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4.50M - 国立情報学研究所
研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 「学術評価を考える」 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の 意思決定を支援― ミヒール・コールマン (エルゼビア シニア・バイス・プレジデント) 講演要旨 書誌計量学に基づく分析手法を主に使用した、学術研究評価の概要を紹介する。まず、トップ 20 カ国の研究発表を質・量・ 最新性の面で比較する。次に日本が強みを持つ研究領域に注目した後、共同研究の現状について日本を例に説明する。さら に、英国のビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)と弊社の共同研究から得られた研究者の頭脳循環(brain circulation)についての知見を報告する。 ミヒール・コールマン エルゼビアのシニア・バイス・プレジデントで、学会、研究評議会や大学など、学術界のリーダ ーの方々との対話等、リレーションに力を注ぐ国際的なチームのリーダー。また、研究パフォー マンス指標等、イノベーション活動に関する記事の執筆などメディア対応も行う。 1995年にエルゼビアに入社し、色々な出版部門のディレクターを務め、その間に業界初のオンラ インジャーナルの一つであるNew Astronomyを創刊。Beilsteinデータベースを取り扱うドイツ支 社の代表も務めた。オランダのライデン大学を卒業後、フルブライト奨学生としてニューヨーク のコロンビア大学で宇宙物理学のPhDを取得。国際出版連合(IPA)のエグゼクティブ・コミッテ ィーの一員。京都で開催のSTS Forumには過去3年間参加し、2011年は講演者の一人。 国際競争・国際共同研究の全般的な増加傾向 Increase Increasein inGlobal GlobalCompetition Competition 国際競争の増加 国際競争の増加 国際競争が増加しており、国際的な学術的共同研究 NII参考和訳版 NII参考和訳版 への各国の支出を見ると、驚くことにどの国でも増大 しています(図 1)。研究開発投資が増えているので すから、これは非常に喜ばしいことです。アメリカが 大幅に伸びていますが、ひときわ目立つのは中国の動 向です。ただし、研究者としての立場から言えばこの データは外挿であり、そのため将来的にどうなるかに は常に大きな不確実性が付きまといます。 Source: Knowledge, Networks and Nations: Global scientific collaboration in the 21st century, The Royal Society, 2011 Source: Knowledge, Networks and Nations: Global scientific collaboration in the 21st century, The Royal Society, 2011 出典: 「知識、ネットワーク、国家―21世紀における世界の学術協力」英国王立協会(2011年) 出典: 「知識、ネットワーク、国家―21世紀における世界の学術協力」英国王立協会(2011年) 2 2 (図 1) National Institute of Informatics 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 1 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― 国際共同研究も増加しています(図 2)。私たちが 1996 年に統計作成を開始した際、世界の学術論文の 研究統括者の課題 われわれは、世界的に三つの大きな課題を耳にしま うち、外国人著者の参加を得て執筆されたものは約 す(図 4)。最初の課題は、投資を開始または継続す 27%でした。現在、その割合は 40%近くに達してい べき領域をどう見極めるかというものです。二つ目の ます。自国外の著者の協力を得て発表される論文の数 課題は、適切な人材をどのようにして採用するかです。 が、全般的に増加している傾向が見られます。 大学を運営する場合、どうやって適切な教員を見つけ、 彼らを確実に引き留めるかが問題になります。生産性 Increase Increasein inGlobal GlobalCollaboration Collaboration 国際共同研究の増加 国際共同研究の増加 の高い非常に優秀な教員を確保することが、大学や研 NII参考和訳版 NII参考和訳版 Proportion of the world’s papers produced with more than one international author Proportion of the world’s papers produced with more than one international author 世界の論文中、外国人著者が参加した論文の割合 世界の論文中、外国人著者が参加した論文の割合 究機関にとって非常に重要だということです。最後に 三つ目の課題として、学際的研究が増えつつある動向 Percent Percent 40 40 を受け、いかにして適切なチーム編成を行うかという 35 35 問題があります。私たちは、本当の意味で分野横断的 30 30 なチームを擁しています。以上が、主な課題の一部で す。当社が開発してきた、コンテンツと書誌計量学に 25 25 1996 1996 1997 1997 1998 1998 1999 1999 2000 2000 2001 2001 2002 2002 2003 2003 2004 2004 2005 2005 2006 2006 2007 2007 2008 2008 Source: Knowledge, Networks and Nations: Global scientific collaboration in the 21st century, The Royal Society, 2011 Source: Knowledge, Networks and Nations: Global scientific collaboration in the 21st century, The Royal Society, 2011 出典: 「知識、ネットワーク、国家―21世紀における世界の学術協力」英国王立協会(2011年) 出典: 「知識、ネットワーク、国家―21世紀における世界の学術協力」英国王立協会(2011年) 基づくさまざまなサービスを用いて、これらの課題へ の取り組みを支援します。 (図 2) さらに財源は減少する一方、競争が激化しています (図 3)。