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国連国際法委員会における 「国家の国際犯罪」 概念の取

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国連国際法委員会における 「国家の国際犯罪」 概念の取
Kobe University Repository : Kernel
Title
国連国際法委員会における「国家の国際犯罪」概念の取
扱いについて : クロフォード第一報告書をめぐる議論を
中心に(Who Killed Article 19? : Or Other Different
Categories of violations of International Law)
Author(s)
酒井, 啓亘
Citation
国際協力論集,7(1):143-163
Issue date
1999-06
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00182905
Create Date: 2017-04-01
1
4
3
国連国際法委員会における
「国家の国際犯罪」概念の
取扱いについて
はじめに
国連国際法委員会 (ILC) では、国家責任
に関する法典化作業が 1
9
5
0
年代から行われて
おり、今日の作業に直接つながるのは 1
9
6
3
年
にアゴー(R.Ago) が特別報告者に指名され
ークロフォード第一報告書を
めぐる議論を中心に一
て以降のものである1)0 ILCは
、 1
9
8
0
年まで
に第 l部3
5ヶ条の条文案について第一読を終
了、これを暫定的に採択し、その後、第 2部
第3
6-53条、第 3部第54-60
条及び二つの付
9
9
6
年までに第一読を終えた 2
)。
属書も順次 1
j
画 井啓
百牢
この問、特別報告者はアゴーからリップハー
ゲン (
W.Riphagen)、アランジオ・ルイス (
G
.
へと交代し、現在は 1
9
9
7
年の
はじめに
Arangio
・
Ruiz)
I クロフォード第一報告書の概要
会期で第二読の特別報告者に指名されたクロ
E 国連国際法委員会におけるクロフォード
J
.Crawford) がその任にある 3)。
フォード (
第一報告書の審議状況
1 クロフォード第一報告書をめぐる議論
2 特別報告者による妥協案の提出と
委員会での討議
E 若干の考察
l 第1
9
条削除提案をめぐる議論の評価
2 今後の課題
おわりに
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における法典化作業とその評価について、安藤仁介
「国家責任に関するアマドール案の一考察一一「国
際的な基本的人権」と「国際標準主義Jの関係につ
いて一一J 田 畑 茂 二 郎 先 生 還 暦 記 念 変 動 期 の 国
際法J(有信堂、 1
9
7
3年) 277-308
頁、参照。
2) ILC条文草案第一読終了後のテキスト全文について、
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51.また各条文に関する
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ILCのコメンタリーについては以下のような邦訳が
ある。村瀬信也監訳 国家責任jに関する条文草案
注釈(ー)(二・完 )
J立教法学2
3
巻
、 2
4
巻 (
1
9
8
5
年)
152-221頁
、 141-252
頁。川崎恭治・丸山珠里共訳
国家責任」に関する条文草案注釈第二部ならびに
第三部 国際法委員会暫定草案第二部およびリップ
ハーゲン草案第二部ならびにリップハーゲン草案第
三部ー」修道法学 1
4
巻 1号 (
1
9
9
2
年) 1
5
9ー1
9
7
頁
。
植木俊哉・湯山智之・坂本一也共訳
国家責任J
に関する条文草案注釈一国際連合国際法委員会
(
ILC) 暫定草案第二部第二章 第三部及び附属書
ー(ー)(二)(三・完 )
J法学6
2
巻 2号
、 4号
、 5号(19
9
8
年)277-314
頁
、 611-640
頁
、 801-824
頁
。
3)なおアランジオ・ルイスが特別報告者を辞任した理
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国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
1
9
9
8年から第二読で審議されることになっ
論の平面において大きな物議を醸してきた。
た全6
0ヶ条の条文と二つの付属書からなる条
のみならず、この条文は、事実上一次規則を
文草案には、周知のように、アゴーが取り入
考慮に入れ、また国家の国際犯罪の効果とそ
れた法典化アプローチや国家責任法の内実に
の実施形態について多辺的な法関係を予定す
関する彼の立場が色濃く反映されている。と
ることから、国家責任法の枠を越えて国際社
りわけ、、国際法上の規則及びその義務内容の
会の構造というより大きな問題にまで議論の
問題と、その義務違反の結果の問題とを分け
射程を延ばしうるものとなるため、国際法学
(いわゆる一次規則と二次規則の区別)、後者
のみを責任の領域として審議の対象としたこ
全般にわたる関心の対象となっている。
ところで、特別報告者クロフォードは、 1
9
9
8
とは、それ以前の国家責任に関する法典化作
年に提出した第一報告書において、このよう
業での方法論との決別を意味するとともに、
に大きな議論を呼んできた条文草案第四条を
責任分野における一般性、抽象性の高い規則
削除するというドラスティックな提案を行っ
の定立を求めることにつながっており、現在
)。同条の維持には、これまでも批判的な
た5
の条文草案にもその特徴が現れているといえ
見解が ILCの内外を問わず表明されてきた
よう。その他、国家の違法行為に作業対象を
治判、第二読の官頭でその是非があらためて
限定することや、過失の問題を二次規則での
真正面から議論されることになったのである。
審議対象から除外することなどもアゴーの特
国家責任に関する江C の作業は、順調に進
別報告者時代に決定されており、その後の作
めば2
0
0
1年までに第二読を終えることになっ
0
年代から 7
0年代にかけて
業は、このように 6
ており、その問、条文草案が実質的に再検討
定められた路線を既定のものとして歩んでき
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以上と同じく、アゴーが導入し、その後の
法典化作業の方向性を規定づけている条文の
ーっとして、
「国家の国際犯罪」概念を定め
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L<ごでの議論については、大森正仁「国家の国際犯
罪と国際責任一国際法委員会の法典化作業を中心に
J法学研究59巻 3号
0986年) 21-67
頁、吉野宏
美「国家責任法における『国家の国際犯罪 J-集団
責任の問題を中心として」本郷法改紀要 N
o.30994
た条文草案第四条がある。国家の国際犯罪と
単なる国際違法行為(もしくは国際不法行
為)とを区別するこの条文は、違法行為国の
補償義務を中心とする一元的な伝統的国家責
任理論から誰離することから、国家責任一般
年) 393-397頁、参照。 S
