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三菱電機技報2014年9月号 論文09
特集Ⅰ:当社技術の変遷と将来展望 発電システムの変遷と今後の展望 電力システム製作所 副所長 中野直広 ミックスによる電力の安定供給が進められた。また,太陽 1.ま え が き 光,風力などの再生可能エネルギーによる発電への取組み 我々の社会,経済活動を支える重要なインフラである電 も進められている。 力システムは,電気を発生する発電システム,変電所・送 本稿では,発電システムの構成要素の中で,火力発電シ 電網で送電電圧を変換し各地に送る送変電システム,各需 ステム,原子力発電システム,タービン発電機及び水力発 要家に電気を供給する配電システムの3システムで構成さ 電システムについて,技術の変遷と今後の展望について述 れる (図1) 。発電システムには,ダムで蓄えた水の落差の べる。 エネルギー エネルギーを利用する水力発電,主として石油,石炭,天 2.発電システムの技術の変遷 然ガスなどの化石燃料の燃焼エネルギーを利用する火力発 電,原子力エネルギーを利用する原子力発電があり,近年, 2. 1 火力発電システム 太陽光,風力などの再生可能エネルギーによる発電への取 火力発電は大容量化と高効率化の歴史の中で,汽力発電 組みも進められているが,国内電力の多くを火力発電,原 に加えコンバインドサイクル発電が多く採用されるように 子力発電,水力発電で担っている。 なってきた。発電方式やニーズの変化に対応して監視制御 20世紀初頭では,水力発電システムが日本の主電源で システムも進歩を遂げてきており,ここでは火力発電向け あった。増加する電力需要に応え,水力発電システムは, 監視制御システムの変遷と将来動向について述べる(図2)。 大容量化が進められてきた。 2. 1. 1 火力発電方式の変遷 20世紀中頃から発電の主力は,水力から火力へと移行し, 1960年代から,それまでの“水主火従”から“火主水従” の 火力発電システムの普及,大容量化が進められた。 時代へ移行し,火力発電設備の増強,大容量化が進められ 20世紀後半には,高度成長期の電力需要増大に伴う設備 た。1980年代からは需給調整火力の時代となり,ガスター の増設・大容量化への対応が進められてきた。 ビン発電と蒸気タービン発電を組み合わせたコンバインド 1970年代のオイルショック以降,石油依存体質からの脱 サイクル発電の導入が進み,負荷変化や起動停止の容易性 却のため,揚水式発電の拡充,コンバインドサイクル発電 が求められるようになってきた。 などによる発電の高効率化,原子力発電の増設,稼働率向 上に対応し,火力発電,原子力発電,水力発電のベスト 発電システム 送変電システム 水力発電システム 配電システム 500−275kV 企業・工場 交通 医療 ビル 超高圧変電所 水力発電所 水車発電機 運転監視盤 154kV 火力発電システム 一次変電所 66kV 火力発電所 タービン発電機 一般家庭 太陽光発電 システム 制御装置 原子力発電システム パワー コンディショナ 中間変電所 次世代 電子メーター 22kV 6.6kV 原子力発電所 タービン発電機 運転監視制御部 配電用変電所 蓄電池 エコ キュート ホーム ゲートウェイ 電気自動車(EV,PHEV) 図1.電力システム 40 (526) 三菱電機技報・Vol.88・No.9・2014 特集Ⅰ:当社技術の変遷と将来展望 2. 1. 2 監視制御システムの変遷 “MELSEP2000S / C”を開発し,これらをシステムとして 1950年代は空気式計器を用いた現場手動操作であったが, 1960年代に入ると電子式アナログ計装や電子計算機が導入 組み合わせ市場要求に応えてきた。 (注1) Linuxは,Linus Torvalds氏の登録商標である。 