国立衛生研究所(NIH)のデータによると、 Through Throughour ourdata, data,we wecan canprovide providevarious variousinsights insightsthat thathelp help answer answerkey keyquestions questionsfor forresearch researchexecutives executives データを通じ、研究統括者の疑問解消に役立つさまざまな洞察を提供 データを通じ、研究統括者の疑問解消に役立つさまざまな洞察を提供 付与される研究助成金の数は減っているのに、応募者 はむしろ増えているといいます。その結果、成功率は 今や 20%に低下しており、研究助成を受けられるの A A How Howdo dowe weidentify identify niche nicheareas areastotonurture nurture ororcontinue continuetotoinvest investin? in? What Whatwe wehear heararound aroundthe theglobe… globe… 世界各地で耳にする声… 世界各地で耳にする声… [Insert customer [Insert customer C B C B challenge] challenge] Who Whodo dowe wetarget targetfor for recruitment recruitmentororretention? retention? How Howwe weassemble assemble multi-disciplinary multi-disciplinaryteams? teams? どんな人材を採用し確保 どんな人材を採用し確保 するか? するか? 学際的チームをどうやっ 学際的チームをどうやっ て編成するか? て編成するか? は応募者 5 人中 1 人に過ぎません。 投資を促進・継続すべ 投資を促進・継続すべ きニッチ分野を、どう きニッチ分野を、どう やって見極めるか? やって見極めるか? 限られた財源をめぐり競争が激化 限られた財源をめぐり競争が激化 Increased IncreasedCompetition Competitionfor forLimited LimitedResources Resources NII参考和訳版 NII参考和訳版 5 NII参考和訳版 NII参考和訳版 5 (図 4) リーダーシップ ― トップ 20 カ国の比較 リーダーシップはさまざまな形で定義できますが、 ここでは三つの基準を選びました。最初の基準は論文 Increase Increaseininapplications, applications,but butlower lowerawards awardsand andsuccess successrate rate 応募者は増加する一方、助成金の数と成功率は減少している 応募者は増加する一方、助成金の数と成功率は減少している Source: NIH IMPAC, Success Rate File, April 15, 2011 Source: NIH IMPAC, Success Rate File, April 15, 2011 出典: NIH IMPAC、成功率ファイル(2011年4月15日) 出典: NIH IMPAC、成功率ファイル(2011年4月15日) (図 3) 4 の数とシェアであり、これは大学 1 校または 1 国当 4 たりの論文作成数です。二つ目の基準は、質の指標と なる被引用回数です。三つ目の基準は、時代の先端を 行っているかという最新性です。 National Institute of Informatics 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 2 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― NII参考和訳版 Citation NII参考和訳版 Citationper perArticle Articleof ofTop Top21 21Countries Countries (Based on number of articles published between 2006‐2010) (Based on number of articles published between 2006‐2010) トップ 20 カ国の研究論文数のデータを示します (図 5)。Scopus に基づく、2010 年までの 5 年間の 被引用回数 被引用回数 Citation per Article Citation per Article 8 データです。青い部分が論文数で、アメリカが 200 7 万本以上と間違いなく 1 位であることがすぐ分かり 6 5 ます。次いで中国が 100 万本前後です。日本も 50 万 4 3 本程度とトップ 5 カ国に入り、世界の舞台で非常に 2 重要なプレーヤーであることが分かりますが、以降の 1 0 小国になると件数が急激に減少しています。次に伸び 率に目を向けると、様相は全く変わってきます。中国 トップ21カ国の論文当たり被引用回数 トップ21カ国の論文当たり被引用回数 ( (2006~2010年に発表された論文に基づく) 2006~2010年に発表された論文に基づく) 8 7 6 5 4 3 2 1 0 Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) , based on articles from SciVal Spotlight for co‐citation analysis. Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) , based on articles from SciVal Spotlight for co‐citation analysis. 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月)、共引用分析のためSciVal Spotlightから抽出した論文に基づく 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月)、共引用分析のためSciVal Spotlightから抽出した論文に基づく が 20%以上の大幅な伸びを示し、インドも 15%に迫 る勢いです。また研究新興国として、台湾やトルコな 三つ目の基準は、私たちが最新性と呼ぶものです ど全く新たな国家グループも台頭しており、これらの (図 7)。2012 年に発表された論文の参考文献が、す 国は実績が確立した国々をはるかに上回るスピードで べて 2011~2012 年の論文であった場合、時代の最先 成長しています。アメリカと日本の伸び率は、わずか 端を走っており最新性が極めて高いと言えます。逆に 数%に過ぎません。絶対数と伸び率では、全く異なる 論文中に引用されている文献がすべて 50~60 年代の 構図になっています。 ものであれば、最新性は非常に低くなります。