い果汁を加えると果汁中の有機
加熱すると、果汁中の有機酸の
酸による pH の低下によりゲル強度が低
影響で寒天分子が加水分解し
下する。たんぱく質分解酵素をもつパイ
て低分子化し、ゲル化しにくく
ナップルやパパイヤなどもゲル化を阻害
なる。果汁中の果肉もゲル形成
する。
を阻害する。
カラギー ナン
カラギーナン
原料
海藻(すぎのり、つのまたなど)
溶解温度
60∼100℃
融解温度
60∼65℃
使用濃度
0.5∼1.5%
冷却凝固温度
37∼45℃(室温で凝固)
砂糖の影 響
・粘弾性やゲルの回復率が高まる。・離漿 を少なくする。
酸の影響
・加水分解し、ゲル強度は低下する。
調理例
ゼリーなど(冷凍保 存でき る )
※離 漿:ゲルを放置しておくと網目構造が徐々に収縮し、時間が経つにつれて液体が自然に分離
してくる現象。ゲル化材の濃度が高く、加熱時間が長いほど離漿量は少なくなる。
22
ペクチン
植物の細胞間隙やセルロースと共に細胞壁成分として存在。細胞をつなぎ合わせる役割。
果実や野菜の肉質やかたさに影響する重要な成分。
プロトペクチン
(不溶性)
ペクチン
〈水溶性〉
ペクチン酸
未熟果実に多く含まれる。
プロトペクチンが分解を受け
→かたい
てペクチンになる。
成熟果実に多く含まれる。
酸と糖の共存によりゼリー化
→かたい
する。
過熟果実に多く含まれる。
水溶性だがゼリー化しない。
ペクチン酸+Ca や Mg で塩をつくる。
ペクチンゼリー:使用濃度 0.5∼1.5%、溶解温度 90∼100℃、融解温度 70∼90℃
メトキシル基の割合で、ペクチンは以下の 2 つに分類される。
高メトキ シルペ クチン
(HM)
低メトキ シルペ クチン
ペクチン酸(ペクチン)がメチ
酸 と 糖 ( 50 % 以 上 ) で 加 熱
ル化されてできるメトキシル基
するとゼ リー化 する。
が多いもの(7%以上)
メトキシル基が7%未満のもの
(LM)
C a 2 + そ の 他2 価の 金 属イ オ
ンの存在 でゼリ ー化す る。
低メトキシルペクチン:低エネルギーゲルとして利用される。牛乳を添加するだけでゲル状に凝
固(牛乳中の Ca 関与)するため、簡単に作れるデザートや甘味を抑えたデザートとして利用。
ヨーグルト上のデザートができる製品が市販されている。ダイエット用ジャム、うわがけゼリー、
インスタントプリン、ムース、アイスクリーム、シャーベット。
関連問題
(第 15 回、平成 13 年(2001 年)国試 55
調理操作と栄養)
寒天、ゼラチンの調理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 寒天とゼラチンは藻類から作られ、ほとんど消化されない。
(2) 寒天を溶かした液は 40℃付近でゲル化し、45℃付近で再び融解する。
(3) 砂糖は寒天ゲルのゼリー強度を低下させる。
(4) ゼラチンの凝固温度と融解温度はともに寒天より低い。
(5) 寒天ゲルの透明度は、砂糖濃度が高いほど低い。
解答(4 )
(1) ゼラチンは動物の骨や皮から作られる。
(2) 寒天液は 40℃付近でゲル化し、寒天ゲルの融解温度は 70∼90℃で高い。
(3) ゼリー強度を高める。
(5)砂糖濃度が高いほど透明度は増し、ゼリー強度
も高くなる。
練習問題(正誤解答)
19)□寒天ゲルは砂糖や果汁を加えるとゼリー強度を増す。
20)□ゼラチンゲルは寒天ゲルに比べて粘着力が強く接着しやすいので 2 色ゼリーなどを作りや
すい。
23
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 55
調理操作と栄養)
ペクチンに関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 低メトキシルペクチンのゲル化には、酸が必要である。
(2) 野菜を水煮すると軟化するのは、ペクチンの加水分解による。
(3) レンコンを酢水で加熱すると、シャキシャキする。
(4) 野菜を軟らかく煮上げるためには、60∼70℃で長時間加熱する。
(5) 冷めたじゃがいもは裏ごししやすい。
解答(3 )
(1) 酸ではなくカルシウムイオンが必要。高メトキシルペクチンのゲル化には、糖と酸が
必要である。
(2) 野菜の水煮による軟化は、ペクチン・ゲルがゾル化して細胞間隙から漏出、細胞同士
の接着性が失われるため。高温時間加熱では中性付近でもグリコシド結合が開裂(β
脱離:トランスエルミネーション)
、低分子化してゲル化能を喪失する。また、アルカ
リ性溶液中では、低温に置いても同様にβ脱離を起こす。さらに、強酸性溶液中では、
加水分解による低分子化が起こる。
(3) 弱酸性溶液(pH4 付近)中ではペクチンの開裂が起こりにくいためシャキシャキ歯ざ
わりとなる。
(4) 約 60℃のゆで汁での長い加熱は野菜を硬くする。野菜の硬化現象は、60℃付近で顕著
になるが、これはペクチンがメチル化され、細胞内のカルシウムイオンが結合してペ
クチン鎖間に架橋が起こるためやβ脱離しにくいためと考えられている。
(5) 熱いほうがペクチンに流動性があり裏ごししやすい。
8.食肉 類の調 理
1)筋肉 たんぱ く質の 種類と その性 状
筋肉たんぱく質の分類
(たんぱく質の分類)
主なたんぱく質名
性状
筋原繊維たんぱく質(グロブリン)
ミオシン、アクチン、
繊維状たんぱく質、水に難溶、
構成組成%<食肉 50∼60、魚肉 60∼
アクトミオシン
食塩に可溶、45∼52℃で凝固
70>
開始
筋形質たんぱく質(アルブミン)
ミオゲン、ミオアルブミ
球状たんぱく質、水溶性、
構成組成%<食肉 15∼35、魚肉 20∼
ン、ミオグロブリン
56∼62℃で凝固開始
コラーゲン、エラスチン
繊維・網状、水に難溶、硬い肉
50>
肉基質たんぱく質(硬たんぱく質)
構成組成%<牛すね肉 56、鶏 5>
腱、皮に多い、コラーゲンは
37∼58℃で収縮開始、長時間
の水との加熱でゼラチン化
24
2)脂質
高級飽和脂肪酸が主体、特にステアリン酸の多い牛脂、羊脂は融点が高い。
3)食肉の熟成と軟化
動物は呼吸が停止し酸素が供給されなくなると、筋肉中のグリコーゲンが乳酸に変化するた
め pH が 5 付近まで下がり、保水性が低下したり、アクトミオシンの形成により筋肉が収縮し
て肉が硬くなる(死後硬 直)。この頃は旨味も少なく食用には適さないため、熟成期 間(2∼4℃