2. 1. 3 最 新 技 術 に“MELCOM330” を初号機として納入した。 制御装置の最新機種“MELSEP5”では,マルチコアプロ 1970年代に入ると高度経済成長の下,火力発電は大容量 セッサによる高性能化,CRTオペレーション装置との連 化が進展し,エレクトロニクス技術でもマイクロプロセッ 携強化,ユニバーサルデザインの採用,さらに前機種との サの誕生など飛躍的な進歩があった。三菱電機もマイク ハードウェア互換による部分更新など,環境負荷低減や省 ロプロセッサを使用した計算機 “MELCOM350-30,50シ 力化といった多様化するニーズに応えている。 リーズ”を開発し,データロギング用途だけではなくター 2. 1. 4 将 来 動 向 ビン,ボイラのDDC (Direct Digital Control) 制御として適 今後も火力発電が電力供給の中核を担いながら,再生可 用を開始した。 能エネルギーの利用拡大とともに発電方式の多様化が進展 1980年代にはDSS(Daily Startup and Shutdown)運転 すると予想されている。また,電力小売自由化や発送電分 など柔軟なプラント運用が求められるようになり,監視 離によって需給制御やエネルギー貯蔵といった電力系統全 制御システムにも自動化機能などの高機能化が求められ 体の最適運用に向けたニーズも拡大していくものと考え てきた。これらのニーズを受け,16ビットマイクロプロ る。監視制御システムでも,豊富なノウハウと最新のエレ セッサを使用したデジタル制御装置“MELSEP700 / 500” クトロニクス,IT技術を生かし,より高い運用性,制御性, を開発し,制御性,信頼性,保守性の向上を実現した。 省力化等多様化するニーズに応えていく。 計算機の役割も重要度を増すなか “MELCOM350-60シリー 2. 2 原子力発電システム ズ” を開発し,高速演算性能とリアルタイム性を実現して,自 当 社 は 三 菱 グ ル ー プ と し てPWR(Pressurized Water 動化による省力化と柔軟なプラント運用に貢献してきた。 Reactor)型原子力発電プラントの安全性・信頼性確保に対 1990年代の高度情報化時代に入ると,従来のBTG (Boiler する社会要求に応えるため,特に電気計装分野を中心とし Turbin Generator)盤に代わりCRT (Cathode Ray Tube) て,1960年代の黎明(れいめい)期から継続的に技術開発し, での監視操作ニーズが高まり,CRTオペレーション装置 三菱重工業㈱と共同で,電力共同研究などを実施し,多く “MELSEP2000”と制御装置“MELSEP500PLUS”を開発し, の製品を発電所に納入してきている。 マンマシンインタフェースの充実,高速ネットワーク通信 ここでは,年代ごとに当社製品を支えてきた技術の変遷 などデジタル技術の適用を大幅に拡大した。 と,今後の取組みについて述べる(図3) 。 2000年 代 に は 環 境 負 荷 低 減 の 要 求 が 高 ま り, ダ ウ ン 2. 2. 1 第一世代:輸入と国産化 サ イ ジ ン グ, オ ー プ ン 化 さ れ た 仕 様 が 求 め ら れ 始 め プラントの制御・保護システム,及び原子力特有機器で た。制御装置では従来比30 ~ 50%の盤面数削減を実現 ある一次冷却材ポンプモータ,制御棒制御装置,電気ペネ した “MELSEP550”を開発,計算機/ CRTオペレーショ トレーション,放射線監視装置等は,初号機プラントでは, ン 装 置 で は 産 業 用 パ ソ コ ン,Linux 米国からの輸入品を中心に構成していた。