数学の Research ResearchOutput Output//Growth Growthof ofTop Top20 20Countries Countries NII参考和訳版 NII参考和訳版 世界では、1950 年代に正しかったことが今も正しい (Based (Basedon onnumber numberof ofarticles articlespublished publishedbetween between2006-2010) 2006-2010) 論文数 論文数 # of Articles # of Articles 88 (図 6) トップ トップ20 20カ国の研究成果 カ国の研究成果/ /伸び率 伸び率 ( 2006~ ~2010 2010年に発表された論文に基づく) 年に発表された論文に基づく) (2006 でしょうが、生命科学の分野では、引用文献が古けれ 伸び率 % 伸び率 % Growth % Growth % ば通常は時代遅れの論文と考えられます。国家別に見 て最新性が非常に低い場合、それはすなわち引用文献 が最新のものでないことを意味します。 NII参考和訳版 State NII参考和訳版 Stateof ofthe theArt Art of ofTop Top21 21Countries Countries (Based on number of articles published between 2006‐2010) (Based on number of articles published between 2006‐2010) 引用論文の最新性 引用論文の最新性 Recency of the Work Cited トップ21カ国の最新性 Recency of the Work Cited トップ21カ国の最新性 ( 2006~2010年に発表された論文に基づく) ( 2006~2010年に発表された論文に基づく) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012), based on articles from SciVal Spotlight for co‐citation analysis. Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012), based on articles from SciVal Spotlight for co‐citation analysis. 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月)、共引用分析のためSciVal Spotlightから抽出した論文に基づく 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月)、共引用分析のためSciVal Spotlightから抽出した論文に基づく 77 (図 5) リーダーシップの二つ目の基準は、質の指標である 被引用回数です(図 6)。スイスなどは、論文 1 本当 たりの被引用回数が 7 回以上と高い実績を挙げてお り、オランダもほぼ 7 回となっています。被引用回 数に限っていえば、スウェーデンやベルギーといった ヨーロッパの小国も健闘しています。日本は 4 回強 とまずまずの数字ですが、5~6 回となっているドイ ツ、イギリスなどの研究大国には劣ります。一方、研 究新興国は回数が低く、中国は 2 回、トルコ、イン ド、ブラジルも同じく 2~3 回の間に位置します。 National Institute of Informatics ‐3 ‐3 ‐2.5 ‐2.5 ‐2 ‐2 ‐1.5 ‐1.5 ‐1 ‐1 Average Average Switzerland Switzerland China China Netherlands Netherlands Germany Germany Belgium Belgium Italy Italy Sweden Sweden Spain Spain United Kingdom United Kingdom United States United States Korea (Republic of) Korea (Republic of) France France Australia Australia Canada Canada Japan Japan Taiwan Taiwan Poland Poland Brazil Brazil Turkey Turkey India India Russian Federation Russian Federation ‐0.5 0 ‐0.5 0 0.5 0.5 Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) , based on articles from SciVal Spotlight for co‐citation analysis. Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) , based on articles from SciVal Spotlight for co‐citation analysis. 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月)、共引用分析のためSciVal Spotlightから抽出した論文に基づく 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月)、共引用分析のためSciVal Spotlightから抽出した論文に基づく 1 1 1.5 1.5 99 (図 7) 被引用回数が最も高かったスイスがここでも高い評 価となり、最新性で 1 位となっています。オランダ、 それにドイツ、ベルギー、イタリアも非常に良い評価 を得ています。影響力が高い国は、最新性も高いとい う傾向が若干見受けられます。日本は平均を少し下回 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 3 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― り、ロシア、インド、トルコ、ブラジルなどの一部の こうして「マップ・オブ・サイエンス」を作成しま 研究新興国も低い値を示しています。実際、非常に古 した。これが日本のマップになります(図 9)。円の い文献を引用しています。ただし中国は唯一の例外で、 外側の色づけされた部分は各専門分野を表し、コンピ 驚くべきことに、彼らは各分野の最新の研究結果を正 ュータサイエンス、物理学、化学、工学、地球科学、 確に把握し、最新の文献を引用しています。これは昨 生物学、バイオテクノロジー、感染症、医学、ヘルス 今新たに生じた傾向であり、私としても想定外でした。 サイエンス、脳研究、社会科学に分かれています。大 被引用回数が多ければ最新性も高いという全体的な相 小合わせ約 400 個の円が描かれており、この円一つ 関関係は、中国には当てはまりません。 一つが、日本が他国と比べ秀でている分野を表します。 円が大きいほど論文数が多くなっています。