で、牛 8∼10 日、豚 3∼4 日、鶏 5∼7 時間)をおくと、たんぱく質分解酵素などが作用(自己
消化)し、肉質は軟らかくなり、アミノ酸や核酸物質などの旨味成分が生成され pH が上昇し
て保水性が増し、食感や食味が向上する。
※その他 、覚え ておき たい基 本事項
①生のパパイヤ、パイナップル、しょうがに含まれるたん ぱく質 分解酵 素(プ ロテア ーゼ)は
肉を軟らかくする。
②マリネ液に漬けると pH が低下するため、肉の保水性が高まり軟らかくなる。
③骨付きの調理は焼き縮みが少なく、軟らかい。
④結合組織の多い肉(すじ肉、豚足、手羽先など)はコラ ーゲン が主成分で水と共に長時間加熱
するとゼラチン化するためほぐれやすい。
⑤乾式加熱する場合は、最初は強 火 で表面に焦げめをつけてう ま 味を 閉じ 込め 、その後弱火 で
内部まで焼きあげる。
⑥保水性は食肉たんぱく質の水和力で、pH により変化する。食肉の pH が等電点(pH5.6‐6.5)
から離れると、たんぱく質の水和力は高くなり、保水性が増して膨潤する。保水性の高い肉は
加工性が高く、加熱時の肉汁の損失が少なくやわらかい。
関連問題
(第 12 回、平成 10 年(1998 年)国試 54
調理操作と栄養)
肉類についての記述である。誤っているのはどれか。
(1) 牛肉に 1.3∼1.5%の食塩を用いると、たんぱく質の水和性が増し、加熱中の重量損失が少な
くなる。
(2) 肉の水和には、pH が影響し、酸性側でもアルカリ性側でも水和は減少する。
(3) 肉は pH の緩衝効果が強いため、酸性に変えるにはかなりの量の酸を必要とする。
(4) 肉を加熱すると重量が減少するのは、肉汁や蒸発水分のほか、脂肪が遊離してドリップにな
るからである。
(5) 結合組織の多い肉は、静かに沸騰させながら長時間加熱すると軟らかくなる。
解答( 2):酸性またはアルカリ性に傾くほど水和性を増す。肉の保水性は等電点(pH5 付
近)で最小となり、これより酸性側でもアルカリ性側でも保水性が高くなる。
25
(第 15 回、平成 13 年(2001 年)国試 56
調理操作と栄養)
肉の調理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 生姜やパパイヤにはたんぱく質分解酵素が含まれており、肉を硬くする。
(2) ステーキにはヒレやロースなど結合組織の多い肉を用い、高温で焼く。
(3) マリネにした肉は pH が低下して保水性が低くなり肉は硬くなる。
(4) 食肉の脂肪の融解温度は、豚脂は 40∼50℃と高いが、牛脂は 30∼35℃で溶ける。
(5) 肉を軟化するには筋を切る、肉たたきでたたく、挽肉にするなどの機械的方法がある。
解答(5 )
(1)生姜やパパイヤにはたんぱく質分解酵素が含まれており、肉を軟らかくする。その
他、キウイフルーツ(生)、パインアップル(生)、いちじく(生)なども肉の軟
化に利用される。
(2)畜肉の組織構造から、ヒレやロースは結合組織が少ない部位である。
(3)マリネにした肉は pH が低下して(酢による)保水性が高く、軟らかくなる。また、
つけ汁は酢を主体とするため、保存性を高め、魚介類の生臭みを抑制する効果もあ
る。
(4)融解温度は豚脂:33∼46℃と低いが、牛脂では 40∼50℃と高い。これら融点は、料
理の供食温度及びメニューを左右するものである。
練習問題(正誤解答)
21)□牛すね肉を長時間加熱すると軟化しほぐれやすくなるのは、筋形質たんぱく質が可溶化す
るためである。
練習問題(正誤解答)
22)□豚ロース肉(ブロック)をゆでると、約 60%の脂肪が減少する。
9.魚介 類の調 理
1)たんぱく質
食肉と同様に、筋原繊維、筋形質、肉基質の3区分のたんぱく質から構成されているが肉
基質たんぱく質含有量は著しく少ない。筋形質たんぱく質の多い、マグロやかつおなどは加
熱すると熱凝固が促進され、硬くなるため「角煮」に用いる。
2)脂質
多価不飽和脂肪酸を多く含み、特に、いわし、さんま、さばなどの青背の魚に多い EPA(IPA)
や DHA は血管系疾患の予防や治療に効果がある。しかし、多価不飽和脂肪酸は酸化されや
すく、干物や冷凍魚の長期保存は油やけを起こしやすい。
3)
鮮度測定法
早期の鮮度低下を測定する方法にk値 (魚肉内の ATP 関連物質の総和に対するイノシン
とヒポキサンチンの和の百分率で表す。k値は低いほど鮮度がよく、活けじめの魚は 10 以下、
20 前後で生食、40 前後で煮焼き用、60 以上で初期腐敗とされている。
※その 他、覚 えてお きたい 基本事 項
①貯蔵性を増すため、多くの塩を用いて塩 じ めにすると魚肉中の水分、酵素、エキス分が
抜けて硬くなる。この場合、塩抜きしてもも との肉 質には戻 らない 。
26
②食塩は味をつけると同時に水分量、重量を変え、たんぱく質を変性させて生臭みを消す。
③食塩でしめてから酢に浸すと生臭みを消し、表面のたんぱく質が固まり、やや硬くなる。
④魚肉は沸 騰水か ら加熱 したほうが、水か ら加熱 するよりもエキス分の溶出が少ない。
⑤だし汁をとるときは、液体に旨味を溶出するために、水から加熱する。
⑥魚肉の筋肉膜や腱、皮などにはコ ラ ーゲ ンが 含 まれ てい る ので加熱するとゼラチン化
し、それを冷ますと煮こ ごり になる。
関連問題
(第 16 回、平成 14 年(2002 年)国試 56
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
魚介類の調理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)「あらい」では魚肉を氷水中で洗うことにより肉が収縮して弾力を失う。
(2) しめさばでは、肉のたんぱく質が酸変性し保存性が低下する。
(3) いか肉に布目の切り込みを入れると、調味料の浸透が遅くなる。
(4) 魚肉に 1∼2%の食塩を加えて混ぜ合わせると、粘りが出る。
(5) 魚肉にレモンや酢を加えると、ミオシンが酸と結合して魚臭が失われる。
解答(4 )
(1)弾力は増す。
(2)保存性は高くなる。
(3)調味料の浸透が早くなる。
(5)ミオシンではなくアミン類が酸と結合して魚臭が失われる。
(第 12 回、平成 10 年(1998 年)国試 55
調理操作と栄養)
魚介類の調理についての記述である。誤っているのはどれか。
(1) 魚肉の筋原線維たんぱく質は 45∼50℃、筋原質(肉漿)たんぱく質は 60℃前後で凝固する。
