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創造的日本語教育試論 ~ 『創価教育学体系』 に学ぶ言語教育のあり方 ~

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創造的日本語教育試論 ~ 『創価教育学体系』 に学ぶ言語教育のあり方 ~
創造的 日本語教育試論
『
創価教育学体系』に学ぶ言語教育のあ り方
一
山
【要
牧 口常 三郎(1871∼1944)の
本
忠
行
旨】
『創 価教 育学 体 系』 お よび 「
綴 り方 指 導 」
に関 す る い くつ か の 論 文 を 主 な 手が か り と しな が ら、 言 語 教 育 の あ る べ
き姿 に つ いて 考 察 した 。19世 紀 末 に起 こ った 言語 教 育改 革 運 動 の 本 質 は、
文 法 や 語 句 の 知 識 を も とに翻 訳 す る だ け で は 外 国 語 の 運 用 力 が 身 につ か
な い とい う点 に あ っ た。 これ は知 識 伝 授 型 教 育 の 改 革 を 目指 した 創 価 教
育学 との 共 通 点 で あ る。 また 、 教 育 の 目 的 を 生 徒 の 「
幸 福 」 に 置 く創 価
教 育 学 は 創造 的 日本 語 教 育 、 人 間 主義 の 日本 語 教 育 の 思 想 的 基 盤 とな る。
【キー ワー ド】
牧 口常 こ郎 、 学 習指 導 主 義 、 教 育技 師 論 、 人 間 主 義 、 綴 り方
※ 引用 文 中、 明 らか な誤 字 ・脱 字 等 は修 正 した 。
1.は
じめ に
在 住 外 国 人 の 増 加 につ れ て 、 日本 語 教 育 は か つ て の 留 学 生 中心 か ら地
域 や 職 場 へ と裾 野 が 拡 大 し、 対 象 者 も多 様 化 して きた 。 そ の た め 、 教 え
方 や 内 容 だ けで な く、 基 本 的 な 考 え方 に も変 化 が 求 め られ て い る。 ひ と
つ に は コ ミュニ カ テ ィブ な言 語 教 育 へ の 転 換 で あ り、 も うひ とつ が 「
人
n
間 主 義 」 のU本 語 教 育で あ る。 留 学 生 教 育 で あ れ ば 、 学 習 動 機 も明確 で
あ り、 何 の た めか は ほ とん ど問題 に な ら な か っ た 。 そ れ な りの学 力 も あ
7
る の で 、 文 型 ・文 法 中 心 に知 識 や 技 術 を 重 視 す る教 育 で も何 とか 対応 で
きた の だ が 、 それ が う ま くいか な くな っ て きた の で あ る。
本 年 は 、 創価 大 学 の 原 点 と も言 え る 『創 価 教 育学 体 系』 第1巻 が1930
年 に発 刊 され て か ら80周 年 に当 た る。 本稿 で は 、近 年 の 〕本 語 教 育 を取
り巻 く状 況 の 変 化 を踏 まえ つ つ 、 牧 口常 三 郎 が 理 想 と した教 育 を どの よ
うに 日本 語 教 育 に応 用 して い くこ とが で き るか につ いて 考 察 す る。 牧 口
は、 教 育 の 目的 を学 習者 の 「
幸 福 」 に置 くと と も に、 学 習 者 の 口∫能 性 を
ど こ まで も信 じ抜 き 、 その 創 造 力 を最 大 限 に伸 ば す 、 真 の 「
人間教 育」
を 目指 した 、 当 時 と して は 最 も進 歩 的 な教 育 論 を唱 え た理 論 家 の1人 で
あ り、 実 践 者 で あ る。 さ ら に常 に社 会 に生 き る人 間 とい う視 点 か ら教 育
を 見つ め 、 教 育 を通 じて平 和 で 幸 福 な社 会 を 実 現 しよ う とす る牧 口 の精
神 と教 育 観 は 、 現 在 の 日本 語 教 育 を考 え る うえ で 、 重 要 な 手が か り と知
恵 を 与 え て くれ る。
具 体 的 に は 、 まず 言 語教 育 の 歴 史 を振 り返 りつ つ 、 外 国 語 教 育 の本 質
的 な部 分 か ら問 い 直 し、 創 価 教 育 学 体 系 の 基 本 的 な考 え方 との共 通 点 を
探 る。 次 に 日本 語 教 育 の あ るべ き姿 とは ど うい う もの か を 考 え、 「
学 習指
導主義」 と 「
教 育 技 師 論 」、 お よび 「
作 文教 授 」 を中 心 に して 「
創造 的 日
本 語 教 育」 を 提 唱 す る。
2.言
語 教 育 改 革 運 動 が 目指 した も の
19世 紀 末 に始 まっ た 言 語 教 育 改 革 運 動 は 、 文法 訳 読 法 が 労 力 の割 に 、
実 際 に は あ ま り役 に 立た な い 語 学 教 育 で あ る こ とを批 判 した もの とr7っ
て よ い。 ヨー ロ ッパ の 伝 統 的 な教 育 で は ラ テ ン語 学 習 が 教 養 と して 重 視
され た が 、 そ れ は 読 み 書 きを 中 心 と した もの で あ っ た 。 しか し、 産 業 革
命 以 降 の 物 流 や 人 の 往 来 の 拡 大 、 世 界 的 な規 模 で 行 わ れ た 植 民 地 支 配 に
と も な い 、 効 率 的 か つ 実 用 的 な 言 語 教 育 が 求 め られ る よ う に な っ た 。
8
創造 的 日本 語教 育試 論
WilhelmVietor(1850∼1918)が
旧来 の言 語 教 育 の転 換 の 必 要 性 を唱
え て 、DerSprachunteYrichtmussitimkehren!(1882)を
著 した の も、
こ う した 問 題 意 識 が 背 景 に あ る 。 こ の 時 代 は 多 くの 学 者 に よ っ て さ ま ざ
ま な 言 語 教 授 法 が 提 唱 され た が 、 そ の 主 流 と な っ た の は 幼 児 の 母 語 習 得
過 程 の 観 察 な ど を 通 じ 、 母 語 や 媒 介 語 を 用 い な い 直 接 教 授 法(Direct
Method)で
あ っ た 。 そ の 代 表 的 な も の が グ ア ン ・メ ソ ッ ドや ベ ル リ ッ ツ ・
メ ソ ッ ドで あ り、 あ とで 取 り上 げ るH.E.パ
ー マ ーや 長 沼 直 兄 も この よ う
な 流 れ を くむ 学 者 で あ る 。
2.1.文 法 訳 読 法 とは
文 法 訳 読 法 は19世 紀 末 に痛 烈 な批 判 を浴 び た に もか か わ らず、 今 で も
教 育 現 場 で は根 強 い 支持 が あ る。 外 国 語 教 育 は な ぜ100年
以 上 も訳 読 法
の呪 縛 か ら逃 れ られ な い の か 。
文法 訳 読 法 の基 盤 に あ るの は、 言 語 とい う もの は音 声 言語 にせ よ、 書
記言 語 にせ よ、 文法 と語 彙 の 組 み 合 わせ に よっ て 成 り立 っ て い る の で あ
るか ら、 言語 の仕 組 み を理 解 し、 単 語 を覚 え る こ とが 言 語 の 学 習 で あ る
とい う考 え だ と 言え る。 した が っ て、 言 語 を 学 ぶ とき に は 、 まず 発 音 と
文字 を学 び、 次 に新 出 単 語 を覚 え、 文 の構 造 や 動 詞 の活 用 な ど を学 習 し
て か ら例 文 の読 み 方 と意 味 を習 うこ とに な る。 教 師 の 主 な仕 事 は文 法 と
意 味 の説 明 で あ る。 変換 練 習 や 代 入練 習 が 行 わ れ る の は 、 こ う した作 業
の後 で あ る。 学 習 者 は 教 科 書 を正 し く音 読 し、 意 味 が わ か れ ば よ し と さ
れ 、 さ らに モ デ ル 会 話 や 本 文 を暗 訥 で きれ ば 理 想 と され る。 だ が 、 練 習
は主 に活 用 や 短 文 作 りな ど に と どま り、 文 章 ・談 話 の構造 に 配 慮 した産
出 活動 まで行 わ れ る こ とは少 な い。 そ の た め 、 実 際 に そ の 言語 の 運 用 力
が 身 に つ くか ど うか ど うか は、 学 習 者 の 自助 努 力 と学 習後 の 経 験 の積 み
重 ね に ゆ だ ね られ て い る と言 っ て よ い。
9
2.2.発 話 動 機 の 重 要 性
牧 口 の 創価 教 育 学 は ヘ ル バ ル トの 影 響 が大 きい と され るが 、 デ ュ ー イ
か ら受 け た 影 響 も見 られ る。 特 に 旧来 の 知 識 伝 授 型 教 育 を批 判 し、 変 動
す る社 会 で 生 き抜 く力、 創 造 性 を育 む教 育 で あ るべ き とい う主張 は、 生
きた 語学 教 育 を考 え る上 で も重 要 な示 唆 で あ る。 デ ュ ー イ(1915)は
「
旧
制 度 の も とに お いて は、 子 ど もた ち に 白 由 に の び の び とii語 をつ か わせ
る こ とは 、 疑 い もな く きわ め て 困 難 な問 題 で あ っ た 。 その 理 由 は明 白で
あ っ た 。 言語 に対 す る 自然 な動 機 が ほ とん どあ た え られ なか っ た の で あ
る」(pp.68-69)と
述 べ 、 「い き い き と した 印 象 や 確 信 を人 にっ た え よ う
とす る 真 の 欲 求 」 の重 要 性 を強 調 す る。 そ して 「な にか 言 い た い こ とが
あ る の と、 な にか を言 わ な けれ ば な らな い の との あ い だ に は天 地 の相 違
が あ る」(p.70)と
指 摘 す る。
文法 訳 読 法 の根 本 的 な問 題 は、 学 習 者 が 伝 えた い もの を持 た な い ま ま、
一 方 的 に 知 識 を教 え込 まれ る点 に あ る と考 え られ る。 理 科 や 社 会科 の よ
うな教 科 な ら弊 害 は少 な い の か も しれ な い が 、 言葉 の 習 得 を 目 的 とす る
外 国 語教 育 で は それ は 問題 と な る。
た とえ ば 、 教 師 か ら 「
教 科 書 の第 ○ 課 を 開 い て くだ さ い。 今 目は受 け
身 の作 り方 に つ いて 学 び ます 」 な ど と 言わ れ て も、 学 習 者 の心 に は そ れ
を学 ぶ 動 機 が な い。 「AがBを
な ぐっ た」 とい う文 を受 け身 にす る と 「B
はAに な ぐられ た」 とな る と説 明 さ れ て も、 文 法 形 式 を知 る に す ぎず 、
それ を使 っ て 何 か 言 い た くな る わ け で は な い 。 中 学 時 代 に不 定 詞や 関係
代 名詞 を 習 っ た と き、 何 の た め に 習 っ て い るの か が わか らず 、 英 語 の文
法 は なぜ こん な に面 倒 な の か と疑 問 に 感 じた 経 験 が あ るが 、 英 語嫌 い を
生 む一 因 は この よ うな と こ ろ に もあ る。
文法 形 式 は本 来 、 あ る状 況 の 中 で何 らか の 意 図 を持 っ て表 現 し よ う、
伝 達 し よ う とい う と きに 使 わ れ る もの で あ る。 日本 語 の場 合 、受 け 身 が
lU
創造 的 日本 語教 育試論
自然 に 出 て くる状 況 、 困 っ た こ と、 嫌 な こ とを考 え させ て か ら、 そ う い
う ときに は この よ う な 言 い 方 を す るの だ とい うふ うに 持 っ て い け ば 、 学
習 者 も抵抗 感 な く新 た な文 法 項 目の 学 習 に入 っ て い け る は ず で あ る。 文
法 の た め の 文 法 教 育 か ら、 生活 の た め 、 表 現 の た め の 文 法 教 育 に 転 換 し
な けれ ば な らな い 。 機 能 や 場 面 の 重 要 性 が 言 わ れ る理 由、 あ るい は 日本
語教 育 文 法 の 確 立が 叫 ば れ る理 由 も こ こ に あ る。 言い 換 えれ ば 、 まず 教
