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OH - 岡山大学学術成果リポジトリ

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OH - 岡山大学学術成果リポジトリ
博士論文
太陽光を有効利用できる可視光利用型の
光触媒-オゾン水処理法に関する研究
平成27年3月
真
野
峻
行
岡山大学大学院
環境生命科学研究科
目次
第1章
1.1
緒論
研究背景
1
1.1.1
難分解性有機物による水質汚染
1
1.1.2
促進酸化法(AOPs)
1
1.1.3
オゾンによる有機物分解
3
1.1.4
1.1.3.1
オゾン分子による直接反応
3
1.1.3.2
ヒドロキシルラジカルによるフリーラジカル反応
3
光触媒
4
1.1.4.1
光触媒による有機物分解
4
1.1.4.2
可視光を吸収できる金属酸化物半導体の環境浄化用
5
光触媒への利用
1.1.5
光触媒-オゾン法
1.1.5.1
光触媒-オゾン法による有機物分解
1.1.5.2
光触媒-オゾン法の消費エネルギーとコスト面の課題
9
9
10
1.2
本研究の目的と意義
11
1.3
本論文の構成
12
1.4
参考文献
13
第2章
WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
2.1
はじめに
19
2.2
実験
21
2.3
2.2.1
WO3 試料のキャラクタリゼーション
21
2.2.2
有機物分解特性評価
21
結果と考察
24
2.3.1
WO3 試料のキャラクタリゼーション
24
2.3.2
WO3 試料の光触媒-オゾン法による有機物分解特性
28
2.3.3
WO3 試料の繰り返し使用における有機物分解特性と安定性
32
2.4
結論
36
2.5
参考文献
37
i
目次
第3章
WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
3.1
はじめに
39
3.2
実験
42
3.3
結果と考察
42
3.3.1
光触媒量
42
3.3.2
フェノール濃度
44
3.3.3
pH
49
3.3.4
処理温度
51
3.4
結論
53
3.5
参考文献
55
第4章
WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性
に与える影響
4.1
はじめに
57
4.2
実験
59
4.3
4.2.1
WO3 試薬粉末の処理
59
4.2.2
均一沈殿法による WO3 の合成
59
4.2.3
試料のキャラクタリゼーション
59
4.2.4
有機物分解特性評価
60
結果と考察
4.3.1
試料のキャラクタリゼーション
61
4.3.2
試料の有機物分解特性
67
4.4
結論
71
4.5
参考文献
72
第 5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
5.1
はじめに
75
5.2
実験
77
5.2.1
ii
61
試料
77
目次
5.3
5.2.2
試料のキャラクタリゼーション
77
5.2.3
有機物分解特性評価
77
結果と考察
79
5.3.1
金属酸化物半導体試料のキャラクタリゼーション
79
5.3.2
光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
83
5.3.3
5.3.2.1
オゾンによる TOC 除去特性
83
5.3.2.2
TiO2 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
85
5.3.2.3
Nb2O5,SnO2 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
89
5.3.2.4
WO3,Fe2O3 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
93
5.3.2.5
In2O3,BiVO4 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
96
各種金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の比較
102
5.4
結論
106
5.5
参考文献
107
第6章
総括
112
発表論文リスト
115
謝辞
119
iii
第1章
緒論
1.1
1.1.1
研究背景
難分解性有機物による水質汚染
現在,人類は水質汚染や渇水に伴う水資源の問題に直面しており,安全な
水資源の確保が世界的な課題となっている.水質汚染に注目すると,世界の
産業活動は毎年約 300–400 万トンの溶剤,重金属,汚泥などの汚染物を環境
水に排出しており[1],特に先進国では,産業廃水や生活排水に含まれる有機
ハロゲン化物,医薬品,農薬,内分泌かく乱物質,界面活性剤および色素な
どの難分解性有害有機汚染物質の増加による水質汚染が問題視されている
[2–8].これらの難分解性有機物は微生物による生物分解に耐性をもち,生物
処理では分解しない,もしくは処理速度が極めて遅く,自然界に排出される
と長期間に渡って環境中に残留する[9–15].さらに,難分解性有機物の多く
は毒性をもつため,人体および生態系への悪影響が懸念されている[16–18].
しかしながら,従来の生物処理等では難分解性有機物を十分に処理できない
ため,実際は環境中に排出されてしまい,地下水,飲料水,海水など様々な
環境中で検出されている[19–25].以上のことから,難分解性有機物を処理で
きる新たな水処理技術の開発が望まれている.
1.1.2
促進酸化法(AOPs)
促進酸化法(Advanced Oxidation Processes: AOPs)は,ヒドロキシルラジカ
ル(OH•)の酸化力を利用して水中の有機物を酸化分解する物理化学的水処
理法である[26].OH• の酸化力は+2.4 – +2.7 V vs. NHE(Normal Hydrogen
Electrode)であり,オゾンや過酸化水素などの他の酸化剤よりも酸化力が強
く(表 1.1),多くの有機物を酸化分解できる[27–29].また,多くの有機物と
の反応速度定数は 108–1010 M−1 s−1 であり,反応性が高く選択性がないため,
1
第1章
緒論
多種多様な有機物の酸化分解に有効である[30,31].OH•の生成を促進する方
法として,紫外線(UV),オゾン,過酸化水素,フェントン試薬(Fe2+),触
媒,光触媒等を組み合わせた処理方法が開発されている(図 1.1)[32].
表 1.1
代表的な酸化剤の標準電極電位[27–29]
酸化剤
電極反応
標準電極電位(V)
OH•
OH• + H+ + e− = H2O
2.38–2.74
O3
O3 + 2H+ + 2e− = O2 + H2O
2.08
H2O2
H2O2 + 2H+ + 2e− = 2H2O
1.76
HClO
2HClO + 2H+ + 2e− = Cl2 + 2H2O
1.63
Cl2
Cl2 + 2e− = 2Cl−
1.40
促進酸化法(AOPs)
均一反応系
O3+UV
O3+H2O2
触媒+オゾン
H2O2+UV
O3+H2O2+UV
光触媒+H2O2+UV
Fe2++H2O2
Fe2++H2O2+UV
光触媒+オゾン+UV
図 1.1
2
不均一反応系
促進酸化法の処理例.
1.1 研究背景
1.1.3
オゾンによる有機物分解
オゾンは酸化力が+2.08 V vs. NHE の強力な酸化剤である[27].オゾンによ
る有機物の分解過程は,以下に示すようにオゾン分子による直接反応とオゾ
ンの分解反応から生成される OH•によるフリーラジカル反応の 2 つに分けら
れる[33].
1.1.3.1
オゾン分子による直接反応
オゾン分子は電子密度の高い炭素間不飽和結合との反応性が高く,脂肪族
のアルコール類やカルボン酸との反応性が低い[31,34,35].そのため,オゾン
分子による直接反応は選択的な反応であり,炭素間不飽和結合をもつ芳香族
などの低級化に効果的である.しかし,炭素間不飽和結合をもつ有機物は最
終的に有機酸やアルデヒド類に分解されるため,オゾン単独による処理では
有機物を完全に分解除去するのは困難である[31,36,37].
1.1.3.2
ヒドロキシルラジカルによるフリーラジカル反応
オゾンの分解反応は OH−との反応から連鎖反応が始まり(反応 1.1,1.2),
反応 1.3,1.4 を経て最終的に OH•を生成する(反応 1.5)[38–41].
O3 + OH− → O2 •− + HO2 •
HO2•
→
←
H+ + O2 •−
(反応 1.1)
pKa = 4.8
(反応 1.2)
O3 + O2•− → O3•− + O2
(反応 1.3)
O3•− + H+ → HO3•
(反応 1.4)
HO3• → OH• + O2
(反応 1.5)
また,UV 照射( > 300 nm)によりオゾンの加水分解反応が促進され,過
酸化水素が生成し(反応 1.6),過酸化水素とオゾンが反応して OH•が生成す
る(反応 1.7)[36,42].
O3 + H2O + h → H2O2 + O2
(反応 1.6)
3
第1章
緒論
O3 + H2O2 → OH• + HO2 • + O2
(反応 1.7)
以上の反応より,オゾンによる処理では,塩基性条件または UV 照射によ
り OH•の生成が促進されるため,有機物分解特性が向上する[36].
1.1.4
1.1.4.1
光触媒
光触媒による有機物分解
光触媒は 1972 年の本多-藤嶋効果の発見[43]により注目を集めてから,水
分解による水素生成をはじめとした光エネルギーの変換材料,ならびに空
気・水浄化の環境浄化材料として研究され,後者では複数の実用化例がある
[44].代表的な光触媒として,光触媒活性が高く,安定性および安全性に優
れている TiO2 が広く知られている[45].以下に光触媒による有機物分解反応
の機構を示す[44–46].
光触媒が伝導帯(CB)と価電子帯(VB)によるバンドギャップ(Eg)以
上の光エネルギーを吸収すると,伝導帯と価電子帯に励起電子(e−)と正孔
(h+)がそれぞれ生成する(反応 1.8,図 1.2).生成した励起電子と正孔がそ
れぞれ光触媒表面の分子またはイオンと反応することで光触媒外部に光触
媒作用を示す.しかし,励起電子と正孔の両者が光触媒表面でそれぞれ反応
しなければ,両者は直ちに再結合し,正味の光触媒反応は起きない(反応 1.9).
Photocatalyst + h(> Eg)→ e− + h+
(反応 1.8)
e− + h+ → Recombination
(反応 1.9)
光触媒による有機物分解反応では,一般的に伝導帯の励起電子が酸素と反応
してスーパーオキシドアニオンラジカル(O2 •−)を生成し(反応 1.10),価電
子帯の正孔が有機物(RH)を直接酸化(反応 1.11),あるいは水分子および
OH−との反応を介して OH•を生成して有機物を酸化分解する(反応 1.12–14).
4
O2 + e− → O2•−
(反応 1.10)
h+ + RH → R• + H+
(反応 1.11)
1.1 研究背景
h+ + H2 O → OH• + H+
(反応 1.12)
h+ + OH− → OH•
(反応 1.13)
OH• + RH → R• + H2O
(反応 1.14)
また,反応 1.10 で生成した O2 •−からさらに反応が進み,H2O2 の生成を経て
OH•を生成する(反応 1.15–18).しかしながら,これらの O2 •−から始まる反
応は,正孔や OH•の反応と比較して有機物分解への寄与が小さいとされてい
る[47].
O2•− + H+ → HO2•
(反応 1.15)
2HO2• → H2O2 + O2
(反応 1.16)
H2O2 + O2•− → OH• + OH− + O2
(反応 1.17)
H2O2 + e− → OH• + OH−
(反応 1.18)
光触媒による有機物分解反応では,正孔の強い酸化力により(TiO2 の h+: ca.
+3 V vs. NHE),多くの難分解性有機物を完全に酸化分解することができる
[48–50].しかしながら,液相における有機物分解反応では励起電子の受容体
となる酸素や有機物との接触頻度が低いため,光触媒単独による水処理効率
は制限される[44,51].すなわち,光触媒単独で大規模な水処理を行うのは困
難であり,処理効率の大幅な向上が求められている.
1.1.4.2
可視光を吸収できる金属酸化物半導体の環境浄化用光触媒への利用
TiO2 光触媒は,光触媒活性が高く,安定性および安全性に優れている点で
実用化されているが,そのバンドギャップから,紫外光下でしか光触媒作用
を示すことができない[44].そのため,太陽光下で使用する場合には,太陽
光の約 46%を占める可視光を利用できず,僅か 5%である紫外光しか利用で
きない[52].そのため,太陽光の有効利用や活性向上の観点から,太陽光の
大半を占める可視光を有効に利用できる可視光応答型光触媒が強く求めら
れている.
5
第1章
緒論
しかしながら,環境浄化用光触媒では,以下に示すように,酸素を還元で
きる伝導帯電位が必要であることと,金属酸化物半導体のバンド構造から,
可視光吸収を示す金属酸化物半導体をそのまま大気雰囲気下で可視光応答
型光触媒として用いるのは困難である(図 1.3).環境浄化用光触媒では,励
起電子が酸素との還元反応によって消費されるため,酸素を還元できる伝導
帯電位が必要とされる.伝導帯下端の電位が酸素の酸化還元電位(O2 + e− =
O2•−, −0.284 V vs. NHE; O2 + H+ + e− = HO2•, −0.046 V vs. NHE)[27]よりも貴側
に位置する半導体は,励起電子が酸素の還元反応により消費されず正孔と再
結合するため,光触媒作用を示すことができない[53].一方,TiO2 に代表さ
れる金属酸化物半導体の多くは,価電子帯が酸素の 2p 軌道により形成され
るため,価電子帯上端は+3 V 前後に制限される[54].したがって,以上の制
限により,バンドギャップが狭く(Eg < 3 eV)可視光を吸収できる金属酸化
物半導体の多くは,大気雰囲気下では環境浄化用光触媒としてそのまま使用
することが困難である.
そのため,これまでの環境浄化用光触媒としての可視光応答型光触媒の開
発は,酸素を還元できる TiO2 などの紫外光応答型光触媒に窒素や硫黄などの
アニオンをドーピングすることにより価電子帯を制御することで図られて
きた[55,56].しかしながら,この手法では元の光触媒活性が低下してしまう
ことや安定性に課題が残されている.また,最近では,Pt や銅イオンなどの
助触媒を担持することにより,酸素の単電子還元反応だけでなく,新たに酸
素の多電子還元反応(O2 + 2H+ + 2e− = H2O2, +0.682 V vs. NHE)が進行し,酸
素を単電子還元できない金属酸化物半導体も大気雰囲気下で可視光応答型
光触媒として作用することが報告されている[53,57,58].しかしながら,この
手法においても安定性やコスト面が問題視されている.
一方,水分解反応の半反応である酸素生成反応において,犠牲試薬(AgNO3 :
Ag/Ag+, 0.799 V vs. NHE)を用いたテスト反応では,伝導帯電位が酸素の酸
6
1.1 研究背景
化還元電位よりも貴側に位置する金属酸化物半導体であっても可視光に応
答する光触媒として作用する(図 1.4)[59].この反応では,伝導帯電位が酸素
の酸化還元電位よりも貴側に位置していても,犠牲試薬が励起電子受容体と
して働き,励起電子が犠牲試薬によって消費されるため,正孔による水の酸
化反応が進行する.この犠牲試薬を用いたテスト反応でのみ作用する光触媒
は,それだけでは水分解用光触媒としては不十分であるが,このテスト反応は,助
触媒の担持等が無くても適切な励起電子受容体が存在すれば,可視光吸収を示
す金属酸化物半導体が可視光応答型光触媒として作用することを示している.
HO2•
(1.16)
OH•
HO2•
H2O2
(1.18)
h
(1.9)
H2O
h
(1.12)
O2•−
H+
H2O2
(1.17)
(1.10)
e−
(1.8)
(1.15)
CB
O2
OH•
Eg
VB
RH
(1.11)
(1.13)
OH•
RH
OH− R•
(1.14)
図 1.2
R•
光触媒による有機物分解反応.
