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『日本の証券市場の活性化について』

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『日本の証券市場の活性化について』
平成 26 年度「証券ゼミナール大会」
第 6 テーマ
5
『日本の証券市場の活性化について』
10
15
立教大学 渡辺ゼミナール
20
高鳥班
1
目次
はじめに .................................................................................................. 3
第 1 章 証 券 市 場 とは .............................................................................. 4
1-1 証 券 市 場 の意 義 と役 割 ................................................................ 4
5
1-2 様 々な証 券 の仕 組 み .................................................................... 5
1-3 証 券 市 場 のプレーヤー ................................................................. 9
第 2 章 日 本 の証 券 市 場 の歴 史 と現 状 ..................................................... 10
2-1 日 本 の証 券 市 場 の歴 史 .............................................................. 10
2-2 株 式 市 場 の現 状 ....................................................................... 13
10
2-3 債 券 市 場 の現 状 ....................................................................... 15
2-4 投 資 信 託 の現 状 ....................................................................... 17
第 3 章 証 券 市 場 に影 響 を与 える要 因 分 析 ............................................... 19
3-1 家 計 の金 融 資 産 構 成 ................................................................. 19
3-2 企 業 の資 金 調 達 方 法 ................................................................. 24
15
3-3 証 券 投 資 の収 益 性 .................................................................... 26
課 題 のまとめ ......................................................................................... 30
第 4 章 課 題 解 決 に向 けた既 存 の取 り組 み ................................................ 31
4-1 課 題 ①「家 計 の投 資 が活 発 でない」に対 する取 り組 み ...................... 31
4-2 課 題 ②「資 産 の世 代 間 移 転 が不 十 分 」に対 する取 組 み .................... 35
20
4-3 課 題 ③「中 小 、ベンチャー の資 金 調 達 の難 しさ」に対 する取 組 み ......... 36
4-4 課 題 ⑤「中 長 期 的 な収 益 性 が低 い」に対 する取 組 み ........................ 37
第 5 章 日 本 の証 券 市 場 の活 性 化 策 の提 案 .............................................. 38
2
5-1 課 題 ①「家 計 の投 資 が活 発 でない」に対 する提 案 ............................ 39
5-2 課 題 ②「資 産 の世 代 間 の移 転 が不 十 分 である」に対 する提 案 ............ 42
5-3 課 題 ③「中 小 、ベンチャー企 業 の資 金 調 達 が難 しい」に対 する提 案 ..... 44
5-4 課 題 ④「社 債 の発 行 が活 発 でない」に対 する提 案 ............................ 46
5
5-5 課 題 ⑤「中 長 期 的 な収 益 性 が低 い」に対 する提 案 ........................... 47
おわりに ................................................................................................ 47
【 参 考 文 献 】 ....................................................................................... 48
はじめに
「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」。こ の ス ロ ー ガ ン が 掲 げ ら れ て か ら 既 に 10 年 以 上 が 経 つ
10
が、依然として日本の家計は現金預金を貯め込んでいる。現在、家計の資産構
成 に お け る 現 金 預 金 の 割 合 は 50% を 超 え 、 そ の 額 は お よ そ 873 兆 円 に も 上 る 。
資 金 調 達 側 で あ る 企 業 の 証 券 の 利 用 も 進 ま な い 。 こ こ 10 年 間 、 債 券 発 行 額
に も IPO に よ る 資 金 調 達 額 に も 大 き な 伸 び は 見 ら れ な い 。
しかし、だからこそ日本の証券市場は大きな潜在力を持っていると言えるの
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ではないだろうか。家計の余剰資金と企業の資金不足を証券市場でマッチング
させることは日本経済の更なる発展に間違いなく寄与する。
そこで、本稿では、現状を打開し、家計の貯蓄から投資へ、企業の資金調達
における更なる証券の利用、この 2 つを促進させるべく提案を行う。
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本稿の構成は以下のとおりである
第 1 章 で は 、様 々 な 証券 の 仕 組みや 証 券 市 場の 意 義 と役 割 な ど、証券市 場 の
基礎知識について整理する。第 2 章では、日本の証券市場が辿ってきた経緯と
現状について確認する。第 3 章では、証券市場に影響を与える要因 を分析し、
日本の証券市場の課題を探る。そして、浮かび上がった課題を整理し、第 4 章
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では、その解決に向け行われている既存の取組みについて考察する。以上を踏
ま え 、第 5 章 で は 、我 々 が 証券 市 場の 活 性 化 を促 進 さ せる た め に 必 要 だと 考 え
る施策について提案する。
3
第 1 章 証 券 市 場 とは
本章の目的は証券市場の基礎知識を整理することである。まず、証券市場が
存在する意義や役割について述べる。次に、証券市場で売買される、様々な証
券の仕組みについて説明し、最後に証券市場で重要な役割を果たす プレーヤー
5
を紹介する。
1-1 証 券 市 場 の意 義 と役 割
経済の発展成長のためには、資金余剰部門から資金不足部門への円滑な資金
移転が必要不可欠であり、その円滑な資金移転を達成するために株式や債券の
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売買が行われる場が証券市場である。資金調達側である国や企業は、この証券
市場が存在することにより、市場で株式や債券を発行し資金調達することが可
能となり、経済活動を行うことが出来る。
一方で、資金供給側である投資家は、証券市場で証券を売買することで値上
が り 益 (キ ャ ピ タ ル・ゲ イ ン )、配 当 金 (イ ン カ ム・ゲ イ ン )、株 主 優 待 な ど を 得 る
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ことが可能となり、自己資産を増加させることが出来る。
証 券 市 場 は 、「 発 行 市 場 (プ ラ イ マ リ ー マ ー ケ ッ ト )」 と 「 流 通 市 場 (セ カ ン ダ
リ ー マ ー ケ ッ ト )」と い う 2 つ の 市 場 か ら 構 成 さ れ て い る 。発 行 市 場 と は 、新 た
に発行された証券で投資家を募集する市場のことを言い、流通市場とは、既に
発行されている証券の売買を行う市場のことを言う。
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2 つの市場は密接に関わっており、発行市場が機能するためには、流通市場
が存在し、証券の流動性が確保されていることが必要である。 また、流通市場
は、発行市場で証券が発行されていなければ存在できない。流通市場で証券の
流動性が確保されていて、取引が出来る環境が整っている からこそ、投資家は
安心して新たに発行市場で発行される証券を買うことができる。投資家が安 心
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し て 証 券 を 買 え る よ う に な る こ と で 、企 業 も 容 易 に 資 金 調 達 す る こ と が で き る 。
このように発行市場と流通市場は密接に関わっている 。それでは、以上のこと
から導かれる発行市場と流通市場の在り方について言及していく。
ま ず 、私 た ち が 理 想 と す る 発 行 市 場 の 在 り 方 と は 、
「 発 行 件 数・発 行 規 模 が 大
きく、投資家が選ぶことのできる証券の選択肢の多い市場」である。発行市場
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において最も重要なことは、投資家にとって魅力ある証券を提供することで あ
4
る。証券の選択肢が増加し、投資家のニーズを反映した証券が増加することで
多くの投資家を呼び込むことができ、発行市場は活性化するのである。
そして、私たちが理想とする流通市場の在り方は、 証券を「買いたいときに
買え、売りたいときに売れる市場」である。この市場を作り上げるには多くの
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投資家が存在し、証券の売買が活発に行われることが必要不可欠だが、市場に
多くの投資家を呼び込むには投資家にとって魅力のある、ニーズを反映した証
券が必要になる。そこで上記のように、発行市場が「発行件数・発行規模が大
きく、投資家が選ぶことのできる証券の選択肢の多い市場」となれば、市場に
は多くの投資家が存在するようになるだろう。
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以 上 よ り 、証 券 市 場 の 活 性 化 の 定 義 は 、
『企業の資金調達における更なる証券
の 利 用 と 、家 計 の「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」と い う 動 き を 促 進 さ せ る こ と 1 』の 2 つ と
なる。
1-2 様 々な証 券 の仕 組 み
15
証券は、法律上の分類として「証拠証券」と「有価証券」に大別することが
できる。証拠証券は、預金証書や借用書、領収書など の一定の事実を証明する
証券であり、有価証券は、一定の財産権を証明する証券である。
有 価 証 券 は 、さ ら に ① 有 価 証 券 を 預 託 し た 商 品 に 対 す る 請 求 権 を 表 象 す る「 商
品 証 券 」、 ② 手 形 や 小 切 手 な ど の 貨 幣 に 対 す る 請 求 権 を 表 象 す る 「 貨 幣 証 券 」、
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③ 債 券 や 株式 な ど 、出 資 者 の一 定 の権 利 を 表 象す る「 資本 証 券 」の 3 種 類 に 分
類される。
一般的に、資本証券のことを「有価証券」や「証券」と呼ぶことが多く、本
稿 で 扱 わ れ る 「 証 券 」 も 、 こ の 資 本 証 券 を 指 す 。 1-2 で は 、 様 々 な 証 券 の 仕 組
みや特徴について述べる。
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(1)株 式
株式とは、株式会社が主に資金調達のために発行する証券である。
株式会社が発行する株式は、通常、普通株式と呼ばれるものであり、この株
式が所有者である株主に与える権利は等しくなっている。株主は企業に資金を
1
証券ゼミナール大会用主旨文より
5
提供する代わりに、①株主総会に参加でき 、持ち株数に応じた議決権を有する
「 経 営 参 加 権 」、 ② 企 業 の 利 益 を 配 当 と し て 請 求 で き る 「 剰 余 金 配 当 請 求 権 」、
③ 会 社 解 散 時 に 残 余 財 産 を 持 ち 株 数 に 応 じ て 受 け 取 れ る「 残 余 財 産 分 配 請 求 権 」、
④株主が企業に代わって取締役の企業の責任を追及する「代表訴訟提訴権」な
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どの権利を有する。しかし一方で、企業は発行された株式に対して返済の義務
を持たない。
また、例外的に株主の権利について意図的に差をつけるような株式も存在す
る。それは上記の普通株式と区別して種類株式と呼ばれ、この種類株式には、
① 剰 余 金 の 配 当 や 残 余 財 産 の 分 配 が 他 の 株 式 よ り 優 先 さ れ る「 優 先 株 式 」、② そ
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の 逆 に こ れ ら の 分 配 が 劣 後 さ れ る「 劣 後 株 式 」、③ 優 先 株 式 と 劣 後 株 式 の 特 徴 が
混 合 さ れ た「 混 合 株 式 」、④ 株 主 総 会 で の 議 決 権 の 行 使 が 全 部 ま た は 一 部 制 限 さ
れる「議決権制限株式」などが存在する。
株式会社は資金調達、支配権の移動、株式の流動性の向上などのために新株