室 を コ ミュニ ケー シ ョン の場 と位 置 づ け、 毎 回 の授 業 で 学 習者 の 心 に言
いた い こ とを持 たせ 、 そ れ を う ま く表 現 で き る よ う教 師 が 支援 す る とい
う形 を 目指 す べ きで あ る。
3.創
価教育学 とは
一
知 識 伝 授 型 教 育 を乗 り越 え て 一
牧 口常 三郎 が 唱 え た 「
創 価 教 育 学 」 は、 デ ュー イ の 教 育 学 と同 様 に小
学 校 教 育 の 実 践 の 中か ら生 み 出 され た 理 念 で あ り、 特 に言 語 教 育 の 改 善
を意 図 して 考 案 され た もの で は な い 。 しか し、 そ の 問 題 意 識 や 目指 す と
ころ は 「
価 値 創 造 」 とい う語 に込 め られ た 知 識 伝 授 型 教 育 の 改 革 お よび 、
前 節 で 述 べ た 言 語教 育 改 革 運 動 の 考 え方 と共 通 す る部 分 が 大 きい 。
3.1.牧 口 常 三郎 と創価 教 育 学
1871年 に新 潟 県柏 崎 市 に生 まれ た牧 口常 三 郎 は1893年
に北 海 道 尋常 師
範 学 校 卒 業 後 、 小 学 校 訓 導 を しなが ら地 理 学 の研 究 を 重 ね た 。29歳 で退
職 後 に 上京 し、1903年 に 『人生 地 理 学 』 を 出版 した 。 その 後 は小 学 校 の
校 長 を19年 間 務 め る一一
方 で 、 教 育学 の体 系化 に取 り組 ん だ。 そ の成 果 と
して ま とめ られ た の が 『創 価 教 育 学 体 系 』(1930∼1934)で
あ る。 民 俗
学者 と して有 名 な柳 田 国 男 は 「
他 に は容 易 に得 難 き独 創 の 価 値 は或 は 、
此 の行 詰 ま っ た現 代 教 育 界 を打 開 す るに 足 る と信 じ 、改 め て 之 を推 奨 す
るに躊 躇 しな い」 と序 文で 評 して い る。30年 あ ま りの 教 育 実 践 と考 察 か
1
1
ら生 み 出 さ れ た牧 口 の創 価 教 育学 は 、 発表 後80年
を 過 ぎて も色 あせ る ど
ころ か 、 そ の独 創 的 な 視 点 は教 育 に つ い て 考 え る者 に とっ て確 固 た る指
針 とな る。 そ の論 じ る と ころ は 実 に 多 岐 に わ た っ て い る。 た だ 、 惜 しむ
ら くは熊 谷(1994)が
「
第 五 巻 が 幻 に終 わ った こ とは創 価教 育学 説 に とっ
て 残 念 とい うほ か な い 」 と指 摘 す る よ う に、 牧 口 は 各 教 科 の 具 体 的 な学
習 指 導 法 を創 価 教 育 学 の 中枢 と位 置 づ け、 第5巻
以 降 で 論 じ る 予定 に し
て い た の だ が 、 つ い に それ は 実 現 され なか っ た。 各 教 科 の 具 体 的 な実 践
法 は 課 題 と して 残 され た。 我 々 は 牧 口 の示 した原 理 ・原 則 、 あ る い は各
種 の 雑 誌 に掲 載 され た論 文 や 書 き残 され た メ モ な ど を 手が か りに、 創 価
教 育 は ど うあ るべ きか を考 え 続 けて いか な け れ ば な ら な くな っ た わ けで
あ る。 だ が 、 見 方 を変 えれ ば、 それ は牧 口の 理 想 とす る教 師像 で もあ る。
一 人 一 人 の教 師 が 教 育 現場 で生 徒 の た め に、 よ り良 き教 育 を 目指 し、 日々
試 行 錯 誤 と工 夫 を重 ね る中 に こ そ 「
真 の創 価 教 育 」 が あ る。
3.2.教 育 技 師論 が 生 まれ た 時代 背 景
創 価 教 育 学 体 系 は 、 牧 口独 自 の歴 史観 が 基 盤 とな っ て い る。 そ こに は
時 代 の 変 化 に よ っ て 、 教 師 の 役 割 が根 本 的 に問 い 直 され っ つ あ る とい う
問 題 意 識 が 見 て取 れ る。 第5編
「
教 育 方 法 論 」 は、 そ の 第1章 の タイ ト
ルが 「
国 家 教 育 の破 産 と対 策 」 とい う、 や や 衝 撃 的 な もの で あ る。 冒 頭
で 「
教 師 の 職 は知 識 の 切 り売 りか 、 生徒 の 学 習 を指 導 す る技 師 か 」 とい
う コ メニ ウ ス の 問 を 掲 げ、 社 会 の現 状 を分 析 して い る。 そ こで は 「
知識
の 秘 蔵 庫 が 無 限 に 開 放 され 、 殊 に 解 り易 く教 科 書 まで 完 成 され た 今 日、
ロボ ッ トで も出来 る様 に な っ た に就 いて は、 社 会 が 今 少 し教 育 の 内容 を
知 り出 し、 教 育 経 済 に 目 ざ め て 来 た な ら、 忽 ち教 育 者 の 大 部 分 は失 業 の
運 命 を免 れ 得 な い こ と を覚 悟 せ ね ば な る まい 」(IV:17)と
い うよ うに、
社 会 の 発 展 お よび 科 学 技 術 の進 歩 が 教 育 界 に もた らす 影 響 を予 測 し、 教
12
創 造的[本 語教育 試論
育 が 単な る 「知 識 の 切 り売 り」 で あ れ ば 教 師 不 要 論 が 出 て くる と警 告 し
て い る。
方 、 も し教 師 が 技 師 で あ れ ば 、 「
医術、工芸等の技師や、絵画、彫刻
な どの 芸 術 家 と同 様 に な り、 しか も その 中 に於 て 、 人 間 を素 材 とす る最
高 級 の 芸 術 家 と して 、 教 師 は永 久 に 生 命 を有 し、 且 つ 文 化 の 発 達 と と も
に益 々 其 の 価 値 を 発揮 す る こ とに な るで あ ろ う」(IV:17、
下線 引用者。
以 下 同 じ)と 、 教 育 技 術 の重 要 性 を論 じて い る 。 同 章 の 別 の節 で は 「
教
師 が 銘 々 に 付 い て 居 な くて も、 自学 自習 が 出 来 る様 に も な っ た の で 、 相
変 わ らぬ 昔 な が らの 教 材 の供 給 た る知 識 の 切 り売 りで は 立 っ て行 け ぬ 事
に な り、 そ の 代 わ りに この教 科 書 を 運 用 して 学 習 を 指 導 し、 如 何 に 経 済
に理 解 し、 応 用 して 、 生 活Lに 役 立 た せ るか とい う方 面 を専 門 の仕 事 と
な さね ば な らぬ 事 とな っ た の で あ る」(IV:21)と
、 効 率 的 に 教 え られ る
教 師 、 学 習者 の生 き る力 を育 む教 師 の 育成 を 目指 して い る こ とが わ か る。
これ はICT(情
報 通信 技 術)が 著 しい進 歩 を 遂 げ た現 代 社 会 に お け る
語 学 教 師 に その ま まあ て は ま る議 論 で あ る。 各 種 の 言 語 学 習用 の 教 科 書
やCD、
あ る い はパ ソ コ ン ソ フ トが 店 頭 に数 多 く並 んで い るだ け で な く、
テ レビや ラ ジ オ の 語学 番組 も百 花 練 乱 の感 で あ る。 イ ン タ ー ネ ッ ト上 に
は無 償 で 外 国 語 が 学 べ る環 境 が 作 られ つ つ あ る。 東 京 外 国語 大 学 の ホ ー
ムペ ー ジ に は、 言 語 モ ジ ュー ル と して何 と 日本 語 を含 め て20言 語(2010
年10月 現 在)の 文 法解 説 と と もに ビ デ オ に よ る会 話 学 習 が で き るサ イ ト
が作 られ て い る。 か つ て は 耳 にす る こ とが 困 難 だ った 様 々 な 生 の 外 国 語
に触 れ る こ と も、 い な が ら に して 可 能 に な っ た 。 で は、 これ に よ って は
た して 語 学 教 師 は不 要 だ と言 え る状 況 が 現 出 した の で あ ろ うか 。 否 、 グ
ローバ ル化 の進 展 と と も に、 優 秀 な 語学 教 師 へ の 需 要 は高 ま る… 方 で あ
る。 つ ま り、 どん な に優 れ た 教 科 書 や 教 材 が あ り、 それ を 暗 記 した と し
て も、 学 習者 は容 易 に 外 国 語 の 運 用 が で き る よ う に な る わ け で は な い。
13
そ こに こそ、 英 語 で あれ 、 日本 語 で あれ 、 言 語 を教 え る専 門 的 「
技術者」
と して の 言 語 教 師 の 存 在 理 由 が あ る。
3.3.技 術 者 と して の 教 師
『
創 価 教 育 学体 系』 の第4編
とな っ て い るの が 第3章
は 「
教 育 改 造 論 」 と題 され 、 そ の柱 の一一つ
の 「
教 師 即 教 育技 師 論」 で あ る。 牧 口 は まず 教
師 の 仕 事 を進 化 論 的 に考 察 す る と して 、 次 の3期 に 渡 る進 化 を挙 げて い
る(III:68-69)。
第1期
直接 教 科 の 材 料 と して 教 壇 上 に 疏ち 、 知 識 道徳 の 包 蔵 者 を
以 て任 じ、 書 籍 を 唯 一 の 教 具 とな し、rl舌 の 手段 を以 て 訓 詰
注 釈 、解 説 を な して 知 識 技 能 の 伝 授 を な した る時代 。
第2期
書 籍 の 解 釈 を主 とす るに 変 りな いが 、 これ が 説 明 の 手段 と
して、 口 舌 の 外 に絵 画 、 実 物 、 標 本 、 模 型 等 の つ 一
一
一つ を教
壇 に持 ち込 ん だ 時 代 。
第3期
自然 的 、社 会 的 環 境 そ の ま ま を教 科 の 舞 台 とな し、 教 師 自
ら も其 の 中 の傍 観 的 一補 導 者 と して 、 忠 実 に謙 遜 に被 教 育者
直接の経験 交際の媒介 をなす時代。
これ は 教 育 に関 す る一 般 論 と して述 べ られ た もの で あ るが 、言 語教 育
の 歴 史 に つ い て も、 そ の ま ま適 用 で き る。 す な わ ち 、 牧 口 の い う第 一期
とは書 籍 の解 説 や 注 釈 で あ る。 これ は文 法 訳 読 法 そ の もの で あ る。18世
紀 以 前 の 外 国 語 教 育 ・学 習 とい う の は西 欧 で も アジ アで も中心 は 占典 の
訳 読 で あ り、 そ の 目標 は主 に 文 献 を読 む こ とに 置 か れ て い た。 文 書 作 成
能 力 も必 要 と され た が 、 音 声 に よ る コ ミュ ニ ケ ー シ ョン は限 定 的 な もの
で あ っ た。 そ の た め 外 国 語 に つ い て 知 識 を持 た せ 、 書 物 の 内 容 が 理 解 で
き る よ うに な れ ば 、 それ で あ ま り問 題 に な らな か っ た の で あ る。
14
創造 的 日本語教 育試 論
第2期
とされ る もの は、19世 紀 後 半に ヨー ロ ッパ で 始 ま っ た言 語 教 育
改 革運 動 を 彷彿 と させ る。 国 境 を越 えた 人 々 の 往 来 が 盛 ん に な り、 交 易 、
植 民地 経 営 、 布 教 な どの 目的 の た め に生 きた 語 学 教 育 が 求 め られ る よ う
にな っ た時 代 に あ た る。 文 法 を覚 え 、本 を 読 ん だ り、 翻 訳 した りす るだ
けで は 、 目標 言語 の 運 用 力 が 十 分 に 身 に つ か な い とい う こ とに気 づ き、
他 の教 科 とは 異 な る教 え方 が 模 索 さ れ は じめ た 。 翻 訳 に頼 る間 接 的 な 方
法 をや め、 実 物 や絵 、 ジ ェ ス チ ャー な どに よ って 理 解 させ る よ うに す る、
いわ ゆ る直 接 教授 法 が 志 向 され た。 特 に 目 立つ の は子 ど もの 言 語 習得 に
着 目 し、 そ こ に ヒ ン トを 求 め よ う と す る 姿 勢 で あ る。 イ ギ リ ス のT.
