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自分たちの手で守る コスタリカ(PDF/2.32MB)
特集 中米・カリブ 息づく文化 ひろがる絆 喫することができる。ポアス火山 まざまなツアーを通じて自然を満 年、注目を集めるこの国では、さ る。1940年に国土の %の面 森林の存続が危ぶまれたことがあ しかし、そんなコスタリカでも にした。 らず、まるで人間活動を排除する 居住地が含まれているにもかかわ の中には、一部、人々が生活する 保護区に指定されている。保護区 写真︵9ページの専門家の写真を除く︶=今村健志朗︵フォトグラファー︶ 環 境 立 国として有 名 なコスタリカ。 自 然 環 境 を 守るために行われてきた数々の政 策の裏で、 住 民はある深 刻 な 問 題 を 抱えていた。 そこで取り入れられたのが、住 民が保 全 活 動に 〝 参 加 〟する新しい発 想だ。 自 分たちの国の自 然を、 自 分たちの手で守る 環境立国に 隠された現実 もその一つだ。この日も、フラン サン・ホセ と数十分。突然、目の前に壮大な ス、ドイツ、インドと世界各国か や放牧地の開墾によって、 年に 積を占めていた森林面積は、農地 だ。この問題を解決するのにうっ かのような管理が行われていたの は %にまで減少。その後、ガソ ここは中米の国、コスタリカに 湖が広がり、思わず言葉を失う。 の取り組みを取材するため、3月 ていることをご存知だろうか。そ 自然には、日本の協力が一役買っ など、数々の先駆的な政策が成果 た地主に補助金が支給される制度 が支払われる制度や、植林を行っ リン税を通じて森林保有者に対価 ノウハウを生かそうと始まったの 境を守ってきた経験がある。その 公園で人々が生活しながら自然環 や阿蘇のように、ほとんどの国立 だ っ た。 ﹁日 本 に は、小 笠 原 諸 島 てつけのパートナー、それが日本 ら観光客が訪れていた。 あ る﹁ポ ア ス 火 山 国 立 公 園﹂ 。エ を上げ、森林面積は %以上に回 実は、コスタリカが誇る豊かな 噴 火 口 が 現 れ た。噴 煙 の 先 に は、 熱帯植物に囲まれた道を歩くこ バラ・デル・コロラド 野生生物保護区 のの、まだ肌寒い 神秘的なエメラルド色をした火山 87 下旬、ようやく桜が咲き始めたも 21 中、早 速、い くつ の街に向かう道 ら首都サン・ホセ 包まれる。そこか て心地よい空気に 出た瞬間、暖かく 空港から一歩外に び出した。現地の 日が続く東京を飛 リカでは、国土の4分の1が自然 澤正喜J ICA専門家だ。コスタ ま し た﹂ 。こ う 指 摘 す る の は、大 間にあつれきが生じるようになり を重視したことにより、住民との 猟に対する取り締まりの強化だけ ﹁行 政 担 当 者 が、森 林 伐 採 や 狩 されていたことが明らかになる。 組みによって別の問題が引き起こ 復した。ところが、こうした取り とタッグを組み、環境のモニタリ 機関、通称﹁SINAC﹂の職員 資源の管理を担当する現地の行政 チーフアドバイザーとして、自然 大澤専門家は、プロジェクトの ェクトです﹂ 。 が、 〝住 民 参 加 型〟の 管 理 プ ロ ジ 住民と向き合い続けた 一人の日本人 もの自然公園を目 50 08 May 2015 May 2015 09 Costa Rica コツーリズム発祥の地として、近 標高2704メートルのポアス火山は、 サン・ ホセからも近く人気の観光地だ さまざまな野鳥が生息するバラ・デル・コロラド地区で は、生態系の変化を調べるため住民もモニタリング活 動に参加。運がよければ、頭と首が黒く、非常に珍しい 「ハビルー」に出会えることも (中央の鳥) SINACの職員に、 これまでの取り組みに ついて説明する大澤専門家(今年2月)。 プロジェクト開始当初、 日本人は大澤専 門家ただ一人だったという 75 コ スタリカ from 特集 中米・カリブ 息づく文化 ひろがる絆 たという。 ﹁釣りの雑誌を読むと、 よく目にするので、それなら〝昔 〝昔 は よ く 釣 れ た〟と い う 記 述 を の環境に戻したい〟と思ったので す。また、 年ほど前に青年海外 セ に ほ ど 近 い 事 務 所 を 訪 ね る と、 などに取り組んでいる。サン・ホ ングや啓発活動、セミナーの開催 傾 け て い た。 ﹁ナ マ ケ モ ノ に は 指 ちが、ガイドの説明に熱心に耳を むと、モーラ村から来た小学生た を見ることができる。しばらく進 るようになった。 に、住民も次第に心を開いてくれ 緒に取り組んでいこうという姿勢 専門家だ。まず、 農業を営むマリア・ この地区で活動している菊地格夫 出迎えてくれたのは、一昨年から 保全活動に取り組んでいますよ﹂ 。 ﹁こ こ の 住 民 た ち は、積 極 的 に 人が暮らしている。 ウ、ヘビといった多種多様な生物 公園の中では、イグアナやチョ してもらうことにした。 澤専門家。せっかくなので、案内 公園の管理も行っています﹂と大 Oです。湿地帯を再現した国有の 物の標本や目録を作っているNG 建 って い た。 ﹁国 内 に 生 息 す る 生 N B io︶と 名 付 け ら れ た 施 設 が ています﹂と、一台のカメラを指 境や生態系のモニタリングも行っ さらに、菊地専門家は﹁自然環 を取り入れている畜産農家もいる。 せる﹁バイオガス・ダイジェスター﹂ 調理用として使えるガスを発生さ ま た、牛 や 豚 の ふ ん を 発 酵 さ せ、 こ だ わ り、農 薬 は 使 っ て い な い。 てくれたマリアさん。有機栽培に るなり、自慢の畑の数々を紹介し ョウの栽培も始めたのよ﹂ 。到着す はキャベツ、こっちはネギ。コシ ルイサさんの畑に向かった。 ﹁これ 高じて環境分野に興味を持ち始め い頃から大の釣り好きで、それが そんな大澤専門家自身は、小さ する。 われることが多いのです﹂と説明 盛んで、ここは学習の場として使 家 は、 ﹁コ ス タ リ カ は 環 境 教 育 も 子が目を輝かせている。大澤専門 が3本しかないんだって﹂と男の 参加すると水道を止められる﹂な さ ん だ。初 め の 頃 は、 ﹁集 ま り に 環境教育を担当するアナ・マリア の存在が欠かせない。その一人が、 ある背景には、SINACの職員 こうした取り組みが定着しつつ 菊地専門家は笑顔を見せる。 意識が高まっているようです﹂と 地区の自然を守っていこうという 活 動 を 行 っ て い て、 ﹁自 分 た ち の 自身も、野鳥を観察して記録する で 台設置されている。また住民 時間観察するためのもので、全部 生息するこの地には、約2500 帯ならではの珍しい生物が数多く ル地区となっている場所だ。湿地 生物保護区。プロジェクトのモデ にあるバラ・デル・コロラド野生 らせた、ニカラグアとの国境付近 サン・ホセから車を約3時間走 り組むことが大切。環境分野の国 ﹁何 よ り も 地 域 住 民 と 一 緒 に 取 い﹂と期待を込める。 るので、多くの人に見に来てほし はいろんな種類の鳥が生息してい る。マ リ ア さ ん も、 ﹁こ の 地 区 に 出していく方針を掲げる村もあ と連携し、質の高い乳製品を売り デアが生まれている。チーズ工場 活用したツアーなど、面白いアイ クな食材を使った料理や、自然を く方針がまとまった。オーガニッ 〝観 光〟を 軸 に 村 を 発 展 さ せ て い 少しずつ変わってきた 住民の意識 その隣に、生物多様性研究所︵I した﹂と振り返る大澤専門家。一 係を築いていくことを大切にしま も現地に足を運び、一人一人と関 する不信感が強かったので、何度 て い た か ら だ。 ﹁住 民 の 行 政 に 対 切り開く〝粗放的な放牧〟を行っ 畜産農家が、広大な面積の森林を の普及などに力を入れた。多くの 農業の実現や、生産性の高い牧畜 なった保護区で、環境に配慮した 008年。当初は、モデル地区と プロジェクトが始まったのは2 くなりました﹂ 。 全に携わりたい〟という思いが強 し た こ と か ら、 〝中 南 米 の 環 境 保 活動を行い、自分の力不足を痛感 協力隊としてパナマで生態調査の 20 際的なモデルとなって引っ張って さした。地区に生息する生物を リンダ・ビスタ村で行われた研修 で、村の開発方針について議 論。観光開発が進んでいる地 区の視察も行った 24 がっていきました﹂とアナ が、子どもから大人へと広 らにクラスで伝えたこと つ人が来るようになり、さ 環境教育のクラスに少しず が ら 回 数 を 重 ね る う ち に、 味を持っているのか探しな が、 ﹁子 ど も た ち が 何 に 興 人集めに苦労したという にしたセミナーも開催。その担当 表してきたほか、中米諸国を対象 議の場でプロジェクトの成果を発 題だ。これまでさまざまな国際会 していくことも、今後の重要な課 他の保護区、さらには国外に共有 意気込む。モデル地区での経験を、 フラード・フェルナンデス長官も きたい﹂とSINACのフリオ・ いけるように、さらに推進してい を 務 め た 小 川 啓 子 専 門 家 は、 ﹁環 境保全はどこの国でもテーマにな 村開発やマーケティングに がコンサルタントと共に農 ンダ・ビスタ村では、住民 だ。マリアさんが暮らすリ 続可能なものにすること を経済の発展につなげ、持 今後の目標は、環境保全 されている。 ら世界に広がっていくことが期待 一丸となった取り組みが、これか に向け、国と地域、そして住民が ないコスタリカの自然。その保全 多くの観光客を引き付けてやま ていきたいです﹂と話す。 と知識として取りまとめ、発信し っている。この取り組みをきちん 関 す る 研 修 を 重 ね た 結 果、 環境分野で世界の リーダーを目指す さんは話す。 20 10 May 2015 May 2015 11 子どもたちの学びの場としても活用されている INBio公園。ツアーの参加者が、事前に知識 を得るために訪れることも ど と 根 も 葉 も な い 噂 を 立 て ら れ、 野生生物の生息域を調査す るためにカメラトラップを仕掛 ける。夜間にはピューマも確 認されたという 「バイオガス・ダイジェスター」 を導入 した住民を訪れたアナさん (左)。日 頃から住民とのコミュニケーションを 大切にしている SINACのフリオ・フラード・フェルナンデス 長官。気候変動問題の観点からも、国を 越えた取り組みが必要だと話す イグアナを間近で見る ことができる