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News Letter
No.24
編集:Newsletter 編集委員会
政策情報学会 会報 第 24 号
May 31, 2011
目 次:
編集委員会からのおしらせ:
発行:政策情報学会
2011 年 5 月 31 日
1
学会関係者の近著紹介コーナー
20
東日本大震災に関連した
会員の皆様へのご連絡
2
シリーズ:
地方都市の公共交通を考える ①
23
特集:第 6 回研究大会開催報告
3
シリーズ:
文化批評 ①
26
第 7 回研究大会のご案内
10
第 6 回政策情報学フォーラムのご案内
13
学会誌編集委員会からのおしらせ ①
14
学会誌編集委員会からのおしらせ ②
17
編集委員会からのおしらせ:
◇編集・発送体制の整備に時間がかかり、皆様への通知が遅くなって申し訳ございませんでした。
◆Newsletter 編集委員会が新体制となったことに合わせて、学会から会員の皆様へお伝えする情報を、できる
限り Newsletter に集約しようということになりました。そのため、従来よりもページが増えることになりま
した。
◇学会誌の原稿募集などの各種委員会からの通知は、従来、個別に通知用紙を発行していましたが、今後は
Newsletter で通知をさせていただきます。また、本年度の学会誌原稿募集については、本誌の中に掲載をし
ておりますので、ご確認のほうを宜しくお願いいたします。
◆ページ拡充に伴い、会員の皆様からの「コラム」などのご投稿をお待ち申し上げております。単発でもか
まいませんので、お気軽に委員会のほうにお問い合わせください。(⇒問い合わせ先:[email protected])
◇また、発行回数が従来の 4 回/年から 2 回/年へと変わりました。
◆新しい体制ということもありますので、お気づきの点がありましたら、お気軽にご意見をお寄せいただけ
ればと思っておりますので宜しくお願いいたします。
Newsletter 編集委員会委員長 若井 郁次郎
副委員長 加藤 久明
松尾 和典
委
員 吉岡 泰亮
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News Letter
No.24 May 31, 2011
東日本大震災に関連した会員の皆様へのご連絡
仲上会長から会員の皆様へのメッセージ(3/13 に会員向け ML で発信したものです):
東北地方太平洋沖地震の被災地の政策情報学会会員の皆様に
この度は、未曾有の大災害となりました。
政策情報学会の会員並びにご家族・学生の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
もし、被災に会われた方がおられましたら、ご一報いただければ幸いです。
政策情報学会事務局が関西にありますので、遠隔地でありますが、会長・事務局で対応策を考えたいと思
います。
ご連絡宜しくお願い申し上げます。
2011 年 3 月 13 日
政策情報学会会長 仲上健一
被災された会員の皆様へ:
被災された会員の方がいらっしゃいましたら、事務局([email protected])までご連絡くださいますよう、お
願い申しあげます。また、東日本大震災によって研究調査活動に支障が出ている場合にも、ご相談ください。
関西方面の理事を中心としたタスクフォースを編成し、対応をさせていただきたいと思います。
また、震災関係の情報などがありましたら、Newsletter 編集委員会までお寄せください。
学協会が連合で対応をするための「学会連携・震災プロジェクト」が立ち上がりました:
4 月に政策系の学協会会長経験者が中心的な呼びかけ人となり、学協会がネットワークを組織して共に震災
復興と今後の減災への取り組みを行うための特別プロジェクトとして、
「学会連携・震災プロジェクト」が立
ち上がりました。準備段階ですが、Web サイトが”http://gakkai-renkei.jp/”に開設されています。また、事務局
のメールアドレスは” [email protected]”となります。
――――――――――――――――――以下、呼び掛け文――――――――――――――――――
私たちは、東日本大震災という未曽有の災害に際して、学界の立場から個人の資格で「呼びかけ人」とし
て集い、災害復旧や今後の減災への議論を深めていこうと考えています。また、
「呼びかけ人」として呼びか
けを続け、関連する学会の議論を連携させ、深めていきたいと考えています。
このプロジェクトでは、関連する学会の震災関連のさまざまな情報を共有し、また、独自のシンポジウム
なども開催していくつもりでいます。さらに、定期的にメールマガジンを発行して、イベントなどの情報を
発信していきます。関連する学会の会員の皆様、また一般の皆様の登録をお誘いするとともに、このプロジ
ェクトへのご協力をお願いいたします。
2011 年 4 月
呼びかけ人代表
植田和弘/京都大学(環境経済・政策学会元会長)
仲上健一/立命館大学(国際公共経済学会会長、政策情報学会会長)
松原聡/東洋大学(日本公共政策学会会長・本プロジェクト事務局)
――――――――――――――――――以
上――――――――――――――――――
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No.24 May 31, 2011
特集:第 6 回研究大会開催報告
はじめに:実行委員長からの概要報告
第6回研究大会は、2010 年 11 月 27 日(土)
、エル・おおさか(大阪府立労働センター)において、大会テ
ーマを「国際観光と政策情報:継承と変革」として開かれました。研究大会では、自由論題報告が3件、基
調講演、話題提供、パネルディスカッションおよび全員参加のメッセージ作成があり、それぞれ熱心で活発
な研究交流が展開されました。以下、その概要を報告します。
第 6 回研究大会実行委員長 若井郁次郎(大阪産業大学教授)
自由論題概要:
第 6 回研究大会の自由論題セッションにおいては、3 名の発表者が現代日本の直面する課題についての研究
を発表された。はじめに、千葉商科大学大学院政策研究科の阿部弘之氏が超高齢化社会における課題と対策
について発表され、次に、千葉商科大学大学院政策研究科の空閑睦子氏が、海外滞在経験者の日本帰国時の「違
和感」と「新しい世界観」について発表された。最後に、羽衣国際大学産業社会学部の小川雅司氏が「特化係
数法」を使用して、訪日動機の考察について発表された。以下は各発表者の発表内容と提起された質問・コ
メントについてである。
第1に、阿部氏が超高齢化社会の課題を説明され、超高齢化社会への対策について、国内の企業や団体へ
のヒアリングの結果を示して説明された。そして、超高齢化社会のシステムについての具体的な提言を示さ
れた、それら提言には雇用に関する法整備や人材育成に関する具体的なものが見られた。
第 2 に、空閑氏が海外在住日本人が帰国時に感じる「違和感」が新しい「世界観」を持つことに繋がると
の仮説を立て、質問調査によって明らかになった「違和感」と海外滞在経験者が持つ「新しい世界観」の関
連について説明された。その主要な結果としては異文化体験の度合いが「地球的一体感意識」等の「新しい
世界観」の形成度の違いに影響していることや「新しい世界観」の違いが「日本で感じる違和感」の度合いの違
いに影響していることを説明された。
最後に、小川氏がインバウンド(訪日外国人旅行者)の傾向と訪日動機を説明された。アジア諸国のイン
バウンドが日本にとって重要であり、とくにアジア諸国からのインバウンドと関西の関連の重要性を「外国
人正規入国者の国・地域別/空港別比較」を使用して説明された。そして、特化係数法を用いて、アジア諸国
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からの旅行者の訪日動機を説明された。
上記3つの報告に関して、以下のような質問およびコメントが提起された。第 1 に、阿部氏の報告につい
ては、高齢化社会のあり方について企業と雇用について集約しているが、第 3 セクターを通しての社会参加
というものについて、どのように考えるかという質問が提起された。また、空閑氏の報告については、グロ
ーバライゼーションが進行する過程で、どれが同質的なのか、または異質的(多様な)ものなのかというこ
とを考えることが重要であるという点が提起された。最後に、小川氏の報告については日本に来る海外旅行
者の数字的目標についての質問、さらには各地域間の旅行者の行動パターンの違いに基づく日本への旅行の
プロモーションの違いについて質問が寄せられた。
座長 田中善紀(立命館大学非常勤講師)
基調講演概要:
基調講演は「観光~異文化との出会い~」をテーマに、大森康宏・立命館大学映像学部教授によって、朽
木量・千葉商科大学准教授の司会のもとで行われた。ビデオ放映を交えての概要は、次のとおりであった。
国立民族学博物館で人類学を専門として 30 年近く研究してきた過程で映像を手がけ、映像学という新しい
分野を開拓してきた。この間、りんくうタウン、学研都市などのプロジェクトにかかわってきた。こうした
経験から異文化の理解だけでなく、関西では国際化に向けての観光、つまり世界の関西圏の中に大阪、京都、
神戸の三つがあることを知らしめる体制づくりが重要である。こうした背景に加えて、ジプシーの昔のこと
わざ「山は動かずとも人は動く」のように、移動しないと観光にならないという考えがあり、マヌーシュ(ジ
プシー)の研究を始めた。ヨーロッパのマヌーシュ人は、西へ移動し始め、7世紀ごろにインド、15 世紀ご
ろにヨーロッパ、18~19 世紀にアラスカやオーストラリアに到達する。これは、ユダヤ人と共通する。ユダ
ヤ人は経済(お金)に向かうが、マヌーシュ人はジプシーと認められないよう、民族的に主張しないで隠れ
て生活してきた。このため迫害を受けなかったが、ドイツでは得体の知れない人種という理由で、ヒトラー
により 30 万人以上が殺された。現在では、フランスのサルコジ大統領により定住化を強制され、定住化に反
すると、国の中にいられないよう、迫害されている。
マヌーシュ人にとっては、同じ場所に2~3日いると、その場所が不浄になる、という考えがあり、新た
な聖地を求めて移動する。生涯、移動生活をせざるをえない人は、3割近くもいる。われわれから見ると、
ロマンチックと思うが、われわれには帰る場所があるが、かれらにはない。かれらは、毎日移動するから、
プロセスを楽しみ、24 時間をどう生き生き抜いたか、といったことを話題にする。アフリカのセネガルの遊
牧民も、プロセスを楽しむ、自分が生きていることを話題にする。写真を撮り、見せると、自分は今、生き
ているが、これから先は分からない、という。かれらにとって昨日は記念すべき一日であり、明日は分から
