...

Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
滞水性地盤の止水法に関する土質化学的研究( Abstract_要
旨)
川地, 武
Kyoto University (京都大学)
1987-01-23
https://doi.org/10.14989/doctor.r6137
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
author
Kyoto University
氏
名
川
地
武
たけし
ち
か藷
っ
学 位 の 種 類
農
学
博
士
学 位 記 番 号
289号
論 農 博 第1
学位授与 の 日付
昭 和 6
2年 1 月 23 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5条 第 2項 該 当
学位論文題 目
滞 水 性 地 盤 の止 水 法 に 関 す る土 質 化 学 的 研 究
論文調査委員
教 授 久 馬 - 剛
(
主 査)
論
文
教 授 南
内
容
の
要
勲
教 授 千 田
貢
旨
わが国には地下水が豊富な地域が多 く,建設工事 に伴 う地下工事では地下水-の対処が工事の成否を支
配す る とい って も過言ではない。特に,都市の地下工事では滞水性の沖積層お よび洪積層を対象 とす るが,
この場合には各種 の止水技術が駆使 され る。本論文 は都市の地下工事 におけ る代表的 な止水法である地 中
連続壁工法お よび薬液注入工法の改良に関す る土質化学的研究の経過 と成果を述べた ものである。 ここで
用 い られている研究手法は従来建設分野で用 い られている土木工学や土質力学ではな く,土 の物理化学す
なわ ち土質化学であ り,著者は土質化学が建設 分野の施工技術の開発 ・改良に有効である との考えに もと
づいて研究を進めている。
論文 は四部か らるが,第一部 と第四部はそれぞれ序論 と結論であ り,研究の主要部 は第二部五章,第三
部七草 よ り構成 されている。第二部 は地 中連続壁工法におけ る安定液 として水溶性高分子 ゲルを用いた逸
泥 防止法に関す るものである。第一章では地 中連続壁工法の概要,安定液の機能 お よび逸泥防止の必要性,
従来の逸泥防止法を紹介 している。
第二章では逸泥防止に関す る基礎実験 として, ガラス玉に よる模擬地盤で浸透実験 を行い,地中の安定
g
e
n・
液 の浸透過程を検討 している。その結果,安定液の浸透が毛細管 内の粘性流体 の流動 と近似 し,Ha
Po
i
s
e
ui
l
l
e の式 な どで表 され ることか ら,逸泥 の防止には安定液の粘度あるいは降伏値を増大 させ ること
が有効である ことを述べている。
GuarGum) ゲル
第三章では高粘性流体 として開発 したガラク トマ ンナ ンを主成分 とす るグア-ガム (
の特性を述べている。 このゲルは, グア-ガムをホ ウ砂に よって 架橋 させた もので, その粘度は 2
0
0-
1
0
0
,
0
0
0セ ンチポアズの範囲に調節す る ことがで き,系の pH に よって溶液状か らゲル状に可逆的に変化
0-1-1
0
0c
m/
s
e
cのオ-ダ-の模擬地盤で も逸泥防止が可能
す る。 ゲルを用 いた浸透実験では 透水係数 1
であることが判 明 した。
第四章では グア-ガムゲルを極めて透水係数 の高い砂れ き地盤 の地 中連続壁工法に よる工事に適用 し,
当初懸念 された逸泥を防止 した事例を述べている。
-
1372 -
第五章では飲用水を揚水す る水源井戸の近 くで,地中連続壁工法を用 いた工事にグアーガムゲルを適用
した経過 と結果を述べている。 ここでは,本工事に先立ち計画地盤における逸泥 の有無お よび地下水水質
-の影響を確認す るための試験工事を行い, このゲルを用いた際の水質汚染の範囲お よび期間を明 らかに
している。そ して,本工事では この結果をふ まえ逸泥を防止す る とともに,水源井戸を汚染す ることな く
終了 している。
第三部は薬液注入工法における地盤改良効果の推定法開発に関す るものである。第一章では薬液注入工
法の概要 と現状を述べ,解決を要す る課題を提示する とともに,特に注入効果の判定に関す る実用的な方
法の開発が本工法の信頼性を確立す る うえで不可欠であることを述べている。
第二章では水 ガラス系の薬液を注入 した地盤における注入材の分布を把握す るため,非晶質 ケイ酸 の含
有量を化学分析に よ り測定す る手法を注入土に適用 し,注入材に よる土の間隙てん充率を求めている。他
方, このてん充率が室内実験で作成 した注入に よる固給体の形状や強度,あるいは透水係数を支配す る重