(2) 魚肉は加熱によりたんぱく質の凝固と同時に脱水が起こり、小魚、切り身は 20∼25%、いか、
たこは 30∼40%脱水する。
(3) 魚肉は、沸騰水から加熱したほうが水から加熱するよりも溶出するエキス分は多い。
(4) 塩じめした魚は、肉中の水分、エキス分が除去されて固くなり、再び水で塩抜きしても肉質
はもとに戻らない。
(5) いかを水に浸漬しておくとやせるのは、筋原繊維たんぱく質が他の魚肉に比べ水和しやすく、
水で抽出されやすいからである。
解答 (3): 煮魚の調理では煮汁が沸騰したところに魚〈特に切り身の魚〉を入れる。これは溶
出するエキス分を抑えるための操作である。
練習問題(正誤解答)
23)□骨ごと食べる魚は酢漬けやマリネにしたほうが、カルシウムの吸収率が高まる。
24)□魚を酢じめするときにあらかじめ 2∼10%の食塩でしめるのは、アクトミオシンを形成し
魚肉に弾力をもたせるためである。
25)□魚のすり身でかまぼこや練り製品を作るとき、食塩を加えると粘弾性が強くデンプンを加
えると舌触りがなめらかで軟らかい製品になる。
26)□魚の刺身は歯切れの良さが持ち味である。タイやスズキなど白身魚は、死後硬直期の肉が
身が引き締まりおいしい。カツオやマグロなど赤身魚は、自己消化期の肉のほうがうま味が乗
っておいしい。
27)□ステーキに用いる牛肉の部位は、熟成期のヒレやロース肉を筋繊維に平行に 2∼3cm の厚
27
さに切って用いる。
28)□魚肉の酢じめは魚重量の 30∼50%の食酢に魚肉を漬ける方法で肉質が引き締まる。このと
き同時に砂糖を加えると、より効果的に肉質を引き締めることができる。
10. 鶏卵の 調理
(1)加熱により凝固する(生は希釈が可能)
①凝固温度に影響を及ぼす原因:加熱速度が激しいほど、希釈度が高くなるほど凝固温度は上
がる。②食塩の添加は凝固を促進し、砂糖の添加は抑制する。
(2)起泡性がある
①卵白泡:卵白は 10%たんぱく質溶液で優れた起泡性を有する。泡の優劣は起泡力と安定性か
ら評価される。水様卵白は濃厚卵白より泡立てやすい。②メレンゲ:卵白重量の 50∼100%
量の砂糖を加える。塑性を有し、絞り出しが可能。砂糖量の増加につれ細かく滑らかで粘性
大の泡となり、砂糖量が多いほど安定な泡となる。
卵白の起 泡性に 及ぼす 添加物 の影響
添加物
泡立ち性
起泡性
安定性
砂糖
△
○
レモン汁
○
○
油脂
砂糖は粘性を増大させる。泡立ちにくいがきめ細
かな安定性の高い泡を形成する。
弱酸性にすると等電点に近づき、表面変性しやす
くなる。多いと泡が粗くなる(△。)
疎水性の油脂は卵白の表面変性を阻止する。
牛乳・卵黄
△
△
水
○
△
○:良いほうへ働く、
備考
牛乳・卵黄中の油脂は乳化状態なので油脂ほど阻
止されない。
卵白の粘性を下げるため、泡立てやすくなるが、
泡は大きく不安定になる。
△:どちらでもない、
:悪いほうへ働く
(3)乳化性がある
卵黄自身が、レシチンやリポたんぱく質など乳化性〈水と油を結びつける性質〉を有する
物質を含む水 中 油 滴 〈O / W 〉型 エマルションである。マヨネーズは卵黄に食酢(全体の
20%)と油(全体の 80%)を攪拌しながら加え、O/W型に仕上げたものである。油滴の粒度
の小さいほうが一般に粘度が大きく安定する。
※ その他、 覚えて おきた い基本 事項
①食酢や塩を加えて加熱すると、卵白が散らばらずに固まりやすくなる。
②砂糖を加えることで、凝固温度が高くなり軟らかく仕上がる。
③鶏卵の品質判定法の1つである「ハウユニット(HU)」は濃厚卵白の高さと殻付鶏卵重量
から求められるが、食品業界で広く用いられている。
関連問題
(第 15 回、平成 13 年(2001 年)国試 54
28
調理操作と栄養)
卵の調理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 卵白と卵黄の凝固温度の差を利用した温泉卵は、卵白よりも卵黄の方が軟らかい。
(2) 落とし卵は茹で汁に食酢や塩を加えると卵白が凝固しにくくなる。
(3) 濃厚卵白は水様卵白に比べて泡立ちやすく、泡の安定性は高い。
(4) カスタードプディングのゲル化には牛乳中のカルシウムが影響している。
(5) マヨネーズは油滴の粒度が小さいほど、粘度が低く、不安定である。
解答(4 )
(1) 卵黄よりも卵白の方が軟らかい。
に比べて泡立ちにくい。
(2)凝固しやすくなる。
(3)濃厚卵白は水様卵白
(5)粒度が小さいほど、粘度が高く、安定である。
練習問題(正誤解答)
29)□卵白を泡立てるとき砂糖を加えると気泡性は低下するが泡の安定度やつやは向上する。
30)□塩、しょうゆで調味しただし汁で希釈した卵液は水で希釈した卵液より硬いゲルを形成す
る。
11. 牛乳・ 乳製品 の調理
(1)調理性
①なめらかな触感とコクを与え、仕上がりの色を白くする。
②焼き製品〈ホットケーキ、ク
ッキーなど〉に美しい焦げ色が加わる(アミノ カル ボニル反 応)。
みを除去する(カゼインミセルが生臭みを消す)。
③魚やレバーの生臭
④たんぱく質のゲル強 度を 高める (カ
スタードプディング)
。
(2)牛乳の酸による凝固現象
いちごや夏みかんに牛乳をかけたり、牛乳と有機酸を含む野菜や貝類、肉類などを一緒に加
熱すると、牛乳中のカゼインが酸凝固沈殿する。野菜類の塩類やタンニンによっても同じ現
象が生じる。
(3)ホイップクリーム
生クリームはO/W型のエマルションである。ホイップクリームは脂 肪含 有 量が 多 く、 粒子
が 大 き い ほ ど 凝 集 し や す く 、泡の安定性もあるため、35∼45%の脂肪量が必要。ただし、
攪拌しすぎると脂肪が分離する。
(4)チーズ
ナチ ュラル チーズ は硬さや熟成度合いなどによりハードタイプ、ソフトタイプ、フレッシュタ
イプなどに分類される。プ ロ セ ス チ ー ズ は数種のナチュラルチーズを原料とし、70∼80℃
で溶かし、成型したものである。
※ その他、 覚えて おきた い基本 事項
・ オーバーラン(ホイップクリームやアイスクリームなどの泡沫に抱きこまれている空気の割
合)が低いとコクのあるしっかりとしたホイップになり、高いと口どけのよい軽い感じに仕
上がる。ケーキ
90∼120%、ムース・クレープ・パフェ
140∼200%
・ 加熱により、各種の料理に滑 らかな 粘性 を与える。