ない。2~3日経つと、また写真を撮ってくれという。写真は、自分が生きている証という気持ちである。
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これらの研究を通じて明らかになったことは、自分たちのプロセスを楽しみ、あらゆる自然の中のものを
見て、自分たちに与えられたポジションや生活形態を知り、心身を耕すことが行われている。観光もまた、
日常から非日常の中で何を見て楽しむか、物事を自分の中に認識し、それをまた耕して大きくしていこう、
という意欲であると考えている。これを視耕という字で当てる。家庭では、不浄になれば掃除をすれば、き
れいになるが、移動により不浄から逃れて、常に新しいところへ行く生活をしている。
フランスのマヌーシュ人の事例より、移動と観光の対比ができる。つまり、動いていないと、人生のプロ
セスを楽しむことができない、といえる。イギリス人のグレーバーンは「観光は聖なる旅である」といって
いる。
「聖なる旅」は巡礼に通じるが、過酷なことを求めて巡礼するのではなく、楽しむためである。今まで
と違う世界に浸ることにより、多くのことを知り、行動パターンや考え方が変わる、という面で観光が貢献
している。
フランスのバカンス法は、相乗効果もさることながら、多くの人が日常生活から切り離されて、ある一時
期を過ごすことにより、別なものの考え方ができる効果をもたらすことを狙っている。この意味で「聖なる
もの」へのひとつの生き方ともいえる。また、心を満たすことでもある。
次に、観光資源を考える。その例としてインドネシアのバリ島の葬儀がある。本来、村の人たちだけの葬
式が観光の一大行事になった。バリ島では高い場所が聖なる土地であり、低い場所は不浄な場所とされ、海
は万物が戻されるところと考えられている。葬儀を見るのは、人間が他の人間の異文化をもった人たちの生
き様を見たい、という思いからである。グリーンツーリズムも、生産される農産物がどのように作られてい
るか、という動機による。
3年間にわたり 1,400km を歩いて撮影し制作した「聖地巡礼」
(サンチョンプロモッセラー)の経験からい
えば、この聖地巡礼の第一はスポーツである。これは、健康になることである。日本にも四国巡礼や熊野詣
があるが、車で巡礼している。しかし、ヨーロッパでは、ある年に1週間、次の年に1週間と分割して、実
際に歩く巡礼である。これが最初の旅であったと思う。ここが、日本の聖地巡礼と異なる。ちなみに集団旅
行は、1840 年ごろ、トーマスクックにより始められた。
フランスのコンクから始まる巡礼の旅は、最後はサンチャゴで終わるが、さらに最果ての地カップリンス
ティールに行き、着ていたものや履いていたものなど、人生のしがらみの総てを捨て、焼いて旅が終わる。
いくつかの事例を振り返ると、自分が歩くことが観光目的であれば、観光となる場所はよいが、何もない
地域では、生きている人たちは、個性ある集団とのつながりを大切にしている。つまり自分たちの原点を見
せる、体験型ツアーが生まれてくる。隠れた観光資源の発掘といえる。今は、観光資源が多過ぎて混乱して
いる。
今後は、多様性に向けて、異文化との接触、特に日本は独自の生き方を大切にする。これに興味をもつ外
国人が大変多くいるから、このような人たちに分かりやすく、感銘をあたえる観光資源を作りあげ、開放す
ることが一番重要である。そして、最初に観光に行く人たちのイメージづくりの手伝いとして映像が利活用
できる。また、配信することにより客を捉えることができる。しかし、映像は嘘をつくこともある。訴訟に
なった例もある。
観光の魅力化には、住んでいる人たちの実体験が効果的である。歩くリズムで視覚体験できる映像を制作
できるか。この克服が映像の課題である。
(要約編集:若井 郁次郎)
話題提供概要:
話題提供は「関西における新たな観光の取り組み:新たな産業づくりに向けた試み」をテーマに、星之勝・
㈱スルッと KANSAI 部長よって、仲上健一・立命館大学教授の司会のもとで行われた。スライドを交えての
あらましは、次のとおりであった。
基調講演を聴きながら、観光には、物見遊山だけでなく、日本の美しい自然、神社仏閣の見物、日常生活
そのものの体験など、広い範囲が含まれることが理解できた。そして、生の関西を見てもらいたいとの思い
で、乗り換えの便利さを高めるものを考えた。これが「スルッと KANSAI」という磁気カードの原点である。
ことの起こりは、阪神・淡路大震災である。当時、阪急・御影駅で降り、阪神・御影駅で乗ると、大阪と
神戸間が移動できた。これを見て、急遽、改札機を改造し、両方の定期券が使えるようにした。こうすれば、
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異なる二つの複線が利用上の複々線になる。このような経緯で、協議会から㈱スルッと KANSAI となった。
その後、ピタパができ、後払いのポストペイのサービスが起こっている。その他、スイカやパスモがある。
磁気カード普及の延長として、3day チケットなどが登場してきた。現在では、海外でも販売されるように
なり、韓国ではクレジットと提携している「ロッテ PiTaPa カード」が発行されている。こうなると、銀行決
済となり、お金を持ち歩く必要はなくなる。IC カードを使って観光という、スルッと KANSAI が目指してい
る、新しいスタイルの観光ができてくる。
観光の実態を見ると、日本への観光客はアジアから約7割を占めている。関西の4都市を見ると、京都は
欧米系、大阪と神戸はアジア圏が多い。奈良はアジア圏が半分である。ここに、関西の統合の必要性と地域
性が現われている、と見て取れる。事実、関西の観光客は、京都、神戸、大阪、奈良が中心で、最近は、和
歌山や高野山が増えている。移動圏としてみると、30 分の範囲である。関西への観光旅行形態の特徴を見る
と、団体旅行は中国、個人旅行は韓国や台湾、欧米系になっている。また、アジア圏はリピーターが多く、
欧米系はリピーターが少ないが長く楽しむ、という傾向にある。関西国際空港で案内に携わる方によれば、
アジア圏、特に韓国が多く、案内言語は韓国語や英語が多い。宿泊は、ゲストハウス利用が増えていて、年
齢層は 20 代後半から 30 代前半、方面では欧米系が4割を超えるまでになっている。そして、個人旅行の方
は、電車やバスで移動するため、カード利用が増えている。
インバウンドの人が困っている問題として、案内表示の問題がある。団体旅行が中心のときは、外国語表
記でよかったが、海外個人旅行(FIT)となると、電車やバスの乗り換え時、言葉の問題が出てくる。外国人
スタッフの配置にも限度がある。インバウンド版コールセンターの充実も必要である。
二つ目の問題としては、移動支援の充実がある。3day チケットが海外で好評である一方、経路検索の外国
語対応が必要になっている。ランドマーク検索は、英語化が始まっている。この発展形として、行きたい所、
ランドマークをプロットすると、時刻や料金が分かる、プランづくりを支援できる、仮称・パーソナル観光
プランを構想している。また、航空券からホテルの予約までワンストップで検索できる、ブログの充実もあ
る。文楽や歌舞伎などノンバーバルショーも求められている。結局、観光の IT 化である。
次に、インバウンド版コールセンターを設け、GPS(全地球測位システム)の測位機能をもつ携帯電話から
のコール対応の問題がある。これにより広域対応ができれば、便利になる。韓国では、日本語、英語、中国
語で 24 時間対応をしている。沖縄県では、これら3カ国語に英語を加えた対応が始まっている。また、パー
ソナル観光旅行への対応も検討課題であり、鉄道会社や関西空港㈱を中心に、すでに研究会を開いている。
個人旅行客は、自分で予約し、現地に行き、帰れば感想や満足感などをブログに書き込むことが多い。つ
まり自己実現の欲求が強いところがある。今のブログやツイッターのブームである。このため、ネット利用
が増え、韓国や台湾では旅行用の本が廃刊になっている。しかし、日本での海外からの観光旅行客の実情か
ら考えると、フリーペーパーや雑誌などとウェブとの一層の連動も必要と考えている。さらに、和太鼓など
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のノンバーバルショウを百貨店のホールで開く働きかけも必要と考えている。
他方、自治体の観光協会は府県境を越えることができないので、関西の良さを売り込むには、広域連携が
必要であり、そのための民間の連携組織を設けることで動いている。この狙いには、行政でできない隙間を
埋める役割もある。そして、いいものを創る。
観光にかかわっていると、いろいろな分野の方が観光に興味をもっていることが分かってきたので、コン
ソーシアムを考えるようになった。この動きとしては、大阪で観光サロンを立ち上げ、京都では IT(情報技
術)コンソーシアムの構想があり、奈良では奈良観光サロンが立ち上がっている。すでに観光は、コンソー
シアムや IT 化へと進んでいる。
(要約編集:若井 郁次郎)
シンポジウム概要:
基調講演や話題提供を受けて、パネルディスカッションは、大森康宏、星之勝、西川隆善・京都市下京区
長、中尾清・大阪観光大学教授、牧田正裕・立命館アジア太平洋大学教授の5名のパネリストのもとに、コ
ーディネーターの若井郁次郎・大阪産業大学教授により進められた。その概要は、次のとおりであった。なお、
パネルディスカッションのマインド・マップは、本学会ホームページを参照してください。
まず、観光庁が訪日する国際観光客の目標として掲げている、2010 年に 1,000 万人、2013 年に 1,500 万人、
2016 年に 2,000 万人、2019 年に 2,500 万人と、3年ごとに 500 万人増を見込み、将来的に 3,000 万人とする観
光振興計画の目標の紹介後、2010 年の目標値を達成できるか否かの問題提起から始まった。
これまでの観光振興計画を振り返ると、1980 年代に日本が観光立国を立ち上げ、これに参画したとき、外
国の人たちが日本の何を意識し、何を求めているのか、明確でなかった。これは、観光に対する深い研究が
なかったことによる。例えば、温泉は世界中にあるが、日本の温泉の特色は、何かがぼんやりしていた。ま
た、行政と地域の確執もあった。また、ヨーロッパのようにレストランやホテルなどの格付けがなかったこ
ともあって、観光客の層別に応じたサービス対応が不十分であった。さらに、道路標識を見ると、県別に異
なる。例えば、四国八十八カ所を巡るお遍路さんにとって統一されていないので不便である。ヨーロッパで
は全部統一されているため、順番に行くことができる。しかし、道路標識を統一すると、行政がある宗教を
支援している、と問題になる。もっと合理的に考えるべきである。宿も、ヨーロッパでは巡礼者向けの宿が