中心部に 日本の強みとなる研究 ― 概要 もたくさんの円が散らばっていますが、これは学際的 Scopus のデータ 5 年分を用いて引用回数が高い参 な研究です。例えば化学、工学、医学などの分野から 考文献を抽出し、詳細な共引用分析を実施しました。 10 万の専門領域で、多様な領域について、主導的存 在(リーダー)が誰かという選定を実施しており、国 単位での比較である国家がリーダーである場合もあれ ば、大学などの研究機関ごとの比較で、ある機関が主 Spotlight SpotlightMap Mapfor forJapan Japanas asaaNation Nation 日本の 日本のSpotlight Spotlightマップ マップ Multi-disciplinary Multi-disciplinary strengths •circles strengths •circlesaway awayfrom fromcircumference circumference • circles with multi-colored bars 脳研究 脳研究 BRAIN RESEARCH BRAIN RESEARCH 工学 工学 ENGINEERING ENGINEERING • circles with multi-colored bars ヘルスサイエンス ヘルスサイエンス HEALTH SCIENCE HEALTH SCIENCE な円は強みを示します(図 8)。すなわち、その国 地球科学 地球科学 EARTH SCIENCE EARTH SCIENCE 生物学 生物学 BIOLOGY BIOLOGY (または機関)が、リーダーリップをとれる領域です。 リーダーシップの基準は三つあり、一つ目は発表件数 バイオテクノロジー バイオテクノロジー BIOTECHNOLOGY BIOTECHNOLOGY 医学 医学 MEDICINE MEDICINE INFECTIOUS DISEASE INFECTIOUS DISEASE Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) に関するリーダーシップ、二つ目は引用回数に関する リーダーシップ、三つ目は最新性に関するリーダーシ ップです。これは、どれだけ時代の先端を行っている かを示すもので、イノベーションの指標と言えるでし ょう。 NII NII参考和訳版 参考和訳版 化学 化学 CHEMISTRY CHEMISTRY 社会科学 社会科学 SOCIAL SCIENCES SOCIAL SCIENCES 導的地位にあるとみなせる場合もあります。この分析 に基づいてマップを作成しています。マップ上の小さ PHYSICS 物理学 PHYSICS 物理学 コンピュータサイエンス コンピュータサイエンス COMPUTER SCIENCE COMPUTER SCIENCE 感染症 感染症 (図 9) 協力を得ており、真の意味で学際的な強みと言えます。 この方法を用いて共引用分析から出発し、ボトムア ップ方式でこうしたマップを作りました。分野横断的 な領域を明らかにできるという意味で、これは非常に 強みとなる研究分野の特定: 強みとなる研究分野の特定:Scival ScivalSpotlight Spotlightマップ マップ 効果的なアプローチであり、別のやり方をとれば当然、 NII参考和訳版 NII参考和訳版 Measuring Measuringresearch researchstrengths: strengths:Scival ScivalSpotlight Spotlightmaps maps Peer-reviewed Peer-reviewed materials materials References References ‘Highly-cited’ ‘Highly-cited’ Co-Citation Co-Citation References References Analyses Analyses 分野横断的あるいは学際的な領域は明確にならないで C C しょう。トップダウン方式ではそれができないため、 A A Paper 1 Paper 1 E B E D B 私たちはボトムアップ方式を選んだのです。 D Papers from UPM Papers from UPM Ref. Paper A Ref. Paper A Ref. PaperB Ref. PaperB 日本の論文発表数は、既に見たように 50 万本以上 C C Competency No. 1 Competency No. 1 Paper 2 Paper 2 です(図 10)。このうちほぼ 3 分の 1 が、主導的地位 A A Competency No. 2 Competency No. 2 Ref. Paper A Ref. Paper A Ref. PaperB Ref. PaperB E B B E D D にある論文として強みに数えられ、日本には 400 ほ Paper 3 Paper 3 どの強みがあります。分野別の内訳をグラフに示しま Ref. Paper A Ref. Paper A Ref. Paper B Ref. Paper B す。外側の円グラフは、日本のすべての論文の内訳で ピアレビュー論文 ピアレビュー論文 参考文献 参考文献 「高引用」の 「高引用」の 参考文献 参考文献 共引用分析 共引用分析 (図 8) 11 11 す。医学専門領域が突出しているのが目につきますが、 例えば数学・物理学も目立ちます。 National Institute of Informatics 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 4 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― 日本の研究活動の概要(2006~2010年) 日本の研究活動の概要(2006~2010年) います。日本はコンピュータサイエンス、数学、物理 National NationalPublication PublicationOverview Overview(2006-2010) (2006-2010) Publication PublicationOutput OutputOverview Overview 発表論文に基づくデータ 発表論文に基づくデータ Articles Articlesfrom fromJapan Japan Articles ArticlesininCompetencies CompetenciesofofSpotlight Spotlight Number Numberofofcompetency competency 564,076 564,076 183,419 183,419(32.5%) (32.5%) 398 398 NII参考和訳版 NII参考和訳版 日本の論文数 日本の論文数 Spotlightの「強み」領域に Spotlightの「強み」領域に 含まれる論文数 含まれる論文数 強み」研究領域の数 強み」研究領域の数 Subject SubjectArea AreaOverview Overview 分野内訳 分野内訳 学、化学、工学に強く、医学でも大きな円が確認でき ます。