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国連国際法委員会における「国家の国際犯罪j概念の取扱いについて
1
4
5
されることになる 7)。その最初の段階で国家
書の中で、 I
L
C条文草案第四条、ならびに国
の国際犯罪と国際不法行為という区分を放棄
1
家の国際犯罪に関する効果を規定した同第5
する提案がなされたことにより、これが法典
-53
条の削除を委員会に勧告した。この報告
化作業の根幹に関わる部分の問題でもあるこ
書は、冒頭で国家責任に関するこれまでの
とから、その対応によっては特に条文草案第
I
L
Cの作業を概観し、ついで、第一読を終えた
2部に大きな影響を与えることになろう。
条文草案について各国政府から寄せられたコ
本稿は、条文草案第四条削除提案に関する
メントをまとめ、一次規則と二次規則の区別
クロフォード第一報告書の内容と、 1
9
9
8
年
といった一般的論点に言及した後、
I
L
C第5
0
会期に行われた同報告書をめぐる議
国際犯罪一国際不法行為Jという二分法アプ
論の状況を整理・紹介することでこの問題の
ローチの是非を検討して、最後に条文草案第
論点を明らかにし、これらを踏まえて将来の
l部第 l章を考察するという体裁をとってい
作業に何らかの示唆を提供することを目的と
る。本稿の目的との関連から、ここでは同報
する。なお本稿における考察では I
L
C第5
0
告書の内容について第四条削除の勧告に至る
会期での議論を中心としており、条文草案第
部分を中心に簡単に確認しておくことにした
1部第 2章以降の議論は次会期に持ち越され
し
、
。
「国家の
ているため、これを検討の対象から外さざる
特別報告者はィ上述の二分法アプローチが
「国家の国際犯罪J概念
1
9
7
6
年に正式に導入されて以降、第四条その
の取扱いに関する総合的な評価は、その後の
L
Cで本格的な議論が行
ものの存続に関し I
検討に委ねられなければならず、その意味で
われたことはこれまでなかったとして、そう
本稿は一つの覚書とでもいうものにすぎない
した議論を行うことの重要性を強調するとと
ことをあらかじめお断りしておきたい九
もに、このアプローチの可否自体も第二読で
を得ない。従って、
再検討の対象となるという立場に立つ 9)。
I ク口フォード第一報告書の概要
特別報告者クロフォードは、その第一報告
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における国家責任の法典化作業の概観について、山
田中正「国連国際法委員会第五 0会期の審議概要」
7
巻 6号 (
1
9
9
9年) 641-647
頁参照。
国際法外交雑誌9
8) 筆者は、外務省のご厚意により、 1
9
9
8
年 4月2
0日か
ら 6月1
2日までジュネーヴの国連欧州本部で開催さ
LC第5
0会 期 の 会 合 を 日 本 政 府 オ ブ ザ ー パ ー
れた I
LC
として傍聴する機会を得るとともに、山田中正 I
委員、および外務省条約局法規課の長岡寛介課長補
佐、福烏功事務官その他の方々から様々なご助力を
いただいた。ここに記して感謝の意を表したい。
条文草案における国家の国際犯罪の取扱い
では、まずこの概念の定義の不明確さを指摘
する。もっとも、こうしたこと自体は従来よ
り批判されている点でもあり、特に目新しい
ものではない 10)。また国家の国際犯罪の効果
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についても、第4
0
条 3項はこの概念に特有の
のこうした特別報告者の総括には注意すべき
効果ではないとか、あるいは懲罰的損害賠償
点があるといわなければならない。
なども規定されていないため ll)、結局のとこ
国際犯罪」概念に対しては嫌悪感を表明して
ろ第 2部と第 3部で定められている「国家の
いても、国家責任の一般レジームの中に、国
国際犯罪j の効果は犯罪概念の価値からみて
際義務の種類や違法行為の性質に従って差異
名ばかりのものにすぎないと結論し、その不
ある効果を持ち込むべきであるとする国家が
十分性を批判している 12)。
なお存在していたことを十分に評価していな
次に国家の国際犯罪に関する各国政府のコ
r
国家の
いように思われるからである 14)。国際義務(違
メントからは、次のようなことが導き出され
反)に応じた差異ある責任レジームの容認は、
るという。(i)第四条は国際法の法典化で
「国家の国際犯罪j という用語の拒否と必ず
「漸進的J発達であり、国際犯罪概
しも矛盾するものではなく、むしろ議論の出
はなく、
念が既存の法と実行に強い基礎を置くと考え
る国家はほとんどない、
(i)第四条 2項お
よび 3項での国際犯罪の定義はさらに明確に
発点となる視座を提供しているものといえ、
(v) においてその趣旨が生かされていたの
か疑問なしとしない。しかもこの考え方は、
(
ii
i
) 国際犯罪とそれ以外
実際に、後にみるような第四条削除提案をめ
の違法行為との区別に由来する効果について
ぐる賛成派と反対派の妥協点を示唆するもの
は、国際社会全体の立場を考慮せずに個別国
でもあった。
する必要がある、
家が対応すると困難を生じさせる、
(
i
v) 国
家責任法が民事責任でも刑事責任でもなく、
国家の刑事責任をめぐる現行国際法につい
て、特別報告者によれば、個人の刑事責任を
(v) 国
認めた判例は存在するが、国家の国際犯罪を
際社会の利益を害するもっとも重大な違法行
認める判例はなく、最近の安保理による措置
為と個別国家の利益を侵害する違法行為との
に関して、基本的規範の違反に対するもので
区別は支持するものの、国家の犯罪という用
はあるが、国家を処罰するためのものではな
語はミスリーデイングであり、そうした区別
い。また「平和に対する脅威j概念の拡大傾
に犯罪と不法行為という用語を用いるべきで
向はみられるが、第四条の意味での国際犯罪
はない 13)。
概念に依拠したものではないという
国際責任であることではほぼ一致、
しかし、各国政府からのコメントについて
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.懲罰的損害賠
償について、大森正仁「国際法における懲罰的損害
賠償の意味」法学研究67
巻 6号(1
994
年) 1-24頁
参照。国家責任法への導入に消極的な見解として、
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国連国際法委員会における「国家の国際犯罪j概念の取扱いについて
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かに国家の国際犯罪の存在認定に安保理が否
が二つの異なる責任レジームを生み出すこと
定的態度をとっているという事実は、現時点
になるわけではなく、国際犯罪と国際不法行
の国際社会における「国家の国際犯罪」概念
為との区別を表すことにはならないという
。
1
8
)
の地位を示唆するものであろう。また国連憲
以上の検討から、 ILCはもっとも重大な国
章第 7章に基づく措置と国家責任の実施手段
際違法行為に適用される責任レジームについ
の関係については、学説からも「国際の平和
て何らかの示唆を与えることを回避しており、
と安全」のレジームが有する自律性を重視し、
この問題は完全にオープンのままである、す
国際違法行為の効果、とりわけ国家の国際犯
べての国際犯罪、もしくはすべての国際不法
罪の効果とはみなされないという強い主張が