あり、巡礼者手帳を見せれば、格安で利用できる。
最近、ユースホステルは、情報収集にはよいが、地域の人たちと出会えて、低所得者層の住んでいる場所
も見ることができる、ゲストハウスがおもしろい。高級イメージを求めるのは、観光の初期である。高級も
あるが、これからは、安くて収入の少ない人たちが楽しめる場所を多く作ることも、観光振興で必要になる。
京都市の観光振興計画では「暮らすように旅をする」という滞在型観光の考え方が打ち出されている。海
外旅行の経験からすれば、ぴったりの表現である。バックパッカーが増え、かれらがゲストハウスで宿泊し、
地元の生活を体験したい、というニーズの現われである。
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一方、観光庁では、リーマンショックやインフルエンザなどの影響もあり、海外からの観光客の落ち込み
があり、観光立国推進基本計画を見直している。ここで、観光政策や観光業務に携わる人たちが、絶対的に
不足している。観光学を学んでいる人は全国で約 4000 人いるが、観光政策に直接かかわる行政で活躍してい
る人はゼロに近い。観光行政の最前線で専門的に活躍できる場を広くする必要がある。また、観光教育も必
要である。いずれにせよ、国や地方自治体の観光行政は遅い。
観光政策として成功している事例としては、東京都の宿泊税がある。これに対して観光を衰退させている
例として、古くから観光地となっている熱海や白浜がある。具体的には、地元の温泉旅館の前に大手資本の
マンションや会員制ホテルを建て、旅館からの眺望を阻害している。これで旅館は廃業となる。この悪循環
を断ち切るには、地元が疲弊する前に、旅館をつぶさない、地域のブランドやのれんにただ乗りしない、と
いった政策による規制が必要である。
観光形態については、団体旅行から個人旅行に変わってきている。これは大きな変化である。だが、観光
客はいろいろな層があるので、高級から低級まで幅広くサービス対応できることが重要である。これは、低
価格で利用できる航空サービスの普及から考えると、今後、そうすることが自然の流れである。また、関西
の寺で「巡礼の道」構想のようなものがあるが、現代風に計画することも必要である。さらに、宿泊につい
ても考える必要がある。結局、観光はトータルで考え、準備する時期を迎えている。実証実験もよいが、実
験で終わらずに継続するとともに、官と民が連携し、成功事例を関西で創るべきである。
日本の人口構造や経済構造から推測すると、縮小傾向にあることから、今後、集客交流サービス産業を立
て直す必要がある。このように考えるのは、現在の観光地を見ると、大手資本の参入があり、旅館だけでは
再生できない。そこで、これまでのツーリズムの方向を転換し「行こうよ」から「おいでよ」へと、着地型
観光へと切り替えるべきである。地域主導でサービス集積地、特に人や事に焦点をあてた観光地づくりをし
て、滞在型、連泊型に移行する必要がある。そうすれば、アジアや欧米の多様なニーズの応えることができ
る。また、デスティネーション・マネジメント・カンパニー(地域の集客交流エージェント)も必要である。
つまり、地域資源を磨いて、人を磨いて、そして事を起こす人材を育てる、サービス起業家の仕組みづくり
が重要になる。これができれば、デスティネーション・マネジメント・プラットフォームで展開する。地域
全体で顧客情報を共有する考えである。このようなプラットフォームによる取り組みに政府は、支援すべき
である。そして、プラットフォームを利用して、これからの観光には、市民や地域づくり団体、女性、地域
外の人、大学など複数のプレーヤーを巻き込み、相互作用的な取り組みをし、厚みをつくっていくことが重
要である。
海外の観光客から見れば、観光情報の統一性は必要であるが、コストがかかる。一つの鉄道会社だけでは
できない。国に働きかける必要がある。また、JR のように西と東に分割されている鉄道会社が、本当に求め
られていれば、一緒にできる。あるいは、国に働きかけるとすれば、民間の動きも連携しやすくなる。
しかし、海外では国の政策を民間で競争させ、発展している例もある。日本は作るのが上手いが、壊して
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処理するのは下手である。壊してきれいにして統一する。例えば、建物を壊してきれいにして成功している
例として、長野県、伊勢、湯布院がある。だが、ヨーロッパは、キリスト教で統一され、一つの思想の下に
衣食住が出来上がっているため、ストレスが溜まる。このため、若い人は、アジアやアフリカに移り住む。
合理的な都市計画の中で住むことに対するフラストレーションがある。日本は不ぞろいになり過ぎているの
かもしれない。
景観についていえば、京都という地は、いつも新しいことをすると、すごい反対運動が起こる。京都タワ
ーも、そうであった。今では、京都のシンボルになってきた。京都駅も、同じようになる。このような京都
は、景観行政に力を入れている。眺望まで含めた景観条例を作った。すぐに結果はでないが、おそらく日本
の将来にとって大きな財産になる。京都には伝統建築物が残されている一方、その直近に現代的な建物が建
ち、雰囲気が壊される例がある。この課題は残る。
京都は、訪れて良し、住んで良し、といえるが、神戸は、いつまでも住みたくなるような街、何度でも訪
れたくなるような街づくりを行政の目標としている。常日頃から地域の人が、他所から来たお客を喜んで迎
えることができるかが、重要である。地域の皆で目配りをしていれば、安心安全な街になる。例えば、泉州
地域の良いものを副読本で知ってもらうと、自信や自慢ができ、観光につながる。
別府を例にすると、自然発生的にできた市民派と行政の連携には時間がかかる事情にあるが、一つにまと
めようという動きがある。湯布院が 40 年かけてやってきたことから考えると、行政は小さな動きを支援して
いくことが必要である。老朽化した建物の再生といった課題もあるが、人材を育て、地域ファイナンスを含
めた地域づくりが必要になってくる。
(要約編集:若井 郁次郎)
全員参加のメッセージ作成
今回の研究大会では、初の試みとして全員参加のメッセージ作成が、参加者全員によって、若井郁次郎の
進行と松尾和典・慶應義塾大学上席所員の記録作成の下で行われた。メッセージは、次のようにまとめられ
た。
政策情報学会・第6回研究大会からの観光メッセージ
旅は、歩くことに始まる自己からの脱皮である。この旅の原点が膨らみ、観光となる。
観光は、異国や異郷で温かい人情や生活風景に触れ、特色ある地域文化に出会い、多様な交流を通じて、
心の宇宙を大きくする。この観光の本質を見つめ直すと、観光は、地域で暮らす人びとが、全身全霊を傾け
て旅人を迎え、もてなす総合サービスである。両者が共鳴し、調和したとき、観光の喜びの沸点に達し、真
の観光となる。この支えや保障が、安全、自由、博愛の三つの民主化である。
旅から始まった観光は、再び旅に還る。
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第 7 回研究大会のご案内
大会テーマ
「時間・空間軸を横断した文化交流:
推進と排除、クリエイティビティという視点を中心に」
第 7 回研究大会の開催にあたって:
グローバリズムの進展が叫ばれ、我々を取り巻く様々な社会生活が日本という一つの国家の枠を媒介する
だけで解決できないようになって久しい。特に、グローバルな市場と個人が直結され、人々は自らの周辺に
関する事柄について判断をする際にも、一国を超えた次元で物事を考えていく必要に迫られている。それら
は環境や資源に関する問題で顕著となりつつある。だが、グローバリズムや高度情報社会といったものが強
調されていく中で、我々はもう一度、自らが生活を実践する空間が持つ文化というもの、特にその交流とい
ったものを再考する必要があるのではないだろうか。
画一化されたグローバリズムに基づく生活・思考様式が浸透しつつある今も、我々は特定の国家に所属し、
具体的にはその国家を構成する個別の地域において生活を送っている。そして、
「地域」は長い時間を積み重
ねて時間・空間という二つの軸を横断した文化交流から作り上げられてきた。ここにおける二つの軸は、多
くの生活者が積み重ねたという意味での「時間軸」
、多くの他地域からの文化の受容などを意味する「空間軸」
という意味で用いられている。
第 7 回目となる研究大会では、そのような「時間・空間軸を横断した文化交流」というものを主たるテー
マとして、立命館アジア太平洋大学(APU)を舞台として開催される。APU が置かれている大分県別府市は、
一般市民 30 人に対して 1 人の留学生が生活する日本でも有数の異文化との交わりが活発な都市である。
だが、
我々は研究大会の開催にあたって、この地域はその昔から様々な時間・空間を横断した文化交流の積み重ね
があったことを再考する必要があるのではないだろうか。
文化交流というものは、時間・空間軸を横断したものであるだけでなく、その現実には常に単なる推進だ
けでなく、排除といったネガティヴィティも多く含まれる。また、多くの文化の交わりは、予想もしないク
リエイティビティを誘発することもあるだろう。そのような文化交流の動態は、専門閉塞型の個別科学をこ
えた、超領域的あるいは諸科学横断的な「知と方法」の開発・創造を意味する政策情報学のコンセプトに共
通したものがあると考えられる。特に、特定の問題に焦点を当てた時に、その解決のため、さまざまな個別
科学分野から概念、モデル、理論を借用、導入して、組み合わせ、新たな意味と関連を与える枠組みとして
の政策情報学を考えていく上で、別府という地域を媒介項として、文化と政策に関する問題を論じたいと考
えている。
第 7 回政策情報学会実行委員会委員長
立命館アジア太平洋大学副学長
山神 進
第 7 回研究大会参加要領:
1. 受付
2. 大会参加費
3. 懇親会費
4. 学会費の納入
2010 年 11 月 12 日(土)
9 時 30 分~16 時 00 分:立命館アジア太平洋大学
一般会員:1,000 円
学生会員:1,000 円
非会員 :1,000 円
立命館大学ならびに立命館アジア太平洋大学の学部・大学院生は無料(学生証をご提示下さい)
※学生会員の方は、身分証明書を提示して下さい。
※参加費には、予稿集および資料代が含まれています。
懇親会費は、会場にて会計を行います。
当日受付で、学会の入会申し込みおよび学会費(年会費)の納入を受け付けます。
一般会員 10,000 円、学生会員 3,000 円、賛助会員 30,000 円(一口)
pg. 10
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5. 学会発表・パネルディスカッション
6. 欠席の場合
7. お問い合わせ