他方、イギリスと比較すると、イギリスは化学 分野が比較的弱く空白が目立ちます。コンピュータサ イエンスも、パッとしません。ですが日本と同様、医 学とヘルスサイエンスでは多くの円が認められ、社会 外側の円グラフ: 全論文(分野別) 外側の円グラフ: 全論文(分野別) 内側の円グラフ: 「強み」領域に含まれる論文(分野別) 内側の円グラフ: 「強み」領域に含まれる論文(分野別) 科学は大きな強みとなっています。イギリスと日本の 間にはかなり違いがありますが、アメリカはほぼ全分 Outer ring: All published articles by subject area Outer ring: All published articles by subject area Inner ring: Articles in competencies, by subject area Inner ring: Articles in competencies, by subject area 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) 野でリーダーになっているため、面白みに欠けるマッ 14 14 プになっています。この結果は、アメリカの科学研究 (図 10) 内側の円グラフは、日本がリーダーシップをとって いる論文です。これはすべて、マップ上の円に当たる 日本の強みとなる文献です。どちらのグラフも分布は おおむね似通っていますが、いくつか違いもあります。 例えば社会科学の論文は全体の 2%を占めますが、こ の分野でリーダーシップをとっている論文は皆無です。 これは社会科学の研究の質に全く関係しません。社会 の質と最新性によるものでしょう。生命科学と医学で も大きな強みを見せています。対照的に中国のマップ は、興味深いものです。中国は生命科学と医学が弱い 反面、コンピュータサイエンス、数学・物理学、化学、 工学を強みとしています。その意味で、日本とやや重 複しています。 他国のマップ 他国のマップ Other OtherCountries’ Countries’Maps Maps NII参考和訳版 NII参考和訳版 科学という学問が文化と密接に結びついているため、 非英語圏である国がグローバルリーダーになるのは非 常に難しいことです。数学・物理学はさらに興味深く、 656,143 656,143Publications Publications 418 418Competencies Competencies 564,076 564,076Publications Publications 398 398Competencies Competencies 論文数 656,143 論文数 656,143 「強み」研究領域 418 「強み」研究領域 418 論文数 564,076 論文数 564,076 「強み」研究領域 398 「強み」研究領域 398 日本の論文はこの分野の全発表論文のおよそ 15%を 占めるのに対し、リーダーシップをとっている論文と いう観点では 4 分の 1 近くになります。つまり日本 は、数学・物理学の分野では非常に進んでいるという 2,306,011Publications 2,306,011Publications 1,817 1,817Competencies Competencies 1,250,460 1,250,460Publications Publications 885 885Competencies Competencies 論文数2,306,011 論文数2,306,011 「強み」研究領域 「強み」研究領域 1,817 1,817 論文数 1,250,460 論文数 1,250,460 「強み」研究領域 885 「強み」研究領域 885 ことです。この分野で、日本が主導的地位にあること 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 15 Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) が示されています。 15 (図 11) 他国のマップと分布 日本のマップを、イギリス、アメリカ、中国などの 他国と比べたものがあります(図 11)。日本は論文数 が 50 万本、強みは 400 研究領域です。イギリスの強 みも、ほぼこれと同数であり、アメリカは論文数が 200 万本、強みは 1,800 研究領域となっています。中 国は論文数が 100 万本以上、強みは 900 研究領域近 くあります。強みは、いくつかの特定分野に固まって 日本の強みとなる研究分野 ― 機関・研究分野別の考察 研究実績のある分野をさらに詳しく検討すると、新 たなマップの使い道が見えてきます。日本のマップ上 には、世界的に成長していて、かつ日本が市場シェア を伸ばしている分野が含まれています(図 12)。例え ばロボットシステム、核物理学、電気化学、植物生理 学、医学などの分野です。 National Institute of Informatics 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 5 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― 強みの一つであるロボット工学という専門分野に着 アメリカは長年高い実績を挙げていますが、実際には 目すると、世界で 4 万 7,000 本の論文が発表されて やや減少気味です。日本は 2 位ですが、最新データ います(図 13)。この分野の伸び率は 10%なので、 ではナンバー1 の位置にいます。他の国は中国以外は 順調に成長しています。このうち 8,000 本が日本の論 かなり安定しており、中国は最初こそ少なかったもの 文で、日本の伸び率は 11%と非常に高い数値です。 の劇的な増加を見せ、今は明らかにトップ 3 入りを この研究領域ではロボット工学、実験、制御、センサ 果たしています。この分野において、発表論文数では ーなどを扱っています。日本のトップ著者、その研究 日本はトップ国の一つです。日本の論文数はひときわ 領域、そしてキーワードからはロボットシステムだけ 目を引き、アメリカと中国が後を追っています。 でなく、データマイニングの非常に重要な存在である ロボット工学の分野では慶應大学が重要な研究機関 ことがわかります。この研究領域の著者は、Lecture であり、次いで東京大学、大阪大学の名前が挙がりま Notes in Computer Science や IEEE、そして日本の す(図 15)。日本の研究機関が数多く見られ、個人別 学術誌に論文を発表しています。Scopus のデータベ に見ても重要な著者はすべて日本人で、トップ 8 人 ースは、日本の学術誌も対象としており、そうした雑 を占め、これは日本として素晴らしい成果です。 誌が数百誌含まれていると思います。 また、変化という側面からデータを追跡することも できます(図 14)。