を発行することがある。この新株の発行には、株主から一定金額の払い込みを
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受ける「有償増資」と、払い込みを伴わない「無償増資」が存在する。有償増
資の形態は、広く不特定多数の投資家から新株の取得申し込みを募る「公募増
資 」、 株 主 以 外 の 第 三 者 に 新 株 引 受 権 を 与 え て 発 行 す る 「 第 三 者 割 当 増 資 」、 新
株引受権を優先的に既存の株主に与える「株主割当増資」等、募集する方法に
よって分類することが可能である。また、無償増資の形態には、株式分割が存
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在する。
(2)公 社 債
企業は、株式以外にも、債券を発行することで資金調達が可能である。債券
とは、資金調達者である債券の発行体が 投資家に対して発行する、借用証書の
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ような証券である。債券が株式と異なっている点は、発行時点から利率や利払
い方法が定まっており、満期には元本を返済する義務があ るという点で、投資
家にとって株式よりも比較的安全な取引が可能な証券 であると言える。
公社債とは、国や地方公共団体などの公的機関が発行する債券である「公共
債」と、民間の企業などが発行する債券である「民間債」の総称であり、発行
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体の違いによって、国債、地方債、社債、金融債などに細分化される。また利
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払 い の 方 法 に よ り 、 定 期 的 に 利 子 (ク ー ポ ン )が 支 払 わ れ る 「 利 付 債 」 と 利 子 は
支払われないが、割引価格で発行される「割引債」に分けられる。
公社債の売買方法には、証券取引所で行う「取引所取引」と、証券会社の店
頭で行う「店頭取引」がある。取引所取引とは、証券取引所に上場されている
5
公社債を投資家が証券会社を通して売買する方法で、店頭取引とは証券会社の
店頭で、証券会社と投資家が相対で取引を行う方法である。
売買に関連して投資家が債券を売買する際に参考にできる指標として「格付
け 」 が あ る 。 格 付 け は S& P、 ム ー デ ィ ー ズ 、 フ ィ ッ チ 、 R&I、 JCR 等 の 格 付
会社が、債券を発行する企業を財務内容、組織構造、事業内容等から分析し、
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信 用 度 の 高 い も の か ら AAA、 AA、 A、 BBB、 BB、 B… (格 付 会 社 に よ っ て 異 な
る )と い う よ う に 債 券 の 元 利 金 支 払 い の 安 全 性 を ラ ン ク 分 け す る 。 BB 以 下 の 債
券はジャンク債と呼ばれており、デフォルトリスクは高いが、利回りも高く設
定 さ れ て い る た め 、 高 利 回 り 債 (ハ イ ・ イ ー ル ド 債 )と も 呼 ば れ て い る 。
15
(3)投 資 信 託
投資信託とは、複数の投資家から資金を集め 1 つの大きな資金とした上で、
投資の専門家が株式や債券などで運用し、 その運用成果が投資家の投資額に応
じ て 分 配 さ れ る 仕 組 み の 金 融 商 品 で あ る 。投 資 信 託 で は 1 万 円 程 度 の 少 額 か ら
の投資が可能で、手軽に投資を始めることができる。また、投資の専門家が投
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資家に代わって運用するため、初心者でも投資がしやすく、個人では売買出来
ないような商品への投資も可能になる。更に集められた資金は株式や債券に分
散投資されるので、投資によって生じるリスクを軽減することも可能だ。しか
し、投資信託は元本が保証されていないので、投資家への分配は運用成果に応
じて変動してしまう点に注意が必要である。
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投 資 信 託 の 主 要 商 品 と し て 挙 げ ら れ る の が ① ETF(Exchange Traded Fund)
と②不動産投資信託である。
① ETF と は 、 日 経 平 均 株 価 や 東 証 株 価 指 数 (TOPIX)等 と 連 動 し 、そ の 値 動 き
に 近 い 運 用 を 目 指 す イ ン デ ッ ク ス・フ ァ ン ド の こ と で あ る 。 ETF で は 、株 価 指
数 等 に 連 動 す る よ う に 指 定 さ れ た 複 数 の 銘 柄 を 1 つ に ま と め た も の (現 物 株 式
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バ ス ケ ッ ト )を 拠 出 し 、 そ の 引 替 え と し て ETF の 受 益 証 券 を 得 る た め 、 そ の 応
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募 に 応 じ る の は 指 定 参 加 者 (証 券 会 社 や 機 関 投 資 家 )が 中 心 と な り 、 個 人 投 資 家
は 市 場 を 通 し て 小 口 化 さ れ た ETF を 売 買 す る の で あ る (図 表 1-1)。
図 表 1-1
ETF の 仕 組 み
5
(投 資 信 託 協 会 HP を 参 考 に 筆 者 作 成 )
②不動産投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を不動産に投資し、そ
こ で 得 た 賃 貸 収 入 や 売 買 益 を 投 資 家 に 分 配 す る 投 資 信 託 で あ る (図 表 1-2)。こ の
不 動 産 投 資 信 託 の 仕 組 み は 元 々 ア メ リ カ で 創 設 さ れ 、「 REIT(Real Estate
Investment Trust)」 と し て 定 着 し て お り 、 日 本 で は こ れ に 倣 い 「 J-REIT」 と
10
呼ばれている。また、不動産は株式や債券よりも流動性が低いため、解約・買
戻しの権利を持たないクローズド・エンド型という形態が用いられ、証券取引
所に上場することで流動性を確保している。
図 表 1-2
J-REIT の 仕 組 み
15
(投 資 信 託 協 会 HP を 参 考 に 筆 者 作 成 )
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1-3 証 券 市 場 のプレーヤー
(1)証 券 会 社
証券会社は、①ディーリング業務、②ブローカー業務、③アンダーライティ
ング業務、④セリング業務の 4 つの業務を通して市場と投資家を結び付け、市
5
場に流動性をもたらしている。
まず、①ディーリング業務とは、自己の判断・勘定で証券を売買する業務の
ことを言う。それに対して、顧客からの注文を取引所に発注する業務を②ブロ
ーカー業務と言う。③アンダーライティング業務は、企業が株式や債券などを
発行する際、投資家に売り出すことを目的にそれを引き受ける業務のことであ
10
る。最後の④セリング業務は、発行者から委託を受けて、多くの投資家に証券
を販売する業務である。③アンダーライティング業務と④セリング業務の違い
は、③アンダーライティング業務では売れ残った証券を引き受けなければなら
ないが、④セリング業務では引き受ける必要がないという点である。
15
(2)証 券 取 引 所
証券取引所の基本機能は、
「 高 度 に 組 織 化 さ れ た 市 場 を 開 設 し 、そ の 市 場 に 大
量の需給を集中させることによって、有価証券の流通性を高めるとともに、需
給 を 反 映 し た 公 正 な 価 格 を 形 成 し 、 か つ そ の 価 格 を 公 示 す る こ と 2」 に あ る 。
取引所での取引は 2 つの基本原則に則って実施されている。 1 つ目は価格優
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先の原則だ。これは、売り注文については最も低い値段が、買い注文について
は最も高い値段が優先され、また値段を指定する指値注文よりも値段を指定し
ない成行注文が優先される原則である。 2 つ目は時間優先の原則で、これは文
字通り同じ値段の売買注文がある場合、先に発注された注文が優先される原則
である。
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(3)投 資 家
投資家については、①個人投資家、②機関投資家、③海外投資家に分けて、
それぞれの特徴を簡単に述べる。①個人投資家は、証券保険振替機構の株主等
通 知 用 デ ー タ を 参 照 す る と 、株 式 保 有 者 だ け で 約 1730 万 人 い る こ と が 分 か る 。
2
図 説 日 本 の 証 券 市 場 201 4 よ り
9
投資の特徴としては、価格上昇局面での売り・価格下落局面での買いの傾向が
ある逆張り投資家であると言われる。また、機関投資家・海外投資家との比較
において情報劣位にあり、投資パフォーマンスは恒常的にマイナスである。次
に②機関投資家とは、他人の資金を委託され運用している投資主体であり、代
5
表的なものに年金基金や保険、投資信託 が挙げられる。大量の資金と豊富な情
報量を持ち、市場では常に動向が注目される。投資方針は長期保有で順張りの
傾向が強い。③海外投資家には、海外に居住する年金基金や保険、投資信託が
分類され、外国法人の日本支店などは除かれる。特徴として、海外投資家の株
式保有状況が株価に影響を与えることは計量的に証明されており、保有状況が
10
高いほど株価推移は上昇傾向が強いということが挙げられる。これは、海外投
資家の存在が、企業の経営への圧力となるからであろう。
第 2 章 日 本 の証 券 市 場 の歴 史 と現 状
本章の目的は、証券市場の現状を把握 することである。しかし、証券市場の
15
現状を深く理解するためには、それがどのように成り立ってきたのかを知る必
要 が あ る だ ろ う 。 し た が っ て 、 ま ず 2-1 で 証 券 市 場 の 歴 史 を 振 り 返 り 、 現 状 に
至 る ま で の 経 緯 を 確 認 す る 。そ し て 、2-2 か ら 2-4 で は 、1 章 で も 取 り 上 げ た 様 々
な証券の現状について述べる。
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2-1 日 本 の証 券 市 場 の歴 史
2-1 で は 、 日 本 の 証 券 市 場 が ど の よ う な 経 緯 を た ど り 、 発 展 し て き た の か に
ついて戦前から現在までを 3 つの期間に分けて説明していく。
(1)戦 前 ~金 融 ビッグバン
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日 本 に お い て 、 発 行 市 場 は 1870 年 明 治 政 府 が ロ ン ド ン で 9 分 利 付 外 国 公 債
を 発 行 し た と き 、 流 通 市 場 は 1878 年 東 京 と 大 阪 に 株 式 取 引 所 が 設 立 さ れ た と
きが始まりと言われる。取引所が誕生してすぐは、公債取引が中心だった。な
ぜなら戦前は、財閥が傘下の優良企業株を独占保有していたため取引所に優良
企業株がほとんど上場されず、取引は投機的なものであったからだ。
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戦 後 ま も な く は GHQ の 命 で 取 引 所 の 再 開 を 認 め ら な か っ た が 、1949 年 に は
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東京、大阪、名古屋に証券取引所が設立され取引が再開された。取引再開まで
の間には、証券取引委員会の設置や、証券業者の登録制など を定めた証券取引
法 が 施 行 さ れ る と と も に 、 GHQ に よ り 、 ① 取 引 の 時 間 優 先 ② 取 引 の 取 引 所 集
中③先物取引の禁止という 3 つの原則が掲げられ、市場整備が進展した。
5
1951 年 に 信 用 取 引 制 度 と 投 資 信 託 が 導 入 さ れ る と 朝 鮮 戦 争 の 特 需 景 気 と 相
まって株価、売買高は大きく成長した。その後日本は高度経済成長期に入り、
証券市場も活況期を迎えると、店頭売買新規承認会社数が新興、成長企業を中
心に増加したため、東京、大阪、名古屋の取引所に市場第二部が創設された。
し か し 、証 券 市 場 の 活 況 は 長 く は 続 か な い 。1961 年 に 入 る と 国 際 収 支 赤 字 改
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善のための金利の引き上げに伴い公社債投信の解約が増加したため、信託財産
から外された公社債を買い取らざるを得なくなった証券業者の負担が 増加して
証 券 恐 慌 と な っ た 。1965 年 の 山 一 證 券 へ の 日 銀 特 融 、オ リ ン ピ ッ ク 反 動 不 況 を
受けての戦後初の赤字国債発行などにより株価は回復に転じたが、証券恐慌へ
の反省から証券業の免許制が再導入された。
15
1964 年 日 本 が OECD へ の 加 入 、 IMF8 条 国 へ の 移 行 を 果 た す と 資 本 取 引 の
自由化が講じられ始め証券市場の国際化が進んだ。その国際化の流れの中で、
1971 年 に は 個 人 投 資 家 に よ る 外 国 証 券 投 資 の 自 由 化 も 行 わ れ た 。ま た 、海 外 企
業からの買収への防衛策のため、株式持ち合いを推進し、法人の株式保有率が
上昇したのもこの時期である。
20
1985 年 に 大 口 預 金 金 利 の 自 由 化 が 行 わ れ る と 、預 金 獲 得 の た め に 金 利 を 引 き
上げた銀行の資金調達コストは上昇し、大企業の資金調達が銀行からの借り入
れから直接金融へシフトした。同年プラザ合意が行われると、円高不況への懸
念から翌年公定歩合の引き下げが行われ、金利は低下した。 円高、低金利の環
境 の 中 で 地 価 、株 価 は 上 昇 を 続 け 、日 本 は バ ブ ル 経 済 に 突 入 し 、80 年 代 後 半 に
25
は日本の証券市場は現物、先物、オプション取引を完備する市場となった。
バ ブ ル 崩 壊 後 の 1991 年 に な る と 、 大 手 証 券 が バ ブ ル 期 に 損 失 補 填 な ど を 行
っていたという証券不祥事が発覚する。これを受けて証券取引法に損失補填の
禁 止 事 項 が 追 加 さ れ る と 同 時 に 1992 年 に 証 券 取 引 等 監 視 委 員 会 が 創 設 さ れ た 。
30
(2) 金 融 ビッグバン~金 融 商 品 取 引 法
11
