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PET 薬剤を用いた がんの質的診断に関する基礎的研究

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PET 薬剤を用いた がんの質的診断に関する基礎的研究
PET 薬剤を用いた
がんの質的診断に関する基礎的研究
2010 年
齋藤 有里子
目次
1. 略語表
・・・・4
2. 緒言
・・・・6
3. 第一章:治療薬の薬効評価に対する PET 薬剤の利用
3-1. 序
1. PET 薬剤の利用
・・・・9
2. 中皮腫と治療
・・・・11
3. 研究目的
・・・・11
3-2. 方法
1. 細胞
・・・・12
2. プラスミドの導入
・・・・12
3. In vitro での標識薬剤の取り込み
・・・・13
4. 担がんマウスへの pemetrexed 投与
・・・・13
5. 蛍光強度測定
・・・・13
6. In vivo での標識薬剤の取り込み
・・・・14
7. 統計処理
・・・・14
3-3. 結果
1. In vitro での標識薬剤の取り込み検討
・・・・14
2. In vivo での標識薬剤の取り込み検討
・・・・18
3-4. 考察
・・・・23
4. 第二章:活性型 EGFR に対する新規分子標的 PET 薬剤の開発とその有用
4-1. 序
・・・・27
1. EGFR とその機能
・・・・27
2. EGFR の異常とがん
・・・・28
3. EGFR を標的としたがんの画像化
・・・・31
4. 研究目的
・・・・32
4-2. 一節:薬剤設計と合成
4-2-1. 序
・・・・33
4-2-2. 方法
1. プラスミドの構築
・・・・36
2. 薬剤の合成と確認
・・・・37
125
3. 薬剤の I標識
・・・・37
4. 薬剤の分析
・・・・38
4-2-3. 結果
1. 薬剤の合成
・・・・38
125
2. 薬剤の I標識
・・・・38
4-2-4. 考察
・・・・42
1
4-3. 二節:画像診断薬剤としての有用性検討
4-3-1. 序
・・・・43
4-3-2. 方法
1. 細胞
・・・・43
2. 培養条件の決定
・・・・44
3. 細胞への薬剤導入効率と細胞内滞留性の検討
・・・・44
4. EGFR との結合検討
・・・・44
5. 抗体
・・・・45
6. 免疫沈降
・・・・45
7. Western blot
・・・・45
8. 免疫染色
・・・・46
125
・・・・46
9. マウス血しょう中の I標識薬剤の安定性
125
10. 担がんマウスを用いた I標識薬剤の体内分布
・・・・47
4-3-3. 結果
1. 放射性未標識体を用いる場合の最適培養条件の決定
・・・・47
2. TSF と TSSF の細胞内取り込みと細胞内滞留性の比較
・・・・50
3. EGFR との結合
・・・・50
4. EGFR の活性化と TSF の細胞内特性
・・・・55
5. 通常培養下での TSF の細胞内局在
・・・・55
6. EGFR の不活性化と TSF の細胞内滞留性
・・・・55
125
7. 担がんマウスでの I標識薬剤の体内分布
・・・・59
4-3-4. 考察
・・・・63
4-4. 小括
・・・・68
5. 総括
・・・・71
6. 参考文献
・・・・72
7. 英文 :Comparison of semiquantitative fluorescence imaging and PET tracer
uptake in mesothelioma models as a monitoring system for growth and
therapeutic effects.
7-1. Introduction
・・・・80
7-2. Materials and Methods
2.1. Cell culture and vectors
・・・・82
2.2. RFP gene transfection
・・・・82
2.3. Cell growth and treatment with cytotoxic reagents
・・・・82
2.4. Fluorescence imaging
・・・・83
2.5. FLT and FDG uptake in vitro
・・・・84
2.6. Animal experiments
・・・・84
2.7. Heterotopic tumor model
・・・・84
2.8. Orthotopic tumor model
・・・・85
2.9. FLT and FDG uptake in vivo
・・・・85
2.10. Statistical analysis
・・・・85
2
7-3. Results
3.1. Cell growth and treatment with cytotoxic reagents
3.2. FDG and FLT uptake in vitro
3.3. Monitoring tumor growth by fluorescence in vivo
3.4. Response to pemetrexed treatment in vivo
7-4. Discussion
7-5. Acknowledgements
7-6. References
8. 論文目録
9. 主査、副査名
10. 謝辞
3
・・・・86
・・・・87
・・・・88
・・・・90
・・・・91
・・・・95
・・・・96
・・・・99
・・・・99
・・・・100
1. 略語表
A
B
C
D
E
F
G
H
M
N
P
S
ACNU
AG1478
ATP
BSA
CM
c-Met
CPP
CT
DMEM
DOTA
DPP9
dTTP
EGF
EGFR
FBS
FDG
FLA
FLT
GLUT1
Grb2
HB-EGF
HK
HPLC
HRP
MAPK
Met
MRI
NF-κB
PBS
PBST
PET
PI3K
PLCg
PMSF
PT
%ID/g
SDS-PAGE
SF
1-(4-amino-2-methyl-5-pyrimidinyl)methyl3-(2-chloroethyl)-3-nitrosourea hydrochloride
Tyrophostin AG1478
adenosine 5’-triphosphate
bovine serum albumin
cell membrane
mesenchymal-epitelial transition factor
cell penetrating peptide
computed tomography
Dulbecco's modified Eagle medium
1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid
dipeptidyl-peptidase 9
deoxythymidine triphosphate
epidermal growth factor
epidermal growth factor receptor
fetal bovine serum
2-deoxy-2-fluorodeoxyglucose
Fluoro Image Analyzer
3’-deoxy-3’-fluorothymidine
glucose transporter 1
growth factor receptor bound protein 2
heparin-binding EGF-like growth factor
hexokinase
high performance liquid chromatography
horseradish peroxidase
mitogen-activated protein kinase
2-amino-4-(methylthio)butyric acid
magnetic resonance imaging
nuclear factor kappa B
phosphate buffered saline
phosphate buffered saline with Tween
positron emission tomography
phosphoinositide 3-kinase
phospholipase Cg
phenylmethylsulfonyl fluoride
pyrimidine transporter
a percentage of the injected dose per gram
sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis
protein consisting of the SH2 domain, Flag and Tyr
4
T
U
SH2
Shc
SMBS
Sos
SPECT
SSF
TAT
TFA
TGF-α
Thd
TK1
TP
TSF
TSSF
Tyr
US
Src-homology 2
Src homologous and collagen
sodium metabisulfite
son of sevenless
single photon emission computed tomography
protein consisting of two SH2 domains, Flag and Tyr
HIV-1 transactivating transcription
trifluoroacetic acid
transforming growth factor a
thymidine
thymidine kinase 1
thymidine phosphorylase
protein consisting of TAT, the SH2 domain, Flag and Tyr
protein consisting of TAT, two SH2 domains, Flag and Tyr
tyrosine residue
ultrasonography
5
2. 緒言
がんは日本の死亡原因第一位であり、死亡率の約 3 割を占めている。医療技
術の進歩により治癒率は上昇してきた。しかし、すい臓がんやスキルス胃がん
など適切な診断法が未だ開発されていないために、発見時には治療困難な状態
まで進行しており、根治が難しいものが多い。がんの克服のためには、がんの
早期診断に加えて、個々のがんの特徴や適切な治療法・治療薬の選択に指針を
与える質的診断が必要である。こうした観点からpositron emission tomography
(PET)、single photon emission computed tomography (SPECT)、computed tomography
(CT)、magnetic resonance imaging (MRI)、ultrasonography (US) を用いる非侵襲的
画像化法が注目されている1-4。Table 1 に小動物用及び臨床用の撮像法をまとめ
た。CTやMRIやUSは体外から物理的エネルギーを与えることで体内組織や病態
の形態的画像を得られる。これに対してPETとSPECTは放射性同位体で標識し
た薬剤と体内物質との相互作用を介して、細胞内生化学的変化や生理機能の変
化を捉えることが可能である。そのため近年では、これらの撮像手段を幾つか
組み合わせた多面的な画像解析を目指し、一現象や一分子機能を捉える試みも
進んでいる5。なかでも、がんの早期診断と詳細な質的診断に向けたPET薬剤の
開発研究が積極的に進められている6。またPET薬剤はがん治療薬に対する応答
性や効果判定、新規治療薬の体内動態や治療効果予測などにも活用されている。
PETの原理と特徴についてまとめる。PET核種(陽電子放出核種)から放出
された陽電子は、近傍の電子と結合して 180 度反対方向に 2 本の消滅g線を放出
する。標識に用いられている陽電子放出核種は11C、13N、15O、18Fなどがあり、
半減期が数分から 2 時間程度と比較的短いため、1 つの施設で薬剤を製造、管
理、撮像するのに高額の費用を要する。しかし半減期の短い放射性核種の使用
は、被ばく線量が問題となることなく同じ被験者に繰り返し検査を可能とする。
さらにPET装置はg線の入射方向を直接決めることができるので、高感度かつ高
分解能の画像を得ることに加え、2 つの消滅g線の性質により定量性の優れた画
像を取得できる利点を有する。
6
実 際 に が ん の 画 像 化 に は 2-deoxy-2-[18F]fluorodeoxyglucose ( [18F]FDG )、
3’-deoxy-3’-[18F]fluorothymidine([18F]FLT)、2-amino-4-([11C]methylthio)butyric acid
([11C]Met)、[11C] acetateなどが用いられている。それぞれ、多くのがん細胞で亢
進しているグルコース代謝、核酸代謝、アミノ酸代謝、好気性代謝(細胞膜合
成)を測定する7-11。近年では、生体内の機能分子の動態を捕捉することで個々
のがんを診断する分子標的PET薬剤の開発も進められている。これらは標的へ
の特異性が高く、治療法の選択や治療薬の開発を考える上で重要な情報を提供
し得る。このようなPET薬剤の充実化は発症部位や性質によっては検出困難な
がんでも、分子標的薬剤を換えれば検出可能となる可能性もあり、迅速ながん
診断と適切な治療を期待できる。
以上の背景から本研究では、PET を用いたがんの質的診断をさらに発展させ
るため、がん治療時における PET 薬剤の適応拡大や新規分子標的 PET 薬剤の
開発に焦点を当てた。第一章では難治がんの一つである中皮腫の治療薬応答性
に関して FDG と FLT の取り込みの検討から、治療効果判定に FLT が有効であ
ることを明らかにした。第二章では活性型 EGFR(上皮増殖因子受容体)を標
的とした新規分子標的 PET 薬剤を設計・合成し、in vitro 及び担がんマウスでの
体内動態の検討で画像診断薬剤としての有用性を認めた。以下にそれぞれにつ
いて詳細に記す。
7
Table 1. 非侵襲的画像化法の特徴
Feature
PET/SPECT
CT
MRI
US
RI expose
Yes
No
No
No
Sensitivity
pM
-
µM-µM
-
Probe aµount
ng
-
µg-µg
µg-µg
0.5-2 µµ
50-200 µµ
25-100 µµ
50-500 µµ
10s-µ
µ
µ-h
s-µ
Depth
No liµit
No liµit
No liµit
µµ-cµ
Quantity
+++
-
++
+
Cost
very High
Low
High
Low
Spatial
Resolution
Teµporal
Resolution
Massoud TF et al., Gene & Dev; 2003; 17; 545-580
(一部改変)
8
3. 第一章:治療薬の薬効評価に対する PET 薬剤の利用
3-1. 序
1. PET薬剤の利用
PETはがんの位置や大きさの画像化に加えて、がんの悪性度や化学療法及び
放射線療法などの治療効果評価にも多用されている12,
13
(本論文では、これら
を総称して「質的診断」と位置付けた)。これは治療によって引き起こされるが
んの形状(大きさ)変化、つまり増殖停止やアポトーシス亢進などが起こる前
に、細胞内で進行する代謝変化を捉えられることに起因する。なかでもFDGと
FLTは基礎及び臨床研究で最も広く用いられているPET薬剤である14-17。
FDGはグルコースの 2 位の水酸基をフッ素に置換した化合物であり、1977 年
に初めて合成された(Fig. 1A)18。主にglucose transporter 1(GLUT1)によって
細胞内に取り込まれる。細胞内でhexokinase(HK)によってリン酸化され、
FDG-6-phosphateとして細胞内に貯留する。がん細胞ではGLUT1 の発現が高く、
HKの発現量が多く活性が高いので、FDGの顕著な貯留が起こる。しかしFDG
はがん部位だけでなく、脳や筋肉や炎症性細胞にも取り込まれることから、が
ん診断において擬陽性と判断されることもある19。日本では 2002 年から保険承
認されて現在のがん診断に最も汎用されているPET薬剤である。
一方、FLTはチミジンの 3’位の水酸基をフッ素に置換した化合物で、1998 年
にがんの画像化への利用が報告され、増殖能を評価する重要な薬剤として臨床
研究が活発に行われている(Fig. 1B)20。FLTはpyrimidine transporter(PT)によ
って細胞内に取り込まれた後にthymidine kinase 1(TK1)によって 5’位の水酸
基がリン酸化される。しかしフッ素の導入により次の酵素の基質とならないた
めDNAに組み込まれない。またthymidine phosphorylase
(TP) に対して高い分
解抵抗性を示すので、リン酸化状態で細胞質内に貯留する。TK1 の酵素活性は
静止期細胞ではほとんど認められないのに対し、増殖細胞のG1 期からS期で亢
進しているため、細胞増殖の有力な指標となる21。健常成人ではFLTは縦隔や脳
への集積は少ないのに対して、肝臓や骨髄や腎臓への集積が見られる22。
9
A
CH2OH
CH2OPO3
O
OH
OH
OH
[18F]FDG
O
Hexokinase
OH
Glucose-6
-phosphatase
18F
Phosphohexose isomerase
OH
OH
18F
O
O
B
CH3
HN
[18F]FLT
HO
Thymidine phosphorylase
HO3PO
N
O
O
CH3
HN
N
O
O
Thymidine kinase 1
18F
18F
O
C
O
CH3
HN
Thd
HO
Thymidine
phosphorylase
HO3PO
N
O
O
CH3
HN
O
O
N
Thymidine kinase 1
O
OH
CH3
HN
OH
O
N
O
H
H3C
NH
+
O
NH2
HO
O
dT-DP
OH
H3C
OPO3H
CO2
NH3
dT-TP
OH
NH2
DNA
OH
Fig. 1 [18F]FDG、[18F]FLT及びThdの構造式と代謝経路
PET薬剤として広範囲に利用されている[18F]FDG (A)と [18F]FLT(B)及びThd(C)の
構造式と代謝経路を示した。
10
2. 中皮腫と治療
中皮腫は難治がんの一つであり、胸膜や腹膜や心膜にある中皮細胞が無秩序
に増殖しがん化する23。中皮腫の主な原因はアスベスト曝露であり、曝露から
30-50 年かけて発症することから、日本では次の 10-20 年で患者数が最高値に達
すると予想されている4, 24。中皮腫は初発症状が乏しいため、早期発見が困難で
あり、発見時にはステージⅢ(胸腔や腹腔、胸腔外リンパ節にまで浸潤した状
態)からⅣ(血行性の転移を伴っている状態、遠隔転移)まで進行しているこ
とが多い。中皮腫の治療法としては外科的摘出や治療薬を用いた化学療法、放
射線療法などが挙げられる。ステージの初期の段階では外科的摘出が一番に施
されるが、多くの場合は化学療法が第一の選択肢である。放射線療法は手術後
の再発防止や痛み緩和に用いられているが、単独では高い効果は得られておら
ず、化学療法との併用が一般的である。中皮腫の治療薬としてはcisplatinとの併
用でgemcitabineやpemetrexedが使用されている。日本では中皮腫治療薬として
2007 年にcisplatinとpemetrexedの併用が認可されている25。しかし治療後の予後
不良もあり、中皮腫患者の余命は平均 1 年弱と短い26。
3. 研究目的
中皮腫の治療法や治療計画の充実のためには、治療の有効性を早期に判定し、
適切な治療を施すことが重要である。PemetrexedはDNA塩基であるチミンのde
novo DNA合成に関わる数種の酵素(thymidylate synthase、dihydrofolate reductase
など)を阻害する25。そこで本研究では、治療時に第一に選択されるpemetrexed
への中皮腫の応答性と治療効果判定に対するPET薬剤の有用性について、DNA
合成評価薬剤であるFLTとDNA合成には直接関与していないFDGを用いて検討
した。なお、本研究では、半減期が長く、本来の性質を損なわずに基礎実験を
行うことのできる、FDGの任意の炭素を14Cに置換した [14C(U)]FDG([14C]FDG)
及びFLTのメチル基の水素を3Hに置換した[methyl-3H]FLT([3H]FLT)を用いた。
モデル細胞にはヒト中皮腫細胞であるMSTO-211H細胞を選択し、体外から腫瘍
11
の位置や大きさ変化を把握できるように蛍光タンパク質であるDsRedを遺伝子
導入した。DsRedの蛍光波長は長く、皮膚を通しても比較的強い蛍光強度が得
られるためである。In vitroでpemetrexedを含む幾つかの代謝阻害剤処理時の
FDG及びFLTの取り込みを経時的に測定した。またFLTと同様にDNA合成指標
薬剤であるthymidine(Thd、Fig. 1C)についても、メチル基の水素を3Hに置換
した[methyl-3H]Thd([3H]Thd)を用いて、併せて検討を加えた。In vivoでは担
がんマウスにpemetrexedを投与してFDG及びFLTの取り込みを検討した。
3-2. 方法
1. 細胞
ヒト中皮腫由来MSTO-211H細胞はAmerican Type Culture Collection (ATCC,
Manassas, VA, USA) より購入し、10% fetal bovine serum (FBS, SAFC Biosciences,
KS, USA), 50 units/mL penicillin/50 µg/mL streptomycin (GIBCO Invitrogen Corp.,
Carlsband, CA, USA) を含んだRPMI1640 (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) で
培養した。以下、この培地を通常培地と記す。培養環境は 5% CO 2 、37 °Cで行
った。
2. プラスミドの導入
pDsRed-C1 はClontech(Mountain View, CA, USA)より購入した。6 well plate
に 1.0 × 106 cells/well の細胞を播種し、10% FBSかつ抗生物質不含有培地で培養
した。予め調製した 1 µgのpDsRed-C1 を含んだLipofectamine 2000 (Invitrogen)
を細胞に添加した。6 時間後に細胞をphosphate buffered saline (PBS, Sigma) で洗
浄し、通常培地で培養した。 48 時間後に細胞を 0.05% trypsin/EDTA (GIBCO) で
処理し、800 µg/mLのG418 (Roche, Basel, Switzerland) を含む培地に切り換えて
長期培養した。得られたクローンのうち蛍光強度の最も強いG418 耐性細胞
(MSTO-211H-Ds)を本実験で用いた。
3. In vitroでの標識薬剤の取り込み
12
細胞を播種してから 24 時間後に 1.0 µg/mLのactinomycin D
(Sigma)、1.0 µg/mL
のcycloheximide(Sigma)または 60 nMのpemetrexed(Alimta, kindly provided by
ELI Lilly Japan K.K., Hyogo, Japan)で 1, 3, 6, 10, 24, 48 時間処理した。経時的に
3.7 kBqの [14C]FDG(11.1 GBq/mmole, American Radiolabeled Chemicals Inc., St.