8. 大会実行委員会本部
9. 会場
10. 懇親会会場
News Letter
No.24 May 31, 2011
①1 人あたり、発表は 15 分とします。
②パネルディスカッションは、16 時 00 分~17 時 10 分です。
止むを得ない事情により、学会発表者が万一欠席される場合には、大会前日までに学会事務局まで
ご連絡下さい。なお、発表取り消しがあった場合でも、プログラムの発表順を繰り上げることはあ
りません。
政策情報学会事務局
〒603-8577
京都府京都市北区等持院北町 56-1 立命館大学周瑋生研究室
E-Mail:[email protected]
〒874-8577
大分県別府市十文字原 1-1 立命館アジア太平洋大学 山神 進研究室
E-Mail:[email protected]
研究発表会場
:立命館アジア太平洋大学 H202 教室(予定)
基調講演会場
:立命館アジア太平洋大学 H202 教室(予定)
シンポジウム会場
:立命館アジア太平洋大学 H202 教室(予定)
講師控室・理事会会場:未定(手配中)
音楽博物館 ヒットパレード・クラブ
(大分県別府市元町 14-8/TEL:0977-21-3166)
会場 立命館アジア太平洋大学
〒874-8577 大分県別府市十文字原 1-1
主催 政策情報学会
〒603-8577 京都府京都市北区等持院北町 56-1 立命館大学周瑋生研究室(事務局)
E-Mail:[email protected]
協催 アジア太平洋国際学会
温泉学会
NPO 法人 APU グローバルビジネスネットワーク
ウォーター・セキュリティ研究会(科学研究費基盤 B)
第 7 回研究大会のプログラムについて:
※プログラムについては、現在、会場や関係者の手配を行っています。そのため、以下に示す内容に変更が
生じる場合があります。
◆2011/11/12(土) ; メイン会場:立命館アジア太平洋大学 H202 教室(予定)
受付
9 時 30 分~16 時 30 分
メイン会場前
第 8 回総会
9 時 45 分~10 時 15 分
10 時 15 分~10 時 30 分
研究発表
10 時 30 分~12 時 00 分
昼食休憩
12 時 00 分~13 時 00 分
(第 XX 回理事会)
メイン会場
総会報告者:小泉國茂(政策情報学会事務局長)
高橋俊行(政策情報学会事務局会計担当)
議
長:仲上健一(政策情報学会会長)
休憩時間(10 分)
メイン会場
座 長:未定(手配中)
発表者:未定(手配中)
理事会会場(手配中)
開会挨拶・開催校挨拶
13 時 00 分~13 時 10 分
メイン会場
開会挨拶 :仲上健一(立命館大学政策科学部教授;政策情報学会会長)
開催校代表:立命館アジア太平洋大学代表
基調講演
13 時 10 分~14 時 00 分
14 時 00 分~14 時 10 分
メイン会場
テーマ
:
「時間・空間軸を横断した文化交流」
基調講演者:米谷光司(外務省広報文化交流部文化交流課長)
司
会:手配中
休憩時間(10 分)
pg. 11
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News Letter
No.24 May 31, 2011
話題提供
メイン会場
14 時 10 分~14 時 30 分
14 時 30 分~14 時 40 分
パネルディスカッション
テーマ
:
「次世代の文化政策を考える」
話題提供者:伊藤京子(ピアニスト;財団法人アルゲリッチ芸術振興財団)
司
会:手配中
休憩時間(10 分)
メイン会場
14 時 40 分~16 時 30 分
テーマ:
「時間・空間軸を横断した文化交流:
推進と排除、クリエイティビティという視点を中心に」
コーディネーター:牧田正裕(立命館アジア太平洋大学国際経営学部教授)
パ ネ リ ス ト :山出淳也(NPO 法人 BEPPU PROJECT 代表理事)
濱崎加奈子(京都工繊大学特任准教授;
伝統文化プロデュース「連」代表)
金 賛会(立命館アジア太平洋大学国際経営学部教授)
朽木 量(千葉商科大学政策情報学部准教授)
閉会のあいさつ
16 時 30 分~16 時 40 分
メイン会場
大会実行委員長:山神 進(立命館アジア太平洋大学副学長)
懇親会
18 時 00 分~20 時 00 分
音楽博物館 ヒットパレード・クラブ
(大分県別府市元町 14-8/TEL:0977-21-3166)
◆懇親会費:3,500 円
pg. 12
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News Letter
No.24 May 31, 2011
第 6 回政策情報学フォーラムのご案内
※東日本大震災の影響により、当初の会場が使用できなくなり、関西大学へ変更となりました。また、内容の一
部が変更されることがありますがご了承ください。
pg. 13
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News Letter
No.24 May 31, 2011
学会誌編集委員会からのおしらせ ①
2010 年 5 月 24 日
政策情報学会会員各位
『政策情報学会誌』第 5 巻第 1 号の刊行について
政策情報学会学会誌編集委員会
委員長 福谷 正信
政策情報学会では、この度、
『政策情報学会誌』第 5 巻第 1 号(査読付き)を刊行します。この実務は、学会誌
編集委員会が担当します。
申し込みをされる方は、別紙「投稿・執筆規定」をご参照の上、原稿を学会誌編集委員会までお送りください。
特に、学生会員のご投稿を歓迎いたします。この機会に、振るってご応募ください。なお、所収原稿数などによ
って第 5 巻は第 2 号、第 3 号などに分冊することも学会誌編集委員会において検討致しますことをご了承くださ
い。
記
原稿締切日:2011 年 07 月 31 日(日)
刊行予定日:2011 年 11 月 12 日(土)
◇本件に関する問い合わせ先
政策情報学会 学会誌編集委員会
副委員長 加藤久明
〒603-8577
京都府京都市北区等持院北町 56-1 立命館大学衣笠キャンパス 修学館 2 階 226 号室
TEL:075-466-3347
FAX:075-882-0598
E-Mail:[email protected]
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News Letter
No.24 May 31, 2011
『政策情報学会誌』投稿・執筆規程
2006 年 12 月 23 日作成
2010 年 02 月 06 日改訂
1. 投稿規程
(1)投稿資格
(a)投稿執筆者は、原則として学会員とする。
(b)連名による投稿の場合、少なくとも 1 名は学
会員である必要がある。
(c)学会員以外でも、理事会が認めた者について
は、投稿資格を有するものとする。
(d)なお、投稿執筆者が会員ではなく、原稿投稿
中に学会へ入会する場合には、学会誌編集委
員会の判断により、投稿資格の有無を判断す
るものとする。
(2)投稿原稿
(a)投稿原稿は、論文、研究ノート、資料、書
評、文献紹介、学会紹介とする。
(b)原稿は横書きのワープロ原稿とし、A4 判の
用紙に 1 カラム(1 段)、40 文字×40 行で印
刷する。
(c)論文は原則として、30,000 字以内(注、図表
などを含む)
とし、
研究ノートと資料は 20,000
字以内とする。また、資料、書評、文献紹介、
学会紹介は 3,000 字程度とする。
(3)投稿手続き
(a)ワープロ印刷された用紙、投稿申込書を、
学会誌編集委員会宛てに郵送(※1)する。
投稿は基本として、学会誌編集委員会に問い
合わせてから行うものとする。
(b)郵送時には、データを記録した CD-R ない
しはフロッピー・ディスクを添付しなくては
ならない。
(c)電子メールによる投稿(※2)も可能である。
この場合、Microsoft Word 形式(※3)で学会
誌編集委員会へ原稿データ、投稿申込書を提
出する。
※1・・・〒603-8577
京都府京都市北区等持院北町 56-1 立命館大学衣
笠キャンパス 修学館 2 階 226 号室
政策情報学会 学会誌編集委員会副委員長 加藤
久明宛
※ 2 ・ ・ ・ 送 信 先 は 、 当 面 の 間
「[email protected]」とする。
※3・・・データ形式としては、Word2003 までの.doc 形式な
いしは Word2007 以降の.docx 形式のいずれかの形
式とする。
(4)原稿の受付および査読について
(a)原稿送付先に到着の日を「原稿受付の年月日」
とし、掲載が決定された日を「原稿受理の年
月日」とする。
(b)投稿原稿の掲載は、学会誌編集委員会の査読
を経て決定される。査読の結果、内容の修正
を依頼し、掲載を断る場合もある。特に、後
述する執筆規定を遵守できていない原稿につ
いては、その内容の可否を問わず受理を行わ
ない。
(c)初校は著者校正とする。その際には、委員会
からの査読結果による指示が無い限り、原文
の大幅な加筆・修正は認められない。
(d)掲載決定の通知後、最終原稿を提出する。電
子メールによる提出も可能であるが、郵送に
よる提出の場合、印刷された原稿とデータを
記録した CD-R ないしはフロッピー・ディス
クを同時に提出すること。
(e)掲載原稿は返却しない。
(5)掲載後、原稿内容の取り扱いについて
(a)執筆者に対して 5 部の本冊を送付する。これ
以上の本冊を希望する場合には、理事会によ
る特別な許可を除き、執筆者に印刷・送付費
用の負担を求めるものとする。
(b)学会誌に掲載される全ての論文・記事の著作
権は政策情報学会に帰属する。論文などの全
てあるいは大部分を他の著作物に利用する場
合は、その旨を学会誌編集委員会に申し出る
と同時に、出典を明記すること。
(c)原稿料の支払い、掲載料の徴収は行わない。
2. 執筆規定
(1)記述項目
必須の記述項目は、
「主題」
・
「執筆者氏名」
・
「所
属」
・
「本文」である。必要がある場合には、
「副題」
pg. 15
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「共同研究者」を記述する。なお、内容に応じて章
節に区切って記述するようにする。
(2)原稿のフォーマット
(a)原稿サイズは A4 とし、1 カラム(1 段)
、40
文字×40 行、上下の余白は 30mm、左右の余
白も 30mm で作成する。記述する各項目の文
字サイズとフォントについては、表 1 に示さ
れている通りとする。また、行の揃えについ
ては、表 2 に示されている方式に従うものと
する。
(b)本文中の章、節、項の見出しは、ポイントシ
ステムによる記述を行う。
例 第 1 章⇒1.
