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曲折なくば屏 風は立たぬ

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曲折なくば屏 風は立たぬ
地域経済と産業動向
2006 年 10
月
曲折なくば屏風は立たぬ
統計上は過去最長の景気拡大期間となりそうな中で、新政権が始動する。その船出では、月例
経済報告から「デフレ」の文言が消える。景気水準は変化局面にある。新政権は、「景気拡大」の
金屏風が掲げられた時期に船出するので、景気指標を尺度とした成果を見せにくいのかも知れな
い。
だが、国民の景気実感を変える課題は残っている。「景気が拡大している」中で長期金利は低
下し、住宅ローン金利は不安定な動きを見せている。銀行貸し出しの増加が好感されているのは
GDPの伸張が連想されているからだろう。ただ、個人住宅向け、企業向け融資ともに政府系金
融機関の貸し出しは減少している。国民の実感と同様に、景気の様相も多様で不安定だ。
不安定の象徴は、変化の影響度が産業や地域によって異なることだ。10月から都市ガス料金は
値下がりする。他方で電気料金は東京電力が値上げ、その他の電力は据え置きになる。航空運賃
は国際線で「燃料特別付加運賃」が引き上げられる。「高額療養費制度」の限度額も引き上げられる。
消費者の生活実感とすれば、デフレとインフレが同居する恰好になってくる。
そんな環境下で、食料消費支出を都市別比較で見ると底流での変化を見てとることができる。
日本の家計は消費支出に占める食品の割合が低下してきた。一般に、エンゲル係数の低下は生活
水準の向上を暗示する。しかし、この低下の背景には世帯人員が減少したことで消費支出総額が
膨らんだことと、家計が意図して食品向け支出を削減したことが推定される。その一端を、食料
への投資選択の変化に見ることができる。生活実感と、景気回復との間に存在している落差がど
う埋まり、どう固定化されて行くのかの政治変化が10月に始まる。
一貫して低下してきた食費割合
過去40年の家計消費変化を見ると、1980年を境にして大きな変化があった。非消
費支出の割合が増加傾向を強めたのとは対照的に、食費の構成費(エンゲル係数)は一
40%
貫して低下し、構成比が逆転
食費を絞り、非消費支出の上昇に対応している家計
全国勤労者世帯
35%
したからだ。非消費支出とは
月間支出額に占める割合
30%
非消費支出
税金や社会保険料の他、預貯
食料
金などを指している。預貯金
25%
その他消費支出
20%
は減少しても、社会保障費の
15%
10%
低下はなかったのでこの支
5%
水光熱費
Source:総務省家計消費調査
19
63
19 年
65
19 年
67
19 年
69
19 年
71
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95
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19 年
99
20 年
01
20 年
03
20 年
05
年
0%
-1-
出項目はいま、増加から高止
まりに転じている。
大阪/兵庫地域経済レポート
地域経済と産業動向
2006 年 10 月
この項目の負担増は、水光熱費や住居費などの住生活費用の伸びよりも圧倒的に
高かった。それでも家計が維持できたのは、食料支出負担が抑制されていたことに
よる効果が大きい。
傾向の変化は都市によって異なる
食料費の支出総額を東西都市で比較して見ると、ここ5年間でも大きく変化して
食料支出の実額は低下して来た
100
いる。大阪市と神戸市では低
3ヵ月移動平均での食料費
千
95
東京都
90
落傾向を強め、東京都では弱
含みの動きを見せている。
85
このことは、一国の経済規模
80
75
が拡大に向かっているとし
神戸市
70
ても、核となっている主要都
65
大阪市
Source:総務省家計調査
市間でさえ消費構造に温度
60
00/1
00/8
01/3
01/10
02/5
02/12
03/7
04/2
04/9
05/4
05/11
06/6
差を生んでいることを暗示している。
コメ消費減少、麺類はゆるやかな増加
全体として食糧支出の構成比が低下したのは、支出総額の増加と、食品価格の安
定・下落効果が大きい。とりわけ、主食であるコメの消費は金額、重量ともに長期
減るコメ消費、麺類がじわりと増加
低落が続いている。国民一人
12
Kg
11
当りのコメの消費量は今年
10
6月で前年同月を0.4%上回
9
って3ヵ月連続の増加 (消費
8
7
6
者世帯で実数は4.657Kg) に転じ
コメの月間購入重量
て、コメ消費量の減少傾向は
5
4
麺類の月間購入重量
転換期を迎えているかには
3
見える。
Source:総務省家計調査 全国
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/3
00
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1
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1
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05
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/1
1
06
/3
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/7
2
しかし、一人当たりのコメ
購入金額は760円。これは21ヵ月連続の低下だ。価格の低いコメへ需要が流れてい
るのが原因だ。だとすれば、コメの需要は嗜好の変化よりも経済的要因に依存して
いる。価格は、食糧費用の決定に大きく関わっていると言える。
コメ消費量と支出金額が減少している一方で、小幅ながらも安定的に増加してき
た品目に麺類がある。嗜好の多様化と食糧費抑制姿勢が、結果的に食費総額を抑制
してきたと考えることができる。
-2-
大阪/兵庫地域経済レポート
地域経済と産業動向
2006 年 10 月
ダークホースはパスタ
麺類消費が底上げ傾向を見せてきた中でも、安定的にその地位を固めてきた品
1.6
Kg
1.5
目にパスタ (スパゲッティ) が
安定化が進んできたスパゲティ消費量
ある。パスタが日本に伝わっ
2000年1月=1として表示
スパゲティ
たの は1895年だ と言われて
1.4
1.3
いるが、国内生産が始まって
1.2
家庭でも普及し始めたのは
1.1
1954年。その後、国内生産量
1
0.9
が飛躍的に増加し、1976年以