Louis, MO, USA) と 7.4 kBq の [3H]FLT(62.9 GBq/mmole, Moravek Biochemicals
Inc., Brea, CA, USA) または 7.4 kBqの[3H]Thd (3.33 TBq/mmole, Moravek) を含
む培地に交換して 1 時間培養した。処理後速やかにPBSで細胞を洗浄し、0.2 N
NaOHで溶解した。9 mLのHionic fluor(PerkinElmer Japan Co., Ltd., Kanagawa,
Japan)に溶解液を入れ、液体シンチレーションカウンター(LS6000, Beckman
Coulter, Inc., Fullerton, CA, USA) で放射活性を測定した。
4. 担がんマウスへのpemetrexed投与
BALB cAJ nu/nuマウス (4 週齢、雌) はCLEA Japan, Inc. (Tokyo, Japan) から購
入した。動物実験は放射線医学総合研究所内規定の動物実験法に則って行った。
5 週齢のマウスの脚に 1.0 × 106個のMSTO-211H-Ds細胞を皮下移植した。移植し
て 2 週間後に 200 mg/kgのpemetrexed (PBSに溶解)またはPBSを単回投与また
は 1 回/日、5 日/週を 2 週間に渡って腹腔内注射した。投与量はヒトの治療使用
量をマウス体重に換算した値である。腫瘍の長径(a)と短径(b)を計測し、
腫瘍の大きさはV = a× b2 × π /6 で求めた27。投与開始時の腫瘍の大きさを 1 とし
た相対的な成長率を算出した。
5. 蛍光強度測定
蛍光強度は IVIS Lumina Imaging System (Xenogen, Alameda, CA, USA) で測定
した。細胞または 2-chloro-2-(difluoromethoxy)-1,1,1-trifluoro-ethane (isoflurane,
Merck, Darmstadt, Germany) 麻酔下のマウスを、DsRed filter set (excitation:
500/550 nm; emission: 575/650 nm) と background filter set (excitation: 460/490 nm;
emission: 575/650 nm) で撮像した。画像は Living Image software (Xenogen) で解
13
析した。
6. In vivoでの標識薬剤の取り込み
Pemetrexed単回投与の場合は、投与して 1, 12, 24, 48 時間後に 37 kBqの
[14C]FDG と 185 kBq の[3H]FLTを同時に尾静脈投与した。治療実験終了 24 時
間後のマウスにも先述と同量の[14C]FDG と[3H]FLT を尾静脈投与した。1 時間
後、心臓採血してから腫瘍及び関心組織を 100 mgずつ摘出し、Soluene 350
(PerkinElmer)とHionic fluorで溶解した。液体シンチレーションカウンターで
放射活性を測定した。解析は各放射活性値をマウス 20 gで標準化して%ID/g(a
percentage of the injected dose per gram)で示した。
7. 統計処理
F test に従って Aspin-Welch’s t test または Student’s t test を行った。
3-3. 結果
1. In vitroでの標識薬剤の取り込み検討
蛍光タンパク質を細胞内で過剰発現させると、細胞毒性を呈することがあ
る28。本研究で取得したMSTO-211H-Ds細胞は細胞増殖や増殖倍加時間において、
親株であるMSTO-211H細胞と統計的有意差はなかった。MSTO-211H-Ds細胞の
倍加時間は 21.9±1.8 時間に対し、親株は 22.7±1.8 時間であった。また細胞の
蛍光強度と細胞密度は強く正の相関にあった(Fig. 2, R2=1.00)。
細胞を中皮腫治療薬pemetrexed(DNA合成阻害剤)で処理し、[14C]FDG、
[3H]FLTまたは[3H]Thdの取り込みを経時的に測定した。PemetrexedによるDNA
合成阻害の対照実験として、actinomycin D(転写抑制剤)またはcycloheximide
14
A
1.5
3.0
6.0
12
25
50
×104 cells
photon/sec/cm2/sr
Fluorescence intensity (× 1010 p/s)
B
3
R2=1.00
1.5
0
0
5
10
Cell number (× 105 cells)
Fig. 2 MSTO-211H-Ds細胞の作製
(A)MSTO-211H-Ds細胞を各細胞密度(左)で播種した時の蛍光画像図(右)である。
(B)横軸に細胞数、縦軸に蛍光強度をとってプロットした(n=3)。Rは相関係数を示し
ている。
15
Cell number (x 105 cells)
A
control
5
inhibitor-treated
4
3
2
1
0
0
12
24
36
48
Time after treatment (h)
0
12
24
36
Time after treatment (h)
Cell number (x 105 cells)
B
5
4
3
2
1
0
48
Cell number (x 105 cells)
C
5
4
3
2
1
0
0
12
24
36
48
Time after treatment (h)
Fig. 3 阻害剤処理時の細胞数変化
MSTO-211H-Ds細胞を1.0 μg/ml のactinomycin D(A)、1.0 μg/mlのcycloheximide
(B)、60 nMのpemetrexed(C)処理してからの経時的な細胞数の変化を計数した。図
は平均値±SDで示している(n=3)。
16
A
FDG
Thd
Relative uptake
1
FLT
0.5
0
B
0
12
24
36
48
Time after treatment (h)
0
12
24
36
48
Time after treatment (h)
0
12
24
36
48
Time after treatment (h)
Relative uptake
1
0.5
0
C
Relative uptake
10
5
0
Fig. 4 阻害剤処理時の[14C]FDG、[3H]FLT及び[3H]Thdの取り込み
MSTO-211H-Ds細胞を1.0 μg/mlのactinomycin D(A)、1.0 μg/mlのcycloheximide
(B)、60 nMのpemetrexed(C)処理してからの各標識薬剤の経時的取り込みを調べた。
各標識薬剤の取り込み時間は1時間で、処理前の取り込み量に対する比率で算出し
た。図は平均値で表している(n=3)。
17
(タンパク質合成阻害剤)でも細胞を処理し、各標識薬剤の取り込み量を測定
した。各阻害剤濃度は 4-5 日で 70-90%の細胞が死滅する濃度を用いた。阻害剤
処理によって細胞増殖能は顕著に低下していた(Fig. 3)。Actinomycin Dまたは
cycloheximide処理した細胞では各標識薬剤は同じような動態を示し、処理後速
やかに取り込み量が減少し、3 時間で約 30%にまで低下した(Fig. 4A,B)。一方
でpemetrexed処理した細胞では、[14C]FDGの取り込みは経時変化はほとんど観
察されなかったのに対し、[3H]Thd及び[3H]FLTは一時的に顕著な取り込み増加
を示した(Fig. 4C)。取り込み量が最高値を示した処理後 10 時間では[14C]FDG
の取り込み量は処理前よりも 2.2±0.39 倍増加したのに対し、[3H]Thdは 3.1±
0.18 倍、[3H]FLTは 9.5±0.34 倍増加した。
2. In vivoでの標識薬剤の取り込み検討
担がんマウスにpemetrexedを単回投与して、[14C]FDGと [3H]FLTの取り込み
を経時測定した(Table 2)。腫瘍への[14C]FDGの取り込みは時間経過による大き
な変動は観られなかった。一方、腫瘍への[3H]FLTの取り込み量はpemetrexed投
与後速やかに増加し、腫瘍対血液比も 12 と 24 時間で 4.55±1.03、4.01±1.39 と
最高値を示した。その後の[3H]FLT取り込み量は減少し、48 時間では未処理群
と同程度であった。
次 に 治 療 後 に お け る [14C]FDG と [3H]FLT の 取 り 込 み 量 を 測 定 し た 。
Pemetrexed長期投与による治療実験では、腫瘍の縮小は観られなかったものの、
顕著な腫瘍の成長抑制が観察された(Fig. 5)。治療実験終了後のpemetrexed処理
群の腫瘍成長率はコントロール群の約半分にまで抑制された。また治療期間に
腫瘍の蛍光強度測定を行ったところ、実験終了時にpemetrexed処理群の蛍光強
度はコントロール群の約半分にまで抑制された(Fig. 6)。治療実験終了 24 時間
後に[14C]FDGと[3H]FLTの取り込みを調べると、[14C]FDGはコントロール群と同
程度の腫瘍への集積を示したのに対し、[3H]FLTはコントロール群よりも約 4
倍多く腫瘍に集積した(Fig. 7)。
18
Table 2. Pemetrexed単回投与時のin vivoでの[14C]FDG及び[3H]FLTの取り込み
担がんマウスに200 mg/kgのpemetrexedを単回投与した時の[3H]FLT (A)及び
[14C]FDG (B)の各組織への経時的取り込みを示した。%ID/gに換算し、平均値
±SDで表している( n=3-5; * p<0.01)。T/Bは腫瘍対血液比を示している。
A
FLT
control
1h
12 h
24 h
48 h
Blood
1.25 ± 0.23
1.64 ± 0.40
0.88 ± 0.10
1.23 ± 0.06
1.32 ± 0.15
Muscle
1.29 ± 0.21
2.04 ± 1.13
0.71 ± 0.14
1.18 ± 0.23
1.17 ± 0.11
Tumor
1.97 ± 0.39
6.43 ± 3.33 ∗
4.00 ± 0.91 ∗
5.36 ± 1.47 ∗
2.23 ± 0.17
Lung
2.40 ± 1.29
2.60 ± 0.79
1.46 ± 0.93
7.99 ± 4.66 ∗
1.55 ± 0.24
Kidney
4.48 ± 0.60
3.47 ± 0.91
2.35 ± 0.29
4.31 ± 1.56
2.78 ± 0.35
Liver
2.09 ± 0.25
2.50 ± 0.60
1.57 ± 0.33
1.83 ± 0.11
1.80 ± 0.13
T/B
1.59 ± 0.19
3.09 ± 0.60 ∗
4.55 ± 1.03 ∗
4.01 ± 1.39 ∗
1.70 ± 0.28
FDG
control
1h
12 h
24 h
48 h
Blood
0.49 ± 0.07
0.47 ± 0.11
0.45 ± 0.07
0.47 ± 0.03
0.56 ± 0.08
Muscle
5.99 ± 1.95
6.10 ± 2.90
4.10 ± 0.30
5.81 ± 1.77
4.78 ± 1.40
Tumor
4.21 ± 1.01
3.50 ± 0.69
3.02 ± 0.25
5.18 ± 1.06
3.47 ± 0.35
Lung
2.39 ± 0.68
2.47 ± 0.50
1.99 ± 0.67
1.88 ± 0.37
2.32 ± 0.23
Kidney
1.23 ± 0.34
1.12 ± 0.22
0.95 ± 0.18
1.27 ± 0.25
1.23 ± 0.11
Liver
0.96 ± 0.12
0.93 ± 0.21
0.74 ± 0.14
1.00 ± 0.05
0.96 ± 0.11
T/B
8.58 ± 1.36
7.81 ± 2.26
7.11 ± 0.43
10.9 ± 2.68
6.18 ± 0.57
B
19
control
pemetrexed-treated
Ratio of tumour volume
8
4
*
*
0
0
Treatment time (days) 15
Fig. 5 治療実験時の腫瘍大きさ変化
担がんマウスに200 mg/kgのpemetrexedを1回/日、5日/週、2週間に渡って投与した。
経時的に腫瘍の大きさを計測し、大きさの変化率を平均値±SDで表している
(control n=4, pemetrexed n=6;* p<0.05)。
20
A
8
14
days
Pemetrexed-treated
Control
0
photon/sec/cm2/sr
B
Ratio of fluorescence intensity
control
pemetrexed-treated
6
3
*
0
0
Treatment time (days) 15
Fig. 6 治療実験時の蛍光画像と蛍光強度変化
腫瘍の蛍光強度を経時的に測定した。(A)蛍光画像、(B)蛍光強度変化率を平均値
±SDで表している(control n=4, pemetrexed n=6;* p<0.05)。
21
control
pemetrexed-treated
A
8
*
Muscle
Muscle
0
*
Blood
*
*
Blood
4
Relative ratio
% ID/g
8
*
*
4
Liver
Kidney
Lung
Tumor
Muscle
Blood
0
B
8
4
*
0
Relative ratio
% ID/g
16
8
Liver
Kidney
Lung
Tumor
Muscle
Blood
0
Fig. 7 治療実験時の[14C]FDG及び[3H]FLTの取り込み
治療実験終了24時間後に、 [3H]FLT (A)と [14C]FDG (B)を1時間取り込ませた。図
は平均値±SDで表している(control n=3, pemetrexed n=5;* p<0.05)。右は腫瘍対血
液比と対筋肉比を示している。
22
3-4. 考察
非侵襲的ながんの画像化は、診断や治療を目的とする基礎及び臨床研究開発
の重要な手段となり得る。がんの質的診断や薬効評価には、PETやSPECTやMRI
などが用いられている1, 29-32。本実験では、適正かつ迅速な中皮腫治療を目指し
て、中皮腫の治療薬pemetrexedに対する応答性を評価するため、グルコース代
謝の指標となる[14C]FDGとDNA合成の指標となる[3H]FLTと[3H]Thdを用いた33,
34
。
Actinomycin Dまたはcycloheximide 処理時には処理後 1-3 時間という生細胞
数の減少が起こる前に、[14C]FDGや[3H]FLTの取り込み量が減少した。これは、
これらの阻害剤が短時間でタンパク質合成やエネルギー代謝に影響を及ぼすた
めと推測される35, 36。一方、pemetrexed処理した場合は[14C]FDGの取り込みは僅
かに増加したもののほとんど変化はなかった。処理初期にはGLUT1 による
[14C]FDGの取り込みやHKの酵素活性は影響を受けていないことを示唆する。こ
れに対して [3H]FLTと[3H]Thdは一時的に顕著な取り込み増加を観察した。
Pemetrexedは葉酸代謝経路に関わる酵素機能を阻害してde novo DNA合成を抑
制するため、細胞に処理すると細胞周期S期停止を引き起こす23, 37, 38。使用した
pemetrexedの濃度は細胞死を引き起こすのに十分であり、細胞増殖能低下も観
られたことから、de novo DNA合成を阻害する 5-fluorouracilやmethotrexateで処
理した細胞でも観察されているように、de novo DNA合成経路阻害の補償作用
としてsalvage経路の酵素であるTK1 の活性が亢進されたことが、[3H]FLTと
[3H]Thdで観察された一時的な取り込み増加の主たる原因と考えられる39。
[3H]FLTと[3H]Thdの取り込みを比較すると、同じような動態を示したものの、
[3H]FLTの方が顕著な取り込み増加を示した。同様なThdとFLTの動態はアルキ
ル系抗がん剤であるACNU (Nidran, 1-(4-amino-2-methyl-5-pyrimidinyl)methyl3-(2-chloroethyl)-3-nitrosourea hydrochloride) で細胞処理した研究においても観察
されている36。Thdは細胞内に輸送された後にDNAに導入されるので、DNA合成
の指標薬剤として用いられており、その取り込みは細胞周期のS期の細胞の割合
23
と強く相関している34, 40(Fig. 1C, 8A)。Pemetrexedによる一時的なTK1 活性の上
昇により、Thdはリン酸化を受けて最終的にdeoxythymidine triphosphate (dTTP)とし
てDNAに取り込まれるが、DNA合成停止が引き起こされ細胞内生理機能が低下
す る た め、徐々にDNAへの取り込みが減少する。加えて、 Thd はthymidine
phosphorylase (TP)による分解を受けて、最終的に 3-amino isobutyric acid、CO 2 、
NH 3 にまで分解されて細胞外に排出される(Fig. 8B)。一方、[3H]FLTは細胞内に
取り込まれてもDNAには導入されず、取り込み量はTK1 の活性に依存する(Fig.
