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日本におけるCCS付き石炭火力発電のライフ サイクル
電力中央研究所報告 環 境 日本におけるCCS付き石炭火力発電のライフ サイクルアセスメント(その2) -太陽光発電、地熱発電との環境影響比較評価- キーワード:ライフサイクルアセスメント,特性化評価,CO2 回収・貯留, 報告書番号:V13021 太陽光発電,地熱発電 背 景 CO2 回収・貯留(CCS)は、CO2 大幅削減技術として国内外で注目されている一方、 先行研究では、地球温暖化以外の環境影響を増加させる可能性が示唆されている[1]。ま た、我が国では CO2 排出量に関する技術間の比較研究はあるが、他の環境影響に関する 知見は少ない。今後、CCS 技術の導入可否を議論する際には、我が国で想定される導入 条件での様々な環境影響、および技術間における相対的な位置づけを把握しておくこと が重要である。 目 的 CCS 付き石炭火力発電の環境側面の特徴を明らかにするため、複数の低炭素エネルギ ー技術を評価できる枠組みを構築し、ライフサイクルにおける影響を比較評価する。 主な成果 CCS 付き石炭火力発電、および比較対象として太陽光発電(PV)と地熱発電のデータ を収集し(表 1)、ライフサイクルアセスメント手法を用いて評価した。 1. 技術別の特性化評価 1)結果(図 1) 各影響領域に相対的に大きく寄与する要因は、CCS の場合、人間毒性・富栄養化・酸 性化には CO2 回収段階で用いるアミン系吸収液(monoethanolamine: MEA)の製造およ び使用時劣化に伴う酸化エチレンと NH3 の排出[1]であった。PV の場合、光化学オキシダ ント・富栄養化には基板化段階(パネル製造)での直接排出物質、酸性化等には製造段 階(システム化とモジュール化)での金属(アルミ・銅・鉄) 、鉱物資源消費には銀であ った。地熱発電では全影響領域で掘削と建設に使用する資材とエネルギー消費であった。 2. 技術間の特徴比較(図 2) 単位発電量当たりの特性化影響量を基準技術(CCS 無しの石炭火力発電)と相対比較 した結果、今回の推計条件ではいずれも地球温暖化以外の影響領域で増減の両面が見ら れ、その程度は技術間で異なることが明らかとなった。CCS の場合、MEA の製造と劣 化に由来する富栄養化・人間毒性・酸性化の特性化影響量が約 10~10000 倍増加した(最 大理論値) 2)。PV では、土地改変面積・鉱物資源消費・富栄養化・廃棄物の特性化影響 量が約 5~500 倍大きく、それ以外は小さかった。地熱発電では、影響領域全般において 小さかった。 今後の展開 今回考慮していない CCS における CO2 漏洩リスク等を評価した上で、低炭素エネル ギー技術の合理的な導入シナリオの構築に適用していく。 表 1 評価対象とライフサイクルにおけるデータ収集の概観 ライフサイクル 対象技術 燃料 資材 設備製造 ・組立 発電 ・運用 廃棄 ・リサイクル 超々臨界圧(USC)微粉炭火力 発電 (基準技術)_1000MW ○ ○ ◎ △:解体時廃棄物 CCS付きUSC (MEA吸収液; パイプラインと船舶輸送) ○ △:MEA製造に一部理論 値を使用 △:MEA劣化に一部 △:解体時廃棄物とCO2 理論値を使用 漏洩 太陽光発電 (多結晶Si)_10kW ○ △:工場製造時の排出物 ○ 地熱発電 (フラッシュ)_50MW ○ ○ △:主な直接排出物 △:解体時廃棄物 △:リサイクル時の排出物 注)資材、エネルギー消費量に関するデータは収集したが、直接排出される環境負荷物質量のデータに関しては、 ◎:網羅した; 〇:主な物質は網羅; △一部未考慮(表に未考慮物質を記載)。 CCS 技術 CO2貯留 CO2輸送 CCS 液化・貯蔵 CO2回収 技術 MEA製造 石炭灰処理 発電施設 燃焼発電 石炭輸送 石炭採掘 CCS付きUSC (船舶輸送) 100% 75% NH3 NH3 50% 酸化 エチ レン 25% 太陽光発電 (現状リサイクル) 0% 100% 75% 廃棄処理 輸送 発電 システム化 モジュール化 セル化 基盤化 金属Siの製造 銅、鉄 50% アルミ 25% 銀 トルエン BOD キシレン COD 全窒素 0% 100% 解体 発電 輸送 建設 調査 地熱発電 75% 50% 25% 0% 地球 温暖 化 酸 都市域 光化学 富栄 生態 人間 性 大気汚 オキシ 養化 毒性 毒性 ダント 化 染 廃 棄 物 土地 改変 鉱物 資源 消費 化石 資源 消費 図 1 特性化結果におけるライフサイクル段階別の内訳 特性化 1.E+04 影響量 1.E+03 が大 CCS付きUSC (船舶輸送) 1.E+02 1.E+01 1.E+00 太陽光発電 (現状リサイクル) 1.E‐01 地熱発電 特性化 1.E‐02 影響量 が小 1.E‐03 地球 温暖 化 酸 性 化 都市 域大 気汚 染 光化 富栄 学オ 養化 キシ ダント 生態 人間 毒性 毒性 廃 棄 物 土地 鉱物 化石 改変 資源 資源 消費 消費 注)縦軸は基準技術(CCS無しの石炭火力発電)の特性化影響量を1とした場合の変化率を表す。 図 2 影響領域毎の特性化結果の比較 注 1)様々な環境影響に対する各環境負荷物質の寄与率を考慮し、影響領域別の特性化影響量を示す手法。 注 2) 今回はデータが入手可能な MEA を対象として試算したが、実際には MEA 以外の吸収液や、CO2 回収方法も多々開発されているため、選択する要素技術によっても結果は大きく異なる。 関連研究報告書 [1] V12012「日本における CCS 付き微粉炭火力発電のライフサイクルアセスメント」 (2013.5) 研究担当者 湯 問い合わせ先 電力中央研究所 環境科学研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] 龍龍(環境科学研究所 環境化学領域) 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI 平成26年5月発行 13-017