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私たちの暮らしを支える税金

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私たちの暮らしを支える税金
私たちの暮らしを支える税金
山形市立第二中学校 教諭
奥 山
渉
1 実践内容について
国や時代を問わず、「税」はとても重視されてきた。とりわけ近代以降は、国民から集めた税を用いて、社会資
本を整備したり社会保障制度を整えたりして、国民生活の向上が目指されてきた。しかし、現在の日本では少子高
齢化が進み、人口の減少が予想される中で、今までの税制では様々な不都合が起こり始めている。将来にわたって、
より良い社会を築いていくために国民一人ひとりが「税」への理解を深め、財政の安定化を図るために「税」のあ
り方を真剣に再考する時期に来ている。
そのような状況の中で、生徒にとって「税」や「財政」という言葉は、聞いたことがあっても具体的にイメージ
するのが難しいもので、それらが自分たちの生活とどのように関わっているのか、よく分からない状態にある。し
かし、先に挙げた時期を乗り切っていく主役は、間違いなく今の生徒たちである。今回の実践を通して、具体的な
事例と関連づけながら「税」と自分たちの生活との関わりを理解し、「税」が社会に与える影響や必要性を実感さ
せ、より良い社会を作る形成者としての自覚を育む内容にしたい。
2 子供たちの実態と指導者のねらい
(1)子供たちの実態(男子14名 女子15名
計29名)
この単元を授業するにあたり、「税」に関するアンケートを実施した。結果は以下の通りである。
Q1.公民の授業に、興味を持っていますか?
・興味がある 8名
・やや興味がある 14名
・あまり興味がない 7名
・興味がない 0名
Q2.あなたは、どんな税金を知っていますか?(複数回答可)
・消費税 22名
・関税 5名
・地方税 3名
・酒税 1名
・たばこ税 1名
・自動車税 1名
Q3.税金は必要だと思いますか?
・必要だと思う 15名
・とちらとも言えない 12名
・必要ないと思う 2名
Q4.税金に対して、どのようなイメージを持っていますか?
・無駄遣いが多い。
・複雑で難しいイメージ。
・「税」=「消費税」
Q5.税金について、知りたいことや疑問に思うことをあげてください。
・税金が何に使われているか?
・どんな税金があるのか?
・消費税率はどうなるのか?
上記アンケートから分かるように、本学級の生徒は比較的公民的分野への興味・関心が高く、意欲的に取り組
む生徒が多い。一方で、普段からニュースや新聞などに興味を持って見る生徒は少なく、税金について「必要で
ある」と回答する生徒が多かったが、税金の種類や使い道、またその役割について正確に捉えられている生徒は
見られなかった。
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(2)指導者のねらい
アンケート結果を踏まえ、まずは税金の種類や税のしくみをしっかり捉えさせ、将来の担い手として税金の使
い道などに対し正しい判断ができるよう指導していきたい。その上で、税に関する現在の状況、課題、今後の展
望などを考えさせ、税金と自分たちの生活との関わりを捉えさせていきたい。特に、政府の財源不足が叫ばれる
中で、将来の国民に重い負担となってのし掛かってくることを、統計資料などを通して理解させていきたい。
3 実践計画
(1)単元名
「国民生活と福祉」
(2)目標
国や地方公共団体の経済活動に対して関心を高め、租税の意義と役割、少子高齢社会における財政上の課題に
ついて意欲的に追究している。
【社会的事象への関心・意欲・態度】
国民の生活と福祉の向上を図るために、国や地方公共団体が果たしている経済的役割について、税源の確保と
配分の観点や、対立と合意、効率と公正などの見方・考え方を活用して公正に判断できる。
【社会的な思考・判断・表現】
写真資料や統計資料などから財政や社会保障、日本経済の課題に関する情報を読み取ることができる。
【資料活用の技能】
国民の生活や福祉の向上を図るために国や地方公共団体が果たしている役割、少子高齢化と社会保障の充実や
環境の保全などの財政上の課題について理解することができる。 【社会的事象についての知識・理解】
(3)指導計画
小単位
政府の仕事と租税
おもな学習活動
・資料をもとに社会資本や公共サービスにつ ・私たちの暮らしと税
・VTR「マリンとヤマト 不
いて調べる。
1
指導資料
・租税の種類について捉える。
思議な日曜日」
・租税の大まかなしくみについてまとめる。
財政のはたらき
・統計資料をもとに国の歳入と歳出のあらま ・私たちの暮らしと税
しについて調べる。
2
・財政のはたらきについて理解し、財政の課
題について考える。
3
社会保障のしくみ
・社会保障の基本的な考え方、日本の社会保 ・最新公民資料集(浜島書店)