Prendergast(1806∼1886)は
人 物 と され 、fど
子 ど もの母 語 習 得 過 程 を記 録 した 最 初 の
も は文 脈 や 状 況 を 手 が か りに して話 し言 葉 を理 解 して
コノ
い る こ と を 明 ら か に した 。 ま た 、 日本 語 教 育 界 に 言 語 教 育 改 革 の ヒ ン ト
を 最 初 に 与 え た の は フ ラ ン ス 人 のF.Gouin(1831∼1896)で
戦 争 に よ っ て 台 湾 を 領 上 に 組 み 入 れ た 日本 は1895年
あ る。 日清
か ら台 北 郊 外 の 芝 山
巌 で 日本 語 教 育 を 開 始 したが 、 当初 の 教 え 方 は台 湾 語 を 用 い た訳 読 法 で
あ り、 手 間 の か か る わ り にt分
な 成 果 を ヒげ られ な か っ た 。 そ の 後 、 第
2回 目 の 講 習 員 と して 赴 任 し た 山 口 喜 一郎(1872∼1952)が
試行錯誤の
末 、 当 時 日本 に紹 介 され て間 もな い グ ア ン式 教 授 法 を 応 用 した 、 直 接 法
に よ る 日 本 語 の 教 え 方 を 考 案 し た 。 た だ し、 グ ア ン 式 は 別 名 シ リ ー ズ ・
メ ソ ッ ドと も言 わ れ 、 動 詞 の 意 味 を さ ま ざ ま な動 作 の 連 続 に よ っ て 示 す
とい っ た 手 法 が 基 本 と な っ て い る た め に応 用 範 囲 も 限 ら れ 、 「
愚案」法 と
批 判 さ れ た こ とか ら も わ か る よ う に そ の ま ま で は あ ま り役 に 立 た な か っ
た。
第3期
に あ た る の は 、 現 在 の 言 語 教 育 と言 っ て よ い で あ ろ う 。 戦 後 、
言 語 教 育 の 主 流 と な っ た オ ー デ ィ オ リ ン ガ ル ・ア プ ロ ー チ を 批 判 す る 形
で1970年
代 に 登 場 し た コ ミュ ニ カ テ ィ ブ ・ア プ ロ ー チ の 考 え 方 は 、 コ ミ ュ
15
ニ ケ ー シ ョ ン能 力 の育 成 を言 語 教 育 の 目標 とすべ き だ と して い る。 「自然
的、 社 会 的 環 境 そ の ま まを 教 科 の舞 台 とな し」 とい う牧rlの 視 点 に は 、
学 習 者 の 生 活 環 境 を強 く意 識 し、 学 習者 が 学 校 で 学 ん だ こ とが実 生 活 で
生 か され るべ き だ とい う、 価 値 創 造 の考 え 方 で 貫 か れ て お り、 そ の 方 向
性 に共 通 性 を見 い だ す こ とが で き る。 さ らに 「
教 師 自 ら も其 の 中 の傍 観
的 補 導 者 と して 、 忠 実 に謙 遜 に被 教 育 者 直 接 の 経験 交 際 の媒 介 を なす 」
とまで 述 べ て い る点 は、 教 師 絶 対 の 教 育 が支 配 的 だ っ た時 代 に あ っ て、
「
学 習者 中心 」 が 叫 ばれ る現 代 の言 語 教 育 の あ り方 を先 取 り して い た と見
る こ とが で き る。
3.4.目 標 は 「知 識 の構 成 」 に あ り
牧 口 の教 育 改 造 論 で 注 目 す べ き も う一 つ の点 は 、 教 師 の 本 務 を知 識 の
供 給 で は な く、 「
知 識 構 成 の 指 導 」 に あ る と して い る と ころ で あ る。 「
知
識 は伝 達 し得 べ か らず 」 とい う ソ ク ラテ ス の 、
襟iを 紹 介 しなが ら、 従 来
の教 育 の弊 害 はL般
に知 識 の供 給 機 関 と誤 解 して居 る所 」(III:145)に
あ る と指摘 し、 「
被教 育 者 が 伝達 され る概 念 の表 現 符tt_f)た
るtI語 文章 に依 っ
て 、 自 ら そ の概 念 を 再 構 成 し得 る事 が 出 来 な けれ ば 、 絶 対 に伝 達 した と
は云 い得 な い」(III:146)と
述 べ、 これ に続 けて 「
知 識 構 成 」 を さ らに具
体 的に 「
知 識 構 成 指 導 の 意 義 は学 問 とい う内 面 生 活 の み に 限 らず 、 事業
とい う外 面 的 生 活 に も適 用 され る。 認 識 とい う知 識 の構 成 と同 じ心 意 の
働 きが 外 顕 して事 業 の 計 画 及 び そ の 実 行 等 の 創 造 的 生 活 に 発展 す るの で
あ る。」 と解 説 す る。 構 成 主 義 自体 は 牧 口独 自の もの とはriえ な いが 、 創
価 教 育 学 の 特長 は牧 口が 最 初 の著 作 『人 生 地理 学 』 で 「
人 生」(人 の 生 活)
と地 理 を 結 びっ け て捉 え た よ うに、 社 会 に 生 き る ・
個 の人間を育て ると
い う視 点 に 常 に立 っ て い る こ とで あ る。 さ ら に牧 口 は 「
半 日学 校 制 度 」
を唱 え 、 「
学 習 を生 活 の準 備 とす るの で は な く、 生 活 を しなが ら学 習 す る」
16
創造 的 日本語 教育 試論
(1:250)べ
きだ と述 べ て い る。 この考 え 方 を言 語 教 育 に適 用 す れ ば 、学
習 活動 を生 活 と 一
体 化 させ る よ うに努 め な けれ ば な らな い 。 広 い意 味 で
タス クや プ ロ ジ ェ ク トな ど に よ っ て言 葉 を 使 い なが ら学 ん で い く こ と も
この 中 に含 まれ るで あ ろ うが 、 仮 想 現 実 的 な も の に と ど ま らず 、 た とえ
教 室活 動 で あ って も学 習者 の 身近 な生 活 経 験 を活 性 化 す る こ とに よっ て、
主 体 的 な学 習 を促 し、 自 己の 意 思 や 感情 を 語 らせ て い くこ とが 求 め られ
る。
こ う した 考 え 方 か ら必 然 的 に生 まれ て くるの が 、 知 識 と運 用 力 の 区 別
で あ る。 牧 口は 「
教 育 の 目 的 を知 識 の 伝 授 に置 き、 之 が 手 段 と して 面 白
く教 授 す る もの と為 って 居 た従 来 の 教 育 の 根 本 的錯 誤 を指 摘 し、興 味 を
起 こ させ るの が 教 育 の 真 の 目 的 で あ り、 其 の 手 段 と して 知 識 を授 くべ き
で あ る」 とい うヘ ルバ ル ト派 の 主 張 を示 した 上 で 、 「
徒 に多 くの 知 識 を注
入 す る よ りは 自力 を以 て知 識 を な し、 且 其 れ を運 用 せ ん とす る原 動 力 た
るべ き興 味 を起 こ させ る」 こ とを 、 教 員 養 成 の 目的 とす る べ きだ と して
い る。 牧 口の 目指 す創 価 教 育 とは、 生 き た教 育 で あ り、 生 活 実 践 の 中 で
価 値 創 造 をす る こ とに あ っ た 。 そ の 思 索 は結 果 と して 、 知 識 の教 育 で 終
わ って は な らな い とい う結 論 に達 し、 ひ い て は 前 節 に示 した 、 第1期
の
教 育 は知 識 の伝 授 に と どま り、 価 値 を生 まな い とい う批 判 につ な が った 。
牧 口 は教 育 改 造 の 出発 点 と して 、 学 習 者 に とっ て価 値 とは何 か を 据 え、
「
知識の構成」 「
運 用 力 」 とい う角 度 か ら教 育 の あ り方 を捉 え な お そ う と
した ので あ っ た。
3.5.学 習 指 導 主 義
牧 口 は 上述 の 目標 を 達 成 す る た め に啓 発 主 義 、 学 習指 導 主 義 を提 唱 し
て い る。 そ の言 わん とす る とこ ろを整理 す る と、 次 の4点 に な る(r▽:68)。
1)学
習 や研 究 へ の 興 味 を喚 起 ・酒 養 す る こ と
17
2)自
分 の 力 で 知 識 す る こ との で き る方 法 を 会得 させ る こ と、 知 識 の
宝 庫 を 開 く鍵 を与 え る こ と
3)発
明 ・発 見 の 過 程 を 踏 ませ る こ と
4)環
境 に 対 して 価 値 を 見 い だ させ る こ と、 観 察 と理 解 と応 用 との方
法 を 会 得 させ る こ と
こ う した見 解 を示 した上 で 、 「
従 来 の教 育 で は、 知 識 を注 入 して お き さえ
す れ ば 、 入 用 の 際 は勝 手 に そ れ を利 用 す るで あ ろ うか ら、 構 わ んで もよ
い と考 え て居 た」 と分 析 し、 「
放 任 主 義 の 自然 教 育 と して 真 先 に 改 め な け
れ ば な らぬ 」 と述 べ て い る。 か つ て の外 国 語 教 育 に も、 文型 と単 語 を 詰
め込 む こ とが 教 師 の仕 事 、 あ とは学 習者 が 自分 で や るべ き こ と とい う意
識 が あ っ た よ う に思 わ れ る。 こ う した考 え 方 で は現 在 の 多様 な 日本 語教
育 に は もは や 対 応 で きな くな って い る。
牧 口(1937)は
、学 習 指 導 主 義 教 育法 を 主 張 す る根 拠 と して 、学 者 が
問題 を 研 究 して 真 理 を 発 見 し、 社 会 か ら認 め られ る ま で の過 程 と、大 衆
が そ れ を 信 じて 己 の 生 活 に応 用 す る過 程 とが 、 全 く逆 方 向 で あ る こ とを
意 識 す るべ きで あ る と論 じて い る。 研 究 過 程 を そ の ま ま踏 襲 して 教 え よ
う とす るの は 「
大 な る錯 誤 」 で あ り、 「
無 益 の 浪 費 」 と まで 酷 評 す る。 言
語 教 育 で も文 法 や 単 語 の 意 味 、 あ るい は 文 章 の 構 造 を知 識 と して 与 え る
だけで は 「
真 理 」 の段 階 に と ど まっ て い る こ とに な る。 ま して 類 義 語 や
関連 す る語 法 な どを必 要 以 上 に 示 す こ とは 、学 習効 果 を高 め る ど こ ろか、
場 合 に よ っ て は か え って 混 乱 させ る原 因 とな っ て し ま う こ と さえ あ る。
創 造 的 言 語 教 育 は 、 あ くまで 学 習 者 の 立 場 に 立っ て 、必 要 な もの を 精 選
し、 それ を実 際 に 活 用 で き る よ うに す る こ とに指 導 の 重 点 が 置 か れ な け
れ ば な ら な い。
牧 口は 学 習 指 導 主 義 に立 った ときの 教 師 の あ り方 に つ い て、 「
教師 は自
身 が 尊 敬 の 的 た る王 座 を降 っ て 、 王 座 に 向か う もの を 指 導 す る公 僕 とな
18
創造 的 口本 語教 育試 論
り、 手本 を 示 す 主人 で は な くて 手 本 に導 く伴 侶 とな る」、 「
子 弟 自身 が 知
識 せ ん とす る働 きの補 助 役 とな る」(IV:73)と
わ か りや す く述 べ て い る。