・ カルシウムがたんぱく質の熱 凝固を 促進 させ、卵料理などの物性を改善する。
・ じ ゃ が い も を 牛 乳 で 煮 る と 、じゃがいも中のペクチンがカルシウムイオンと結びついて不
29
溶化し、硬くなる。
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 56
関連問題
調理操作と栄養/食素材の調理と栄養)
乳及び乳製品の調理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) じゃがいもを牛乳中で煮ると硬くなるのは、牛乳中の脂質の作用である。
(2) 白菜に牛乳を加えて長時間加熱すると、なめらかに仕上がる。
(3) 牛乳を加えた卵液の加熱ゲルは、だし汁を加えたものより硬い。
(4) 生クリームは W/O 型のエマルションである。
(5) 生クリームを泡立て過ぎることをオーバーランという。
解答( 3)
(1)牛乳中のカルシウムがじゃがいものペクチンと結合して不溶化し、いもは硬化する。
(2)野菜中の有機酸が牛乳のカゼインの等電点に近づき、凝固してなめらかに仕上がらな
い。
(4)生クリームは、水(連続相)の中に油が粒子(分散相)になって分散した
O/W(水中油滴)型エマルションである。エマルションとは、互いに溶け合わない 2
液体の一方に他方が液滴となり分散した系である。
(5) オーバーランとは、攪拌によ
る生クリームなどの油脂の体積増加を表わす。生クリームのほかに、バタークリーム等
もオーバーランで空気を抱き込む量の程度を表すが、泡立て過ぎのことではない。
(第 10 回、平成 8 年(1996 年)国試 55
調理操作と栄養)
牛乳及び乳製品の調理についての記述である。誤っているものはどれか。
(1) 牛乳中で肉を加熱する場合、塩類の影響を受けるので、塩漬肉は生肉より牛乳の凝固を
起こしやすい。
(2) 魚やレバーを牛乳に浸漬すると、脂肪球やカゼインミセルが生臭味を吸着する。
(3) 牛乳を使ったホットケーキやクッキーの美しい焼き色は、アミノカルボニル反応による
ものである。
(4) 生クリームは脂肪含量が多く脂肪粒子が小さいほど凝集が起こりやすく、泡立ちがよい。
(5) ヨーグルトは乳酸発酵によるカゼインの凝固を利用したものである。
解答(4 )
市販クリームには、①乳脂肪のみ、②乳脂肪+植物性脂肪、③植物性脂肪のみ、の 3 つのタイ
プがある。いわゆる生クリームの乳脂肪は 45%以上であり、水中油滴型のエマルションとなっ
ている。ホイップクリームにする場合は、脂肪含量が多く、脂肪粒子が大きいほど凝集が起こ
りやすく、泡が安定である。また、低温ほど凝集しやすいので、10℃以下でホイップする。攪
拌による熱が伝わらないように穏やかに攪拌しなければならない。過度の攪拌により脂肪が分
離する。
30
12.調 味料
1)食塩
調理特性
① 脱水作用
②たんぱく質の凝固作用(食肉や魚肉にふり塩をすると身がしまる。ゆで卵
のゆで水に 1%の食塩を加えると、ひび割れの卵白を凝固する。サトイモを塩もみしたり、
塩水でゆでるとイモの表面の粘質物(糖たんぱく質の一種)が凝固し、ぬめりを除去で
きる。)
③グルテンの形成(グルテン形成を促進させる。生地の粘弾性を増大させる。)
④防腐作用(5∼30%の加塩で脱水し、雑菌の繁殖が抑えられる。
)
変酵素の活性を阻止)
関連問題
⑥ビタミンCの酸化防止
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 54
⑤酵素作用の抑制(褐
⑦葉緑素の安定
調理操作と栄養)
食塩の調理作用に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 酢に少量の食塩を加えると酸味が強調される。
(2) 塩味を等価にするためには、しょうゆは重量で食塩の 4 倍必要である。
(3) 食塩は、小麦粉ドウの粘弾性を減少させる。
(4) 食塩は、貝類のぬめりを除く効果がある。
(5) 食塩は、でんぷんの老化を遅らせる。
正解:( 4)
(1)酸味が抑制される。酸+塩の効果は、味の相互作用のひとつである抑制効果で、この場合塩味
を弱める。
(2)しょうゆは塩分が約 15%なので、食塩の約 6 倍(重量)必要である。
(3)粘弾性を増加させる。グルテンを形成するときに食塩があると、グルテンの網目構造を緻密に
する。
(4)食塩がぬめり成分のたんぱく質に作用して、凝固させる。
(5)砂糖はでんぷんの老化を遅らせる。糖がでんぷん分子鎖の動きを抑え、再配列が遅延すること
による。
2) 砂糖
1)調理特性
①防腐作用(柑橘類の砂糖漬けやジャム)
ング)
進
②たんぱく質熱凝固の抑制(カスタードプディ
③デンプンの老化抑制(スポンジケーキ、求肥)
⑤酸化防止(クッキー)
⑥卵白泡の安定化
ー強度と透明度
31
④アミノカルボニル反応の促
⑦イースト発酵の栄養源
⑧ゼリ
2)砂糖の煮詰め温度と適する調理
①シロップ(煮詰め温度:102∼103℃、砂糖濃度:50∼60%)
ホットケーキ、みつ豆、ゼリー
②フォンダン:濃厚な砂糖液を、水分のある状態で微粒再結晶させたもの。砂糖の微小な
結晶を濃厚な糖液で一様に包んでいる場合は滑らかなクリーム状になっている。
製菓デコレーションのフォンダン:砂糖液を 106∼107℃まで煮詰めた後、40℃(飽
和状態)に冷まして攪拌すると、きめの細かい、フォンダンが得られる。
③砂糖衣:115∼120℃になったら材料を入れて 90℃以下に冷めないうちに(温度が低下
すると過飽和状態になり白い結晶ができる)手早く攪拌する。
(かりんとう、ピーナッツ
の糖衣等)
④抜絲(パースー):砂糖の濃厚液を結晶させないように、アメの状態で糖衣する調理
砂糖溶液の煮詰め温度 140℃(アメの糸は色づかない)→銀絲(インス)
砂糖溶液の煮詰め温度 160∼165℃(アメの糸は茶色に色づく)→金絲(ジンス)
タフィー、アメ細工、キャンデー
※砂糖溶液に酸を加えて加熱すると、ショ糖の一部が転化糖(ぶどう糖と果糖の混合物)
に変わり、結晶化を防ぐことができる。転化糖はショ糖より甘味が強く、吸湿性も増
加し、砂糖の結晶化を防ぐ性質がある。
⑤カラメル:砂糖溶液を 170∼190℃にまで加熱
水を適量加えてカラメルソースとして利用。
関連問題
(第 17 回、平成 15 年(2003 年)国試 56
調理操作と栄養)