バ ブ ル 崩 壊 後 金 融 機 関 が 不 良 債 権 問 題 に 追 わ れ る と 、金 融 の 空 洞 化 が 進 ん だ 。
こ れ を 受 け 、1996 年 橋 本 内 閣 が 金 融 ビ ッ グ バ ン と い わ れ る 金 融 制 度 改 革 を 行 う 。
金 融 ビ ッ グ バ ン は 「 フ リ ー 」「 フ ェ ア 」「 グ ロ ー バ ル 」 と い う 3 つ の キ ー ワ ー
ドを掲げ、東京市場をニューヨーク、ロンドンのような国際市場にすることを
5
目標とした。この間に行われた取り組みとしては、外為法の改正による外国為
替業務の自由化、銀証相互参入の解禁、株式売買委託手数料の自由化、証券業
の登録制への移行、取引所集中義務の撤廃など自由競争を促成し取引を公正化
するようなものが中心だった。
また、金融ビッグバン構想提起と同時期に金融危機が発生し、北海道拓殖銀
10
行 や 四 大 証 券 の 1 つ で あ っ た 山 一 證 券 が 破 綻 し 、金 融 機 関 の 不 倒 神 話 は 崩 壊 し
た。これを契機に大手金融機関は三菱東京フィナンシャルグループ、三井住友
フ ィ ナ ン シ ャ ル グ ル ー プ 、み ず ほ フ ィ ナ ン シ ャ ル グ ル ー プ 、UFJ ホ ー ル デ ィ ン
グスの四大金融グループへ集約され、現在と近い形態になる。
1990 年 代 後 半 に な る と イ ン タ ー ネ ッ ト の 爆 発 的 な 普 及 と 1999 年 の 株 式 売 買
15
委託手数料の自由化に着目した松井証券を筆頭に、ネット証券などの新たな業
者が参入した。
2001 年 に 小 泉 政 権 が 作 成 し た 骨 太 の 方 針 で は「 貯 蓄 か ら 投 資 へ 」の ス ロ ー ガ
ンの下、証券市場を金融システムの中心に据え、幅広い投資家の参加する厚 み
のある市場作りを目指した改革が行われた。具体的には銀証共同店舗の解禁、
20
証券仲介業制度の導入、ラップ口座の解禁、情報開示の徹底、監査法人に対す
る監督強化などが提起された。こうした改革に伴い家計の金融資産の構成比の
う ち リ ス ク 資 産 保 有 の 割 合 が 増 加 し た た め 、 投 資 家 保 護 の た め に 2006 年 証 券
取引法が改正され金融商品取引法が施行された。
25
(3)金 融 商 品 取 引 法 ~現 在
2007 年 ご ろ か ら ア メ リ カ の 政 策 金 利 の 上 昇 と 同 時 に 米 住 宅 価 格 が 下 落 し 始
め、アメリカの非富裕層のサブプライムローン返済不良が表面化すると、関連
金融商品を取り扱っていた欧米金融機関で流動性危機が生じた。これはリーマ
ン・ブラザーズの倒産という形になって世界経済を同時不況に陥らせた。日本
30
の金融機関は欧米と比較すると損失は少なかったものの株価は暴落を繰り返し、
12
2012 年 ま で 低 迷 を 続 け た 。そ の 後 2013 年 に 始 ま っ た 安 倍 政 権 の「 ア ベ ノ ミ ク
ス」によりインフレ期待が高まると株価は大幅に上昇し始め現在に至る。
取 引 所 に 焦 点 を 当 て る と 、2013 年 、日 本 市 場 は 国 際 競 争 力 の 向 上 と シ ス テ ム
コストの削減を目指して、東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合し日本
5
取引所グループが発足した。
2014 年 に は 少 額 投 資 非 課 税 口 座 (NISA)制 度 が 開 始 さ れ 投 資 家 の 裾 野 を 広 げ
る試みが行われ始めた。
2-2 株 式 市 場 の現 状
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(1)株 式 の流 通 市 場 の現 状
図 表 2-1 は 、 東 証 一 部 の 1 日 平 均 売 買 代 金 の 推 移 を 示 し て い る 。 こ の 売 買 代
金とは、株式市場での取引が成立した金額のことである。この値が高いほど株
式市場は活況しており、低いほど市場が閑散としていることを示す指標で、東
証では 2 兆円を超えていると活況とされる。
15
東 証 一 部 の 1 日 平 均 売 買 代 金 は 、2003 年 か ら 2007 年 ま で 上 昇 傾 向 に あ っ た
が 、2008 年 か ら 減 少 傾 向 に 一 転 し て い る 。こ れ は 2008 年 9 月 に 起 こ っ た リ ー
マンショックの影響で、投資家がリスク回避的な行動を取った結果、株式売買
が 落 ち 込 ん だ の だ と 予 想 さ れ る 。そ の 後 、2012 年 ま で 売 買 代 金 は 低 迷 し た ま ま
だ っ た が 、 2013 年 か ら ア ベ ノ ミ ク ス の 影 響 で 回 復 の 兆 し が 見 ら れ る 。 2014 現
20
在、アベノミクス効果も落ち着き昨年より売買代金は減少しているものの、ニ
ュ ー ヨ ー ク証 券 取 引所 、ナ ス ダ ックに 続 き 、世 界 第 3 位 と 高 い 水 準 が保た れ て
いる。
図 表 2-1
東証一部 1 日売買代金の推移
4,500,000
4,000,000
3,500,000
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
0
(百万)
13
(東 京 証 券 取 引 所 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
(2)株 式 の発 行 市 場
以 前 は 新 規 株 式 公 開 (IPO)が 、 上 場 直 後 は 大 き な 注 目 を 集 め る が 、 そ の 後 は
投資家の興味が閑散化するためにアナリストカバレッジから外れるなど、投資
5
家への情報提供が少なくなることが問題視されていた。しかし現在は、新興企
業 の IR・デ ィ ス ク ロ ー ジ ャ ー 意 識 の 高 ま り な ど に よ り そ の 問 題 は 改 善 さ れ て い
る。
図 表 2-2 は 2006 年 か ら 2013 年 ま で の IPO 件 数 の 推 移 を 表 し て い る 。 2006
年 に 200 社 に 近 い IPO 件 数 を 記 録 し た が 、 2007 年 に は 121 社 と 大 幅 な 減 少 が
10
見られる。この背景には、新興市場の株価下落や上場審査がより厳重になった
こ と な ど が あ る 。 ま た 、 翌 年 の 2008 年 に は リ ー マ ン シ ョ ッ ク が 起 こ り 、 そ の
影 響 を 受 け た 2009 年 の IPO 件 数 は 19 件 と 、こ こ 10 年 で 最 低 の 水 準 に ま で 減
少 し た 。し か し 、そ れ 以 降 、IPO 件 数 は 右 肩 上 が り で 増 加 し て お り 、2013 年 は
2007 年 の 上 場 基 準 変 更 後 で は 、最 高 の 件 数 と な っ て い る 。ま た 、2014 年 は 70
15
件 以 上 の IPO が 予 想 さ れ て い る 。
図 表 2-2
IPO 件 数 の 推 移
200
150
100
188
121
50
49
0
19
22
36
48
58
2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
(各 種 資 料 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
株 式 に よ る 資 金 調 達 額 は 2009 年 に リ ー マ ン シ ョ ッ ク か ら の 立 て 直 し の た め
20
に 大 幅 に 増 加 し た が 、2011 年 か ら は 落 ち 着 い て い る (図 表 2-3)。ま た 、2009 年
から公募増資による資金調達額が大幅に減少していることに関しては、図表
2-4 か ら 読 み 取 れ る 通 り 、1 社 当 た り の 資 金 調 達 額 が 減 少 し た の が 原 因 で あ り 、
公募増資件数自体には余り減少は見られない。
14
図 表 2-3
株式による資金調達額の推移
(日 本 証 券 業 協 会 「 FACT BOOK 2013」 p19 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
図 表 2-4
公募増資件数と一社当たり調達額の推移
60
件
億円
52
46
50
10000
7997
44
40
38
38
8000
6000
30
10
4000
15
20
104
388
2007年
2008年
1150
343
175
0
2000
0
5
2009年
件数
2010年
2011年
調達金額
2012年
(資 本 市 場 研 究 所 き ず な 「 復 活 す る 発 行 市 場 」 p4 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
2-3 債 券 市 場 の現 状
(1)債 券 の発 行 市 場
10
2013 年 の 公 社 債 発 行 額 は 210 兆 円 で 、そ の う ち の 86% に 当 た る 181 兆 円 が
国 債 で あ る (図 表 2-5)。 株 式 市 場 と 同 様 、 2008 年 の リ ー マ ン シ ョ ッ ク に よ る 景
気の悪化に伴う財政悪化により、これ以降国債を中心とした公社債の発行額は
増加傾向を示している。
15
図 表 2-5
公社債発行額の推移
(兆 円 )
250
(件 )
2500
200
2000
150
1500
100
1000
50
500
0
0
2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
金額
銘柄数
(日 本 証 券 業 協 会 「 公 社 債 発 行 額 ・ 償 還 額 」 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
(2)債 券 の流 通 市 場
5
公 社 債 の 売 買 規 模 は 、2012 年 の 時 点 で 、店 頭 取 引 の 比 率 が 100% で あ り 、取
引 所 取 引 は ほ ぼ 皆 無 で あ る 3 。債 券 は 数 万 に 及 ぶ 種 類 が あ り 、取 引 の 形 が 定 型 化
されている取引所では扱いきれない。故に、相対売買で、価格や銘柄の組み合
わせなどを当事者間で自由に設定することが出来る店頭取引が主流になってい
るのである。店頭取引での債券価格の設定には、主に上場価格や日本証券業協
10
会が公表している売買参考統計値などが用いられる。売買参考統計値とは、各
証券会社に債券価格の気配値の報告を任意で求め、その情報を日本証券業協会
がまとめた上、公表しているものである。しかし、現状として、その気配値を
真 面 目 に 報告 し て いる の は 、大 和 証券 、み ず ほ証 券 な ど の 5 社 の み で ある 。更
に最大手であるはずの野村證券が報告をしていない現状があり、この気配値を
15
実 勢 価 格 と 乖 離 し て い る と 見 る 投 資 家 が 少 な く な い と い う 実 態 が あ る 。そ し て 、
このように価格が不透明であることにより、債券市場の流動性は低くなってし
まっていると考えられる。それ故、債券の途中換金がしづらく、日本の債券市
場の主要な投資家は満期保有目的中心の低リスク運用を特徴とした 保険や銀行
といった機関投資家となっている。
20
投 資 家 層 の 薄 さ は 、ハ イ・イ ー ル ド 債 の 発 行 に も 影 響 を 及 ぼ し て い る 。ハ イ ・
3
図 説 日 本 の 証 券 市 場 20 14 年 よ り
16
イールド債は高利回りであるが、デフォル トリスクが高いという欠点が存在す
る。アメリカの場合、リスクを積極的に取る投資家が多く存在するため、デフ
ォ ル ト リ ス ク が あ る ハ イ・イ ー ル ド 債 の 需 要 も 大 き く な っ て お り 、全 体 の 20%
を 占 め る ほ ど 受 け 入 れ ら れ て い る 4。
5
しかし、日本には上記した通り、リスク回避的な資産運用をする投資家が多
い 。 故 に 高 格 付 け 社 債 の 発 行 が 多 く を 占 め 、 BB 格 以 下 の 低 格 付 け 債 の 発 行 は
ほ と ん ど 行 わ れ て い な い の で あ る (図 表 2-6)。
図 表 2-6
10
日本の格付別発行推移
(野 村 資 本 市 場 研 究 所 「 社 債 市 場 活 性 化 へ の 5 つ の 提 言 」 p5 よ り 引 用 )
2-4 投 資 信 託 の現 状
日本の投資信託の純資産残高は、バブル崩壊後の証券市場の低迷等により、
2002 年 に は 36 兆 160 億 円 に ま で 下 落 し た (図 表 2-7)。 し か し そ の 後 、 投 資 信
15
託 の 商 品 多 様 化 (会 社 型 、 私 募 、 J-REIT、 ETF 等 )、 投 資 信 託 委 託 業 者 の 拡 大 、
販 売 チ ャ ネ ル の 多 様 化 等 に よ り 、2005 年 以 降 、投 資 信 託 残 高 は 急 速 に 回 復 し て
い っ た の で あ る 。2008 年 、リ ー マ ン シ ョ ッ ク の 影 響 に よ る 株 式 市 場 の 低 迷 で 残
高 は 大 幅 に 減 少 し た 。そ の 後 は 数 年 間 横 ば い で あ っ た が 、2013 年 か ら ア ベ ノ ミ
ク ス の 影 響 に よ り 急 成 長 し 、現 在 は 2007 年 の 残 高 を 上 回 る 数 字 を 出 し て い る 。
20
し か し 、 日 本 の 投 資 信 託 残 高 を ア メ リ カ と 比 較 す る と 2014 年 3 月 末 の 時 点
で ア メ リ カ は 15 兆 2310 億 ド ル で あ る の に 対 し 、 日 本 は 7760 億 ド ル で あ り 、
ア メ リ カ の 約 1/19 程 度 の 規 模 で し か な い 5 。
4 野 村 資 本 市 場 研 究 所「 米 国 の 社 債 市 場 の 検 証 と わ が 国 社 債 市 場 を 取 り 巻 く 環 境 変 化 に つ い て 」よ り
5投 資 信 託 協 会 「 投 資 信 託 の 世 界 統 計 」 よ り
17
図 表 2-7
日本の投資信託の純資産残高推移
(野 村 資 本 市 場 研 究 所 「 日 本 の 投 資 信 託 の 純 資 産 残 高 推 移 」 p258 よ り 引 用 )
2013 年 9 月 末 の 公 募 投 資 信 託 の 販 売 チ ャ ネ ル 別 の 残 高 の 内 訳 は 、公 募 投 信 全
5
体 で 見 る と 、 証 券 会 社 は 64.6% 、 銀 行 等 は 34.7% 、 直 販 は 0.7% と な っ て い る
(図 表 2-8)。 1998 年 に 銀 行 窓 販 が 解 禁 さ れ て 以 降 、 銀 行 の シ ェ ア が 上 昇 し て お
り 、現 在 で も 30% 台 を 維 持 し て い る 。こ の こ と か ら 投 資 信 託 を 購 入 す る 際 、商
品に深い理解があると考えられる証券会社より、身近な金融機関である銀行を
好む投資家も多いと言える。
10
図 表 2-8
公募投信全体の販売チャネル別残高構成の変化