要 な要因であることを明 らかに している。
第三章では化学分析に よるてん充率測定法を砂地盤の四現場に適用 した結果を述べている。てん充率の
分布は注入方式に よって異なるが,その平均値は3
2
-5
7
%の範囲にあ り, ゲルタイム (ゲル化時間)の長
い注入材の場 合には比較的均一な分布を示す。 また,現場で も注入に よる地盤改良効果はてん充率の増大
につれて顕著 になる。
第四章では滞水性の砂れ き地盤に二重管 ダブルパ ッカー工法を適用 した際の注入効果 と注入材の分布を
調査 した結果を述べている。 ここでは, シール ドトンネルの掘削の際に切羽の土を定期的に採取 し,てん
充率の平均値が5
0
%以上であることを確認 し,注入に よる効果が十分であることを裏付けている。
第五章では各種 の注入工法を比較 し最適な ものを選択す る試験工事で,従来の土質試験 とともにてん充
率の測定を行い,各工法の注入材分布の特徴を明 らかに している。 また,瞬結 ゲル と緩結 ゲルを併用す る
複合注入工法における両者の最適 な比率をてん充率分布か ら考察 している。
第六章では水 ガラス系注入材の反応熱に着 目した室内実験を行い,注入材が反応 して ゲル化す る際に 3
-1
6℃の温度上昇を示す ことを明 らかに している。室内注入実験で も注入材が浸透す る と測定可能な温度
上昇が見 られ,温度上昇量か ら注入材に よる間隙てん充率を求めることがで きる。 この方法は繁雑な操作
を必要 としないので,現場での簡便 な地盤改良推定法 となる としている。
第七章では温度計測に よる方法を現場に適用 した結果を述べている。 この方法では,注入作業の最中お
よび直後に明瞭 な温度上昇が見 られ,温度上昇か ら求めたてん充率は,化学分析に よって求めたてん充率
とほぼ一致す る ことを明 らかに している。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
我が国では建設工事の重要部分を 占める地下工事の際の地下水対策,すなわ ち止水法の良 しあ Lが工事
の成否を左右す る といわれ る。本研究では地下水対策工法の うち都市土木工事に よく採用 され る地 中連続
壁工法お よび薬液注入工法の適用範囲の拡大,信頼性の向上を図るため,土質化学す なわ ち土の物理化学
の手法お よび考え方を導入 し,課題の解明を試みている。そ して, ここで用いた土質化学的手法が施工技
-1
3
7
3-
術の改良に も有効であることを明 らかに している0
本論文で評価すべ き第-の点は,
.地中連続壁工法を砂れ き地盤に適用す る際の問題点 とされていた逸泥
に よる地下水汚染や地盤崩壊を防止す るための実用的技術を開発 した ことである。 まず,ベ ン トナイ ト泥
水など安定液の地盤内での挙動を実験的に明 らかに し,安定液の浸透範囲を制御す るためには,その粘度
お よび降伏値を調節す る必要のあることを見出 した。そ して, この要件をみたす安定液 として天然のガラ
ク トマ ンナ ンをホ ウ砂に よって架橋 させた グア-ガムゲルを開発 した。 このゲルを実際の工事現場に適用
し,実用化 のための問題点を解決す るとともに, ゲルの逸泥防止効果お よび地下水汚染防止効果を確認 し
た。
評価すべ き第二の点は,薬液注入工法に よ り地盤改良を図る場合の注入効果の不確実 さを解消す るため,
注入地盤における注入材の分布状態を定量的に把握す る手法 として,土の注入材含有量測定法を考案 した
ことである。 この方法を実際の注入地盤に適用 した結果,従来全 くわか っていなか った注入地盤における
注入材の間隙てん充率が初めて明 らかにされた。
さらに評価すべ き第三の点は,薬液注入工法 におけるてん充率の重要性をふ まえ,注入材に よる間隙て
ん充率を よ り簡便に測定す る方法を開発 した ことである。す なわ ち,水 ガラス系注入材の反応熱に着 目し
た地中温度測定に よって温度上昇量か ら注入材 の間隙てん充率を求める式を導 き,その結果が化学分析に
よって求めたてん充率 とよく一致す ることを明 らかに した。 また実際に この方法を現場に適用 し,その精
皮,簡便 さ,即時性を確認 している。
うることを,室内実験だけでな く工事現場への適用に よって立証 してお り,土壌化学の応用分野の拡大に
寄与す る ところが極めて大 きい。
よって,本論文は農学博士の学位論文 として価値 あるもの と認める。
なお,昭和 6
1
年1
1月2
8日,論文並びにそれに関連 した分野にわた り試問 した結果,農学博士の学位を授
与 され る学力が十分あるもの と認めた。
-1
3
7
4-
Fly UP