砂糖の調理に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)
カスタードプディングの砂糖は、加熱による凝固温度を下げる。
(2)
砂糖は、卵白泡の安定性を悪くする。
(3)
砂糖は、寒天ゲルの離漿を多くする。
(4)
杏仁豆腐の豆腐は、シロップよりも比重が小さいために浮く。
(5)
106℃に加熱した砂糖溶液を材料にからませると砂糖衣になる。
正解
( 4)
(1)加熱による凝固温度を上げる。砂糖の添加は卵たんぱく質の熱変性を抑制し、すだちを防ぎ、
やわらかく滑らかなゲルを形成する。
(2)安定性を良くする。砂糖はその親水性で水分の分離を防ぎ、安定した光沢のある卵白泡ができ
る。
(3)離漿を少なくする。砂糖の親水性で水分の分離が妨げられる。
(5)115∼120℃に加熱した砂糖溶液を材料にからませると、砂糖衣になる。106℃では、まだ低温
で水分が多く、砂糖衣は出来ない。この温度帯を利用するのはフォンダンである。
練習問題(正誤解答)
31)□食塩は小麦粉のグルテン形成を促進するが、砂糖はグルテン形成を抑制する。
32
3) しょう ゆ
調理特性
①防腐作用
②殺菌作用
③臭みの抑制
加熱するとアミノカルボニル反応を起こしてメラノイジンを生成し、特有の香りを出す。
濃口しょうゆ:食塩相当量
14.5g/100g
淡口しょうゆ:食塩相当量
16.0g/100g
減塩しょうゆ:食塩相当量
9.0g 以下/100g
4) 食酢
調理特性
①防腐作用(微生物の発育を抑える。酢漬け、マヨネーズ)
固を早め、硬くする。ポーチドエッグ)
る。小魚のマリネ)
梅漬け)
③組織の脱水、軟化(骨まで軟らかくす
④色素の発色変化(アントシアンを赤色にする。紫キャベツ、
⑤酵素反応の阻害(酸化酵素活性を抑えて褐変を防ぐ。レンコン、ウド)
(第 11 回、平成 9 年(1997 年)国試 57
関連問題
②たんぱく質の変性促進(凝
調理操作と栄養)
酢の作用についての記述である。誤っているのはどれか。
(1) かたい牛肉をあらかじめ酢油に浸漬しておくと、たんぱく質が水和性を増し、加熱時に軟化
しやすくなる。
(2) 魚臭成分であるトリメチルアミンは、塩基性の揮発成分で、酢洗いにより除去される。
(3) 落とし卵をつくるとき、熱水中に食酢を加えておくと、たんぱく質の熱凝固が促進され、卵
白が散乱せず卵黄を形よく包み込むことが出来る。
(4) 大根おろしに食酢を加えると、ミロシナーゼの活性を高め、辛味の増加を促進する。
(5) ごぼうやレンコンを酢水に浸すのは、pH を下げて酸化酵素の活性を押さえ、ポリフェノール
による褐変を防ぐためである。
解答 ( 4):ミロシナーゼの活性を抑え、辛味をやわらげる。大根はおろす操作で組織が破壊さ
れ、ミロシナーゼが作用してイソチオシアネートが生成されると辛味を生ずる。食酢
を加えると酵素の至適 pH より下がるため、辛味は抑えられる。
(2)魚のうま味成分の一つであるトリメチルアミンオキシドは鮮度が落ちるとトリメチル
アミンに変わり、魚の生臭みに関与する。この成分は塩基性の揮発成分であるため、
酢洗いにより除去される。
調理と嗜 好性
食味 の形成 要因
食味
おい しさと は
食べ物 の状態
化学的要因:味、香り
物理的要因:温度、テクスチャー、外観、音
33
食べる 側の状 態
心理的要因:喜怒哀楽の感情、緊張感
生理的要因:食欲、空腹感、健康状態
環境的要因:食環境(食文化、食経験、食習慣、食に関する情報等)、外部環境(喫食環
境、食卓構成等)
先天的要因:人種、民族、年齢、性別、体質
後天的要因:気候、風土、地域、宗教、風俗習慣、教育、生活態度、生活様式等。
五基本味 の閾値
味の種類
物質名
濃度(M)
甘味
ショ糖
0.0028
酸味
酢酸
0.0018
塩味
食塩
0.01
苦味
カフェイン
うま味
L‐グルタミン酸
0.0007
0.23
閾値:ある物質の味を感じることのできる最小の刺激の量。
認知閾値:味の種類を認知できる最小の濃度。
弁別閾値:ある味の濃度を変化させていったとき、味の強さを識別できる最小の濃度差。
味覚感度
食味は、味覚、嗅覚、触覚、視覚、聴覚の五感によって感じとられる。
味の混合 効果
種類
複合させた味刺激
対比効果
相乗効果
効果
代表例
うま味(多)
塩
味(少)
うま味を増強
すまし汁
甘
味(多)
塩
味(少)
甘味を増強
しる粉、スイカに塩
酸
味(多)
苦
味(少)
酸味を増強
レモネード
うま味(MSG+IMP)
うま味を増強
だし汁
甘味+甘味
甘味を増強
砂糖にアスパルテーム(少量)
を加える
抑制効果
苦
味
甘
味
苦味を弱める
コーヒー、チョコレート
塩
味(多)
酸
味(少)
塩味を弱める
漬物
塩
味
うま味
塩味を弱める
しょうゆ、塩辛
対比効果:少量の異なる呈味物質を加えることにより、主なる味が強まること。
相乗効果:同種の味を持つ 2 種以上の呈味性が両者の和以上に増強されること。
抑制効果:2 種類の呈味物質を混ぜたとき、一方の味が他方により抑えられること。
変調効果:2 種類の呈味物質を続けて味わうと、先にとった味の影響で後からとる味が質的に異
なって感じられる減少。
順応効果:ある強さの呈味物質を長時間味わっていると、閾値が上昇する現象。甘いケーキを続
けて食べると甘味の感度が鈍る。
34
関連問題
(第 13 回、平成 11 年(1999 年)国試 53
調理操作と栄養)
味覚に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 新生児には味の識別能がない。
(2) 辛味は 5 種の基本的な味の一つである。
(3) 酢酸には酸味があるがクエン酸にはない。
(4) 食塩の塩味は Na+ と Cl‐への解離によって生じる。
(5) 甘味やうま味をもつアミノ酸はあるが苦味をもつものはない。
解答(4 )
(1)識別能がある。
(2) 5 種の基本的な味は、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味である。
(3)クエン酸にもある。
(5)一部のアミノ酸に苦味を持つものがある。
(第 11 回、平成 9 年(1997 年)国試 53
調理操作と栄養)
食べ物の呈味性に関する記述である。誤っているものの組み合わせはどれか。
a. 料理の味を調べる時は、少量を舌の先で味わう。
b. 2 種類のうま味物質を混合すると、うま味が強められることが多い。
c.
