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私たちのくらしと税金 - 国税庁ホームページ

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私たちのくらしと税金 - 国税庁ホームページ
私たちのくらしと税金
~消費税アップは本当にいいの?~
山形市立宮浦小学校 教諭
槙
正 智
1 実践内容について
社会保障・税一体改革の関連法案が国会で成立し、連日のようにテレビのニュースや新聞で増税になるという報道
がなされている。そのことも影響しているのか、子どもたちにとっての税金のイメージとは、
「家のお金を奪うもの」
「人を苦しめてきたもの」という負を想像させる一方向的な見方であった。その一方で、
「税金」は誰が何のために
納めているのか、いったい何に使われているのか、ということを考えたことのある子どもはほとんどいなかった。
このような子どもたちの実態から、一番身近な消費税に焦点を当てて、
「消費税10%に賛成か反対か」を検討さ
せていくこととした。増税=負担という単純な見方ではなく、私たちの生活と税が密接に結びついていることや日本
の国家予算の状況、今後の日本の人口変化など多面的な視点で自分の考えを構築していってほしいと考え、以下の実
践を行った。
2 子どもたちの実態と指導者のねらい
(1)子どもたちの実態(6年1組 男子11名、女子12名 計23名)
税金という言葉を知っていますか。
・知っている 22人
・知らない 1人
税金は、誰が払っているでしょうか。
・父母、祖父母 ・大人 ・国民 ・成人 ・社会人 ・働いている人 ・買い物をする人
・20才~60才の国民 ・日本に在住する全ての人
税金には、どんな種類があるでしょうか。
・消費税(21人)
・国民税(2人)
・学校税・健康税 ・印税 ・住民税 ・民主税
・農税・環境税・社会保険税・環境税
複数回答
税金は、どんなことに使われているでしょうか。
・学校 ・車いすを買う ・体の不自由な人に使う ・国の借金を返す ・年金 ・道路
・国で新しいものを作るとき ・震災で困っている人 ・工場
・公園 ・輸出入 ・公務員の給料
税金というと、どんなイメージがありますか。
・国民からお金をたくさん取る ・悪いイメージ・全員が必ず払わないといけない(嫌、怖い、ひどい)
・迷惑 ・家のお金を奪っていく ・人を苦しめてきた ・国のためのもの ・社会に役立つ
・困っている人を助ける ・大事な所にも使うが、無駄も多いもの ・政治とかに関係するもの
税金は必要だと思いますか。
・必要
23人
・不必要 0人
-1-
(2)指導者のねらい
・さまざまな資料を活用しながら、税の徴収の仕組みや種類、使われ方などについて正しい知識を身につけさせる。
・自分たちの生活に一番身近な「消費税」増税について自分の考えを話し合うことで、税金の使われ方を決めてい
る政治への参加意識を高めさせたい。
3 実践計画(8時間計画)
時
主な学習活動
指導上の留意点
間
1
税金ってなんだろう
・学習資料「わたしたちのくらしと税金」を活用し、税
2
○学習資料「わたしたちのくらしと税金」の○×
金の意味や使い道などについて概要をとらえられるよ
うにする。
クイズをする。
○収入をもとに、家計を考え、国の財政について
・
「税制について考えてみよう」を活用し、自分なら家
計をどのように組むかを考えさせ、国の予算と比較させ
話し合う。
ながら日本国の財政状況をとらえられるようにする。
3
税金の仕組みや大切さを知ろう
・税の仕組みや税金の必要性を中核にしたお話を伺い、
○山形税務署の方から、税金について話をお聞き
税金についての正しい知識を得たり、税について新たな
疑問をもたせたりする。
する。
○税金の仕組みについて知る。
・税金についての疑問を解決していくことができるよう
○税務署の方に質問をする。
にする。
4
税や日本の財政について調べよう
・国税庁のホームページや新聞、図書の本などで調べた
5
○インターネットを中心に、税金や財政状況につ
り、家族に聞いたりしながら、課題についての理解を深
いて調べる。
める。
○消費税10%に対する自分の考えをまとめる。
・討論に必要な資料や記事は、ノートにメモをしながら
賛成か反対かという考えを決めるようにする。
6
「消費税10%に賛成か反対か」について討論を ・資料を提示しながら、自分の考えを発表するようにす
7
しよう
る。
○賛成か反対かのどちらかの立場をとり、資料な
・考えを深めることを目的とし、互いの意見を聞くよう
どを活用しながら自分の考えを発表する。
にする。
○おたがいの意見を出し合い、消費税についての
考えを深める。
8
学習のまとめをしよう
・友達の意見をとりいれながら、ノートに考えをまとめ
○消費税10%について、自分の考えをまとめる。 るようにする。
○自分の考えを発表する。
4 実践のポイント
