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石油産業における信頼性向上技術開発・適用(実用化)戦略に関する調査

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石油産業における信頼性向上技術開発・適用(実用化)戦略に関する調査
石油産業における信頼性向上技術開発・適用(実用化)戦略に関する調査
(石油エネルギー技術センター)
(ARC Advisory Group)
内田
柳本
充、○立谷
薫
尚久
1.研究開発(調査)の目的
近年、石油産業がより一層の競争力を強化することを問われる中、設備及び運転管理の
高度化は、安全性、経済性の観点から、将来にわたり基盤を支える重要な課題である。特
に、今後、急速な進行が予想される「設備の高経年化によるメンテナンス頻度及びトラブ
ル発生要因の増加」、「人員減・ベテラン減による負担増、技術伝承問題」、「高過酷度・高
稼働での長期連続運転への要求」に対応し安定操業を確保していくためには、設備・運転
に関わる信頼性向上技術の確立が重要である。
また、「総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 石油・天然ガス小委員会‐中間
報告書」によれば、高い設備稼働率を保つには、設備の故障や予定外の補修等による設備
停止期間を短縮すること、即ち、設備の「稼働信頼性」を高める必要があるが、世界の中
規模製油所グループ(10万~25万BD程度の規模)のうち最優良のグループの水準が
97%程度である中、我が国の製油所群は92.7%と低い水準にあると指摘されている。
2012事業年度の設備稼働率
は、日本製油所平均72.2%、
韓国製油所平均87.2%、ア
ジア太平洋地域の大規模輸出型
製油所群平均86.6%
( 出所:2013 年度我が国石油精製業の競争力の国際比較・分析等に関する調査報告書)
一方、稼働信頼性にかかわる要因として、これまでJPECでは下記の調査を行って来て
いる。
・H24年度:高度設備管理技術の最新動向調査(JPEC-2012TP-02)
本調査では、我が国の石油精製設備の今後のあり方を踏まえ、高度設備管理技術につ
いて、国内および海外の先行事例・最新動向について調査し、石油業界への導入に当た
っての課題を整理した。その結果、海外で先進的といわれる設備検査方法については、
日本でも殆ど利用・検討されているが、その設備検査技術に対する国内石油会社での満
足度は低く、その傾向は過去(H16年度)に行った調査結果と同様であり、何か設備
管理にかかわるブレークスルー技術が必要であることが示唆された。
・次世代石油エネルギー研究会報告書(2030年を想定した製油所のありうる姿及び今
後の技術開発候補について)
http://www.pecj.or.jp/japanese/jpecnews/pdf/jpecnews201307.pdf
JPECでは、本報告書にて、将来の製油所に必要な技術分野について取りまとめ
た。そこでは、「信頼性」「高度利用」「省エネ」の3つの重要分野があると位置付け、
それぞれの分野での技術開発のターゲットについて取りまとめている。上記、
「総合資
源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 石油・天然ガス小委員会‐中間報告書」にて
指摘されている「稼働信頼性」は、まさに次世代石油エネルギー研究会にてとりまと
めた「信頼性」にかかわる技術と対応する。
信頼性向上分野の開発概念図
そのなかで、製油所の信頼性・競争力強化のための技術開発ターゲットの一つとして、
「自動化・IT化(センサー、設備管理システム)」をあげている。これらの分野は、
近年のIT技術及び精密加工技術の急速な進展により技術革新が目覚ましい分野であ
る。
・ワイヤレスセンサーネットワーク技術動向調査(JPEC-2013TP-02)
JPECでは、先ず、急速に発達してきている半導体精密加工技術を利用したセンサ
ー(MEMSセンサー)に注目し、同センサーを製油所の信頼性向上に利用すべく、周
辺技術動向を調査した。そこで、ワイヤレスセンサーネットワークに必要な要素技術は
ほぼそろっており、今後は適用化に向けた取組みの必要性を指摘した。
ワイヤレスセンサーネットワークを利用したプラント設備管理イメージ