トップ諸国に注目すると、1 位の 日本が強みを有する研究分野 日本が強みを有する研究分野 Research ResearchArea Areawhere whereJapan Japanoutperforms outperformsothers others Filter Filtercompetency competencyof ofJapan Japan 「強み」の条件の絞込みを実施 「強み」の条件の絞込みを実施 Robotic Systems Robotic Systems Professor, Keio Univ Professor, Keio Univ Associate Professor, Keio Univ Associate Professor, Keio Univ Nuclear Physics Nuclear Physics Chief Scientist, Riken Chief Scientist, Riken Professor, Osaka Univ Professor, Osaka Univ ロボットシステム ロボットシステム 慶應大学教授 慶應大学教授 慶應大学准教授 慶應大学准教授 クローズアップ: クローズアップ: 強みとなる研究分野 強みとなる研究分野#2 #2ロボットシステム ロボットシステム Zoom ZoomIn: In:Research ResearchCompetency Competency#2 #2Robotic RoboticSystems Systems 発表論文数の推移 Trend TrendofofArticles ArticlesPublished Published 発表論文数の推移 NII参考和訳版 NII参考和訳版 NII参考和訳版 NII参考和訳版 Top TopCountries Countriesトップ諸国 トップ諸国 Worldwide Worldwide 世界 世界 核物理学 核物理学 理研主任研究員 理研主任研究員 大阪大学教授 大阪大学教授 Carbon, Electrochemistry Carbon, Electrochemistry Scientist / NIMS Scientist / NIMS Professor / Waseda Univ Professor / Waseda Univ カーボン(電気化学) カーボン(電気化学) NIMS 博士 NIMS 博士 早稲田大学教授 早稲田大学教授 Endoscopy (Stomach Neoplasm) Endoscopy (Stomach Neoplasm) Associate Professor / Univ of Tokyo Associate Professor / Univ of Tokyo Medical Doctor / National Cancer Center Medical Doctor / National Cancer Center Top TopCountries Countries トップ諸国 トップ諸国 Plant Physiology Plant Physiology Professor / Kobe Univ Professor / Kobe Univ Professor / Kyoto Univ Professor / Kyoto Univ 内視鏡 (胃新生物) 内視鏡 (胃新生物) 東京大学准教授 東京大学准教授 国立がんセンター医師 国立がんセンター医師 植物生理学 植物生理学 神戸大学教授 神戸大学教授 京都大学教授 京都大学教授 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) 17 17 クローズアップ: クローズアップ: 強みとなる研究分野 強みとなる研究分野#2 #2ロボットシステム ロボットシステム クローズアップ: クローズアップ: 強みとなる研究分野 強みとなる研究分野#2 #2ロボットシステム ロボットシステム Zoom ZoomIn: In:Research ResearchCompetency Competency#2 #2Robotic RoboticSystems Systems Zoom ZoomIn: In:Research ResearchCompetency Competency#2 #2Robotic RoboticSystems Systems NII参考和訳版 NII参考和訳版 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 18 18 (図 13) National Institute of Informatics 19 (図 14) (図 12) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 出典: SciVal Spotlight 2010 (2012年5月) 19 Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Top TopInstitutions: Institutions:World World トップ研究機関: トップ研究機関:世界 世界 Top TopAuthors: Authors:World World トップ著者: トップ著者:世界 世界 Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) Source: SciVal Spotlight 2010 (May 2012) NII参考和訳版 NII参考和訳版 20 20 (図 15) 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 6 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― イギリスの研究実績の評価 ― BIS レポート 新たな共同研究の機会 日本は年間 10 万本以上の論文を発表しており、お 私たちは、イギリスのビジネス・イノベーション・ おむね 4 分の 1 が外国人著者との共同執筆です(図 職業技能省(BIS)のためレポートを作成しました。 16)。ここでは彼らを、海外共同研究者と呼びます。 「研究大国としてのイギリスの現状を評価してほし 他国と比較すると、極めて興味深いことに、イギリス い」との依頼を受け、BIS レポートを発表したのです。 は論文数や強みの数で統計上日本とほぼ同じであるに Scopus のデータをはじめ、レポートのため多くのデ もかかわらず、日本よりはるかに国際的です。海外と ータを使用しました(図 18)。ScienceDirect の利用 の共同研究は、日本の 25%に対しイギリスは 40~ 統計を使い、 「イギリスで最もダウンロード回数が多 45%となっています(図 17)。アメリカは無論、国が い論文は何か?」 「イギリスの論文のダウンロード回 大きいので国内共同研究の機会に恵まれていますが、 数が、他国と比べて多い国はどこか?」といった質問 それでも 30%が海外との共同研究で、外国人著者の に回答できるようにしました。加えて OECD や 増加に伴いこの数字も上昇しつつあります。