行為それ自体が単一のレジームに服するわけ
存在する ω。しかし、国際犯罪概念の内実を
ではなく、違反に際して特定の規則が特別の
どう考えるかはともかく、第 7章に基づく措
効果を用意する可能性は存在する、すべての
置には国際違法行為に対する国際社会の集団
国際違法行為に適用される単一の基本的な国
的な対応の一形態としての側面もみられると
際責任レジームを確立し、それに国際犯罪を
いう考え方もあるのであり 17)、その発展の方
構成する違法行為について特別の効果を付加
向性を選択肢のーっとして考慮する必要はあ
するというアプローチが、国際犯罪の効果の
ろう。
決定の際に採用されている、ということが導
また第一報告書では、国家の国際刑事責任
き出されている則。
と既存の法概念、すなわち傭人の刑事責任、
こうした考察を踏まえて報告書では次に、
国際法上の強行規範そして対世的義務との関
国家の国際犯罪についてとりうる五つのアプ
係についても触れられている。特別報告者に
ローチが順次検討されている。まず、現在の
よると、一般国際法の分野では規範の階層性
条文草案をそのまま採用するというアプロー
がみられ、基本的な実体的規範の重要性が単
チについては、従来1
から批判されていること
なる程度の問題ではなく、質の違いとして認
ではあるが、国際犯罪に関する適切なシステ
識されているが、そうした規範の性質の違い
ムを確立していないとしてこれを退ける 20)。
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国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 1号
違法行為という概念を導入するというアプロ
まま国際社会においても妥当すべきである
ーチでは、違法行為について別個のカテゴリ
(が、現在の状況はそれを満たすものではな
ーをもうけるか否かの二通りが考えられるが、
い)という立場に立った特別報告者の批判は、
いずれも採用できないという。別個のカテゴ
国際社会に特有の「犯罪」概念が存在すると
リーを作らず、単に国際法のもっとも重大な
いう主張を真っ向から否定するものだからで
違反を指す場合には、賠償や対抗措置といっ
ある 22)。
た段階的に作用するレジームでそうした違反
こうした囲内的アナロジーに由来する発想
に適切に対応することが可能であり、条文草
は、国家の国際犯罪の可能性そのものを否定
案第 2部はすでにこの段階性を反映したもの
してしまうアプローチへの評価にも反映され
となっている。また別個のカテゴリーを作る
ている。たとえば報告書では、法システムの
とすれば、既存の国際法では対世的義務と強
発展につれて政策の問題として法人の刑事責
行規範の二つの可能性があるが、これらでは、
任という考え方の導入が必要となる場合もあ
外交免除の侵害のようにもっとも重大な違反
るとされているのであり、可能性を示唆する
に対応しない場合が出てくるからである。対
にとどめているとはいえ、ここには圏内法人
世的義務違反や強行規範違反の効果を第二部
と国家の類似性ならぴに責任レジームの進化
でより体系的に整備することは必要だが、こ
型としての法人責任導入が前提とされている
うした整備が複数の別個の責任レジームを創
からである 23)。いずれにしても、特別報告者
設することにはならないと述べる 21)
は、侵略行為のように国家実行での支持があ
さらに国家の刑事責任を認めるアプローチ
るものもあり、国際犯罪と国際不法行為の区
については、こうした責任レジームが成立す
別を支持する国家もなお存在するため、国家
るための条件として、囲内刑法からの類推に
の国際犯罪の可能性を全く排除してしまうこ
より、罪刑法定主義、国際社会全体を代表す
とは困難であると分析している 24)。
る適切な調査手続、デュー・プロセス、犯罪
こうして残るアプローチは、国家責任の非
の認定に際して国際社会を代表する適切な制
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となる。特別報告者によると、国家の犯罪行
あげている。そして、これらの条件を条文草
為を扱う一貫したシステムは、現在のところ、
案は規定していないとして、このアプローチ
も退けている。しかしこの点は、いわゆる囲
内的アナロジーの問題を提起するであろう。
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手続的にも実体的にも欠如しており、条文草
ても、異なる認識のもとに用いられていたこ
案がこのギャップを埋める見通しもない。他
とには注意しなければならない。
方で、条文草案には対世的義務や強行規範を
適切に反映させる必要があるという。
以上のような検討の結果、特別報告者は、
「国家の国際犯罪j 概念の承認は国際法の発
第四条削除賛成の立場からは、国際法上の
国家責任が囲内法上の刑事責任とは異なると
いう点を主張するために、国家責任の「国際j
的な面が強調された。しかし削除賛成派の中
展において大きな段階を画するものであり、
でも、国家の主権平等と単一の責任レジーム
この概念や国際法秩序におけるその意味づけ
を重視する委員はむしろ国家責任の「民事
について条文草案は予断を与えるものであっ
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てはならないことを強調しつつ、第四条と第
対してお)、国際社会と国内社会の構造上の違
51-53条を削除するよう勧告するという結論
いや 27)、一次規則聞における重要性の差異と
に至ったのである 25)。
その二次規則への影響に注目する委員は、国
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内法上の責任とは異なる「特別な (
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第一報告書の審議状況
generis)J責任と理解していたのであるお)。
他方、第四条削除反対派は、国際犯罪と国
クロフォード第一報告書をめぐる議論
際不法行為の二分法を維持するために、単一
こうした特別報告者からの勧告を受けて、
の責任レジーム導入につながる民事責任的性
ILCの本会議では、第四条削除賛成派と削
格付けには極力反対したが、刑事的性格の評
除反対派とが真っ向から対立する図式となっ
価については委員によって議論が分かれてい
た。ただ委員の主張にはそれぞれ幅があり、
る。そこでは、国家に刑事罰(制裁)を科す
すべての論点で各陣営が一つにまとまってい
べきという見解と、あくまで国家責任は刑事
たわけではない。
的なものではないという見解が対立したから
国家責任の法的性質については、各国政府
である。前者では、国際法において犯罪が存
のコメントと同様に、 ILCにおいても、国家
在するとすれば国内刑事システムとの類推が
責任が民事責任でも刑事責任でもなく、国際
除外されるべきではないとして、刑罰的要素
責任であるという主張が広くみられた。もっ
とも、今回の議論では、この「国際」責任と
いう意味が、第四条削除賛成派と反対派との
聞で、さらにはそれぞれの陣営の内部におい
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国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
をそこに含めるべきだという意見も表明され
詳しく検討されるであろうが、今会期におい