8A)。従って、pemetrexed処理でTK1 活性が増加することにより、 [3H]FLTはリ
ン酸化されて細胞内に貯留する。さらにFLTはフッ素の導入によりThdと異なり
TPに抵抗性を示すので、そのまま細胞質内に滞留する。Pemetrexed処理後 10 時
間以降は、[3H]Thdの時と同様に、徐々に細胞の生理機能が低下して[3H]FLTの取
り込み自体も減少する(Fig. 8B)。
In vivoにおいても[14C]FDGの取り込みは、pemetrexed投与後も変化しなかった
が、[3H]FLTは経時的に高い集積を示した。これはin vitroの結果をよく反映して
おり、in vivoでもFLTを用いて腫瘍のpemetrexed応答性を測定できることを示唆
する。
治療実験においても [3H]FLTの取り込みの増加を認め、長期投与終了しても
腫瘍の治療応答性が持続していることが明らかとなった。治療実験後の肺や腎
臓への [3H]FLTの高い取り込みが観られた。Pemetrexedによる治療では肺や腎
障害の副作用が報告されている。従って、これらの組織への[3H]FLTの取り込み
増加は、これらの組織がpemetrexedに感受性が高いことを示唆する。特に肺の
集積は中皮腫の発生場所である胸膜が近いことから、副作用とPET薬剤の取り
込みに対しても詳細な検討が必要とされる。
本研究での治療実験で腫瘍に含まれる DsRed の蛍光強度変化と腫瘍の大きさ
変化とは正の相関関係にあった。これは本研究で作製したマウスモデルは、今
後新たな中皮腫治療薬のための蛍光と PET を組み合わせた薬効評価モデルと
しても活用できることを示唆する。
24
Thd
FLT
PT
PT
(degradation) Thd
FLT
A
CM
TK1
TP
P
P
FLT
P
Thd
FLT
dTTP
P
P
FLT
FLT
P
T
N
B
(degradation)
P
T T P
P
T T
T
Thd
FLT
PT
PT
Thd
FLT
CM
P
FLT
TK1
TP
P
P
P
Thd
FLT
dTTP
FLT
FLT
P
P
P
FLT
P
FLT
FLT
P
N
T
P
FLT
Fig. 8 Pemetrexed処理時の[3H]Thdと[3H]FLTの取り込み様式
(A) [3H]Thdと[3H]FLTはpyrimidine transporter(PT)を介して細胞内に取り込まれる。
がん細胞では増殖亢進のためthymidine kinase 1(TK1)の活性が高く、両薬剤はリン
酸化され[3H]Thdは最終的にdTTPとなってDNAに、 [3H]FLTはそのままの形で細胞
質に滞留する。(B)Pemetrexed処理すると、TK1の活性は一時的に向上するので、両
薬剤はリン酸化される。しかし細胞内のDNA合成停止により、[3H]Thdはthymidine
phosphorylase(TP)により分解を受けてしまう。一方、 [3H]FLTはTP抵抗性のため、
細胞質に滞留する。図中のNは核を、CMは細胞膜を、dTTPはdeoxythymidine
triphosphate、Tはチミン塩基を、 P はリン酸基を示している。矢印の太さは活性の大
きさを示している。
25
本研究により、pemetrexed処理後速やかに[3H]FLTの取り込み増加が見られた
ことから、中皮腫に対するpemetrexedの治療応答の検出にはFLTの方がFDG
よりも適することを明らかにした。しかしin vitroの検討で、作用機序の異なる
阻害剤の処理でPET薬剤の取り込みが異なったことから、評価に用いるPET薬
剤は治療薬の作用機序を理解した上で選択する必要がある。実際、乳がんや脳
腫瘍やリンパ腫の放射線治療や薬物治療に対してFLTの取り込みを検討したと
ころ、本研究結果に反して治療後のFLTの低集積が観察されている14, 41, 42。本研
究で使用したMSTO-211H細胞を移植したマウスでは、 本来[18F]FLTの取り込み
が低く、腫瘍の検出が困難であった43。本研究で、集積の低いFLTがpemetrexed
処理によって顕著に多く取り込まれたことは、臨床におけるPET診断でも
[18F]FLTは[18F]FDGに比べて高感度で、その集積を検出できることを示唆する。
従って、[18F]FLTは腫瘍のpemetrexed及びde novo DNA合成阻害薬剤の治療効果
判定に有用であると結論される。
26
4. 第二章:活性型 EGFR に対する新規分子標的 PET 薬剤の開発とその有用
4-1. 序
第一章では治療薬の効果判定に対するPET薬剤の利用について述べた。そし
て中皮腫の治療薬pemetrexedへの応答性を判断する場合には [18F]FLTが適する
ことを見出した。ヒトのがんは個性的であり、同じ治療薬に対して必ずしも同
じ薬効を示すとは限らない。近年では、がん細胞で特異的に発現している分子
を標的とし、その分子の発現や機能を抑制することでがんを治療する個別化医
療へ推移しつつある44, 45。がんの特徴や治療効果を定量的に評価するためには、
PETを用いた標的分子の発現や機能を画像化することが必要となり、がん細胞
特異的に集積するPET薬剤の開発が進んでいる。多くのがんで発現異常が報告
されている上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor, EGFR)もその
標的分子の一つとして注目されている。
1. EGFRとその機能
EGFRは 1984 年に遺伝子配列が決定された 1 回膜貫通型の受容体で、チロシ
ンキナーゼ型受容体の中でも、構造上の類似性からerbBファミリーとよばれる
型の受容体に属する46。ErbBファミリーは 4 つのサブタイプに分かれており、
EGFRはerbB1 とも呼ばれている。EGFRはリガンド結合部位を含む細胞外領域、
細胞膜貫通領域、細胞内領域の三つの領域から成る 170 kDaのタンパク質であ
る(Fig. 9)。EGFRのリガンドにはEGFやtransforming growth factor a(TGFa)、
amphiregulin、heparin-binding EGF-like growth factor(HB-EGF)が存在し、これ
らがEGFRに結合するとEGFRは活性化して、ホモ二量体もしくは他のerbB受容
体とヘテロ二量体を形成する。そしてC末の細胞内領域にあるチロシンキナー
ゼ部位がadenosine 5’-triphosphate(ATP)を利用してC末周辺の複数のチロシン
残基をリン酸化する(自己リン酸化)47-51。EGFR二量体の各リン酸化チロシン
残基には特異的なタンパク質が結合する。これらのタンパク質はアダプター分
子と呼ばれ、Src-homology 2 (SH2) ドメインを介して結合することが知られて
27
いる52。例えば、growth factor receptor bound protein 2 (Grb2)はEGFR二量体の 1068
番目(Tyr1068)、Src homologous and collagen (Shc)は 1148 番目と 1173 番目(Tyr1148、
Tyr1173)、phospholipase Cg (PLCg)は 992 番目(Tyr992)のリン酸化チロシン残基
に結合する。アダプター分子の結合により、mitogen-activated protein kinase
(MAPK)、nuclear factor kappa B(NF-κB)、phosphoinositide 3-kinase(PI3K)経
路などの細胞内シグナル伝達経路が流れる。その結果、細胞増殖、分化、運動、
生存などの広範な生理機能が変化する(Fig. 10)。
2. EGFRの異常とがん
EGFRが過剰発現しているがんの割合は文献により様々であるが、腎がんの
50 - 90%、非小細胞肺がんの 40 - 80%、前立腺がんの 40 - 80%、頭頸部がんの
36 - 100%、卵巣がんの 35 - 70%、胃がんの 33 - 74%、大腸がんの 25 - 77%、乳
がんの 14 - 91%で見られると報告されている53, 54。EGFRの遺伝子増幅や転写活
性の亢進も起因して、EGFRの発現量ががんの発症だけでなく悪性度にも深く
関与している55。がんでは野性型EGFRの過剰発現だけでなく、その変異型も多
く観察されている(Fig. 9)。例えば、非小細胞肺がんや脳腫瘍では、EGFRのエ
クソン 2-7 が欠失することにより、リガンド結合部位が欠損したEGFRvIIIが過
剰発現している56,
57
。そのためリガンド非結合状態でも細胞内シグナル伝達は
恒常的に活性化する。他にもエクソン 19 の 15 塩基の欠失やEGFRのチロシン
キナーゼ阻害剤であるgefitinib (商品名:Iressa) 感受性になるL858R変異(アミ
ノ酸 858 番目のロイシンがアルギニンに置換)やgefitinib投与によって薬剤耐性
となるT790M変異(790 番目のスレオニンがメチオニンに置換)などが確認さ
れている56, 58-61。さらには、がんのEGFR遺伝子のイントロン 1 はシトシンとア
デニンの連続配列(CAリピート)が 14~21 回と様々で、この部位が長いと転
写活性や発現が抑制されることが報告され、治療予後に大きく影響を及ぼす可
能性も指摘されている62, 63。
28
del exon2-7
(EGFRvIII)
A
B
G719A/C/S
E746-A750del type1
E746-A750del type2
E747-P753del insS
S768I
T790M
L858R
L861Q
C
Fig. 9 EGFRの構造と主な変異
EGFRは細胞外領域(A)、細胞膜貫通領域(B)、細胞内領域(C)から成る。がんにお
いて様々なEGFRの変異体が報告されている。例えば、非小細胞肺がんや脳腫瘍で
高頻度に見られるEGFR vIIIはEGF結合領域を含む細胞外領域が欠失する変異であ
る。またL858RはEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるgefitinib感受性となり、T790M
はgefitinib耐性の原因となることが分かっている。
29
EGF
HB-EGF
TGF-a
EGFR
CM
P
P
PLC-g
Gab1
Shc
RasGAP
Sos
PI3K
PKC
Ras
Grb2
Raf-1
NF-κB
pathway
Aκt
pathway
MAPK
pathway
Cell survival
Cell motility
Cell growth
Fig. 10 EGFRを介したシグナル伝達経路
リガンドの結合により自己リン酸化したEGFRに、幾つかのアダプター分子が結合す
る。その結果、下流のシグナル経路が活性化されて、細胞増殖、分化、細胞運動、
生存などが制御されている。CMは細胞膜を示している。
30
3. EGFRを標的としたがんの画像化
一般に分子標的PET薬剤はリガンドや抗体や特異的低分子化合物を陽電子放
出核種で標識して作製される。EGFRを標的とした例では、金属錯体である
1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid(DOTA)を介して68Gaで標
識したヒトEGFが、EGFRへの高親和性と腫瘍への高集積を示すことが報告され
ている64。またDOTAを介して64Cuで標識した抗EGFR抗体であるcetuximab(商
品名:Erbitax)の担がんマウスへの取り込み量は、がん細胞のEGFR発現量と相
関しており、この薬剤を用いたEGFR発現細胞の画像診断やがんのアイソトー
プ治療が期待されている65。強力なEGFRのチロシンキナーゼ阻害剤であり、治
療薬として広く用いられているgefitinibを11Cや18Fで標識した例も報告されてい
る66, 67。しかし18F標識gefitinibをマウス投与した結果、速やかに肝胆汁排泄され、
EGFRの発現量や活性状態による取り込みの相違は観察されなかった67。現在も、
より親和性や特異性の高い薬剤開発を目指し、新たな抗体やチロシンキナーゼ
阻害剤が開発され、画像診断や治療への利用が検討されている68-71。これらの
薬剤は全てEGFRを介した細胞内シグナル伝達の初期、つまりEGFRへのリガン
ド結合から自己リン酸化までを対象としている。しかし、リガンドや抗体が認
識し結合する細胞外領域が欠損している変異を持つEGFRの検出には、これら
の標識体を用いることはできない。同様にgefitinibの標識体を用いた場合、その
薬効の予測には有効であるが、gefitinib投与によって薬剤耐性となるT790M変異
のような阻害剤が結合できない変異を生じたEGFRを検出することは難しい。
従って、がんの性質に応じた診断や治療薬の選択及び開発のためには、EGFR
の構造の違いに影響されずにEGFRの活性を画像化できる汎用性の高い分子標
的薬剤が必要となる。EGFRの変異型は数多く報告されるものの、その下流の
シグナルは一様に活性化している。そこで本研究では、EGFRの細胞内領域を
画像診断薬剤の標的部位として選択した。そして細胞内シグナル伝達経路の中
期から後期、つまり自己リン酸化からアダプター分子の結合に関わる分子を用
いた薬剤がEGFRの画像化に有望と考えた。
31
4. 研究目的
EGFRのアダプター分子の一つであるGrb2 は 1992 年にその遺伝子配列が明ら
かとなった。Grb2 は 1 つのSH2 ドメインと 2 つのSH3 ドメインを持つ 25 kDa
のタンパク質であり、組織普遍的に発現している72。Grb2 のSH2 ドメインは約
110 アミノ酸から成り、前述のようにEGFRのリン酸化されたTyr1068に結合する。
SH3 ドメインを介してson of sevenless(Sos)と結合し、主にMAPK経路を活性
化して細胞増殖の亢進等に大きく寄与している。またSH3 ドメインを介して
c-Cblとも結合しEGFRの内在化や、それに伴うEGFRの分解や再利用にも関与し
ている48,
73-76
。ヒトの乳がんや前立腺がんなどの一部でGrb2 の過剰発現が報告
されているが、Grb2 単独の過剰発現では細胞のがん化を引き起こすことはない
と 考 えら れて い る 77 。 Grb2 は c-Met
(mesenchymal-epitelial transition factor,
hepatocyte growth factor receptor) やerbB4 にも結合することが知られているが、
主な標的分子はEGFRであることが示されている78, 79。EGFRの過剰発現や活性
化に伴ってEGFRとの結合が増加したり、細胞内生理機能の亢進やGrb2 結合分
子の増加によって二次的にGrb2 の発現量が増加し、異常な細胞増殖を誘導する
と考えられている77。さらにGrb2 のSH2 ドメインに対する特異的阻害剤をがん
細胞に添加すると、細胞増殖やコロニー形成の抑制が報告されている80。これ
らの知見から、EGFR-Grb2 シグナル経路は、がんの診断や治療の対象として取
り上げるのに適すると考えた。
以上の考察、さらにはEGFRのTyr1068周辺の変異が報告されていないことも考
慮し、本研究では活性型EGFRの新しい画像診断薬剤の主要構成分子として
Grb2 のSH2 ドメインを用いることにした。本章第一節では薬剤の設計・合成と
放射性同位体による標識について述べる。第二節では合成した薬剤の活性型
EGFRの検出可能性をin vitro及びin vivoで検討した結果について述べる。
32
4-2. 一節:薬剤設計と合成
4-2-1. 序
EGFRに存在するSH2 ドメイン結合部位は細胞膜の内側にあるので、PET薬剤
は細胞膜を通過する必要がある。しかしGrb2 のSH2 ドメインはおよそ 110 アミ
ノ酸から成り、その分子量は約 13 kDaであり、受動拡散で細胞膜を透過するの
は困難である。こうした高分子薬剤の細胞内への輸送方法としてリポソームや
高分子ミセルへの封入、膜貫通ペプチド(cell penetrating peptide、CPP)の付加、
脂溶性物質の付加などが挙げられる81, 82。CPPは正電荷を帯びた短いペプチド配
列を有する83-87。代表例としてHIV-1 transactivating transcription(TAT)、transportan、
polyarginine、antennapediaがある。なかでもTATはpolyarginineやtransportanなど
の他のCPPよりも細胞毒性が低いと報告されている84, 88。TATは塩基性アミノ酸
であるアルギニンを多く含む 11 アミノ酸から成り、120 kDa以上の巨大分子を
も生細胞や多種の組織に輸送することができる83,
89
。またリポソームへの封入
や脂溶性物質の付加などはSH2 ドメイン合成後に行う必要がある。これに対し
てCPPの合成は、遺伝子工学的手法を用いることで、SH2 ドメインの合成と同
時に行うことが可能であるため、簡便かつ生成物の損失が少なくて済む。そこ
で本研究では、SH2 ドメインのN末にTATを融合したタンパク質の合成を計画し
た。また本合成タンパク質の挙動を追跡するための実験用タグとしてC末にFlag