(日 本 証 券 経 済 研 究 所 「 図 説 日 本 の 証 券 市 場 2014 年 」 p237 よ り 引 用 )
図 表 2-9 の 通 り 、 日 本 の 投 資 信 託 の 保 有 者 の 構 成 は 、 家 計 (個 人 )が 6 割 、 保
険 ・年 金 、金 融法 人 等 が 4 割 と な って い る 。個 人保 有 が 中心 で あ るが 、日 本 証
15
券 業 協 会 の 調 査 に よ る と 、60 歳 以 上 の 保 有 率 は 90 歳 以 上 を 除 き 全 て 10% を 越
え て い る の に 対 し 、20 代 の 保 有 率 は 0~3% と な っ て お り 、若 者 の 保 有 率 の 低 さ
が際立つ結果となっている。
18
図 表 2-9
投資信託の主体別・年齢別保有者構成
(日 本 証 券 経 済 研 究 所 「 図 説 日 本 の 証 券 市 場 2014」 p241 よ り 引 用 )
5
第 3 章 証 券 市 場 に影 響 を与 える要 因 分 析
前章では、日本の証券市場の現状について述べた。本章では、証券市場に影
響を与える要因を分析することで日本の証券市場が抱える潜在的な問題点を 明
らかにする。
10
3-1 家 計 の金 融 資 産 構 成
証券市場の役割とは、資金余剰主体から資金不足主体への資金移転を促すこ
と で あ っ た 。 主 体 別 の 金 融 資 産 ・ 負 債 の 合 計 額 を 見 る と 、 家 計 が 1645 兆 円 も
の 金 融 資 産 を 抱 え て い る こ と が 分 か る( 図 表 3-1)。つ ま り 、日 本 の 金 融 市 場 に
おいて家計は資金の最大の貸し手であり、家計の金融資産構成のあり方が日本
15
の金融市場のあり方に大きな影響を与える と考えられる。
図 表 3-1
部 門 別 の 金 融 資 産 ・ 負 債 残 高 (2014 年 6 月 末 、 兆 円 )
非金融法人企業
一般政府
家計
海外
資産
943
537
1645
504
負債
1302
1177
355
826
差額
▲ 359
▲ 640
+1290
▲ 322
(日 本 銀 行 「 資 金 循 環 統 計 」 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
19
は じ め に 、日 本 の 家 計 の 金 融 資 産 構 成 の 現 状 に つ い て 整 理 す る 。図 表 3-2 は 、
2014 年 6 月 末 時 点 の 日 本 の 家 計 の 金 融 資 産 構 成 で あ る 。一 番 大 き い の は 現 金 預
金 で 53.1% と 全 体 の 半 分 以 上 を 占 め る 。次 い で 保 険・年 金 が 26.8% で あ り 、日
本 の 家 計 は 金 融 資 産 全 体 の 80% 近 く を リ ス ク の 少 な い 資 産 で 運 用 し て い る こ
5
と が 分 か る 。そ の 他 の 項 目 を 除 い た 残 り の 約 15% は リ ス ク 性 の 資 産 で 運 用 し て
お り 、 そ の 内 訳 は 株 式 が 9.1% 、 投 資 信 託 が 5% 、 債 券 が 1.8% で あ る 。 こ の よ
うに、日本の家計はリスクマネーの供給者として十分に機能していないといえ
る。
図 表 3-2
日 本 の 家 計 の 資 産 構 成 (2014 年 6 月 末 時 点 )
2%
5%
現金預金
4%
保険年金
9%
株式・出資金
53%
27%
投資信託
債券
その他
10
(日 本 銀 行 「 資 金 循 環 統 計 」 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
続 い て 、家 計 の 金 融 資 産 構 成 を ア メ リ カ・欧 州 と の 比 較 で 見 て い く( 図 表 3-3)。
現金預金の比率はやはり日本が突出して高く、日本 の家計のリスク回避的な姿
が う か が え る 。保 険 ・ 年 金 に つ い て は 、日 米 欧 そ れ ぞ れ 、 27% 、 32% 、 32% と
15
構成比に大きな違いはない。しかし、 日本では確定給付型企業年金や貯蓄性保
険などの低リスクの資産が多くを占めているのに対し、米欧では確定拠出年金
を通して投資信託を保有するなどリスク性の 資産で運用している。つまり、年
金・保険と一括りにした構成比としては小さな違いであるが、その実態は大き
く異なっていると考えられる。
20
リ ス ク 性 の 資 産 で あ る 株 式・債 権・投 資 信 託 を み る と 、ア メ リ カ が 52% と 非
常に高い。実に金融資産の半分以上をリスク性の資産で保有していることにな
る 。 次 い で 大 き い の が 欧 州 で 29% 、 日 本 は 15% で 最 低 の 比 率 で あ る 。 他 の 国
との比較においても日本の家計はリスク回避的で、リスクマネーの供給者とし
て十分に機能しているとは言えない。
20
図 表 3-3
日 米 欧 の 家 計 の 資 産 構 成 ( 2014 年 6 月 末 )
100%
4%
3%
3%
80%
27%
32%
32%
60%
2%
9%
5%
34%
40%
53%
20%
13%
5%
13%
0%
現金預金
日本
債券
投資信託
アメリカ
株式・出資金
18%
7%
6%
35%
欧州
保険年金 その他
(日 本 銀 行 「 資 金 循 環 統 計 」 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
では、なぜ日本の家計はリスク性の金融資産を保有しようとしないのだろう
5
か。家計へのアンケート調査をもとに検証したい。まず、最も重大な要因とし
て 、金 融 資 産 を 保 有 す る 際 に そ も そ も 収 益 性 を 重 視 し て い る 層 が 14.7% し か い
な い こ と が 挙 げ ら れ る( 図 表 3-4)。つ ま り 、日 本 の 家 計 に と っ て 安 全 性 や 流 動
性が非常に高い現金・預金が最適な運用方法となるのだ。それに加えて、元本
割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる金融商品の保有につ
10
いてのアンケートにおいても、保有したいとは全く思わないとする層が最も 多
く 、80% を 超 え て い る 6 。し か し 、そ の 一 方 で 、多 く の 家 計 が 老 後 の 生 活 に 不 安
を持っており、現在は資産運用の必要性を感じやすい環境になっていると 言え
る ( 図 表 3-5)。
図 表 3-4
「金融資産を保有する際に重視すること」についてのアンケート
15
6
金 融 広 報 中 央 委 員 会 「 家 計 の 金 融 行 動 に 関 す る 世 論 調 査 [ 二 人 以 上 世 帯 調 査 ] 平 成 25 年 」 よ り
21
図 表 3-5
「老後に心配している理由」についてのアンケート
(%)
( 図 表 3-4/3-5 金 融 広 報 中 央 委 員 会「 家 計 の 金 融 行 動 に 関 す る 世 論 調 査[ 二 人
以 上 世 帯 調 査 ] 平 成 25 年 調 査 結 果 」 よ り 引 用 )
5
それでは反対に、現在リスク性資産を受け入れているのはどのような人々な
のだろうか。 2 つの注目すべき要素について説明する。
1 点目は金融リテラシーである。内閣府の調査では、金融リテラシーが高い
ほ ど リ ス ク 資 産 投 資 割 合 が 高 い と い う 調 査 結 果 が 出 て い る ( 図 表 3-6)。 だ が 、
これについては家計がリスク性資産に投資をすることによって金融リテラシー
10
が身に付いたという可能性も十分に考えられる。あるいは、リスク 性資産に投
資をするためという積極的な理由で金融リテラシーを身に着けたと考えるのが
自然だろう。つまり、投資に消極的な日本の大多数の国民に対して投資教育を
義務付け金融リテラシーを向上させても、実際に「貯蓄から投資へ」が促進さ
れるかは疑問である。投資教育は自身の余裕資金額や最適なポートフォリオを
15
理解することには役立つが、日本人に染みついた投資のイメージを打ち消すに
は 十 分 で ない と 我 々は 考 え てい る 。ま た 、第 4 章 で 詳 しく 述 べ るが 、投資 教 育
を受けたい人に対しては各証券関係者がセミナーなど様々な取り組みを行って
おり、投資教育の場は整っている。
2 点目は金融資産額である。一般的に、保有金融資産が多ければ、それだけ
20
リスク資産に振り向けられる余裕資金も出てくると考えられる。実際にこちら
も内閣府の調査で、金融資産が多いほど危険回避度が低くリスク性資産への投
資 割 合 が 高 い と い う 結 果 が 出 て い る (図 表 3-7)。 ま た 、 日 本 に お い て は 60 代 以
上 の 高 齢 者 に 金 融 資 産 が 偏 っ て お り 、家 計 の 保 有 す る 金 融 資 産 全 体 の 60% 、有
22
価 証 券 に 限 る と 70% を 高 齢 者 が 保 有 し て い る (図 表 3-8)。そ れ に 対 し て 、20 代
で は 金 融 資 産 を 持 た な い 人 が 全 体 の 半 数 を 超 え る 7 と い う 。そ れ ゆ え 、投 資 家 層
の拡大を狙うためには、金融資産の若年層への移転策を考える必要があるだろ
う。
5
図 表 3-6
金融リテラシーとリスク資産投資
図 表 3-7
資産階級別リスク回避度
( 図 表 3-6/3-7
7
内 閣 府 「 年 次 経 済 財 政 報 告 」 p149,p150 よ り 引 用 )
金 融 広 報 中 央 委 員 会 の 「 家 計 の 金 融 行 動 に 関 す る 世 論 調 査 ( 単 身 世 帯 調 査 ) 平 成 25 年 」 よ り
23
図 表 3-8
年代別金融資産残高と金融資産の年代別分布
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
26%
32%
60 ~ 69
28%
35%
3%
50 ~ 59
40 ~ 49
21%
14%
8%
70 歳 以 上
1%
貯蓄現在高
18%
10%
4%
30 ~ 39
30 歳 未 満
有価証券
(総 務 省 「 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 」 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
3-2 企 業 の資 金 調 達 方 法
5
3-1 で は 、 日 本 の 家 計 は リ ス ク 回 避 的 で 、 リ ス ク マ ネ ー の 供 給 者 と し て 十 分
に機能していないことを示した。以下では、このことが企業の資金調達方法に
どのような影響を与えているのかについて述べる。
図 表 3-9 は 、 日 米 欧 の 企 業 の 金 融 負 債 残 高 の 構 成 比 で あ る 。 こ れ は 企 業 が ど
10
のように資金調達をしているのかを示している。まず、銀行借り入れでは、ア
メ リ カ が 6.3% で 一 番 低 く 、 欧 州 が 29.6% で 一 番 高 い 。日 本 は こ の 間 の 26.2%
である。日本は国際的にみて銀行借り入れが多いとしばしば言われるが、実際
には欧州の方が比率が高いことがうかがえる。株式・出資金の割合 は、日本が
少 し 低 い も の の 、い ず れ の 国 に お い て も 50% 程 度 を 占 め て い る 。最 後 に 、債 券
15
の 割 合 は ア メ リ カ が 13% と 高 く 、 日 本 は 4.9% 、 欧 州 は 3.9% と 最 低 の 比 率 と
なっている。
また、株式・出資金と債券を合計した直接金融の割合を比較すると、アメリ
カ が 70.7% と 最 も 高 く 、 欧 州 が 57.4% で そ れ に 続 く 。 そ し て 日 本 が 52.1% で
最低の水準となっている。この順番は、家計の資産構成におけるリスク資産の
20
保有割合と同様であり、やはり、家計の資産構成が企業の資金調達方法に影響
を及ぼしていると判断される。
24
図 表 3-9
日米欧の企業の金融負債残高の構成比
(日 本 銀 行 「 資 金 循 環 統 計 」 よ り 引 用 )
次 に 、 資 本 金 規 模 別 に 日 本 の 企 業 の 資 金 調 達 方 法 を 見 て い く 。 図 表 3-10 を
5
見ると企業の資金調達方法は大きく 3 つの段階に分類できると考えられる。
1 つ 目 の 段 階 は 資 本 金 10 億 円 以 上 の 大 企 業 で あ る 。大 企 業 は 、例 外 は あ る が
基本的に選択可能な資金調達方法に限りがない。つまり、内部留保、銀行借り
入れ、社債発行、株式上場/公募増資いずれも可能である。この層の特徴は、
資本金・資本剰余金の割合が高く、社債による資金調達も見られるということ
10
である。
2 つ 目 の 段 階 は 資 本 金 10 億 円 未 満 1 億 円 以 上 の 中 堅 企 業 で あ る 。中 堅 企 業 の
特 徴 は 、企 業 間 信 用 の 割 合 が 20% 近 く あ る と い う こ と で あ る 。中 堅 企 業 に も な
ると、企業のサプライチェーンにおいて重要な位置を占めるようになる。した
がって、取引先企業からの企業間信用を受けられる状況になるのだと考えられ
15
る 。 し か し 、 中 堅 企 業 を 含 む 資 本 金 10 億 円 未 満 の 企 業 は 、 資 本 金 ・ 資 本 剰 余
金 の 割 合 が 10% 程 度 と な っ て し ま っ て い る た め 、そ れ が 企 業 の リ ス ク テ イ ク を
阻む要因になりかねないであろう。
3 つ 目 の 段 階 は 資 本 金 1 億 円 未 満 の 中 小 企 業 で あ る 。中 小 企 業 の 特 徴 は 、30%
以 上 を 銀 行 か ら の 借 入 金 に 依 存 し て い る と い う こ と で あ る 。資 本 金 1 千 万 以 下
20
の 企 業 に 限 る と 、 60% 近 く が 借 入 金 と な っ て い る 。
以上のことから、大企業に関しては、幅広いファ イナンスの選択肢が与えら
れているが、それより小規模な企業は資金調達に窮する場面もあると考えられ
る。こうした弊害は、せっかくの成長機会を活かせず、企業の成長にもブレー
25
キをかけかねないだろう。今後は、特に払込資本の充実を図りリスクテイク能
力を向上させる必要がある。
図 表 3-10
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
日本企業の負債・資本構成(資本金規模別)
中
小
企
業
中堅企業
32%
41%
1%
59%
1%
1%
8%
5%
11%
12%
24%
23%
18%
6%
9%
1%
15%
3%
5%
4%
16%
14%
26%
26%
28%
7%
8%
9%
11%
資本金・資本剰余金
5千万未満1千万以上 1億円未満5千万以上 10億円未満1億円以上
その他資本
5
14%
21%
20%
1千万以下
大企業
その他負債
引当金
支払手形、買掛金
23%
10億円以上
社債
借入金
(財 務 省 「 法 人 企 業 統 計 年 報 」 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