教 師 が生 徒 の 模 範 と して 絶 対 的 なLIL場に あ っ た 当 時 の教 育現 場 に あ っ て 、
この よ うな 態 度 で 教 育 に取 り組 ん だ 教 師 が どれ だ け い た の だ ろ うか 。 日
本 語 教 師 もい わ ゆ る 「
教 え る」 とい う姿 勢 を改 め 、 「
伴 侶」 「
補助 役」 と
して 、 上 記 の4点
を心 が け 、 生徒 に寄 り添 い 、励 ま して い くよ う努 め る
こ とが 、 学 習 指 導 主義 の実 践 で あ り、 人 間 主 義 の 日本 語 教 育 へ の 第 一 歩
とな る。
4.H.Eパ
ー マ ー と長 沼 直 兄
前 節 に示 した 牧 口の 考 え た 方 とは分 野 が 異 な る もの の 、 教 育 実 践 家 と
して 相通 ず る視 点 か ら言 語 教 育 の あ り方 を考 察 した の がH.E.パ
ーマーだ
と言 って よい 。 英 語 教 育 と小 学 校 教 育 とい う まっ た く異 な る立場 で 教 育
に取 り組 ん だ 二人 で あ るが 、 そ の 発 想 に共 通 点 が 見 られ る と こ ろが 興 味
深 い。1877年 に ロ ン ドンで 生 まれ たパ ー マ ー は 、牧 口 とは7歳 違 いで あ
るが 、 ほぼ 同 時代 を生 きた 英 語教 育者 で あ り、1922年 に45歳 で来 日 して
か ら、1936年 に帰 国 す る まで 学 者 と して 、 教 育 者 と して 最 も脂 の 乗 っ た
時 代 を 口本 の 英語 教 授法 改 革 に捧 げ た人 物 で あ る。 残 念 なが ら、 パ ー マ ー
の考 え 方 は 、 コ ミュニ ケ ー シ ョ ン教 育 よ り も英 語 の 文 章 を読 む こ とを重
視 す る当 時 の 日本 人 学 者 に は あ ま り支 持 され な か っ た 。 特 に英 語 教 育 の
中心 的指 導 者 で あ っ た 岡倉 由三 郎(1868∼1936)や
治(1865∼1943)等
ドイ ッ文 学 者 の 向 軍
か ら、厳 しい批 判 を あ びた ほ どで あ った 。 だ が 、 そ
の 理念 は長 沼 直 兄 に 受 け継 が れ 、 日本 語 教 育 に多 大 な 影 響 を与 え る こ と
にな っ た 。
19
4.1.運 用 力 の 教 育 へ
長 沼 直 兄(1941)は
「
言 語 の 習得 とい ふ の は要 す るに 言 語体 系 の 知 識
と之 を運 用 す る 能 力 を 具 備 す る こ と」 と し、 言 語 表 象 とそ の概 念 を 「
照
合 一一
致 」(意 味 を知 る)さ せ 、 さ らに 「結 合 合 体 」(運 用 に 熟 練 す る)さ
せ る こ とだ と論 じて い る。 ま た 、 「日本 語 教 授 法 講 義 」(長 沼1958)で
は
「
従 来 は体 系 に関 す る知 識 を教 え る こ とが 外 国 語 教 育 で あ る とい うよ うな
錯 覚 を持 っ て い た 」 と語 って い るが 、 これ はパ ー マ ー に 学 ん だ 考 え方 で
あ る。
長 沼 は東 京 高 等 商 業 学 校 を卒 業 後 、1922年 にパ ー マ ー等 と共 に英 語 教
授 研 究 所 を設 立 し、 理 事 に就 任 した 。 その 後 は英 語 教 科書 編 纂 な どを 手
伝 う一一方 で 、 米 国大 使 館 の 日本 語 教 官 に就 任 して か ら、 パ ー マ ー の 言 語
教 育 理 論 を 日本 語 教 育 に応 用 す る よ うにな っ た。 英 米 との関 係 悪化 に よっ
てパ ー マ ー が 帰 国 した 後 も戦 中 、戦 後 を通 じ て 日本 語 教 育界 に大 きな足
跡 を残 した 。 そ の 姿 勢 は 「
或 る本 の 内 容 だ け を訳 して 聞 かせ れ ば 語 学 が
習 え る もの と考 え て い た と ころ に非 常 な 間 違 いが あ っ た 」 と従 来 の 語 学
教 育 の欠 陥 を指 摘 しつ つ 、 「
語 学 の 先 生 とい う もの は 、 生徒 の練 習 の 手 伝
い を す る も の」 で あ るべ きだ と し、 語 学 教 師 の あ り方 に転 換 を 迫 る もの
であった。
4.2.解
説 型 授 業 か らの 脱 却 を
文 法 訳 読 法 は 、 文 法 解 説 と翻 訳 に よ っ て 外 国 語 教 育 を 行 お う と す る も
ので あ るが 、 これ は 言 い 換 えれ ば
「
解 説 型 授 業 」 と言 っ て よ い 。 だ が 、
創 造 的 言 語 教 育 、 生 きた 言 語 教 育 は 学 習者 に上 手 に解 説 す るだ けで は 実
現 で き な い 。カ ギ とな る の は、パ ー マ ー の 言 う規 範(code)と
あ る い は ク ラ ッ シ ェ ン の 言 う学 習(learning)と
運 用(speech)、
習 得(acquisition)の
違 い で あ る。 外 国語 学 習 とい うの は 、教 材 を翻 訳 して 、理 解 し、 暗 記 す
20
創造 的 日本語教 育試 論
れ ば よい とい う もの で は な い 。 重 要 な の は学 習 者 が 伝 え た い 内 容 を、 学
習 した 文型 や 表 現 を用 い て 、 話 した り、書 い た りで き る よ う に な る こ と
で あ る。 それ に は学 習過 程 その も の を生 きた コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に転 換
して い く こ とが肝 心 で あ る。 教 師 が心 が け るべ き こ とは 、 学 習 者 の生 活
環境 や 学 習 目標 に合 わせ て 、 そ の表 現 が使 わ れ るで あ ろ う場 面 を提 示 し
て、 ど う 言え ば よい か を考 え させ る こ とで あ る。 語 彙 や 文 法 、 あ るい は
内容 に と らわ れ 、 そ の 解 説 に時 間 を 費 や す よ う な授 業 は 、 あ るべ き 外 国
語教 育 とは 言 え な い 。 解 説 型 の授 業(事 柄 教 育)か
ら運 用 力 育 成(表
現
の教 育)へ の脱 却 が 求 め られ る所 以 で あ る。 言 い換 え れ ば 、 言語 教 育 の
焦点 を 「知 識 を 詰 め 込 む」 こ とか ら、 習 った こ とを使 い こ な す 「知 恵 を
育 む 」 こ とへ 転換 す る こ とで あ る。
5.牧
口 と国 語 教 育
『
人 生 地理 学』 の 著 者 と して 有 名 な牧 口だ が 、 若 い こ ろか ら国 語 教 育 に
も深 い 関心 を寄 せ て い た 。 きっ か け とな っ た の は 教 生 時代 の 体験 で あ る。
札 幌 師範 学 校(旧 北 海 道 師範 学 校)附 属 小 学 校 創 立 五 十周 年 記 念 と して
出版 され た 『五 十一
年 回 顧 録 』(1936)に
寄 せ た文 章 に は作 文 指 導 で 苦 労 し
た こ とが 綴 られ 、 それ が 「創 価 教 育 学 」 の全 編 を 貫 く中核 とな った と記
され て い る。 牧 「1の目 に は 地 理 と国 語 の 教 育 に 問 題 が あ る と映 って い た
よ うで あ る。 当時 の地 理 教 育 につ いて は 「
散 漫 不 統 一・な る知 識 屑 の 寄 せ
集 め」(1929:193)と
酷 評 す る一
一方 、 国語 教 育 に つ い て も 「
非 教 育 的偏 知
の教 育」 と批 判 して い る。 理 解 ・鑑 賞 させ る こ とが 中 心 とな って い た 当
時 の国 語 の授 業 につ い て、 「
思 想 内容 の表 現 法 の知 識 啓 発 こそ最 重 要 の 目
的 な り」(牧 口1937:16)と
し、 目的 が曖 昧 だ か ら方 法 も十 分 に研 究 され
て い な い と批 判 して い る。 た だ 教 科書 を読 ませ るだ け だ っ た り、 自 由 に
作 文 を書 かせ て添 削 す るだ けの 国 語 授 業 は 、 目的 も明 確 で な く、 こ れ と
21
い った 教 え方 もな い た め に教 育 効 果 も は っ き り とせ ず 、 牧 口 に とって 非
生 産 的 に見 え た の で あ ろ う。
5.1.文 章 の 科 学 的 研 究
牧 口が どの よ うな 考 え方 に基 づ い て 国 語 指 導 を 行 っ て い た か は、 読 み
方 指 導 ・書 き 方 指 導 の 研 究 の あ りか た につ い て論 じた 牧 口(1929)か
ら
うか が い知 る こ とが で き る。
文 全 体 の構 成 を 主 眼 とす る こ と に 目醒 め て、 達 成 方 法 を 講 究 しな け
れ ば な らぬ。 文 章 の 表 現 す る内 容 の 理 解 感 賞 の徹 底 に 一一層 の 努 力 を
要 す る は勿 論 で は あ るが 、 そ れ に も増 して 内容 を 表 現 す る方 法 上 の
研 究 を指 導 して 文 章 創 作 に資 す る様 に改 善 さ れ ね ば な らぬ 。 文 自体
の 直 観 と共 に 多 くの 他 の文 体 との 比 較 統 観 に よ っ て恰 も 自然 科 学 の
如 く文 章 の法 則 の 全 体 を抽 象 させ る為 め に は 、 各 要 素 た る語 法 句 法
井 に修 辞 法 等 の 自然 科 学 的研 究 が 工 夫 され な けれ ば な らぬ 。(p.19D
(下線 は筆 者)
この よ う に牧 口 は 一 人 の 小 学 校 教 師 とい う 立場 で は あ っ た が 、 文 章 の 科
学 的研 究 の 必 要 性 を 主 張 し、 自 ら独 自の 研 究 を行 うだ け で な く、 その 成
果 を 教 育 に応 用 して い た の で あ る。
5.2.「 文 型 応 用 主 義 」 の 作 文 指 導
牧 口 が 国 語 指 導 の 中 で も特 に 力 を 入 れ て い た の が作 文 教 育 で あ り、 そ
の独 自の 実践 を 「
文 型 応 用 主 義 」 と呼 ん で い る。 ただ し、牧 口の 言 う 「
文
型 」 とは前 節 に示 した 文 章研 究 の成 果 で あ り、 「
文 章 の 全体 を構 成 す る思
想 の 系統 的 排 列 並 に其 の連 結 手 段 等 を主 要 な る意 味 とす る」(牧 口1921)
とされ 、 日本 語 教 育 で 通 常 使 わ れ る 「
文 型 」 と は異 な る もの で あ る。
作 文 力 の 向 上 に読 書 は 欠 か せ な いが 、 本 を読 む だ けでk手
22
になるわけ
創造 的 日本語 教 育試論
で はな い。 当 然 、 暗 記 も役 に 立 た ず 、 自由 に書 か せ るだ けで は効 果 は 薄
い。 牧LIは 、 生徒 に 自 由 に作 文 を書 か せ て 朱 筆 で 直 す よ う な指 導 は 「不
経 済 な教 育 法 」 で あ る と主張 す る。 そ こで 、 牧 口 が 目指 した の が 読 解 と
_
,