また、設備管理システムについては、上記のワイヤレスセンサーネットワークを利用し
た状態監視技術と、そのデータの解析・利用を含めたトータルでの設備管理手法コンセプ
トが大手プラント制御システムメーカーを中心に提案されており、最先端のセンサー技
術・解析/利用技術をとりいれ、プラント産業での信頼性向上に向けた動きが活発となっ
ている。その動きは、近年話題となっているインターネットオブシングス(IoT)やビ
ッグデータ解析の利用の可能性が期待されていることもあり、各国プロジェクトや企業で
の取組みが顕著になってきている。
そこで、今回JPECでは、プラントの設備管理を中心にしたシステムであるPAM(プ
ラントアセットマネジメント)に注目し、製油所信頼性向上にかかわる主要技術と位置付
け、その開発動向・実用化(適用)動向にくわえ、将来の技術開発の視点について調査す
ることを目的とした。
2.研究開発(調査)の内容
①海外製油所で採用が進んでいるPAMの利用状況の整理

計装制御メーカーであるEmerson社より提案されている状態監視及びデー
タ解析に関わる技術を参考に、製油所に適用可能な技術の概要を整理した。
②PAMの普及にあたっての課題と今後必要な取組の整理

技術導入時の課題や今後の展開に向けた戦略を整理した。
3.研究開発(調査)の結果
3.1
PAMとは
PAMは、設備状態を監視することによってプラント設備全体の健全性を把握し、内在
する問題を顕在化する前に特定するための、ハードウェア、ソフトウェア、サービスの組
み合わせである。プラント設備に問題が発生した時の深刻度、考えうる原因、運転員のと
るべき対応などの情報が提供される。またPAMは、設備に内在する問題を推定するため
の高度な分析が可能で、さまざまなセンサー、スマート現場機器、制御システムに含まれ
るデータを総合的に分析してプラント設備の健全性の予知情報を得ることが出来る。PA
Mから得られる情報は、運転や保守の最適化、生産性の向上、予知保全戦略の立案などに
用いることができる。
ここに示すのはPAMシステムの一例である。主にデジタル通信で工場内の計測機器や
制御機器を接続したネットワークをフィールドバス(Fieldbus)と呼ぶが、フィ
ールドバスのサーバー、工程管理(Process
Control)のサーバー、安全
装置(Safety)のサーバー、その他の個別装置の制御(Discrete
Con
trol)のサーバーなどをデジタル通信でネットワーク化すると、データを一元管理で
きる。そして、そのデータを解析してプラント設備全体をより適切に管理することが可能
となってくる。
PAMシステムの具体例
〔出所:プラント設備管理(PAM)ソリューションガイド ARC Advisory Group〕
3.2
PAM技術の概要
PAMシステムをプラント全体へ導入して成功させるには、導入・構成・統合・訓練用
のリソースが重要であるが、最も重要なのは、それらにかかわる作業員に根付いた文化や
ワークプロセスを変更することに対する取組みであり、PAMがうまく実施されるよう環
境を整えることが重要である。新しくPAMを導入するためには、外部の専門家を利用す
ることが必要であるが、外部の専門家の改善プロセスの中に作業員への対応が含まれてい
ない場合は、満足の行く結果につながらないだろう。
・監視手法
様々な通信を経由してデータ収集することは、技術的には比較的容易である。振動やコ
ロージョン(腐食)は、最も広く採用される監視項目である。
製油所は複雑な装置の集合体であるため、センサーからのデータのみ或いは単一の兆候
のみでは設備の健全性を正確に判断できない。そのため、過去の履歴データや、現在のト
レンドデータをPAMソフトウェアで分析し、データの補強を行う。
監視手法
適用対象
振動
回転機器、レシプロ機器、タービン、コンプレッサ、ファン、
ポンプ、モータ、ギアボックス、風力発電機、ベアリング
赤外線サーモグラフィ
熱交換器、ベアリング、モータ、スイッチギア、変圧器、回
路遮断器、加熱炉
る。ワイヤレス
超音波
通信にありがち
回転機器、レシプロ機器、タービン、コンプレッサ、ファン、
ポンプ、モータ、ギアボックス、風力発電機、配管、バルブ
油分析
エンジン、ギアボックス、変速機
ワイヤレス技
術は、PAMシ
ステム開発実現
の推進要素であ
なデータ送受信
遅れとデータサ
ンプリング周期