3-3 証 券 投 資 の収 益 性
投 資 家 が 証 券 投 資 を す る 目 的 は 、 多 く の 場 合 、 資 産 の 増 大 で あ ろ う 。 3-3 で
は 、 (1)株 式 市 場 の 収 益 性 、 (2)金 融 商 品 取 扱 業 者 の 現 状 、 (3)税 制 に 着 目 し 、 日
本の証券市場は投資家が期待する収益を上げられているのかについて検証した
10
い。
(1)株 式 市 場 の収 益 性
日本の企業は顧客の評価に非常に敏感であり、製品・サービスの 品質改善に
弛まぬ努力をしてきた。一方で、株主の評価には耳を傾けてきただろうか。
15
日本では、古くから銀行借入が資金調達手段の中心であり、株主との対話を
通じ、その要望に応えるインセンティブ が弱かった。そのため、株主が投資を
する際に期待する収益率である資本コストを達成しようという意識が希薄であ
っ た 。 そ の 結 果 と し て 、 日 本 の 企 業 の ROE は 、 世 界 的 に み て も 低 い 水 準 と な
っ て お り 、 株 主 資 本 を 効 率 的 に 活 用 し て い る と は 言 え な い (図 表 3-11)。 中 長 期
20
的 に ROE が 資 本 コ ス ト を 上 回 る 企 業 こ そ が 価 値 創 造 企 業 で あ り 、 投 資 家 に と
っても投資に値する企業であるということを踏まえれば日本の企業は中長期的
26
な投資に向いているとは言えない。また、新たな投資機会の利益率が、資本コ
ス ト を 上 回 る こ と が で き な い の で あ れ ば 、内 部 留 保 は 配 当 に 回 す べ き で あ る し 、
利益率の低い事業からはいくら思い入れがあっても撤退をしなければならない。
では、日本の企業に求められている資本コストと実際に日本企業が 出してい
5
る ROE に は ど れ ほ ど の 乖 離 が あ る の だ ろ う か 。国 内 外 の 機 関 投 資 家 99 社 に 対
す る 資 本 コ ス ト に つ い て の ア ン ケ ー ト 8 に よ る と 、ば ら つ き は あ る も の の 、概 ね
8% が 多 く の 投 資 家 の 期 待 を 満 た す こ と の で き る 水 準 で あ る 。 一 方 で 日 本 の 企
業 の ROE は 平 均 で 5.3% で あ り 、や は り 資 本 コ ス ト を 大 き く 下 回 っ て い る の が
現状である。
10
中期経営計画に対する認識でも投資家と企業の間にギャップが広がっている。
投 資 家 は 中 期 経 営 計 画 に お い て 、ROE や 配 当 性 向 、総 還 元 性 向 と い っ た 株 主 利
益に関わりのある情報を求めているのに対し、企業側は、それらの情報公開に
積 極 的 で な い (図 表 3-12)。 ま た 、 た と え 企 業 が 目 標 と し て ROE を 提 示 し て い
て も 、 そ の 目 標 達 成 率 が 低 い と い う 指 摘 も あ る よ う だ 9。
15
図 表 3-11
各 国 の 平 均 ROE
平 均 ROE
日本
アメリカ
欧州
5.3%
22.6%
15.0%
(み さ き 投 資 株 式 会 社 分 析 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
図 表 3-12
中期経営計画での公表が望ましい数値目標
(生 命 保 険 協 会 「 株 式 価 値 向 上 に 向 け た 取 り 組 み に つ い て 」 p2 よ り 引 用 )
柳 良 平 「 E q ui t y Sp r ead の 開 示 と 対 話 の 提 言 」 よ り
「持 続 的 成 長 へ の 競 争 力 と イ ン セ ン テ ィ ブ ~ 企 業 と 投 資 家 の 望 ま し い 関 係 構 築 ~ 」プ ロ ジ ェ ク ト
「最 終 報 告 書 」 よ り
8
9
27
こ れ ら の こ と か ら 、日 本 の 株 式 市 場 は 中 長 期 的 な 投 資 に 適 し た 市 場 で は な く 、
短期的な相場変動で利ザヤを獲得する取引 に適した市場となってしまっている
と考えられる。この状況では、情報劣位にあり投機的な取引に向かない個人投
資家の更なる証券市場への参入は難しい と判断される。
5
(2) 金 融 商 品 ・サービス提 供 の現 状
金融商品取扱業者の販売員の助言は、個人投資家が投資判断をするのに大変
重宝されているだろう。しかし、その一方で、売買手数料が金融商品取扱業者
の主な収入源であることから、販売員には顧客の利益に反した短期的な売買を
10
勧める誘因も働く。このような金融商品取扱業者の功罪について確認し、金融
商品取扱業者が投資家の中長期的な利益の増大に寄与しているか考察する。
個人投資家へのアンケートによると 、関心を持った銘柄のさらに詳しい情報
を得るために活用する情報源として、販売員の助言やアナリス トレポートが一
定 の 支 持 を 集 め て お り 、活 用 し て い る 人 が 30% に 上 る 1 0 。 し か し 、 こ れ は 販 売
15
員 の 助 言 を 70% の 人 が あ ま り 参 考 に し て い な い と い う こ と で も あ る 。活 用 し て
い る 人 が 、こ の 数 字 に 留 ま っ て い る 要 因 と し て 考 え ら れ る の が 、各 証 券 会 社 が 、
長らく営業ノルマを販売員に課してきた経緯があり、必要以上に金融商品の乗
り換えを勧めるという営業手法を取ってきたからであろう。また、それに加え
て、販売員の知識が不足しており投資家に有益な助言ができていないという例
20
もある。例えば比較的販売経験の少ない銀行の投信販売員は、おすすめの商品
を紹介することは出来ても顧客のライフプランにあった投信の積み立て方まで
は助言できないことがある。このように販売員の能力が欠如しており、役割を
果たせていない例も存在する。
以上のことから、金融商品取扱業者は投資家の中長期的な利益の増大に寄与
25
しているとは言えない。しかし、金融商品取扱業者は信用が命であり、かつ競
争が激しい業界である。顧客にバリューを提供できなければ、売買手数料の低
いネット証券への移行を食い止められないだろう。
そうした中で、営業ノルマの廃止に踏み切る企業や、運用成績に応じた手数
料徴収方式を適用した商品の拡大が見られるなど、信用の再獲得に向けた動き
10
野 村 イ ン ベ ス タ ー リ レ ー シ ョ ン ズ 「 個 人 投 資 家 モ ニ タ ー ア ン ケ ー ト 調 査 2 012 年 7 月 」 よ り
28
が始まっている。
(3)税 制
証券市場の収益性という観点から見た場合、税はコストを構成するものの 1
5
つである。日本の証券市場は、世界的にみて 税制面からのアプローチが不十分
で あ り 工 夫 の 余 地 が あ る よ う に 思 う 。 (3)で は 、 そ の 点 に つ い て 述 べ て い く 。
図 表 3-13 は 日 本 の 金 融 所 得 に 係 る 税 の 税 率 一 覧 で あ る 。 こ れ を 見 る と 分 か
る 通 り 、税 率 は 原 則 一 律 20% で 非 常 に 簡 素 な 税 制 と な っ て い る 。ま た こ こ に 挙
げ た 金 融 所 得 の 中 に 限 り 、3 年 間 は 損 益 通 算 も 可 能 で あ る (公 社 債 の 売 却 益・ 利
10
子 は 2016 年 よ り 可 、 預 金 の 利 子 は 除 く )。
図 表 3-13
日本の金融所得に係る税
税目
利子
配当
キャピタル・ゲイン
税率
20%
20%
20%
徴 収 形 態 (原 則 )
源泉分離課税
総合課税
申告分離課税
(財 務 省 HP を 参 考 に 筆 者 作 成 )
次に海外の税制を見てみよう。日本と異なる特徴は大きく 3 点ある。
1 点目は、所得に応じて税率が異なるという点だ。イギリスのキャピタル・
15
ゲイン課税を例にとると、給与所得、利子所得、配当所得、キャピタル・ゲイ
ン の 順 に 所 得 を 積 み 上 げ て 、 キ ャ ピ タ ル ・ ゲ イ ン の う ち 、 34,370 ポ ン ド 1 1 以 下
の 部 分 に は 18% の 税 率 が 適 用 さ れ 、 そ れ 以 上 の 部 分 に は 28% の 税 率 が 適 用 さ
れる。すなわち、低所得者の税負担が軽くなるようになっている(高所得者の
税 負 担 を 重 く し て い る )。ま た 、イ ギ リ ス で は 企 業 の 創 業 者 の 自 社 株 式 譲 渡 に 係
20
る 税 率 を 10% に し 、IPO を 促 す 工 夫 を し て い る 。2 点 目 は 、保 有 期 間 に よ っ て 、
税 率 に 差 を 設 け て い る と い う 点 で あ る 。ア メ リ カ で は 1 年 以 上 保 有 の 場 合 を 長
期キャピタル・ゲインとし、段階的な課税をしているのに対し、 1 年以下保有
の場合は短期キャピタル・ゲインに分類され 、総合課税として他の所得と合算
で課税が行われる。つまり、長期投資を税制面で優遇しているのである。 3 点
25
目の特徴は、キャピタル・ロスの損益通算の範囲である。先述の通り、日本の
場合は金融所得内でのみ損益通算が可能である。この範囲が最も広いアメリカ
11
201 4 年 1 0 月 4 日 の レ ー ト で 6 00 万 円
29
の 場 合 、 労 働 所 得 か ら も 年 間 3000 ド ル の キ ャ ピ タ ル ・ ロ ス を 無 期 限 に 控 除 す
ることが出来る。
このように海外では税制が整備されており、また労働所得と資本所得の区別
が日本ほど厳しくない。この違いの原因は 、海外では労働も投資もお金を稼ぐ
5
手段には変わりないという考えが根付いているからではないだろうか。日本人
には、労働所得は綺麗なものであり資本所得はギャンブルで得たお金 であるか
のように区別して考える癖があるように感じ る。その日本人に染みついた考え
方が日本の家計の「貯蓄から投資へ」を阻害している要因の一 つであろう。
10
以上で見てきたように、日本の証券市場は安定した収益を見込める期待が低
く、中長期の投資に向いた市場でない。また、改善の兆しは見られるものの金
融商品取扱業者は短期売買の傾向を後押ししており、税制も中長期の投資を促
す仕組みにはなっていない。それ故、日本の証券市場は短期的な相場変動で利
ザヤを獲得する取引に適した市場となり、一般の個人投資家が参入しづらい環
15
境となっているのではないだろうか。
課 題 のまとめ
証券市場の現状とそれに影響を与える要因を分析することにより、日本の証
券 市 場 が 抱 え る 課 題 が 浮 か び 上 が っ て き た 。こ こ で 一 度 そ れ ら を 整 理 し て お く 。
20
我々が考える課題は以下の 5 つである。
1 つ目は「①家計の投資が活発でない」ことである。日本の家計の資産構成
は 、 現 金 預 金 が 53.1%と 高 く 、 ほ と ん ど の 資 産 が 投 資 に 回 さ れ て い な い 。 こ れ
は、投資はギャンブルであるという考えが 浸透したことにより、投資を敬遠し
てしまう人が多いことが原因であると考えられる。家計という最大の資金余剰
25
主体の資金を投資に回し金回りを良くすることが証券市場活性化、延いては日
本経済の活性化に繋がるため、国策として推進する必要がある。
2 つ目は「②資産の世代間移転が不十分である」ことである。家計の保有す
る 資 産 の 60%は 60 代 以 上 の 高 齢 者 が 保 有 し て お り 、 有 価 証 券 の 保 有 率 も 高 齢
者 が 70%と 高 齢 者 の 資 産 保 有 率 は 非 常 に 高 く な っ て い る 。今 後 若 年 者 へ 投 資 家
30
層を拡大するためには金融資産の世代間移転を促進させることが必要になる。
30
3 つ目は「③中小、ベンチャー企業の資金調達が難しい」ことである。第 3
章で示した通り、中小企業は規模が小さくなるほど借入金依存が強くなってお
り、資金調達の状況が金融機関の状況に左右されてしまう現状がある。このよ
うな中小、ベンチャー企業の資金調達を円滑化するためには、証券市場を通じ
5
た直接金融での資金調達機会を提供することが有効となってくるだろう。
4 つ目は「④社債の利用が活発でない」ことである。企業の資金調達方法と
して社債はアメリカなどと比べると大きく出遅れている。 また、価格の不透明
性などを原因として流通市場が不整備であり、特にハイ・イールド債の遅れが
深刻である。
10
最後に 5 つ目は「⑤中長期的な収益性が低い」ことである。日本の上場企業
は ROE が 低 く 、 株 主 資 本 コ ス ト を 下 回 っ て い る 状 況 が 続 い て い る 。 ま た 、 税
制の面でも他国と比べて、まだまだ工夫の余地があり、改善が求められる。
第 4 章 課 題 解 決 に向 けた既 存 の取 り組 み
15
課題のまとめで我々が挙げた課題に対して、解決に向け 既に取組みが行われ
ているものもある。4 章では、現在または近い将来行われる取組みについて、
該当する課題ごとに取り上げていく。
4-1 課 題 ①「家 計 の投 資 が活 発 でない 」に対 する取 り組 み
20
(1)少 額 投 資 非 課 税 制 度 (NISA)
NISA と は 、 毎 年 100 万 円 ま で の 投 資 に 対 す る 、 株 式 投 資 や 投 資 信 託 に 係 る
譲 渡 益 と 分 配 金 が 非 課 税 に な る 10 年 間 の 時 限 措 置 制 度 で あ る 。
NISA の 目 的 は 、 少 額 投 資 で 非 課 税 に な る の で 今 ま で 投 資 経 験 の な い 人 々 に
まで投資家の裾野を広げること。また、 短期間で売買を繰り返すとすぐに非課
25
税枠を使い切る仕組みにすることで長期保有を促進することなどが挙げられる。
仕 組 み と し て は 、 1 年 間 100 万 円 を 上 限 に 、 投 資 し た 年 か ら 5 年 目 の 年 末 ま
で に 得 た 譲 渡 益 と 分 配 金 が 非 課 税 に な り 、最 大 で 投 資 可 能 金 額 が 500 万 円 に な
るようになっている。
図 表 4-1 か ら 、今 年 6 月 末 時 点 で NISA 口 座 開 設 者 は 約 727 万 人 で あ る こ と
30
が わ か る 。 し か し 、 NISA 口 座 開 設 者 は 元 か ら 投 資 に 積 極 的 だ っ た 高 齢 者 層 が
31
多く、今後資産形成が必要になってくる若年層の投資家比率は低いのが現状で
ある。また、投資初心者の証券会社での口座開設数は 3 月末、6 月末ともに全
体 の 1 割 程 度 に 留 ま っ て お り 、 NISA は 投 資 家 の 裾 野 拡 大 に あ ま り 貢 献 し て い
な い 12。
5
さ ら に 、 NISA の 口 座 稼 働 率 は 8 月 末 時 点 で 33.3%に 留 ま っ て お り 、 7 割 弱
は 口 座 を 開 設 し た だ け で 投 資 を 開 始 し て い な い 1 3 。 よ っ て 現 状 NISA が 十 分 な
成果を挙げているとは言えないと我々は考えた。
図 表 4-1
年 代 別 NISA 口 座 開 設 数 の 推 移 (2014 年 )
(万口座)