配列を融合した。Flagは 6 アミノ酸から成りSH2 ドメインよりもはるかに分子
量が小さいため、母体タンパク質の機能に影響を及ぼさないと考えられる90。
さらにPET薬剤への応用を考え、FlagのC末に放射性ヨウ素標識部位としてチロ
シン残基を導入した。以下、この分子をTSFと記す(Fig. 11A)。本研究では、
放射性ヨウ素として取扱の容易な長半減期のg線放出核種であるヨウ素125Iを使
用したが、陽電子放出核種である124Iを利用することで、本研究成果はPET薬剤
への展開が可能である91。本来Grb2 内のSH2 ドメインは 1 つであるが、SH2 ド
メインの数がEGFRとの結合親和性や分子量の増加によるTATの細胞内輸送能
に影響を及ぼすと考えられる。そこでSH2 ドメインを 2 つ直列に配置したTSSF
33
(Fig. 11B)も併せて作製し、TSFと比較検討を行った。
A
TAT
SH2
flag
Y
YGRKKRRQRRRG
EMKPHPWFFGKIPRAKAEEMLSKQRHDGAFLIRESESAPGD
FSLSVKFGNDVQHFKVLRDGAGKYFLWVVKFNSLNELVD
YHRSTSVSRNQQIFLRDIEQVPQQPTYVQALFGP
DYKDDDDKY
B
TAT
SH2
SH2
flag
Y
YGRKKRRQRRRG
EMKPHPWFFGKIPRAKAEEMLSKQRHDGAFLIRESESAPGD
FSLSVKFGNDVQHFKVLRDGAGKYFLWVVKFNSLNELVD
YHRSTSVSRNQQIFLRDIEQVPQQPTYVQALFGP
EMKPHPWFFGKIPRAKAEEMLSKQRHDGAFLIRESESAPGD
FSLSVKFGNDVQHFKVLRDGAGKYFLWVVKFNSLNELVD
YHRSTSVSRNQQIFLRDIEQVPQQPTYVQALFGP
DYKDDDDKY
Fig. 11 TSF及びTSSFのアミノ酸配列
本研究で設計したTSF(A)及びTSSF(B)のアミノ酸配列である。実線部分はTAT配列
を示し、破線部分Flagタグを示している。EMK-QALFまでがGrb2のSH2ドメインの配
列である。なお、TSSFはGPを介してGrb2のSH2ドメインを二つ直列に配置した。
34
4-2-2. 方法
1. プラスミドの構築
pGEX-TSF 及び pGEX-SF の作製:Grb2 の cDNA クローン(accession number
NM_203506)は NIH Mammalian Gene Collection (Invitrogen) より購入した。
cDNA を鋳型に forward primer (5’- ATG TAT GGC AGG AAG AAG CGG AGA
CAG CGA CGA AGA GGT GAA ATG AAA CCA CAT CCG TGG-3’)と reverse
primer(5’- AAA GAG GGC CTG GAC GTA TGT CGG CTG-3’)を用いて PCR に
よって TAT-SH2 を合成した。次に得られた DNA 断片を鋳型として forward
primer (5’-ATG TAT GGC AGG AAG AAG CG-3’)と reverse primer (5’- TTA GTA
CTT ATC GTC GTC ATC CTT GTA ATC GGG CCC AAA GAG GGC CTG G-3’)を
用いて Flag とチロシン残基(Y)を融合した TAT-SH2-Flag-Y(TSF)を合成し
た。また forward primer (5’- ATG GAA ATG AAA CCA CAT CCG TGG-3’) と同上
の reverse primer で TAT なしの SH2-Flag-Y(SF) を合成した。pGEX-6P-1 また
は pGEX-6P-3 ベクター (GE healthcare, Uppsala, Sweden)に組み込むために、
forward primer (5’- CCC TGG AGA ATT CAT GTA TGG CAG GAA GAA G-3’)また
は(5’-GAC GGC TTC ATT CCC AAG AAT TCC ATG GAA ATG AAA CCA C-3’)と
reverse primer (5’- GCT TAC CGC GGC CGC TTA GTA CTT ATC GTC GTC-3’) で
PCR を行った。獲得した DNA 断片とベクターを EcoRI と NotI(Toyobo Co., Ltd.,
Osaka, Japan)で酵素切断し Ligation High(Toyobo)で連結反応を行った。それ
ぞれを pGEX-TSF、pGEX-SF とする。
pGEX-TSSF 及び pGEX-SSF の作製:pGEX-TSF または pGEX-SF を鋳型とし
forward primer (5’- CAG CGA GGG CCC GGT GAA ATG AAA CCA CAT CC-3’)と
reverse primer (5’-GCT TAC CGC GGC CGC TTA GTA CTT ATC GTC GTC-3’)で
PCR を行った。獲得した DNA 断片と pGEX-TSF または pGEX-SF を ApaI
(Toyobo)で酵素切断して連結反応を行った。
すべてのコンストラクトは E.coli DH5α (Toyobo) に遺伝子導入して培養後、
35
得られたコロニーから制限酵素処理による確認と ABI PRISM 3100 sequencer
(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA) を用いた DNA 配列の確認を行った。
2. 薬剤の合成と確認
pGEXベクターをE.coli BL21 (GE healthcare) に遺伝子導入し直し、獲得した
コロニーをOvernight Express Instant TB Medium (Novagen, Darmstadt, Germany)
で培養することでGST融合タンパク質の合成を行った。大腸菌を超音波破砕し
た後、12000×gで 15 分遠心して上清を回収した。上清中に含まれるGST融合タ
ンパク質をMicroSpin GST Purification Module (GE healthcare) またはGSTrap FF
(GE healthcare) で精製し、さらにpreScission Protease (GE healthcare) でGSTを切
断除去し目的タンパク質を得た。タンパク質の合成と分子量の確認はsodium
dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE) とCBB染色で行っ
た。125I標識したタンパク質を泳動した後はFluoro Image Analyzer(FLA 7000, Fuji
Film, Tokyo, Japan)とMulti Gauge software(Fuji Film)で解析した。
3. 薬剤の125I標識
合成したタンパク質はクロラミンTを用いて 125I標識した。0.3 M phosphate
buffer (pH 7.5) 中で 1 µg/2 µLのタンパク質に 3.7 MBq/µLのNa[125I] (PerkinElmer
Japan Co., Ltd.) を 2 分間、室温で混合した。1 µLの 4 mg/mL chrolamine-T (Wako
Pure Chemical Industries, Ltd., Osaka, Japan) を添加し全量 28 µLとした。室温で 5
分間反応させた後、6 µLの 0.19 mg/mL sodium metabisulfite (SMBS, Nacalai tesque,
Kyoto, Japan) を添加して反応を停止させた。標識分子は 1% bovine serum
albumin (BSA) 含有の 0.1 M acetate buffer (pH 6.0) で平衡化したPD10 column
(GE healthcare) で溶出し、非結合125Iを分離した。溶出液は 0.5 mLずつ分取し、
gカウンター (Aloka Co., Ltd., Tokyo, Japan) で放射活性を測定した。放射活性が
最高値の画分をセルロースアセテート膜電気泳動に供すと共にFLAでシグナル
を検出し、放射化学的純度を計算した。
36
4. 薬剤の分析
合成したタンパク質を高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid
chromatography, HPLC)で分析した。カラムは COSMOSIL PROTEIN-R (10×150
mm, Nacalai tesque) を用いた。水相(A)0.1% trifluoroacetic acid (TFA)/ddw、有
機相(B)0.1% TFA/acetonitrile を用い、B を 30 分かけて 10%から 80%に流速
1.0 mL/min で勾配溶出した。溶出液を 30 秒間隔で分取後、gカウンターで放射
活性を測定した。
4-2-3. 結果
1. 薬剤の合成
大腸菌での TSF や TSSF の合成は TAT を融合していない SF や SSF よりも収
率が低く、それぞれ SF の約 20%と SSF の約 55%であった。SDS-PAGE と CBB
染色の結果、所期の通り TSF と SF はそれぞれ 16 kDa と 14 kDa 付近に検出し
た(Fig. 12A)。また TSSF と SSF もそれぞれ SH2 ドメイン 1 つ分分子量が多く、
29 kDa と 27 kDa 付近に検出した(Fig. 12B)。
2. 薬剤の125I標識
クロラミンT法によるTSFの直接標識では、標識収率が 76.8±6.8%、TSF1 分
子あたり約 0.8 分子の125Iが導入された。またカラムによる抽出後の放射化学的
純度は 99%以上であった。125I標識TSFをHPLCで分析したところ、TSFのピー
クが保持時間 18 分に見られ(Fig. 13A, C)、次いで含有量の多いBSAが保持時
間 19 分に検出された(Fig. 13B, C)。溶出液を回収してgカウンターで放射活性
を測定したところ、TSFを含有する分画(約 17.5-18 分)でのみ放射活性が得ら
れた(Fig. 13D)。さらにSFとTSFを標識後にPD10 カラムで精製してから
SDS-PAGEを行い、FLAで放射活性を検出したところ、それぞれ 14 kDaと 16 kDa
付近に信号を検出した(Fig. 14)。TSSFは、放射化学的収率が 37.0%
37
A
B
M (kDa)
SF
TSF
SSF
TSSF
M (kDa)
37
25
20
15
Fig. 12 TSF及びTSSFの精製
大腸菌で合成したタンパク質をGSTカラムと特異的酵素切断で精製した。精製したタ
ンパク質溶液をSDS-PAGEに供した。ゲルをCBB染色して目的タンパク質の合成を確
認した(A; SFとTSF、B; SSFとTSSF)。Mは分子量マーカーを示している。
38
A
B
700000
3000000
600000
2000000
Area
Area
500000
400000
300000
1000000
200000
100000
0
0
0
10
20
Retention time (min)
30
C
0
10
20
30
Retention Time (min)
D
500000
50000
30000
cpm
Area
40000
250000
20000
10000
0
0
0
10
20
Retention time (min)
30
0
10
20
30
Retention time (min)
Fig. 13 TSFのHPLC分析
125Iを直接標識し、1%BSAを含むacetate bufferで精製したTSFをHPLC分析した。(A)
精製前の125I標識TSFのUV検出、(B)1%BSAのみのUV検出、(C)精製した125I標識
TSFのUV検出、(D)精製した125I標識TSFの放射活性を示している。(C)及び(D)の矢
印はそれぞれ125I標識TSFの画分を示している。
39
A
SF
hot
B
TSF
hot
cold
cold
SF
M
TSF
15 kDa
Fig. 14 125I標識SFとTSFの確認
(A)125I標識したSFまたはTSFをSDS-PAGEに供し、CBB染色を行った。Coldの列は未
標識体を、hotは標識体を流した。下は拡大図である。(B)(A)で得られたゲルをFLA
にかけ、信号を検出した。矢印はそれぞれSFとTSFの存在を示している。
40
であり、1 分子あたり 0.7 分子の125Iが導入され、放射化学的純度は 95%以上で
あった。
4-2-4. 考察
本研究では薬剤合成は、大腸菌でのGST融合タンパク質の大量合成と、GST
カラムを用いた精製及び特異的部位認識酵素によるGSTの除去により行った。
この方法によりTATやFlagの融合がSH2 ドメインの合成と同時に可能となった。
またタンパク質合成後と特異的酵素切断後の二回に渡ってカラム精製を行った
ことで、目的とするタンパク質を高純度で得られた。一方、TATを融合してい
ないSFやSSFよりもTSFやTSSFの合成収率が低下したのは、TSFやTSSFに含ま
れるTATは塩基性アミノ酸が多く、大腸菌での合成時に不溶画分に含まれたた
めであると考えられる。また125I標識した直後のCOSMOSIL PROTEIN-Rを用い
たTSFのHPLC溶出液の測定において単一の放射活性のピークが観察されたこ
とも、本研究で得られたタンパク質は純度が高いことを支持する。125I標識後に
PD10 カラムで精製して、放射活性が観察された分画溶出液をSDS-PAGEに供し
た後にFLAで検出した。その結果、分子量が 15 kDa付近にのみ信号が得られ、
目的のタンパク質のみが標識されたと証明された。放射化学的純度も 95%以上
で、in vivo実験に使用可能であると判断した。そこで、これらの薬剤を二節のin
vitro及びin vivo実験で使用した。
41
4-3. 二節:画像診断薬剤としての有用性検討
4-3-1. 序
FDGやFLTのように代謝を指標に細胞を画像化する場合と同様に、設計した
分子標的薬剤の有用性について評価する際には、細胞や組織への集積性や標的
分子との結合及び薬剤自身の安定性を考慮しなければならない。薬剤の標的分
子への選択的かつ高い結合が不可欠であるが、それと共に鮮明な画像を得るた
めには標的分子と周辺との高い集積比が必要である。つまり標的分子が存在し
ない場合、標識体は速やかな細胞外及び体外への排出も要求される。本研究に
おいては、画像診断のための薬剤として、どの細胞にも非特異的に一定量導入
され、その滞留性が標的分子の発現量や活性量と正の相関を持つものを目指し
た。これを検証するために、本研究では放射性未標識薬剤の①TATによる細胞
内への輸送、②標的分子との結合、③細胞内での滞留性及び局在について、Flag
タグを用いたwestern blotや免疫染色などを行った。また125I標識して放射活性を
指標に細胞内や担がんマウスの各組織への取り込み率も測定し、SH2 ドメイン
を基本構造とした分子標的薬剤がEGFRの活性を指標としたがんの画像化に有
用であるか検討した。
4-3-2. 方法
1. 細胞
ヒト皮膚がん由来A431 細胞(EGFR過剰発現)、ヒト乳がん由来MDA-MB435
細胞(EGFR低発現)及びヒト肺がん由来H3255 細胞(L858R変異型EGFR過剰
発現)はATCCより購入した。A431 細胞は 10% FBS, 50 units/mL penicillin/50
µg/mL streptomycinを含んだDulbecco's modified Eagle medium (DMEM, Sigma)で
培養した。MDA-MB435 細胞とH3255 細胞は同上の FBSと抗生物質を含んだ
DMEM/F-12 (Sigma)で培養した。これらの培養条件を以下では通常培養と記す。
培養環境は 5% CO 2 、37 °Cで行った。
42
2. 培養条件の決定
放射性未標識薬剤と細胞の培養条件を検討するために、24 well plateに 4.0 ×
105 cells/wellとなるように播種した細胞を、無血清かつ抗生物質不含有培地に溶
解した 1 µMのTSFと 0, 1, 3, 6 時間培養した。細胞をPBSと 0.2 M glycine-HCl
buffer (pH 2.0)で洗浄後、lysis buffer(50 mM Tris-HCl (pH7.5)、1 mM EDTA、150
mM NaCl、1% NP-40、2 µg leupeptin、1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride(PMSF))
で回収し、western blotに供した。
24 well plateに 4.0 × 105 cells/wellとなるように播種したA431 細胞を 0.1, 0.3, 1,
1.5, 3 µMのTSFと 1.5 時間培養した。細胞を洗浄して回収し、western blotに供し