コロージョン
モデリング
配管、熱交換器、貯槽、ポンプ、バルブ、現場機器、ボイラ、
プロセス装置の液に漬かる部分
設備の健全性を推測するニューラルネットワーク
生産設備区分別の監視技術と一般的な適用対象
〔出所:プラント設備管理(PAM)ソリューションガイド ARC Advisory Group〕
上の制約は、PAMシステムのパフ
独自のインターフェイスとコネクタ
ォーマンスにほとんど影響を与えな
異なる戦略を可能にする標準規格の不足
い。数分の遅れでさえ、プロセス制
大きな初期投資
御計測とは異なり、通常、PAM環
境では問題がない(タービンのよう
長い導入期間
に素早い応答で破壊的な故障を防ぐ
限られた柔軟性
必要がある保護システムは例外)。
システムの複雑性の増加
ワイヤレス技術を採用しない場合、
プラントの稼動年数次第では、極め
新技術導入を阻害
経営目標との不整合
て大きなインフラ更新が必要となる
統合化における課題
ことがある。監視センサーを後付け
〔出所:プラント設備管理(PAM)ソリューションガイド ARC Advisory Group〕
した装置やスマート装置をPAMシ
ステムに配線でつなぐことは、特に危険区域では課題が多く、コスト高となる。配線に必
要な費用や作業は、PAMシステム投資の投資回収を難しくすることがある。ワイヤレス
のPAMシステムは、これらの問題を回避できる。
3.3
製油所におけるPAM
3.3.1
リスク回避の産業
製油所は、コンプレッサ、ポンプ、熱交換器、貯槽、配管網、計装、バルブなどの複雑
な集合体であり、一年中休むことなく運転しなければならない。設備不良による非計画停
止は、収益性に影響を与える。そのため稼働条件の変動を少なくして製品不良を最小限に
することが重要である。
他の典型的な装置産業と同様に、石油精製業はリスク回避産業として特徴付けられる。
石油精製業は建設のために数十億ドルにも上る膨大な投資をしているが、リスクを避けた
いという産業の指向が新しい設計や建設に対する阻害要因の一つとなっている。
「稼働条件の変動幅に対してゆとりのある装置設計」というやり方は、停止しない運転
に対してある種の保険を提供する一方、新設製油所の設計においてあまり創造性の余地を
残さない。とはいえ、プラント全体にわたる重要な設備の監視をサポートするためのワイ
ヤレスインフラなどを含む、現在のPAM技術を活用する小さな兆しが、現れてきている。
PAM アプリケーション
設備タイプ
空冷式熱交換器
ブロワ
着氷、冷却不足、共鳴振動数、アラインメント、ルーバ損傷
ベアリング磨耗、アラインメント、ルーバ損傷、ブレード損傷、
共鳴振動数
冷却塔
着氷、過熱、水質、ファンの問題、ポンプの問題、ルーバの問
題
熱交換器
熱損失、熱容量、ファウリング(汚れ)、プラギング(つまり)、
固形沈殿物、チューブ気化
ポンプ
キャビテーション、潤滑、シール漏れ、ベアリング磨耗、アラ
インメント、ストレーナつまり
コンプレッサ
ベアリング磨耗、潤滑、アラインメント、ブレード不均衡
製油所における標準的なPAMアプリケーション
〔出所:プラント設備管理(PAM)ソリューションガイド ARC Advisory Group〕
3.3.2
一般的な製油所における課題へのPAMの適用
・アラーム対応の負荷低減
アラームが多すぎるというのが、石油精製業における運転員の共通の不満である。運転
員は、PAMシステム導入がより多くのアラームを生み出し、混乱に拍車をかけるという
恐れから、PAMシステム導入には反対しがちである。初期のPAMシステムは、装置の
真の問題を正確に特定するのに十分な能力を持っていなかった。しかし最近出現してきた
PAMソフトウェアは、個々の製油所の設備管理戦略に基づき設備に優先度を付ける分析
が可能であり、アラーム対応の負荷低減に役立つと考えられる。
・コロージョンの制御
製油所インフラにおける弱点のひとつはコロージョンである。現在のコロージョン監視
技術は、設備に深刻な影響が出る前に早期にコロージョンを検知することができ、設備不
具合の発生を低減できる。コロージョン監視用PAMシステムは設備寿命を伸ばすことが
できるのと同時に、異常状態の発生を防止できるので、非常に優れた投資対効果を得る。
・予備品の在庫の最適化
予備品の在庫数と費用は過剰になりがちであるが、PAMシステムを使用することによ