7
第1章
緒論
可視光吸収能が
ない金属酸化物
CB: 酸素を単電子還元できる電位が必要
Potential (vs. NHE)
−
O2•−
CB
O2/O2•−
−0.28
可視光吸収能が
ある金属酸化物
O2
UV
Eg > 3 eV
CB
可視光
×O
Eg < 3 eV
RH
2
RH
+3.0
VB
+
VB
R•
R•
VB: 酸素の 2p 軌道で形成
環境浄化用光触媒
として作用する
図 1.3
O2•−
環境浄化用光触媒
として作用しない
2 種の典型的な金属酸化物半導体のバンド構造とそれらの大気雰囲
気下における環境浄化用光触媒としての利用.
同じ金属酸化物半導体
Potential (vs. NHE)
−
可視光
−0.28
O2/O2•−
+0.80
+1.23
Ag+/Ag
O2/H2O
可視光
CB
+
図 1.4
×O
Eg < 3 eV
VB
O2•−
CB
Eg < 3 eV
VB
R•
H2O
O2
酸素生成反応
可視光吸収能がある金属酸化物半導体における大気雰囲気下での有
機物分解反応と犠牲試薬を用いた酸素生成反応.
8
Ag
Ag+
2
RH
有機物分解反応
犠牲試薬
(励起電子の受容体)
1.1 研究背景
1.1.5
1.1.5.1
光触媒-オゾン法
光触媒-オゾン法による有機物分解
光触媒-オゾン法では,先に述べた光触媒とオゾンの個々の反応に加え,
以下の反応が進むと考えられている[60–62].
Photocatalyst + h → e− + h+
(反応 1.19)
O3 + e− → O3•−
(反応 1.20)
O3•− + H+ → HO3•
(反応 1.21)
HO3• → OH• + O2
(反応 1.22)
h+ + RH → R• + H+
(反応 1.23)
h+ + H2 O → OH• + H+
(反応 1.24)
OH• + RH → R• + H2O
(反応 1.25)
光触媒-オゾン法における特徴的な反応が反応 1.20 である.光触媒-オゾン
法では,光触媒の励起電子がオゾンと反応してオゾニドラジカル(O3 •−)を
生成し,反応 1.22 より OH•が生成される.この一連の反応では,1 mol のオ
ゾン分子および励起電子から 1 mol の OH•が生成される.オゾンの自己分解
反応,ならびに大気雰囲気下における光触媒反応から 1 mol の OH•が生成さ
れるには,それぞれ 2 mol のオゾン分子と 3 mol の励起電子を要する(反応
1.1–5; 反応 1.10,1.15–18).さらに,反応 1.20 の酸化還元電位は 1.03 V vs. NHE
であり[29],酸素の単電子還元反応における酸化還元電位よりも 1 V 程度貴
である.すなわち,オゾンは,酸素と比較して光触媒の励起電子との反応性
が高く,素早く励起電子と反応する.したがって,光触媒-オゾン法では,
反応 1.20 により OH•の生成効率が高いことに加え,光触媒の励起電子が素早
くオゾンによって消費されることにより,光触媒作用が促進される.以上よ
り,光触媒-オゾン法は優れた有機物分解特性を示すことができる[63–66].
9
第1章
1.1.5.2
緒論
光触媒-オゾン法の消費エネルギーとコスト面の課題
光触媒-オゾン法では,オゾン発生および UV 照射への投入エネルギーが
大きく,他の処理法よりも単位時間当たりの消費エネルギーは大きくなる傾
向がある[61,62].一方で,投入エネルギーに対する処理効果が高く,処理時
間が短くて済むため,光触媒およびオゾンの単独処理と比較して最終的な処
理段階までの投入エネルギーとランニングコストは最も小さくなることが
試算されている[67–69].しかしながら,光触媒-オゾン法による水処理装置
の実用化および普及には,さらなる消費エネルギーとコストの低減が求めら
れている[62].
光触媒-オゾン法による水処理装置では,主に UV 照射装置のランニング
コストが大きな負担となる[62].UV 照射装置の初期費用はオゾン発生装置よ
りも抑えられるが,長期間の使用では,UV ランプのメンテナンスおよび交
換により,オゾン発生装置よりもランニングコストがかかると考えられる.
そのため,UV 照射装置にかかる費用の低減が求められている.UV 照射装置
の使用は,照射光に太陽光を利用することで低減させることができるが,太
陽光で工業用人工光源を代替するには,太陽光の利用波長域を拡大し,太陽
光を有効利用する必要がある.そのためには,可視光に高い感度で応答する
高活性な可視光応答型光触媒を光触媒-オゾン法に用いる必要がある.しか
しながら,これまでに報告されている光触媒-オゾン法において,TiO2 以外
の光触媒による研究例は非常に少なく,可視光を利用した光触媒-オゾン法
の報告例はほとんどない[61,62].
10
1.2 本研究の目的と意義
本研究の目的と意義
1.2
本論文は,難分解性有機物の処理効果が高い光触媒-オゾン法の消費エネ
ルギーとコストのさらなる低減,ならびに処理性能の高性能化を図るため,
太陽光の有効利用を目指し,可視光利用型の光触媒-オゾン法による水処理
法の開発を目的とする.可視光利用型の光触媒-オゾン法が達成されれば,
太陽光の大部分を占める可視光を光触媒-オゾン法への光エネルギーとし
て利用できるため,従来の光触媒-オゾン法よりも投入エネルギーとコスト
の低減化が期待される.光触媒-オゾン法への可視光利用を達成するため,
本論文では,金属酸化物半導体のバンド構造とオゾンの単電子還元反応にお
ける酸化還元電位に着目し,可視光吸収を示す金属酸化物半導体を新たに光
触媒-オゾン法に適用して可視光利用型の光触媒-オゾン法について検討
する(図 1.5).
−
可視光吸収能がある金属酸化物半導体
大気雰囲気下
光触媒-オゾン法
Potential (vs. NHE)
可視光
可視光
CB
VB
×
O3•−
O2/O2•−
−0.28 V
O2
O3
RH
RH
O3/O3•−
+1.03 V
O2•−
R•
CB
VB
R•
+
図 1.5
本研究のコンセプト.
11
第1章
1.3
緒論
本論文の構成
本論文は,「太陽光を有効利用できる可視光利用型の光触媒-オゾン水処
理法に関する研究」と題し,本章を含め 6 章から成る.本章に続く各章の内
容を以下に述べる.
第 2 章「WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法」では,可
視光応答型光触媒である WO3 光触媒を光触媒-オゾン法に用いて可視光照
射下における光触媒-オゾン法による有機物分解特性を検討し,可視光利用
型の光触媒-オゾン法について論じる.
第 3 章「WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響」
では,2 章で検討された WO3 光触媒-オゾン法のさらなる高性能化を目指し,
処理に用いられる光触媒量,処理温度,処理廃水の有機物濃度および pH が,
WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性へ与える影響について論じる.
第 4 章「WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特
性に与える影響」では,WO3 光触媒の調製条件から WO3 光触媒-オゾン法
の高性能化を目指し,WO3 の結晶相,結晶性,粒子径および比表面積が WO3
光触媒-オゾン法による有機物分解特性に与える影響について論じる.
第 5 章「種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特
性」では,金属酸化物半導体に TiO2 ,Nb2 O5 ,SnO2 ,WO3,Fe2O3 ,In2 O3,
BiVO4 を用い,それぞれの紫外–可視光および可視光下での光触媒-オゾン法
における有機物分解特性について論じる.
第 6 章「総括」では,本論文を総括する.
12
1.4 参考文献
1.4
参考文献
[1] M. Palaniappan, P.H. Gleick, L. Allen, M.J. Cohen, J. Christian-Smith, C. Smith,
Clearing the waters: A focus on water quality solutions, UNEP Pacific Institute
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18
第2章
WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
2.1
はじめに
WO3 はバンドギャップ(Eg)が約 2.7 eV の金属酸化物半導体であり,約
470 nm までの可視光に応答する可視光応答型光触媒である[1–7].しかし,
WO3 の伝導帯電位(ca. +0.5 V vs. NHE)は,酸素の単電子還元反応における
酸化還元電位(O2 + e− = O2•−, −0.284 V vs. NHE; O2 + H+ + e− = HO2 •, −0.046 V
vs. NHE)よりも貴であり[1,8],酸素還元能が低いため,WO3 は大気雰囲気
下で有機物分解反応に対して光触媒作用をほとんど示さない[2,3].一方で,
Ag+/Ag(+0.799 vs. NHE),Fe3+/Fe2+(+0.771 vs. NHE)および Cu2+/Cu+(+0.159
vs. NHE)などの,光触媒の励起電子受容体となる犠牲試薬の存在下では,
WO3 は可視光照射下で水からの酸素生成,または有機物の酸化分解において
優れた光触媒活性を示すことが知られている[2–7,9].すなわち,これらの先
行研究から,WO3 は適切な励起電子受容体と併用することで,優れた可視光
応答型光触媒として作用することが明らかにされている.
一方,光触媒-オゾン法で用いられるオゾンは強力な酸化剤であり,その
単電子反応における酸化還元電位(O3 + e− = O3•−, +1.03 V vs. NHE)は酸素の
それよりも貴であり[10],WO3 の伝導帯電位よりも十分に貴である.したが
って,WO3 はオゾンと併用することで,オゾンが励起電子受容体として働き,
光触媒作用を発揮することが期待される(図 2.1).
以上より,本章では WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
について検討した.本章では,フェノールをモデル汚染有機物として用い,
種々の処理条件における有機物分解特性,溶存オゾン濃度ならびに WO3 試料
の繰り返し使用による安定性評価を行った[11].
19
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
Potential (vs. NHE)
−
可視光
WO3
CB
+0.5
+1.03
CB
O3/O3•−
O3•−
H+
OH•
O3
2.7 eV
RH
+3.2
VB
VB
R•
+
図 2.1
20
WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法.
2.2 実験
2.2
実験
2.2.1 WO3 試料のキャラクタリゼーション
WO3 光触媒試料には市販の試薬粉末(関東化学,> 99%)が用いられた.
試料の結晶構造評価は粉末 X 線回折法[XRD; リガク㈱,RINT2100/PC]に
より,光吸収特性評価は紫外–可視線吸収スペクトル法(拡散反射法)[UV–
vis; ㈱島津製作所,UV-2450]により行われた.試料の粒子径および形状の
評価には走査型電子顕微鏡[SEM; 日本電子㈱,JSM-6380A]を用いた.試
料の比表面積は吸着量測定装置[日本ベル㈱,BELSORP-18Plus]を用いて
77 K における窒素吸着量から BET 法により見積もられた.
2.2.2
有機物分解特性評価
実験装置図および実験条件を図 2.2 および表 2.1 にそれぞれ示す.反応容
器にはパイレックスガラス製の内部照射型セルを用い,250 mL の処理水溶液
と 0.6 g の WO3 試料を加え,25C(±0.5C)の恒温槽[アズワン㈱,TR-1AR]
に保持した.光源には 300 W キセノンランプ[ウシオ電機㈱,SX-UI502X]
を用い,420 nm カットオフフィルター[東芝色ガラスフィルター,L-42]を
通して可視光( > 410 nm)を照射した.照射光の光強度測定には紫外線強
度計[㈱トプコンテクノハウス,UVR-2]を用い,光強度を 360 nm <  < 470
nm の範囲で 18 mW/cm2 とした.オゾンの供給にはオゾンガス発生装置[コ
フロック(株),PZ-1]を用い,ガラス被覆セラミック製バブラーを通して
オゾンを供給した.オゾンの流量および濃度はそれぞれ 0.45 g/h,14 mg/L と
した.処理水溶液には 2.1 mmol/L フェノール水溶液(TOC(全有機炭素濃度)
= ca. 150 mg/L,pH 5.8)を用いた.処理水溶液の TOC と pH の測定には,全
有機炭素計[㈱島津製作所,TOC-VCSH]および pH メータ[東亜ディーケー
ケー㈱,HM-5S]をそれぞれ用いた.処理水溶液の溶存オゾン濃度の測定に
はインジゴ法を用いた[12,13].インジゴ法では,5, 5’, 7-インジゴトリスルホ
21
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
ン酸三カリウム(ナカライテスク,オゾン定量用),リン酸(ナカライテス
ク,試薬特級),リン酸二水素アンモニウム(関東化学,特級)が用いられ
た.
本章における処理条件の表記と内容を表 2.2 に示す.本実験では,反応溶
液に WO3 試料を加え,暗中で 1 h 撹拌させた後の TOC を TOC0 として反応を
開始した.
ランプ
排気
恒温槽
撹拌子
図 2.2
22
オゾン注入
パイレックス
ガラスセル
オゾン
バブリング
有機物分解特性評価に使用した実験装置図.
2.2 実験
表 2.1
有機物分解特性評価の実験条件
フェノール濃度
2.1 mmol/L(TOC: ca. 150 mg/L)
水溶液量
250 mL
水温
25C
pH
5.8
試料量
0.6 g(2.4 g/L)
反応容器
パイレックスガラス製内部照射型セル
照射光源
300 W Xe ランプ( > 410 nm)
照射光強度
18 mW/cm2 (360 nm <  < 470 nm)
オゾン流量
0.45 g/h
オゾン濃度
14 mg/L
表 2.2
有機物分解特性評価の処理条件の表記と内容
O3/dark
オゾン
O3/vis
オゾン+可視光( > 410 nm)
O3/dark/WO3
オゾン+WO3 光触媒
O3/vis/WO3
オゾン+可視光( > 410 nm)+WO3 光触媒
O2/vis/WO3
酸素+可視光( > 410 nm)+WO3 光触媒
23
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
2.3
結果と考察
2.3.1 WO3 試料のキャラクタリゼーション
WO3 試料の XRD パターンを図 2.3 に示す.主要なピークは monoclinic 相
(P21/n)で指数付けされた.しかし,一部に triclinic 相(P1̅)のピークも観
察された.したがって,WO3 試料は主相の monoclinic 相に副相の triclinic 相
をわずかに含んだ混合相であることがわかった.
WO3 試料の UV–vis 拡散反射スペクトルと Tauc プロットを図 2.4 に示す.
UV–vis 拡散反射スペクトルからは 470 nm 付近に吸収端が観察された.さら
に,拡散反射スペクトルから得られた拡散反射率 R を用いて Kubelka–Munk
関数(F(R) = (1−R)2/2R)に変換し,間接許容遷移としてエネルギーに対する
プロットから Eg を見積もった(図 2.4b)[14].見積もられた Eg は 2.65 eV で
あり,既報の値と概ね一致した[1,7].
図 2.5 に WO3 試料の SEM 像を示す.SEM 観察からは不均一な粒子が観察
され,粒子径は 0.2–2 m と見積もられた.BET 比表面積は 3.6 m2/g であった.
24
2.3 結果と考察
(a)
(b)
図 2.3(a)WO3 試料の XRD パターンと既報の WO3(monoclinic,triclinic)の
パターン,(b)(a)の一部を拡大した図.