第 2 章第 1 節⇒2.1
第 3 章第 1 節第 2 項⇒3.1.2
(c)文章については、原則として常用漢字と現代
仮名遣いを用いる。
(d)本文中の図書および雑誌名は、和図書の場合
は『
』に入れ、欧語の場合には架線を引
くかイタリック体とする。
(e)脚注および引用文献は一括して、本文の後に
通し番号順に記載する。
(f)同一文献を二度以上引用する場合には、初出
の脚注番号を用いる。
(g)表は、その上部に表□と表記し、標題を添え
る。また、図や写真は、その下部に図□と表
記し、標題を添える。
(h)参考文献の記述フォーマットに関しては、科
News Letter
No.24 May 31, 2011
学技術振興機構による『SIST ハンドブック
(http://www.jst.go.jp/SIST/index.htm)
』に示さ
れたものを基準とする。そのため、
「SIST02
(参照文献の書き方)
」
に基づく記述を義務付
ける。
表 1 文字サイズとフォント一覧
項目
ポイント数
フォント
主題
16
明朝
副題
12
明朝
氏名
12
明朝
(所属)
11
明朝
要旨
11
明朝
キーワード
11
明朝
本文
11
明朝
参考文献
10
明朝
日本語用のフォントは MS 明朝、英数字用のフ
ォントは Century ないしは Times New Roman を
使用する。
表 2 行揃え
項目
主題
副題
氏名(所属)
要旨
キーワード
本文
参考文献
行揃え
中央
中央
中央
左
中央
左
左
pg. 16
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News Letter
No.24 May 31, 2011
学会誌編集委員会からのおしらせ ②
2010 年 5 月 24 日
政策情報学会会員各位
『API Working Papers』第 5・6 巻合併号の刊行について
政策情報学会学会誌編集委員会
委員長 福谷 正信
政策情報学会では、昨年度に引き続き、査読付き学会誌とは別個に『API Working Papers』を刊行します。第 5・
6 巻合併号となる今回の号に関する実務は、学会誌編集委員会が担当します。
申し込みをされる方は、別紙「
『API Working Papers』執筆・投稿規定」をご参照の上、原稿を学会誌編集委員
会までお送りください。ワーキングペーパーは、査読付き学会誌とは異なり、未成熟の草稿なども掲載できます
ので、学会発表を予定されている方や査読付き学会誌原稿の底稿となる原稿の投稿を行っていただければ、と考
えております。また、学生会員のご投稿を歓迎いたします。この機会に、振るってご応募ください。
記
原稿締切日:2011 年 09 月 04 日(日)
刊行予定日:2011 年 11 月 12 日(土)
◇本件に関する問い合わせ先
政策情報学会 学会誌編集委員会
副委員長 加藤久明
〒603-8577
京都府京都市北区等持院北町 56-1 立命館大学衣笠キャンパス 修学館 2 階 226 号室
TEL:075-466-3347
FAX:075-882-0598
E-Mail:[email protected]
pg. 17
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News Letter
No.24 May 31, 2011
『API Working Papers』執筆・投稿規定
2006 年 5 月 16 日作成
2010 年 2 月 06 日改訂
1. 発行者
政策情報学会は、査読付き学会誌とは別個に、
『API Working Papers』を発行する。発行実務は同学
会誌編集委員会が担当する。
2. 発行目的
『API Working Papers』は、以下の項目を主な目的
とする。
(1)
政策情報学の趣旨に沿って行われた研究成果を
迅速に公表すること。
(2)それらに対する幅広いコメントを求め、議論を
進めていくこと。
(3)ワーキング・ペーパーとして掲載したものを新
たに改善して学会誌に掲載し、これらの雑誌の
質的向上を図ること。
(4)修士課程、博士課程の大学院院生等に研究発表
の機会を提供すること。
3. 収録される論文の性格
『API Working Papers』に所収される論文は、原則
として日本語、
英語によって執筆された論文とする。
それ以外の言語に関しては、学会誌編集委員会の判
断を必要とする。収録対象としては、
(1)未発表論
文、
(2)学会報告済み論文、
(3)投稿予定論文、
(4)
研究プロジェクトにおける中間報告書的な論文、
(5)
ワークショップ報告における論文などの様々な段階
における論文を想定している。
しかし、収録される論文の全ては、公表された論
文としての性格を持つと同時に、学会の内外からの
評価にさらされる関係上、これに耐え得る性格の研
究論文でなければならない。さらに、印刷費と大学
図書館などへの寄贈時の送料、並びに執筆者への本
冊の送料は、政策情報学会がこれを負担する。従っ
て、
ワーキング・ペーパーとして掲載される論文は、
単なる個人的なメモランダムであってはならないと
同時に、
その内容については、
執筆者が責任を持つ。
また、ワーキング・ペーパーとして掲載される論
文は、中間発表的な性格を持つものであり、学会内
外に配布して広く意見を求める関係上、完成された
ものと判断できない場合であっても、これを掲載す
ることが可能となっている。さらに、掲載された論
文を修正して、政策情報学会誌等に投稿することが
できる。
4. 投稿
(1)投稿資格
(a)原則として、修士課程以上の会員であれば投
稿することが可能である。
(b)学会員以外でも、理事会が認めた者について
は、投稿資格を有するものとする。
(2)投稿に関する条件
(a)投稿回数に関しては、刊行 1 回につき、1 論
文までとする。ただし、合併号などの場合に
は刊行 1 回につき、2 論文までとする。
(b)なお、共著の論文がある場合には、この限り
ではない。
(c)ワーキング・ペーパーの趣旨に鑑み、原則と
して一般学術誌における論文査読を行わない
ものと定め、幅広く収録することを目指すも
のとする。
(d)学部生による投稿は、会員の推薦状ないしは
理事の許可を必要とする。
(e)提出原稿が執筆規定に準拠していない場合、
学会誌編集委員会は投稿原稿の校正を行う権
限を有している。しかしが、これが特に著し
い場合には、原稿の訂正を執筆者に求めるこ
とが可能である。
(f)学会誌編集委員会は、特別の理由がある場合
には、投稿された論文を『API Working Papers』
に掲載することを謝絶することができる。ま
た、投稿された論文がワーキング・ペーパー
の趣旨に合致するとは言い難いと学会誌編集
委員会が判断する場合、I)当該論文の採録を
次号に見送る、II)掲載する上で必要な体裁そ
の他の改訂を、著者に依頼する場合がある。
(3)投稿手続き
(a)ワープロ印刷された用紙を、学会誌編集委
員会宛てに郵送(※1)する。投稿は基本と
して、学会誌編集委員会に問い合わせてから
pg. 18
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行うものとする。
(b)郵送時には、データを記録した CD-R ない
しはフロッピー・ディスクを添付しなくては
ならない。これは、上記に述べたように、学
会誌編集委員会が投稿原稿の校正を行う権限
を有しており、必要に応じてデータを基に修
正を加えることがあるためである。また、こ
の場合は執筆者に校正を求める場合がある。
なお、この規定は電子メールにおける投稿に
おいても同様である。
(c)電子メールによる投稿(※2)も可能である。
この場合、Microsoft Word 形式(※3)で学会
誌編集委員会へ原稿データ、投稿申込書を提
出する。
(d)原稿は、原則として A4 版 8 ページ以上、30
ページ以内とする。30 ページを越える場合に
は、学会誌編集委員会の承認を必要とする。
便宜上、委員長並びに副委員長の了承を得た
ものは、
印刷に付することを認める。
ただし、
この場合は、後でその旨を理事会に報告しな
くてはならない。
※1・・・〒603-8577
京都府京都市北区等持院北町 56-1 立命館大学衣
笠キャンパス 修学館 2 階 226 号室
政策情報学会 学会誌編集委員会副委員長 加藤
久明宛
※ 2 ・ ・ ・ 送 信 先 は 、 当 面 の 間
「[email protected]」とする。
※3・・・データ形式としては、Word2003 までの.doc 形式な
いしは Word2007 以降の.docx 形式のいずれかの形式とす
る。
5. 執筆規定
(1)記述項目
必須の記述項目は、
「主題」
「執筆者氏名」
「所属」
「本文」である。必要がある場合には、
「副題」
「共
同研究者」を記述する。なお、内容に応じて章節に
区切って記述するようにする。
(2)原稿のフォーマット
原稿サイズは A4 とし、1 カラム(1 段)
、40 文字
×40 行、上下の余白は 30mm、左右の余白も 30mm
で作成する。記述する各項目の文字サイズとフォン
トについては、表 1 に示されている通りとする。ま
た、行の揃えについては、表 2 に示されている方式
に従うものとする。
また、参考文献などの記述フォーマットに関して
は、科学技術振興機構による『SIST ハンドブック
(http://www.jst.go.jp/SIST/index.htm)
』に示されたも
のを基準とする。そのため、
「SIST02(参照文献の
News Letter
No.24 May 31, 2011
書き方)
」に基づく記述を義務付ける。
表 1 文字サイズとフォント一覧
項目
ポイント数
フォント
16
明朝
主題
12
明朝
副題
12
明朝
氏名
9
明朝
(所属)
11
明朝
要旨
11
明朝
キーワード
11
明朝
本文
9
明朝
文内脚注
10
10
明朝
文末脚注
10
明朝
参考文献
日本語用のフォントは MS 明朝、英数字用のフ
ォントは Century ないしは Times New Roman を
使用する。
表 2 行揃え
項目
主題
副題
氏名
(所属)
要旨
キーワード
本文
参考文献
行揃え
中央
中央
中央
中央
左
中央
左
左
6. 発行手続き
(1)発行時期
『API Working Papers』の発行時期については、毎
年、学会誌編集委員会が一定の発行時期を定め、そ
のスケジュールを会員に周知する。なお、臨時増刊
号の刊行に関しては、特に制限を設けないものとす
る。
(2)執筆者への本冊送付
執筆者は、
執筆者に対して 5 部の本冊を送付する。
これ以上の本冊を希望する場合には、理事会による
特別な許可を除き、執筆者に印刷・送付費用の負担
を求めるものとする。
(3)Web サイトへの掲載
『API Working Papers』における論文を、Web サイ
トに掲載することに関しては、原則として執筆者の
許可を必要とする。
pg. 19
学会関係者の近著紹介コーナー
『政策情報学の視座―新たなる「知と方法」を求めて―』
千葉商科大学政策情報学部 10 周年記念論集刊行会(編)
2011/2/25 初版発行,B6 判,469 ページ,
定価 2,310 円(税込)
,ISBN:978-4-905157-02-1
政策科学、情報学、経済学、マーケティング、環境、医療、美術…、専門分野の壁を超えて生み出され