り、古くなった部品の管理、物の特定や設置場所の情報の標準化、推奨する在庫水準の計
算といった予備品の管理をすることができる。
・プロセス安全
プロセス安全システムが設計通りに機能するかどうかの検証に、通常安全弁の部分作動
(パーシャルストローク)テストがある。バルブの健全性を診断する機能により、内在す
る問題やその深刻度が事前に運転員に通知される。運転員がPAMシステムを信頼するよ
うになれば、部分作動バルブテストやその他の安全システム設備におけるテストを減らせ
る可能性がある。この目的のためのソリューションを開発しているPAMサプライヤも何
社かある。
・従業員の高齢化に対する対応
技能的に未熟な作業員が相対的に増え、少人数で保全を行わなくてはならない状況では、
手作業によるデータ収集や検診(インスペクション)に比べてよりコストが低いオンライ
ンモニタリングの必要性が増す。
それでもコストが高い場合は、ワイヤレスやインターネット技術も取り込んだ遠隔プラ
ント設備管理(RPAM:Remote
PAM)ソリューションを選択出来る。電話や
SMSやeメールを使って問題や警報が、適切なプラント作業員に通知される。RPAM
サプライヤは、目的に合わせて多様なサービスレベルを用意していることが多い。
3.4
将来のPAMシステム
IT(インフォメーション
テクノロジー)とOT(オペレーショナル テクノロジー)
の融合が進むことで、PAMシステムは進化を続けている。MEMS(半導体精密加工技
術)やナノ技術の進歩により、小型で高性能なセンサーが創出されている。それに伴い行
動指示型分析(Prescriptive
Analytics)機能が進歩し、保全要
求に対するピンポイントの行動指示の提供が可能となり、より効率的なワークプロセスが
出来上がる可能性がある。
・ARCのCPASビジョンにおけるPAM
ARC(ARC Advisory Group)ではプロセスオートメーションシステ
ムをどのように進化させるべきかを考え、CPAS〔Collaborative
ocess
Automation
Pr
Systems(協働型プロセスオートメーション
システム)〕を発表した。CPASは、学習、高度プロセス制御、運転管理アプリケーシ
ョンに、意思決定支援や高度分析機能などの従業員強化アプリケーションを加えたもので
ある。
CPASは、異種サプライヤの構成管理やシステム管理機能を持つ各種アプリケーショ
ンを同時にサポートできるため、複数のサプライヤの混在環境でもそれらの相互通信が可
能である。最終的には、この機能は高度アプリケーションをつかさどるものとして、オペ
レーティングシステムの一部となる可能性がある。
CPASは、適用可能なすべての場所でワイヤレスセンシングを活用するが、重要な通
信に対しては、有線を活用する。
プラントレベルの設備管理(PAM)システムでは、オンラインでリアルタイムの状態
監視(Condition
liability
Monitoring)や分析機能を信頼性中心保全(Re
Centered
Maintenance)などのような予知保
全戦略に統合できるし、場合によっては、EAM〔Enterprise
Asset
M
anagement(企業全体で資産を管理する手法の総称)〕システムとも統合できる。
ARCのCPASビジョンは拡張性に富む
〔出所:プラント設備管理(PAM)ソリューションガイド ARC Advisory Group〕
・ソフト設備管理
PAMソリューションの新しい技術の一つとして、運転保守に対するIIoT(産業用
のモノをインターネット経由で接続する考え方)形式のクラウドソーシング(多数の人に
業務を委託する形態)に対応した学習機能がある。設備データはセンサネットワーク経由
で集められ、作動パターンを学習するために分析される。望ましい運転管理幅からのずれ
は、パターン認識技術を使って推定される。
例えば、誘導モータ用の監視技術は、モータのリレーやドライブパネルに直接接続する
ことで、モータの電流使用量データに基づいて設備の健全性を推定分析するために必要な
データが得られる(新たなセンサー不要、電流の波形を監視)。この技術アプリケーショ
ンは、誘導モータで駆動されている機器にしか適用できないが、かなりの数のモータ、ポ
ンプ、コンプレッサ、ファンをカバーすることができる。
・新ツール
運転員は、生産サイクル全体の進行状況を、常に把握することが重要であるが、同時に、