25
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
Absorbance (a.u.)
(a)
200
300
400
500
600
700
800
Wavelength (nm)
(F(R) hv)0.5 (a.u.)
(b)
Eg = 2.65 eV
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
Energy (eV)
図 2.4
26
WO3 試料の(a)UV–vis 拡散反射スペクトル,(b)Tauc プロット.
2.3 結果と考察
図 2.5
WO3 試料の SEM 像.
27
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
2.3.2 WO3 試料の光触媒-オゾン法による有機物分解特性
WO3 試料を用いたフェノール廃水処理における TOC 経時変化を図 2.6 に示
す.酸素通気および可視光照射下での O2/vis/WO3 処理では,反応時間 360 min
で TOC はほとんど除去されなかった.これは,既報にあるように,WO3 の
伝導帯電位(ca. +0.5 V vs. NHE)が酸素の酸化還元電位(O2 + e− = O2•−, −0.284
V vs. NHE; O2 + H+ + e− = HO2 •, −0.046 V vs. NHE)よりも貴であるため,WO3
の伝導帯に生成した励起電子が水溶液中の酸素と反応せず,価電子帯の正孔
と再結合したことにより光触媒反応が進行しなかったと考えられた[2,3].オ
ゾンを通気した O3/dark,O3/vis および O3/dark/WO3 処理では,オゾンの通気
によって反応初期から大きく TOC が減少した.しかし,反応が進むにつれ
て TOC 除去速度が徐々に低下し,反応時間 360 min では TOC を完全に除去
することができなかった.反応初期では,オゾン分子との反応性が高い炭素
間不飽和結合をもつフェノールやその中間生成物が多く存在するため,オゾ
ン分子とそれらの反応を通して TOC が除去されたと考えられた.一方,そ
の後の TOC 除去速度が低下した領域では,オゾン分子との反応性が低いシ
ュウ酸,ピルビン酸等のオゾン耐性のある中間生成物が増えたため,TOC 除
去速度が徐々に低下したと考えられた[15].また,O3/vis 処理と O3/dark 処理
を比較すると,TOC 除去挙動はほとんど同じであった.オゾンには,Chappius
帯と呼ばれる弱い可視光吸収域が 400–800 nm にあるが[16],本実験の可視光
照射( > 410 nm)では有機物分解特性に変化は見られなかった.また,
O3/dark/WO3 処理と O3/dark 処理を比較すると,O3/dark/WO3 処理の TOC 除去
率は,反応時間 60 min までは O3/dark 処理と同程度であったが,反応時間 60
min 以降は O3/dark 処理よりもわずかに高かった.これは,オゾン分解触媒と
して用いられる MnO2 のように,WO3 がオゾン分解触媒として作用した可能
性が考えられた[17].
28
2.3 結果と考察
可視光照射下での光触媒-オゾン法である O3/vis/WO3 処理では,反応開始
から高い TOC 除去率を示し,反応時間 120 min で TOC を完全に除去した.
O3/vis/WO3 処理は,反応時間 20 min まではオゾンを通気した他の処理条件と
同程度の TOC 除去速度であったが,その後は他の処理条件とは異なり,TOC
を完全に除去するまで TOC 除去速度は低下しなかった.このことから,オ
ゾン分子との反応性が高い有機物が多量に存在する領域では,オゾン分子と
その有機物との反応が TOC 除去反応において支配的であり,WO3 光触媒-
オゾン法による TOC 除去反応の寄与は小さいと考えられた.一方で,オゾ
ンに耐性のある有機物が蓄積する領域では,オゾン分子と有機物が反応する
割合が減少し,WO3 光触媒-オゾン法による TOC 除去反応が効果的になる
と考えられた.これらの結果から,WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触
媒-オゾン法は,優れた有機物分解特性を示すことが判明し,WO3 がオゾン
との併用で可視光応答型光触媒として作用していることが示唆された.
さらに,O3/vis/WO3 および O3/dark/WO3 処理のフェノール廃水処理中にお
ける溶存オゾン濃度を測定し,O3/vis/WO3 処理と O3/dark/WO3 処理を比較し
た.O3/vis/WO3 および O3/dark/WO3 処理におけるフェノール廃水中の溶存オ
ゾン濃度の経時変化を図 2.7 に示す.反応開始から 20 min までは,O3/vis/WO3
および O3/dark/WO3 処理のどちらの処理条件においても溶存オゾンはほとん
ど検出されなかった.この領域では,オゾン分子がフェノールなどのオゾン
分子との反応性が高い有機物との反応で直ちに消費されるため,溶存オゾン
がほとんど存在しないと考えられた[15].一方,反応時間 20 min を過ぎてか
ら,O3/dark/WO3 処理の溶存オゾン濃度は急激に上昇した.これに対し,
O3/vis/WO3 処理の溶存オゾン濃度は,反応時間 40 min まで低濃度を維持して
いた.さらに,反応時開始から 80 min 以降における溶存オゾン濃度の上昇が
安定した領域においても,O3/vis/WO3 処理の溶存オゾン濃度は,O3/dark/WO3
処理の半分程度であり,O3/dark/WO3 処理のそれよりも明らかに低いことが
29
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
わかった.このことから,O3/vis/WO3 処理は,O3/dark/WO3 処理よりも反応
中にオゾンを消費していることがわかり,WO3 の光触媒作用の寄与によりオ
ゾンが消費されていることが明らかとなった.
1.0
O3/vis/WO3
O3/dark/WO3
O2/vis/WO3
O3/vis
O3/dark
TOC/TOC0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0
60
120
180
240
300
360
Reaction time (min)
図 2.6
WO3 試料を用いたフェノール廃水処理における TOC 経時変化.光触
媒量: 0.6 g(2.4 g/L),フェノール濃度: 2.1 mmol/L,pH: 5.8,オゾン: 0.45 g/h,
水温: 25C.
30
2.3 結果と考察
Dissolved O3 (ppm)
8.0
O3/vis/WO3
O3/dark/WO3
6.0
4.0
2.0
0.0
0
60
120
180
Reaction time (min)
図 2.7
O3/vis/WO3 および O3/dark/WO3 処理におけるフェノール廃水中の溶
存オゾン濃度の経時変化.光触媒量: 0.6 g(2.4 g/L),フェノール濃度: 2.1
mmol/L,pH: 5.8,オゾン: 0.45 g/h,水温: 25C.
31
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
2.3.3 WO3 試料の繰り返し使用における有機物分解特性と安定性
2.3.2 節において,オゾン存在下で WO3 が可視光応答型光触媒として作用
し,WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法が優れた有機物分
解特性を示すことが明らかとなった.本検討では,WO3 試料の繰り返し使用
における WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性と,WO3 光触媒の安定性
を評価した.
同一 WO3 試料を繰り返し用いてフェノール廃水処理を 5 回行った時の
TOC 経時変化を図 2.8 に示す.5 回の繰り返し使用によるフェノール廃水処
理では,TOC 除去特性の低下は観察されず,5 回目の廃水処理においても TOC
を完全に除去できた.フェノール廃水処理を 5 回繰り返した後の WO3 試料の
XRD パターンおよび UV–vis 拡散反射スペクトルを図 2.9 および図 2.10 にそ
れぞれ示す.5 回の繰り返し使用前後において,XRD パターンおよび UV–vis
拡散反射スペクトルに大きな変化はなく,WO3 試料は安定して光触媒として
作用していることがわかった.以上より,WO3 試料は繰り返し使用において
も WO3 光触媒-オゾン法による有機物分解特性は低下せず,結晶構造および
光吸収特性を維持していたことから,WO3 がオゾン存在下で可視光応答型光
触媒として作用し,光触媒-オゾン法において安定であることが判明した.
32
2.3 結果と考察
180 min
1.0
TOC/TOC0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
図 2.8
1st
2nd
3rd
4th
Number of runs
5th
WO3 試料を繰り返し用いた O3/vis/WO3 処理によるフェノール廃水の
TOC 経時変化.
光触媒量: 1.2 g(4.8 g/L),
フェノール濃度: 2.1 mmol/L,
pH: 5.8,
オゾン: 0.45 g/h,水温: 25C.
33
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
図 2.9
フェノール廃水処理前および O3/vis/WO3 処理によるフェノール廃
水処理を 5 回繰り返した後の WO3 試料の XRD パターン.
34
2.3 結果と考察
Absorbance (a.u.)
After reaction
Before reaction
200
300
400
500
600
700
800
Wavelength (nm)
図 2.10
フェノール廃水処理前および O3/vis/WO3 処理によるフェノール廃
水処理を 5 回繰り返した後の WO3 試料の UV–vis 拡散反射スペクトル.
35
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
2.4
結論
フェノールをモデル汚染有機物として WO3 光触媒を用いた可視光利用型
の光触媒-オゾン法について検討した.オゾンによる処理では,フェノール
の分解過程でオゾン耐性のある中間生成物が蓄積したことにより反応途中
から TOC 除去速度が低下し,TOC の完全除去が困難であったのに対し,WO3
光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法による処理では,TOC 除去
速度が低下せず,TOC を完全に除去した.また,WO3 は繰り返し使用による
5 回のフェノール廃水処理においても WO3 光触媒-オゾン法による TOC 除
去特性は低下せず,5 回の繰り返し使用後でもその結晶構造および光吸収特
性は維持されており,本検討条件で安定であった.以上より,可視光利用型
の光触媒-オゾン法が有機汚染廃水の処理に効果的であることが判明し,
WO3 はオゾン存在下で可視光応答型光触媒として作用することが明らかと
なった.本章の結果は,光触媒-オゾン法において,可視光吸収を示す多く
の金属酸化物半導体を可視光応答型光触媒として利用できる可能性を示し
た.
36
2.5 参考文献
2.5
参考文献
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semiconductor electrodes, Sol. Energy 20 (1978) 443–458.
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37
第 2 章 WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法
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38
第3章
WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
3.1
はじめに
2 章では,WO3 がオゾンとの併用で光触媒作用を示し,WO3 光触媒-オゾ
ン法が優れた有機物分解特性を示すことを明らかにした[1].本章では,WO3
光触媒-オゾン法のさらなる高性能化を図るため,その処理条件に関する詳
細を調査することを目的とした.
光触媒-オゾン法において,処理に用いられる光触媒量,処理温度,処理
廃水の有機物濃度および pH は,その有機物分解特性に影響することが知ら
れている[2,3].表 3.1 に上記の処理条件が光触媒-オゾン法の有機物分解特
性に与える影響について示す.
処理に用いられる光触媒量は,光触媒-オゾン法による有機物分解の反応
速度に直接的に影響し,光触媒の増加に伴い反応速度は増加する[2–6].一方
で,光触媒量が一定量以上になると光触媒自身の光遮蔽効果により,その反
応速度は飽和する[2–6].その結果,最適な光触媒量は触媒の粒子径,反応容
器の形状および光の照射方法等に依存すると考えられている[2,3,7,8].これら
の影響は光触媒単独による処理においても同様の影響が観察される[9].
処理廃水の有機物濃度については,有機物量の増加に伴い単位時間当たり
の反応量は増加するが,全体の処理時間も増加する[3].すなわち,光触媒-
オゾン法による有機物の分解反応の多くは 1 次反応とみなされる[3].
処理廃水の pH は,光触媒,オゾン,処理有機物の状態および反応性など
に大きな影響を与える[3,8,10].そのため,光触媒-オゾン法による有機物分
解特性が pH から受ける影響は,光触媒および有機物の種類によって異なる.
光触媒が関与する反応では,処理廃水の pH によって光触媒粒子の表面電位,
ならびに有機物の存在形態が変化するため,光触媒粒子の凝集状態や吸着性
能に影響がある[8].オゾンに関しては,OH−がラジカル活性種の生成につな
39
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
がるオゾンの自己分解反応の開始剤として働くため,塩基性条件下ではオゾ
ンの自己分解反応が促進される[10].一方,酸性条件下では,オゾン分子は
比較的安定に存在するため,オゾン分子と有機物の直接反応の割合が増える
と共に,光触媒-オゾン法では光触媒とオゾン分子との反応効率が向上する
[3].
処理温度の上昇は,一般的に化学反応の反応速度を高めるため,処理廃水
中のラジカル活性種と有機物との反応,およびそれに伴うラジカル連鎖反応
の反応速度を高めると考えられる.光触媒反応では,処理温度は主に有機物
等の吸脱着速度に影響する[8].オゾンに関しては,処理温度の上昇に伴いオ
ゾンの自己分解反応が促進され,ラジカル活性種の生成効率は上がるが,同
時に飽和溶存オゾン量が低下する[11,12].光触媒-オゾン法では,溶存オゾ
ン量が低下すると光触媒とオゾンとの反応に利用できるオゾン分子量が減
少し,有機物分解特性が低下する[2,3].その結果,処理温度の上昇は,光触
媒-オゾン法の有機物分解特性に正負両方の影響を与える[2,3].
以上の背景を踏まえ,本章では,WO3 光触媒-オゾン法のさらなる高性能
化を目指し,処理に用いられる光触媒量,処理温度,処理廃水の有機物濃度
および pH が,WO3 光触媒-オゾン法による有機物分解特性へ与える影響に
ついて検討し,評価した[13].
40
3.1 はじめに
表 3.1
光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響[2–12]
光触媒量
1) 光触媒量の増加に伴い反応速度は増加するが,一定量に
達すると,光触媒自身の光遮蔽効果により溶液内に侵入
する光子数が飽和し,反応速度も飽和する.
2) 光触媒自身の光遮蔽効果のため,最適な光触媒量は光触
媒の粒子径,反応容器の形状および光の照射方法等に依
存する.
処理廃水の有機物濃度
1) 有機物量の増加に伴い反応速度が増加する.
2) 一般的に 1 次反応とみなされることが多い.
処理廃水の pH
1) 有機物分解特性が pH から受ける影響は,光触媒および有
機物の種類によって異なる.
2) 光触媒粒子の表面電位,有機物の存在形態に寄与し,光
触媒粒子の凝集状態や吸着性能に影響する.
3) OH− がオゾンの分解反応における開始剤として働くた
め,塩基性条件下ではオゾンの分解反応が促進される.
4) 酸性条件下ではオゾン分子が安定であるため,光触媒と
オゾン分子との反応効率が向上する.
処理温度
1) 一般的に処理温度の上昇に伴い有機物分解特性は向上す
る.
2) 処理温度の上昇に伴いオゾンの自己分解反応が促進され,
ラジカル活性種の生成が促進される.
3) 処理温度の上昇に伴い溶存オゾン量が低下し,光触媒とオ
ゾンとの反応率が低下する.
4) 光触媒-オゾン法の有機物分解特性は 2),3)の正負両方の
影響を受ける.
41
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
3.2
実験
WO3 試料,実験装置および分析方法は 2 章に準じた.pH の調整には HNO3
(関東化学,60 mass%),NaOH(ナカライテスク,JIS 試薬特級)を用いた.