甘味に少量の食塩を加えると、対比効果により甘味が強調される。
d. 苦味は甘味を加えることにより緩和される。
e. 砂糖濃度が同じ場合は、水溶液よりゼリー状の方が甘味を強く感じる。
(1) a と b
(2) a と e
(3) b と c
(4) c と d
(5) d と e
解答(2 )
a:舌全体で味わうようにする。
(第 19 回、平成 17 年(2005 年)国試 53
e:水溶液のほうが強く感じる。
調理操作と栄養)
味の相互作用についての記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
(1) 甘いしるこに少量の食塩を加えると甘味が強まる。――――――相乗効果
(2) 羊かんのあとにミカンを食べると酸味が強まる。―――――――変調現象
(3) 酢に砂糖を加えると酸味が弱まる。―――――――――――――抑制効果
(4) だし汁に食塩を少量加えるとうま味が強まる。――――――――相乗効果
(5) コーヒーに砂糖を入れると苦味が弱まる。――――――――――対比効果
解答(3 )
(1) 甘いしるこに少量の食塩を加えると甘味が強まる。対比(同時対比)効果
(2) 羊かんのあとにミカンを食べると酸味が強まる。対比(経時対比)効果
(4) だし汁に食塩を少量加えると、旨味が強まる。対比効果
(5) コーヒーに砂糖を入れると苦味が弱まる。抑制効果
食べ物の 嗜好温 度
一般には体 温
25∼ 30℃ が好まれる。温 か い 食 べ 物 は 60∼ 65℃ 前 後 、 冷 た い 食 べ 物 は
5( 10) ∼ 15℃前 後とされている。
35
調理操作と栄養
関連問題
(第 19 回、平成 17 年(2005 年)国試 52
調理操作と栄養/調理操作とその特性)
カッコ内に示したゆで効果を高めるための食材と加熱に用いる水の種類との組み合わせである。
正しいのはどれか。
(1)たけのこ(あく除去)――2%酢水
(2)じゃが芋(軟化)――熱水
(3)こまつな(青く仕上げる)――水(15℃から加熱をはじめる)
(4)れんこん(白く仕上げる)――2%酢水
(5)カリフラワー(白く仕上げる)――0.5%食塩水
正解:( 4)
(1)米糠(米のとぎ汁)を用いる。糠の添加でゆで汁がコロイド状になり、あく成分のシュウ酸を吸
着する。
(2)じゃが芋は水からゆでる。水から加熱すると内外の差が少なく、煮崩れしにくい。
(3)沸騰水中で加熱を行う。青菜に含まれるクロロフィルは長時間の加熱により黄褐色のフェオフ
ィチンとなるので、沸騰水で短時間に加熱し、冷水につけるのがよい。
(5)2∼3%の酢水を用いる。含有するフラボノイドは酸性では無色なので白く仕上げるため、レモ
ン汁でもよい。
36
関連問題
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 53
調理操作と栄養/調理操作とその特性)
食品の冷凍・解凍に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 緩慢冷凍は、解凍後に風味の変化がない。
(2) 刺身は、完全に解凍してから供する。
(3) 水分の多い魚は、緩慢冷凍が適している。
(4) 家庭で調理品を冷凍する場合、金属容器を用いると速い。
(5) 調理済み食品は、完全に解凍してから使用する。
正解
( 4)
(1)風味の変化が少ない。急速凍結した食品は、氷の結晶が小さく、組織の損傷が少ない。
(2)半解凍で供する。完全に解凍すると切断しにくく液汁が出やすい。半解凍で食するルイベの例
もあり、形状や料理など扱い方により、一概には言えない。
(3)急速凍結が適している。食品中の水分の 80%以上が氷結温度帯を短時間で通過するためには急
速凍結が適している。
(4)熱伝導の点から、金属容器が良いが、多量に入れると急速冷凍しにくい。凍結はなるべく 1 回
量ごとに分け、薄い形に整形し、ラップ包装等で乾燥を防止する。
(5)完全に解凍してから使用するものと凍結したまま使用したものがある。凍ったまま直接加熱し
て急速に解凍するのが原則。冷凍コロッケのような食品は、解凍すると壊れやすく扱いにくいの
で、凍った状態で加熱する。
関連問題
(第 17 回、平成 15 年(2003 年)国試 54
調理操作と栄養/調理操作とその特性)
調理操作に関する記述である、正しいものの組合せはどれか。
a
乱切りにすると、形が不均一になり煮くずれしにくい。
b
卵白を冷やしながら泡立てると、よく泡立つ。
c
生野菜は脱水を防ぐため、供食直前に調味料と和える。
d
れんこんは切ったまま放置すると褐変するので、酢水に浸漬する。
(1)a と b
正解
(2)a と c
(3)b と c
(4)b と d
(5)c と d
( 5)
a 煮崩れやすい。乱切りにすると、断面積が大きくなり熱の伝導や味の浸透が良くなるのでにん
じん、ごぼう、きゅうりなどに用いられる切り方である。
b 卵白の泡立ちは室温より湯せん(30∼40℃)が泡立ちやすい。卵白を冷やしながら泡立てると
泡立ちにくいが、きめ細かく泡立つ。
関連問題
(第 16 回、平成 14 年(2002 年)国試 52
調理操作と栄養/調理操作とその特性)
揚げ物に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)
油通しとは、二度揚げの一度目の操作を指す。
(2)
から揚げとは、食品に何もつけずに揚げる手法をいう。
(3)
油の比熱は水の約 0.7 倍なので、揚げ油の温度は下がりやすい。
(4)
フリッターの衣は、小麦粉と水と砂糖で作る。
(5)
揚げ物では、食品中の水分が蒸発し代わりに油が吸収される。
37
正解:( 5)
(1) 誤り:
油通しは、中国料理の炒め物などの下処理に用いる手法の一つである。素材その
ままや下味をつけた材料を予め 100∼140℃程度の油にくぐらせ、表面だけに熱を通すことにより、
材料のうま味を逃がさず、色、口あたりがよくなる。
(2) 誤り:
から揚げとは、素材そのままや下味をつけた材料にでん粉または小麦粉をつけて
揚げたものである。衣の水分が少ないので、加熱時間は短くてよく、魚や鶏肉などに利用される。
(3) 誤り: 油の比熱は、油の種類にもよるが 0.4∼0.6(cal/g・K)で、水の比熱の約 2 分の
1 であるので、揚げ油の温度は下がりやすい。
(4) 誤り:
フリッターとは、小麦粉に卵黄、牛乳または水などを混ぜた後固く泡立てた卵白
を加えたものを衣にする揚げ物である。
関連問題
(第 16 回、平成 14 年(2002 年)国試 53
調理操作と栄養/調理操作とその特性)
洗浄・浸漬操作に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a
小豆は種皮や組織が硬いので、5∼6 時間水に浸漬してから加熱操作を行う。
b
うるち米は洗米操作により、米重量の 15%の水を吸収する。
c
切った野菜を水につけると、浸透圧の作用で水が細胞内に吸収されパリッとする。
d
乾燥ひじきを水に浸漬すると、重量が 7∼8 倍になる。
(1)a と b
(2)a と d
(3)b と c
(4)b と d
(5)c と d
正解:( 5) cとd
a.
誤り:
小豆の表皮は硬く、水に浸漬しても表皮からほとんど吸水しない。また、側面の胚
座から少しずつ吸水し、内部の子葉が先に膨潤して胴切れを起こしやすいので、小豆は浸漬しな
いでそのまま加熱することが多い。
b.
誤り: うるち米は洗米操作により、約 8∼10%の水を吸収する。洗米操作では水溶性成分
の損失を抑え、米に糠臭を吸わせないために水を数回換えて、手早く洗うことが大切である。
d.