事態が変化したときには直ちに正確な意思決定ができるよう重要な情報にリアルタイムに
アクセスしなければならない。これが容易でないことが運転ミスによる計画外の処理量低
下や運転停止をもたらす最大の原因となっている。
それを改善するために設計された対話型ワークステーションは、遠隔監視センターでの
使用に適している。多機能の画面操作やナビゲーション機能、多画面や大規模スクリーン
などを持った、個人別に調整可能なHMI(ヒューマン マシン インターフェース、人間
と機械が情報をやり取りするための手段や装置、ソフトウェアのこと)設計環境における
拡張グラフィックスにより、効率的な監視機能を提供することができる。ビデオ送受信機
能は現場とのリアルタイム会話が可能である。タッチスクリーンなどのようなインタラク
ティブな作業ツールは、製造企業向けに開発中の現在ホットな動向である。グーグルグラ
スなどのようなウェアラブルなコンピューティング機器を活用するソリューションは、い
くつか試験的に実施され、成功している。ただし、広く使用されるようになるには、まだ
時間がかかるだろう。
分散かつユビキタス:遠隔機器-モバイルインターネットコンピューティング
〔出所:プラント設備管理(PAM)ソリューションガイド ARC Advisory Group〕
・IIoT(産業用IoT)におけるPAMの位置づけ
高性能な装置を、他の高性能な装置とデジタル通信で相互に結び付けたり、インターネッ
トサービスや、アプリケーションと結び
付ける、IIoT(産業用モノのインタ
ーネット)の時代がすぐそこまで来てい
る。設備製造企業や他のサービスプロバ
イダに対して、設備のパフォーマンスデ
ータを安全に提供することを可能にする
ような、IIoTの「デジタル紐帯(d
igital
umbilical
c
ord)」機能を既存の産業システムに付
加する技術が、今後市場に現れてくると
予測される。初期段階では、遠隔監視装
置への適用の可能性が高い。
IIoT(産業用モノのインターネット)
〔出所:プラント設備管理(PAM)ソリューションガイド ARC Advisory Group〕
4.まとめ
PAMは、設備状態を監視することによってプラント設備全体の健全性を把握し、内在
する問題が顕在化する前に問題を特定するための、ハードウェア、ソフトウェア、サービ
スの組み合わせである。PAMから得られる情報は、運転や保守の最適化、生産性の向上、
予知保全戦略の立案などに用いることができるが、導入については十分な検討が必要であ
る。
(1)企業が変化を起こそうとするときに、従業員からくる通常の反応は、変化すること
への抵抗である。能動的保全文化の確立は、PAM導入計画を成功に導くために必要不可
欠である。リーダシップを通して、望まれる行動を従業員に認識させることが必要である。
(2)PAMシステムを導入したからといって、期待効果が実現する保証はない。導入計
画の作成と実行、インフラニーズの監査、従業員教育、ワークプロセスをうまく行うこと
ができなければ、通常、不十分な結果につながる。導入を支援する外部コンサルタントの
活用が必要である。
(3)厳しい経済環境下において保全に関わる出費を抑制することは近視眼的で、長期的
な収益に影響を与えるだろう。直接的な稼働時間の延長や目標コストの低減以上の効果を
あげるために、戦略的な保全計画を立案することを推奨する。戦略的保全計画を立案する
ことで、設備寿命の延長、システム応答の改善、製品の規格外れの最小化、省エネルギー
などのより大きなビジネス目標を達成することが可能となる。また、将来の投資回収をよ
り正確に評価できる仕組みも見出すことが出来る。
(4)大規模で包括的なPAM活動を始める前に、小規模で単独型のPAMソリューショ
ンの活用からはじめるべきである。小規模で単独型にすることは、PAM計画全体の初期
コストを低減させるだけでなく、成功の事実を早期に示すことができ、将来の全体の成功
に向けた触媒の役割を果たすことができる。
(5)保全や運転の利害関係者に対して迅速に有益な情報を提供するために、すべてのP
AMの利害関係者のそれぞれのニーズは、最大利益を実現するために密接に関連付けて、
共通単位の指標として外部から見えるようにしなければならない。
以上
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