800
700
600
500
400
300
200
100
0
650.39
727.37
80歳以上
70代
492.46
60代
50代
40代
30代
20代
1月末
3月末
10
6月末
(金 融 庁 の 調 査 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
(2)確 定 拠 出 年 金 (日 本 版 401k)
確 定 拠 出 年 金 は 2001 年 に ス タ ー ト さ れ た 自 己 責 任 型 の 私 的 年 金 で あ る 。 企
業 型 と 個 人型 の 2 種 類 あ り、企 業型は 主 に 企 業が 、個 人 型 は加 入 者 が掛け 金 を
拠出するが、いずれの場合も加入者が掛け金の運用先を決定する。なお掛け金
15
は所得控除の対象となる。
ア メ リ カ で は IRA(米 個 人 型 確 定 拠 出 年 金 )が 導 入 さ れ た 後 、 IRA を 通 し た リ
スク性資産の保有率が高まっていることなどから、 確定拠出年金の利用者の増
加 は 投 資 家 の 裾 野 拡 大 に も 繋 が る と 考 え ら れ る (図 表 4-2)。
12, 13 日 本 証 券 業 協 会 発 表 よ り
32
図 表 4-2
アメリカの家計におけるリスク性資産の保有割合の推移
(FRB “Flows of Funds Accounts”, ICI “Investment Company Fact
Book(2013)”よ り 引 用 )
5
図 表 4-3
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
確 定 拠 出 年 金 加 入 者 の 推 移 (各 年 3 月 末 の デ ー タ )
271.1
125.5
173.3
311
340.4
371.3
421.8 439.4
464.2
218.7
企業型
個人型
70.8
8.8
32.5
1.4
0
2.8
4.6
6.3
8
9.3
10.1 11.2 12.4 13.8 15.8 18.3
(厚 生 労 働 省 の 統 計 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
図 表 4-4
確 定 拠 出 年 金 (企 業 型 )に お け る 商 品 選 択 割 合 (2013 年 )
10
(運 営 管 理 機 関 連 絡 協 議 会 よ り 引 用 )
33
図 表 4-3 は 個 人 型 、 企 業 型 そ れ ぞ れ の 確 定 拠 出 年 金 利 用 者 数 の 推 移 で あ る 。
ど ち ら も 着 実 に 増 え て は い る も の の 、個 人 型 利 用 者 数 18.3 万 人 、企 業 型 利 用 者
数 は 464.2 万 人 と 、 ま だ 伸 び し ろ が あ る と 考 え ら れ る 。 既 に 議 論 が な さ れ て い
る通り、今後は、災害時などの引出しや未使用枠の繰り越しの可能化など、制
5
度の利便性を上げるための工夫が必要になるだろう。
ま た 、 図 表 4-4 の 通 り 現 在 確 定 拠 出 年 金 の 運 用 先 が 預 貯 金 、 保 険 な ど の 元 本
保証型資産に集中してしまっていることは、将来受け取る年金の元手となる年
金原資増大の観点から見て望ましくない 。
10
(3)若 者 に投 資 家 層 を広 める新 しい取 り組 み
近 年 SNS を 取 り 扱 う 若 者 が 増 加 し て い る が 、そ れ に 乗 じ た 動 き と し て ネ ッ ト
証 券 最 大 手 の SBI 証 券 が LINE で の 株 取 引 を 開 始 す る 予 定 で あ る 。取 引 は SBI
証券のアカウントと会話形式で行われ、投資家は購入したい銘柄の現在の株価
を 聞 い た り 、 注 文 を 行 っ た り で き る 。 LINE 株 取 引 は NISA 口 座 で も 行 え る 。
15
ま た 、今 年 8 月 日 本 経 済 新 聞 社 の グ ル ー プ 会 社 、QUICK は IRroid と い う サ
ービスを開始した。これは、上場企業の一社一社にその会社の特徴を反映した
美少女キャラクターを設定し、財務状況や株価などをそのキャラクターが説明
し て く れ る と い う も の で あ る 。配 当 利 回 り を「 お も て な し 」、ROE を「 攻 撃 力 」
のように表示するなど、株式投資初心者が投資情報に入り込みやすいような工
20
夫もされている。
このような取組みは若者にとって投資を身近なものにし、今後投資家の裾野
の拡大に貢献していくだろう。
(4)金 融 リテラシーを身 に着 ける場
25
日本証券業協会や大和証券、野村證券などの大手証券会社では定期的に 無料
セミナーが開催されており、住んでいる地域から最寄りの会場 で開催されるも
のを検索できるようになっている。また、大抵の証券会社のホームページには
初心者向けの無料動画講義なども用意されている。
つまり、投資家さえ望めば金融リテラシーを身に着ける機会はいくらでも用
30
意されていると言える。
34
4-2 課 題 ②「資 産 の世 代 間 移 転 が不 十 分 」に対 する取 組 み
(1)子 供 NISA
子 供 NISA は 2016 年 に 開 始 さ れ る 予 定 の 0~19 歳 の 子 供 向 け の NISA で あ る 。
5
仕 組 み と し て は 、 親 や 祖 父 母 が 子 供 の 口 座 に 資 金 を 贈 与 し 、 子 供 が 19 歳 に な
る ま で 投 資 額 上 限 年 間 80 万 円 の 非 課 税 口 座 と し て 利 用 で き る と い う も の で あ
る 。 口 座 の 管 理 は 親 や 祖 父 母 が 行 い 、 資 金 の 払 い 出 し は 原 則 18 歳 に な る ま で
で き な い 。 ま た 、 子 供 が 20 歳 に な っ た ら 現 行 の NISA 口 座 と し て 利 用 で き る
ようになる。
10
こ の 制 度 の 狙 い と し て は 年 間 110 万 円 の 贈 与 税 基 礎 控 除 枠 の 使 用 率 を 上 げ 、
世代間の資産移転の活発化を図ること、 教育資金を確保すること、若年層や投
資未経験者へ投資家の裾野を広げることなどが挙げられる。
(2) 教 育 資 金 の一 括 贈 与 に係 る贈 与 税 非 課 税 措 置
15
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置とは、両親や祖父母などの直系
尊 属 か ら 子 や 孫 に 、 子 一 人 毎 に 1500 万 円 ま で を 専 用 の 口 座 に 非 課 税 で 贈 与 で
き る と い う 2015 年 末 ま で の 時 限 制 度 (2015 年 末 は 資 金 の 贈 与 を 行 え る 期 限 )で
ある。なお、この口座から払い出した学校等の教育機関充て の教育資金は非課
税 に な る 。 ま た 、 1500 万 円 の 内 500 万 円 ま で は 、 学 習 塾 や 習 い 事 な ど 学 校 等
20
以 外 に 支 払 う 教 育 資 金 に 対 し て も 非 課 税 に な る 。 子 供 が 30 歳 に な っ た 時 点 で
口座は解約され、残額には贈与税がかかる。
この制度は、高齢者の保有する資産を子育て世代へ移転させることを目的と
している。
日 本 経 済 新 聞 に よ る と 、昨 年 4 月 の 制 度 開 始 か ら 今 年 6 月 末 ま で で 口 座 開 設
25
数 は 7 万 6851 件 (贈 与 額 は 約 5,194 億 円 )と な っ て お り 、当 初 の 2 年 間 で 5 万
4000 件 と い う 予 想 を 大 き く 上 回 っ て 好 調 で あ る 。そ の た め 、政 府 で は 制 度 の 期
限の延長や教育資金以外の用途も可能にするなどの対応も検討されている。
この制度は資産移転という意味では順調な効果を上げていると言えるだろう。
35
4-3 課 題 ③「中 小 、ベンチャーの資 金 調 達 の難 しさ」に対 する取 組 み
(1)株 式 投 資 型 クラウド ファ ンディ ング及 び グリー ン シート銘 柄 制 度 等 に 代 わる 新 た な
非 上 場 株 式 の取 引 制 度 (2015 年 から実 施 予 定 )
ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ と は 、 群 衆 (crowd)か ら の 資 金 調 達 (funding)の 語 を
5
用いた造語であり、一般に、新規・成長企業等と資金提供者をインターネット
経 由 で 結 び つ け 、 多 数 の 資 金 提 供 者 か ら 少 額 ず つ 資 金 を 集 め る 仕 組 み 14の こ と
を言う。現在、クラウドファンディングには大きく 5 つのタイプが存在し、今
回 取 り 上 げ る 株 式 型 以 外 は 既 に 日 本 で も 行 わ れ て い る (図 表 4-5)。
2015 年 よ り 新 た に 株 式 型 に つ い て も 可 能 に す る た め 、日 本 証 券 業 協 会 の 店 頭
10
有価証券規則の第 3 条に定められている非上場株式の投資勧誘の禁止が緩和さ
れ る 見 通 し で あ る 。具 体 的 に は 、発 行 総 額 1 億 円 未 満 か つ 1 人 当 た り 投 資 額 50
万円以下の少額の募集案件に限り、インターネットを媒介した投資勧誘が可能
となる、というものだ。
また、発行市場と流通市場は車の両輪のようなものであり、どちらかが欠け
15
ていればうまく機能しない。したがって、今回の制度改定においても、流通市
場に関する取り組みも併せて行われている。それが後半部分のグリーンシート
銘 柄 制 度 1 5 に 代 わ る 新 た な 非 上 場 株 式 の 取 引 制 度 だ 。制 度 の 概 要 は 、証 券 会 社
が、銘柄ごとに発行企業の従業員や取引先、株主などで構成される投資グルー
プを組成し、そのメンバーに限って投資勧誘を行なえるというものである。非
20
上場株式が流通する範囲をグループ内に制限する目的は、一定の取引・換金ニ
ーズに応えられる程度の流通性に留めるためである。それによって、インサイ
ダー取引規制の適用除外、開示情報内容や情報提供範囲が 縮小され企業側の負
担軽減が図られている。なお、投資者から自己申告をすれば、投資グループへ
の加入も可能である。
25
これらの 2 つの制度は、方向性としては納得できるものであるが、やはり、
制約が多く発行体・投資家どちらからしても使い勝手が良くないように感じら
れる。
14日 本 証 券 業 協 会
「株式投資型クラウドファンディング及びグリーンシート銘柄制度等に代わる
新たな非上場株式の取引制度のあり方について」より
1 5 投 資 勧 誘 の 認 め ら れ た 非 上 場 株 式 。上 場 会 社 と 大 差 の な い 開 示 義 務 は 企 業 の 負 担 で あ る と と も に 、
投資家からの需要も低迷しており制度の改正が求められていた。
36
図 表 4-5
クラウドファンディングの 5 つのタイプ
(ク ラ ウ ド バ ン ク HP よ り 引 用 )
5
4-4 課 題 ⑤「中 長 期 的 な収 益 性 が低 い」に対 する取 組 み
(1)日 本 版 スチュワードシップ・コード
ス チ ュ ワ ー ド シ ッ プ ・ コ ー ド と は 2010 年 に イ ギ リ ス で 策 定 さ れ た 、 機 関 投
資 家 が 株 主 と し て と る べ き 行 動 を 示 し た ガ イ ド ラ イ ン の こ と で あ り 、今 年 2 月
に 金 融 庁 が 日 本 版 ス チ ュ ワ ー ド シ ッ プ ・ コ ー ド を 公 表 し た 。 内 容 は 図 表 4-6 の
10
通りである。この狙いは「機関投資家が、投資先の日本企業やその事業環境等
に 関 す る 深 い 理 解 に 基 づ く 建 設 的 な 『 目 的 を 持 っ た 対 話 』( エ ン ゲ ー ジ メ ン ト )
などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧
客 ・ 受 益 者 の 中 長 期 的 な 投 資 リ タ ー ン の 拡 大 を 図 る 16」 こ と で あ る 。
図 表 4-6
日本版スチュワードシップ・コードの要点
15
(野 村 総 合 研 究 所 作 成 資 料 よ り 引 用 )
日本版スチュワードシップ・コードでは、賛同して参加を表明した機関投資
家 に 対 し 取 組 方 針 や 実 践 結 果 の 公 表 、報 告 を 求 め て い る が 、2014 年 8 月 時 点 で
16
日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会「責任ある機関投資家」の諸原則 ≪
日 本 版 ス チ ュ ワ ー ド シ ッ プ・コ ー ド ≫ ~ 投 資 と 対 話 を 通 じ て 企 業 の 持 続 的 成 長 を 促 す た め に ~ よ り
37
160 ほ ど の 機 関 投 資 家 が 参 加 を 表 明 し て い る 。
今後スチュワードシップ・コードを通して 投資家からの監視を強化し、日本
の中長期的な企業価値が向上されることが期待される。
5
(2)株 主 総 会 の分 散 化
経済産業省の促しを受けて、上場各社による株主総会開催時期の分散が行わ
れてきている。東証の調べでは今年は 3 月期決算企業の株主総会が集中した 6
月 27 日 で の 開 催 率 は 38.7%で 、昭 和 58 年 の 調 査 開 始 以 来 、最 多 開 催 日 の 集 中
率 が は じ め て 40%を 割 っ た 。
10
日本企業はかつて物言う株主を恐れてわざと株主総会の開始時期を一致させ、
出席率を下げる試みを行っていたが、近年株式会社本来の形として株主の立場
が見直されつつあるため、株主総会の分散化を行うことで株主が複数社の総会
に出席できるようにし、株主の声を取り入れる試みを行っている。
こ の 取 組 み に よ り 株 主 の 監 視 が 厳 重 に な れ ば 、株 価 、経 営 状 態 と も に 安 定 し 、
15
個人投資家が株を安心して購入できる環境を作れるだろう。
(3)新 指 数 JPX 日 経 インデックス 400 の開 始
新 指 数 JPX 日 経 イ ン デ ッ ク ス 400 と は 、 日 本 経 済 新 聞 社 と 日 本 取 引 所 グ ル
ー プ 、そ し て そ の 傘 下 の 東 京 証 券 取 引 所 の 3 社 が 共 同 で 開 発 し 、2014 年 1 月 6
20
日 に 算 出 が 始 め ら れ た 株 価 指 数 の こ と で あ る 。ROE の 高 さ な ど を 元 に 選 定 さ れ
た 400 銘 柄 で 構 成 さ れ 、 毎 年 8 月 に 定 期 的 に 見 直 し 、 入 れ 替 え が 行 わ れ る 。
こ の 新 指 数 の 登 場 で 、投 資 家 の ROE へ の 関 心 が 高 ま っ て お り 、企 業 で も ROE
を重視した経営が行われるようになってきている。 例えば、この指数から漏れ
た こ と を き っ か け に 、金 属 加 工 機 械 大 手 の ア マ ダ は 総 還 元 性 向 を 高 め 、ROE の
25
