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地域とつながる子育て支援プロジェクト ~保育士養成校の学生による

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地域とつながる子育て支援プロジェクト ~保育士養成校の学生による
JASSW NEWS LETTER
教育実践報告
地域とつながる子育て支援プロジェクト
~保育士養成校の学生による取組み~
上智社会福祉専門学校 五十嵐 淳子
Ⅰ はじめに
2015 年度の千代田学事業(千代田区の委託事業)として上智社会福祉専門学校保育士科が企画運営する「地
域とつながる子育て支援プロジェクト~保育士養成校の学生による取組み~」が採択された。そして目下実
施されている。ここでその取り組みを紹介したい。
Ⅱ 背景
本校が子育て支援プロジェクトを立ち上げた背景には、以下のことがあげられる。
現代社会では、保育士の需要が高まる中で、より一層、質の高い保育士が求められている。保育士の役割
を大別すると、子どもを保育することと、保護者の支援を行うことが挙げられる。専門性を活かした子育て
支援の役割は非常に重要であり、保育士の保護者支援の役割の比重が高くなっている現状がある。しかし、
なかなかそれが教育プログラムの中で展開できないことも課題である。
保育士養成校で学ぶ学生は保育実習等を通して、保育現場において子どもの保育を実践的に学ぶ機会があ
る。しかし、実際の保育実習では保護者とのかかわりの実際を学ぶ機会が非常に少ないため、保育士になっ
た際に、どのように保護者支援を行っていけばよいのかわからず、困惑している保育士も見受けられる。そ
のため、実際の現場では、保護者との関係性に悩みを抱えて離職していく保育士も少なくない。
そこで、保育士資格取得を目指している保育士養成校の学生が、保護者に子育てが楽しいと感じられるよ
うな機会を提供することが必要であると考え、本校では、子育て支援をテーマにしたプロジェクトを立ち上
げることとなった。
Ⅲ 取り組み
本校の保育士科は外国人の学生をはじめ、様々な年代とバックグラウンドを持つ学生が多数在籍している。
そのため、千代田区に在住している外国の方や保護者においても母親だけでなく、父親も参加しやすいプロ
グラムを検討した。子育て支援の対象は主に千代田区に住んでいる未就学児と保護者である。千代田区は東
京都心の中央部分に位置しており、地域のつながりを感じる機会が少ない状況で子育てをしている家庭もあ
る。子育てにおいて気軽に相談ができ、身構えずに参加できる子育て支援の場を提供することで、地域のつ
ながりを感じられる場所にしていくことで本校が地域貢献の一端を担うことができるのではないかと考えた。
第 1 回目の子育て支援の取組みとしては、11 月 2 日、3 日に行われたソフィア祭の文化祭の中で実施さ
れた。学生達は子育て支援の実施のために、様々な準備を行い、学生同士の輪やコミュニケーションがさら
に広がり、保育の学びを深める機会にもなったようだ。1 回目の取組みでは、親子で一緒に作れるというこ
とと来場される子どもの年齢が幅広いということに視点を置き、幼児から小学生でも作れるもの、また簡単
に家でも作れるということを見据え、下記の内容を選定し実施した。本校の保育士科 1 年生が「ヨーヨー釣
り」を行い、同じ教室で、親子で一緒に作れる手作りおもちゃとして「だまし絵」「くるくるペープサート」
「サンタクロースの折り紙」「にょろにょろお化け」の製作を行った。本校の聖歌隊が合唱を披露してくれた
こともあり、文化祭に来て下さった地域の方や子ども達と一緒に歌を歌う場面も見られた。
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第 2 回目の子育て支援の取組みは、12 月 12 日に行った。千代田区に在住している家庭は、教育熱心な
保護者も多く、英語教育にも興味・関心を持っている保護者も見られる。そのため、子育て支援のプログ
ラムは、親子で英語に親しむことができるように、紙芝居 “Yummy,Yummy” やマザーグースの曲から “This
little piggy” と “The eency weency spider” の手遊びを通して、英語活動も取り入れた。また、合唱やピアノ
演奏などを取り入れたウェルカムコンサートを行い、リラックスできる時間を提供し、保護者のストレス緩
和に繋げるようにした。さらに、簡単にできる子どもが喜ぶおもちゃ作りとしては、1 回目と同様に「だま
し絵」と「くるくるペープサート」の製作やクリスマスリース作りも行った。
遊びに来てくれた保護者や子ども達は、最初は恥ずかしがっていた様子も見られたが、子ども達は学生と一
緒に、鈴やタンバリン、太鼓の楽器を使ってクリスマスソングの合奏を行い、英語の手遊びや紙芝居も親子が
一緒に参加できる活動となった。子どもが喜ぶおもちゃ作りやクリスマスリース作りでは、保護者の方も学生
との交流を図ることで、楽しみながら参加していた。活動が終わった親子には、学生が作成した英語の参加証
を手渡し、子どもが参加証にスタンプを押してお土産として持ち帰ることができるような工夫も施した。
第 2 回目の子育て支援は、保護者は母親だけでなく父親の参加や外国籍の方の姿も見られた。また、本校
の学生だけでなく、他校の学生との協働しながら子育て支援を行うことを通して、多種多様な人達と関わり
を持つことができた。学生達が一生懸命取り組んだおかげで、心温まる雰囲気の中で子育て支援を進めるこ
とができ、保護者と子ども達の両方が楽しめるような子育て支援に視点を置くことで、子育ての楽しさを知
る機会を少しでも提供できたのではないかと感じることができた。
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Ⅳ おわりに
前述したように保育士は現在、目の前の子どもを無事預かればよいというものではなくなっている。保護
者が子どもに向かい合うことを支援するというソーシャルワークの一翼を担うことが期待されている。本校
の保育士の教育内容には、社会福祉やソーシャルワークも含まれている。当プロジェクトも新しい保育士像
を意図した地域貢献活動である。保育士養成校に在籍する学生のうちから子育て支援を通して、保護者との
かかわりを学ぶ機会を持ち、他者と協働して子育て支援プロジェクトに取り組むことが、質の高い保育士の
育成に繋がっていくことになる。
抜群のアクセスの利便性を誇る千代田区四ツ谷駅に位置する上智大学のキャンパスの中に身を置くことに
より、保護者がかまえることなく、気軽で身近に子育て支援に参加することができ、子育てに追われる日常
とは違った環境を提供することも、保育士養成校での子育て支援の魅力だと考えている。今後も子育て支援
プロジェクトを継続していくことで、学生の学びを深めるとともに地域貢献にも力を注いでいきたい。
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