(1)税金って何だろう(1、2時間目)
-2-
事前に調査したアンケート結果から、消費税について知っていることを全体で確認
した。
「税があがると大変」
「いやだ」などの話から、税金ってなにに使われているの
かなと疑問をもたせ、
「私たちのくらしと税金」の表紙にある「○×税金クイズ」を
活用し税金の使い道について考えさせた。わたしたちの生活に直接関わっている税金
について学んでいく中で、消費税率を上げる必要があるかという学習課題につなげて
いった。
次に、
「1ヶ月の家計を考えよう。
」という課題に取り組んだ。どのように家計を考
えていったのかを話し合ったなかで、収入を元に支出を考えていくことが健全だとい
う結論に至った。そこで、
「税制について考えてみよう」にある「日本の財政を家計
にたとえたら」を提示した。子どもたちは、国の借金が多額に毎年出ていることに気づき、びっくりしていた。
また、なぜ、こんなにお金が足りないのか、予算の組み方は正しいのかについて疑問をもった。
(2)税金の仕組みや大切さを知ろう(3時間目)
山形税務署税務広報官の伊東さんをお迎えし、
「租税教室」を
実施した。税金で購入しているものを考えながら、税金の使い
道を教えていただいた。また、サラリーマンの 1 日の生活をも
とに、税金は日常の暮らしの中で密接に関わっていることを学
んだ。クイズ形式で税金を分けていく活動や聞きなれない名前
の税について予想することで、楽しみながら、国税、地方税、
直接税、間接税と
大きく4つに税金
が分けられていることなどについて知ることができた。
また、ジェラルミンケースから取り出された1億円を実際に触るこ
とで、実際の重みや大きさを体験することもできた。最後に、
「税金
は、みんなが気持ちをよく生活するための国民の会費である。
」とい
う伊東さんのお話に、子供たちは一層税金への理解を深めていた。
<子どもの感想>
税金は、みんなのために少しずつ収めていること
私たちが払った税金が地域の役に立っている
に気づきました。だから、税が10%になっても、
んだよというお話を聞いていると、
「税金はや
みんなが少しでもゆとりある社会になるなら、税
っぱり必要なんだな。払わないといけないん
が上がってもいいと思いました。
だな。
」と思いました。
(3)税や日本の財政について調べよう(4、5時間目)
前時までに学んだ税のことをもとに、
「消費税10%」に賛成
-3-
か反対かを自分なりにまとめるため、インターネットで調べたり、お家の人と話し合ったりした。インターネッ
トでは、自分の考えを支える資料を探すことを一番の目的とし、主に国税庁のホームページを中心に調べること
にした。また、服部誠一氏の「日本の借金時計」のページも提示した。1億円を実際に見たあとだったので、瞬
時に何億と金額が増えていく様子に大変驚いていた。そこから、日本の財政についてしっかり考えなければなら
ないという意識が出てきた。
(4)
「消費税10%に賛成か反対か」について討論をしよう(6、7時間目)
調べ学習前までは、10%に賛成18人、反対5人だった。週
末に家の方と話をした子どもたちは、討論前には賛成3人、反
対19人、わからなくなった1人という結果に変わっていった。
最初に討論の目的「様々な意見を聞いて、自分の考えを深める」
ということを確認して、討論に入っていった。反対派は、
「わが
家の家計が苦しくなる。
」
「税を上げても、合計の税収入はあが
るかわからない。
」などの論を展開していった。賛成派は、
「国
の財政を考えた結果、税金を上げないとやっていけない。
」
「公共事業もみんなのために必要。だから、みんなで
税金を払うべき。
」と調べた結果をもとに発表していった。家庭という視点、国家という視点の2つの違う視点で
物事を見始めた子どもたちは、
「税金を上げる必要はあるが、正しく考えて予算をたててほしい。
」という方向に
考えがまとまっていった。
(5)学習のまとめをしよう(8時間目)
今までの学習をふり返って、税金についてノートにまとめた。消費税を上げるかどうかという課題で学習を進め
ていくなかで、税金の使われ方を知ったり、親の思いを聞いたりして国会への関心が強くなっていく結果になっ
た。
<実際のノートより>
<子どもの感想 一部抜粋>
税金の使い道を一から見直してから、増税すれ
ばいいと思う。増税と同時に、会社がもうかるか
心配だ。最初は厳しいと思うが、そのことを改善
するのが、政府の仕事だ。
税を上げた場合、苦しい生活とならないような
仕組みを整えないかぎり、増税はできないと思い
ます。今の予算を見直して、削れるところは削っ
て、それから増税するべきか、そのまま5%にし
ていけるかを決めるべきだと思います。
5 資料
・わたしたちのくらしと税金
・税制についてかんがえてみよう ・DVD「マリンとヤマト 不思議な日曜日」
-4-
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