他方、中 WIPO のデータ、イギリスの高等教育財政審議会の 国は興味深いケースで、やや減少傾向にあり、現時点 データも集めました。全部合わせて 2.3 ギガバイト、 で海外との共同研究は 15%と、今日期待されるほど 論文 2,000 万本、引用回数 2 億回、ダウンロード回 国際的ではありませんが、それも今後変わる可能性が 数 30 億回という大規模なデータになりました。イギ あります。 リスの強みや学術研究マップの分析も実施し、次いで Overview: Overview: Research ResearchOutput Outputfrom fromJapan Japan 概要:日本の研究成果 概要:日本の研究成果 Trend Trendof ofinter/national inter/nationalcollaboration collaboration 国内・国際共同研究の推移 国内・国際共同研究の推移 # of article # of article 特定の分野別に詳しく検討し、イギリスの研究者の協 力を得てデータの解析を行いました。さらに共同研究 NII参考和訳版 NII参考和訳版 ネットワークや頭脳循環についても検討しました。 120,000 120,000 国内共同研究 国内共同研究 100,000 100,000 Domestic Domestic collaboration collaboration 80,000 80,000 60,000 60,000 国際共同研究 国際共同研究 40,000 40,000 International International collaboration collaboration 20,000 20,000 00 2004 2005 2004 2005 International International Collaboration Collaboration 24.7% 25.8% 24.7% 25.8% Rate Rate 国際共同研究率 国際共同研究率 2006 2006 2007 2007 2008 2008 2009 2009 26.7% 26.7% 27.2% 27.2% 27.0% 27.0% 26.3% 26.3% Source: SCIMAGO (Based on Scopus data) Source: SCIMAGO (Based on Scopus data) 出典: SCIMAGO (Scopusデータに基づく) 2222 出典: SCIMAGO (Scopusデータに基づく) BIS BISレポートのデータ:量的側面 レポートのデータ:量的側面 BIS BISreport reportinputs: inputs:quantitative quantitative Data データ Data データ ••Scopus Scopus ••ScienceDirect ScienceDirectusage usage ••OECD OECD ••HESA HESA ••WIPO WIPO ••AUTM AUTM ••HEFCE HEFCE Analyses 分析 Analyses 分析 Collaboration Collaborationnetworks networks 共同研究ネットワーク 共同研究ネットワーク (図 16) NII参考和訳版 NII参考和訳版 • データベース112、2.3 ギガバイト • データベース112、2.3 ギガバイト • 論文数2000万本以上、引用回数2億回以上、ダウンロード回数30億回 • 論文数2000万本以上、引用回数2億回以上、ダウンロード回数30億回 • 指標値 4500万個 • 指標値 4500万個 • 最も多い指標: 600万個以上 • 最も多い指標: 600万個以上 ••112 112database databasetables, tables,2.3 2.3Gigabytes Gigabytes ••20MM+ 20MM+articles, articles,200MM+ 200MM+citations, citations,3B 3Bdownloads downloads ••45MM 45MMindicator indicatorvalues values ••Largest Largestindicator: indicator:6MM+ 6MM+values values Brain BrainCirculation Circulation 頭脳循環 頭脳循環 NII参考和訳版 NII参考和訳版 Overview: Overview:County Countycomparison comparison(1/2) (1/2) 概要:国別比較 概要:国別比較(1/2) (1/2) Trend Trendof ofinternational internationalcollaboration collaboration––Rate Rate(%) (%)国際共同研究の推移 国際共同研究の推移––割合 割合(%) (%) (%) (%) 50 50 2004-2009 2004-2009 CAGR CAGR 各国の国際共同研究論文の割合(% 各国の国際共同研究論文の割合(%)) % %ofofinternational internationalcollaboration collaborationarticles articlesper percountry country 年平均成長率 年平均成長率 Competencies Competencies 強み 強み 25 25 (図 18) 45 45 40 40 : 4.6% : 4.6% イギリスはどこと共同研究を行っているのか、そし : 1.2% : 1.2% て適切な国と協力しているのかという問いに対し、図 Japan Japan : 1.6% : 1.6% 中の丸のサイズが大きいほど協力関係が強いことを示 UK UK 35 35 イギリス イギリス 30 30 US US 25 25 アメリカ アメリカ 20 20 15 15 日本 日本 10 10 55 China China : ‐3.3% : ‐3.3% 00 します(図 19)。緑色は、分野別に重みづけした引用 中国 中国 2004 2004 2005 2005 2006 2006 2007 2007 2008 2008 2009 2009 Compound Average Growth rate (CAGR) of Japan is similar to US Compound Average Growth rate (CAGR) of Japan is similar to US Source: SCIMAGO (Based on Scopus data) Source: SCIMAGO (Based on Scopus data) 日本の年平均成長率(CAGR)は、アメリカと同水準 日本の年平均成長率(CAGR)は、アメリカと同水準 出典: SCIMAGO (Scopusデータに基づく) 23 出典: SCIMAGO (Scopusデータに基づく) 23 (図 17) National Institute of Informatics 影響率がイギリスより高い国です。