作文 指 導 の 効 果 的 な連 携 で あ る。 この 考 え方 は若 い こ ろか ら抱 い て い た
もの で あ り、 す で に1898年
には 「
如 何 に して 読 書 と作 文 を連 絡 あ ら しむ
べ き乎 」 とい う論 文 を北 海 道 師 範 学 校 『同窓 会 雑 誌 』 に2回 に わ た って
発表 して い る。 そ こで は 「知 る と表 出 とは 同一事 項 の 表 裏 」(p.272)と
し、具 体 的 な指 導 案 も提 示 して い る。 中で も 日本 語 教 育 に そ の ま ま応 用
hf
で きる のが 「
改 作 」 で あ り、 次 の よ うな例 が 示 され て い る(p.275)。
(一う 同 一の思 想 を 異 な れ る言 語 を 以 て綴 ら しむ る事
(二)同
一の 文体 、 若 し くは類 似 の文 体 に よ り、 異 れ る意 味 を以 て綴
ら しむ る事
(三)言 語 及 思 想 を 変 せ ず して、 其 文 体 を変 ず る事
(1)語
句 の 順 序 を変 ず る こ と
(2)主
な る文 を従 な る文 とな す こ と
(3)直
接 の もの を間 接 とな し、 間 接 の もの を 直 接 とす る こ と。
(四)約 文 の 事
(五)敷 術 せ しむ る 事
これ は読 解 で 学 習 した こ とを 、運 用 力 育 成 につ な げ よ う とす るた め の さ
まざ ま な練 習 で あ る。 要 約 文 作 りが 読 解 指 導 に も作 文 指 導 に も有 効 で あ
る こ とはす で に 多 くの研 究 に よ って 明 らか に され て い る。 さ らに 同 じ 内
容 にっ いて 表 現 意 図 や 感 情 の 違 いで 表 現 が ど う違 って くる か を 考 え させ
た り、 視 点 や 立 場 を変 え て 文 章 を書 か せ た り、 あ るい は習 っ た 語 彙 や 表
現 を用 いて 関 連 す る トピ ッ ク につ いて 論 じ させ る とい っ た活 動 は、 中級
で伸 び悩 む 状 態(プ ラ トー)に 陥 っ た学 習 者 に は効 果 的 な 指 導 法 で あ る。
同年 に発 表 した 「
作 文 教 授 に っ きて 」(1898b)で
は指導手順 を 「
思想
23
の 表 出 」、 「
思 想 の整 頓 」、 「
文 章 の修 飾 」 の 三 段 階 に分 け 、 まず 「
思想の
開 発 」 を行 い 、 そ れ を単 文 レベ ル で 表 出 させ 、 次 の段 階 で 文 の 配 列 や連
結 な ど を考 え させ た 上 で 、 最 終 的 に よ りよ い表 現 へ と導 い て い く とい う
や り方 を示 して い る。
牧 口 の言 う 「
文 型 指 導 」 は 、 文 章 全 体 の 構造 を分 析 した う えで 、 そ れ
をモ デ ル と しな が ら身 近 な事 柄 につ いて 文 章 を書 かせ る、 い わ ゆ る談 話
展 開 の 型 を 意 識 化 させ 、 文 の連 接 や 視 点 な どに 関 す る知 識 や 技 術 を身 に
つ け させ る こ とを 意 図 した練 習 で あ り、 当時 と して は 斬 新 な指 導 法 だ っ
た と思 わ れ る0
5.3.「 応 用 範 文 」 と 作 文 指 導
牧 口(1898b)に
は 読 書 と作 文 を 結 び つ け る た め の 応 用 範 文 が 示 さ れ て
ア い る 。 そ の1つ
が 次 の も の で あ る 。 上 が 教 科 書 の 原 文 、 下が 応 用 範 文 で
あ る(P.311)。
人 の 、 世 に立 ち、 安 らか に生 を送 らん に は 、 先 づ 、 生 計 の道 を求 め
ざ るべ か らず 。 生 計 の 道 に は、 種 々 あ れ ど も、 その 身 に、 か なふ た
る とこ ろ の職 業 を え ら び、 正 実 に 勉 め は げむ を、 肝 要 とす。
(読 書:人
々 の 職 業)
我 父 は 此 世 に 立 ち安 らか に 生 を送 らん が為 に生 計 の道 を求 め 居 れ り。
生 計 の 道 に は種 々 あ る 内 に父 が 身 にか なふ た る○ ○ の職 業 に 毎 日勉
め 励 み 居 るな り。(作
文:我
が家 の職 業)
生徒 は教 科 書 の 原 文 と教 師 が 用 意 した 模 範 文 を 比 べ つ つ 、 自分 の 考 え を
ま とめ、 文 章 につ づ る こ とに な る。 後 年 、 模 範 文 を利 用 した指 導 にっ い
24
創造 的 日本語教 育試 論
て 、 牧[(1921)は
「
綴 り 方 教 授 の 科 学 的 研 究 」 と い う 論 文 で 、 次 の4
項 目 に 整 理 して 論 じて い る(p.399)。
一 、 模 範 原 文 の 解 剖 に よっ て 内 容 を な す思 想 の 排 列 、 そ の現 れ た 文
章 系 統 若 くは文 章 模 型 の 直 観 。…(読
み 方 教 授 に於 け る比 較
総 合 段)
二、 応 用 範 文 の 提 出、 及 び 原 文 と比 較 読 解 に依 る文 型 概 念 の 抽 出 並
に応 用 方 面 の探 求 奨 励 及 応 用 力 活 動 の鼓 吹 。…(読
み方教授
の 応 用 段 に して 綴 り方 教 授 の 発 足 点 即 ち 其 の 第 一一
次 的取 扱)
三 、 応 用 手 段 を指 導 し共 作 に依 る文 章 模 型 応 用 能 力 の 増 進 、 即 ち文
章構 成 の 会 得 。…(綴
り方 教 授 の第 二 次 的 取 扱)
四 、 児 竜の 自 由製 作 の奨 励 に よ る 文型 応 用 力 の 完 結 。…(綴
り方
教 授 の 第 三次 的取 扱 に して 、 読 方 教 授 の 応 用 段 の 真 の 完 了)
なぜ 手 間 の か か る応 用 範 文 を利 用 す るの か とい う と、 「
文 章 の脈 絡 系 統
に依 って 、 文 の骨 骸 を 会得 させ 、 次 に此 の形 式 が そ っ く り応 用 さ るべ き
別 内容 の 文 章 を教 師 が 作 っ て 、 その 形 式 に 当 て 嵌 め 、 これ を原 文 と対 照
して提 出 し児 竜 に此 の別 内 容 同 形 式 の二 文 章 を較 べ させ 」 る こ と に よ っ
て 、生 徒r1身 に相 違 点 や 共 通 点 に気 づ か せ 、 文 章 を綴 る と きに ポ イ ン ト
とな る部 分 を どの よ うに 活 用 す れ ば よ い か を 判 断 させ る の で あ る。 生 徒
は文章 を読 んで 内容 や 構 造 につ いて 理 解 した とい って も、 す ぐ に それ を
応用 して文 が 書 け るわ けで は な い。 応 用 範 文 に よ る支 援 は 大 い な る助 け
とな った はず で あ る。 日本語 教 育 に おい て も読 解 用 の文 章 を学 習 者 に とっ
て 身近 な 話題 や 場 面 で 教 師 が 改 作 して提 示 す る こ とは、 文章 の 内 容 よ り
も表現 法 に注 口 させ る こ とで 、 学 習者 の 自作 を 促 す こ とに な る。 ま た特
に興 味深 い の は 「共 作 」 で あ る。 教 師 は 「応 用 方 面 の着 眼 点 の 指 導 位 に
25
加 は るの み 」(p.398)と
され 、 教 師 と生 徒 、 あ る い は生 徒 同 上が 互 い に
意 見 や ア イ デ ア を 出 し合 う形 で 文 章 を推 敲 させ よ う と して い る。 生 徒 の
意 欲 や 創 造 性 を引 き 出 す た め に ピ ア ・ラー ニ ン グが 有 効 で あ る こ とは、
近 年 盛 ん に 言 わ れ る よ うに な っ た が 、 作 文 指 導 と 言 えば 添 削 して 優 劣 を
評 価 す る こ とが 主 流 の時 代 に 、 牧 口 はす で に協 働 学 習 的 な活 動 を取 り入
れ て い た の で あ る。
こ の よ うに 牧 口の 国 語 指 導 は 、 生 徒 の 目線 に立 ち 、 何 が 必 要 か を考 え
た 上 で 、 細 か く段 階 的 に組 み 立 て られ て お り、 どの よ うな 生徒 で も その
ス テ ッ プ に した が って い け ば 、 上 手 な作 文 が 書 け る よ うに 綿 密 に計 算 さ
れ て い る こ とが 分 か る。 こ う した 取 り組 み は、 効 果 的 な 日本 語 教 育 の あ
り方 を考 え る と き、 た いへ ん 参 考 に な る。
日本 各 地 で現 在 、 日常 会 話 は で き るの に学 校 の勉 強 が わ か らな い とい
う外 国 籍 児 童 に ど う指 導 す れ ば よい か が 問 題 に な っ て い る。漢 字 を 覚 え
させ る とか 、 教 科 書 を読 ませ る とい っ た 対 応 だ け で は 、効 果 的 に 子 ど も
た ち の学 習 言 語 能 力(CALP)を
育成 す る こ とは難 しい。 学 習 言 語が なか
な か 身 につ か な い 子 ど もた ち の指 導 に お い て 、 こ う した 手順 を踏 ん で 、
一 つ 一 つ 考 え る訓 練 を して い く こ とは 、 生 徒 の 思 考 力 を滴 養 す る こ とに
つ な が る。 読 解 と産 出 活 動 を連 携 させ るた め に牧 口が 示 した指 導 案 は 、
効 果 的 な 目本 語 教 育 に つ な が る に違 い な い 。
5.4,明 治 か ら 昭和 に か け て の 国語 教 育
学 制 が 発布 され たの は牧 口生誕 の 翌年1872年
で あ るが 、 その ときは 「
国
語 」 とい う名 称 の科 目は な く、 綴 字 、 習 字 、 会 話 、 読 本 、 文法 な どに細
分 化 され て いた 。 使 わ れ て い た 日本 語 も漢 文 調 の もの で あ っ た。 前 節 に
示 した牧 口の 作 文 指 導 例 は そ う した時 代 の もの で あ る。 そ の た め 当時 の
8)
国語教 育 は、 「
不 完 全 な 国 語 の重 荷 」 を 負 わ さ れ 、 「
乱 雑 困 難 極 まれ る」
26
創造 的 日本語教 育試 論
とまで 言 わ れ る状 態 で あ っ た。 特 に 作 文 教 育 は 「
諸 学 科 中 の難 事 と して
考へ られ 、 これ を授 け る 人 も、 これ を学 ぶ 児 童 も、 と も に大 な る 困 難 を
重ね な が ら も、 あ ま りよ い成 績 を得 な か った 」 とい う声 に代 表 さ れ る よ
エ
け
うに教師 も生徒 も苦 しん で い た。 「
国 語」 とい う名称 で 統合 され たの は1899
年の 「小学 校 令 施 行 規 則 」 の 改 正 に よっ て で あ り、 標 準 語 が ほ ぼ確 立 し、
その 普 及 を 日指 した 「イエ ス シ 読本 」 と呼 ばれ る 国定 教 科 書 『尋 常 小 学
読 本』 が初 めて 使 わ れ た の は1905年
の こ とで あ る。 これ に よっ て 「
言文
lul