た。
3. 細胞への薬剤導入効率と細胞内滞留性の検討
1 kBqの125I標識TSFまたは125I標識TSSFをA431 細胞またはMDA-MB435 細胞
と 1.5 時間培養した。細胞を洗浄後に 0.2 N NaOHで溶解し、gカウンターで放射
活性を測定した。
1.5 µM に調製した TSF または TSSF と 1.5 時間培養した A431 細胞を洗浄し
た後、薬剤を含まない通常培地で 10, 30, 60 分培養した。また TSF の細胞内滞
留性に及ぼす EGFR 活性の関与を検討するために、無血清培地下で培養した
A431 細胞を 1.5 µM の TSF と 1.5 時間培養した。細胞洗浄後、100 ng/mL の EGF
を含有する培地で 10, 30, 60 分培養した。さらにチロシンキナーゼ阻害剤の処理
で EGFR の活性を抑制した時の TSF の滞留性を検討するために、無血清培地で
培養した H3255 細胞を 1.5 µM の TSF と 10 µM の EGFR 選択的チロシンキナ
ーゼ阻害剤 Tyrophostin AG1478(以下 AG1478 と記す, Sigma)を含む培地で 1.5
時間培養した。細胞洗浄後に 100 ng/mL の EGF を含む培地で 10 分間培養した。
すべての細胞は各培養終了時に洗浄して western blot に供した。
4. EGFRとの結合検討
43
3.0 × 106 cells/100 mm dishに播種したA431 細胞を、24 時間培養後に無血清培
地でさらに 24 時間培養した。その後、1.5 µM に調整したTSFを含む培地で 1.5
時間培養した。最後の 10 分間は終濃度が 0, 10, 100 ng/mLとなるようにEGFを
添加した。細胞を洗浄し抗Flag抗体を用いた免疫沈降に供した。
5. 抗体
下記の抗体は各企業から購入した(企業名:抗体名)。
Santa Cruz Biotechnology (Santa Cruz, CA, USA):anti-EGFR (R-1)、anti-EGFR
(1005)、anti-Grb2 (C-7)、anti-actin (C-11)、anti-phospho tyrosine (PY20)、donkey
anti-goat IgG conjugated with horseradish peroxidase (HRP)、goat anti-mouse IgG
conjugated with HRP
GE healthcare :goat anti-rabbit IgG conjugated with HRP
Sigma :mouse anti-flag M2、rabbit anti-flag polyclonal
Invitrogen :goat anti-rabbit IgG conjugated with Alexa Flour 488、goat anti-mouse
IgG conjugated with Alexa Flour 594
Cell Signaling Technology (Beverly, MA, USA):anti-phospho EGFR (Tyr1068)
6. 免疫沈降
抗 Flag 抗体による免疫沈降には FLAG Tagged Protein Immunoprecipitation Kit
(Sigma) を使用した。1 mg のタンパク質溶液と抗 Flag 抗体を付加したビーズを
4 ℃で一晩反応させ、3× FLAG peptide で溶出した。
抗 EGFR 抗体による免疫沈降では、1 mg のタンパク質溶液と抗 EGFR 抗体を
4 ℃で一晩反応させた。そこに PBS で洗浄した Agarose G ビーズ(Sigma)を
添加した。回収した沈降物を PBS で洗浄して western blot に供した。
7. Western blot
15-20 µg の細胞破砕液や免疫沈降物を SDS-PAGE で展開し、PVDF 膜
44
(Millipore, Billerica, MA, USA) に転写した。BlottoA (Santa cruz)でブロッキング
後、適当に希釈した一次抗体を反応させた。HRP 接合二次抗体を反応後、ECL
Plus Western Blotting Detection System (GE healthcare) の化学発光法でタンパク
質を検出した。Chemi-Smart 5000 (Vilber Lourmat, Torcy, France) と Chemi-Capt
software (Vilber Lourmat) で画像を取得し、Image J software (National Institutes of
Health, Bethesda, MD, USA) で信号強度を半定量した。
8. 免疫染色
カバーガラス (Matsunami, Osaka, Japan) 上に播種した細胞を 2 µM の TSF で
1.5 時間処理した。Lysosome との共染色では LysoTracker Red (Invitrogen) を終
濃度 50 µM となるように TSF と混合して添加した。EGFR 活性もしくは不活性
時の免疫染色では、無血清培地で培養した A431 細胞を 2 µM の TSF で 1.5 時間
処理し、洗浄後に 100 ng/mL EGF で 10 分間刺激した。細胞を 4% paraformaldehyde
(Wako Pure Chemical Industries, Ltd., Osaka, Japan) を用いて 20 分間室温で固定し
た。PBS で洗浄後、0.1% Triton X-100 (Promega KK, Tokyo, Japan) で 2 分間処理
した。PBS で洗浄後、5% normal goat serum (Sigma) で 30 分間ブロッキングし、
一次抗体を 4 ℃で一晩反応させた。0.1% Tween (Sigma) 含有 PBS (PBST) で 3
回洗浄後、蛍光接合二次抗体を室温で 2-3 時間反応させた。PBST と PBS 洗浄
後、Aqua-Poly/Mount Coverslipping Medium (Polysciences Inc, Warrington, PA,
USA) で封入し、共焦点顕微鏡 FV1000 (Olympus, Tokyo, Japan) で観察した。
9. マウス血しょう中の125I標識薬剤の安定性
マウス血しょう 100 µLに約 10 kBqのTSFを添加して、37℃で 1, 5, 18, 24, 48
時間培養した。各時間に血しょうを 1% BSAを含むacetate bufferで平衡化した
PD10 カラムで 0.5 mLずつ溶出した。この時の125I標識TSFが含まれているカラ
ム 5-11 本目に得られた放射活性の割合を算出した。
45
10. 担がんマウスを用いた125I標識薬剤の体内分布
5 週齢のBALB cAJ nu/nuマウスの右脚に 1.5 × 106個のA431 細胞を、左脚に 5.0
× 106個のMDA-MB435 細胞を皮下移植した。2 週間後、125I標識SF(37 kBq)ま
たは125I標識TSF(37 kBq)をそれぞれ尾静脈から注射し、0.25, 0.5, 1, 3 時間後
に心臓採血後に腫瘍及び関心組織を摘出した。各組織の重量を計量し、gカウン
ターで放射活性を測定した。解析は各放射活性値をマウス 20 gに標準化し
て%ID/gで示した。
4-3-3. 結果
1. 放射性未標識体を用いる場合の最適培養条件の決定
初めに細胞と本設計薬剤の最適培養条件を決定するために、1 µM の TSF を
含む培地で A431 細胞を一定時間培養し、この時の western blot の抗 Flag 抗体に
よる信号強度から TSF の最適取り込み時間を算出した。その結果、培養後 1-3
時間で平衡状態に達した(Fig. 15A)。従って、1.5 時間を最適時間と決定した。
次に最適濃度を決定するために、異なる濃度の TSF を含む培地で A431 細胞を
1.5 時間培養したところ、1.5-3 µM で平衡状態に達した(Fig. 15B)。従って、
以降の in vitro 実験では細胞と本薬剤の最適培養条件を「培養時間:1.5 時間、
TSF 濃度:1.5 µM」とした。Grb2 の SH2 ドメインを認識する抗体でも検出を
行ったところ、TSF と培養した細胞でのみ内在性 Grb2(25 kDa)と TSF(16 kDa)
の信号を検出した(Fig. 15C)。この条件で再度 SF、TSF、SSF、TSSF を含む培
地で細胞を培養した。その結果、TAT を融合した TSF 及び TSSF で処理した細
胞でのみ目的分子量にタンパク質を検出した(Fig. 16A)。また同条件下で TSF
と MDA-MB435 細胞(EGFR 低発現、Fig. 16B)を培養したところ、タンパク
質量当たりの TSF 量は A431 細胞とほぼ同量であった(Fig. 16C)。
46
A
SF
1
TSF
3
6
1
3
6
(h)
Flag
B
SF
0.1
0.3
1
TSF
1.5
3
0.1
0.3
1
1.5
3
(µM)
Flag
C
SF
TSF
Grb2
Grb2-SH2
TSF
Fig. 15 In vitroでの放射性未標識TSFを用いた最適培養条件の検討
(A)A431細胞を1 µMのTSFを含む培地で一定時間培養した。培養後細胞を洗浄し
western blotに供し、TSFの細胞内確認を抗Flag抗体で検出した。(B)A431細胞を各
TSF濃度で1.5時間培養した。細胞洗浄後に回収しwestern blotに供した。(C) SFまた
はTSFと培養した細胞からタンパク質を回収し、Grb2のSH2ドメインを認識する抗体で
検出した。図中の上のバンドは内在性Grb2、下のバンドは導入されたTSFを示してい
る。
47
A
M (kDa)
SF
TSF
SSF
TSSF
25
Flag
15
Actin
B
C
A431
MDA
-MB435
A431
SF TSF
EGFR
MDA
-MB435
SF TSF
Flag
Grb2
Actin
Actin
Fig. 16 TSF及びTSSFの細胞内導入の確認
(A)A431細胞に各精製タンパク質を添加した。細胞を洗浄後、western blotに供し、
抗Flag抗体で検出した。 (B)A431細胞とMDA-MB435細胞のEGFR及びGrb2発現量
を調べた。(C)A431細胞とMDA-MB435細胞にTSFまたはSFを添加した。Actinは泳
動コントロールである。
48
2. TSFとTSSFの細胞内取り込みと細胞内滞留性の比較
まずTSFとTSSFの特性の比較を行った。両薬剤を125I標識して細胞内の放射活
性で導入効率を比較したところ、A431 細胞ではTSFの取り込みは 24.6±2.11%に
対して、TSSFの取り込みは 16.1±4.29%であった。またMDA-MB435 細胞では
TSFの取り込みは 20.4±0.88%であったのに対し、TSSFの取り込みは 13.8±2.57%
であった。つまり細胞種に関わらずTSFの方がTSSFよりも多く取り込まれた
(Fig. 17)。
次に細胞内での TSF 及び TSSF の滞留性について検討した。最適条件下で
A431 細胞を TSF または TSSF と培養した。その後、細胞洗浄して各薬剤不含有
培地に置換することで細胞内残存量を半定量的に比較した。細胞内残存量が培
地置換直後の半量となる時間を薬剤の半減期として算出した。TSF は 40.0 分で
あり、TSSF は 33.0 分であった(Fig. 18)。TSF と TSSF の細胞内滞留性はほぼ
同じであるが、TSF の方が TSSF よりも細胞内取り込みが高かったことから、
TSF の方が画像診断薬剤として、より適していると判断し、TSF の有用性につ
いての検討をさらに進めた。
3. EGFRとの結合
無血清培地下で培養した A431 細胞では、TSF とリン酸化型(活性型)EGFR
との結合は認められなかった。一方、EGF 刺激により EGFR を活性化させると、
TSF と活性型 EGFR との結合が観られた(Fig. 19A)。また濃度の異なる EGF
で細胞を一定時間培養すると、EGFR の Tyr リン酸化量(活性量)が調節でき
た(Fig. 19B)。そこで A431 と TSF を一定時間培養した後に、終濃度が 0, 10, 100
ng/mL となるように EGF を細胞に添加して免疫沈降を行ったところ、TSF と活
性型 EGFR との結合は濃度と相関して増加した(Fig. 19C)。
49
30
∗
TSF
TSSF
% of total radioactivity
25
∗
20
15
10
5
0
A431
MDA-MB435
Fig. 17 TSFとTSSFの細胞内取り込みの比較
125I標識TSFまたは125I標識TSSFを含む培地でA431細胞及びMDA-MB435細胞を培
養した。細胞を洗浄し回収して放射活性を測定した。図は平均値±SEMで表してい
る(n=4、*; p<0.05)。
50
1
TSF
Relative ratio
TSSF
0.5
0
0
30
60
Time after medium change (min)
Fig. 18 TSFとTSSFの細胞内安定性
A431細胞を薬剤存在下で培養した後、通常培地に置換して10、30、60分間培養した。
各時間に細胞を回収し、western blotに供し抗Flag抗体で検出した。FlagによるTSFま
たはTSSFの信号強度をActinの信号強度で補正した。薬剤処理後直ぐの値を1として、
細胞内の薬剤残存量を相対的に求めた。図は平均値±SDで表している(n=3)。
51
A
IP:FLAG
EGF
-
SF
+
-
TSF
IB:
+
phospho
- EGFR
Flag
C
B
IP:FLAG
IP: EGFR
EGF
(ng/mL)
0
10
100
EGF
(ng/mL)
IB:
phospho
-Tyr
0
10
100
IB:
EGFR
phospho
-EGFR
EGFR
Flag
pTyr/EGFR
1
7.8
21.7
Fig. 19 TSFとEGFRの結合
(A)無血清培地で培養したA431細胞をTSFで処理した後、100 ng/mLのEGFで10分
間刺激した。細胞を回収し、抗Flag抗体で免疫沈降を行った。(B)無血清培地で培養
したA431細胞を0、10、100 ng/mLのEGFで10分間刺激し、抗EGFR抗体で免疫沈降
を行った。抗リン酸化チロシン抗体と抗EGFR抗体でタンパク質を検出し、リン酸化チ
ロシンの度合いを下記に示した。(C)無血清培地で培養したA431細胞をTSFで処理し
た後、0、10、100 ng/mLのEGFで10分間刺激した。細胞を回収し、抗Flag抗体で免疫
沈降を行った。
52
A
EGF (-)
min
0 10
EGF (+)
30 60
10
30 60
Flag
Actin
1
EGF (+)
EGF (-)
Relative ratio
*
0.5
0
0
30
60
Time after medium change (min)
B
TSF
EGFR
merged
EGF (-)
EGF (+)
Fig. 20 EGFRの活性化とTSFの細胞内滞留性
(A)無血清培地で培養したA431細胞を TSFで処理してから細胞を洗浄した。100
ng/mLのEGFを含む培地で一定時間培養した。各時間に細胞を回収し、western blot
に供し抗Flag抗体で検出した。上はwestern blotの結果を示している。Actinは泳動コ
ントロールである。下はFlagの信号強度をActinの信号強度で補正した時の相対値を
示している。TSF処理直後の値を1とし、平均値±SDで表している(n=3; * p<0.05)。
(B) (A)の実験で培地置換10分後の細胞を固定後、抗Flag抗体(左:緑)、抗EGFR
抗体(中:赤)で免疫染色を行った。右はFlagとEGFRの重ね合わせ図である。図中の
バーは20μmを示している。
53
4. EGFRの活性化とTSFの細胞内特性
細胞内での TSF の滞留性と EGFR の活性との関係を知るために、TSF 処理後
に EGF で刺激して EGFR を活性化させた細胞と、EGF で処理せずに EGFR が
不活性化のままの細胞の細胞内 TSF 量の経時変化を調べた。その結果、培地置
換後 10 分間で EGF 非存在下の細胞では約 30%にまで TSF 量が減少したのに対
し、EGF 存在下では約 70%が細胞内に滞留していた(Fig. 20A)。この時の TSF
の半減期を計算すると、EGF 存在下では 42.0 分、非存在下では 7.2 分であった。
EGF 刺激の有無で TSF 残存量の変化が観られた培地置換 10 分後の TSF の細
胞内局在を免疫染色によって観察した。EGFR 不活性化細胞では TSF の蛍光強
度は弱く、またその分布は細胞質内に斑点状を示した(Fig. 20B 上段)。一方、
EGF 刺激した細胞では TSF は細胞膜周辺に局在していた。また EGFR との共免
疫染色を行うと両者の共局在が確認された(Fig. 20B 下段)。
5. 通常培養下でのTSFの細胞内局在