当社は,その後 ( 注1) 年代 1950 OSを 採 用 し た 1960 1970 高度経済成長 社会/技術/ 業界の動向 真空管 1980 汽力発電主体 電子式 アナログ計装 2010 2020 環境負荷低減 マルチコアプロセッサ コンバインドサイクル発電主体 大容量化 ▲火主水従へ移行 空気式計装 2000 高度情報化 最新技術の適用 マイクロプロセッサ トランジスタ 設備増強 監視制御システム 1990 安定成長 発電方式多様化 発電効率向上 需給調整火力(DSS,WSS) 再生可能エネルギー 電力小売自由化,発送電分離 デジタル制御装置 ▼MELSEP700 / 500 ▼MELSEP550 MELSEPシリーズ ▼MELSEP500PLUS ●制御性, 信頼性向上 ●高速ネットワーク ●ダウンサイジング ▼MELSEP5 ●マルチコアプロセッサによる 高性能化 ●部分更新対応 工業用計算機 ▼MELCOM330 ▼MELCOM350-50 ▼MELCOM350-60 / 3300 MELCOM シリーズ ▼MELCOM350-30 ▼MELCOM350-60 / 2200 ▼MELCOM350-60 ●データロギング用途 ●DDC 制御 ●自動化運転 ▼MELSEP2000S / C 計算機/ CRT オペレーション装置 ▼MELSEP2000 MELSEP2000 シリーズ ▼MELSEP2000X ●マンマシンインタフェース充実 ●オープン化仕様(産業用パソコン,LinuxOS) 前機種(MELSEP550)CPU ユニット 前機種(MELSEP550) PIO ベースユニット (SE 型) アダプタユニット MELSEP5 カード MELCOM350-30 MELCOM350-50 MELSEP700 / 500 MELSEP5 図2.火力発電システム技術の変遷 既設外部ケーブル を接続したまま, PIO 部分更新が可能。 MELSEP5 PIO ユニット (SG 型) MELSEP5,前機種とのハードウェア互換による部分更新 WSS:Weekly Startup and Shutdown 41 (527) エネルギー され,火力発電向けにはデータロギング用途として1963年 特集Ⅰ:当社技術の変遷と将来展望 エネルギー の継続プラントで,順次自社技術化を図るとともに,小型 また,各設備の機種統合・通信システムによる結合・情 化などの設計改良を施してきた。 報の一元管理化,運転員負担軽減とヒューマンエラー防止 この当時,制御・保護システム等は,ボックス型計器, のためのタスク分析・運転検証を経た全ソフトオペレー アナログカードで構成しており,また計算機はプラントの ションのマン・マシンインタフェース採用によって,デジ 全体監視用途ではなく部分的な監視補助のための性能計算 タル技術が持つ信頼性・情報伝達性・保守性上のメリット に用いられていた。 を最大限に生かしたシステムを実現した。 2. 2. 2 第二世代:改良標準化,信頼性,稼働率の向上 これらの最新技術を新設及び更新工事にも適用すること この世代では,蓄積してきたプラントの建設経験や運用 で,システムの機能・性能・信頼性の向上に貢献した。 経験を反映するとともに,当時国内の最新技術の適用,改 電気設備では,発電機の大容量化,所内UPS(Uninter- 良標準化,より高い信頼性の設備導入を進めた。 ruptible Power Supply)・開閉設備の省電力化・コンパク 制御棒駆動装置のダブルホールド化,位置指示監視シス ト化を図った。 テムの検出器多重化による信頼性向上を図るとともに,補 2. 2. 4 グローバル化と世界最高水準の安全性への取組み 助設備を皮切りとしたデジタル設備導入,計算機による 国内で培った技術を基に,現在,安全系プラットフォー CRT監視の拡大によって,デジタル化時代の先駆けとした。 ムの米国NRC(Nuclear Regulatory Commission)認証取得 次にプラント主要制御系・放射線モニタ等にデジタル装 を推進している。