… 致 」 に近 い 国 語 教 育 が 可 能 に な っ た と も 言 え る。
当 時 は ち ょ う ど作 文 教 育 に大 きな変 化 が 見 られ た時 代 で あ る。 波 多野
(1961)の 区分 で は、 綴 り方 を伝 統 的 な 文 型 か ら解 放 しよ う と した 「
浪漫
的 時代 」 か ら盛 ん に 教 授 法 が 工 夫 さ れ た 「
啓 蒙 的 時 代 」 に 該 当 し、 芦 田
恵 之 助(1873∼1951)と
友 納 友 次 郎(1878∼1945)の
問 で 作 文指 導 法
をめ ぐっ て激 しい 論 争 が 繰 り広 げ られ た ころ(1918∼1922)で
もあ る。
芦田は 「
随 意選 題 」 作 文の リー ダー で あ った 。 牧 口 も1918年
ご ろ綴 り方
指 導 に関 す る研 究 発 表 を 元 町 小 学 校 で行 い 、 芦 田 等 と論 争 に な っ た とい
うが 、個 性 尊 重 自由 発 表 主義 を支 持 す る 勢 力 が 主 流 だ っ た た め に 「
衆寡
敵せ ず 」 とい う状 況 だ っ た よ うで あ る(牧 口1936)。 芦 田 は 「
綴 り方教 授
の 意義 は、 即 ち 児 童 の 実 生 活 か ら来 る必 要 な題 目 に よ って 、 発 表 し な け
IU
れ ば な らぬ境 遇 を作 り、 こ こ に児 童 を置 い て実 感 を 綴 らせ る」、 「随 意 選
題 は、 余 は綴 り方教 授 の骨fで
あ る と思 っ て ゐ る。 こ こ に於 て 文 に対 す
る真 の興 味 を感 じ、 向L発 達 の 工 夫 を体 得 し、綴 り方 教 授 の真 生 命 は げ
12)
に こ こよ り開 け始 め る」 と 子 ど もが 実 生 活 で体 験 した こ とを 自 由 に 書 か
せ る こ との重 要性 を 語 って い る。 また、 「
綴 方教 授 の帰 着 点 」(芦 田1916)
では 「
随 意 に選 題 し随 意 に 記述 す る と、 そ こ に発 動 的 の 学 習 態 度 が わ い
て来 る。(中 略)巧 な る記 述 に接 して は、 とつ て もつ て 他 目の 参 考 に しよ
う と記 憶 す るや うに な る。 こ こに 至 って 綴 り方 は 甚 だ し く教 師 の 力 を 要
27
せ ず して 、 発 達 を遂 ぐ るの で あ る」 と生徒 の 目々 の 意 識 変 化 も成 果 と し
Lit
て 自賛 して い る。 これ に は教 科 書 で 使 わ れ る 日本 語 の 文 体 が 漢 文 調 か ら
現 代 標 準 語 に 徐 々 に近 づ い て きた こ とに よ り、 生 徒 が 見 た こ とや 感 じた
II)
こ とを 自 由 に 書 か せ る こ とが 可 能 に な っ た とい う背 景 もあ ろ うが 、 作 文
が 苦 手 な生 徒 や嫌 い な生 徒 に 対 して どれ だ け効 果 が あ っ た の か 明 らか で
は な い。
一
一
一方 、 反 対 派 の 代 表 と され る友 納 は 「
児 童 が好 む に まか せ て 、 雑 然 と
材 料 を提 供 し、 唯 綴 らせ さ え す れ ば それ で 進 歩 す る もの で あ る と云 うや
うな 考 へ 」 は破 壊 しな けれ ば な らぬ と主 張 して い る。 牧 口 も 「
作文訂正
の 自然 的 教 授 法 や 、 随 意 選 題 課 題 な どの 枝 葉 末 節 で は 少 数 の 秀 才 で な い
限 りは いつ 迄 た って も纏 っ た文 章 は書 けな い」(牧[1929:190)と
厳 しく
批 判 して い る。 作 文 を 書 くの に 自発性 や 創 意 が 重 要 な こ とは 当 然 だ が 、
そ こに は計 画 的 な 指 導 も同 時 に求 め られ る。
た だ し、 随 意 選 題 とい って も芦 田 は た だ 自 由 に書 かせ て い た わ けで は
な い。 芦 田(1913)は
「
指 導 は 自作 の 力 を発 達 させ るが た め に 行 ふ 作 業
で あ る。 故 に指 導 を また な い 自作 は、 た とへ ば 自然 に放 任 した植 物 の や
うな もので 、 生 長 は す るが 、 美 花 ・美 果 を収 め る こ とは 出 来 ぬ」(p.129)
と述 べ 、範 文 を読 ませ た り書 き写 させ た り して か ら 自 由 に書 かせ る こ と
も行 っ て い る。 牧 口 と芦 田 の 作 文 指 導 は 、 い ず れ も児 童 の生 活 に 関連 づ
け た指 導 を 目指 した もので あ り、 違 い は力 点 の 置 き方 にあ る と思 わ れ る。
芦 出 は書 かせ る前 に 自分 で 考 え させ る こ と と、 書 か せ た後 の 「
批 正」 を
重 視 して い る。 基 本 は 知 能 の 発 達 に応 じて 作 られ た トピ ック ・シ ラバ ス
と言 え る。 学 年 が 上 が るに つ れ て 指 導 を減 ら し、 自作 と処 理(批
正 ・推
敲)を 増 や して い く こ とに な って い る。 指 導 項 目 と して 文 の連 接 や 縮 約
敷 術 、 文 の 結構 な どが 挙 げ られ て い るが 、 あ くまで 生 徒 の書 い た もの に
出 て き た もの を 取 り一
ヒげ て 指 導 す るの で あ る。 だ が 牧 口 は 書か せ る 前 に
28
創造 的 日本語教 育試 論
考 え させ る と同 時 に、 応 用 範 文 を 科 学 的 に分 析 し、 書 く と きに 文 章 の ど
うい う点 に気 をつ け て 書 け ば よい か を事 前 に指 導 し よ う とす る 。 この よ
うなや り方 を、 生 徒 を枠 に は め る もの と否 定 的 に と ら え る の か 、 それ と
も表 現 力 を豊 か にす るた め の 技 術 指 導 と と らえ るか の違 い で あ ろ う。 「自
我 の確 立」 「
個性 を伸 ば す」 な ど と言 って 、 自 由 に書 か せ て 添 削 す る だ け
で は効 果 的 指 導 はで き な い 。 添 削 が 効 果 的 な文 章 指 導 に な か な か つ なが
らな い こ とは 日本 語 教 育 で も大 きな 課 題 とな っ て い る。 ど う書 け ば よ い
のか も分 か ら な い ま ま 書 か され るの は、 生 徒 に と って 苦 痛 で あ る。 外 国
人で あれ ば、 な お さ らの こ と 日本 語 の 文章 を ど う綴 れ ば よ い の か を 計 画
的 に指 導 して い くこ とが 必 要 で あ る。
5.5.「 技 術 」 と 「
法 貝1」
」 の調 和
コ ミュニ カテ ィ ブが もて は や され た 時 代 に は 、文 型 ・文 法 軽 視 の 風 潮
が強 か った 。 だが タス クや 場 面 、 あ る い は トピ ッ クを中 心 に 口本 語 を使 っ
た活 動 を す るだ けで は、 発展 性 や 応 用 性 が な い。 個 々 の 生 活 場 面 に 応 じ
て、 あ る場 面 で ど う い う話 し方 が適 切 か とい う こ と も、 自然 な会 話 力 を
育て るた め に は重 要 で あ ろ うが 、 それ だ けで は普 遍 性 の 乏 しい教 育 となっ
て しま う。
牧 口は 「技 術 」 と 「
法 則 」 に つ い て 次 の よ うに論 じて い る。 こ こで い
う 「
技 術 」 とは実 際 の運 用 、 「
法 則 」 は文 型 ・文 法 に関 す る知 識 と読 み 替
え る こ とが で き る。
技 術 と法 則 は夫 々 互 い に 背反 性 を 有 す るか の よ うに 解 され て い る。
「
法 則 に 囚 わ れ て居 る間 は生 命 あ る活 躍 はで き な い」、 「
形 式 に拘 泥 し
て は 実 際 に 応 用 が 旨 くさ れ ぬ 」、 「文 法 な ど顧 慮 して い て は文 章 が 書
け る もの か 」 等 の 思 想 は皆 そ の 表現 と見 られ る。(中 略)な
るほ ど方
法や 形 式 を教 わ った とて 、 直 ち に 技 術 が 向 上 す る もの で な い に は相
29
違 な い。 け れ ど も方 法 の 学 問 的 考 察 な しに、 コ ツ コツ技 術 の練 習 だ
けを した な ら、 非 常 な る努 力 と労 力 との 徒 費 を要 す る と思 わ ね ば な
らぬ 。」(IV:261-262)
牧 口 は 『創 価 教 育 学 体 系 』 の 緒 言 で 「
教 育 の 経 済 化 に よ っ て、 能 率 が
増 進 され ね ば な らぬ 」(1:9)と
述 べ て い る。 効 率 的 ・効 果的 な教 育 を行
うた め に は、 「
技 術」 と 「
法 則 」 の両 立が必 要 で あ る。 前述 の よ うに牧 口
は 自然 的教 授 法 に批 判 的 だ っ た 。 言 語 教 育 も文 型 ・文 法 を機 械 的 に教 え
るだ けで は画 一的 な も の とな り、 退 屈 な授 業 とな っ て し ま う。 一・
方 、場
面 や トピ ッ クで 自由 に話 させ た り書 か せ た りす る こ とで 、 流 暢性 は伸 び
るか も しれ な い が 、 表 現 力 が豊 か に な るわ けで は な い。 高 度 な 技 術(言
語運 用 力)を 身 に つ け る に は、 牧 口 の指 摘 す るよ うに時 間 と労 力 がか か っ
て し ま う。
PISA(OECD学
習 到達 度調 査)で 優 秀 な成 績 を収 めて 有名 にな った フ ィ
ン ラ ン ドの 言語 教 育 は 、 説 明 文や 物 語 な どの 文 章 の 基 本 的 な型 の違 い を
徹 底 的 に た た き込 み、 そ れ を使 っ て 書 かせ た り、 読 ませ た りす る こ とか
I!J
ら始 ま る と い う。 文 型 や 文 法 を 押 しっ け る と不 自 然 な 日 本 語 に な る とか 、
創 造 性 を奪 う とい うよ うな考 え方 は見 直 す べ きで あ る。 基 本 を踏 ま えて
こ そ 、 個 性 も創 造 性 も 伸 ば す こ とが で き る 。 文 法 教 育 を 再 評 価 す るfocus
onformが
言 わ れ る よ う に な った の も、 行 きす ぎた コ ミ ュニ カ テ ィ ブ 主
義 へ の 反 省 に ほ か な ら な い。
6.創
造 的 日本 語 教 育 へ 向 けて
長 沼(1958)は
語 学 と他 の 教 科 との違 い につ いて 「ほ か の暗 記物 な ら
生 徒 が 自分 で で き る が 、 練 習 を 与 え る こ とは 教 師 で な くて は で きな い。」
と指 摘 し、 続 いて 自 分 が受 けた 英 語 教 育 に つ い て 「
ず いぶ ん お も しろ い
話 を私 共 は きい た が 、 け っ き ょ くそれ だ け で 、 ち っ とも 英語 自体 は教 え
30
創造 的 口本語教 育 試論
られ た 気 が し な い 」 と 感 想 を 述 べ て い る 。 英 語 を 教 え る こ と(Teaching