3.3
3.3.1
結果と考察
光触媒量
WO3 光触媒-オゾン法に使用される光触媒量がフェノール水溶液に対す
る TOC 除去特性に与える影響について検討した.光触媒量が異なる WO3 光
触媒-オゾン法によるフェノール廃水処理における TOC 経時変化を図 3.1 に
示す.TOC 除去速度は,光触媒量が 2.4 g/L までは光触媒量の増加に伴い増
加した.しかし,2.4 g/L 以上では光触媒量が増加しても TOC 除去速度に大
きな変化は見られなかった.したがって,本検討で用いた実験装置および反
応条件では,2.4 g/L 前後の光触媒量で TOC 除去速度は飽和することがわか
った.これは,TiO2 を用いた光触媒-オゾン法で報告されている様に,光触
媒量の増加に伴う光遮蔽効果により,WO3 光触媒へ到達する照射光量が飽和
したためと考えられた[2–6].したがって,本検討における WO3 光触媒量の
最適量は 2.4 g/L であり,これは TiO2(P25,比表面積: 約 50 m2/g,粒子径: 約
20 nm)を用いた光触媒-オゾン法で報告されている 1.5–2.5 g/L と概ね一致
した[4,14].
42
3.3 結果と考察
1.0
(a)
0.0 g/L
0.4 g/L
1.2 g/L
2.4 g/L
3.6 g/L
4.8 g/L
TOC/TOC0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0
60
120
180
Reaction time (min)
100
TOC removal at 60 min (%)
(b)
80
60
40
20
0
0.0
1.2
2.4
3.6
4.8
Amount of WO3 photocatalyst (g/L)
図 3.1
(a)光触媒量が異なる WO3 光触媒-オゾン法によるフェノール廃水
処理における TOC 経時変化.(b)光触媒量に対する処理時間 60 min における
TOC 除去率.フェノール濃度: 2.1 mmol/L,pH: 5.8,オゾン: 0.45 g/h,水温: 20C.
43
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
3.3.2
フェノール濃度
WO3 光触媒-オゾン法の TOC 除去特性にフェノール濃度が与える影響に
ついて検討した.フェノール濃度が異なる廃水に対する WO3 光触媒-オゾン
法における TOC 経時変化を図 3.2 に示す.WO3 光触媒-オゾン法による処理
は,フェノール濃度が 500 ppm までの全ての条件で TOC を完全に除去した.
その所要時間は 100,200,300,500 ppm でそれぞれ約 100,120,160,200 min
であり,フェノール濃度の増加に伴って TOC の完全除去に要する時間も増
加した.また,3.3.1 節の光触媒量を変化させた実験では,光触媒量が変わっ
ても反応初期(20 min)における TOC 除去率に大きな差は観察されなかった
が,本節のフェノール濃度を変化させた実験では,フェノール濃度の変化に
伴い反応初期における TOC 除去率に差が観察された.また,TOC 除去率が
40–50%に達したところで TOC 除去速度の低下を表すショルダーが観察され,
フェノール濃度の増加に伴いショルダーは顕著になった.この結果は,オゾ
ンによるフェノール水溶液の処理過程ではオゾン耐性のある中間生成物が
蓄積されることと[15],本実験では,フェノール濃度の増加に伴い TOC 除去
速度の低下が顕著になったことから,本結果はフェノールの分解に伴うオゾ
ン耐性のある中間生成物の蓄積によるものだと考えられた.また,観察され
たショルダーがフェノール濃度の増加に伴い顕著になったことから,本 WO3
光触媒-オゾン法では,100–500 ppm でフェノールの分解過程および TOC の
除去過程は変わらないと考えられた.
次に,光触媒-オゾン法による有機物の分解および TOC 除去反応におい
て,多くの研究者らがそれらの反応は 1 次反応で説明されると報告している
[16–20].本実験結果にも 1 次反応を仮定し,各フェノール濃度で反応時間に
対して ln(TOC0/TOC)をプロットした(図 3.3).その結果,図 3.3 より得られ
た直線の傾きが処理時間と共に変化し,反応が進むと反応速度が低下してい
ることがわかった.したがって,本 WO3 光触媒-オゾン法による TOC 除去
44
3.3 結果と考察
反応は,単純な 1 次反応でないことが示された.反応速度の変化から,WO3
光触媒-オゾン法によるフェノール水溶液の TOC 除去過程は,以下のよう
に大きく 3 つの段階に分けられることが示唆された(図 3.4).(I)オゾン分
子との反応性が高い炭素間不飽和結合をもつフェノールやその中間生成物
に対するオゾン分子の直接反応による TOC 除去反応が支配的な段階,(II)
オゾン分子と直接反応する有機物が減ると共に,オゾン耐性のある中間生成
物が蓄積し,オゾンの自己分解反応および光触媒とオゾンとの反応により
TOC を除去する段階,(III)オゾン耐性のある中間生成物が残留し,光触媒
とオゾンとの反応による TOC 除去反応の寄与が大きい段階.以上の 3 つの
TOC 除去過程から,フェノール水溶液の TOC 除去では,オゾン耐性のある
中間生成物が発生して蓄積する(II),
(III)の段階で WO3 光触媒-オゾン法
による TOC 除去反応が特に重要であることが示唆された.
45
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
1.0
100 ppm
200 ppm
300 ppm
500 ppm
TOC/TOC0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0
60
120
180
240
Reaction time (min)
図 3.2
フェノール濃度が異なる廃水に対する WO3 光触媒-オゾン法におけ
る TOC 経時変化.フェノール濃度: 100 ppm(≈ 1.1 mmol/L),200 ppm(≈ 2.1
mmol/L),300 ppm(≈ 3.2 mmol/L),500 ppm(≈ 5.3 mmol/L),光触媒量: 0.6 g
(2.4 g/L),pH: 5.8,オゾン: 0.45 g/h,水温: 25C.
46
3.3 結果と考察
(a)
(b)
(c)
(d)
図 3.3
フェノール濃度が異なる廃水に対する WO3 光触媒-オゾン法におけ
る反応時間に対する ln(TOC0/TOC)プロット.フェノール濃度:(a)100 ppm
(≈ 1.1 mmol/L),
(b)200 ppm(≈ 2.1 mmol/L),
(c)300 ppm(≈ 3.2 mmol/L),
(d)500 ppm(≈ 5.3 mmol/L)
.
47
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
3段階のTOC除去過程において支配的な反応
(I): (i), (II): (ii)+(iii), ( III )(iii)
(i)オゾン分子によるTOC除去反応
R
R´
(iii)光触媒とオゾンの反応
によるTOC除去反応
O3
O3
e−
CB
(ii)オゾンの自己分解反応
によるTOC除去反応
WO3
VB
OH−
H2O2
H2O
図 3.4
OH
R
R´
H2O
WO3 光触媒-オゾン法によるフェノール廃水処理における TOC 除
去反応.
48
H+
h
O3
OH
O3−
3.3 結果と考察
3.3.3
pH
フェノール水溶液の pH が WO3 光触媒-オゾン法の TOC 除去特性に与え
る影響について検討した.初期 pH が異なるフェノール廃水に対する WO3 光
触媒-オゾン法における TOC 経時変化を図 3.5 に示す.O3/dark/WO3 処理で
は,pH 3.0 の時の TOC 除去率が pH 7.0 および 9.0 の時よりも高いことがわか
った.O3/vis/WO3 処理に関しても,pH 3.0 の時の TOC 除去率が pH 7.0 およ
び 9.0 の時よりもわずかに高かった.しかし,これらは有意な差ではなく,
それぞれの pH による TOC 除去特性に明確な優劣はないと考えられた.pH
の WO3 への影響に関しては,WO3 の表面電位の等電点は pH 1.5 付近である
ため,pH 3.0–9.0 では WO3 の表面電位に大きな差はなく,粒子の凝集状態に
も大きな変化はないと考えられた[21].また,O3/vis/WO3 処理の反応時間 60
min における pH は,いずれの処理条件においても pH 3 付近であった.これ
は,フェノールの分解に伴うシュウ酸等の有機酸の生成が要因と考えられた
[3].そのため,フェノール水溶液に対する本 WO3 光触媒-オゾン法による
処理では,水溶液の初期 pH は有機物分解特性に大きく影響しないことがわ
かった.したがって,フェノール水溶液の初期 pH は,pH 3.0–9.0 の範囲で
は,WO3 光触媒-オゾン法の TOC 除去特性に大きな影響を及ぼさないと考
えられた.
49
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
1.0
pH 3.0 (vis)
pH 7.0 (vis)
pH 9.0 (vis)
pH 3.0 (dark)
pH 7.0 (dark)
pH 9.0 (dark)
TOC/TOC0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
60
120
180
Reaction time (min)
図 3.5
初期 pH が異なるフェノール廃水に対する WO3 光触媒-オゾン法に
おける TOC 経時変化.vis: O3/vis/WO3 処理,dark: O3/dark/WO3 処理.光触媒
量: 0.6 g(2.4 g/L),フェノール濃度: 2.1 mmol/L,オゾン: 0.45 g/h,水温: 25C.
50
3.3 結果と考察
3.3.4
処理温度
フェノール水溶液に対する処理温度が WO3 光触媒-オゾン法の TOC 除去
特性に与える影響について検討した.異なる処理温度での WO3 光触媒-オゾ
ン法によるフェノール廃水処理における TOC 経時変化を図 3.6 に示す.
O3/dark/WO3 処理では,15–35C までは処理温度の上昇に伴い反応時間 180
min の TOC 除去率が増加したが,45C では 35C の TOC 除去率よりも低下
した(図 3.6a).45C における TOC 除去率の低下は,処理温度の上昇に伴う
溶存オゾン量の低下による負の影響が,オゾンの自己分解反応が促進される
正の影響を上回ったためと考えられた[4,22].一方,O3/vis/WO3 処理では,45C
の処理は 35C の処理よりも高い TOC 除去率を示し,O3/dark/WO3 処理にお
いて観察された処理温度の上昇に伴う TOC 除去率の低下は見られなかった
(図 3.6b).O3/vis/WO3 処理では,WO3 光触媒とオゾンとの反応によりオゾ
ンの利用率が高く(図 2.7 参照),同時にオゾンからのラジカル活性種の生成
効率が高いため[2,3],溶存オゾン量の低下による負の影響が O3/dark/WO3 処
理と比較して小さいと考えられた.
さらに,O3/dark/WO3 処理では,反応時間 180 min において,処理温度が
45C でも TOC の完全除去には至らなかったが,O3/vis/WO3 処理では,15C
においても TOC が完全に除去された.これらの結果から,フェノール水溶
液に対する TOC の完全除去には,WO3 光触媒-オゾン法による処理が有効
であることが裏付けられた.以上より,処理温度が光触媒-オゾン法の有機
物分解特性に大きく影響することから,光触媒-オゾン法への太陽光の利用
を考える場合,光触媒反応への紫外–可視光の利用だけでなく,熱源として
の赤外光の積極的な利用が期待される.
51
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
(a)
(b)
図 3.6
異なる処理温度での WO3 光触媒-オゾン法によるフェノール廃水処
理における TOC 経時変化.(a)O3/dark/WO3 処理,(b)O3/vis/WO3 処理.光
触媒量: 0.6 g(2.4 g/L),フェノール濃度: 2.1 mmol/L,pH: 5.8,オゾン: 0.45 g/h.
52
3.4 結論
3.4
結論
WO3 光触媒-オゾン法によるフェノール廃水処理に関して,(i)処理に用
いられる光触媒量,
(ii)処理廃水のフェノール濃度,
(iii)フェノール水溶液
の初期 pH,
(iv)処理温度が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性へ与え
る影響について検討した.その結果,本検討が行われた条件では,以下のよ
うに結論付けられた.
(i) WO3 光触媒量は 2.4 g/L 以上に増加しても,TOC 除去速度が飽和するた
め,WO3 光触媒量の最適値は 2.4 g/L である.
(ii) フェノール水溶液に対する WO3 光触媒-オゾン法による TOC 除去過程
は以下の 3 段階で進むと考えられた.
(I) オゾン分子との直接反応による TOC 除去反応が支配的な段階.
(II) オゾンの自己分解反応により生成したラジカル活性種および光
触媒とオゾンとの反応により TOC を除去する段階.
(III) 光触媒とオゾンとの反応による TOC 除去反応の寄与が大きな段
階.
また,光触媒-オゾン法による(II),
(III)の段階における処理がフェ
ノール廃水の TOC を完全に除去するためには重要であることが示唆さ
れた.さらに,処理するフェノール濃度の増加に伴いオゾン耐性中間体
の蓄積も増えるため,反応途中で TOC 除去速度が低下することがわか
った.100–500 ppm のフェノール濃度では,フェノールの分解過程およ
び TOC の除去過程に変化はない.
(iii) フェノール廃水の初期 pH は,pH 3.0–9.0 の範囲では,WO3 光触媒-オ
ゾン法による TOC 除去特性に大きな影響を及ぼさない.
(iv) WO3 光触媒-オゾン法(O3/vis/WO3 )では,WO3 の光触媒作用により
オゾンの利用率とオゾン分子からのラジカル活性種の生成効率が増加
するため,触媒-オゾン法よりも処理温度に伴う溶存オゾン量低下によ
53
第 3 章 WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える影響
る負の影響が小さくなった.触媒-オゾン法(O3/dark/WO3 )による処
理では,処理温度が 45C であっても TOC を完全除去できない.しかし,
WO3 光触媒-オゾン法では処理温度が 15C であっても,TOC を完全に
除去できたことから,フェノール水溶液に対する TOC の完全除去には,
WO3 光触媒-オゾン法による処理が有効であることが裏付けられた.
以上の検討結果から,処理温度が光触媒-オゾン法の有機物分解特性に強
く影響することが判明した.光触媒-オゾン法への太陽光の利用を考える場
合,光触媒反応への紫外–可視光の利用だけでなく,熱源として赤外光が利
用可能であると考えられ,光触媒-オゾン法への太陽光の利用は有効である
ことが示唆された.したがって,本章で得られた結果から,太陽光を有効利
用できる可視光利用型の光触媒-オゾン法のさらなる開発と発展が支持さ
れた.