浸漬操作における浸漬後の重量倍率については、副次的調理操作の基本的事項であるので、
日常よく使用する食品について整理しておくことが大切である。
練習問題(正誤解答)
32)□魚を酢じめするときは、生魚を初めに酢に浸漬してから塩味を加えると弾力のある食感と
なる。
33)□肉をしょうゆ、味噌など塩分を含む調味料に浸漬すると、肉基質たんぱく質が可溶化しや
わらかくなる。
34)□シュー皮をつくるとき、小麦粉に水分を加えて練ってから油分を加えると、サクサクした
食感の皮ができる。
35)□卵を 65∼70℃の湯に 20∼25 分程度入れておくと、卵白は半熟、卵黄が固まった状態の温
泉卵ができる。
36)□野菜は 60℃で 30 分加熱したほうが、沸騰水中で 10 分加熱するよりやわらかく仕上がる。
38
五訂増補日本食品標準成分表( 文部 科 学省
科学 技術 ・学 術 審議 会
資源 調 査分 科会
報告)
食 品 成分 表 に お いて は そ れ ぞれ の 食 品の 数 値 の 変動 要 因に 十 分 考 慮し な が らそ の 食 品 の利 用 目 的 に応
じて 、分析 値 、文 献値 等 を基 に標 準的 な 成分 値を 定め 、1 食品 1 標 準成 分値 を 原則 とし て収 載 する もの
であ る。な お、標準 成 分値 とは 年間 を 通じ て普 通に 摂 取 する 場合 の全 国 的な 平均 値を 現 すと いう 概念 に
基づ き求 めた 値 であ る。
たんぱく 質(g )
測定法:改良ケルダール法で窒素量を測定
算出法:窒素量
(窒素‐たんぱく質換算係数)=たんぱく質
大部分は食品別の換算係数を使用(一部は 6.25 を使用)
脂質(g)
測定法:ソックスレー抽出法、クロロホルムーメタノール改良抽出法、レーゼ・ゴットリーブ
法または酸分解法。
炭水化物 (g)
食品 100g‐(水分+たんぱく質+脂質+灰分)=炭水化物
算出法:差し引き法
食物繊維
測定法:プロスキー変法(酵素‐重量法)
使用される酵素(α‐アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ)
表示
水溶性
食物繊維
g
不溶性
総量
表示:食物繊維(g)→(水溶性、不溶性、総量)
灰分(g)
測定法:直接灰化法(550℃)
食塩相当 量(g)
算出法:ナトリウム量
2.54(係数)
ナトリウム量には食塩に由来するものの他、グルタミン酸ナトリウム、アスコルビン
酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等に由来するナトリウムも含
まれる。
エネルギ ー
算出法:
(たんぱく質量
たんぱく質のエネルギー
換算係数)+(炭水化物
換算係数)+(脂質量
炭水化物のエネルギー
脂質のエネルギー
換算係数)=エネルギー
※換算係数
穀類、動物性食品、油脂類、大豆及び大豆製品のうち日本の主要な食品は、日本独自の係
数を使用。その他の食品は FAO/WHO 合同特別専門委員会報告のエネルギー換算係数を
使用。どちらにもない加工食品などはアトウォターの係数(1g 当り、たんぱく質:4kcal、
脂質:9kcal、炭水化物:4kcal)使用
表示:kcal
、kj
( 1 kcal=4.184 kj
)
39
ビタミン A
算出法:レチノール(μg)+1/12β‐カロテン当量(μg)=レチノール当量(μg)
表示(五訂)
レチノール
A
μg
カロテン
レチノール当量
表示(五訂増補)
レチノール
カロテン
A
α
β
クリプトキサンチン
μg
β‐カロテン当量
レチノール当量
ビタミン E(m g)
表示(五訂)
表示(五訂増補)
α
E
mg
E
トコフェロール
β
γ
mg
δ
ビタミン C(m g)
算出法:アスコルビン酸+デヒドロアスコルビン酸=ビタミンC
関連問題
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 133
食品成分表の理解)
五訂日本食品標準成分表における収載成分の分析に関する記述である。正し いのは どれか 。
(1)分析の対象となっている一般成分は、水分、蛋白質、脂質、糖質、繊維および灰分である。
(2)野菜類の水分は、直接加熱乾燥法によって求められている。
(3)野菜類の蛋白質量は、改良ケルダール法によって定量した窒素量に、窒素‐蛋白質換算係数を
乗じて算出される。
(4)脂質量の測定法は、クロロホルム-メタノール改良抽出法に限定されている。
(5)灰分は、炭水化物の算出に必要な項目として測定される。
正解( 5)
五訂増補版においてもこれらの基本事項に変更はない。
(1)五訂からは糖質、繊維の区別をしていない。
(5)差し引きによる炭水化物=100g‐合計 g(水分、蛋白質、脂質、灰分)として求められる。
40
(第 18 回、平成 16 年(2004 年)国試 134
食品成分表の理解)
五訂日本食品標準成分表に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)標準成分値は、旬にあたる時期の食品の全国的な平均値である。
(2)動物性食品群のひとつとして、獣鳥鯨肉類がある。
(3)すべての成分値は、それぞれの食品の可食部 100g当たりの値として示されている。
(4)精白米については、輸入米と国産米の別に成分値が収載されている。
(5)野菜類においては、カロテンを 600μg/100g以上含有するものを「有色野菜」としている。
正解( 3)
五訂増補版においてもこれらの基本事項に変更はない。
(1)年間を通じて普通に摂取する場合の全国的な平均値を表す概念に基づき、標準的な成分値を求
め 1 食品 1 標準成分値としている。
(2)四訂までは獣鳥鯨肉類とされていた。
(4)米は水稲と陸稲の別はあっても輸入米、国産米の区別はない。
(5)以前、野菜類はカロテンを 600μg/100g以上含有するものを「有色野菜」としていたが、五
訂からは記述されていない。
(第 17 回、平成 15 年(2003 年)国試 133
食品成分表の理解)
五訂日本食品標準成分表のエネルギーに関する記述である。正しいものの組み合わせはどれか。
a 収載している食品で、エネルギー換算係数が定められている食品についてはその値を採用して
いる。
b アルコールおよび酢酸は、エネルギー換算係数を 0kcal/g としている。
c エネルギーの単位は kcal と kJ の併記である。
d kcal から kJ への変換式は 1kcal=8.348kJ である。
(1)a と b
(2)a と c
(3)a と d
(4)b と c
(5)c と d
正解( 2)
五訂増補版においてもこれらの基本事項に変更はない。
b アルコールおよび酢酸は、エネルギー換算係数をアルコールは 7.1kcal/g、酢酸は 3.5kcal/g と
している。
d kcal から kJ への変換式は 1kcal=4.184kJ である。
練習問題(正誤解答)
37)□五訂増補日本食品標準成分表の収載食品数は、1,878 食品で、五訂成分表に比べ、収載食
品数が減少した。
38)□食品成分表の成分値は、年間を通じて通常摂取する場合の可食部 100g 当たりの全国的な平
均値として示されている。
39)□五訂増補日本食品標準成分表ではビタミン E をα‐トコフェロール当量(mg)で示してい
る。
40)□五訂増補日本食品標準成分表ではαカロテン、βカロテン、クリプトキサンチン(単位各
μg)が個別に記載されている。
41
41)□五訂増補日本食品標準成分表では、レチノール当量(μg)をレチノール(μg)+1/6βカ
ロテン当量(μg)から算出している。
42)□五訂増補日本食品標準成分表のナイアシン値は、ナイアシン当量(mg)
[ナイアシン(mg)
+トリプトファン/60(mg)
]として表示されている。
43)□食塩相当量は、塩化ナトリウム由来のナトリウム量に 2.54 を乗じて算出した値である。
44)□成分表における「ゆで」は適量の水とともに加熱した後食品のみを、
「水煮」は食品と煮汁
をあわせて分析した値である。
45)□食品成分表に収載されている「調理した食品」は全て、調味料を添加せずに調理したもの
である。
46)□成分表中の調理した食品の成分値は、調理前の可食部 100g に相当する調理後食品に含まれ
る成分値である。
(覚えて おきた い事項 )