ている 29)。これに対して後者も、国家の国際
て抽象的な議論ながらも各委員とも一致して
犯罪を国内法における犯罪とは異なる概念と
いたことは、国家の国際犯罪概念を条文草案
みなすとともに、その概念に関する圏内的ア
中で認めるとしても、その効果を規定する第
ナロジーを重視してはいるが、国際社会と圏
2部の関連条項の内容が明らかに不十分なも
内社会の相違を理由に、囲内法上の犯罪概念
のであるということであった。これは、第四
を国際法の平面に持ち込むことはできないと
条削除反対派においても否定しがたい事実と
して、前者とは逆の結論を導き出す却)。この
して受けとめられており 3D、こうした両陣営
ため後者の主張は、国内法上の犯罪概念との
に共通の認識は以下の点を明確にするもので
混乱を回避することを理由として、国家の国
あったといえる。
際「犯罪j という名称、にあえてこだわる必要
第一に、こうした認識を共有する委員は、
はないという議論にもつながるのであり、第
国家責任法の枠内で国際社会全体の利益への
四条削除賛成派ではあるが二次規則の段階性
侵害を考えていた。 ILCは、国家責任を伝統
を許容する委員の主張と一部重なり合うもの
的な二国間関係でとらえることはもはやでき
となったのである。
ないという考え方に傾いていたのである 32)。
以上のような対立は、犯罪概念の本質をど
これは、 ILCが国家責任の法典化作業アプロ
うとらえるか、そして圏内法上の確固たる概
ーチとして、国家の主観的権利の侵害に限定
念を国際社会の平面で考える場合に、そのア
されず、およそ国際法違反一般を責任関係の
ナロジーをどう解釈するかによって異なる結
発生原因とする客観責任アプローチを採用し
論がもたらされた結果とみることもできる。
たことによるある意味では必然的な結果であ
そして、こうしたアナロジーを犯罪概念の国
った 33)。責任発生に関するその要件性が一次
際平面への導入拒否の根拠として用いる限り
規則の問題となることにより、一次規則の内
において、違法行為の段階的な効果を強調す
容によっては有形的損害がなくても責任は発
る考えは、第四条削除賛成派と反対派にわた
生し得るし、さらに国際社会の法益自体の侵
って広い賛同を得たように思われる。
では、国際違法行為の効果についてはどの
ような議論が展開されたのであろうか。効果
の具体的な内容については条文草案第 2部で
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国連国際法委員会における「国家の国際犯罪」概念の取扱いについて
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5
1
害で侵害行為者たる国家が責任を負うという
反、さらには強行規範違反との密接な関係が
ことも認められるからである ω。そして、国
重要視されたからである。これには、国際法
際法上の強行規範の実定法化の流れや度重な
上の国家の国際犯罪の内実が不明確である以
る国際司法裁判所(I
C
J
) による対世的義務
上、すでに存在する実定法上の概念に検討の
の存在確認をも考慮すれ!;t'3
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)、一次規範の重
手がかりを求めなければならないということ
要性に重きを置くか、違反の重大性を重視す
もあろう。国家の国際犯罪、対世的義務およ
るかはともかく、一定の国際違法行為に対す
び強行規範という三つの概念の関係がこのよ
る効果の面で何らかの段階性を導入しなけれ
うにして第二読においても検討が要請される
ばならないということがそこには含意されて
ことになったことにより、「国家の国際犯罪J
いたとみなければならない。
という名称にこだわらず、その刑事責任性を
従って第二に、特に第四条削除賛成派にお
否定する第四条削除反対派の委員が、後二者
いては、国家の国際犯罪と比較して、対世的
の概念との関係で「国家の国際犯罪」という
義務違反や強行規範違反の責任の問題をさら
概念が有する意味ないし理念を条文草案中に
に検討する必要があると考えられたお)。しか
実質的に残そうとする考え方へと向かう道が
も、これは同条削除反対派からも当然のこと
聞かれたのである。
とみなされたようである。というのも、元来、
第三に、国際社会全体の利益への侵害に対
国家の国際犯罪が存在する根拠のーっとして
応する効果や措置が条文草案では不十分であ
はバルセロナ・ トラクション事件 XCJ判決に
るという認識が一般的であるということは、
おける対世的義務への言及があげられてきた
国家の国際犯罪といった概念の導入の是非に
のであり 37)、国家の国際犯罪と対世的義務違
ついて、その効果や措置に関する規定内容の
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不十分さが両陣営の対立の決定的な原因では
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村弓「国家責任法の機能損害払拭と合法性コン
トロールー J国際法外交雑誌95
巻 3号(1996年)356
-387
頁も参照のこと。
3
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) 対世的な性格を有する規範の存在に言及している最
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立要因とは何であったのか。この点は、特別
報告者の提案をめぐる議論の評価のところで
あらためて検討することにしたい。
2 特別報告者による妥協案の提出と委員会
での討議
特別報告者は、自らが提案した第四条削除
勧告を引き金に同条削除賛成派と反対派の対
立が激化したことかち、妥協の道を探る努力
を行い、まずこれまでの議論を整理して、以
1
5
2
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 1号
下の点については委員会内で合意が存在する
せるべきであるというダブルトラック方式に
と指摘した 38)。
ついても広く合意があったという。
まず第ーに、国際犯罪と国際不法行為とい
う区別の仕方に委員の誰も満足はしておらず、
むしろ批判が集中した。
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犯罪」という用語
こうした中間的な総括に続いて特別報告者
は
、
「第四条に関連する提案Jという妥協案
を提示した。これはその後の議論の基礎とし
が混乱を招いており、こうしたカテゴリカル
て提案され、大要次のようなものであった 39)。
な区別以外の方法でこの問題を解決する用意
(i)条文草案で扱う国家責任は民事でも刑
が委員会にはあるという。第二に、特別報告
事でもない。また条文草案はすべての国際違
者は、強行規範と対世的義務という確立した
法行為を扱う。
カテゴリーがこの問題に関係することについ
責任を扱わない。(ii
i
) 条文草案は、強行規
ても合意があり、しかも前者の概念は後者よ
範や対世的義務の存在を前提にその効果を検
りも狭いものであるということでも一致して
討する。(i
v) 第二読では、第四条に代わっ
いるとした。注目されるのは、これらこつの
て、上記規範や義務の重大な違反を体系的に
概念が国際法の漸進的発達の一部であり、国
検討する。
家責任の分野に重要な意味をもたらしている
存在について条文草案はいかなる立場もとら
という評価である。第三に、しかし、現行の
