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ISO22000認証取得施設に対する監視指導について ~認証

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ISO22000認証取得施設に対する監視指導について ~認証
ISO22000認証取得施設に対する監視指導について
~認証取得の経過とその後の行政対応~
食肉衛生検査所
○渡辺 徹、佐田和也、田代潔子、甲斐岳彦
1.はじめに
近年、身の周りの製品や食品の事故による回収が、いまだに増加傾向にあり、消費者
の安全への関心と欲求は高まり続け、食品に対する「ゼロ・リスク」が要求されている。
食品企業においては、企業イメージ保持ため製品の回収を行ているが、そのコストのた
め企業の存続にも影響をもたらしている。
そのため、HACCPシステムと監査システムを取り入れたISO22000、FSSC22000、PAS220
等の高度な食品衛生管理システムの導入が求められ、企業間の取引条件としても要求さ
れてきている。
当所が管轄するOと畜場においても、平成22年からより高度な安全対策を摸索し、施
設内の衛生管理を自主的に高めるため、5S運動を実施してきた。その後、平成23年よ
り高度なISO22000を取得するために、Food Safty Management System Team(以下「FSM
Sチーム」とする)を発足させ平成24年1月30日にISO22000:2005の認証を取得した。こ
の間に当所は各ステージにおいて助言と監視を実施し、認証取得に向けた支援を行って
きたので、その経過を報告する。
2.これまでの経過
平成22年度当初から、Oと畜場より取引条件となっている高度衛生管理に関して相談
に乗って欲しいとの要望があり、当所においては、まず施設の衛生状態を確認するため
施設内製造環境の調査を定期的な「と畜場等衛生検査」実施時に併せて調査を行った。
施設内の原料が通過する範囲をプロダクトゾーンと設定し、通過場所より前後1mの範
囲の集中目視確認を実施した。その結果、黒カビ等の発生対策として空調管理を行い、
約3ヶ月で一掃した。
また、一般的衛生管理事項の検証のために枝肉拭き取り検査とATP拭き取り検査を
実施し、その検査データの分析に基づく文書指導を行った。
従業員に対しては、講習会を通じて、上記結果の評価を行い、5S・7S運動の強化
を提言し標準作業手順書(SOP)の遵守を繰り返し指導した。
表1 平成22年度における当所の対応
年 月
平成22年 6月 Oと畜場より高度衛生管理の相談依頼を受ける。
7月 平成22年度と畜場等衛生検査・ATP拭き取り検査
9月 枝肉拭き取り検査
10月 と畜場等衛生講習会の実施
平成23年 3月 平成22年度と畜場等衛生検査
2.ISO22000取得までの経過と助言
平成23年2月1日にOと畜場経営者からの経営宣言によりISO22000:2005の取得に向け
てのキックオフがなされ、第三者機関であるコンサルタント会社の指導が開始された。
同時にFSMSチームが従業員から選抜され、ISOのHACCP部分を主に担当することとなった。
その後の経過と当所の対応については表2に示す。
表2
ISO22000:2005取得までの経過と当所の対応
年 月
Oと畜場の対応
当所の対応
平成23年 2月
ISO22000:2005へのキックオフ
取得に向けての助言を依頼される
コンサルティング開始
3月
標準作業手順書(SOP)の見直し開始
SOP作成への助言開始
4月
標準衛生作業手順書(SSOP)の見 SSOP作成への助言開始
直し開始
5月
ATP拭き取り検査開始(月1回)
6月
衛生管理責任者・作業衛生責任 衛生管理責任者・作業衛生責任者
者講習会受講
講習会開催
ISO構築講習会(コンサルタント)
7月
危害分析・評価
危害分析への助言
平成23年度と畜場等衛生検査
8月
CCPの検討
CCP決定への助言
PRP・OPRPの検討
PRP・OPRPへの助言
9月
内部監査研修
枝肉拭取検査、GFAP検査
10月
ISO取得1次審査
11月
ISO取得2次審査
12月
ISO取得是正期限・是正報告書の 是正報告書への助言
提出
と畜場等打合せ会議の開始
平成24年 1月
ISO22000:2005認証取得
平成23年度と畜場等衛生検査
2月
と畜場等衛生講習会(2回)
当所においては、ISO取得についての各ステージにおいて、相談助言を適時実施して
きた。また平成23年度からの「大分県監視指導計画」に基づく衛生監視については、従
来の監視手法に可能な限りISO点検項目及びAIB監視手法を取り込んで実施している。
3.ISO22000取得後の対応
ISO取得施設における行政による監視指導はISO規格における第三者監査(外部監査)
と規定され、更に規格書においては「8.4.3 検証活動の結果の分析 食品安全チームは
内部監査及び外部監査の結果を含めて、検証活動の結果を分析すること。」の規定があ
り、報告書の提出と内部検証へのインプット、アウトプットが義務づけられている。
当所においても、平成22年度から一部規格を考慮して衛生検査を実施してきていたが、
科学的根拠を持ち、Oと畜場側との協議、分析、評価を中心とした監視形態へと移行を
行った。この際、図1に示すとおり、Oと畜場のFSMSシステム構成を考慮し、指導内容
を絞って行っている。
FSMS構成
管理者
食肉衛生検査所の対応
マネジメントに関する監視指導
FSMSチーム
HACCPシステムに関する監視指導
一般従業員
SOP・SSOP・PRP・OPRP
5S・7Sに関する監視指導
図1
FSMS監視指導概念
また、「大分県食品衛生監視指導計画」に基づく衛生検査は年2回のとなっており、
リアルタイムな監査の実施が困難なため、平成23年12月より「と畜場等打合せ会議」
の名称で衛生管理協議会を月1回の間隔で開催し、衛生管理上の不良個所を科学的根拠
により分析、評価、協議を行っている。打合せ会議開催時には毎回、ISO、HACCPに関す
るミニ講習会を併せて実施している。
4.課題と今後の対応
HACCPとマネジメントシステムを融合したISO22000は、HACCP部分の検証を監査による
マネジメントで担保するシステムであるため、経営者、施設管理者及びFSMSチーム
の人的スキルの向上が要求される。従って人材の育成と教育が重要であり、今後は助言、
相談を含めて、科学的根拠により考察できる人材育成を支援しなければならない。
一般従業員に関しては、5S・7S運動から一気にHACCPを含んだISO22000システム
へ移行したため、戸惑いが見受けられるので、分かりやすい衛生教育の強化と、常日頃
からのインタビューが今後必要である。
ISO22000もHACCPと同様に進化するシステムであるので、行政の監視指導に最新の科
学的知見を組み込み、施設側と共同でシステムを進化させていく必要がある。そのため
には、通常の法令違反の場合には「~しなければならない」の指導であるが、法令違反
以外の事例、例えば一般的衛生管理(PRP)等の事例では、
「~どう考えていますか」、
「~
どのような根拠で行っていますか」等の協議を行い施設側とシステムの進化を考慮した
「考えさせる指導」が重要であると考える。
5.まとめ
施設のISO22000におけるFSMSの進化は行政機関を含む、第三者機関による監査が重要
であり、今後とも監査の強化を行っていく所存である。
FSMSの持続的運用に関しては、人的要因、人的資質が重要であるため、新入社員教育
を含んだ定期的な従業員教育とFSMSチームに対する専門教育を継続していく必要があ
る。
今後、Oと畜場では県産食肉の輸出を計画しているので、ISO22000システムを用いた
輸出事業を支援していくことは、県産食肉の安全安心な供給体制及び大分県産ブランド
化による畜産振興にも寄与できるものと確信している。
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