0.8
降はイタメシブームも生じ
06
/6
05
/1
1
05
/4
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/9
04
/2
03
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/1
2
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/5
01
/1
0
01
/3
Source:家計消費調査 全世帯
00
/8
00
/1
0.7
即席麺(カップ麺含む)
て食品としての地位を固め
た。ここ数年の動きを見ると、即席麺が漸減している。その一方で、昨年が国産パ
スタ誕生50周年販促キャンペーン年だったこともあって、着実に増加している。国
内大手は今年も生産能力増強投資を計画している。
パスタは阪神地区の地産品でもある
これに合わせるように、国内のパスタ生産量は増加曲線を描いている。2005年の
生産量は154,746㌧(うち家庭用89,587㌧、業務用65,159㌧=日本パスタ協会調べ)で前年比
15,000
㌧
国内生産量は緩やかな拡大に向かっている
2.8%増加した。
3ヵ月移動平均で表示
14,500
パスタは国内生産をして
14,000
いるナショナルブランド7
13,500
社が輸入品を手がけており、
13,000
専門商社も含めれば、多数の
12,500
事業者が販売している。小規
12,000
模生産者も多数存在する市
11,500
Source:農林水産省米麦加工食品生産動態統計
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1
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1
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/3
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/7
11,000
場だ。しかし、日産能力が10
㌧を越す工場は9ヵ所しか
なく、大手寡占の市場でもある。国内産の主要供給元7社のうち2社は大阪に、1
社は兵庫県に本社がある。また、大手の生産拠点が兵庫、大阪の阪神間にも立地し
ている。阪神間はパスタの一大生産拠点を形成している。
パスタ輸入の一大拠点でもある阪神
阪神間が一大生産地域を形成している一方で、阪神港湾は輸入面でも大きな役割
-3-
大阪/兵庫地域経済レポート
地域経済と産業動向
2006 年 10 月
を果たしている。1980年、パスタの国内生産量は10万㌧台に達したが、輸入量は8
千㌧で6%にしか過ぎなかった。ところが、2002年には輸入比率が40%を越した。
昨年の総輸入量は26万3千㌧で過去最高を記録した。
輸入量が増加しているのは、主原料であるデュラム小麦を調達しやすい合衆国に
30%
国内メーカーが生産拠点を
輸入比率が2 0 %を越えてきた阪神港
大阪港と神戸港合計の対全国比率
設けて現地生産量を増強し
25%
ている事が背景にある。
20%
神 戸 港 は 2004 年 に 輸 入 量
15%
で横浜港に追い抜かれた。大
手製粉メーカーが横浜に物
10%
大阪港と神戸港の合計の対全国比率
流センターを設置したため
Source:財務省貿易統計
98
/1
0
99
/4
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/4
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/1
0
05
/4
05
/1
0
06
/4
5%
だ。それでも、神戸、大阪両
港の合計輸入量は輸入拠点として重要な地位にある。
世帯年齢構造と食品選択にも関係がある
大阪市の場合:乾麺の季節性は低下
250
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0 乾
大阪市
乾麺
200
スパゲッティ
150
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50
250
200
06/7
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タ
00/1
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ス0
神戸市の場合:季節性が復活
神戸市
乾麺
スパゲッティ
150
100
50
パ
0
円
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00/7
01/1
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03/7
04/1
04/7
05/1
05/7
06/1
06/7
ス
タ
麺
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
乾
0 麺
家計から見て、主食のコメを補って
いるのはパン類と麺類。このうち、パ
スタの類似商品は乾麺だ。その乾麺と
パスタの消費支出を大阪市と神戸市
で比較したのが左のグラフ。乾麺支出
がピークを刻むのは毎年7月。夏場に
需要が増す乾麺に対して、パスタは年
間を通して需要が安定している。
通年食品としてパスタが定着化し
ている一方で、大阪市では毎年夏場定
番食品の出番が減ってきた。他方、神
戸市での夏場定番乾麺への季節性消
滅は早かった。しかし、ここ3年は復活傾向にある。神戸市家計における65歳人員の
割合は急変動した後再び増加に転じ、大阪市ではゆるやかな上昇を描いている。人員
構成の変化と投資効率が高い食品への選好が食料支出を左右している。
(神保)
本資料は、参考情報の提供を目的としたものです。いかなる契約の締結も解約をも勧誘するものではありません。記載内容は、9月 21 日までに新聞その
他の情報メディアによる報道、官・民間調査機関による各種刊行物、インターネットホームページ等で公表された資料に基づいて作成していますが、その
正確性、完全性を保証するものではありません。主張や結論は、作成時点での執筆者の判断によるもので、資料発行/配布機関の公式見解を表明するもの
ではありません。見解は、その後の状況に応じて予告なく変更されます。
既刊分は池田銀行ホームページhttp://www.ikedabank.co.jp/h/h1001.htmlからご覧頂くことができます。
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