54
3.5 参考文献
3.5
参考文献
[1] S. Nishimoto, T. Mano, Y. Kameshima, M. Miyake, Photocatalytic water
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56
第4章
WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特
性に与える影響
4.1
はじめに
光触媒は同じ組成の物質であっても,その結晶相,結晶性,比表面積,粒
子径によって光触媒活性は大きく異なる[1–3].例えば,光触媒の結晶相が異
なれば,たとえ同一組成であっても,伝導帯および価電子帯の位置,ならび
にバンドギャップエネルギー(Eg)が異なり,それらは光触媒活性に大きく
影響する.TiO2 光触媒を例に挙げると,TiO2 にはアナターゼ相,ルチル相,
ブルッカイト相の 3 つの結晶相が存在し,一般的にアナターゼ相の活性が高
いとされているが,対象とする反応によってその優劣は異なる[3,4].また,
本質的ではないが,結晶相の熱的安定性に起因する熱処理温度などの作製条
件の違いにより,結晶相によっては結晶性(結晶欠陥量)や比表面積の制御
が困難な場合がある.光触媒における結晶性(結晶欠陥量)は,再結合が結
晶の欠陥部位で起こると考えられるため,キャリアの再結合確率に影響し,
高結晶性の光触媒であれば,再結合確率が低くなると考えられる[2,3,5].一
方で,粒子表面の結晶欠陥は有機物や酸素などの基質の吸着サイトとしても
働くと考えられる[3].比表面積と粒子径は一般に相関関係にあり,表面積の
大小は,有機物や酸素などの反応基質の吸着量に影響し,一般的に大表面積
であるほど基質の吸着量も増加するために光触媒活性が高くなると考えら
れる[2].一方で,表面積の増加は粒子表面の欠陥量の増加をもたらし,キャ
リアの再結合確率が高くなるとも考えられる[2,3].また,粒子径を小さくし
た光触媒では,生じたキャリアの光触媒表面への移動距離が短くなるので,
再結合確率が低下し,光触媒活性が高くなると考えられている[5].
以上より,光触媒の活性は一般的に上記の要素の兼ね合いによって決まる
とされるが,それぞれの寄与の度合いは対象とする反応によってしばしば異
57
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
なる.例えば,水分解反応では,反応基質となる水分子が常に光触媒の周囲
に存在し,水の完全分解には 4 電子を要するため,表面積による反応場の大
小よりも結晶性によるキャリアの再結合確率の影響が大きく影響する場合
が多い[2,3].対照的に,有機物分解反応では,一つの正孔の反応によりラジ
カル連鎖反応が進行すると考えられ,また,反応基質となる酸素および有機
物の吸着プロセスが重要となるので,高比表面積である光触媒の光触媒活性
が高くなることが多い[3,7].したがって,対象とする反応によって求められ
る光触媒の調製条件は異なることになる.
Hernández-Alonso らは,TiO2 を用いた光触媒-オゾン法における TiO2 粉体
中の結晶相の割合が有機物分解特性に影響すると報告している[8].また,
Černigoj らは比表面積がその有機物分解特性に大きく影響すると報告してい
る[9].しかしながら,光触媒-オゾン法に関しては,光触媒の調製条件が有
機物分解特性に与える影響についての研究例が少なく,これまでに十分に検
討がなされていない.上述のように,求められる光触媒の調製条件は用いる
反応系によって異なるため,光触媒-オゾン法においても,光触媒の調製条
件に関する知見を得ることは非常に有用であると考えられる.以上より,本
章では WO3 の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える
影響について検討した.
58
4.2 実験
4.2
実験
4.2.1 WO3 試薬粉末の処理
関東化学㈱製の WO3 試薬粉末(> 99%)(WO3-C と表記)に大気雰囲気下
で 600,700,800C の熱処理を 8 h それぞれ行った.得られた試料は H-600,
H-700,H-800 と表記する.また,25 g の同 WO3 試薬に 48 h ボールミル処理
(ZrO2 ボール: 2 mm,100 g; 溶媒: エタノール,30 mL; 容器: ポリプロピ
レン製,100 mL)を行った.得られた試料を B-M と表記する.
4.2.2
均一沈殿法による WO3 の合成
既報に基づき,均一沈殿法により WO3 が合成された[10].試薬として,
5(NH4)2O12WO35H2O: タングステン酸アンモニウム五水和物(関東化学,鹿
特級),NH2CONH2: 尿素(関東化学,> 99%),硝酸: HNO(関東化学,
60 mass%)
3
が合成に用いられた.
5(NH4)2O12WO35H2O と NH2CONH2 を NH2CONH2/W = 5 になるように
HNO3 水溶液(10 vol%)に加え,水溶液を 80C に保持して 1 h 撹拌し,沈殿
物を得た.得られた沈殿物を遠心分離により固液分離し,中性になるまで純
水で洗浄した.その後,50C で乾燥させ,600,700,800C で熱処理を 4 h
大気雰囲気下でそれぞれ行い,目的試料を得た.得られた試料をそれぞれ
P-600,P-700,P-800 と表記する.
4.2.3
試料のキャラクタリゼーション
得られた試料の結晶構造,光吸収特性,粒子の直接観察,比表面積の測定
および評価は 2 章に準じて行われた.結晶子サイズはシェラー式 D = k/(b −
B)cosを用いて見積もられた[11].シェラー定数 k には 0.9 を用い,装置の補
正値 B の決定には単結晶 Si を用いた.また, = 1.5406 Å を用い,試料ピー
クの半価幅 b は,フィッティング処理によるピーク分離を行い,決定した.
59
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
粒子径の測定は,レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(湿式測定)[㈱
堀場製作所,LA-950]により行い,積算 10%粒子径を評価に用いた.
4.2.4
有機物分解特性評価
実験装置には 2 章と同様の装置が用いられた.本検討における実験条件を
表 4.1 に示す.処理対象の有機物にはシュウ酸を用いた.シュウ酸は,毒性
があり,多くの有機物の分解過程で副生成物として生成されるため,繊維産
業や化学プラントなどの様々な産業廃液に含まれている[12–16].また,シュ
ウ酸はオゾン分子との反応性が低いオゾン耐性のある有機物である[17–19].
一方で,正孔および OH•とは素早く反応し,中間生成物が残留することなく
二酸化炭素と水に分解される[17–20].そのため,光触媒-オゾン法による有
機物分解特性を評価するためのモデル汚染有機物として用いられている
[21,22].本実験の手順は 2 章に準じて行われた.
表 4.1
60
有機物分解特性評価の実験条件
シュウ酸濃度
10 mmol/L(TOC: ca. 240 mg/L)
水溶液量
250 mL
水温
25C
pH
2.1
試料量
0.5 g(2.0 g/L)
反応容器
パイレックスガラス製内部照射型セル
照射光源
300 W Xe ランプ+L-42 カットオフフィルター
照射波長
 > 410 nm(vis)
照射光強度
18 mW/cm2(360 nm <  < 470 nm)
オゾン流量
0.45 g/h
オゾン濃度
14 mg/L
4.3 結果と考察
4.3
4.3.1
結果と考察
試料のキャラクタリゼーション
得られた試料のキャラクタリゼーション結果および XRD パターンを表 4.2
および図 4.1 にそれぞれ示す.得られた全ての試料の結晶相は,主相の
monoclinic 相(P21/n)に副相の triclinic 相(P1̅)を含んだ混合相であった(図
2.3 も参照).本検討では,monoclinic 相と triclinic 相の割合を図 4.2 に示す
monoclinic 相の 202(I
m
202)および
triclinic 相の 220(I
t
220)ピーク強度を用
いて I m202/I t220 より見積もった.その結果,熱処理温度が 700C までは I m202/I
t
220 が増加し,800C
では I m202/I t220 が急激に低下した.また,WO3-C へのボ
ールミル処理によっても I
m
t
202/I 220
が大きく低下した.これらの結果より,
700C の熱処理条件で最も monoclinic 相の割合が増加し,800C では逆に
monoclinic 相の割合が低下することがわかった.
さらに,monoclinic 相の 2 = 23.1(002),23.6(020),24.4(200)のピ
ークを用いて結晶子サイズをシェラー式により見積もった.結晶子サイズは
単結晶の成長性の尺度の一つとして考えられ,結晶の成長に伴い結晶欠陥が
減少すると仮定するならば,結晶性の尺度の一つとしても考えられる[23].
結晶子サイズを算出した結果,熱処理温度の増加に伴い結晶子サイズの増加
が見られた.つまり,熱処理温度の増加に伴い結晶が成長し,結晶性が増加
していると考えられる.しかし,H-800 では結晶子サイズが H-700 よりも低
く見積もられ,これは,結晶子サイズの見積もりに monoclinic 相のピークを
使用しているため,結晶相の割合の変化による影響があると考えられる.ま
た,B-M 試料は XRD パターンからわかるように結晶性が著しく低下してお
り,最も小さな結晶子サイズを示した.
バンドギャップエネルギー(Eg)に関しては,結晶性が著しく低下してい
た B-M 試料を除いて約 2.65 eV( 0.04)であり,結晶相の変化による Eg の
変化は見られなかった.
61
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
比表面積に関しては,B-M 試料のみが 45 m2/g と高い比表面積を示した.
熱処理試料では,H-600 および H-700 試料は WO3-C から比表面積の変化は見
られなかったが,H-800 では比表面積が低下した.また,均一沈殿試料の比
表面積は同熱処理温度の熱処理試料と比較して,いずれも高い比表面積を示
した.さらに,粒度分布測定により得られた積算 10%粒子径では,比表面積
測定の結果と対応して B-M 試料のみが WO3-C よりも粒子径が小さくなった.
一方で,熱処理試料および均一沈殿試料の粒子径は WO3-C よりも大きく,
熱処理温度の増加に伴い粒子径は増加していた.また,比表面積測定の結果
と同様に,均一沈殿試料の粒子径は同熱処理温度の熱処理試料と比較してい
ずれも小さかった.
試料の SEM 像を図 4.3 に示す.SEM による粒子の直接観察では,熱処理
温度の増加に伴い粒成長が進行していることが観察された.さらに,直接観
察においても,均一沈殿試料の粒子径は同熱処理温度の熱処理試料よりも小
さく,粒度分布測定により得られた結果と一致していた.また,結晶子サイ
ズの変化と比較して粒子径の変化が大きいことから,熱処理温度の増加が結
晶子の成長よりも粒子径の変化に大きく影響していることが示唆された.
62
Monoclinic + Triclinic
Monoclinic + Triclinic
Monoclinic + Triclinic
Monoclinic + Triclinic
Monoclinic + Triclinic
Monoclinic + Triclinic
Monoclinic + Triclinic
試薬を 48 h ボールミル処理
試薬を 600C,8 h 熱処理
試薬を 700C,8 h 熱処理
試薬を 800C,8 h 熱処理
均一沈殿法: 600C,4 h 熱処理
均一沈殿法: 700C,4 h 熱処理
均一沈殿法: 800C,4 h 熱処理
B-M
H-600
H-700
H-800
P-600
P-700
P-800
6.2
21.6
12.1
2.8
17.4
14.8
2.7
9.4
I m202/I t220 a
130 nm
101 nm
87 nm
86 nm
105 nm
88 nm
37 nm
62 nm
結晶子サイズ
b
2.65 eV
2.68 eV
2.67 eV
2.64 eV
2.62 eV
2.61 eV
2.72 eV
2.65 eV
Eg
粒子径
127 nm
93 nm
178 nm
313 nm
713 nm
138 nm
259 nm
565 nm
比表面積
3.6 m2/g
45.3 m2/g
3.4 m2/g
3.5 m2/g
1.8 m2/g
6.5 m2/g
4.8 m2/g
3.2 m2/g
c
I m202: Monoclinic 相の 202 ピーク強度,I t220: Triclinic 相の 220 ピーク強度.
b
Monoclinic 相の 002(2 = 23.1),020(2 = 23.6),200(2 = 24.4)ピークの半価幅を用いてシェラー式から算出.
c
粒度分布測定から得られた積算 10%粒子径.
Monoclinic + Triclinic
市販試薬(関東化学,> 99.9 %)
WO3-C
a
結晶相
調製条件
試料のキャラクタリゼーション
試料
表 4.2
4.3 結果と考察
63
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
図 4.1
64
各試料の XRD パターン.
4.3 結果と考察
図 4.2
各試料の XRD パターン.
(a)WO3-C,
(b)B-M,
(c)H-600,
(d)
H-700,(e)H-800,(f)P-600,(g)P-700,(h)P-800.M: Monoclinic,
T: Triclinic.
65
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
図 4.3
66
各試料の SEM 像.
4.3 結果と考察
4.3.2
試料の有機物分解特性
得られた試料の O3/vis/WO3 処理における有機物分解特性をシュウ酸廃水
処理実験により評価した.各試料の O3/vis/WO3 処理におけるシュウ酸廃水の
TOC 経時変化および反応時間 60 min における TOC 除去率をそれぞれ図 4.4
および図 4.5 に示す.H-800 を除いた全ての試料が反応時間 180 min で TOC
を完全に除去した.さらに,B-M および H-800 以外の試料は,試薬である
WO3-C よりも高い TOC 除去特性を示し,その序列は図 4.5 から P-700 > H-700
> P-600 > H-600 > WO3-C > P-800 > B-M > H-800 であった.均一沈殿試料はい
ずれも同熱処理温度の熱処理試料よりも高い TOC 除去率を示し,最も高い
TOC 除去率を示した P-700 は WO3-C の約 1.6 倍の TOC 除去率を示した.す
なわち,WO3 の調製条件を変えることで WO3 光触媒-オゾン法の有機物分
解特性を向上させられることがわかった.
得られた試料の有機物分解特性と各試料の結晶相の割合,結晶子サイズ,
粒子径,比表面積との関係を図 4.6 に示す.図 4.6a から,結晶相の割合と有
機物分解特性との間に特に強い相関性が見られた.この結果から,monoclinic
相の存在割合が増加するにつれて,有機物分解特性が高くなることがわかっ
た.したがって,WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性には monoclinic 相
の存在割合が大きく影響することが明らかになった.WO3 を用いた水分解に
よる酸素生成反応においては,monoclinic 相は室温で安定相であり,キャリ
アの再結合中心となる欠陥(W5+など)が他の hexagonal や tetragonal 相より
も少ないために光触媒活性が高いと説明されている[24].つまり,H-800 お
よび P-800 は,triclinic 相の増加により monoclinic 相の割合が低下し,欠陥量
が増加したために有機物分解特性が低下したと考えられた.
67
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
図 4.4
各試料を用いた O3/vis/WO3 処理におけるシュウ酸廃水の TOC 経時
変化.光触媒量: 0.5 g(2.0 g/L)
,シュウ酸濃度: 10 mmol/L,pH: 2.1,オゾン:
0.45 g/h,水温: 25C.
68
TOC removal (%) (for 60 min)
4.3 結果と考察
100
80
60
40
20
0
図 4.5
C
3O
W
0
0
0
0
0
0
M
B- H-60 H-70 H-80 P-60 P-70 P-80
シュウ酸廃水に対する各試料を用いた O3/vis/WO3 処理の反応時間 60
min における TOC 除去率.
69
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
110
110
TOC removal (%) (for 60 min)
(b)120
TOC removal (%) (for 60 min)
(a)120
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
5
10
15
20
25
20
40
110
110
TOC removal (%) (for 60 min)
(d)120
TOC removal (%) (for 60 min)
(c)120
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
200
400
600
800
Particle size (nm)
図 4.6
60
80
100
120
140
Crystallite size (nm)
I m202/I t220
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
10
20
30
40
Specific surface area (m2/g)
有機物分解特性と(a)結晶相の割合,
(b)結晶子サイズ,
(c)粒子
径,
(d)比表面積との関係.◇: WO3-C,▽: B-M,○: H-600,□: H-700,△:
H-800,●: P-600,■: P-700,▲: P-800.