た新しい学問の到達点を示す。異分野の専門家が協働しあいながら活動する「双方向の学びの場」の研
究成果を集めた一冊です。
『政策研究:学びのガイダンス』
中道寿一編著
福村出版, 2011 年 4 月刊行
定価 2,940 円(税込), ISBN: 978-4-571-41042-0
本書は、政策研究のための基本的な技法と個別の政策研究の概要を紹介したもの。まず、政策研究につ
いて考えるために必要な、
『読むこと』
、
『書くこと』
、
『話すこと』などを、どのようにして学び、身に
つけるのかにかついて様々な角度から示し、次に、そうした基礎知識を基にして政策研究を行えば、ど
のような知見が得られるかについて、それぞれの専門分野から示した一冊です。
『水危機への戦略的適応策と統合的水管理』
仲上 健一 (著)
技報堂出版, 2011 年 3 月刊行, 113 ページ
定価 2,100 円 (税込), ISBN:978-4765534499
仲上健一会長の新著です。気候変動の影響に対する緩和策と適応策の有り様が水資源環境分野に求めら
れるようになり、従来の問題解決型の土木技術方式による対応が疑問視され、いわゆる第三の道が模索
される中で、急激な気候変動による影響が顕在化されたことにより,新たなる道が必要となってきまし
た。本書では、そのような水危機に対する認識を鮮明にすることによって、IPCCAR4 において指摘さ
れた水資源環境影響分析の結果を踏まえつつ、地球温暖化・気候変動による影響への対応策としての適
応策を実現することの緊急性について分析し、さらには戦略的適応策の意義を考察することを目的とし
た一冊です。
API
News Letter
No.24 May 31, 2011
『都市・農村連携と低炭素社会のエコデザイン』
梅田靖・町村尚・大崎満ほか編著
技報堂出版, 2011 年 2 月刊行, 224 ページ
定価 2,835 円(税込), ISBN: 978-4-7655-3448-2
仲上健一会長を始めとした数名の会員の原稿が所収されています。低炭素社会の構築に向けては、制度
設計、ものづくり、市民のライフスタイル、地域のエネルギー供給システムなど、あらゆるモノとコト
を結集してその実現を図る必要があります。その中でも、
「都市・農村の地域連携」が改めて注目され
つつあります。ですが、都市問題、農村問題が深刻化する中で、これまでこれらを個別に議論すること
はあっても、共同の目標である低炭素社会構築のための連携をキーワードにした考察は多くなかったた
め、この種のテーマをクロスさせた本としては珍しい一冊だと思います。なお、本書は環境省のプロジ
ェクト「都市・農村の地域連携を基礎とした低炭素社会のエコデザイン」
(E-0804;2008~2010 年度)
の結果から得られた知と方法の発信を目的としています。
『イノベーション・マネジメント:ファミリー企業比較経営分析』
立命館アジア太平洋大学学国際経営学部
難波 正憲教授・福谷 正信教授 編著
泉文堂, 2011 年 2 月刊行, 197 ページ
定価 2,520 円(税込), ISBN: 978-4-793003738
同書では、全国展開している地方のファミリー企業および機関を対象に、全国展開への発展過程を調査
研究し、どのようなイノベーション創造が各企業・機関で生じ、全国展開の一助となったのかを解き明
かしている。また、それらを比較検証することで、ファミリー企業におけるイノベーション創造の共通
点も導き出している。
全国の中小企業の約 95%がファミリー企業であり、同書の分析で得られた結果は、全国展開やグロー
バル展開を検討する中小企業に対して多くの示唆を含んでいる。
『アカデミックリテラシー入門:
コンピュータで情報をみつける・まとめる・つたえる』
千葉商科大学情報教材開発プロジェクト編著
(柏木将宏・坂田哲人・濱野和人・太田康友・白鳥成彦・三橋由佳)
千葉商科大学, 2010 年 4 月発行
定価(税込): 1,575 円, ISBN:978-4-86143-079-4
pg. 21
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No.24 May 31, 2011
本書は、ネットワーキングへの理解やコンピュータの使い方といった「コンピュータリテラシー」のみ
をフォーカスせず、むしろそれを礎として、その上でコンピュータを使って何ができるのか、ネットワ
ーキングを通じて何ができるのか、そして何をすべきなのかといった「アカデミックリテラシー」につ
いて正面から向き合う一冊。
『ペリクレスと都市国家アテネのデモクラシー黄金時代』
出版予定書籍
藤川吉美 著
成文堂, 2011 年 12 月末刊行予定
本学会の藤川吉美理事が年末に出版される予定の書籍紹介です(以下、解説文)。
デモクラシーは都市国家(ポリス)アテネに始まり、ペリクレスの賢明かつ的確な政策によってデモク
ラシーの黄金時代が到来、かの聖なる「アクロポリスの丘」に女神アテナを祭る安定した荘厳な「パル
テノン神殿」など多くの神殿が建設され、アテネ市街に幾多の大理石彫刻が並びました。こうした各人
各様の個性や才能や適性を掘り起こすことによって、アテネはすっかり生まれかわり、活気と叡智に満
ちた都市国家、政治的な美、経済的な美、社会的な美、文化的な美、芸術的な美、愛智的な美 、幾何
学的な美など、全ヨーロッパの文化的、学問的基礎を築きあげました。その秘密は何か、その知恵に学
びたい。
※推薦図書がございましたら、編集委員会までご一報ください。
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No.24 May 31, 2011
シリーズ 地方都市の公共交通を考える ①
コミュニティバスがもたらす一般路線バスへの影響
~ 福井県福井市「すまいる」の事例から ~
吉岡 泰亮
(立命館大学大学院政策科学研究科博士後期課程・ニューズレター編集委員)
1.はじめに
日本におけるコミュニティバスのルーツは 1980 年代にさかのぼることができるが、
大きく注目されるようにな
ったのは 1995 年の東京都武蔵野市「ムーバス」あたりからではないだろうか。その後、大都市では「交通空白地
帯の解消」
、地方では空洞化が問題化してきた「中心市街地の活性化」や「不採算による一般乗合バス撤退後の代
替手段」を主目的に全国各地で導入されており、今回事例として取り上げる福井県福井市を含む、石川・富山・
福井の 3 県でも 2010 年末現在で 37 のコミュニティバスが運行されている。コミュニティバスでは既存の一般乗
合バスと比較して低廉な運賃設定がされるケースも多く、
「100 円バス」も少なくない。しかし、そのことによっ
て一般乗合バスの運営を脅かす実態も存在している。本稿ではその一事例として、福井県福井市のコミュニティ
バス「すまいる」を例に、その経緯と現状を検証することとする。
2.コミュニティバス「すまいる」の概要
コミュニティバス「すまいる」は、1999 年に最初のルート「田原・文京方面」の試行運行が開始された。ルー
トは JR 福井駅西側に位置する「福井駅前商店街」を起点に、北方へ半径約 2 ㎞のエリアをカバーする 1 周 30 分
の循環ルートであり、約 6 ㎞の路線内には計 22 の停留所が設けられた。ルート内には商店街や住宅街、また高校
や大学も点在しており、車長 7mの小型バス 1 台が 7 時台~19 時台に 1 日 23 便運行するダイヤが組まれた。
当初は福井商工会議所が運営主体となり、地元のバス会社である「京福電気鉄道」
(2000 年に分社化され、現
在は「京福バス」が事業を継承)に委託する形でスタートした。約 2 ヶ月は無料で運行され、その後運営主体は
沿線の商店街組合が短期間引き継いだのち、福井市を経て、福井市などが設立した第三セクターの「まちづくり
福井株式会社」に移管されている。
1999 年当時、沿線から少し離れたエリアには京福電気鉄道の一般乗合バスが昼間時の場合毎時 2~3 本程度運
行されていたが、いずれも収支は赤字であった。JR 福井駅までの運賃は 200 円ないし 210 円となっており、やや
高い印象もあるが地方都市のバス事業者としては標準的なレベルであると言えよう。福井県は全国でも自家用車
保有率の数値が極めて高い土地でもあり、
「すまいる」の成功には懐疑的な見方も少なくなかった。しかし、実際
に運行が始まってみると、1 便あたりの乗客数は 10 名を超えていた。
「10 名」と聞くと少なく感じるであろうが、
当初の目標が「1 便あたり 8 名」と設定されていた福井においてこの数値はきわめて優秀なのが現状である。
2000 年 4 月には本格運行がスタートし、同時に西方への「照手・足羽方面」の試行運行が開始された。こちら
も 3 ヶ月ののち本格運行に移されるとともに、2 ルート同時に当時最新型の小型ノンステップバスに車両が交換
されている。翌 2001 年には南方への「木田・板垣方面」
(4 月に試行開始)
、東方への「城東・日之出方面」
(6
月に試行開始)の試行運行が開始され、やはり 3 ヶ月ののち本格運行・新車の小型ノンステップバス導入という
経緯を辿っており、予備車 1 台を含め 5 台のバスが導入された。2006 年には後発 2 ルートのルートが一部変更さ
れており、2010 年 10 月には 4 ルートの通算利用者数が 500 万人を突破している。少々古い数字で恐縮であるが、
2008 年度の実績では年間利用者数が約 52 万人であり、トップの「田原・文京方面」では 1 便あたりの乗客数が
約 18 名にまで伸びている。利用者数の順位は運行開始の順になっており、2001 年の運行開始当初は 1 便あたり
の乗客数が約 8 名とやや低かった「城東・日之出方面」も、2008 年度には約 14 名となっている。
またコスト削減のため、1 つの路線は 1 台のバスで運行されている。通常は 1 周 30 分(
「城東・日之出方面」
のみ 33 分)での運行が可能であるため、30 分間隔(
「城東・日之出方面」は 35 分間隔。ラッシュ時は 1 周の時
間が最大 10 分程度長くなるため、運行間隔も長くなる)での運行を実現しているが、雨天時や積雪時、沿線での
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道路工事などで遅れが発生した場合、その遅れが続くため、通常ダイヤへの回復が極めて困難であるという大き
な弱点を抱えている。その弱点をカバーする目的もあって、2002 年に開始された電話/インターネットによる位
置情報の確認サービス「すまいるバスいまどこサービス」は一定の成果を上げている。
左:すまいる路線図(2010 年現在) 右:すまいる「照手・足羽方面」のバス
3.一般路線バスへの影響
1 号路線である「田原・文京方面」では、
「既存の京福バス路線から 300m以上離れること」を原則としたルー
ト設定がなされた。そのため全 22 停留所のうち、京福バスとの共有停留所は 8 か所にとどまっているほか、2 号
路線の「照手・足羽方面」でも、全 25 停留所のうち共有停留所はわずか 2 か所となっている。
しかし、3 号路線となった「木田・板垣方面」では、全 26 停留所中 10 か所に増えており、4 号路線の「城東・
日之出方面」でも全 26 停留所中 12 か所になっている。これは、前者の 2 路線が「交通空白地帯の解消」を主目
的にしていたのに対し、後者の 2 路線は「既存路線バスが不便な場所から中心市街地へのアクセス改善」が目的