ないことを明確にするセービング条項が検討
条文草案はこうした基本概念に十分な手当を
される。
していないという点でも合意がある。第四に、
(
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i
) 条文草案は国家の刑事
(v) 国家の国際犯罪の存在・不
(i)に関して特別報告者は、条文草案の
条文草案では紛争解決システムや被害国概念
範囲について国際違法行為のあらゆる点につ
など実施の面で重大な困難が生じるというこ
いて規律することを目的とするのではなく、
とである。こうした困難を考慮すると、国家
特定の分野についてはより詳細に国家責任の
責任の一般レジームは残存的な性格のもので
規定をおいている文書も存在するので、これ
あるとされる。そして第五に、国際法の発展
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) 条項に取り込むこと
を特別法 (
の現段階においては、国家の国際犯罪は刑事
にし、これとともに国連憲章に関するセーピ
的なものとみなされるべきではないという意
ング条項も考慮するという 40)。これにより推
見が大勢を占めるとともに、個人の刑事責任
察されるのは、第一に、条文草案は、一般的
はアドホックの裁判所や国際刑事裁判所を通
な国家責任レジームを提供し、他の個別の条
じて発展するが、それとは別に、国家責任の
約レジームとは一般一特別法の関係になって
分野では、国際社会全体にとって最も重要な
残存的な規則を設定するということである。
規範の違反に対する責任という概念を発展さ
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国連国際法委員会における「国家の国際犯罪」概念の取扱いについて
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条文草案が設定するレジームが残存的性格を
扱いを行おうとするのは合理的な選択と思わ
有するということは、すでに何人かの委員が
れる。ただ、憲章第 7章に基づく措置が国家
指摘しており 41)、またその関係で特別法に関
責任に関する一般レジームにより定められる
4条が、国家責任の内容や形
する条文草案第3
実施措置といかなる関係にあるのかというこ
態などを規定する第 2部から条文草案全体の
とは、最近の安保理の実行を踏まえた上で、
一般原則にあたる第 l部に移す方向で議論が
第 2部の条文草案の改善を図る際に今後議論
進められていることからみても 42)、こうした
されるべき課題となろう 45)。
認識を議論の共通基盤とすることは妥当な判
この妥協案の中核に当たる部分は(ii
i
)と
断といえよう。第二に、国連憲章に関するセ
v) にあたるものであり、特に(i
v) につ
(
i
ーピング条項の挿入を示唆したことは、国家
いて特別報告者は、国際犯罪と国際不法行為
責任の実施を規律するこの条文草案レジーム
の区別をコンセンサスでは採用できないとい
と、国際の平和と安全の維持・回復を旨とす
う事実を認めることから出発したものと説明
る国連憲章第 7章に基づく措置とを一応制度
している 46)。もっともこの点は、
的に切り離すことを目的としたものとみなす
代わって Jという文言を用いることにより、
ことができる。両者の関係については、その
妥協案といいながら特別報告者が第四条の削
目的がそれぞれでは全く異なるものであるこ
除を前提とするような印象を与えたためか、
とを理由に国家責任レジームの実施手段とし
同条削除反対派にとって受け入れがたいもの
て安保理の措置を用いることに消極的な意見
と映ったようである 47)。しかしこの提案の趣
が述べられたり仰、さらには ILCに国連憲章
旨は、
の制度まで扱う任務が与えられているかどう
すなわち作業部会と特別報告者が第四条の考
かを疑問視する向きもあった叫。こうしたと
えに代わる概念を構築する努力が完了するま
ころをみると、さしあたり議論の出発点とし
で第四条に関する議論を棚上げにするという
て、国連憲章が定める制度について別個の取
ものであって側、第四条はそのままでは残ら
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国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
理解されるべきものであろう。第四条につい
を定めた第 2部の関連規定の評価については、
てはすでにその構造が時代遅れとなっている
特別報告者の見方とほとんど一致するといっ
という認識とともに、名称のいかんを問わず、
てもいいであろう o 逆に特別報告者の立場か
その実質的な考えをいかに残すかに注目すべ
らも、国際義務の内容やその違反の重大性に
きという主張はこの線に沿ったものといえ
応じて異なる種類の責任レジームが存在する
る49)。第四条の削除をめぐる対立は、ここに
ことまでは否定していなかったのであり、こ
おいて、同条をそのまま残すかどうかではな
の点で第四条削除賛成派と反対派との意見の
く、同条の内実が何か、そしてそれがいかな
一致が議論を通じて形成されていたことはす
る形で条文草案に反映されるかというレベル
でにみたとおりである。
での議論に移行していくことが可能となった
のである。
第四条削除反対派の主張にはもちろん幅は
あるものの、国際社会の現状についての基本
的認識としては特別報告者のそれとさほど異
E 若干の考察
なっているわけではない。にもかかわらず両
1 第1
9
条削除提案をめぐる議論の評価
者の間にある大きな違いは、現在の国際社会
特別報告者が第四条削除を提案するに至っ
たのは、端的に言えば、
「国家の国際犯罪J
がその規範面においていかなる方向に進むべ
きかという社会と法の関わり方に対して、
という概念が国際社会の現段階では成熟して
ILCによる国際法の法典化作業がどのような
おらず、国際実行において支持を得られてい
役割を果たしうるのかということをめぐるス
ないばかりか、それに妥当する責任システム
タンスの相違にあるというべきであろう。
を構築しようとしても、特にその効果の面で
たとえば第四条を削除することに強硬に反
成文化が不十分となり、このままではこの概
対していたペレ(A. P
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) によれば、
念の維持が法典化作業に耐えられないと判断
際社会はもはや無政府状態にあるのではなく、
したためであった。しかし同条の削除に反対
強行規範の概念にみられるような『共同体精
した委員にとっても、少なくとも侵略戦争の
神 (communautarism).1の形跡が存在する jの
場合を除けは湖、
「国家の国際犯罪j概念が
「
国
であり、犯罪概念もその別の例であるという。
すでに実定法上の地位を獲得していると確信
そして、
を持っていたわけではない。さらにその効果
れないとしても、委員会にはこうした国際共
「たとえその概念が実行では用いら
同体精神の出現を国家責任の平面で考慮する
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責務がある Jとして、国際法の発展さらには
法典化における ILCの役割を強調している
のである 50。こうした国際法の漸進的発達を
51
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5
.