70
50
4.4 結論
4.4
結論
本章では,WO3 の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に
与える影響について新たな知見を得るため,WO3 試薬へのボールミルおよび
熱処理,ならびに均一沈殿法による合成により WO3 光触媒を調製し,それら
の WO3 光触媒-オゾン法による有機物分解特性を検討した.その結果,WO3
光触媒-オゾン法では WO3 の結晶相がその有機物分解特性に大きく影響す
ることが判明した.さらに,均一沈殿法によって合成された WO3 は,市販試
薬の約 1.6 倍の有機物分解特性を示し,WO3 光触媒-オゾン法の性能向上に
成功した.以上,本章では,光触媒-オゾン法を用いる光触媒の設計指針に
なる有用な知見が得られた.
71
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
4.5
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72
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73
第 4 章 WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分解特性に与える影響
titanium dioxide photocatalyst codoped with cerium and iodine and its
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74
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
5.1
はじめに
最近,光触媒-オゾン法における光触媒への照射光およびオゾン発生の発
電装置のエネルギーを全て太陽光で賄うことを可能とした新規水処理装置
が報告され[1,2],光触媒-オゾン法への期待はますます高まっている[3].光
触媒-オゾン法のさらなる高性能化のためには光触媒における太陽光の有
効利用が不可欠であると考えられる.すなわち,太陽光エネルギーの約 46%
を占める可視光に高い感度で応答する高活性な可視光応答型光触媒が必要
とされる[4].1 章で述べたように,光触媒-オゾン法は OH•の生成効率が高
く,優れた有機物分解特性を示す.それは,オゾンが光触媒励起電子の受容
体として働くことで,効率良く OH•が生成されるためである[5–8].オゾンの
単電子反応における酸化還元電位(O3 + e− = O3•−, +1.03 V vs. NHE)は,酸素
の単電子反応における酸化還元電位(O2 + e− = O2•−, −0.284 V vs. NHE; O2 + H+
+ e− = HO2•, −0.046 V vs. NHE)および TiO2 に代表される金属酸化物半導体の
伝導帯電位よりも十分に貴である[9–11].また,可視光を吸収する金属酸化
物半導体の多くは,その伝導帯電位が酸素の単電子還元反応における酸化還
元電位よりも貴であり,酸素還元能が低いため,大気雰囲気下では可視光応
答型光触媒として作用しない[12].しかし,励起電子受容体として働く適切
な犠牲試薬の存在下では,可視光応答型光触媒として作用することが可能に
なる[4].
上記のことに着目し,2 章では可視光応答型光触媒として WO3 を可視光利
用型の光触媒-オゾン法に用いた結果,WO3 がオゾンとの併用下で可視光応
答型光触媒として作用し,WO3 光触媒-オゾン法が優れた有機物分解特性を
示すことを明らかにした[13].そのため,光触媒-オゾン法では,可視光吸
収を示す多くの金属酸化物半導体を可視光応答型光触媒として利用できる
75
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
可能性が示された.一方で,これまでに報告されている光触媒-オゾン法に
おいて,TiO2 以外の光触媒による研究例は非常に少なく,可視光を利用した
光触媒-オゾン法の報告例はほとんどない[3,14].
以上より,本章では,光触媒-オゾン法で報告例のある TiO2(P25),WO3
に加え,新たに,紫外光応答型光触媒として Nb2O5[15,16]および SnO2[17,18],
ならびに 犠牲 試薬存 在下で 可視光 応答型 光触媒作 用が 報告さ れてい る
-Fe2O3[19],In2O3[20]および BiVO4[21](図 5.1)の光触媒-オゾン法におけ
る有機物分解特性と安定性を検討し,評価した[22].
−1.0
Anatase Rutile
TiO2
TiO2 Nb2O5
SnO2
WO3
Fe2O3
In2O3
BiVO4
3.5
2.7
2.2
2.7
2.4
V vs. NHE
0
1.0
2.0
3.2
3.0
3.4
3.0
4.0
図 5.1
pH = 0
各種金属酸化物半導体のバンド構造およびオゾンの単電子反応にお
ける酸化還元電位[9,11,20,23–25].
76
O3/O3: +1.03 V
5.2 実験
5.2
5.2.1
実験
試料
金属酸化物半導体試料には,BiVO4 を除いて市販試薬を使用した.TiO(P25)
2
は日本アエロジル㈱製,Nb2O5,In2O3 ,WO3 は関東化学㈱製,SnO2 は和光純
薬工業㈱製,Fe2O3 は㈱高純度化学研究所製が用いられた.BiVO4 は既報に基
づき,以下の手順で固相反応法により合成された[26].BiNO3·5H2O(関東化
学,特級)と NH4VO3(関東化学,特級)を量論比で混合した後,120C,24
h の乾燥を経て 700C,8 h で焼成し,BiVO4 を得た.
5.2.2
試料のキャラクタリゼーション
試料の結晶構造,光吸収特性,比表面積の測定および評価は 2 章に準じて
行われた.
5.2.3
有機物分解特性評価
実験装置には 2 章と同様の装置を用いた.本検討における実験条件を表 5.1
に示す.処理対象の有機物には 4 章と同じくシュウ酸を用いた.本実験の手
順は 2 章に準じて行われた.本実験の処理条件の表記と内容を表 5.2 に示す.
本実験後の光触媒試料は,遠心分離法により回収され,XRD により試料の安
定性が評価された.
77
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
表 5.1
有機物分解特性評価の実験条件
シュウ酸濃度
10 mmol/L(TOC: ca. 240 mg/L)
水溶液量
250 mL
水温
25C
pH
2.1
試料量
0.5 g(2.0 g/L)
反応容器
パイレックスガラス製内部照射型セル
照射光源
300 W Xe ランプ+IR カットオフフィルター
(可視光照射時は L-42 カットオフフィルターを装着)
照射波長
紫外–可視光:  > 310 nm,可視光:  > 410 nm
照射光強度
18 mW/cm2(360 nm <  < 470 nm)
オゾン流量
0.45 g/h
オゾン濃度
14 mg/L
表 5.2
78
有機物分解特性評価における処理条件の表記と内容
O3/dark
オゾン
O3/vis
オゾン+可視光
O3/UV–vis
オゾン+紫外–可視光
O2/UV–vis
酸素+紫外–可視光
O3/dark/sample
オゾン+試料
O3/vis/sample
オゾン+可視光+試料
O3/UV–vis/sample
オゾン+紫外–可視光+試料
O2/UV–vis/sample
酸素+紫外–可視光+試料
5.3 結果と考察
5.3
5.3.1
結果と考察
金属酸化物半導体試料のキャラクタリゼーション
金属酸化物半導体試料のキャラクタリゼーション結果を表 5.3 に示す.TiO2,
Nb2O5,SnO2,WO3,Fe2O3,In2O3,BiVO4 の XRD パターンおよび Kubelka–
Munk スペクトルをそれぞれ図 5.2 および図 5.3 に示す.それぞれの試料の
XRD パターンには,不純物を示すピークは観察されず,いずれの試料も高結
晶性であった.BiVO4 は既報と同様に monoclinic 相の単相であった[26].TiO2
(P25)の XRD パターンには,アナターゼ相とルチル相が検出された.なお,
大谷らによると[27],2 相の割合はアナターゼ相が約 80%,ルチル相が約 20%
であることが報告されており,本結果におけるピーク強度比は既報の結果と
概ね一致していた.Kubelka–Munk スペクトルから,WO3,Fe2O3,In2 O3,BiVO4
が可視光吸収特性を示すことがわかった.Tauc プロット[28]から見積もられ
た試料のバンドギャップエネルギー(Eg)に関して,Nb2 O5 は既報の値より
も比較的小さく見積もられたが,他の試料の Eg は図 5.1 に示している既報の
値と概ね一致していた.TiO2 と SnO2 の比表面積は約 50 m2/g と比較的大きい
が,他の試料は 5 m2/g 前後であった.
さらに,金属酸化物半導体試料への吸着による TOC 除去効果を知るため
に,それぞれの光触媒試料について,1 h の暗中下での撹拌前後における TOC
の変化を調べた.その結果,いずれの光触媒試料についても,1 h で TOC 減
少量は < 5 mg/L であった.したがって,本検討で用いた金属酸化物半導体
試料には,吸着による TOC 除去効果はほとんどないことがわかった.
79
80
BiVO4
Monoclinic
固相法により合成[26]
試薬(関東化学)
WO3
Fe2O3
Cubic
Monoclinic+Triclinic
Hexagonal
試薬(関東化学)
試薬(和光純薬)
Nb2O5
SnO2
In2O3
Tetragonal(アナターゼ+ルチル)
Monoclinic
Tetragonal
試薬(日本アエロジル)
TiO2
試薬(高純度化学)
試薬(関東化学)
結晶相
試料のキャラクタリゼーション
供給元
表 5.3
2.3
2.8
2.7
2.0
3.1
3.6
3.1
Eg(eV)
1.7
7.6
3.6
12.2
2.1
54.1
52.3
比表面積(m2/g)
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
5.3 結果と考察
図 5.2
金属酸化物半導体試料の XRD パターン.
81
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
300
3.0 3.5 4.0
Energy (eV)
400
500
(F(R) hv)0.5 (a.u.)
3.1 eV
2.5
200
Nb2O5
F(R) (a.u.)
F(R) (a.u.)
(F(R) hv)0.5 (a.u.)
TiO2
4.5
600
700
3.1 eV
2.5
200
300
Wavelength (nm)
400
3.0
3.5
Energy (eV)
500
300
(F(R) hv)0.5 (a.u.)
F(R) (a.u.)
(F(R) hv)0.5 (a.u.)
F(R) (a.u.)
200
400
500
2.7 eV
2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5
Energy (eV)
5.0
600
700
200
300
Wavelength (nm)
400
500
(F(R) hv)0.5 (a.u.)
F(R) (a.u.)
(F(R) hv)0.5 (a.u.)
F(R) (a.u.)
200
300
400
2.8 eV
2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5
Energy (eV)
3.0
500
700
In2O3
2.0 eV
2.0
2.5
Energy (eV)
600
Wavelength (nm)
Fe2O3
1.5
700
WO3
3.6 eV
3.5 4.0 4.5
Energy (eV)
600
Wavelength (nm)
SnO2
3.0
4.0
600
700
Wavelength (nm)
200
300
400
500
600
700
Wavelength (nm)
(a.u.)
(F(R) hv)
0.5
F(R) (a.u.)
BiVO4
2.0
200
2.3 eV
2.5
3.0
Energy (eV)
300
400
3.5
500
600
700
Wavelength (nm)
図 5.3
金属酸化物半導体試料の Kubelka–Munk スペクトル(挿入図: Tauc プ
ロット).
82
5.3 結果と考察
5.3.2
5.3.2.1
光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
オゾンによる TOC 除去特性
はじめに,金属酸化物半導体を添加しない処理によるシュウ酸廃水の TOC
除去特性を調べた.金属酸化物半導体を添加しない処理によるシュウ酸廃水
の TOC 経時変化を図 5.4 に示す.酸素通気と UV–vis 照射( > 310 nm)に
よる O2/UV–vis 処理では,反応時間 240 min で TOC はほとんど減少しなかっ
た.オゾン通気下の O3/dark 処理では,反応時間 240 min で TOC が約 20%減
少した.シュウ酸の分解はオゾン分子との直接反応ではほとんど進行せず,
主に OH•などのラジカル活性種により行われる[29].したがって,O3/dark 処
理による TOC の減少は,オゾンの自己分解反応によって生じたラジカル活
性種によると考えられた[30].O3/dark 処理に UV–vis 照射を加えた O3/UV–vis
処理では,TOC の除去速度がわずかに向上し,反応時間 240 min で TOC は
約 30%減少した.これは,UV 照射によりオゾンの分解反応が促進され,ラ
ジカル活性種の生成反応が促進されたためと考えられた[29,31].一方,
O3/dark 処理に可視光照射( > 410 nm)を加えた O3/vis 処理では,O3/UV–vis
処理の様に TOC 除去特性は向上せず,TOC 除去速度は O3/dark 処理と同程度
であった.オゾンには,Chappius 帯と呼ばれる可視光吸収域が 400–800 nm
にあるが[32], > 410 nm の可視光照射では,ラジカル活性種の生成は促進
されなかった[31].つまり,光触媒を添加しない処理条件では,可視光照射
により TOC 除去特性は向上しないことがわかった.
83
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
図 5.4
金属酸化物半導体を添加しない処理によるシュウ酸廃水の TOC 経時
変化.
84
5.3 結果と考察
5.3.2.2
TiO2 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
TiO2 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃水処理における TOC 経
時変化を図 5.5a に示す.O2/UV–vis/TiO2 処理では,TiO2 が光触媒作用を示し,
反応時間 240 min で TOC を約 10%除去した.また,触媒-オゾン法である
O3/dark/TiO2 処理では,TOC 除去速度は O3/dark 処理と同程度であり,触媒-
オゾン法における TiO2 のシュウ酸に対する触媒効果は見られなかった.一方,
O3/UV–vis/TiO2 処理の TOC 除去特性は,O3/UV–vis および O3/dark/TiO2 処理
と比較して大きく向上し,約 60 min で TOC を完全に除去した.その TOC 除
去特性は,O2/UV–vis/TiO2 および O3/UV–vis 処理の TOC 除去特性の単純な合
算よりもはるかに大きく,光触媒-オゾン法における励起電子とオゾンとの
反応による光触媒作用の促進と OH•の効率的な生成による相乗効果であると
考えられた[33–35].
O3/vis/TiO2 処理の TOC 除去特性は,O3/vis および O3/dark/TiO2 処理よりも
向上した.本検討の可視光照射用に用いたカットオフフィルターは < 410
nm の波長領域をわずかに透過させる(図 5.6).また,5.2.1 節で見積もられ
た TiO2 の Eg は 3.1 eV であったが,一般的にルチル相 TiO2 の Eg は 3.0 eV で
あり[11],本検討で用いた TiO2 はルチル相を約 20%含むため, < 410 nm の
波長で光励起する可能性が考えられる.また,もう一つの可能性として,
O3/vis/TiO2 処理で TOC が減少したのは,可視光照射下の TiO2 光触媒による
色素分解で観察されるような光増感作用が寄与していると考えられた[36–
38].上述した様に,オゾンは 400–800 nm の波長域に吸収帯をもっている.
したがって,下記のように光励起したオゾン(O3*)から TiO2 の伝導帯(CB)
に電子移動が生じ,そこからさらに,オゾンまたは酸素への電子移動反応が
進み,ラジカル活性種が生成する反応が進行する可能性が考えられる(反応
5.1–4).
O3 + h ( > 400 nm) → O3*
(反応 5.1)
85
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
O3* + TiO2 → O3•+ + TiO2 (CB–e−)
(反応 5.2)
TiO2 (CB–e−) + O3 or O2 → O3•− or O2•−
(反応 5.3)
O3•+ → ラジカル連鎖反応の開始剤として働く
(反応 5.4)
処理前および各処理後の TiO2 の XRD パターンを図 5.5b に示す.いずれの
処理条件においても処理前後の XRD パターンに変化はなく,TiO2 は本実験
条件下で安定であった.