に加えられたことに一因があるものとみられる。
なかでも、既存路線バスへの影響が特に大きいのが 3 号路線である「木田・板垣方面」である。同ルートの沿
線には福井県立羽水高等学校(生徒数:約 1,100 名)があり、2000 年頃の段階では京福バスが一般乗合バス「羽
水高校線」をラッシュ時 10 分間隔・日中も 30 分間隔で運行していた。しかし、2001 年のすまいる「木田・板垣
方面」運行開始後、片道 210 円の「福井駅前」~「羽水高校前」に対し、約 300m離れた「福井南郵便局」停留
所が最寄り停留所である 100 円運賃の「すまいる」に転移した結果、2004 年には毎時 1 本に激減し、2005 年には
朝の下り 1 本のみとなってしまった。その後も、同区間には福井市南部の郊外へと伸びる「西大味線」が 6 往復
しているが、2006 年には京福バス「羽水高校線」の減便補填の意味合いもあって、すまいるの経由地に「羽水高
校前」が加えられた結果、西大味線を利用する高校生はきわめて少なくなっている。
すまいる「田原・文京方面」
(福井県立藤島高等学校、北陸学園中学・高等学校)や、
「城東・日之出方面」
(福
井県立高志高等学校)にも高校は存在するが、これらの学校は既存の鉄道駅が近くにあるため、すまいるバスへ
の影響は問題のないレベルにとどまっている。
加えて、直接すまいると関連するわけではないが、2003 年から福井市郊外に移転した福井県立図書館へのアク
セスとして、福井県が運行する無料の「フレンドリーバス」が、羽水高校線の終点にある「福井県生活学習館」
を経由地としたことも影響を及ぼしている。フレンドリーバス本来の利用目的には反するが、福井県生活学習館
の隣接地には「福井厚生病院」や「福井県産業会館」などの大規模施設があり、通院客やイベントへの来場者が
羽水高校線・西大味線の利用からフレンドリーバスの利用に転移している実態が存在している。
また、4 号路線である「城東・日之出方面」は運行開始当初利用者が思うように伸びず、そのてこ入れとして行
われた 2006 年のルート変更以後利用者数が伸びたが、
その背景には福井県立病院を通ることによって通院客を取
り込んだことが大きな影響をもたらしている。ただこちらでも既存路線バスへの影響は大きく、以前は昼間時で
も毎時 2~3 本運行されていた京福バス「県立病院線」の大幅減便(現在では 3 往復のみ)につながっている。
先にも述べたとおり、すまいるは 1 つの路線をバス 1 台で運行している。そのため、特にダイヤの余裕が少な
い「木田・板垣方面」では、高校生の下校時間帯となる 16 時~18 時台に運行される計 6 便は慢性的に遅れが発生
しており、通常でも 1 周に 35 分程度かかることが珍しくない。さらに積雪時には走行速度自体も低下するため、
1 周に 45 分~50 分かかるケースも存在する。運転者への聞き取り調査によると、通常は 1 日あたり 23 周するこ
とになっているのが、20 周~21 周で終わることもしばしばあるとのことであった。
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4.一般乗合バス(京福バス)の動き
最初にも述べた通り、すまいるは㈱京福バスが運行を受託している。京福バスはすまいるの受託に当たり、通
常の正社員ではなく比較的賃金が安い契約社員・嘱託社員が運転に当たる体制をとっており、㈱まちづくり福井
の委託料の範囲で無理なく運営ができるように努めている。このこともあり、現在のすまいるは 13 名の専属チー
ム(京福バスの新入社員が訓練を兼ねて短期間乗務することもある)が担当する体制になっており、日常的な利
用者は運転者と顔なじみになりやすい関係となっている。京福バスも全国各地のバス会社と同様、2000 年前後に
は多数の不採算路線を廃止しているが、その頃から各地で普及したコミュニティバスの運行業務を積極的に受託
しており、2010 年現在では福井県北部の 4 市 2 町でコミュニティバスの運行業務を受託している。
京福バスは 2005 年に大規模なダイヤ変更を行った。このとき、福井市郊外や隣接する市町村への路線と、福井
市内中心部で完結する路線が同じルートを走行している場合、福井市内中心部で完結する路線のダイヤ調整(そ
の多くは減便)を行っている。しかし、すまいるバスではカバーしきれないエリアの需要喚起策として、福井市
中心部から北側のエリアをカバーする「幾久・新田塚線」を 200 円の均一運賃化(従来は 200 円~230 円の区間
制。郊外路線の並行区間でも同額に値下げを行った)を行っている。また利用者の減少に伴い、車両更新時に導
入されるバスは中型車・小型車がその大半を占めるようになったことを活かし、従来の大型バスでは運行が困難
であった住宅地や狭隘道路を経由するようにルートの変更を行ったケースもある。
左:運賃均一化を行った「幾久・新田塚線」のバス 右:「大和田エコライン」に使用される専用ラッピングバス
そして 2008 年 6 月には新路線「大和田エコライン」の運行を開始した。同線は福井市郊外に位置し、国道 8
号線のバイパス沿いに近年相次いで商業施設が立地している大和田地区と福井市中心部を結ぶ路線である。同時
に、大和田地区にある商業施設「フェアモール福井」のテナントである「エルパ」との提携で、同店のラッピン
グを施したピンク色のバスが投入されるとともに、同店のポイントカードや専用割引券を所持している乗客に対
し、新設された「アピタ・エルパ前」停留所における乗降を対象とした運賃の大幅割引サービス(例えば「福井
駅前」~「アピタ・エルパ前」は 360 円→200 円に)を開始した。専用割引券はバス車内でも配布されており、
実質的な運賃の値下げに相当する(差額はエルパが負担)
。このサービスは並行する 3 路線の一部区間でも行われ
ており、計 4 路線で毎時 3 本という、福井では極めて高いレベルの運行本数となっている。この大和田エコライ
ンは需要をつかみ、現在では京福バスの一般乗合路線の中で第 2 位の乗車密度(1 便当たり 10 名強)になった。
このような実態を見ると、京福バスとしてはコミュニティバスとの競合を避け、むしろすみわけを図っていく
ことで生き残りを図ろうという方針が垣間見える。すまいるバスの場合、
「1 台のバスで 30 分間隔運行を実現す
るために、1 周は 30 分以内にする」という原則を貫く限り、現状以上の路線拡大は事実上不可能であることから、
京福バスの路線に求められる役割は大きい。そして他のバス会社同様、高速バス路線の新設や県外の大型商業施
設とタイアップした往復バスの運行で収益を上げるべく模索を続けている。
5.おわりに
冒頭でも少し触れたが、福井県は自家用車保有率が極めて高いレベルにあり、公共交通の運営環境としてはき
わめて厳しい条件の土地であるといえる。しかし、2001 年に京福電気鉄道(当時)の越前本線で発生した正面衝
突事故を受け、同社の全路線が国土交通省から事実上の運行停止処分を受けた際、道路の渋滞による学生の遅刻
が社会問題となり、それまで希薄であった福井県民の鉄道・ひいては公共交通に対する意識のあり方に変化をも
たらした。今後の本シリーズ「地方都市の公共交通を考える」では、そのあたりの事情についてもお話しするこ
とが出来ればと考えている。
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シリーズ 文化批評 ①
アカデミー作品賞の周縁をめぐる問題について
松 尾 和 典
(慶應義塾大学 SFC 研究所上席所員(訪問))
2000 年代に入り,映画は3D 映画とフェイク・ドキュメンタリーなどの手法が注目を集めてきた.3D 映画は
「体験そのもの」を志向し,フェイク・ドキュメンタリーやドキュメンタリー・タッチは「真実の物語」という
形式を提供しようとしている.
「映画」と一言で語られるものも多様化してきている.そうした中においても,ア
メリカのアカデミー賞はつねに映画界の中心であり続け,
「優良」とされる作品を選定してきた.しかし,作品が
つくられる背景や作品の選定にはさまざまな課題を抱えており,アカデミー賞が正統的権威である理由もない.
アカデミー賞の歴史を振り返りながら,ハリウッド映画が抱えてきた課題について言及してみたい.
本年のアカデミー作品賞は,
「英国王のスピーチ」
,
「トゥルー・グリッド」
,
「ソーシャル・ネットワーク」の3つ
巴が争うことになり,結果としては感動的な実話であり,感情移入できるキャラクターを具えた「英国王のスピ
ーチ」が受賞した.
1990 年代後半,ハリウッドのメジャー制作会社は製作年数のかかる大作への傾倒を強める一方で,2つの新興
スタジオであるミラマックスとドリームワークスは,中規模または小規模の作品をコンスタントにつくることに
よって,地道に利益を上げていく戦略をとった.ミラマックスは,クエンティン・タランティーノの「パルプ・
フィクション」を筆頭として,新人監督に低予算映画を任せ,アート系シアターを中核としながら,ときおりア
カデミー賞受賞により大きな収入を得ていた.1997 年に創立されたドリームワークスは,ジェフリー・カッツェ
ンバーグを中心として,ファミリー層を対象とする中規模のアニメーション映画をつくっていくなかで,
「プライ
ベート・ライアン」でアカデミー作品賞を狙いにいったものの,ミラマックスのワインスタインによる肝いり作
品であった「恋におちたシェイクスピア」と真っ向からぶつかることとなった.
「プライベート・ライアン」は,
ドリームワークス創立者のスティーブン・スピルバーグが長年温めてきた念願の企画であり,批評的にも興行的
にも大成功した作品であったにも関わらず,ワインスタインによる数億円の大キャンペーンの前に作品賞受賞を
逃すことになった.この件で,ドリームワークスとミラマックスの両者間における「アカデミー賞競争」が始ま
ることとなった.
2000 年から 2002 年にかけて,ドリームワークス製作作品が連続して,アカデミー作品賞を受賞するものの,
ミラマックスの対抗を受けて,互いに製作費と宣伝費が膨れ上がることによって,作品の大作化がすすむことと
なった.2003 年にはミラマックスが作品賞を受賞するものの,興行的には成功とはいえなかったために親会社の
ディズニーから次第に信用を失うこととなっていく.そのころには,大手の映画会社であるフォックスやソニー
もインディペンデント配給部門をたちあげたために,優秀な人材が流出することにもなった.ドリームワークス
もSF超大作の「アイランド」が大失敗したために経営が破綻し,パラマウント傘下に入ることになる.
「セブン」
や「ブギーナイツ」をカルト的にヒットさせたニューライン・シネマもまたピーター・ジャクソンによる超大作
「ロード・オブ・ザ・リング」3 部作をつくることになった.結果として,3 部「王の帰還」ではアカデミー作品
賞を受賞することになるものの,ニューライン・シネマは資金繰りゲームに巻き込まれていき,2008 年に倒産す
ることになる.
このようにして,ゼロ年代初頭はミラマックスとドリームワークスとの対決にはじまり,ニューラインを加え
た 3 社がアカデミー作品賞を狙った映画をつくり続けることで,
競争が激化し,
大作主義が横行することになり,
各社ともに疲弊しきってしまい,潰れてしまった時代であった.各社の製作規模が膨張し続けることで,映画作
品の質的向上がみられたものの,資金繰りが限界に達したことで,アメリカ映画界は受難の時代へと突入するこ
とになった.