EGFR 以外にも様々な細胞内シグナルが流れている通常培養条件下の A431
細胞内では TSF の一部は細胞質内に斑点状に観察されたが、大部分の TSF は細
胞膜に存在し、EGFR との共免疫染色により両者は共局在していた(Fig. 21)。
次いで TSF と lysosome の局在を免疫染色で調べた結果、A431 細胞では一部の
TSF と lysosome との共局在が確認されたが、ほとんどの TSF は lysosome の局
在場所とは一致しなかった(Fig. 22 上段)。一方、
MDA-MB435 細胞では lysosome
と TSF とは斑点状に共局在していた(Fig. 22 下段)。
6. EGFRの不活性化とTSFの細胞内滞留性
H3255 細胞はEGFRのリン酸化を抑制するチロシンキナーゼ阻害剤AG1478 に
感受性を示す。H3255 細胞はAG1478 未処理の場合は、無血清培地下でもTyr1068
のリン酸化は保持されており、EGFで刺激してもTyr1068のリン酸化量は変化し
なかった(Fig. 23)。また細胞洗浄直後の細胞内のTSF量を 1 として(Ctr)、
54
TSF
EGFR
merged
A431
Fig. 21 通常培養条件でのA431細胞内のTSFとEGFRの分布
A431細胞を TSF存在下で培養した。細胞を固定後、抗Flag抗体(左:緑)、抗EGFR
抗体(中:赤)で免疫染色を行った。右はFlagとEGFRの重ね合わせ図である。図中
のバーは20μmを示している。
55
TSF
lysosome
merged
A431
MDA-MB435
Fig. 22 通常培養条件でのA431細胞及びMDA-MB435細胞内のTSFとlysosome分布
A431細胞及びMDA-MB435細胞を TSFとLysoTrackerで処理後、細胞を固定し免疫
染色に供した。抗Flag抗体(左:緑)で免疫染色を行った。赤はLysoTrackerのシグナ
ルを示し、右はFlagとLysoTrackerの重ね合わせ図である。図中のバーは20μmを示
している。
56
EGF
0
-
Ctr
AG1478(µM)
+
Ctr
10
-
+
EGFR
phospho
-Tyr1068
Flag
Actin
*
*
*
Relative ratio
1
Ctr
EGF (-)
EGF (+)
0.5
0
0
10
AG1478(µM)
Fig. 23 EGFRの不活性化とTSFの細胞内滞留性
無血清培地で培養したH3255細胞をTSFとチロシンキナーゼ阻害剤AG1478含有の
培地で培養した。細胞洗浄後、EGFで10分間刺激して細胞を回収した。下図はFlagの
信号強度をActinの信号強度で補正した相対値を求め、平均値±SDで示している
(n=3; * p<0.05)。
57
10 分後の細胞内 TSF 量は EGF 未処理時(EGF (-))では 0.67±0.15、EGF 処理
時(EGF (+))では 0.79±0.20 であり、両者に有意な差はなかった。
AG1478 で処理するとH3255 細胞内のEGFRのTyr1068のリン酸化は顕著に抑制
されたが、AG1478 処理によるTSFの取り込み量は変化しなかった(Fig. 23 中の
Ctr)。しかし細胞洗浄 10 分後のTSF量はEGF刺激の有無に関わらず約 4 割にまで
減少した(Fig. 23、EGF(-):0.43±0.15, EGF(+):0.42±0.20)。
7. 担がんマウスでの125I標識薬剤の体内分布
体内動態を検証するために、マウス血しょう中での125I標識TSFの安定性を経
時的に調べたところ、培養 48 時間後でも約 90%が安定に存在していた(Fig. 24)。
そこで担がんマウスを用いて125I標識TSFの体内動態を検討した。A431(細胞由
来)腫瘍への取り込みは経時的に増加し、1 時間で 4.2%ID/gと最高値を示した
(Fig. 25A)。一方、MDA-MB435(細胞由来)腫瘍や他の正常組織の取り込み
は経時的に減少した。A431 腫瘍対他組織の比が最も大きかった投与 1 時間後の
対MDA-MB435 腫瘍比は 1.6、対血液比は 1.1、
対筋肉比は 3.5 であった(Fig. 25B)。
一方、TATを融合していない125I標識SFのA431 腫瘍への取り込みの経時変化は
認められず、0.5 時間で 1.1±0.3%ID/g、1 時間で 1.3±0.4%ID/g、3 時間で 0.9±0.3%
ID/gであった(Fig. 26)。またMDA-MB435 腫瘍の放射活性もA431 腫瘍と同程
度であった。両125I標識体は胃における125Iの放射活性が高値を示した。
58
100
Stability (%)
80
60
40
20
0
0
12
24
36
48
Incubation time (h)
Fig. 24 マウス血しょう中における125I標識TSFの安定性
マウス血しょうと125I標識TSFを一定時間37℃で反応させた。各時間にPD10カラムで
0.5 mLずつ溶出し、カラム5-11番目の放射活性を回収した。図は平均±SDを示して
いる(n=3)。
59
A
40
0.25h
0.5h
1h
3h
35
30
% ID/g
25
20
15
10
5
4
Tumor
*
3
2
(MDA-MB435)
*
*
*
1
(MDA-MB435)
Tumor
Muscle
Intestine
Stomach
0
Blood
Ratio of Tumor (A431) to tissue
B
Bone
Muscle
(A431)
Tumor
kidney
Intestine
Stomach
Spleen
Liver
Lung
Heart
0
Blood
5
Fig. 25 125I標識TSFの担がんマウス体内分布
(A) A431細胞及びMDA-MB435細胞を皮下移植したマウスに125I標識TSFを投与し
た。0.25、0.5、1、3時間後に各組織を取り出し、放射活性を測定した。(B)各組織に対
するTumor (A431)の取り込みを相対的な割合で表した。図は平均値±SDで表してい
る(n=3-4; * p<0.05)。
60
40
0.5h
1h
3h
35
30
% ID/g
25
20
15
10
(MDA-MB435)
Bone
Tumor
Muscle
(A431)
Tumor
kidney
Intestine
Stomach
Spleen
Liver
Lung
Heart
0
Blood
5
Fig. 26 125I標識SFのマウス体内動態
A431細胞及びMDA-MB435細胞を皮下移植したマウスに125I標識SFを投与した。0.5、
1、3時間後に各組織を取り出し、放射活性を測定した。図は平均値±SDで表してい
る(n=4)。
61
4-3-4. 考察
二節では、一節で合成した TSF 及び TSSF の特性について in vitro 及び in vivo
の実験を行い、画像診断薬剤としての有用性を検討した。
125
I標識体を用いた検討から、EGFR過剰発現A431 細胞と低発現MDA-MB435
細胞へのTSFやTSSFの取り込み量は、A431 細胞の方が多い傾向にあるものの顕
著な相違は観察されなかった。またTSFとTSSFの取り込み量を比較すると、分
子量の大きいTSSFはTSFよりも少なかった。これはTATによるタンパク質の輸
送は、細胞膜の性質や表面積やTATが輸送する分子の大きさに依り、EGFRの発
現自体には依存しないことからも支持される92。
EGFRの発現量や活性化の違いによる診断薬剤の特性を評価するには、細胞
内に取り込まれてからの滞留性(タンパク質の代謝)や輸送プロセスを考慮す
ることが重要である。TAT融合分子は、細胞質のタンパク質分解酵素によって
容易に分解されることも報告されている93,
94
。本研究結果でも、通常培養や
EGFR活性条件下でTSF及びTSSFは 1 時間で約 30%にまで存在量が減少した。
TATにはリジン残基(Fig. 11 中のK)が含まれていることから、ユビキチンを
介したプロテアソーム系による分解が存在量低減の一因と考える 95 。また
MEROPSのペプチダーゼデーターベースによる解析から、Flagタグの前に配置
したプロリン残基(Fig. 11 中のP)は細胞内のdipeptidyl-peptidase 9(DPP9)96に
よって認識される可能性を約 29%有するとされている。従って、DPP9 によっ
てFlag-Yタグが切断されてwestern blotでのTSFのシグナルが減少した可能性も
考えられる。いずれにせよTSFとTSSFの滞留性はほぼ等しいことから、125I標識
体の取り込み量の多いTSFの方が、画像診断薬剤として適切であると判断した。
そしてEGFRの活性化とTSFの細胞内特性、特に滞留性についてさらに検討を進
めた。
無血清培地下のA431 細胞をEGF刺激した場合にはEGFRのリン酸化が促進さ
れ、細胞内のTSFの滞留性はEGF未処理群よりも増加した。一般に生体内のタ
ン パ ク 質 の 安定 性 は合 成 と 分 解 によ り 調節 さ れ て い る。 他 の CPP で あ る
62
polyarginineやantennapediaと異なり、TAT融合分子は細胞内にendosomeで取り込
まれた後に速やかに細胞質に放出される93。本薬剤は、細胞質に存在する標的
分子であるEGFRに結合するよう設計したことから、endosomeから細胞質への
放出は、本薬剤設計にとっても必要な性質である。しかしその一方で、TAT分
子を融合したタンパク質は細胞膜貫通後にendsomeからlysosomeへ輸送される
という報告がある92,
97, 98
。そこでTSFとlysosomeの共免疫染色を行った。A431
細胞内では両者の局在は一致しておらず、TSFの分解が起こりにくいと予想さ
れる。さらにチロシンキナーゼ阻害剤で処理した場合はTyr1068のリン酸化が抑
制され、かつTSFの残存量は減少していた。この結果からも、TSFの滞留性向上
のためにはEGFRの活性が重要であると示された。
なお、TATの分子輸送に関しては細胞膜に接着しているだけで細胞内にはほ
とんど導入できないという報告や免疫染色時の人為的操作によって細胞内に輸
送されているように見えるだけであるという報告もあり99、細胞内でのTAT融合
体の動態に関しても未だ不明な点が多い84, 98, 100, 101。しかし本研究で細胞の種類
によってTSFの細胞内局在が大きく異なったことは、TSFが細胞内に輸送ること
を強く支持し、免疫染色時の人為的操作による擬陽性は否定できる。
A431 細胞とMDA-MB435 細胞を用いたEGFRの発現量の多少による細胞内
TSF量の検討では、両細胞間で顕著な違いは得られなかった。本研究では、取
り込み量をFlag(TSF)のタンパク質量をActinのタンパク質量で標準化して求
めた。しかし細胞当たりの総タンパク質量はA431 細胞の方がMDA-MB435 細胞
よりも約 2 倍多かった(Fig. 27)。従って、細胞当たりのTSFの取り込み量に換
算すると、MDA-MB435 細胞ではA431 細胞と比較して絶対量としては明らかに
少ないTSF量しか存在しない。すなわち、A431 細胞とMDA-MB435 細胞でのTSF
の動態を比較すると、細胞当たりの125I標識TSFの取り込みは同程度であるが
(Fig. 17)、切断されたTSF量はMDA-MB435 細胞内での方が多い(Fig. 27)。ま
た免疫染色でMDA-MB435 細胞内でTSFはlysosomeと共局在していた結果を合
わせると、MDA-MB435 細胞内ではTSFはlysosomeで分解を受
63
protein amount
cell number
*
*
Relative ratio
1.2
0.8
0.4
0.0
A431
MDA-MB435
Fig. 27 A431及びMDA-MB435細胞でのTSF量の比較
TSF存在下で A431細胞とMDA-MB435細胞を培養した。western blotで検出したTSF
量をActin量で補正(□)または細胞数で補正(■)した(n=3; * p<0.05 )。
64
けやすいと推察される。
本研究では初めに A431 細胞を無血清培地で培養し、EGF 刺激で EGFR シグ
ナルのみを活性化させて TSF の残存量や局在を検討した。次いで多くの増殖因
子を含む通常の血清含有培地で A431 細胞を培養して同様の検討を行った。い
ずれの実験結果でも、TSF の残存量(Fig. 18, 20A)や局在(Fig. 20B, 21)に大
きな違いは観察されなかった。このことは、EGFR 以外の細胞内シグナル経路
が活性化されていても、TSF の細胞内動態は EGFR の活性によって制御される
ことを示唆する。
そこでEGFやチロシンキナーゼ阻害剤で活性調節せずにEGFRの発現量の異
なる細胞を用いて、in vivoでTSFの画像診断薬剤としての有用性を評価するに足
りると判断した。体内分布のように各組織における分子の集積を観ることは画
像診断薬剤の開発には必要不可欠な検討である。A431 細胞とMDA-MB435 細胞
を移植したマウス体内動態を検討した結果、EGFR過剰発現しているA431 腫瘍
で は 経 時 的 に 125I 標 識 TSF の 取 り 込 み が 増 加 し た の に 対 し 、 低 発 現 の
MDA-MB435 腫瘍や他の正常組織では減少した。この集積の違いは組織間での
EGFRの活性の違いを画像化可能であることを示唆する。一方、TATを融合して
いないSFの体内動態の結果、腫瘍での放射活性の検出が顕著に低かった。これ
はSH2 ドメインの腫瘍への輸送にはTATの融合が必要であることをin vivoでも
確認できたことを示す。しかし125Iを直接標識した場合、125I標識抗体や標識ペ
プチドでも観察されるように、初期の段階から胃での放射活性が高かった。こ
れはTSFの血中安定性は良くても、肝臓での速やかな分解と脱ハロゲン化によ
りI-アニオンが生成し、これが胃に集積したためと推測される102, 103。
本研究から、EGFRの活性化によって、Grb2 のSH2 ドメインを有したTSFは
EGFRとの結合増加や細胞内滞留性の向上が観られた。またin vivoにおいても
EGFRの活性量の違いにより異なる集積性を示した。以上のことから、TSFは活
性型EGFRを標的とするがんの画像化に利用可能であることが示された。近年
では124I以外にも18Fや64Cu標識したPET製剤の開発研究が進んでおり65, 104, 105、今
65
後様々な放射性核種やそれに則した金属錯体を変えることで、より高感度な画
像を得ることが期待できる。。
66
4-4. 小括
分子診断薬剤の多くは標的分子の発現量や特異的変異に焦点を当てている。
がん細胞では正常細胞と比較して多くの細胞内シグナルが変化している106。そ
こで本研究では、がん細胞で特異的に高い分子の活性量に注目した。様々なが
んでEGFRの発現異常が観察され、がんの発症や悪性度との関係が知られてい
る53。これはEGFRの下流のシグナル伝達経路が異常に活性化するため、細胞増
殖が亢進してがん化を引き起こしていると考えられる。このことから、EGFR
を分子標的として診断や治療の標的とすることは有意義である。EGFRには
様々な変異が起こるため60、現在研究されている診断薬や治療薬は、これらの
EGFRの変異に対して必ずしも有効ではなく、診断の見落としや治療耐性を誘
発する可能性がある107, 108。そこで本研究では、より汎用性の高いEGFRに対す
る画像診断薬剤を開発することを目指した。活性化したEGFRはリン酸化され
ることで立体構造が変化し、細胞増殖などの生理作用変化が起こる109。構造変
化に重要なリン酸化部位であるTyr1068付近の変異は報告されていない。従って、
このリン酸化部位に結合するGrb2 のSH2 ドメインを新規分子標的PET薬剤の鍵
分子とすることは論理的であると考えた。
本研究を通じて、Grb2 のSH2 ドメインを有するTSFは、細胞内に取り込まれ
てから活性型EGFRと結合し、細胞内でのタンパク質分解を免れ滞留性を向上
させると考えられる(Fig. 28)。これはTSFは活性型EGFRを標的とした画像診
断薬剤として利用できる可能性を示唆する。近年、近赤外光110やルシフェラー
ゼの発光を利用した活性型EGFRの評価系111、光分子を付加した抗体イメージ
ングが提唱された112。今後はPETに限らず、他の撮像手段とも併用できる多面
的な画像診断薬剤への改変も考慮していく必要がある。さらに操作や組織への
導入が簡便、導入時間が短い、生理活性物質の導入が可能であるという特徴か
ら、導入効率の高い新たなCPPが開発されている113,
114
。それに伴いCPPを生体
内由来のタンパク質に融合して腫瘍へ導入し、がんの診断や治療を試みる「タ
ンパク質セラピー法」が盛んになっている115, 116。本研究で開発した薬剤につい
67
ても様々なCPP融合を試みることで、より導入効率の高い画像診断薬剤へと改
良することができると考える。
68
SH2
TAT
A
125I
EGF
EGFR
EGFR
P
P
P
P
EGF
P
P
P
CM
EGFR
P
P
EGF
Flag
P
P
P
L?