黄色は、引用影響 率がイギリスより低いものの世界平均よりは高い国で、 赤色は世界平均を下回る国です。このマップによると、 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 7 研究活動分析における革新的な取り組み ―Discovery, Collaboration, Evaluation 機関の意思決定を支援― 一番協力関係が強い相手はアメリカであり、アメリカ 一時的な頭脳移動グループは 1.24 と、非常に高い生 は影響率の高い国であるためこれは非常に望ましいこ 産性を示します。国外に出ないグループは 0.60 と最 とです。ドイツ、フランス、イタリアやヨーロッパの も生産性が低くなりました。さらに、イギリスを出て 小国、ブラジル、オーストラリア、それにもちろん中 1~2 年以内に帰国するサブグループもいて、彼らの 国、日本、ロシアとも共同研究が行われています。 生産性は 1.66 と最も高い数値になっています。以上 から、頭脳流出は起こっていないと分かります。頭脳 UK: UK:collaboration collaborationnetworks networks イギリスの共同研究ネットワーク イギリスの共同研究ネットワーク NII参考和訳版 NII参考和訳版 循環が非常に上手くいっていて、イギリスは生産性が 高い優秀な人材を誘致しています。特にイギリス出身 で、国外に出て戻って来るグループは極めて高い生産 性を示しています。もし私が教育省の大臣なら、研究 するでしょう。また国外に出るよう積極的に促すと思 引用影響率 Field-weighted 分野別に重み付けした Field-weighted 分野別に重み付けした citation impact 引用影響率 citation impact 者が短期留学後に母国に戻れるよう特別助成金を付与 います。 Less than world average Less than world average 世界平均未満 世界平均未満 また、イギリス人なら誰もが思う「みんなアメリカ Greater than world but less than UK average Greater than world but less than UK average イギリス平均未満だが、世界平均以上 イギリス平均未満だが、世界平均以上 Greater than UK average Greater than UK average イギリス平均以上 イギリス平均以上 26 26 (図 19) に行ってしまう」という問題の真偽についても検証し ました。その結果、頭脳流出グループのうち、アメリ カに行く人は 28%に過ぎないことが分かりました。 頭脳循環の調査 頭脳流入も 26~27%程度です。ただ一点指摘すると、 次に頭脳循環ですが、私たちが頭脳循環を調べ始め イギリスから国外に出て戻ってきた人々の半数は、渡 た当初、イギリス政府関係者、特に政治家はイギリス 航先がアメリカで、彼らは非常に高い生産性を示して が頭脳流出に悩まされていると信じていました。国が います。これは興味深い事実です。もう一つ気づくの 素晴らしい大学を作って学生を集めても、卒業後の報 は、各グループの規模を見ると、ずっとイギリスにと 酬が少ないため国外に去ってしまう、つまり他国のた どまる研究者は 37%程度です。15 年の調査期間中に め教育を行っていることになり、政府にとって懸念す 37%が国内に残っていることから、すなわち 63%は べき状況であると考えられていました。そこでさまざ 何らかの形で持続的に移動を続けているか、一時的に まな移動パターンを検討しました(図 20)。まずイギ 国外に出ていることになります。 リスを離れ他国に行ってしまう人々、これはいわゆる 頭脳流出に当たります。次にイギリスに入って来る 頭脳循環調査 頭脳循環調査 人々がいます。これは頭脳流入です。それから、いっ たん国外に出て比較的短期間で戻ってくるグループが 25.4% 25.4% UK UK 帰国者流出 帰国者流出 17.8% 17.8% の相対的な生産性は 0.92 で平均を下回ります。頭脳 流入グループの生産性は 1.14 と、平均を上回ります。 研究者: 10.0% 研究者: 10.0% 相対的な生産性: 相対的な生産性: 0.92 0.92 相対的なキャリア 相対的なキャリア の長さ: 1.17 の長さ: 1.17 一時的 一時的(主に国外) (主に国外) 国外 国外 一時的 一時的(主にイギリス) (主にイギリス) 29.2% 29.2% 一時的な頭脳移 一時的な頭脳移 動 動 研究者: 44.4% 研究者: 44.4% 相対的な生産性: 1.24 相対的な生産性: 1.24 相対的なキャリアの 相対的なキャリアの 長さ: 1.08 長さ: 1.08 帰国者流入 帰国者流入 研究者: 2.6% 研究者: 2.6% 相対的な生産性: 1.66 相対的な生産性: 1.66 相対的なキャリアの長さ: 1.23 相対的なキャリアの長さ: 1.23 4 グループの生産性を調べ、平均を 1 としました。 各グループの生産性を順に見ると、頭脳流出グループ 頭脳流出 頭脳流出 研究者: 30.8% 研究者: 30.8% 相対的な生産性: 1.35 相対的な生産性: 1.35 相対的なキャリアの長さ: 1.11 相対的なキャリアの長さ: 1.11 研究者: 13.6% 研究者: 13.6% 相対的な生産性: 0.98 相対的な生産性: 0.98 相対的なキャリアの長さ: 1.05 相対的なキャリアの長さ: 1.05 ずっと残るグループがあります。 National Institute of Informatics 28.2% 28.2% 研究者: 4.2% 研究者: 4.2% 相対的な生産性: 0.95 相対的な生産性: 0.95 相対的なキャリアの長さ: 1.20 相対的なキャリアの長さ: 1.20 いて、2 年以内のこうした移動を、ここでは一時的な 頭脳移動と呼びます。最後に、国外に出ずイギリスに NII NII参考和訳版 参考和訳版 流出 流出 研究者: 5.8% 研究者: 5.8% 相対的な生産性: 0.91 相対的な生産性: 0.91 相対的なキャリアの長さ: 1.15 相対的なキャリアの長さ: 1.15 イギリスのみ イギリスのみ 研究者: 37.2% 研究者: 37.2% 相対的な生産性: 0.60 相対的な生産性: 0.60 相対的なキャリアの長さ: 相対的なキャリアの長さ: 0.82 0.82 49.1% 49.1% 流入 流入 研究者: 5.8% 研究者: 5.8% 相対的な生産性: 0.89 相対的な生産性: 0.89 相対的なキャリアの長さ: 1.13 相対的なキャリアの長さ: 1.13 頭脳流入 頭脳流入 研究者: 8.5% 研究者: 8.5% 相対的な生産性: 1.14 相対的な生産性: 1.14 相対的なキャリアの長 相対的なキャリアの長 さ: 1.16 さ: 1.16 26.6% 26.6% 28 28 (図 20) 第 1 回 SPARC Japan セミナー2012 May 25, 2012 8