2005 年以降のアカデミー作品賞をめぐっては,ハリウッドの周縁に内在していたあらゆる問題が毎年のように
提起される形となった.2005 年はクリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイベー」が受賞するものの,
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資金調達の困難さを示す象徴的作品だった.というのもイーストウッドは,本映画製作のために各国をかけずり
回って資金調達を行い,やっとの思いで完成させたからである.その背景としては,映画製作の資金調達方法も
また経済成長を迎える社会のなかで,複雑化・高度化することで,映画の供給者と需要者との関係が上手くいか
なくなったからもしれない.1960 年代以前には,映画会社の資金によって映画制作が行われていたものの,70
年代以降は銀行からの資金や出資者を募ることが中心となってきたために,いい映画をつくるというよりも金銭
的リターンが目的となってきた.とくに 2000 年以降は,投資銀行が投資対象の1つとして映画を選んだ.投資銀
行は,顧客から預かったお金を運用するだけなので,シナリオもわからないし,企画段階で評価もできないし,
俳優の演技力もわからない.そんな中で,有名な俳優の出演映画,ファミリー向け映画,原作がベストセラー小
説や有名なコミックの映画,大ヒット作品のリメイク映画,超大作映画といったような作品にしか,出資者が集
わなくなってしまってきている状況を生みだした.
2006 年の作品賞は「クラッシュ」となったものの,批評的にも興行的にも成功を収めた「ブロークバック・マ
ウンテン」が本命視されていた作品だった.このとき,話題となったのは作品賞に投票する権利をもつアカデミ
ー会員である.アカデミー賞は,アカデミー会員によって投票されるが,アカデミー会員の居住地はほとんどが
ハリウッドのあるロサンゼルスであり,またアカデミー会員の構成比としては俳優と脚本家とがもっとも多くな
っている.これらの点をおさえたのが「クラッシュ」の特徴でもある.近年では,ハリウッド映画の作品であっ
てもほとんど海外で撮影されることが多いため,スタッフがアカデミーの非会員となってしまうのである.また
「クラッシュ」の場合は,脚本家ポール・ハギスがメガホンをとった作品であり,脚本家の内輪では高評価とな
っていたとも推察できる.
2007 年の受賞作は「ディパーテッド」となった.この原作は,香港映画の大ヒット作である「インファナル・
アフェア」であり,つまりはリメイク作品だった.先にも言及したように,資金調達が困難となっている状況下
においては,オリジナル作品を制作するよりも,過去の人作をリメイクしたほうが出資者にとってのメリットだ
ったからである.
2008 年の受賞作「ノーカントリー」と対抗馬だった「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は両作品ともに批評家
からは好評だったものの,作品の内容・質や前年度までの影響を受けてか,アカデミー賞のテレビ中継時に史上
最低記録をつくり,多くの人びとがアカデミー賞から興味や関心を失いつつあることを示したともいえる.
2009 年は,ダニー・ボイルの「スラムドッグ$ミリオネア」が作品賞を受賞した.スタッフもキャストもイン
ド人が多くを占め,ロケ地もインドであり,ボリウッド映画の象徴ともいえる作品だった.前年の金融危機によ
り,中国やインドが映画界においても躍進をみせ,さまざまな有名作品の資金が両国から出資されており,アメ
リカを中心とする映画界も中国やインドにその軸足を移さざるを得ないとするような時代の始まりを象徴してい
たのかもしれない.また同時に,2009 年に問題となったのはアカデミー賞のノミネート作品数であった.という
のもアメリカ国内でもっとも評価が高く,かつ観客動員数も多かった「ダークナイト」と「グラン・トリノ」の
2 作品がノミネートすらされなかったからである.両作品を制作したワーナーは超大作映画として,出資した「ベ
ンジャミン・バトン」を候補作として押さざるを得なかったからである.ノミネート作品は 5 作品と定められて
おり,作品賞の候補作は,製作会社が自ら提出したなかから,委員会によって選定されるというプロセスとなっ
ている.そのため,同じ会社の作品が 2 本ノミネートされることは基本的にはない.ただし,配給会社が別の場
合などは例外もある.これも大作主義と出資金を取り戻さなければいけないという環境のなかからうまれた構造
的な課題ともいえる.
前年度の反省をふまえ,2010 年のアカデミー作品賞は候補作を 10 本に増やした.作品賞は「ハート・ロッカ
ー」が受賞し,もっとも話題となった「アバター」は賞を逃すこととなった.
「アバター」は主演俳優以外のエキ
ストラがCGであり,アカデミー会員の多くを占める無名俳優がほとんど出演していないのである.ただ候補作
が 10 本に増えたことは,従来は見過ごされがちであった作品が陽の目を浴びる切欠ともなった.日本で公開予定
のなかった「第 9 地区」などもノミネート直後に全国公開が決まり,興行的にも成功を収めるなどの好影響をも
たらしているともいえる.
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2000 年代のアカデミー作品賞受賞作
アメリカン・ビューティー
2000
グラディエイター
2001
ビューティフル・マインド
2002
シカゴ
2003
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
2004
ミリオンダラー・ベイベー
2005
クラッシュ
2006
ディパーテッド
2007
ノーカントリー
2008
スラムドック$ミリオネア
2009
ハート・ロッカー
2010
英国王のスピーチ
2011
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主となる製作会社
ドリームワークス
ドリームワークス
ドリームワークス
ミラマックス
ニューライン・シネマ
マルパソ・カンパニー
ライオンズ・ゲート
ワーナー・ブラザーズ
ミラマックス
フォックス・サーチライト
サミット・エンターテインメント
シー・ソウ・フィルムズ/ベッドラム・
プロダクションズ
Bibliography
町山智浩.アカデミー作品賞に見るゼロ年代アメリカ映画界の様相①,②.ゼロ年代アメリカ映画100所収.芸術新聞社,2010
長谷正人.映画というテクノロジー体験.青弓社,2010
ゼロ年代+の映画:リアル,フェイク,ガチ,コスプレ.河出書房,2011
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編集後記:
地震、津波、原子力発電所事故の三重苦となり、未曾有の被害を
もたらした東日本大震災。16 年前の阪神・淡路大震災と、短い生
涯に二度、大きな震災を体感した。今回の大震災が 16 年前と大き
く異なるのは、津波と原子力発電所事故の影響が被災地を覆いか
ぶさったことであろう。
そして、見逃してはならないことは、情報の不正確さ、あいまい
さ、信頼性のなさであったことと、その情報価値から下さなけれ
ばならない意思決定がまったく駄目であった。この結果、被災地
だけでなく、国内外にまで甚大な負の影響を与え続けている。
政策情報学会の学術的根幹である「情報」の原点に返り、真摯に
情報の質や量を再考すべきである。安全性の面でいえば、地震と
向き合う暮らしは、日本の地理的位置の宿命と諦める前に、継承
すべき防災・避難ノウハウを次の世代に、いかに伝え残していく
か。ここに政策情報学の核心がある。
(若井 郁次郎)
ニューズレター編集委員会に加わることになりました.今後と
もよろしくお願い申し上げます.現在では,ビジネスの実務に携
わることが活動の中心となっておりますので,こうして学会をお
手伝いできるのは大変嬉しく思っております.
ポスト 3.11 の動向は学術内外において,変革への動きがすでに
幅広い議論がなされていますが,フランスの思想家 Camus が提唱
したような「不条理」を出発点とする知的態度の構築が求められ
るのかもしれません.他方で,twitter などのウェブを活用した新し
いテクノロジーが,ライフラインとして,また新しいメディアと
して一定の役割を担ったことは,未来への一歩として期待を抱き
たいところです.
本号より,文化をめぐるエッセイを連載させていただくことに
なりました.学術的な色彩というよりは,身近でなじみやすいも
のを題材にしつつ,気軽に読めるものとして取り組んでみたいと
思っております.ご笑覧いただければ幸いです.
この度は、ニューズレターの刊行が遅くなって申し訳ございま
せんでした。実務面の整備が行き届かず、会員の皆様にご迷惑を
おかけする結果となったことをこの場を借りてお詫び申し上げる
次第です。
さて、東日本大震災の日から気がつけば 2 か月以上の月日が経
とうとしています。3/11 は、ようやく色々な仕事を一段落させ、
「そ
ろそろ残している別の仕事を…」と思った矢先、吉岡委員と電話
で情報交換をしていた時に発生しましたことを記憶しています。
丁度、その日の夜に東京から建築工事のために知人が京都に来
る予定だったのですが、地震直後に連絡が来て、首都圏において
も建物の被害は報道されない範囲でも深刻であることが、手に取
るようにわかりました。当方の埼玉にある実家でも、運よく地震
対策をしていたので転倒などはありませんでしたが、当方の部屋
は本棚が大変なことになっていました。
地震 1 週間後に実家へ帰り、復旧作業でてんやわんやでしたが、
研究者の本棚というものは、常に地震対策をしておかないと大変
であると痛感をした次第です。ですが、当方自身が自分を見つめ
なおす機会をつくらないといけないと思いながら、日々の雑務に
追われる毎日ですので頭が痛いところです(苦笑)。
(加藤 久明)
このたび、本ニューズレター編集のお手伝いをさせて頂くこと
となりました。どうぞよろしくお願い致します。
さて、加藤副編集長も書かれていますが、東日本大震災の発生
時、私は福井の実家に滞在しておりました。震度は 3 でしたが、
非常に周期の長い揺れが続いたため、目の前のテレビをつけたら
「東北地方で震度 7」という速報が流れており、電話を終えた後は
ひたすら特別番組を見ておりました。
私のほうに直接の被害はありませんでしたが、埼玉県在住の知
人は「帰宅難民」となり、一夜をオフィスで過ごしたようです。
当時食料が品薄となったこともあり、福井のお米を送ったところ
喜んで頂けました。私も自身の「危機管理マニュアル」をつくり、
不測の事態に備えねばと痛感させられました。
(吉岡 泰亮)
(松尾 和典)
政策情報学会 Newsletter 第 24 号
発行:政策情報学会
2011 年 5 月 31 日 発行
編集:政策情報学会 Newsletter 編集委員会
編集担当者:Newsletter 編集委員会委員長 若井 郁次郎
副委員長 加藤 久明
松尾 和典
委
員 吉岡 泰亮
pg. 29
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