English)と
英 語 に つ い て 教 え る こ と(TeachingaboutEnglish)は
違
う と 言 わ れ る こ と が あ る が 、 外 国 語 に 関 す る 知 識 を 得 る こ と と、 そ の 外
国 語 を身 に付 け る こ との 違 い を 明 確 に しな け れ ば な ら な い。
6.1.学 習 者 に考 え さ せ る
これ まで さ ま ざ ま な 言 語 を 母 語 話 者 に習 っ て きた 経 験 か ら言 え る こ と
は、教 え る技 術 の な い教 師 ほ ど説 明 に頼 ろ う とす る とい う こ とで あ る。
それ も必 要 以Lに 難 しい 言葉 で 抽 象 的 な説 明 を す るた め に、 学 習 者 を混
乱 させ た り、 時 間 の 浪 費 を した りす る。 だが 、 説 明 を聞 い て い るだ けで
は学 習者 は受 け身 で あ り、 何 か を その 言 語 で 言お う とは考 え な い し、 運
用 で き る よ う に は な らな い 。
人 は何 か 発LYす る と き、 まず 言い た い こ とが 頭 に あ る。 次 に そ れ を ど
う言 お うか と考 え、 文 に 作 り、 音 声(文 字)と
して 表 現 す る。 つ ま り、
言 い た い こ とが な けれ ば 、 人 は 話 そ う とは しな い 。 教 師 が 例 文 や 本 文 を
読 んで 、 復 唱 させ る こ とは 、学 習 者 が 伝 え た い こ とを 持 っ て い な い 時 点
で、 学 習 効 果 がLが
らな い もの とな って しま う。 役 割 を決 め て モ デ ル 会
話 を演 じ させ て も 同様 で あ る。 覚 え た セ リフ は 、 あ くまで そ の場 限 りの
もので あ る。 一方 、 学 習者 に 自由 に話 させ る だ け で は教 育 に な らず 、 表
現力 の 向kは あ ま り望 め な い。 牧 口(1898b)は
「
心 意 に未 だ存 せ ざ る も
の を無 理 に も之 を引 き 出 さん とす る もの あ らば之 れ 不 合 理 に あ らず して
何 ぞや 。 人 は無 よ り有 を生 ず る能 は ず 」(p.308)と
述 べ て い る が 、 口頭
表現 にせ よ、 文 章 表 現 にせ よ、 表 現 し よ う とい う意 欲 、表 現 す べ き内容 、
適 切 な表 現 法 の いず れ が 欠 け て も効 果 的 な産 出 練 習 に は な ら な い 。 これ
は初 級 で も中 上級 で も 同 じ で あ る。
31
願﹀ー
6.2.「 開 示 悟 入 」 と発 問
関 多
係
タ
解 説 型 授 業 か ら脱 す る に は 何 が 重 要 か 。 梶 田
(2009)は 、 教 育 に は教 師 主 導 の 「
出 」 と、教 師 が
ツ
ケ
ノレ
問 学
後 ろ に いて 生 徒 主 体 に 活 動 させ る 「入 」 が あ る と
す る 自身 の 考 え 方 と、 牧 口が 法 華 経 を も と に教 授
法 に取 り入 れ た 「開 示悟 入 」 を結 び つ け て 論 じて
い る。 教 師 が 教 材 の世 界 を生 徒 に開 いて 示 す 「
出」
④評
価
の段 階 と、 生徒 に実 感 させ る 「
悟 」 の段 階 が 「
入」、
そ して最 後 に 自 由 自在 に 応 用 で き る よ うに な る段
①
\生
活
活
の
〆生
⑤
階 は 「出」 と 「
入 」 の両 面 が あ る とい う。 これ は
予 備 ・提 示 ・比 較 ・統 合 ・応 用 とい うW.Reinの
五 段 教 授 法 を も と に 、 評 価 ・直 観 ・思 考 ・評 価 ・
牧 口のメモ よ り
応 用 と い う独 自 の 五 段 教 授 法 を 提 唱 した メ モ に 示
さ れ た も の で あ る 。 牧 口 の 問 題 意 識 は 真 理 と生 活 を ど う や っ て 結 び つ け
る か に あ り、 右 の 図 と と も に 示 さ れ て い る 。 こ の う ち ③ と④ は
相 当 す る。 ま た、 「
応用」 は
この
「
悟 」に
「創 価 」 に 位 置 づ け ら れ る 。
「
開 示 悟 入 」 の考 え方 は言 語 習得 に もあ て は ま る もので 、 気 づ き
か ら始 ま り、 理 解 や 思 考 を 経 て 長 期 記 憶 に 組 み 込 ま れ 、 ア ウ トプ ッ トで
き る よ う に な る 過 程 と見 る こ とが で き る 。 こ れ を 具 体 的 な 実 践 で 考 え る
と最 も重 要 な の は 、 学 習 者 へ の 働 き か け 、 発 問 で あ る 。
授業の前作業 は
「
開 」 に あた る。 これ か ら扱 う教 材 の 内容 や 学 習 項 目、
あ る い は 与 え よ う とす る タ ス ク に ス ム ー ズ に 取 り組 め る よ う に 興 味 を 喚
起 す る発 問 で あ る。 学 習 に必 要 な 知 識 や 情 報 の不 足 が あ れ ば 、 ギ ャ ッ プ
を 補 う作 業 に つ な が る もの で あ る。 「
示 」 は 一 方 的 な 教 授 に な らず 、 学 習
者 の 気 づ き を 促 す 発 問 で あ る 。 そ れ は 時 と してL.Festingerの
知 的 不 協 和(cognitivedissonance)」
32
い う 「
認
と呼 ば れ る も の を 作 り出 す 。 既
創造 的 日本 語教 育試論
成概 念 や 思 い 込 み に 疑 問 を抱 か せ 、 先 入 観 を ゆ さぶ る もの で もあ る。 常
識 だ と思 っ て い た こ とが 、 そ うで は な か っ た とか 、 自分 とは関 係 な い と
思 って い た こ とが 、 実 は身 近 な もの で あ る と気 づ くだ けで 大 きな違 い が
出 る。 特 に 相 づ ちや フ ィ ラ ー な どは 教 えた か ら使 え る よ うに な る もの で
はない。 学習 者が 「な るほ ど」 「こ うい うふ うに使 うのか 」 と納得 す る 「
悟」
につ なが る発 問 、 さ らに使 え る よ う に して い くた め の 「
入 」 の段 階 に導
くた め には 生 徒 同 士 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョンや 実 生 活 で の 活 用 を促 す よ う
な発 問 、 さ ら に は 自分 の意 見 や 気 持 ち を 言葉 に して 表 現 す る こ と を促 す
発問 へ と考 えて い か な けれ ば な らな い 。
6,3.発 問 の 機 能
「
発問 」 とい う 一
一語 で表 され る もの に は、 さ ま ざ ま な ものが あ る。 入 門
期には 「
名前 は?」 「
何 時 で す か」 とい うよ うな単 純 な もの に よ っ て、 基
本 的 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 訓 練 を しな が ら、 語 彙 や 表 現 を 少 しず つ 増
や して い く こ とが 中心 とな る。 それ は音 楽 な ら楽 器 の 弾 き方 、 絵 画 な ら
絵 の具 や 筆 の使 い方 の基 本 的 な訓 練 に似 て い る。 教 師 は課 題 を与 え、 生
徒 が何 か を しな け れ ば な ら な い状 況 を作 っ て い るわ けで あ る。 言 語 を使
う場 、 言 語 の プー ル を 自 ら作 り出 し、 そ こで 学 習 者 を泳 がせ る こ とだ と
も言え よ う。 発 問 の仕 方 に よ って は浅 い プ ー ル 、 深 い プ ー ル 、 流 れ の あ
る プー ル に もな る。
発 問 に は学 習 者 相 互 の 問 いか け、 あ るい は 学 習 者 自 身 の 自問 も含 ま れ
る。教 師 の発 問 を 手 本 に しなが ら、 学 習 者 は 自 ら問 う こ とで 思 考 を 活性
化 させ る。 教 師 の 発 問 も常 に完 壁 な 文 で あ る必 要 は な い 。 質 問 文 の 一一
部
を聞 い て 、意 図 を 察 し、 言 わ れ な か っ た 部 分 を推 測 させ る こ とは構 文 力
や応 答 力 の 養成 につ なが る。 学 習者 間 の や り と りは心 理 的 負 担 も軽 減 さ
れ、 活 発 な もの に な りや す い。 入 門 期 か ら その 言 語 を用 い て 働 き か け 、
33
情 報 を得 た り、 交 渉 した り、 欲 求 を実 現 した り とい う活 動 は言 語 習 得 に
不 可 欠 で あ る。 他 の 学 習者 の 発 言 や 書 い た もの か ら学 ぶ こ とは少 な くな
い 。 た だ し、 同 じ こ との繰 り返 し に な っ た り、 化 石 化 につ なが るお それ
も あ る の で 、 常 に新 た な 目標 や 課 題 を明 確 に して 進 め て い か な けれ ば な
ら な い。 読 解 や 聴 解 に お け る 自問 に よ る問 題 意 識 の 高 ま りは、 中 上 級 で
は理 解 を深 め るだ けで な く、 意 見 や 感想 を ま とめ て 発表 した り、 デ ィベー
トを した り とい った 活 動 に 直 結 す る。
良 い 言 語 教 師 は 、 ヴ ィゴ ッ キ ーの い う 「
最 近 接 領 域 」(ZPD)で
教師 と
他 の 学 習 者 との 相 互 作 用 を通 じて 学 べ る よ うな授 業 計 画 に基 づ い て 話 す
工 夫 が で き る教 師 だ と言 え る。説 明 して 理 解 させ るだ けで は 学 習 者 の 運
用 力 を伸 ば す こ とはで きな い。 外 国 語 教 授 の成 否 は 、 説 明 にあ るの で は
な く、 どの よ うに 使 わ せ な が ら学 ばせ るか に あ る。 適 切 な イ ン プ ッ ト、
ス キ ャ フ ォ ー ル デ ィ ン グ に よっ て 、 学 習 者 の思 考 を 活性 化 させ 、 表 現 を
引 き出 す こ とで あ る。
6.4.学 習 者 の 中 で 作 り上 げ られ る言 語
デ ュ ー イ(1938)は
「どん な に 多 くの 生 徒 た ち が 、 経験 させ られ た と
い う学 習 のや り方 ゆ え に、 どれ ほ ど学 習 意 欲 を失 っ た こ とか 。 どれ だ け
多 くの 生 徒 た ち が 、 自動 的 な反 復 練 習 に よ っ て特 殊 な 熟 練 を 習 得 した も
の の 、 それ だ け に 生 徒 た ち の判 断 力 や 新 しい場 面 に応 じて の 知 的 行 動 力
が 、 どれ ほ ど制 約 を うけ た こ とか 。 どれ ほ ど多 くの 生徒 た ち の 学 習 の 過
程 が 、 倦 怠 と退 屈 な もの に 結 び つ け られ て しま っ た こ とか 。」(pp.32-33)