86
5.3 結果と考察
(a)
(b)
図 5.5 (a)TiO2 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃水処理におけ
る TOC 経時変化,(b)処理前および各処理後の TiO2 の XRD パターン.
87
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
図 5.6
本検討で用いたカットオフフィルター(L-42)の透過スペクトル.
88
5.3 結果と考察
5.3.2.3
Nb2O5,SnO2 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
Nb2O5 および SnO2 はバンドギャップが大きく,紫外光応答型の光触媒であ
る[15–18].Nb2O5,SnO2 の伝導帯の下端は 0 – +0.5 V vs. NHE に位置してお
り[11],酸素を単電子還元でき得るぎりぎりの値であり,酸素還元能は低い.
そのため,Nb2O5,SnO2 が大気雰囲気下で環境浄化用光触媒として使用され
る例はほとんどない.しかし,本研究のコンセプトに基づくと,光触媒-オ
ゾン法で環境浄化用光触媒として作用することが期待できる.
Nb2O5 および SnO2 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃水処理に
おける TOC 経時変化を図 5.7 に示す.O2/UV–vis/Nb2 O5 および O2/UV–vis/SnO2
処理では,TOC は反応時間 240 min でほとんど除去されなかった.Nb2 O5 と
SnO2 は酸素還元能が低いため,Nb2O5 と SnO2 は酸素通気下で十分な光触媒
作用を示さなかったと考えられた.O3/dark/Nb2O5 および O3/dark/SnO2 処理の
TOC 除去特性は,O3/dark 処理と同程度であり,TiO2 の時と同様な結果であ
った.O3/UV–vis/Nb2O5 および O3/UV–vis/SnO2 処理では,いずれの処理も
O3/UV–vis 処理と比較して TOC 除去特性が大きく向上し,反応時間 240 min
で 90–95%の TOC 除去率を示した.また,O3/vis/Nb2O5 および O3/vis/SnO2 処
理では,O3/vis/TiO2 処理と同様に,Nb2O5 と SnO2 は可視光吸収を示さないに
もかかわらず,可視光照射によって TOC 除去率が増加した.反応時間 240 min
の TOC 除去率は,O3/dark/sample(Nb2O5,SnO2)および O3/vis 処理よりも約
20%高く,約 40%であった.
可視光照射による TOC 除去率の増加は,O3/vis/TiO2 処理の時と同様に,オ
ゾンの光増感作用が関与した反応による結果であると考えられた(反応式
5.1–4).一方,O3/vis/Nb2O5 および O3/vis/SnO2 処理の TOC 除去率と O3/vis/TiO2
処理の TOC 除去率を比較すると,O3/vis/Nb2O5 処理と O3/vis/SnO2 処理の TOC
除 去 率 は 同 程 度 で あ る の に 対 し , O3/vis/TiO2 処 理 の TOC 除 去 率 は ,
O3/vis/Nb2O5 および O3/vis/SnO2 処理の TOC 除去率よりも高かった.また,
89
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
Nb2O5 と SnO2 は可視光を全く吸収しないが,ルチル相の TiO2 はわずかに可
視光に吸収特性を示すと考えられることから,5.3.2.2 節の O3/vis/TiO2 処理で
は,オゾンの光増感作用による TOC 除去反応だけでなく,可視光照射によ
るルチル相 TiO2 の光触媒作用も TOC 除去反応に寄与したことが示唆された.
各処理後の Nb2 O5 と SnO2 の XRD パターンを処理前の XRD パターンと共
に図 5.8 に示す.いずれの処理条件においても XRD パターンに変化は見られ
ず,Nb2O5 と SnO2 は本実験条件下で安定であった.以上の結果から,紫外照
射下の光触媒-オゾン法において,Nb2O5 と SnO2 は光触媒として作用したこ
とが明らかにされた.
90
5.3 結果と考察
図 5.7 (a)Nb2O5,(b)SnO2 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃
水処理における TOC 経時変化.
91
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
(a)
(b)
図 5.8
ン.
92
処理前および各処理後の(a)Nb2O5 および(b)SnO2 の XRD パター
5.3 結果と考察
5.3.2.4 WO3,Fe2O3 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
WO3 および Fe2 O3 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃水処理にお
ける TOC 経時変化を図 5.9 に示す.WO3 を用いた場合,2 章のフェノール水
溶液に対する処理と同様に,酸素通気下での O2/UV–vis/WO3 処理では TOC
の除去は見られなかったが,オゾン通気下での O3/UV–vis/WO3 処理では優れ
た TOC 除去特性を示し,反応時間 90 min で TOC を完全に除去した.さらに,
O3/vis/WO3 処理においても反応時間 100 min で TOC を完全に除去し,可視光
照射下で優れた TOC 除去特性を示した.
Fe2 O3 を用いた場合,O2/UV–vis/Fe2 O3 処理により反応時間 240 min で TOC
がわずかに減少した.Fe2O3 の伝導帯下端は,+0.3 – +0.7 V vs. NHE に位置す
るため[11,19],光触媒作用により TOC が除去されたとは考えにくい.一方,
シュウ酸は Fe2O3 に化学吸着することで光還元反応が進行することが報告さ
れている[39,40].つまり,O2/UV–vis/Fe2O3 処理による TOC の減少は,Fe2O3
の光触媒作用ではなく,シュウ酸が Fe2O3 に化学吸着したことによるシュウ
酸の光還元反応による結果と考えられた.O3/UV–vis/Fe2O3 処理では,O3/UV–
vis 処理よりも TOC 除去率が向上し,反応時間 240 min で約 45%の TOC を除
去した.また,O3/vis/Fe2O3 処理でも反応時間 240 min で約 42%の TOC を除
去した.この O3/vis/Fe2O3 処理による TOC 除去は,シュウ酸と Fe2O3 による
光還元反応が可視光下( > 420 nm)では反応性が低いことと[39,40],オゾ
ンの光増感作用による O3/vis/Nb2O5 および O3 /vis/SnO2 処理の TOC 除去率と
の比較から,Fe2 O3 の可視光下における光触媒作用による TOC 除去反応であ
ると考えられた.
各処理後の WO3 と Fe2O3 の XRD パターンを処理前の XRD パターンと共に
図 5.10 に示す.いずれの処理条件においても XRD パターンに変化は見られ
ず,WO3 と Fe2O3 は本実験条件下で安定であった.以上の結果から,WO3 お
よび Fe2 O3 は光触媒-オゾン法で光触媒として作用していることが判明した.
93
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
図 5.9
(a)WO3 ,(b)Fe2O3 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃
水処理における TOC 経時変化.
94
5.3 結果と考察
(a)
(b)
図 5.10
処理前および各処理後の(a)WO3 および(b)Fe2O3 の XRD パタ
ーン.
95
第5章
5.3.2.5
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
In2O3,BiVO4 の光触媒-オゾン法による TOC 除去特性
In2O3 および BiVO4 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃水処理に
おける TOC 経時変化を図 5.11 に示す.O2/UV–vis/In2 O3 処理は WO3 と同様に
TOC を全く除去しなかった.一方,O2/UV–vis/BiVO4 処理は TOC を除去し,
その除去特性は TiO2 を用いた酸素通気時の処理よりも高いことがわかった.
O3/UV–vis/In2O3 および O3/UV–vis/BiVO4 処理は,どちらも O3/dark/sample
(In2O3,BiVO4)および O3/UV–vis 処理よりも高い TOC 除去率を示した.さ
らに,In2O3 と BiVO4 は,可視光照射下の光触媒-オゾン法による処理でも
高い TOC 除去特性を示した.しかし,In2O3 と BiVO4 は,光触媒-オゾン法
による処理の反応途中から TOC 除去速度が低下した.
図 5.12 に示す In2O3 と BiVO4 の処理前および各処理後の XRD パターンか
ら,両試料には処理後に不純物のピークがそれぞれ観察された.O3/dark/In2O3
処 理 は 不 純 物 ピ ー ク が 検 出 さ れ な か っ た が , O3/UV–vis/In2 O3 お よ び
O3/vis/In2O3 処理で同じ不純物ピークが観察され,O2/UV–vis/In2O3 処理では
O3/UV–vis/In2O3 処理とは異なる不純物ピークが観察された.BiVO4 を用いた
場合,全ての処理条件で不純物ピークが観察され,O3/UV–vis/BiVO4 および
O3/vis/BiVO4 処 理 で は In2O3 と 同 様 に 同 じ 不 純 物 ピ ー ク が , な ら び に
O3/dark/BiVO4 および O2/UV–vis/BiVO4 処理ではそれぞれ O3/UV–vis/BiVO4 処
理とは異なる不純物ピークが観察された.これらの結果から,In2O3 は主に光
触媒作用が寄与した自身の光還元腐食により不純物が生成したと考えられ
[41],BiVO4 では,自身の光還元腐食だけでなく[42],オゾンの強い酸化作用
(O3 + 2H+ + 2e− = O2 + H2O, +2.08 V vs. NHE),またはシュウ酸の還元作用
(2CO2 (g) + 2H+ + 2e− = H2C2O4 (aq), −0.500 V vs. NHE; 2CO2 (g) + 2e− =
C2O42− (aq), −0.590 V vs. NHE)が不純物生成に寄与したと考えられた[10,43].
しかしながら,両試料において,光触媒-オゾン法による処理後も試料のピ
ーク強度は強く,その結晶構造は維持されていると考えられた.そのため,
96
5.3 結果と考察
処理後に不純物生成は観察されたが,In2O3 と BiVO4 は光触媒-オゾン法に
おいて光触媒として作用していると考えられた.
In2O3 と BiVO4 の光触媒-オゾン法における TOC 除去特性および安定性を
さらに詳細に知るために,O3/UV–vis/In2O3 および O3/UV–vis/BiVO4 処理で使
用した試料を繰り返し用いて再び光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃水処
理を行った.試料を繰り返し用いた時の光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃
水処理における TOC 経時変化および処理前後の XRD パターンを図 5.13 と図
5.14 にそれぞれ示す.BiVO4 の TOC 除去特性は,繰り返し使用によりわずか
に低下したが,In2O3 では反応初期における TOC 除去速度はむしろ増加して
おり,In2O3 と BiVO4 のどちらも急激に TOC 除去特性を失うことはなかった.
また,処理後の XRD パターンからは,新たな不純物ピークの検出や不純物
ピークの急激な成長は観察されなかった.これらの結果から,In2O3 と BiVO4
は光触媒-オゾン法において,安定性には課題があるが,光触媒として作用
し,可視光下でも高い TOC 除去特性を示すことが判明した.
97
第5章
図 5.11
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
(a)In2O3,(b)BiVO4 を用いた光触媒-オゾン法によるシュウ酸
廃水処理における TOC 経時変化.
98
5.3 結果と考察
(a)
(b)
図 5.12
処理前および各処理後の(a)In2O3 および(b)BiVO4 の XRD パタ
ーン.
99
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
1.0
(a) In2O3
TOC/TOC0
0.8
1st run
2nd run
0.6
0.4
0.2
0.0
0
60
120
180
240
Reaction time (min)
1.0
(b) BiVO4
TOC/TOC0
0.8
1st run
2nd run
0.6
0.4
0.2
0.0
0
60
120
180
240
Reaction time (min)
図 5.13
(a)In2O3 および(b)BiVO4 を繰り返し用いた O3/UV–vis/sample
処理によるシュウ酸廃水処理における TOC 経時変化.
100
5.3 結果と考察
(a)
(b)
図 5.14
(a)In2O3 および(b)BiVO4 の繰り返し O3/UV–vis/sample 処理前
後の XRD パターン.
101
第5章
5.3.3
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
各種金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の比較
本章で検討した金属酸化物半導体の光触媒-オゾン法による TOC 除去特
性について比較してまとめる.金属酸化物半導体を用いた際の O3/dark/sample,
O3/vis/sample および O3/UV–vis/sample 処理の反応時間別の TOC 除去率を図
5.15 と表 5.4 にそれぞれ示す.O3/UV–vis/sample 処理による反応時間 90 min
における TOC 除去率は,個々の金属酸化物半導体でそれぞれ TiO2 : 100%,
WO3: 99%,In2O3: 70%,BiVO4: 63%,Nb2 O5: 31%,SnO2: 31%,Fe2O3: 19%で
あった.O3/UV–vis および O3/dark/sample 処理の反応時間 90 min における TOC
除去率がそれぞれ 13%および 10%であり,本章で用いた金属酸化物半導体は,
紫外光照射下の光触媒-オゾン法において,いずれの金属酸化物半導体試料
も O3/UV–vis および O3/dark/sample 処理よりも高い TOC 除去特性を示した.
また,可視光照射下の光触媒-オゾン法による処理では,WO3 ,Fe2O3,In2 O3,
BiVO4 が可視光下で光触媒作用を示した.反応時間 90 min の TOC 除去率は
それぞれ WO3: 92%,Fe2O3: 16%,In2O3: 45%,BiVO4: 48%であり,最も高い
TOC 除去率を示したのは WO3 であった.WO3 は可視光に応答性を有する金
属酸化物半導体の中で,O3/UV–vis/sample 処理においても最も高い TOC 除去
率を示すことがわかった.
一般的に,光触媒反応は以下の過程で進行する[4,44]:(1)バンドギャップ
以上の光エネルギーの吸収により伝導帯と価電子に励起電子と正孔がそれ
ぞれ生成する;(2)生成した励起電子と正孔が光触媒表面に移動する;(3)
(2)
の過程で再結合しなかった励起電子と正孔が光触媒外部の分子またはイオ
ンとそれぞれ還元反応および酸化反応する.これらの過程の効率には光触媒
のバンド構造,結晶性,比表面積,粒子径などが主に影響を及ぼす[4].本検
討に用いた WO3,In2O3,BiVO4 については,それらのバンドギャップおよび
比表面積は互いに比較可能な範囲であると判断し,上述した反応過程(1),
(2)は同程度であると考えた.つまり,WO3,In2O3 ,BiVO4 について,反
102
5.3 結果と考察
応過程(3)に寄与する因子が,光触媒-オゾン法における TOC 除去特性に
影響すると考えられた.そのような因子としては,価電子帯電位に起因する
正孔の酸化力,オゾンへの吸着性能や酸化還元反応に寄与する表面状態など
が挙げられる.
一方で,Fe2O3 の TOC 除去特性が他の金属酸化物半導体と比較して低かっ
たのは,Fe2O3 では正孔の拡散距離が短いことや価電子帯電位に生成する正
孔の酸化力が弱いことが要因と考えられた[45,46].そのため,前者に関して
は,Fe2O3 のナノ粒子化[19],薄膜化[47]によって Fe2O3 の光触媒活性を向上
させることで,光触媒-オゾン法においても優れた有機物分解特性を示す可
能性が期待される.また,薄膜状にして光電極として用いることで,In2O3
と BiVO4 の様に高活性であるが安定性に課題のある金属酸化物半導体を環境
浄化用光触媒として利用できる可能性がある.例えば,荒井らが提案してい
る二槽タイプの光電気化学的水処理装置[48]では,2 種の異なる廃水を同時に
処理できるので,光電極を安定的に使用できる比較的穏やかな条件で使用で
きると考えられる.このシステムに光触媒-オゾン法を適用することで,
In2O3 や BiVO4 などの安定性に課題のある光触媒を,光触媒-オゾン法にお
ける光電極として比較的穏やかな条件で使用することができると考えられ
る(図 5.16).