向 上 を 目 指 し て い る 。 そ の よ う な 流 れ に よ り 、 今 後 他 の 企 業 で も ROE 向 上 に
向けた動きが高まっていくと予想され、日本の株式市場は中長期的な投資収益
の獲得に適した市場となることが期待される。
第 5 章 日 本 の証 券 市 場 の活 性 化 策 の提 案
30
前章では、我々が導出した課題について、それを解決すべく行われている取
38
り組みを紹介した。本章では、現在行われている取り組みでは課題解決に不十
分であると我々が判断した課題と特に 取り組みが行なわれていない課題に関し
て、提案を行う。
5
5-1 課 題 ①「家 計 の投 資 が活 発 でない」に対 する提 案
家計の投資を促進させるために、確定拠出年金の自動加入方式 と元本確保型
商品の比率上限設定の 2 つを提案する。
(1)確 定 拠 出 年 金 の自 動 加 入 方 式
10
自動加入方式とは、アメリカやイギリスで採用されている仕組みであり、加
入したい者に加入させるのではなく、全員を一度自動的に加入させ、制度に残
り た く な い 者 だ け を 抜 け さ せ る (Opt Out)方 式 で あ る 。
我々は自動加入方式を、全被雇用者に適用させることを提案する。企業型が
ある会社は原則全員加入とし、企業型がない会社も給料天引き方式で個人型に
15
加入させる。また、企業年金があり確定拠出年金を扱っていない企業の被雇用
者は今まで加入対象外であったが、厚生年金の一部を確定拠出年金に充てると
いう方法で加入させる。この方法はスウェーデンなどで用いられており、企業
の負担を増加させずに確定拠出年金に移行できるのがポイントである。
我々がこの提案に至った理由は 2 つある。
20
1 つ目に、半強制的に投資の経験をさせることが日本の投資家を増やす上で
は必須だからである。投資家を増やすためには金融教育をすることが重要だと
いう考えも多いが、我々は投資家を増やしたいのならまず行うべきは半強制的
な 投 資 機 会 を 創 設 し 、国 民 の 投 資 に 対 す る 偏 見 を 払 拭 す る こ と で あ る と 考 え る 。
たとえ投資に偏見のある人や投資に消極的な人に投資教育を行ったとしても、
25
それは結局受動的な学びに留まってしまう。だが、半強制的な投資機会を設け
ることによって、人々に金融リテラシーの必要性を感じさせ主体的な学びへと
促すことが出来る。また、投資を経験させることで、実体験として投資を理解
し、投資に対する偏見の払拭や興味の喚起を させることも可能であると我々は
考える。投資に対する真の理解は実際に投資 をすることなくしてはできないの
30
だ。このようにして投資に興味を持つようになった人達は 、更に資産運用を効
39
果的に行うために自ら金融リテラシーを身に着けたいと思うようになるだろう。
今の日本には金融リテラシーを身に着ける場は用意されているが、人々に自発
的に投資をしたい、金融リテラシーを身に着けたいと思わせるまでの工夫 が不
十分だ。半強制的な投資機会の創設によりそのギャップを埋めること が日本の
5
投資家を増やす上で必要不可欠なのである。
2 つ 目 は 、第 4 章 で 提 示 し た 通 り ア メ リ カ で は IRA 導 入 時 か ら IRA を 通 じ た
リスク資産の保有が順調に増えているため、日本でも同様のことが起こると考
えられるからである。確定拠出年金加入者が増えることにより、確定拠出年金
に加入する→投資する→投資マインドが身に付く→更なるリスク性資産の保有、
10
という好循環も生まれることが予想できる。
(2)確 定 拠 出 年 金 の元 本 確 保 型 商 品 の比 率 上 限 設 定
第 4 章 で 、確 定拠 出 年 金は 預 貯 金、保 険 な ど の元 本 確 保 型 の 資 産で 運 用さ れ
ている部分がかなり多いことを述べた。この状況は、証券投資の拡大や年金原
15
資の増大にあまり寄与せず、望ましくない。
そ こ で 我 々 は 、 年 金 受 け 取 り ま で の 期 間 が 長 く リ ス ク を 取 り や す い 35 歳 未
満 の 若 年 者 層 の 確 定 拠 出 年 金 の 運 用 先 と し て 、元 本 確 保 型 商 品 の 比 率 を 10%以
下に制限する規制を作ることを提案する。 理由は 3 つある。
ま ず 1 つ 目 に 、若 年 者 層 の 老 後 資 金 の 十 分 な 確 保 を 行 う た め で あ る 。図 表 5-1
20
の 通 り 日 本 の 年 金 の 所 得 代 替 率 は OECD 平 均 と 比 較 し て 低 く な っ て お り 、少 子
高齢化の問題から、今後若年者層の公的年金受給額は更に減少していくと考え
ら れ る 。ま た 、第 3 章 で 述 べ た 通 り 老 後 の 年 金 額 に 不 安 を 抱 い て い る 人 も 多 い 。
その解決のために、確定拠出年金を通じてリスク性資産を保有することで 老後
資金を多く確保する必要があるのである。
25
また、投資スキルは長年の経験の蓄積で向上するものであるため、このよう
に若い頃から投資を経験させることにより、上手く資産を運用することができ
るようになる。
2 つ 目 に 40 年 間 資 産 を 預 貯 金 で 寝 か し て お く の は も っ た い な い 選 択 に な っ
て し ま う か ら で あ る 。 若 年 者 が 年 金 の 受 給 を 受 け る の は 30~ 40 年 後 と な り 、
30
預貯金で運用するということは資産を長期間寝かせておくことに等しい。これ
40
では十分な資産形成ができず、確定拠出年金を利用する意味もない。参考とし
て 、オ リ ン パ ス 基 金 が 提 示 す る 年 代 別 の 資 産 配 分 の 例 を 挙 げ る (図 表 5-2)。オ リ
ン パ ス 基 金 も 我 々 の 考 え と 同 様 に 、30 代 前 半 ま で 元 本 確 保 型 商 品 の 割 合 を 少 な
く抑えた配分を提示している。オリンパス基金以外にも様々な専門家が同様あ
5
るいは元本確保型商品の配分をゼロにしたポートフォリオを推奨している。 ま
た、確定拠出年金の利用には口座管理手数料等がかかるため、預貯金等を多く
組み込んでしまうと手数料が利息を上回ってしまう可能性がある。
3 つ 目 に 、 若 年 者 層 は リ ス ク を 取 り や す い か ら で あ る 。 図 表 5-3 か ら 若 年 者
層の収入が小さいことが読み取れる。収 入の少ない若年者層は拠出金額も低く
10
抑えると考えられるため、若年期の運用額は年金受給時に貯まり得る金額のほ
んの一部に過ぎないと言える。一方で中高齢者は、運用額が多く、年金受給開
始までの期間も短い。そのため、リスク性資産を多く保有することは老後資金
の大幅な減少に繋がる可能性があり危険である。しかし、若年者は運用額も少
なく、年金受給開始まで十分な期間があるため、 たとえ失敗したとしても年金
15
の受給額が大幅に減り老後の生活に困るということは起こらない。以上より、
若い内にリスクを積極的にとり投資スキルを身に着けることが重要 だと言える。
図 表 5-1
OECD 諸 国 の 年 金 の 所 得 代 替 率
上 :総 所 得 代 替 率 ( 税 ・ 社 会 保 険 料 控 除 前 の 年 金 額 /税 ・ 社 会 保 険 料 控 除 前 の 報 酬 額 )
20
下 (カ ッ コ 内 ): 純 所 得 代 替 率 (税 ・ 社 会 保 険 料 控 除 後 の 年 金 額 /税 ・ 社 会 保 険 料 控 除 後 の 報 酬 額 )
(OECD2013, Pensions at a Glance 2013:OECD and G20 Indicators, OECD
Publishing よ り 引 用 )
25
41
図 表 5-2
ライフステージごとの資産配分の例
(オ リ ン パ ス 基 金
図 表 5-3
確定拠出年金資産運用入門講座より引用)
正 社 員 の 年 代 別 平 均 年 収 (2013 年 )
(万円)
800
600
400
756
349
598
458
200
0
20代
5
30代
40代
50代
(DUDA 平 均 年 収 /生 涯 賃 金 デ ー タ 2013 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
5-2 課 題 ②「資 産 の世 代 間 の移 転 が不 十 分 である」に対 する提 案
改 善 版 子 供 NISA
10
第 4 章 で 述 べ た 通 り 、資 産 の 世 代 間 移 転 策 に は 教 育 資 金 一 括 贈 与 制 度 と 子 供
NISA が あ る 。 し か し 、 こ の 2 つ の 制 度 は 資 産 の 世 代 間 移 転 を し 、 さ ら に 家 計
の「貯蓄から投資へ」を促すには不十分であると我々は考えた。前者について
は、金融資産の移転という意味では一定の効果が出ているものの、移転した金
融 資 産 を 投 資 に 使 う こ と は で き な い (図 表 5-4)。ま た 、後 者 に つ い て は 、子 供 が
15
18 歳 に な る ま で 口 座 内 の お 金 を 教 育 費 に も 利 用 で き な い 上 、贈 与 額 は 基 礎 控 除
に加算されるため、投資収益が非課税になることのみが利点の制度である。
NISA が 投 資 家 の 裾 野 を 広 げ る こ と に 成 功 し て い な い よ う に 、 投 資 収 益 の 非 課
税措置だけでは国民を引き付けることはできない だろう。
これらのことから、我々はインセンティブの付与と口座開設の 簡素さ、投資
20
の 促 進 の 3 点 を 重 視 し た 改 善 版 子 供 NISA を 提 案 す る 。制 度 の 概 要 は 以 下 の 通
42
りである。
まず子供の出生届提出時に市役所・町役場より、金券が手渡される。この金
券 を 第 1 種 金 融 商 品 取 引 業 者 に 提 出 す る こ と で 、 1 万 円 の 入 っ た 子 供 NISA 口
座を開設することができる。なお、この金券は口座開設以外の目的で利用する
5
こ と は で き な い 。開 設 し た 口 座 で は 、残 高 の 最 低 10% は リ ス ク 性 資 産 へ の 投 資
を 義 務 付 け る が 、 NISA と 同 様 、 株 式 や 投 資 信 託 に 係 る 譲 渡 益 と 分 配 金 が 非 課
税 に な る 。 基 準 日 で あ る 毎 月 14 日 に 、 口 座 内 の リ ス ク 性 資 産 の 割 合 が 10% を
下 回 っ た 場 合 は 、口 座 管 理 者 (通 常 は 親 権 者 )に 通 知 し 、そ の 後 2 か 月 間 で 10%
の基準を上回ることを要請する。それでもリスク性資産の割合に変更が見られ
10
なかった際は、それ以降、使途を問わず口座内の資金の引き出しを禁じる措置
を取る。なお、資金の引き出しを解禁するためには、 1 年間継続的にリスク性
資 産 保 有 割 合 を 10% 以 上 に し な け れ ば な ら な い 。
運 用 資 金 に つ い て は 、 子 供 が 20 歳 に な る ま で 、 直 系 尊 属 が 毎 年 120 万 円 を
上限に贈与税の基礎控除とは別枠で拠出することができる。口座内の資金は、
15
教育資金への利用が可能であるため、運用で増やした資金を予備校代や大学の
入学金等に利用することが可能だ。なお教育資金の定義や使用上限額について
は 、 教 育 資 金 一 括 贈 与 制 度 17と 同 一 と す る た め そ ち ら を 参 照 し て 頂 き た い 。
ま た 、高 校 入 学 以 降 は 、指 定 金 融 セ ミ ナ ー へ の 参 加 権 が 付 与 さ れ 、子 供 NISA
口座を保有している証券会社が開催するセミナーに 参加をすれば再び金券が与
20
えられる。親権者の同意書と共にこの金券を第一種金融商品取引業者に提出す
れ ば 、 子 供 自 身 で の 運 用 も 子 供 NISA 口 座 の み の 例 外 規 定 と し て 可 能 と す る 。
なお、この金券を提出することで再び 口座に 5 千円が振り込まれる。
当該制度の注意点としては、口座内の資金 は教育資金への利用目的以外では
原 則 25 歳 ま で 引 き 出 し が で き な い こ と 、満 25 歳 時 の 口 座 残 高 の 一 部 に 贈 与 税
25
が掛かる場合があるということである。贈与税の課税対象額の計算方法は、拠
出 金 総 額 か ら 教 育 費 と キ ャ ピ タ ル ロ ス (発 生 し て い た 場 合 )を 控 除 し た も の と す
る。この制度の導入により、資産の世代間移転と家計の貯蓄から投資が促進さ
れるだろう。なお、金券支給の財源としては口座を開いている証券会社の負担
17
「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について」
ht t p://ww w.m ext . go.j p /c om p one nt /b_m en u/ot h er /__i c s F i l es /afi el d fi l e/2014/ 08/ 21/ 133 756 0_1 . p d f
43
とする。
図 表 5-4
類似制度との比較
制度名
制度の目的
拠出限度額
資金の引き出し
教育資金贈与制度
子 供 NISA
改 善 版 子 供 NISA
資金の世代間移
資金の世代間移
資金の世代間移
転・教育資金の確
転・投資の促進・
転・投資の促進・
保
(教 育 資 金 の 確 保 )
教育資金の確保
1500 万 (一 括 も 可 )
毎 年 80 万 円
毎 年 120 万 円
可 (教 育 資 金 以 外
18 歳 未 満 は 原 則
教育資金のみ可
に利用した場合贈
不可
与税が課される)
証券投資
不可
可
可
口座開設
任意
任意
ほぼ自動
(各 種 資 料 を 参 考 に 筆 者 作 成 )
5
5-3 課 題 ③「中 小 、ベンチャー企 業 の資 金 調 達 が難 しい」に対 する提 案
第 4 章 で 述 べ た と お り 、株 式 型 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ と 非 上 場 株 式 の 取 引
制度は制約が多すぎる。条件を厳しくし過ぎれば、失敗したグリーンシートの
二の舞になりかねないだろう。そこで我々は株式型クラウドファンディングと
非上場株式の取引制度、それぞれに対して改善案を提案する 。
10
(1)発 行 上 限 額 の変 更
株式型クラウドファンディングの改善案としては、発行上限額の変更を提案
する。具体的には、発行総額 1 億円未満という規定を「1 億円と前年度売上高
の 0.015 倍 の い ず れ か 大 き い 額 を 年 間 発 行 上 限 額 と す る 」 と い う も の で あ る 。
15
こ の 提 案 の ポ イ ン ト は 、企 業 の 売 上 規 模 に 応 じ て 1 億 円 以 上 の 資 金 調 達 も 可
能としたことである。なぜならスタートアップ期の企業のみならず、中堅企業
等、比較的大きな企業の資金需要も満たせるようにすべきだからだ。 第 3 章で
述 べ た 通 り 、 中 堅 企 業 を 含 む 資 本 金 10 億 円 未 満 の 企 業 は 、 払 込 資 本 の 割 合 が
低く、良い投資機会があってもリスクテイク しづらいのが現状である。したが