P
B
EGF
EGF P
P
P
EGFR
EGFR
P
P
P
P
P P
P
L?
CM
L?
L?
P
P
Fig. 28 TSFによる活性型EGFRの画像化
(A)EGFRが過剰発現していたり、活性型EGFRが多い細胞では、TSFは活性型EGFR
に結合して、細胞内での分解から回避できる。(B)EGFRの活性が低い細胞に取り込
まれたTSFは、細胞内で分解を受ける。分解によって放射標識として用いた125Iは細
胞外へ排出される。図中のLはlysosomeまたは細胞内分解システムを、CMは細胞膜
を示している。
69
5. 総括
本研究では、第一章で既存のPET薬剤である[18F]FDGや[18F]FLTの治療効果予
測への利用展開について述べた。難治がんの一つである中皮腫は有効な治療法
が少ないことから、中皮腫治療の有効性の評価は、より適切な治療方針の一助
となる。In vitroで中皮腫治療薬pemetrexedに対するPET薬剤の取り込みの経時変
化を定量的に解析し、FLTの有意な取り込み増加が観察された。またin vivoにお
けるpemetrexed処理後の経時的腫瘍のFLT取り込みの増加及び治療薬効の持続
性もFLTで検出できた。以上の結果から、DNA合成阻害剤を腫瘍の治療に用い
る場合の薬物応答性は[18F]FLTで評価可能であると示された。
第二章では新規分子標的 PET 薬剤を開発し、その有用性について検討した結
果を示した。分子標的として活性型 EGFR の細胞内領域を選択し、これを指標
にがんの画像化を試みた。そして EGFR のアダプター分子を分子標的薬剤の鍵
分子として選択して、TSF を合成した。In vitro の実験では EGFR の活性と TSF
の滞留性には強い相関が得られた。また in vivo でも正常組織に対する EGFR 過
剰発現腫瘍への TSF の取り込み率が増加していた。以上の結果から、TSF は活
性型 EGFR を標的としたがんの画像化に利用可能であると示された。
本研究では、中皮腫治療の治療効果判定に[18F]FLTの取り込みが有効な指標
となり得ること、TSFは活性型EGFRを標的とするがんの画像化に利用可能であ
ることを示した。これらの成果は、既存PET薬剤の利用拡大とPET薬剤の種類
充実化に貢献し、がんを多面的に捉える一助となる。そして、がんの個別化医
療に重要な情報を提供し、PETを用いるがんの質的診断や治療評価の進展に基
礎的知見を与えると考えられる。
70
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78
7. 英文:
Comparison of semiquantitative fluorescence imaging and PET tracer uptake in
mesothelioma models as a monitoring system for growth and therapeutic effects.
7-1. Introduction
Mesothelioma is a very aggressive cancer that arises from mesothelial cells lining
pleural, peritoneal, and pericardial cavities [1]. Asbestos exposure is the main cause of
mesothelial carcinogenesis [2, 3], and is an issue of major concern in Japan. Since
mesothelioma develops 30-50 years after the first asbestos exposure, its incidence is
expected to peak 10-20 years from now. Prognosis of mesothelioma is very poor, the
median survival being less than one year from diagnosis [4]. Because there are still few
optimal diagnostic and therapeutic protocols, the development of new diagnostic,
preventive and therapeutic options for mesothelioma are urgently needed.
In the early stage of developing new therapeutics and diagnostics, animal models play
critical roles, where sensitive and reliable detection of tumor growth and response to
treatments is essential. Mouse tumor models have undergone profound improvements
in the fidelity of emulating human disease and have allowed the possibility of in vivo
molecular studies. For monitoring in vivo event, several modalities are used, such as
optical imaging (fluorescence and bioluminescence), positron emission tomography
(PET), single photon emission tomography (SPECT), computed tomography (CT),
magnetic resonance imaging (MRI), and ultrasonography. Fluorescence imaging is one
of the non-invasive techniques for capturing fluorescent molecules both in vitro and in
vivo. Although it suffers from low spatial resolution (100 µm - 1 mm, in vivo), low
permeability of the fluorescence emitted from inside the body, and autofluorescence
that sometimes influences the detection of the signal in vivo, there are many
advantages in the use of fluorescence, such as its high sensitivity and high
time-resolution (0.05 sec - a few min). It is also less expensive than other imaging
79
tools, as visualization of fluorescence images requires no preparative procedures or
contrast agents [5, 6], and the procedure is less stressful to mice. In addition,
fluorescent protein is stable enough to allow monitoring of drug effects in a single
animal over a long period in a semiquantitative manner by measuring fluorescence
intensity. The above advantages make the cells and animal models expressing
fluorescent protein very attractive for the evaluation of therapeutics, and especially for
high through-put screening, although the imaging of fluorescent protein is hardly
applicable for humans. PET (and SPECT) is unique among the imaging modalities in
that it can capture the functions of cells and tissues through the accumulation of
radiolabeled compounds. PET, in contrast to fluorescence imaging, can be applied to
humans, enabling the monitoring of the therapy effect and response in individual
patients. The cost and time needed for each imaging, however, makes PET less
attractive than fluorescence imaging in the screening of therapeutics.
In this study, we established human mesothelioma cells expressing red fluorescent
protein (RFP) and their mouse xenograft model, and compared their fluorescence and
the uptake of PET tracer analogs in vitro and in vivo to distinguish their characteristics
and usefulness in monitoring tumor growth and therapy response. We examined the
effects of pemetrexed, an anti-folate anti-neoplastic agent approved for mesothelioma
treatment combined with cisplatin, along with the typical cytotoxic reagents
actinomycin D, a transcription inhibitor, and cycloheximide, a protein synthesis
inhibitor, on the fluorescence intensity and uptake of two radiolabeled metabolic
tracers,
[3H]3'-deoxy-3'-fluorothymidine
([3H]FLT)
and
[14C]2-fluoro-2-deoxy-D-glucose ([14C]FDG), that simulate the widely used PET
tracers
[18F]3'-deoxy-3'-fluorothymidine
([18F]FLT)
and
[18F]2-fluoro-2-deoxy-D-glucose ([18F]FDG), in cultured cells. In the xenograft model,
the response to pemetrexed was examined.
80
7-2. Materials and Methods
2.1. Cell culture and vectors
The human mesothelioma cell line MSTO211H was obtained from American Type
Culture Collection (Manassas, VA, USA) and cultured in RPMI medium 1640
(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) containing 10% fetal bovine serum (FBS, SAFC
Biosciences, KS, USA), 50 units/ml of penicillin and 50 µg/ml of streptomycin
(GIBCO Invitrogen Corp., Carlsband, CA, USA) in a humidified atmosphere of 5%
CO 2 in air at 37°C. The pDsRed2-C1 and pTurboRFP vectors were purchased from
Clontech (Mountain View, CA, USA) and Everogen (Moscow, Russia), respectively.
2.2. RFP gene transfection
For expression vector transfection, 1.0 × 106 cells in six-well plates were cultured in
RPMI medium 1640 containing 10% fetal bovine serum without antibiotics and
incubated with a precipitated mixture of Lipofectamine 2000 (Invitrogen) and 1 µg of
plasmid for 6 h before being replenished with fresh medium. Cells were harvested with
0.05% trypsin/EDTA (GIBCO) at 48 h after transfection and subcultured at a ratio of
1:20 into culturing medium containing 800 µg/ml of G418 (Roche, Basel, Switzerland).
The clones with stably integrated plasmids were selected by G418-resistance and
isolated with cloning cylinders. The brightest clones were selected and amplified.
2.3. Cell growth and treatment with cytotoxic reagents
Cells were seeded at 1.5, 3.0, 6.0, 12, 25, 50, 100 × 104 cells/well in collagen-coated
EZView LB 24-well plates (IWAKI, Tokyo, Japan), and when they had become
attached to the culture dish, fluorescence intensity was measured. In cell growth and
cytotoxic treatment experiments, the cells were seeded at 5.0 × 104 cells/well in
24-well plates, and in cell growth experiments, they were cultured for 1, 2, 3, 4 days.
Fluorescence intensity was measured daily, and viable and total cell numbers were
81
counted after trypsinization. For treatment with cytotoxic reagents, the medium was
changed to ones containing 0.3 or 1.0 µg/ml actinomycin D (Sigma-Aldrich); 0.3, 1.0
or 10 µg/ml of cycloheximide (Sigma-Aldrich), or 5, 10, 50, 100 or 500 nM of
pemetrexed (Alimta, kindly provided by ELI Lilly Japan K.K., Hyogo, Japan) at 24 h
after the seeding, and the cells were cultured in media containing the reagent up to 48 h.
At several time points, fluorescence intensity, cell numbers and protein amount were
measured. Fluorescence intensity was plotted against total and viable cell numbers and
protein amount. Cell counting was performed by using a trypan blue solution and
haemacytometer
or
CYTRECON
CYT-1000
(GE
Healthcare
UK
Ltd.,
Buckinghamshire, England). After cell counting, the remaining cells were lysed in lysis
buffer (50 mM Tris-HCl, pH 7.5, containing 1.0 mM EDTA, 150 mM NaCl, 1.0%
NP-40, 2.0 µg leupeptin, and 1.0 mM phenylmethyl sulfonyl fluoride (PMSF)) and
protein amount was measured. All reagents were purchased from Sigma-Aldrich, or
Wako Pure Chemical Industries, Ltd. (Osaka, Japan).
2.4. Fluorescence imaging
Fluorescence imaging was performed with an IVIS Lumina Imaging System (Xenogen,
Alameda, CA, USA) with a DsRed filter set (excitation: 500/550 nm; emission:
575/650 nm) and a background filter set (excitation: 460/490 nm; emission: 575/650
nm). Surface fluorescence intensity was measured and normalized to photons per
second (p/s). First, the image was captured by DsRed filter set, and then subtracted by
the second image by background filter set. All animal and cell fluorescence images
were acquired with 1s exposure time (f/stop = 8 and 2, respectively). During
fluorescence imaging, mice were anaesthetized by isoflurane (Merck, Darmstadt,
Germany). For quantitative comparison, regions of interests (ROIs) were drawn over
tumors and cell culture wells. Images and measurements of fluorescence signals were
acquired and analyzed with Living Image software (Xenogen).
82
2.5. FLT and FDG uptake in vitro
Twenty-four hours after cell seeding, cells were treated with 1.0 µg/ml of actinomycin
D, 1.0 µg/ml of cycloheximide or 60 nM of pemetrexed for 1, 3, 6, 10, 24, or 48 h. The
concentration was selected based on our preliminary study to suppress cell
proliferation in 2 days. The dose induced more than 70-90% cell death in 4-5 days. At
certain times, the medium was changed to one containing 7.4 kBq [3H]FLT (62.9
GBq/mmole, Moravek Biochemicals Inc., Brea, CA, USA) and 3.7 kBq [14C]FDG
(11.1 GBq/mmole, American Radiolabeled Chemicals Inc., St. Louis, MO, USA), or
7.4 kBq [methyl-3H]thymidine ([3H]Thd, 3.33 TBq/mmole, Moravek) and incubated
for 1 h. Cells were quickly washed with cold phosphate buffered saline (PBS,
Sigma-Aldrich) and lysed in 0.2 N NaOH. Radioactivity was measured using a liquid
scintillation counter (LS6000, Beckman Coulter, Inc., Fullerton, CA, USA).
2.6. Animal experiments
Four-week-old BALB cAJ nu/nu mice were obtained from CLEA Japan, Inc. (Tokyo,
Japan). The animal experiments were approved by the pertinent committee of our
institution and performed in compliance with federal and local institutional rules for
the conduct of animal experimentation.
2.7. Heterotopic tumor model
Five-week-old mice were subcutaneously (sc) injected with 1.0 × 104 - 1.0 × 107 cells
in the back. Two weeks later, fluorescence was detected and tumor volume was
measured before resection. For pemetrexed treatment, mice were sc injected with 1.0 ×
106 cells. Two weeks later, the mice received pemetrexed or vehicle alone. Pemetrexed
was diluted in sterile saline per manufacturer’s instructions. Treatment with 200 mg/kg
of pemetrexed or vehicle was given intraperitoneally once a day, 5 days a week for 2
weeks.
The
applied
dosage
was
83
calculated
by
dose
calculator
(http://www.fda.gov/cder/cancer/animalframe.htm) based on 500 mg/m2, the dose
recommended by the manufacturer for clinical use. Fluorescence detection and caliper
measurements of tumor diameters were performed every other day, and tumor volume
was estimated by the following equation: V = a × b2× π /6 (a and b correspond to the
longest and shortest diameter, respectively).
2.8. Orthotopic tumor model
For orthotopic implantation, mice were anaesthetised by pentobarbital (Dainippon
Sumitomo Pharma, Osaka, Japan). Mice were injected with a single dose of 2.0 × 106
cells into pleural space via infra-axillary route. Fluorescence images were taken at 2-4
weeks after the injection, when body weight started to decrease, and the mice were
then sacrificed. Tumors detectable from outside the body were measured for their
weights and fluorescence intensities ex vivo.
2.9. FLT and FDG uptake in vivo
Pemetrexed-treated and -untreated mice were given 185 kBq [3H]FLT together with 37
kBq [14C]FDG by intravenous (i.v.) injection. One h later, mice were sacrificed and
approximately 100 mg of tissues of interest was collected. Whole body and tissue
samples were weighed and their radioactivity was measured by liquid scintillation
counter. Radioactivity uptake in the tumor and tissues of interest was expressed as a
percentage of the injected dose per gram (%ID/g) normalized to 20-g mouse body
weight. Tracer uptake was determined after single-dose and 2-week consecutive
treatments with pemetrexed.
2.10. Statistical analysis
Aspin-Welch’s t test or Student’s t test was used, depending on the results of F test, to
assess
differences
between
tumor
size,
84
tumor
fluorescence
intensity,
and
biodistribution of radiotracers into tissues (%ID/g and tissue-to-blood or -muscle
ratio).