障制度について捉える。
少子高齢化と財政
4
・統計資料から少子高齢化の進展と社会保障 ・私たちの暮らしと税
の現状についてまとめる。
・少子高齢化が進展する中で、社会保障制度
のあり方を考える。
- 26 -
小単位
おもな学習活動
指導資料
公害の防止と環境の保 ・年表などから、公害が発生した背景や原因 ・最新公民資料集(浜島書店)
5
全
についてまとめる。
・環境問題が深刻化していく中で、一人ひと
りが出来る対策を考える。
6
世界の中の日本経済
・日本経済の状況と課題について理解し、将 ・私たちの暮らしと税
来のあり方について考える。
・最新公民資料集(浜島書店)
4 実践のポイント
(1)道路や橋、横断歩道の整備などの身近な具体物を通して、自分たちの生活と税との関わりが具体的にイメージ
できるように配慮する。また、ビデオ教材「マリンとヤマト 不思議な日曜日」を用いて補足させる。さらに、
平成24年度版中学校社会科用学習資料「わたしたちのくらしと税」の資料も用いて、「公立学校の生徒1人あ
たり年間教育費の税金での負担額」を知ることで、税の恩恵を受けていることを実感させる。
(2)教科書や資料集、平成24年度版中学校社会科学習資料「わたしたちのくらしと税」を用いて、国税と地方税
直接税と間接税、累進課税制度などの税の種類やしくみについて掴めるようにし、また景気と税、財政政策との
関わりがつかめるようにする。
(3)単元のまとめとして、現在の日本経済について考えた際、「税金がどのように使われることが望ましいと考え
るか」「消費税増税など税制改革の動きについてどう考えるか」など、自分の考えをしっかりと持たせたグル
ープ内での話し合いを通して、税金についての自分の考えをまとめさせる。
5 子供たちの反応
(1)ビデオ教材「マリンとヤマト 不思議な日曜日」を鑑賞しての感想
・あまり意識していなくても、身近なところに税金が使われていることに気付かされました。教科書の裏表紙に
「この教科書は国民の税金によって無償で支給されている」と書かれてあることにも気付き、税金が無くなった
ら私たちの負担が大きくなってしまうことを実感しました。税金によって私たちの生活が保たれていることに感
謝し、もっと税金について理解を深めないといけないと思いました。
・税金についてのビデオを見て、税金は私たちの生活にとって必要なものであるということが分かりました。最
初税金が無くなれば無駄なお金を払うことがなくていいと思ったけど、税金が無くなると、救急車も呼べないし、
交番に行ってもお金がかかるし、道路を渡るにもお金がかかってしまい、今とは比べものにならないほど不便に
なることが分かりました。
・税金が無くなれば・・・と思っていましたが、ビデオを見て、こんなにも環境や社会が変わるのか、とびっく
りしました。税金にも様々な種類があり、その中には私が聞いたこともない税金もありました。税金の使い道が
よく分からなかったところがありましたが、ビデオを見て、税金とは自分たちの生活や社会をより良くするため
のものだということが分かりました。でも、使い道を間違えると社会に悪影響を与えることもあるので、税金は
国民全員のために使わなければならないと思いました。
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(2)単元を終えての感想
・社会保障制度がしっかり整備されていることで、安心して暮らすことが出来ることが分かりました。そのため、
自分は税金を必ず納めたいと思いました。しかし、自分が高齢者になったときに社会保障制度が成り立っていら
れるのか、すこし心配です。政府には、税金の無駄遣いを少しでも少なくして、将来のために有効利用してもら
いたいです。
・日本の経済状態が良くないことはニュースや新聞などでなんとなく感じていましたが、授業を通してその状況
を知ることができました。また、日本がものすごい借金大国であることにも驚きました。その中で、歳入と歳出
を比べたときに、必要額に対して税収が全く足りていない状況を知りました。借金はそのままにはできないので、
増税する意味は理解できましたが、同時に歳出を減らす努力も必要だと思いました。
・授業で消費税増税にについて考えましたが、増税すべきかすべきでないのかについてまだ明確な答えは出せま
せんでした。増税のメリット・デメリットそれぞれがあり、どちらを優先させるとよいのかの判断が難しかった
です。でも、これからテレビのニュースや新聞などに興味を持っていろんな情報を得ながら、今後のために考え
ていきたいと思います。
6 資料
・平成24年度版「私たちの暮らしと税」(企画:山形県租税教育推進協議会 制作:仙台国税局)
・ビデオ「マリンとヤマト 不思議な日曜日」(企画:国税庁 制作:(財)大蔵財務協会)
・「最新公民資料」(株式会社 浜島書店)
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