目
国連国際法委員会における「国家の国際犯罪」概念の取扱いについて
1
5
5
重視する考え方は、第四条が定めた国際犯罪
例に大幅に依拠することから、より多くの国
と国際不法行為とを区別するアプローチの支
家に受け入れられやすい結果をもたらすもの
持者にほぼ共通のものであった 52)。それは、
であり、その限りでは条約草案として成立さ
強行規範や対世的義務の登場といった国際法
せた場合でも国家が参加しやすい法規範内容
の新しい発展が現実の国際社会では萌芽とし
になる蓋然性が強いと考えられる。確かに
て存在し、国際実行は不十分であっても、法
ILCの作業は、狭義の意味での国際法の法典
典化のレベルでは ILCを用いてこれを積極
化とその漸進的発達とを相携えて進むもので
的に支援していくという戦略を意味するもの
あり、これら二つの目的を区別することは実
でもあったといえよう。しかもこの戦略は、
際には困難である日)。しかし、第四条を維持
一次規則と二次規則の区別や客観主義的アプ
しもしくは違法行為について差異あるレジー
ローチを採用して伝統的国家責任法からの転
ムを導入することを主張した委員は後者を重
換を法典化規則に反映させようとしてきた
視したのに対し、特別報告者を中心とした削
ILCのこれまでの作業とも合致していたので
除賛成派はどちらかといえばむしろ前者を強
ある日)。
調していたと考えることはできるであろう。
これに対して特別報告者は、自らの職責を
国家責任法の一般レジームを法典化作業の
果たすにあたり、経験主義の立場から、国家
対象とする際に、とりわけその最終的な形態
実行や国際判例を重視して、できる限りいわ
を条約にしようとすれば、現在の国際実行と
ゆる狭義の法典化に近いものを目指そうとし
ともに国家の大多数の意向も反映させる必要
た。そしてその意図の表れが第一報告書で勧
がある。条約により国家を拘束する国際法規
告した第四条削除提案だったのである。こう
範を確定する場合、もっとも重要なのは、国
したアプローチは、既存の国家実行や国際判
家代表が参加する国際会議、そして最終的に
は国家自身の判断であって、 ILCそのもので
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) ILCの法典化作業における一次規則と二次規則の区
別の意味について、松井芳郎「国際連合における
国家責任法の転換一国家責任法の転換(ご・完)
-J国際法外交雑誌91巻 4号 (1992年) 439-455頁
参照。
はないからである。また、 ILCが準備した条
約草案が受け入れられず、その外で国家実行
が積み重ねられれば、条約と慣習法という二
重のレジームが成立し、条約当事国と非当事
国の聞で混乱が生じる結果となりかねない日)。
さらにいえば、四半世紀以上を費やしても未
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国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
1
5
6
だ作業が完了しない国家責任の分野において、
業の目的と合致せず、その一般性という特質
早急に ILCとしての結果を国家に示し、そ
を多分に脆弱化させてしまうおそれがないわ
れが実定国際法として受容されていくことに
けではない。仮に強行規範や対世的義務の違
より ILC自身の信頼性を回復していくこと
反が一般レジームと異なる制度の下におかれ、
が特別報告者の責務とされ、そのためにも国
これがその後の国際社会の展開により制度と
家間で合意の得やすいところで作業を進める
しての成熟度を増してきた場合、現在の国際
という政治的考慮があったことも想像に難く
法上禁止されない行為から生じる国際責任
ないであろう制。こうしたことからも、できる
(いわゆるライアピリティー)との関係と同
だけ多くの国家に受け入れられるような条約
じような問題性を抱え込んで、しまうことにな
規則の定立に配慮して特別報告者が採用した
りかねないであろう問。
手法には合理的な理由がないわけではない 57)。
国家責任条文草案の規則には、違法性阻却
しかしながら、条文草案と慣習法との内容
事由の緊急状態のように、すでに I
C
Jの判例
の議離はできるだけ回避されなければならな
で慣習国際法規則とみなされているものもあ
いことは当然としても、実務的処理のための
るω)。従ってこれらを維持しつつ、一定の一
指針が早急に求められた国家承継の場合と同
次規則に対する違法の効果をあわせて検討し、
列に、国家責任の法典化の問題を論じるのが
これを国家責任の一般レジームの枠内で処理
適当かどうかは疑問が残る刻。また、何らの
する努力が必要となろう。法典化作業におい
留保もなく、特定の一次規則に対する違法の
て重要なのは、国際社会を規律する法の実質
効果を法典化作業の枠外に置くことは、国家
的な発展を促進する‘こととその結果が広く受
責任の一般レジームを構築するというこの作
け入れられる可能性とのバランスを図ること
であるが'
61)、犯罪という名称、はともかく、違
5
6
) ILCが早急に作業を暫定的に完了させた最近の例と
しては、 「国家承継に関連する自然人の国籍」が
9
9
5
年に実質的な作業が開始され、
ある。これは、 1
1
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年には第一読が終了し、前文と全27
条からなる
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いて、特別報告者は条約法の法典化の例を取り上
げ、条約化が望ましいことを示唆しているが、今
会期では結論は出ていない。 NCN.4
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目
法効果の段階性を国家責任の一般レジームに
全く取り込まないということは、国際社会に
おける一次規則の質的展開を責任法の分野に
反映させないという意味において、そのパラ
5
9
) 国家責任とライアピリティーの関係について、後者
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国連菌際法委員会における「国家の国際犯罪」概念の取扱いについて
ンスを著しく欠くことになるからである。
1
5
7
事の二分論が国際社会の法体系の発展型であ
ただしその場合に注目しなければならない
るとする進化論的思考にとらわれず、囲内的
のは、現段階の国際社会が過去のものと比べ
アナロジーの持つ問題性を認識した上で、そ
ていかなる特徴を有し、将来進むべき方向が
の内容や実施形態を検討していく必要があろ
どのように考えられるのかについて、 ILC内
λ 田)
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での議論はいわゆる国内的アナロジーを前提
としていたということである。こうしたアナ
ロジーは、むろん国家責任法の分野に限られ
るものではないω。最近ではトムシャット (
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.