20
っ て 、幅 広 く 株 主 を 募 集 で き る 株 式 型 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ で 1 億 円 以 上 の
44
エクイティファイナンスを可能にし、財務状態を維持、改善しつつ投資を実施
できるようにすべきなのである。しかし、 上限額を引き上げた所で、投資家の
需要がなければ意味がない。企業側は、投資家の需要を喚起し得る魅力的なエ
ク イ テ ィ ス ト ー リ ー を き ち ん と 立 て る 必 要 が あ る だ ろ う 。 な お 、 0.015 倍 と い
5
う 数 値 で あ る が 、 経 済 産 業 省 の 調 査 18よ り 、 企 業 の 平 均 的 な 投 資 額 が 売 上 高 の
5% 程 度 で あ っ た こ と 、 設 備 投 資 額 の う ち 、 財 務 の 悪 化 を 限 定 的 な 範 囲 に す る
た め 30% を エ ク イ テ ィ フ ァ イ ナ ン ス で 、残 り を 内 部 留 保 や 銀 行 借 入 で 調 達 す る
ことを想定し導出した。また、有価証券届出書等の開示規制は当該制度におい
ては適用除外とすることで企業側の負担を軽減する。
10
(2)情 報 提 供 プラットフォームの 作 成 による情 報 提 供 範 囲 の拡 大
非上場株式の取引制度に対する改善案は、情報提供範囲の拡大と、そのため
の情報提供プラットフォームを日本証券業協会が作成するというものである。
現在進められている制度案では、株式の流通範囲を制限するため証券会社が投
15
資グループを組成し、その中でのみ情報を開示するというものであった。 しか
し 、こ れ で は 対 象 と な る 投 資 家 層 が 薄 く 十 分 な 流 動 性 を 確 保 で き な い た め 、(1)
で 発 行 さ れ る 信 用 力 の な い 企 業 の 株 式 に は 、投 資 家 が 付 き づ ら い と 考 え ら れ る 。
したがって、我々は、日本証券業協会が作る非上場株式情報提供プラットフォ
ームで投資グループに属する投資家以外にも 情報を公開し、多くの投資家が企
20
業情報にアクセスできる仕組みにすべきであると考えた。そうすることによっ
て、投資に積極的になる投資家も増え、企業の資金調達も 容易になるからだ。
第 4 章 で 述 べ た と おり 、証 券会 社 は 投 資 グ ル ープ に 属 さな い 投 資家 を 勧誘 す
ることはできないが、投資家自身が自己申告で株を買うことはできるため、 現
行の規制の下でも以上の提案は実現可能だと考えられる。また、流動性が向上
25
すればインサイダー取引規制が適用されることになるが、これについては投資
家保護の観点から、むしろ望ましいことであると考える。
18
経済産業省企業金融調査より
45
5-4 課 題 ④「社 債 の発 行 が活 発 でない」に対 する提 案
債 券 の 取 引 は 99% が 店 頭 で の 相 対 取 引 で あ り 、価 格 の 透 明 性 が な い 。そ し て 、
その解決のために日本証券業協会が売買参考統計値制度という仕組みを設けた。
しかし、気配値を報告している証券会社が限られていることから、売買参考統
5
計 値 (以 下 、 統 計 値 )は 実 勢 価 格 か ら 乖 離 し て し ま っ て い る と い う こ と を 第 2 章
で述べた。そこで、我々は債券気配値の報告義務化を提案する。
義務化によって、最大手の野村証券を含む今まで報告をしていなかった証券
会社の気配値を統計値に反映させることが出来、統計値の信頼性が向上すると
考えられる。しかし、義務化による弊害が大きく 2 点考えられる。
10
1 点目は、証券会社の負担の増大である。債券の銘柄は上場企業数とは比較
にならないほど多く、それら全ての気配値を報告するとなると非常に労力が必
要 で あ る 。そ こ で 、発 行 体 毎に 気 配値 を 1 つ 報 告 す れ ば良 い と する 。具体 的 に
は「 残 存 期 間 5 年 、取 引 総 額 5 億 円 を 想 定 し た場 合 」とい う 仮 定を お いて 各 発
行体につき 1 つの気配値の報告を義務付ける。
15
2 点目は、実際には取引をしていない証券会社の気配値を多く含んでしまう
た め 、現 状 よ り 統 計 値 の 妥 当 性 が 損 な わ れ る の で は な い か 、と い う 危 惧 で あ る 。
これに対しては、実際の取引シェアによる加重平均値を公 表することで防ぐこ
とができると考えている。つまり、現在公表されている算術平均値、中央値、
最高値、最低値に加えて加重平均値を公表することになる。 なお、取引シェア
20
に つ い て は 、2015 年 か ら 開 始 さ れ る 価 格 公 表 制 度 で の 報 告 か ら 算 出 で き る た め 、
それを用いることとする。
これらにより、債券価格の透明性が向上すれば、 まず流通市場が機能し債券
の流動性が高まるであろう。そして、流動性が高まることによ って、キャピタ
ル・ゲインを狙った投資もしやすくなり、銀行・保険以外の新たな投資家の参
25
入とシェア拡大が期待できる。それによって、リスクの高いハイ・イールド債
を受け入れる態勢が整い、信用力の低い大企業でも債券での資金調達が可能と
なる。
30
46
5-5 課 題 ⑤「中 長 期 的 な収 益 性 が低 い」に対 する提 案
長 期 保 有 の株 式 に係 るキャピタル・ゲイン課 税 の軽 減 措 置
我 々 は 株 式 の 保 有 年 数 1 年 未 満 で 20%、 1 年 以 上 で 15%、 5 年 以 上 で 10%の
キャピタル・ゲイン税率を適用することを提案する。
5
現 在 、 日 本 企 業 は ROE が 低 く 、 投 資 家 が 期 待 す る 収 益 率 を 下 回 り 続 け て い
る。しかし、スチュワードシップ・コード等の新たな取組みが始まり、株主に
対する企業の態度にも変化の兆しが見られるため、今後は改善に向かっていく
と期待される。
そこで、我々は税制によって投資家の中長期的な収益増加を更に促進させる
10
ことで投資家がより投資しやすい環境をつくることが出来ると考えた。また、
この制度で投資家の株式長期保有が進めば、長期的に付き合っていく企業の経
営にも関心も持つようになり監視機能が働くと予想される。
さらに、この制度の副次的な効果として、従業員 持株制度利用者の増加や、
創 業 者 利 得 に 対 す る 税 負 担 を 抑 え た い オ ー ナ ー 企 業 の IPO 活 性 化 な ど を 促 す
15
こともできる。
また、必ずしも減税は税収減に繋がらない。この提案により、企業への監視
機能が働き企業の業績が向上すれば、法人税や給与所得の増加を通じた所得税
の税収増に繋がり得る。また、投資家層が拡大することでキャピタル・ゲイン
課税や配当課税の税収も増えることが期待できる。
20
おわりに
2014 年 現 在 、日 本 で は 証 券 市 場 の 活 性 化 に 向 け た 取 組 み が 数 多 く 行 わ れ て い
る。しかし、それらの取組みの多くは、課題の認識は正しいが制度として の魅
25
力に欠け、証券市場の活性化という観点からも最適ではない と考えた。
そこで我々は、①確定拠出年金の自動加入方式と元本確保型商品の比率上限
設 定 、 ② 改 善 版 子 供 NISA、 ③ 株 式 投 資 型 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ 及 び グ リ ー
ンシート銘柄制度等に代わる新たな非上場株式の取引制度の改善案 、④債券気
配値情報の報告義務化、⑤長期保有の株式に係るキャピタル・ゲイン課税の軽
30
減措置の 5 つの提案を行った。
47
まず、①と②で、投資家層の拡大を狙う。①では、全被雇用者を確定拠出年
金に自動加入させることで、多くの労働者に投資を経験させることが出来る。
②では、高齢者からの資金の移転を促すとともに、今まで投資に縁がなかった
若者や主婦層にまで投資を経験させることができるだろう。
5
また、③と④では企業の資金調達における証券の利用を促進する。 これらの
提 案 に よ り 、今 ま で 証 券 の 活 用 が 進 ん で い な か っ た 中 小 ベ ン チ ャ ー や 中 堅 企 業 、
そして信用の低い大企業にも証券の活用が広がると考えられる。
そして最後に⑤の税制整備は、証券市場を家計の長期的な資産形成に適した
場にすること、そして企業の安定株主の確保に貢献するであろう。
10
これらの 5 つの提案により日本の証券市場は活性化する と我々は考える。
【参考文献】
・伊藤邦雄
15
「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ま
し い 関 係 構 築 ~ 」 2014 年
・奥山英司
「株式市場における主体別投資行動の特徴とその相関 関係に関す
る 分 析 」 2005 年
・オリンパス基金
確定拠出年金資産運用入門講座
・ 金 融 広 報 中 央 委 員 会 「 家 計 の 金 融 行 動 に 関 す る 世 論 調 査 」 2013 年
20
「 経 済 産 業 省 企 業 金 融 調 査 」 2011 年
・経済産業省
・国立国会図書館
・財 経 詳 報 社 編
「 投 資 型 ク ラ ウ ド フ ァ ン デ ィ ン グ の 動 向 」 2014 年
『 図 説 日 本 の 証 券 市 場〈 平 成 9 年 版 〉』
財経詳報社
1997
・ 財 務 省 「 法 人 企 業 統 計 年 報 」 2013 年
・坂下晃、外島健嗣、田村香月子『証券市場の基礎知識』晃洋書房
25
2010 年
・ 資 本 市 場 研 究 所 き ず な 「 復 活 す る 発 行 市 場 」 2013 年
・新規・成長企業へのリスクマネー供給の在り方に関するワーキング・グルー
プ関連資料
2013 年
・新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人
「諸外国の金融所得課税(公
社 債 を 中 心 に ) に 関 す る 調 査 研 究 」 2009 年
30
・ソニーライフ・エイゴン生命
「 ニ ッ ポ ン 人 の 年 金 」 2014 年
48
・大 和 総 研 「 お カ ネ は ど こ か ら 来 て ど こ に 行 く の か ~ 資 金 循 環 統 計 の 読 み 方 」
1~ 12 回
5
2013 年
・大和総研
「 2012 年 度 の 企 業 の 資 金 調 達 動 向 」 2013 年
・大和総研
「 非 上 場 株 式 の 取 引 制 度 等 に 関 す る 日 証 協 報 告 」 2014 年
・大和総研
「 日 米 株 式 市 場 の 相 違 点 」 2014 年
・ 投 資 信 託 協 会 「 投 資 信 託 の 世 界 統 計 」 2014 年
・ ト ー マ ツ 「 IPO 市 場 の 動 向 」 2013 年
・ ト ー マ ツ 「 中 小 企 業 の 資 金 調 達 と 資 本 調 達 」 2010 年
・ 日 本 銀 行 「 資 金 循 環 統 計 」 2014 年
10
・日本銀行金融市場局
「 投 資 家 別 売 買 動 向 と 株 価 」 2011 年
・日本経済新聞「株主総会、7月以降の分散開催促す
経 産 省 な ど 」 2014 年
・日本経済研究センター
「 社 債 市 場 活 性 化 へ の 5 つ の 提 言 」 2010 年
・日本経済研究センター
「 金 融 研 究 リ ポ ー ト -社 債 市 場 活 性 化 へ の 5 つ の 提
言 -」 2010 年
15
・日本証券経済研究所『図説
日本の証券市場
2014 年 版 』
・ 日 本 証 券 業 協 会 「 FACT BOOK 2013」
・ 日 本 証 券 業 協 会 「 NISA 口 座 の 開 設 ・ 利 用 状 況 に つ い て 」 2014 年
・ 日 本 証 券 取 引 会 社 「 平 成 24 年 度
投 資 証 券 に 関 す る 全 国 調 査 」 2012 年
・日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会
20
「責任ある機関
投資家の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫ ~投資と対話を通じ
2014 年
て企業の持続的成長を促すために~」
・野 村 イ ン ベ ス タ ー リ レ ー シ ョ ン ズ「 個 人 投 資 家 モ ニ タ ー ア ン ケ ー ト 調 査 」2012
年
・ 野 村 資 本 市 場 研 究 所 「 日 本 の 投 資 信 託 の 純 資 産 残 高 推 移 」 2014 年
25
・ 野 村 資 本 市 場 研 究 所 「 株 式 市 場 主 要 取 引 所 の 株 式 時 価 総 額 推 移 」 2014 年
・野村資本市場研究所「米国の社債市場の検証とわが国社債市場を取り巻く環
境 変 化 に つ い て 」 2009 年
・野 村 資 本 市 場 研 究 所「 家 計 の 資 産 形 成 を 支 援 す る 制 度 の 在 り 方 に 関 す る 調 査 」
2014 年
30
・野村資本市場研究所「教育資金を通じた世代間資産移転促進制度に関する調
49
査 研 究 」 2013 年
「 -個 人 資 産 の 運 用 分 析 を 通 じ た 世 界 的 な 視 野 で の 産 業 金 融
・野 村 総 合 研 究 所
の 枠 組 み に 係 る 検 討 -報 告 書 」 2014 年
・野村総合研究所
5
「米国における未公開株取引」
2011 年
・ NRI Financial Solutions「 日 本 版 ス チ ュ ワ ー ド シ ッ プ ・ コ ー ド 推 進 に 不 可 欠
な 情 報 環 境 整 備 」 2014 年
・非上場株式の取引制度等に関するワーキング・グループ
「株式投資型クラ
ウドファンディング及びグリーンシート銘柄制度に代わる新たな非上場株式の
取引制度の在り方について」
10
2014 年
・ 二 上 季 代 司 ・ 代 田 純 『 証 券 市 場 論 』 2011 年
・ 柳 良 平 「 Equity Spread の 開 示 と 対 話 の 提 言 」 2013 年
・ DUDA
平 均 年 収 /生 涯 賃 金 デ ー タ 2013
・ FRB 「 Flows of Funds Accounts」 2013 年
・ ICI 「 Investment Company Fact Book」 2013 年
15
・ Jcast ニ ュ ー ス
「 SBI 証 券 、LINE で 株 取 引
ネ ッ ト で は「 セ キ ュ リ テ ィ は
大 丈 夫 ? 」 と の 声 」 2014 年
・ OECD
「 Pensions at a Glance 2013:OECD and G20 Indicators 」 2013 年
・ ク ラ ウ ド バ ン ク HP
・ マ ネ ッ ク ス 証 券 HP
20
・ 東 京 証 券 取 引 所 HP
・ 日 本 証 券 業 協 会 HP
・ 投 資 信 託 協 会 HP
・ 厚 生 労 働 省 HP
・ 財 務 省 HP
25
・ 金 融 庁 HP
・ 上 場 企 業 /優 良 企 業 ホ ー ム メ イ ト ・ リ サ ー チ HP
・ み さ き 投 資 株 式 会 社 HP
50
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