① 日本食品標準成分表の作成は、文部科学省の所掌する業務である。
② 成分値は、その食品の可食部 100g 当りの数値が一食品一成分値の原則で示されている。
③ バター類の成分値は、食品群項目の「油脂類」に収載されている。
④ しょうゆ類やみそ類の成分値は、食品群項目の「調味料及び香辛料類」に収載されている。
⑤ エネルギー換算係数について、アルコールを含む食品は 7.1 kcal /g、
酢酸を含む食品は 3.5 kcal
/g としている。
⑥ 五訂増補成分表におけるビタミンAは、レチノール、α‐カロテン、β‐カロテン、クリプト
キサンチン、β‐カロテン当量、レチノール当量を示している。
⑦ 五訂成分表ではβ‐カロテン当量をカロテンとして収載していたが五訂増補成分表ではβ‐
カロテン当量とそのまま表示し、α‐カロテン、β‐カロテン、クリプトキサンチンについて
も収載している。β‐カロテン当量はβ‐カロテン(μg)+1/2α‐カロテン(μg)+
1/2 クリプトキサンチン(μg)で算出している。
⑧ 水稲精白米の成分値には輸入米も含まれている。
食品の分類
<主要栄養素による分類>
六つの 基礎食 品
各栄養素をバランスよく摂取するための指標として、厚生省(現厚生労働省)から「六
つの基礎食品」が示された。食品を成分的特徴によって 6 群に分け、各食品群からまんべ
んなく食品を選ぶように努めることで、必要な栄養素をバランスよく摂ることができる。
六つの基礎食品
食品群
主な食品
供給源となる主な栄養素
第1群
魚、肉、卵、大豆など
主としてたんぱく質供給源
第2群
牛乳・乳製品、海藻、小魚など
主としてカルシウム供給源
第3群
緑黄色野菜など
主としてカロテン供給源
第4群
その他の野菜、果物など
主としてビタミンC供給源
第5群
米、パン、めん、いも、砂糖
主として炭水化物供給源
第6群
油脂類など
主として脂質供給源
42
<食習慣による分類>
主食・副食(主菜、副菜)を組み合わせることで、栄養素のバランスを理想的なパター
ンに近づけることができる。
(参考) 9 年間の出題傾向(1997 年∼2005 年)
大項目
中項目
‘97
‘98
‘99
‘00
‘01
‘02
‘03
‘04
‘05
●
調理学の意義
調理学の
食事計画論
概要
供食・食卓構成
調理文化論
調理と
嗜好性
調理操作
論
食味の形成要因と
その変動
●
●
●
●
●
●
嗜好性の評価
●
加熱操作
●
調味操作
成分抽出素材の
調理性
調理性
その他の食品の
調理性
調理の設
●
エネルギ
食器・容器
ー源
エネルギー源
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
厨房設備
備・器具・ 調理器具
●
●
動物性食品の調理性
食品の
●
●
非加熱操作
植物性食品の調理性
●
●
●
●
●
●
●
●
●
9 年間 の出題 傾向( 1997 年∼ 2005 年 )(参 考)
「調理と嗜好性」
:
「食味の形成要因とその変動」については平成 17 年を含め連続4年間出題され
た。食味の化学的要因や味覚に関する基礎知識、調味料の特徴などをまとめて理
解しておく必要があろう。平成 8 年は調味料(砂糖、みりん、しょうゆなど)に
関して、9 年は食酢に関して、14 年は四味それぞれの特徴に関して、15 年は調理
と嗜好性に関して、16 年は食塩の調理作用とおいしさの要因に関して 17 年は味
の相互作用について出題された。
「調理操 作論 」:非加熱操作と加熱操作がほとんど毎回、出題されていた。16 年は冷凍解凍に関
して、17 年は加熱調理における熱の伝わり方について出題された。揚げる、焼
く、煮るなどの加熱操作もよく出題された。12 年は調味および切砕に関して 11
年、13 年は炒め物と煮物における極めて基本的な要点が種々の食品を対象とし
て出題され、14 年は揚げ物に関して、15 年は非加熱操作に関する手法等に関し
て出題された。
調味の原理やおのおのの調理操作の特徴と、実際にその方法で調理した場合の
食品の変化と関連づけて理解しておく必要がある。
43
「食品の 調理性 」:「植物性食品の調理性」の領域が最もよく出題され、17 年は米と小麦粉の調
理について出題された。また、16 年はそれまでに取りあげられていなかったペ
クチン、乳及び乳製品が出題された。15 年には 1 題に 3 種類の食品(じゃがい
も、小麦粉、コーンスターチ)がとりあげられた。9、13、14 年には米の調理と
いも(さつまいも、じゃがいも、さといもなど)の調理について基本的知識を問
う出題がされた。11 年は豆の調理過程における性状(物性)の変化を問う問題
が出題された。
「成分抽出素材」については 10 年に砂糖を含む甘味料と油脂の調
理性の 2 問が、12 年にはデンプンの調理性、13 年には寒天、ゼラチンに関連し
た問題、16 年はペクチンが出題された。このように「食品の調理性」の項目で
は植物性食品として米、小麦粉、じゃがいも、豆等が、動物性食品では魚、肉、
卵、乳が、成分抽出素材ではデンプン、寒天、ゼラチン、カラギーナン、油脂が、
その他の食品では砂糖、酢が出題された。調理による食品の性質の変化と調理操
作が組み合わされている問題も多いので、よく関連づけて理解しておく必要があ
る。
「調理の 設備・ 器具・エネル ギー源 」:ほぼ毎年、取りあげられ、調理器具が出題されることが
多い。16 年は電磁調理器を使用した電磁誘導加熱に関して出題された。10 年に
は電子レンジのエネルギー効率、電磁調理器の特徴ならびに冷蔵庫のパーシャル
フリージング室の温度について等、日頃使用されている家庭用調理機器について
の基礎的な問題も見直され、12 年にはエネルギーそのものの特徴が、13、14 年
には加熱機器、熱効率を含む問題が出題された。
したがって、電子レンジも含め、新しい機器の加熱原理、エネルギー源の基礎知
識等についても正しく理解しておきたい。鍋の材質と特徴に関しては 17 年に銅、
ステンレス、アルミニウムの熱伝導率に関して、14 年にはアルミニウムとステン
レス鍋の熱伝導率に関する出題があり、食器や包装資材などに関する項目は、最
近の環境問題に対する社会の関心などともあわせて理解しておくことが望ましい。
44
学習のポ イント
1.調理と嗜好性―食味の 5 基本味とその相互作用、調味料の役割
2.調理の基本操作―焼く、揚げる、炒める、蒸すなど
3.食 品の調 理性
①米と炊飯―飯の糊化と老化、調味料の添加効果、米飯の食味評価
②小麦粉の調理性―ドウ、バッター、グルテンの生成と膨化性
③豆類の加熱調理―吸水、加熱、調味のタイミング
④野菜類の加熱調理―加熱による軟化と硬化、成分変化、調味のタイミング
⑤肉類、魚介類の加熱調理―死後硬直、鮮度と調理との関係、加熱による変化、食肉の軟化法
⑥鶏卵の調理性―熱凝固に影響する因子、卵液の静置加熱と攪拌加熱、卵白の起泡性と卵黄の
乳化性に影響する添加物の効果
⑦乳類の調理性―カゼインの特徴と調理性、臭い成分の吸着効果、ソース・菓子素材への利用、
生クリームの起泡性
⑧でんぷんの調理性―糊化・老化特性と添加物の効果、物性変化と粘度、テクスチャー、くず
汁、あんかけ
⑨油脂と揚げ物―クリーミング性、ショートニング性、エマルション、油の劣化
⑩寒天、ゼラチン、カラギーナンやペクチンなどについての調理性と調理操作による変化
4.調理器 具やエ ネルギ ー源の 特徴、 冷蔵庫 の用 途別収納 室の温 度など につい て
5.食品成 分表に ついて の理解
45
練習問題(正誤解答)
1
2
11
12
○
○
21
22
31
32
3
13
4
5
○
○
14
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○
○
○
○
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○
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7
10
○
○
○
41
6
46
46
27
20
○
28
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38
○
○
29
30
○
○
39
40
○
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