この安全系システムは中国CPR(China 置を開発し導入することによって,運転自動化の拡大を行 PWR)プラントに14セット納入している(2014年6月時点) 。 い,多重化システム技術・分散化・自己診断機能の採用に また,国内最新規制指針に対応した安全対策の実施と,世 よる信頼性と保守性の向上を図るとともに,重要警報の識 界最高水準の安全性達成に向け,電源設備の多様化,設備 別を容易にするなど,マン・マシンインタフェースの改善, 耐震性の強化,セキュリティ強化,シビアアクシデント対 プラント稼働率向上を図った。 応設備等の開発を推進している。 電気設備では,発電機負荷開閉器 (GLBS)の採用による, 今後,原子力発電分野で,各国規制に適合した製品を供 変圧器台数の低減とプラント受電系統強化を図った。 給する電気・計装設備フルラインアップサプライヤーとし 2. 2. 3 第三世代:更なる信頼性・保守性の向上 て,グローバル展開を進めていく。 第三世代では,マイクロプロセッサ応用技術,高速 2. 3 タービン発電機 データ伝送等の技術の適用や,耐環境性 (EMC (Electro- 当社のタービン発電機の歴史は,1908年に長崎の三菱造 Magnetic Compatibility)ほか)を向上させた設備をプラン 船所に同所中央発電所用として2極625kVAを製造したこ ト設備に適用することによって,運転監視・制御・保護シス とから始まっている。その後,ウェスチングハウスエレク テムの総合デジタル化を実現した。 トリック社との技術提携によって,技術的に大きな進歩 この総合デジタル化システムには,高信頼化ソフトウェ を遂げ,戦後の復興や高度経済成長期など急速に高まった ア技術(割り込みレス・定周期・ホワイトボックス化) と検 電力需要を支えてきた。ここでは社会・経済の変化ととも 証技術(段階的かつ徹底した検証) の適用によって,常用系 に発展してきたタービン発電機の技術動向について述べる (図4) 。 に加え安全系もデジタル化を図っている。 年代 社会/技術/ 原子力業界の動向 1960 1970 1980 原子力エネルギーの必要性 1990 2000 2010 原子力信頼性要求の高まり 2020 新規制指針 の制定 原子力安全文化の醸成 ▲スリーマイル島事故 ▲チェルノブイリ事故 ▲東電福島第一事故 最新技術の適用 真空管 トランジスタ IC マイクロプロセッサ 第一世代 輸入と国産化 国内初のPWR 発電所運開(1970年)▲ 輸入による 技術導入 原子力発電システム 中央盤 安全系 常用系 一次冷却材ポンプ モータ 通信ネットワーク 第二世代 国産 アナログ式 経験反映,信頼性,稼働率向上 計装制御設備の 個別デジタル化 中央盤 安全系 常用系 ハード計器 アナログ アナログ 第一/二世代中央盤 (検証設備) 第三世代 CRT 主体監視 アナログ アナログ→デジタル グローバル化と世界最高水準安全性 更なる信頼性, 保守性向上 安全系設備含めた 総合デジタル化 更なる安全性向上 世界規制への適合 安全対策/認証取得 次世代システム 中央盤 ソフトオペレーション 安全系 デジタル 常用系 デジタル デジタル制御盤 第三世代中央盤&グローバル展開(検証設備) 図3.原子力発電システム技術の変遷 42 (528) 三菱電機技報・Vol.88・No.9・2014 特集Ⅰ:当社技術の変遷と将来展望 発電向け4極機では2002年に1,600MVAを製造した。 ⑴ 電力需要増加に伴う設備増強 (1950 〜 1960年代) 一方で,ガスタービンを利用した熱効率の高い複合型発 戦後の電力需要増加に対応して,冷媒に水素を採用した 電方式(GTCC)の利用が世界的に拡大し,大容量で高効率 発電機が普及し始めた。