2 今後の課題
現段階で、は国家違法行為の効果を扱った第
2部の審議がまだ行われていないことから、
が国際法の定立や執行の面から
ここでの検討もきわめて限定されたものとな
国際社会における三権分立という枠組みを考
らざるを得ない。ここでは、 ILCがこれから
察し、
「国際共同体」概念を提唱しているの
の作業において国家の国際犯罪という用語を
であり ω、また今会期でペレがこの概念に言
用いずに、国際違法行為の段階性を導入しよ
及しているのも単なる偶然ではないであろ
うとする場合に、効果以外の面で今後の課題
う制。ここで問題なのはそうした国内的アナ
として注目される点を素描するにとどめる。
Tomuschat)
ロジーそのものではない。大沼保昭が的確に
指摘するように、注意すべきは、
「国内社会
と国際社会の異同を厳密に検討することなく、
a 責任レジームの区別の基準
ILCは、第四条を定める際、国家の国際犯
無意識のうちに国内モデルに依拠して国際法
罪と国際不法行為という二種類の国際違法行
の疑似体系の構築や希望的観測」に陥る法思
為を区別するメルクマールとして、一方では
考である 65)。国際違法行為の段階性を取り入
問題となる義務が本質的な重要性を持っかど
れる場合にも、国内社会にみられる民事と刑
うか、他方ではその義務の違反が重大なもの
であるかどうか、というこつの要件を用意し
6
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) 包括的な研究として、 H
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) 大沼保昭「国際法学の園内モデル思考 その起源、
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根拠そして問題性 J
9
9
1
法と園内法一国際公益の展開ーJ(勤草書房、 1
年) 77頁
。
てきた 67)。これらが国家の国際犯罪の成立要
件を意味する以上、
「国家の国際犯罪」とい
う用語が将来の条文草案で維持されなくなっ
6
6
) この観点からトムシャットの「国際共同体j概念へ
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二『国際法における危険責任主義j(東京大学出版会、
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年) 45-46
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。
1
5
8
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
た場合、たとえ国際違法行為について他の段
合、もちろん、国際犯罪とは異なり、その違
階性が導入されたとしても、この二つの要件
反が通常の国際違法行為より厳しい効果を与
を維持するかどうかは別途考えられる可能性
えられる国際法規範を措定して、それが国際
がないわけではない。ただ、違法行為につい
法上の強行規範と一致するという主張もあり
て段階的な効果を持ち込むに際しては強行規
えようが69)、その場合でもなお対世的義務と
範や対世的義務といった一次規則の内容を現
の関係が問題となりうるであろうし 70)、なに
実には考慮せざるを得ないこと、その場合に
よりも法益の侵害の重大性という基準をいか
も本質的な重要性を有する義務の違反がすべ
に考えるかという問題が残るであろう 7。
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て新たな責任レジームで処理されるのかは不
違反の重大性が独立した要件かどうかもま
明確であることなどからみて、この二要件を
た別途検討されなければならない。国際社会
全く無視するということは考えにくく、むし
の基本的利益の保護にとって重要な規範の違
ろこれら二要件は新たな責任レジームを考え
反は、すなわち重大な違反であり、通常の違
る際の手がかりとすべきであると思われる。
法行為と異なる責任を課しうるとみなすこと
そこでまず問題となるのは義務内容の重要
性の意味であろう。すなわち、
も可能だからである 72)。しかし、こうした違
「国家の国際
法行為の重大性を推し量る基準としては、国
犯罪j概念で表されていた内実一国際社会全
家の国際犯罪の特徴として、一次規則の性質
体の利益を保護する法規範の侵害に対しては、
に依存するのみでなく、それ以外の要因も加
通常の国際違法行為の場合よりも厳しい効果
味されるべきであるという見解が存在してい
を付与することーを有する概念が、刑事的な
たことにも注目しておく必要があろう 73)。特
意味を含まないとして、それに類する既存の
概念たる強行規範や対世的義務といかなる関
係にあるのかを見極めなければならない。実
際、この点は特別報告者が提案した妥協案で
も根幹部分とされていたところであり、作業
部会などを通じて、強行規範、対世的義務、
そして国際犯罪という三つの概念の関係に関
するこれまでの議論を踏まえてさらに検討を
重ねていくことになると思われる制。その場
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) 川崎恭治「国際社会の共通利益と国家の図際犯罪」
大谷良雄編著『共通利益概念と国際法J(国際書院、
頁
。
1993
年) 1
7
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国連国際法委員会における「国家の国際犯罪」概念の取扱いについて
1
5
9
に特別報告者であったアランジオ・ルイス自
性の観点から過失の問題に踏む込むことがで
身が違反の重大性を考える基準として過失の
きるのか、踏み込むとすればそれはどのよう
問題を提起していたことは問、一次規則の性
に行われるのかということは、江Cの今後の
質だけでは異なる責任レジームの適用基準と
作業の中で明らかにしていく必要があろう。
して不十分であるという認識を示しているこ
とのみならず、過失という主観的要因の導入
b 個人の刑事責任との関係
により一次規則と二次規則の区別という法典
9
0
年代に入ってから旧ユーゴとルワンダに
化作業の前提に部分的な修正を加えることの
関して国際刑事裁判所が設置され、国際人道
必要性をも指摘しているという点できわめて
法違反や戦争犯罪違反を理由に個人に対する
示唆的である問。国際違法行為における補償
刑事責任を問う実行が集積するとともに刻、
の程度を区別するために過失概念が用いられ
1
9
9
8
年には国際刑事裁判所規程が採択される
ることは考えられるが加、それにとどまらず、
までに至っている 7
9
)。個人の刑事責任を追及
過失概念が国際違法行為による効果の質的区