7-3. Results
3.1. Cell growth and treatment with cytotoxic reagents
We selected clones emitting the brightest fluorescent signal, Ds#4 and Tu#6,
respectively, from DsRed- and TurboRFP-transfected colonies. Although fluorescent
proteins are generally thought to be toxic for cells [7], there was no significant
difference in the in vitro growth rate and cell doubling time of RFP-expressing cells
compared with parental MSTO211H cells (doubling time of Ds#4 was 21.9 h, Tu#6:
22.9 h, and MSTO211H: 23.0 h). When the cells were seeded at various concentrations
into 24-well plates and attached to the bottom of the plates, fluorescence images (Fig.
1A) showed that fluorescence intensity was well correlated with cell number (Fig. 1B;
85
Ds#4: R2=1.00, Tu#6: R2=1.00). We next
examined whether the change in cell
number during growth and cytotoxic
treatments could be monitored on the basis
of fluorescence intensity. Fig. 2 shows the
fluorescence intensities plotted against the
total numbers of Ds#4 cells (untreated and
treated with actinomycin D, cycloheximide
and pemetrexed). Under each condition,
fluorescence intensity was well correlated with the total cell number. Actinomycin Dand cyclohexmide-treated cells showed slightly lower fluorescence intensity per cell
than untreated and pemetrexed treated cells. Table 1 lists the coefficients between
fluorescence intensity and viable and total cell numbers, as well as the protein amounts
in both Ds#4 and Tu#6 cells. This demonstrates that fluorescence intensity was
dependent on cell numbers as well as on protein amounts, and correlations to the total
cell numbers were especially high under all conditions.
3.2. FDG and FLT uptake in vitro
To compare the uptake of PET tracers
with fluorescence intensity, the uptake of
[3H]FLT and [14C]FDG, together with
[3H]Thd, an often-used marker of cell
proliferation,
was
examined.
Cells
treated with actinomycin D or cycloheximide were incubated with the radiotracers for
1 h before sampling. Both Ds#4 (Fig. 3) and Tu#6 (data not shown) cells showed
similar results. In contrast to the fluorescence intensity, which remained unchanged for
a couple of days along with the total cell number, the uptake of [3H]FLT and [14C]FDG
86
decreased more than 30% within 3 h after the initiation of the treatments, resembling
[3H]Thd uptake (Fig. 3A, B). When the cells were treated with pemetrexed, the uptake
of [3H]FLT increased temporarily up to 8-10 fold, while the increase was two- to
threefold with [14C]FDG and three- to fourfold with [3H]Thd (Fig. 3c). In this case,
fluorescence intensity changed little for a few days after start of the treatment.
3.3 Monitoring tumor growth by
fluorescence in vivo
To
evaluate
the
usefulness
of
fluorescence-based tumor detection for
monitoring tumor location and growth,
we transplanted RFP-expressing cells
into mouse sc or pleural cavity. When
more than 1.0 × 105 cells were
transplanted sc, tumors were visualized
on fluorescence images after two
weeks (Fig. 4A). The weight of the
smallest
subcutaneous
tumor
visualized by fluorescence imaging
was 3 mg. Tumors in the pleural cavity
were also detected when located just
behind the ribs (Fig. 5A). In both cases,
fluorescence intensity in xenografts
was correlated with tumor volume or
weight. The correlation coefficients
between tumor size and fluorescence intensity were R2=0.81 (p<.0001) for Ds#4 and
R2=0.86 (p<.0001) for Tu#6 in the heterotopic model (Fig. 4B), and R2=0.80
87
(p=.0066) for Ds#4 and R2=0.78 (p<.00001) for Tu#6 in the orthotopic model (Fig.
88
5B).
3.4. Response to pemetrexed treatment in vivo
We also examined the response of the mesothelioma model to pemetrexed in terms of
fluorescence intensity and uptake of PET tracer analogs in vivo, treating mice with 200
mg/kg of pemetrexed for 5 days per week for 2 weeks. In pemetrexed-untreated mice
tumors grew readily, while in treated mice, tumor growth was inhibited. Significant
difference in tumor volume was observed between treated and untreated tumors from
Day 10. There was also a tendency that the fluorescence intensity of treated tumors
was lower than that of untreated ones, and the difference was statistically significant at
89
Day 14 (Fig. 6).
When we examined the uptake of the
radiolabeled
tracers
after
single
pemetrexed treatment, that of [3H]FLT
was significantly increased in Ds#4 and
Tu#6 tumors during 1-24 h, in which the
tumor-to-blood ratio with Ds#4 tumor
peaked at 12 h after the treatment and
after the treatment with Tu#6 tumor at 24
h. Forty-eight hours later, the uptake of
[3H]FLT decreased to the level of control
tumor (before treatment). In contrast, the
uptake of [14C]FDG did not change after
the treatment (Table 2).
Under the consecutive treatment with
pemetrexed for 2 weeks, the uptakes of [3H]FLT into Ds#4 and Tu#6 tumors were
about fourfold higher than in untreated mice at 24 h after the last treatment (Fig. 7A).
In contrast, the uptake of [14C]FDG in pemetrexed-treated mice was slightly higher
than in untreated mice, but the difference was not statistically significant (Fig. 7B).
7-4. Discussion
Non-invasive imaging can be a powerful tool in the development and evaluation of
therapeutic and diagnostic protocols, where the key issue is an accurate interpretation
of imaging results based on a thorough understanding of the characteristics of each
imaging method. Also important in the development and evaluation of therapeutics and
diagnostics are practical disease models. Various types of mesothelioma models have
been reported [8-11], and tumor growth and drug effect have been monitored
90
noninvasively using PET, SPECT, and MRI [12-16].
Considering the efficiency of
tumor formation and the ease of monitoring, we decided to combine the xenograft
model with RFP imaging. In the present study, we established very stable,
RFP-expressing mesothelioma clones Ds#4 and Tu#6 from parental MSTO211H cells
and quantitated the emitted fluorescence from the cultured cells and xenografts in
comparison to the uptake of PET tracer analogs.
After confirming that the fluorescence imaging by our system can quantitatively detect
the number of RFP-expressing cells in culture, we characterized the changes in
fluorescence intensity when the cells were under steady growing condition or
suppressed growing/dying condition by cytotoxic reagent treatment. When the cells
were growing, fluorescence intensity correlated well with total cell number as well as
viable cell number and protein amount. When the cells were being treated with
actinomycin D, a transcription inhibitor; cycloheximide, a protein synthesis inhibitor,
or pemetrexed, an inhibitor of multiple folate-dependent enzymes, the correlation with
total cell number, rather than viable cell number, was high under all treatments. The
slightly lower fluorescence intensity per cell observed with actinomycin D and
cycloheximide treatment was probably due to the inhibition of protein synthesis by
these reagents. With each treatment, fluorescence intensity, along with cell number,
temporarily increased for 1 day after start of the treatment (data not shown). Cell
fluorescence then ceased to increase but did not markedly decrease during the next
couple of days, although the viable cell number started to decrease. RFPs are stable
proteins with a half-life of more than 24 h, meaning that they would remain in the
culture dish for a couple of days even after cell death, which may explain this
discrepancy. Although the response to cytotoxic treatment was rather slow, the
fluorescence intensity was a good indicator of the cell number.
We then studied the changes in uptake of analogs of widely used PET tracers FDG, a
marker of glucose metabolism [17], and FLT/Thd, a marker of DNA synthesis [18],
91
while being treated with cytotoxic reagents, in comparison with the changes in
fluorescence intensity. As expected for metabolic tracers, [3H]FLT/Thd and [14C]FDG
uptakes decreased dramatically before the cell number or fluorescence intensity started
to decrease under actinomycin D or cycloheximide treatment (Fig. 3A, B). The
decrease was observed within 1 h in case of cyclohexymide and within 3 h with
actinomycin D, probably reflecting the immediate and direct effect of these reagents on
DNA synthesis and energy metabolism. In contrast, when the cells were treated with
pemetrexed, the uptake of [3H]FLT dramatically increased. A similar observation was
reported with [18F]FLT when treated with methotrexate, an inhibitor of dihydrofolate
reductase [19]. Pemetrexed disrupts folate-dependent metabolic processes and inhibits
thymidylate synthase [1, 20]. When de novo DNA synthesis, especially Thd synthesis,
is inhibited in pemetrexed-treated cells, it is likely that the cells try to compensate for
the Thd shortage through de novo synthesis by increasing the uptake of Thd to be used
for DNA synthesis through a salvage pathway, resulting in high Thd and FLT uptakes.
The mechanism should be similar to that proposed for the increase in [18F]FLT uptake
under 5-Fluorouracil (5-FU) and methotrexate treatment, which both inhibit de novo
DNA synthesis [19]. Although the uptakes of [3H]FLT and [3H]Thd both increased, the
increase in [3H]FLT uptake was much more pronounced than that in [3H]Thd.
Discrepancy between the changes in Thd and FLT uptake has also been reported with
cells treated with an alkylating anticancer agent [21]. In fact, such discrepancy could
be a common phenomenon when applying chemotherapeutic reagent protocols. This
difference in their metabolism, that Thd can be incorporated into DNA while FLT
cannot [22], should be the basis of their different behavior, although the details of the
mechanisms still await further study.
The RFP-expressing tumor cells kept their tumor-forming ability when injected into
mouse sc and pleura, and fluorescence from these tumors in sc, when the size exceeded
3 mg, and pleural implants located directly under the ribs could be detected in vivo,
92
with the fluorescence intensity of tumors showing strong correlation with tumor
volume and weight. When tumor-bearing mice were treated with pemetrexed, increases
in tumor volume and tumor fluorescence intensity were both retarded. This inhibition
reached approximately 50% of control in tumor volume and 50% in fluorescence
intensity on day 14. The lesser inhibition of fluorescence intensity than tumor volume
at earlier time points could be due to the effect of sustained fluorescence from dying
cells as observed in the cell culture study. Although the detection of therapy effect was
only possible at later time points where the suppression of tumor growth was
prominent, our study indicated that fluorescence could be used to monitor tumor size
during tumor growth and treatment. Various novel therapeutic agents are now under
investigation; notable are those targeted to molecules such as transforming growth
factor (TGF)-a and epidermal growth factor receptor (EGFR) that regulate cell growth
[2, 23-25], or nuclear factor (NF)-κB that regulates cell survival [2, 24, 25]. Our
mesothelioma model might be useful for the evaluation of these agents, and
particularly to efficiently screen them according to the changes in fluorescence
intensity.
After a single dose of pemetrexed, the temporary increase in [3H]FLT uptake, shown as
tumor-to-blood, peaked at 12-24 h after the treatment. This was similar to the in vitro
data, where temporary increase in tracer uptake after treatment with pemetrexed was
prominent in [3H]FLT. When tumor-bearing mice were consecutively treated with
pemetrexed at an inhibitory dose for tumor growth, the uptake of [3H]FLT was more
than fourfold higher than in control, while the uptake of [14C]FDG did not increase
significantly. This paradoxical increase in [3H]FLT tumor uptake, comparable to the
one observed at 24 h after a single dose, could be an indicator of the tumor still
responding to the treatment 2 weeks after initiation of the consecutive treatment. It is
well accepted that FLT is a more sensitive probe compared with FGD in studying
tumor proliferation. We have shown in this study that FLT was more sensitive than
93
FDG in monitoring tumor response to pemetrexed treatment. It should be noted,
however, that which PET tracer, FLT, FDG, or another, is more sensitive in monitoring
the response depends on the mechanism of the action of the treatment and must be
evaluated in each case.
The dose employed in our study could suppress growth of the
tumor mass but could not eliminate it. Accordingly, the increase in [3H]FLT uptake
indicates that the tumor is responding to the treatment but not necessarily that the
treatment is leading to a complete cure. In some studies using lymphoma and
malignant glioma, FLT was also investigated as a marker for monitoring the response
to chemotherapy or radiotherapy [26-28], where its decreased FLT uptake was
suggested to reflect the treatment response. Our study indicates that, in the treatment
with pemetrexed, and probably with other chemotherapeutic reagents that inhibit de
novo synthesis of DNA, the temporary increase of FLT uptake especially early after
treatment could be a marker of favorable therapeutic response in model animals and
possibly in patients.
In conclusion, in our RFP-expressing tumor model, an optical imaging system can
detect and semiquantify tumor growth in live animals. As for the evaluation of
treatment effects, change in uptake of PET tracer analogs has an advantage over
change in fluorescence intensity. Especially the quick and pronounced response, i.e.,
increased FLT uptake early after pemetrexed treatment, indicated that FLT could be a
good marker of the effect of pemetrexed and probably other anti-folate
chemotherapeutics in vivo. Fluorescence imaging could be used to monitor tumor size,
whereas PET could be used to keep track of the tumor metabolic response to
therapeutic agents. The fluorescent tumor model mouse could provide precision and
ease for the study of tumor growth and response to treatments, with fluorescence and
PET imaging conveying different information and complementing each other.
7-5. Acknowledgements
94
We would like to thank the members of the Diagnostic Imaging Group, Molecular
Imaging Center, NIRS, for helpful discussions and valuable suggestions. We would
also like to thank Ms. Sogawa for her help with the animal experiments and Mr. Gerz
for English correction.. Pemetrexed (Alimta) was kindly provided by Eli Lilly Japan
K.K. This research was supported by grants from the National Institute of Radiological
Sciences.
7-6. References
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8. 論文目録
本学位論文内容は下記の発表論文による。
1. Saito, Y.; Furukawa, T.; Arano, Y.; Fujibayashi, Y.; Saga, T.: Comparison of
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models as a monitoring system for growth and therapeutic effects. Nucl. Med. Biol.
35, 851-860 (2008)
9. 主査、副査名
本学位論文審査は千葉大学大学院薬学研究院で指名された下記の審査委員に
より行われた。
主査 千葉大学大学院教授(薬学領域) 薬学博士 山口 直人
副査 千葉大学大学院教授(薬学領域) 薬学博士 戸井田 敏彦
副査 千葉大学大学院教授(薬学領域) 薬学博士 村山 俊彦
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10. 謝辞
本研究を行うにあたり、終始懇切丁寧な御指導御鞭撻を賜りました千葉大学大学
院薬学研究院 荒野 泰 教授に心から感謝と敬意の意を申し上げます。また、適切
な御指導御助言を頂きました千葉大学大学院薬学研究院 上原 知也 講師、千葉
大学大学院薬学研究院 鈴木 紀行 特任准教授、千葉大学大学院薬学研究院
平良
優一郎 助教に心から感謝申し上げます。
学位論文審査において貴重な御指導と御助言を頂いた千葉大学大学院薬学研
究院 山口 直人 教授、千葉大学大学院薬学研究院 戸井田 敏彦 教授、千葉
大学大学院薬学研究院 村山 俊彦 教授に御礼申し上げます。
放射線医学総合研究所・分子イメージング研究センターにおける業務との両立に
ついて、寛容に御支援と御助力を頂きました、分子病態研究グループ・グループリー
ダー 佐賀 恒夫 先生、同グループチームリーダー 古川 高子 先生、分子イメー
ジング研究センター・上席研究員 小泉 満 先生、福井大学・高エネルギー医学研
究センター・センター長(分子イメージング研究センター・副センター長) 藤林 靖久
先生に厚く御礼申し上げます。研究を行うにあたり多くの御協力と御助言を頂いた、
放射線医学総合研究所・分子イメージング研究センター・分子病態研究グループ
長谷川 純崇 研究員、同グループ Winn Aung 研究員、同グループ 辻 厚至
研究員、同グループ 曽川 千鶴 さん、同グループ 阿南 和子 さん、防衛医科大
学校・医学研究科・分子生体制御学講座 矢野 道子 さんに心より御礼申し上げま
す。また千葉大学薬学研究院・分子画像薬品学研究室・博士課程 2 年 宮本 玲 さ
んを初め、研究について多くの御協力と御助言を頂いた同研究室の学生の皆様に
心より感謝致します。
最後に、いつも支えてくれていた父、母、弟に心から感謝致します。
2010 年 3 月
齋藤
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有里子
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