と、 反 復 に よ る 知 識 の 詰 め込 み が 生 徒 の 自主 性 を制 約 し、創 造 性 を 失 わ
せ て い る と批 判 して い る。 言 語 教 育 で は こ の点 が最 も重 要 で あ る。 言 語
とは だ れ か に与 え られ る もの で は な く、 学 習 者 自 らが相 互 作 用 を 通 じて
自分 の 中 に作 り上 げ て い く もの で あ る。 文法 や 単語 を 覚 え た り、 教 科 書
34
創造 的 口本語 教育 試論
を理解 す るだ けで は身 にっ か な い理 由 が こ こに あ る。教 科 書 を1つ の きっ
か け と しな が ら、 で き るだ け身 近 な生 活 環 境 に即 して 、 自 ら考 えて 発 話
す るよ う、 周 囲 に働 きか け る よ うに促 して い か な けれ ば な ら な い。 そ れ
に よっ て学 習活 動 は そ の ま ま生 き た社 会 とな り、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン の
場 とな っ て い く。 そ の と き、 は じ め て真 の コ ミ ュニ カ テ ィ ブな 言語 教 育
が 可能 とな る。
教 科 書依 存 の授 業 、 教 科 書 解 説 型 の 授 業 で は こ うい う こ とは で きな い 。
教 師 は支 援 者 と して生 きた 日本 語 の 海(環 境)を
学 習 者 の まわ りに作 り
あ げ る こ とで あ る。 口本 語教 室 は 学 習 者 の 多様 性 の ゆ え に、 同 じ状 況 は
2度 と生 まれ な い と言 っ て も過 言で は な い。 だ か ら こ そ成 長 し続 け る教
師が 求 め られ る。 常 に 知 恵 を しぼ り、 工 夫 を重 ね る こ と以 外 に授 業 を活
性 化 させ 、 教 育効 果 を高 め る道 は な い 。 創 造 的 日本 語 教 育 に は これ をや
りさ えす れ ば よ い とか 、 こ こ まで や れ ば よ い とい う終 着 点 は な い 。 それ
ぞれ の 学 習 者 の 能 力 や 背 景 、 目的 や 環 境 な どに配 慮 しなが ら、 絶 え ず 学
習者 に とって 最 高 の 環 境 で あ るべ く努 力 を重 ね て い く中 で 築 か れ て い く
もので あ る。
7,お
わ りに
大 著 で あ る 『創 価 教 育 学 体 系 』 の 全 容 につ い て論 じ る こ とは本 稿 の 目
的で は な い。 また、80年 前 とい う時代 の制 約 の 中で 生 まれ た もの で あ り、
現 代 の教 育学 か ら見 れ ば 時 代 に 合 わ な い記 述 や 不 十 分 な点 もあ る。 だが 、
時代 を先取 りした 内 容 と方 向性 は ます ます その 輝 きを増 して い る 。 長 年
にわ た る教 育 実 践 の 中 で 磨 き 上 げ られ 、 結 晶 化 した そ の 理 論 は、 教 育 の
本 質 に根 ざ して い るが 故 に、 一人 の 生 徒 の 人 生 の幸 福 を 常 に考 え続 け た
もの で あ るが 故 に、 そ して 共 存 共 栄 の 平 和 な社 会 の実 現 を 目指 した もの
で あ るが 故 に 、 教 育 の あ り方 に つ い て 考 え る者 に とっ て 知 恵 と発 想 に あ
35
ふ れ た宝 の 山 で あ る。 そ こ に は学 習 者 の幸 福 とい う 目的 の た め に献 身 す
る教 師 、 そ れ を具 現 化 す るた め の 最 高 の技 術 を 求 め 続 け る教 師 の姿 が あ
る。
牧 口 は創 価 教 育 学 に つ い て 「
知 識 の詰 め込 み 主 義 な どの 一部 分 的 教 育
に安 ん ぜ ず 、 利 と善 と美 の価 値 の 総 合 た る幸 福 生 活 の 指 導 を以 て 教 育 の
目的 と し、 そ れ を達 す る に 当 た って 認 識 、 鑑 賞 等 の 智 、 情 の 働 き に低 迷
せ ず 、価 値 創 造 とい う全 体 的 活動 を させ る様 に指 導 」(IV:137)す
るこ と
を企 図 した と述 べ て い る。 知 識 の た めの 知 識 、 い わ ゆ る死 ん だ 知 識 に終
わ らせ る こ とな く、 教 育 技 術 を駆 使 して 学 習 者 の生 き る力 を育 み 、 社 会
の 中 で 価 値 創 造 で き る よ うに す る こ と、 それ が 牧 口 が 目指 した 「
児童の
幸 福 」 を 目 的 とす る、 創 価 教 育 の 精 神 を生 か した 言語 教 育 と言 え るの で
は な か ろ うか 。 言 語 を学 ぶ こ とは 、 母 語 にせ よ、 外 国語 にせ よ、 そ れ は
社 会 で 生 き て い くこ と と直 結 して い る。 しか もそれ は 知 識 や 技 術 を学 ぶ
手段 で あ る と と も に、 学 習 者 の 思 考 や 価 値 観 に も大 きな影 響 を 与 え る。
言語 教 育 は社 会 や政 治 と密 接 な 関 係 が あ る た め に、 同 化圧 力 とな っ た
り、 抑 圧 や 差 別 の 手段 とな る こ と もあ る。 日本 語 教 師 は 常 に そ の こ とに
iHi
留 意 す る必 要 が あ る。 宏 文 学 院 で 留 学 生 教 育 に携 わ っ た こ とが あ る牧 口
は、 口清 戦 争 の 前後 で あ った に もか か わ らず 、清 国 留 学 生の 信 頼 が厚 か っ
た とい わ れ 、 教 え子 に よ って そ の 著 書 『人 生 地 理 学 』 は 中 国 で翻 訳 ・出
版 され た 。 異 言 語 ・異 文 化 の は ざ まで 格 闘 す る 日本 語 教 師 は 指 導技 術 を
磨 くと と も に、 人 格 価 値 の 育 成 に携 わ る者 と して 知 行 合 一の 高 い道 徳 性
が 求 め られ る。 言 語 ・文 化 ・民 族 な どの 差 異 を乗 り越 え 、 あ くまで一 人
一・
人 が 幸 福 を実 現 し、平 和 で 心 豊 か な 多 文 化 ・多 言 語 共 生 社 会 を築 くこ
とにつ な が る 日本 語 教 育 で な けれ ば な らな い 。
創 価 教 育 学 の 実 践 に は 絶 対 的 な完 成 形 は な い 。 それ は牧[が 残 した課
題 で あ り、 時 代 や 社 会 の 変 化 、 諸 科 学 の進 歩 に つ れ て 常 に変 化 、 発 展 さ
36
創 造 的 日本 語教 育試 論
せ て い くべ き もの で あ る。 言 語 教 育 の あ り方 も今 後 、情 報 通 信 ⊥ 学 、 認
知 科学 な どの 発 達 とと もに 、変 わ っ て い くで あ ろ うが 、学 習者 の 「
伴侶」
たれ との 牧[の 精 神 を忘 れ る こ とな く人 間 主 義 に根 ざ した 創 造 的言 語 教
育 への 道 を模 索 して い き た い。
【
注】
1)岡
崎 ・他(2003)な
ど参 照 。
2)TheMasteYyofL≪iagisage.(1864)
3)「 半 口学 校 制 度 」 は職 業 教 育 を意 図 した もの と誤 解 され やす いが 、 牧GI(1929)
は 「
所 謂 職 業 教 育 に は遺 憾 な が ら反 対 す る」、 「ケ ル シ ェ ンシ ュ タ イ ナ ー 氏 な
どの 作 業 教 育 に も 尚 ほ これ を姑 息 の 策 とす る」(p.181)と
熊 谷(1994)は
述 べ て い る。
「
学 校 教 育 の 社 会 生 活化 」 と 「
生 涯 教 育」 に主 要 な ね ら い が
あ っ た と して い る 。(p.233)
4)ク
ラ ッ シ ェ ン(1985)の
イ ン プ ッ ト仮 説 以 降 、 多 読 の 効 用 が 言 わ れ るが 、
文 法 構 造 や 語 彙 、 発 想 な どが 異 な る言 語 的 に 遠 い 関 係 に あ る外 国 語 で は 意 識
的学 習 が 不 可 欠 で あ る。
5)読
書 と作 文 を 結 び つ け た 教 育 は 牧 口 に 限 らな い が 、 効 果 的 な指 導 法 が 課 題
で あ っ た。 若林 虎 三 郎 ・白 井 毅(1883)『
改 正 教 授 術 』 で は 、 復 文 的 方 法 と自
作 的 方法 が あ る とい うが 、 見 るべ き効 果 が 少 な い と述 べ て い る。(石 井1983:69)
6)「 改 作 」 とい う名 称 につ い て は 、 牧[(1929)で
「
所謂 改作法 なる名称 は同
一 内容 の 文 章 を 別 形 式 の 組 み 立 て に改 め る こ と に使 用 さ れ て 居 る様 だ か ら こ
れ とは 区別 した い 」(p.400)と
述 べ て い る よ うに 、 「文型 」 と同 様 に 誤 解 さ れ
る こ と も 多 か っ た よ うで あ る。
7)『 北 海 道 用 尋 常 小 学 読 本 』(1898)の
こ とに な って い るの で 、4年
巻7第2課
。 全8巻
を4年
間で教 え る
生 前 期 用 とい う こ とに な る。 原 文 で は
「
かなふ
た る と こ ろ」 で は な く 「
か なふ と こ ろ」 とな っ て お り、 読 点 の位 置 な ど も 一
一
部 異 な っ て い る。
8)ド
平 末 蔵(1901)。
9)堀
越 源 次 郎(1901)。
石 井(1983:120)の
石 井(1983:131)の
引用。
引用 。
10)ラ ジ オ や テ レ ビが 普 及 す る前 の 日本 で は 標 準 語 を 耳 に す る こ と も難 し く日
37
常 言 語 は 方 言 で あ り、 本 当 の 意 味 の
エ ス シ 」 は/i/、/e/、/u/の
「
言 文 一 致 」 に は ま だ ほ ど 遠 か っ た 。 「イ
発 音 矯 正 を 意 図 した もの で あ る。
II)石
井(1983:179)の
引用 。
12)石
井(1983:185)の
引川。
13)石
井(1983:186)の
引用。
14)芦
出(1913)は
「綴 り 方 を 困 難 な ら し め て ゐ た 事 実 は 、 明 治34年
除 去 せ ら れ て し ま っ た 。 手 枷 ・足 枷 は な く な っ た 。」(p.112)と
15)石
井(1983:182)の
16)出
中(2010)な
17)当
時 使 わ れ た 訳 語 は さ ま ざ ま で あ る 。 石 井(1983)に
引 用。
ど を 参 照 の こ と。
織 綜 ・統 合 ・応 用 」、 「予 備 ・授 与 ・聯 合
統 括 ・応 用 」、 「
準 備 ・提 供
18)1905年
以来全 く
述 べ て い る。
の 弘 文 学 院(後
よ る と、 「
準 備 ・提 示 ・
・結 合 ・応 用 」、 「準 備 ・排 列 ・連 絡 ・
・聯 合 ・概 括 ・応 用 」 な ど の 訳 が あ っ た と い う。
に 宏 文 学 院 に 改 名)の
職 員 名簿 に牧 口 の 名 前 が あ る。
【
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