103
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
図 5.15
シュウ酸廃水に対する各種金属酸化物半導体を用いた O3/dark/sample,
O3/vis/sample および O3/UV–vis/sample 処理における反応時間 90 min の TOC 除去
率.
表 5.4
シュウ酸廃水に対する各種金属酸化物半導体を用いた O3/UV–vis/sample
および O3/vis/sample 処理における反応時間別の TOC 除去率
O3/UV-vis/sample 処理による TOC 除去率
O3/vis/sample 処理による TOC 除去率
試料
60 min(%) 120 min(%) 240 min(%) 60 min(%) 120 min(%) 240 min(%)
TiO2
100
100
—
8
22
45
Nb2O5
20
43
91
9
19
37
SnO2
17
46
95
17
46
95
WO3
72
100
—
62
99
—
Fe2O3
12
24
45
11
20
42
In2O3
47
84
95
28
60
82
BiVO4
43
81
95
31
62
94
104
5.3 結果と考察
補助電源 対極(Pt など)
光電極
e−
太陽光
h+
有機物
e−
CO2
H2O
e−
オゾン供給
CO2
H2O 有機物
O3
e−
OH•
O3•−
処理廃水 (A)
H+
H+
処理廃水 (B)
イオン交換膜
図 5.16
光電極を用いた二槽式廃水処理システム[48]に光触媒-オゾン法を
応用したイメージ図.
105
第5章
5.4
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
結論
金属酸化物半導体である TiO2(P25),Nb2O5 ,SnO2 ,WO3 ,Fe2O3,In2 O3
および BiVO4 を用いて光触媒-オゾン法によるシュウ酸廃水処理における
TOC 除去特性評価を紫外–可視光および可視光照射下で行った.その結果,
全ての金属酸化物半導体は紫外–可視光照射下で光触媒-オゾン法により光
触媒として作用し,TOC 除去特性の序列は,TiO2 > WO3 > In2O3 > BiVO4 >
SnO2 ≥ Nb2O5 > Fe2O3 であった.In2O3,BiVO4 は共に高い TOC 除去特性を示
したが,処理後に不純物の生成が観察され,安定性は不十分であった.しか
し,同じ試料を光触媒-オゾン法において繰り返し使用した結果,TOC 除去
特性は維持されており,不純物の増加はなく結晶構造を維持していた.この
ことから,光触媒-オゾン法において In2O3 と BiVO4 は光触媒として作用す
ると考えられた.さらに,TiO2,WO3 ,Fe2O3 ,In2 O3 および BiVO4 は可視光
照射下で光触媒作用を示し,可視光照射下の光触媒-オゾン法では,WO3 が
最も高い TOC 除去特性を示した.以上,本章では,光触媒-オゾン法に用
いる光触媒の材料選択性を高め,光触媒-オゾン法のさらなる高性能化およ
び省エネルギー化に貢献する有用な知見が得られた.
106
5.5 参考文献
5.5
参考文献
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109
第5章
種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分解特性
2919–2925.
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(2008) 42–47.
111
第6章
総括
本論文では,難分解性有機物の処理効果が高い光触媒-オゾン法の消費エ
ネルギーとコストのさらなる低減と処理性能の高性能化を図るため,太陽光
の有効利用を目指し,可視光利用型の光触媒-オゾン法による水処理法の開
発を目的とした.すなわち,本論文では,金属酸化物半導体のバンド構造と
オゾンの単電子還元反応における酸化還元電位に着目し,可視光利用型の光
触媒-オゾン法について論じた.
第 1 章では,本論文の序論として,研究の背景および目的と意義,論文の
概要と構成について述べた.
第 2 章では,フェノールをモデル汚染有機物として WO3 光触媒を用いた可
視光利用型の光触媒-オゾン法について論じた.オゾンによる処理では,フ
ェノールの分解過程でオゾン耐性のある中間生成物が蓄積したことにより
反応途中から TOC 除去速度が低下し,TOC の完全除去が困難であったのに
対し,WO3 光触媒を用いた可視光利用型の光触媒-オゾン法による処理では,
TOC 除去速度が低下せず,TOC を完全に除去した.また,WO3 は繰り返し
使用による 5 回のフェノール廃水処理においても WO3 光触媒-オゾン法に
よる TOC 除去特性は低下せず,5 回の繰り返し使用後でもその結晶構造およ
び光吸収特性は維持されており,本検討条件で安定であった.以上より,可
視光利用型の光触媒-オゾン法が有機汚染廃水の処理に効果的であること
が判明し,WO3 はオゾン存在下で可視光応答型光触媒として作用することが
明らかとなった.本章の結果は,光触媒-オゾン法において,可視光吸収を
示す多くの金属酸化物半導体を可視光応答型光触媒として利用できる可能
性を示した.
112
第 6 章 総括
第 3 章では,WO3 光触媒-オゾン法の処理条件が有機物分解特性に与える
影響について論じた.すなわち,WO3 光触媒-オゾン法によるフェノール廃
水処理に関して,処理に用いられる光触媒量,処理廃水のフェノール濃度,
フェノール水溶液の初期 pH,処理温度が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分
解特性へ与える影響について調査した結果,特に,処理温度が WO3 光触媒-
オゾン法の有機物分解特性に大きく影響することが判明した.光触媒-オゾ
ン法への太陽光の利用を考える場合,光触媒反応への紫外–可視光の利用だ
けでなく,熱源として赤外光が利用可能であると考えられ,光触媒-オゾン
法への太陽光の利用は有効であることが示唆された.したがって,本章で得
られた結果から,可視光利用型の光触媒-オゾン法の有効性が示され,今後
のさらなる開発と発展が期待された.
第 4 章では,WO3 光触媒の調製条件が WO3 光触媒-オゾン法の有機物分
解特性に与える影響について論じた.WO3 の調製条件が WO3 光触媒-オゾ
ン法の有機物分解特性に与える影響について新たな知見を得るため,WO3 試
薬へのボールミルおよび熱処理,ならびに均一沈殿法による合成により WO3
光触媒を調製し,それらの WO3 光触媒-オゾン法による有機物分解特性を検
討した.その結果,WO3 光触媒-オゾン法では WO3 の結晶相がその有機物
分解特性に大きく影響することが判明した.さらに,均一沈殿法によって合
成された WO3 は,市販試薬の約 1.6 倍の有機物分解特性を示し,WO3 光触媒
-オゾン法の性能向上に成功した.以上,本章では,光触媒-オゾン法を用
いる光触媒の設計指針になる有用な知見が得られた.
第 5 章では,種々の金属酸化物半導体による光触媒-オゾン法の有機物分
解特性について論じた.光触媒-オゾン法へ利用できる新規光触媒材料を見
出すために,金属酸化物半導体である TiO2 ,Nb2O5,SnO2,WO3,Fe2O3,In2O3
および BiVO4 を用いて光触媒-オゾン法によるシュウ酸をモデル汚染有機物
113
第6章
総括
として,有機物分解特性評価を紫外–可視光および可視光照射下で調査した.
その結果,全ての金属酸化物半導体は紫外–可視光照射下で光触媒-オゾン
法により光触媒として作用し,TOC 除去特性の序列は,TiO2 > WO3 > In2O3 >
BiVO4 > SnO2 ≥ Nb2O5 > Fe2O3 であった.In2O3,BiVO4 は共に高い TOC 除去
特性を示したが,処理後に不純物の生成が観察され,安定性は不十分であっ
た.しかし,同じ試料を繰り返し使用した結果,TOC 除去特性は維持されて
おり,不純物の増加はなく結晶構造を維持していた.このことから,光触媒
-オゾン法において In2O3 と BiVO4 は光触媒として作用すると考えられた.
さらに,TiO2 ,WO3,Fe2O3 ,In2O3 および BiVO4 は可視光照射下で光触媒作
用を示し,可視光照射下の光触媒-オゾン法では,WO3 が最も高い TOC 除
去特性を示した.以上,本章では,光触媒-オゾン法に用いる光触媒の材料
選択性を高め,光触媒-オゾン法のさらなる高性能化および省エネルギー化
に貢献する有用な知見が得られた.
以上のように,金属酸化物半導体のバンド構造とオゾンの単電子還元反応
における酸化還元電位に着目し,可視光吸収を示す金属酸化物半導体を新た
に光触媒-オゾン法に適用して可視光利用型の光触媒-オゾン法の処理条
件および光触媒調製条件について検討した.その結果,光触媒-オゾン法の
消費エネルギーおよびコストの低減,ならびに処理性能の高性能化に貢献す
る有用な知見が得られた.
本研究の成果は,光触媒を用いた可視光ならびに太陽光を活用する水処理
法を開発するための指針となり,水処理技術のさらなる発展とその実用化に
大きな可能性を与えると考えられる.
114
謝辞
1.
学術雑誌への掲載論文
1) Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Water treatment efficacy of various metal oxide semiconductors for
photocatalytic ozonation under UV and visible light irradiation”
Chemical Engineering Journal 264 (2015) 221–229.
2) Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Investigation of photocatalytic ozonation treatment of water over WO 3 under
visible light irradiation”
Journal of the Ceramics Society of Japan, 119 (2011) 822–827.
3) Shunsuke Nishimoto, Takayuki Mano, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Photocatalytic water treatment over WO3 under visible light irradiation
combined with ozonation”
Chemical Physics Letters, 500 (2010) 86–89.
2. 国際会議における発表
(口頭発表)
1) ○Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Wastewater Treatment by Electrochemically Assisted Photocatalytic Ozonation
using TiO2 Nanotube Photoelectrode”
Materials Science & Technology 2014 (MS&T14), Pittsburgh, USA, October
2014.
2) ○Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Water Treatment Effect of Various Metal Oxide Semiconductors with Ozone
and Light Irradiation”
International Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2013
(ISIEM 2013), Rennes, France, October 2013.
3) ○Yoshikazu Kameshima, Jinnan Hsing, Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto,
115
発表論文リスト
Michihiro Miyake
“Preparation and Photocatalytic Property of the Visible Light Type TiO 2
Sol/Clay Composite”
International Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2013
(ISIEM 2013), Rennes, France, October 2013.
4) ○Shunsuke Nishimoto, Takayuki Mano, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Water purification over visible-light-responsive photocatalyst combined with
ozonation”
The 7th International Conference on Science and Technology of Advanced
Ceramics (STAC-7), Yokohama, Japan, June 2013.
5) ○Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Investigation of Water Treatment by Photocatalytic Ozonation over WO 3 under
Visible Light Irradiation”
The 10th Pacific Rim Conference on Ceramic and Glass Technology (PACRIM
10), San Diego, USA, June 2013.
6) ○Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Investigation of Water Purification by Photocatalytic Ozonation over WO 3
under Visible Light Irradiation”
2012 Japan-Taiwan Symposium on Polyscale Technologies for Biomedical
Engineering and Environmental Sciences (PT-BMES 2012), Hsinchu, Taiwan,
September 2012.
7) ○Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Photocatalytic ozonation water treatment over WO3 visible-light-responsive
photocatalyst under visible light irradiation”
The 28th Japan-Korea International Seminar on Ceramics (J-K Ceramics 28),
Okayama, Japan, November 2011.
8) ○Shunsuke Nishimoto, Takayuki Mano, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
116
発表論文リスト
Miyake
“Wastewater treatment over WO3 photocatalyst combined with ozonation under
visible light irradiation”
The 2010 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies
(PACIFICHEM 2010), Honolulu, USA, December 2010.
9) ○Shunsuke Nishimoto, Takayuki Mano, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Ozonation of wastewater with WO3 photocatalyst under visible light
irradiation”
The 17th China-Japan Bilateral Symposium on Intelligent Electrophotonic
Materials & Molecular Electronics (SIEMME 12), Beijing, China, September
2010.
(ポスター発表)
1) ○Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Water Treatment by Electrochemically Assisted Photocatalytic Ozonation
Using TiO2 Photoelectrode”
65th Annual Meeting of the International Society of Electrochemistry (ISE
2014), Lausanne, Switzerland, August 2014.
2) ○Takayuki Mano, Shunsuke Nishimoto, Yoshikazu Kameshima, Michihiro
Miyake
“Water Purification by WO3 Photocatalysis and Ozonation under Visible Light
Irradiation”
3rd International Congress on Ceramics (ICC3), Osaka, Japan, November 2010.
3. 国内学会・シンポジウム等における発表
(口頭発表)
1) ○真野峻行,西本俊介,亀島欣一,三宅通博
「 Water Treatment Effect of Various Metal Oxide Semiconductors in
Photocatalytic Ozonation」
第 52 回セラミックス基礎科学討論会,愛知,2014 年 1 月.(※英語にて
発表)
117
発表論文リスト
2) ○真野峻行,西本俊介,亀島欣一,三宅通博
「光照射下においてオゾンと併用した各種金属酸化物半導体の水処理効
果」
日本化学会第 93 春季年会,滋賀,2013 年 3 月.
3) ○真野峻行,西本俊介,亀島欣一,三宅通博
「可視光照射下における酸化タングステン光触媒とオゾンによる水処理」
セラミックス基礎科学討論会第 50 回記念大会,東京,2012 年 1 月.
4.
受賞歴
1) 真野峻行,岡山大学大学院環境学研究科博士前期課程「日本化学会中国
四国支部支部長賞」,2012 年 3 月.
118
謝辞
本研究を遂行するに当たり終始御懇切なご指導,ご教示を賜りました岡山
大学大学院環境生命科学研究科の三宅通博教授に深く感謝の意を表します.
三宅先生には,国内外を問わず学会発表の機会を頂き,研究者として成長で
きる場を数多く賜りました.同研究科の亀島欣一准教授には,本研究に対し
て的確なご助言を頂くと共に,日々の議論を通して研究者としての考え方を
ご教示していただきました.また,同研究科の西本俊介助教には,本研究に
対して様々な面に渡り終始ご指導とご助言を頂き,研究者としての基礎をご
教示していただきました.先生方には公私に渡り多くの叱咤激励を頂いたこ
とも併せて,心より御礼申し上げます.
本論文をまとめるにあたり大変貴重なご助言,ご指導を頂きました岡山大
学大学院環境生命科学研究科の難波徳郎教授,紅野安彦准教授に心より感謝
の意を表します.
岡山大学環境理工学部三宅研究室の在校生,および修了・卒業した皆様方
には様々な面で支えていただき,楽しい研究生活を送れたことに対して心よ
り感謝の意を表します.
最後に,長い間学生生活を温かく見守り,精神的,経済的に支えてくれた
両親,家族に深く感謝します.
平成 27 年 3 月
真野 峻行
119
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