するこのような国際社会の動向をにらみなが
別そのものにも影響を与える要因のーっとな
らも、国家の国際犯罪と個人の国際犯罪とを
りうる可能性を排除することはできない。し
区別しなければならないということは、国家
かもある義務違反の重大性について他の明確
責任の法典化を目指す ILCにおいでほぼ全
な基準を提示できないのであれば、この問題
会一致で支持されていた則。国際社会におけ
を検討する必要性はより高まることになる77)。
る刑事責任化の流れは、あくまでも個人の国
一次規則と二次規則の区別という法典化作業
際犯罪のレベルにおけるものであるという点
の大前提を維持しつつ、国際違法行為の重大
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において、こうした判断はきわめて正当なも
のと考えられる 81)。二つのアド・ホック国際
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説を批判する。兼原敦子「国際違法行為責任にお
ける過失の機能」国際法外交雑誌96巻 6号(1998年)
867-912
頁参照。
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81)この点に関する ILCコメンタリーについて、 s
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国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
属を前提としてその刑事責任性を追求されて
の行為と国家の行為とが、犯罪という言葉で
いるわけではない制。このことを裏付けるか
は共通しなくても、国際社会の法益を保護し
0条では、
のように、国際刑事裁判所規程第 1
高次の価値を有する規範に反する行為という
同裁判所の管轄権や適用法に関する規定はそ
性格付けの点で実質的に共通する部分が出て
の他の国際法規則に影響を及ぼさない旨定め
くるからである。そしてこの場合には、たと
ており、黙示的にではあるが、国家責任との
えば、国際刑事裁判所などが行った個人の国
消極的な関係を認めているお)。
際犯罪に関する認定が、当該行為との関連で
しかしながら、個人の刑事責任が強化され
特別な責任レジームに国家を服せしめるため
る傾向と国家責任の問題は全くの無関係では
に用いられ得るのかといった責任発生の手続
ないということもまた確かである制。たとえ
・実体の両面にわたる問題や、仮にそうした
ばルテール (
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9
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1年の時点で、
ことが認められるとして、それが責任の形態
個人の国際犯罪と国家の国際犯罪との関係に
にどの程度反映されるのかといった効果の面
注目し、国家の国際犯罪が存在しない場合に
での問題が現出することになろう師)。もっと
なお個人の刑事責任を問えるかという問題を
も、こうした観点からの考察が二次規則の抽
提起した上で、これを国家犯罪の性質並びに
象化・一般化を原則とする ILCの法典化作
それを処罰する決定の性質の検討にかからし
業においてどれだけ具体化されるのかは、な
める見解を示している 8九実際にはこうした
お予断を許すものではない 87)。
問題は、たとえ国家の国際犯罪という用語が
草案中から除外された場合でも、依然としで
おわりに
生じる可能性があるであろう。国家機関とし
現段階における ILCの議論では、園内法
ての個人が行為することを前提として、個人
上の犯罪概念を幼偽とさせる「国家の国際犯
罪」という用語の使用を回避し、刑罰的な意
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ブローチに対する批判的な評価として、安藤仁介
「国家責任に関する国際法委員会の法典化作業と
3巻 3・4合併号(1994
その問題点j国際法外交雑誌9
年) 338-341頁参照。
国連国際法委員会における「国家の国際犯罪J概念の取扱いについて
1
6
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なる責任レジームを設定する可能性が存在す
方向性そのものを否定することにはならない。
ることでも広く一致が見られるようにも思わ
法は、すべての社会現象と同じように、不断
れる。このことは、特別報告者が今会期半ば
に展開していくものだからである則。そして、
で提出した妥協案の内容にも反映されている
第四条が条文草案に残らないとすれば、それ
ことから明らかであろう。従って、法典化作
は現在の国際社会が、少なくとも現時点では、
業の進行という政策判断からすれば、違法行
民事と刑事の二分化を特徴とする囲内社会と
為による区別のない単一の責任レジームと、
は異なる展開を示していることの証左に他な
国際犯罪と国際不法行為の二分論という極端
らない。問題はそうした展開を方向づける要
な二つの主張のいずれかではなく、その中庸
因をいかに認識し、現状と照らしてどのよう
に求める答えがあると考えなければならない。
に評価するかにある。従って、現在の国際社
もっとも、一部の委員からは、
「国家の国
会がいかなる価値を求め、それを保護しよう
際犯罪J概 念 を 江Cが放棄することは国際
としているか、そのための手だてはどのよう
法の発展にとって大きな後退であるとか、現
なものが用意されているのかといったことが、
段階で「犯罪J概念を全く落としてしまうの
「国家の国際犯罪J概念の実体に代わる新た
は困難であるという声が聞かれることも事実
な概念の探求の際にはあらためて問われなけ
である制。暫定的にせよ一度は採択された条
ればならないであろう。こうした ILCの今
文草案の中から「犯罪Jという用語が消える
後の作業は必ずしも楽観視できるものではな
ことは、 ILCが国際法の法典化の分野で有す
く、相当の困難が予想される。その評価につ
る権威を考えると、確かに大きな影響を与え
いては他日を期すことにしたい。
ることになろう。しかし、条文草案第四条に
いうような「国家の国際犯罪J概念がすでに
国際社会において実定法化しているのであれ
ばともかくも、この概念自体は国際法の漸進
的発達の手段として用いられできた節がある
以上、それに代わる新たな概念の模索は、進
むべき目標からの後退というよりも、漸進的
発達のための手段の適正化一国際法の適正な
漸進的発達に向けての努力と解すべきである。
実際、ある法現象が現前には明確に認識で
きないとしても、そこに現れつつある事態の
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