水素は空気と比べて冷却性能が高 な水素間接冷却機の開発が本格化された。当時の水素間 く,特にコイル内部に通風孔を設け直接冷却する方式 (内 接冷却機はシンプルな通風方式で高効率ではあったが,冷 部冷却) の出現以降,発電機の最大容量は更新され続けた。 却面で内部冷却機に劣っていたため,高性能絶縁や高効率 当社でも1959年に内部冷却第1号機208MVAを製作して ファンなどの適用によって冷却を強化し大容量化を進め 以来,相次いで記録品の製作を手掛け,1965年頃には400 た。また,3次元FEM(Finite Element Method) を用いた ~ 500MVA級まで大容量化が進んだ。 電磁界・流体解析を駆使して低損失構造を実現し,加えて ⑵ 火力/原子力向発電機の大容量化 (1970 ~ 1980年代) 低損失軸受などを導入することで,従来の同出力機と比べ オイルショックの影響によって本格的に原子力発電が推 て0.2%の効率改善を達成した。 進され始め,当社でも原子力発電向け発電機の開発を進め ⑷ 最新技術 た。当時の開発によって,原子力発電向けタービン発電機 発電機の最大容量は更に増加し,水素冷却機では2極 は従来の400MVAから3倍以上の1,300MVAを製作するま 1,400MVA級,4極2,000MVA級,空気冷却機では350MVA でに至った。発電機容量を大きく引き上げた要因は,固定 級の設計を完了している。2013年には大容量の水冷却機に 子コイルの冷却媒体に水を採用した効果が大きく,流路の 水素間接冷却機のシンプルな通風構造を適用した新型の高 腐食や水漏れなどの課題を試作・検証を重ねて解決しつつ 効率水冷却機を製作し出荷した。これらは高強度部材の開 高品質の水冷却技術を確立させた。水冷却技術はその後の 発に加え,高性能絶縁の適用や通風冷却の改善などによる 大容量化技術の基礎となり,火力発電向けタービン発電機 冷却性能の向上によって実現可能となった。これらの技術 にも採用され,飛躍的に単機容量を向上させた。 に加えて,更に熱伝導率を高めた高性能絶縁の適用によっ 当時,省エネルギー化の社会的要求が高まり,タービン て,900MVA級の高効率水素間接冷却機の開発を2014年度 発電機の高効率化を進めた時期でもある。計算機の性能が 中に完了し製品化する。 向上し,電磁界や通風等より高度な計算処理が可能となっ 2. 3. 2 将 来 動 向 たことで,回転子断面の構造最適化や新通風冷却方式など 更なる高効率化と大容量化のため,高性能絶縁システム の技術開発が進み,1989年には高効率技術を採用した水冷 と先進要素技術の開発に取り組む。また,ITを駆使した 却機670MVAを製作し,従来機に比べて0.2%の効率改善 製造技術,状態監視技術,予防保全の開発を進めるととも を達成した。 に,当社保有の超電導発電機技術の応用も視野に入れ,引 ⑶ 発電設備の経済性の向上と高効率化 (1990 ~ 2000年代) き続き社会及び顧客の要求に応える製品を提供していく。 バブル経済の崩壊後も海外の電力需要は堅調であり,大 2. 4 水力発電システム 容量機の開発が進められた。高強度の軸材や保持環の開発 100年以上の歴史を持ち,かつては日本の主電源であっ が進められ,回転子の大径化によって大きく出力を向上さ た水力発電システムは,クリーンで再生可能なエネルギー せた。火力発電向け2極機では1998年に990MVA,原子力 として再び注目を集めている。既に揚水発電所が蓄電設備 年代 1950 1960 タービン発電機の技術 動向と大容量化の変遷 1970 大容量火力発電の普及 1980 1990 2000 原子力発電の普及 容量(MVA) 1,600 水冷却技術 適用発電機 1,200 水冷却機 水素間接冷却機 1,000MW 級水冷却機 先進技術適用に よる更なる大容 量・高効率化 高効率シリーズ機 水素内部冷却機 高効率発電機 600 当社初原子力向け発電機 400 0 冷却強化技術損失低減技 術の開発による高効率・ 大容量化 水冷却機 1,000 200 2020 大容量化技術 適用発電機 1,400 800 2010 省エネルギー発電/コンバインドサイクル発電の需要拡大 累計2,000台到達 原子力向け発電機 水素間接冷却機 高効率シリーズ機 次世代水素間接冷却機 水素内部冷却機 当社初水素内部冷却機 空気冷却機 当社初水素冷却機 1959年当社初の 水素内部冷却機 (208MVA) 1976年原子力発電 向け水冷却発電機 (1,300MVA) 1998年2極大容量 水冷却機(990MVA) 1998年7万MW級超電導 発電機の実証試験完了 2002年当時の 世界最大容量機 (1,600MVA) 新通風方式適用機 2005年水素間接冷却 高効率シリーズを展開 2013年高効率な 新型水冷却機 (793MVA) 図4.タービン発電機技術の変遷 43 (529) エネルギー 2. 3. 1 技術の変遷 特集Ⅰ:当社技術の変遷と将来展望 としての役割も担い,電力需要の負荷の平滑化に貢献して ⑵ 監視・制御装置 きたことは周知であるが,特に可変速揚水発電システムで 監視・制御装置はデジタル化され,近年では制御ネット は,系統安定化のための高速電力制御機能が大いにその性 ワーク,OPS(OPerator Station)による遠隔操作監視が可 能を発揮している。このように,幅広いニーズに対応して 能となった。また装置は省スペースと省電力化,高信頼性 きた水力発電システムの技術動向について述べる (図5) 。 と高機能化(保守性向上)が進み,環境負荷低減,高度なプ 2. 4. 1 水力発電設備の技術動向 ラント制御実現に寄与している。 発電所建設地の制約や建設コストの削減の方針に応え 2. 4. 2 可変速揚水発電システムの技術動向 るため,1980年頃から水力発電システムは,一般水力, 可変速揚水発電は,近年の風力発電や太陽光発電の増加 揚水を問わず高速・大容量化に向けた各要素技術の開発 に対し,系統電圧維持及び系統周波数の変動抑制等,電力 に邁進(まいしん)してきた。その技術革新の例について 系統の安定化のために寄与できる発電システムとして注目 述べる。 されている。一方で,一般水力に比べ設備が多くなること ⑴ 発電機 によって大容量化による経済性の追求が必須であり,高速 発電機の高速・大容量化では,回転体の強度アップは言 化によるコンパクト化が技術課題である。 うまでもないが,軸受の信頼性向上及び冷却方式の開発が 可変速揚水発電電動機の回転子は一般揚水機の突極回転 最大の課題である。 子と異なり固定子と同様の三相巻線を適用するが,回転速 エネルギー ① 樹脂軸受 度の2乗に比例して遠心力が働くため,高速になるほどコ 軸受は発電機の構成部品の中でも最も信頼性が要求 イルエンド部の強度確保が困難となる。このため,1994年 される部位の1つである。軸受摺動 (しゅうどう) 面に, にバインド線による高速機向けコイル支持構造を開発し, 従来のホワイトメタルと比較して,耐摩耗性,耐焼付 回転速度600r/minの世界最速級機を2009年,2011年に国 性,高温での機械強度に優れ,摺動摩擦係数の低い樹脂 内向けに2台,2010年に海外向けに1台納入した。 2. 4. 3 将 来 動 向 (注2) PEEK (ポリエーテル・エーテル・ケトン)を適用す る技術開発を行った。1999年に中容量発電機への適用を 水力発電システムは,今後とも“電源のベストミックス” 皮切りに,中小一般水力向けを中心に実績を積み,2003 で重要な一翼を担ってゆくものと考える。 年に揚水発電電動機に,さらに2006年には当社最大寸法 系統安定化を可能とする可変速揚水システムは,更なる の大容量機にも展開した。 コンパクト化を図りシステムの導入を促進する。また既存 ② 冷却技術 設備を最新の高効率機に更新することによって,発電所の 大容量化に伴い製作限界を決する重要な要素となっ 延命化と水資源の最大活用に向けた取組みを進める。 (注2) PEEKは,Victrexの登録商標である。 た固定子・回転子の冷却については,解析によってラ ジアルファンとリムダクトの併用を最適化した自冷通 風方式を開発し,2000年に従来の容量・回転速度の実 績を大きく上回る揚水発電電動機に適用した。 年代 1950 1960 1970 高度経済成長 社会/技術/ 業界の動向 水力大容量化需給調整運転 遠隔自動化 水力発電システム 1990 2000 高度情報化 エポキシ絶縁 空冷軸受 可変速発電電動機 制御・監視・保護・伝送の統合化 可変速揚水発電システム 総合デジタル化 樹脂軸受 中小容量発電機推進・大容量化へ 小容量発電機 樹脂軸受(PEEK) 2020 揚水発電負荷調整性能高度化 揚水発電始動システム性能向上 信頼性・保守性向上 IM 始動方式/サイリスタ始動方式 2010 環境負荷低減 揚水プラント導入 中小容量水力発電推進 アナログ制御 1920年代 初号機製造 1980 安定成長 大容量 G / M 大容量 G / M 高落差・大容量可変速 G / M 注)G / M:発電電動機 高落差・大容量可変速 G / M 総合デジタル化 (プラント運転監視システム) 図5.水力発電システム技術の変遷 44 (530) 三菱電機技報・Vol.88・No.9・2014 特集Ⅰ:当社技術の変遷と将来展望 3.今後の展望 2011年に発生した東日本大震災以降,電力安定供給への 関心の高まり,電力システム改革を起点とする新たなエネ ルギー需給システム構築への取組みが加速している。再生 可能エネルギー利用の拡大に代表されるエネルギー源の多 様化とともに分散型エネルギーの有効性の認識が進み,地 域の特性に応じたエネルギー需給管理の実現やそれを支え る電力系統全体の運用性向上等,電力市場では今までにな い多くの変化が強く求められている。 当社は発電プラントの変遷とともに,それを支える高度 な技術で発電機,主回路設備等の大容量化やコンパクト化 を進め,また最新の監視制御システム適用によるプラント 安定運用,省力化に取り組んできた。近年では,大容量化 とともに適用が進むガスタービン起動に不可欠なパワーエ エネルギー レクトロニクス応用の静止型起動装置の開発など,高効率 で環境負荷の低い最新の発電プラントに合致した電機品を 供給し,最適な発電プラントの実現に向けた貢献を重ねて いる。 4.む す び 今後も当社は,火力,原子力,水力といった電力供給 の中核となる発電システムを主体としつつ,電力市場の 自由化進展の中で拡大する新たなエネルギー最適運用へ の要求に対し,監視制御技術,情報通信技術での先端技 術を結集させて応えていくとともに,発電プラントに欠 かすことのできない発電機など高度な技術に支えられた 基盤となる電機品の継続的な開発・製造を通じて,多様 化する要求に幅広く応え,社会の永続的な発展に向けた 貢献を続けていく。 発電 システム 原子力発電所 風力発電所 火力発電所 SVG 太陽光発電所 (静止型無効電力発生装置) 水力発電所 揚水発電所 送変電 システム 変電所 系統用蓄電池 系統制御用ネットワーク 開閉器 EV 充電 電気自動車 ステーション (EV, PHEV) 配電自動化ネットワーク SVC (静止型無効電力補償装置) SVR(自動電圧調整器) 次世代 電子メーター 需要家 企業・ビル・工場 配電 システム 自動検針ネットワーク 一般家庭 太陽光発電 システム パワー コンディショナ 電気自動車 (EV, PHEV) ホーム ゲートウェイ 蓄電池 エコキュート 図6.電力システムの今後 (イメージ) 45 (531)