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住宅性能表示制度が分譲マンション価格に与える影響 と役割
住 宅性能表示 制度 が分譲マ ンシ ョン価格 に与 える影響 と役割 The Housing Performance Indication System Has Influence on Condominium Price and Make a Contribution ○ 藤 澤 美 恵 子*、 ○ Mieko FUJISAWA, Masahiko to Evaluation 中 西 正 彦**、 NAKANISHI, 中 井 検 裕** Norihiro NAKAI The purpose of this paper is to make clear the effect about Housing Performance Indication System. The hedonic price analysis aims to measure how influence on newly built condominium price. The interview research of real-estate agents aim to make clear about the effect that Housing Performance Indication System in the used housing market. It was confirmed incomplete system about evaluation. There needs to complete and to estimate for Housing Performance Indication System in the used housing market and reconstruct simplify system. Key Word: Housing Performance Indication System, Housing Quality Assurance Act, Condominium, Signal, Release of Housing Information 住 宅 性能 表 示 制 度 、 品確 法 、 分 譲 マ ンシ ョ ン、 シグ ナル 、 住 宅情 報 開 示 1.は じめ に この 制 度 の 魅 力 は 「 比 較 で き る こ と」 と回 答 した 消 「 住 宅性 能 表 示 制 度 」は、2000年 に施 行 さ れ た 「 住 費 者 は 、 図1の よ うに平 成13年 度 の42.4%か ら平 宅 品 質 確 保 の促 進 等 に 関す る法 律 」(以 下 、品 確 法 と 成14年 度 は5.4ポ イ ン ト下落 して い る。一方 で 、 「 資 す る)に よ り定 め られ た 制度 で あ る 。 この 制度 の意 産価 値 」 と して の魅 力度 は、8.4ポ イ ン ト上 昇 して い 義 は、 住 宅 取 得 支援 ツ ー ル と して 「全 国共 通 の も の る 。 ア ンケ ー トの結 果 か らは 、 この 制度 が 目的 の一 さ し」 を定 め た こ とに あ る。 そ れ 故 、 比較 購 買 を可 つ と して掲 げ て い る比 較 購 買 へ の 期待 の大 き さ と実 能 にす る制 度 と して 、 「情報 の非 対 称 」市 場 とい われ 体 の ギ ャ ップ を 反 映 して い る と推 測 で き る。 る住 宅 市場 で の シ グ ナル と して 期 待 され て い る。 本研 究 で は様 々 あ る この 制 度 の 問題 の 中か ら、 実 殊 に分 譲 マ ン シ ョ ン(以 下 、 マ ン シ ョ ン とす る) 施5年 目を迎 え る 「 住 宅 性 能 表 示制 度 」 の 趣 旨が 現 の 場 合 、 木 造戸 建 住 宅 と比 較 して 、 建 設 材 料 の耐 久 実 に反 映 され て い るか を検 証 す る。 ま た、 消 費 者 が 性 は 長 く、新 築時 に お け る 良質 な ス トッ ク形 成 誘 導 この 制度 の魅 力 と評 価 す る 「 資 産 価 値」が 形 成 され て は 、 マ ンシ ョン ス トック全 体 の一 部 に しか 効 果 を及 ぼ さ な い状 況 に あ る。 新 築 ばか りで な く既 存 マ ン シ 住宅 の性 能が、住宅性 能評価書 によ り 明確 に示され、相互 に比較でき ること ョ ン杏 も対 象 にす る 「 住宅性能表示制度」への期待 は大 き い。 資産価 値の反映が期 待でき ること しか し、 「 住 宅 性 能 表 示 制度 」 は任 意 制度 で あ り、 一 棟(2004)が 指 摘 す る よ う に 「「全 国 共 通 の も の さ し」 と い って も、 具 体 的 に評価 され た 住 宅 を 見 比 べ □H14年 度 調 査 ■ H13年 度 調 査 て 検 討 す る物 件 が 身 近 にな い 限 り、抽 象 的 な 判 断 に 出 典:「平 成14年 な らざる を得 な い」円 状 態 で あ る こ と も真 実 で あ る。 この こ とは、国 土 交 通 省 が平 成13・14年 度住 宅 市 場動 向 調 査(住宅 性能 表 示 制度 ア ンケー ト)報告 書 」国 交 省住 宅 局 住宅 生 産 課 度 に行 っ た 図1: 「住 宅性 能 表 示 制 度 ア ン ケー ト」注1で も確 認 で き る。 * 東 京 工 業 大 学 大 学 院 社 会 理 工 学 研 究 科 博 士 課 程(Tokyo ** 東 京 工 業 大 学 大 学 院 社 会 理 工 学 研 究 科(Tokyo URBAN HOUSING SCIENCES Institute Institute 83 Technology Technology Ph 制度 の魅 力 .D Student.) .) 都 市 住 宅 学47号 2004 AUTUMN い る か を 仲 介 業者 が行 う査 定 価 格 に注 目 して 確 認 す 在 す る。(1)設計 住 宅 性能 評 価 書(以 下 、設 計 評価 書 と る 。 そ の 結 果 か ら、 この制 度 の シ グナ ル と して の 役 す る)、(2)建設住 宅 性 能 評価 書(以 下 、建 設 評価 書 とす 割 を 果 す た め の 制度 の あ り方 、住 宅 情 報 開 示 の あ り る)であ る 。評 価 の検 査 項 目 につ いて は、表1の 方 につ い て 考察 す る こ とを本 研 究 の 目的 と して いる 。 りで ある 。取 得 単 位 は 、マ ン シ ョ ン住 棟 単 位 で あ る。 とお よ って 新 築 マ ン シ ョンで は 、 消 費 者 は 、 この 制度 2.住 宅性 能 表 示制 度 の 内容 と問題 点 を利 用 す るか 否 か の選 択 肢 は な く、住 宅 性 能 評 価 書 「 住 宅 性 能表 示 制 度 」 には二 制 度 、(1)新 築住 宅 性 を取 得 した マ ン シ ョン の一 住 戸 を購 入 す る か 否 か の 能 表 示 制 度 、(2)既存 住 宅性 能 表 示 制 度 、 が あ る。 こ 選 択 肢 を持 つ こと に な る。 一 方 、 新 築 マ ンシ ョ ンの こで はマ ン シ ョ ン に着 目 して 制 度 の 詳細 を概 観 す る。 売 主(デ ィベ ロ ッパ ー)は 、 以 下 の 三 種 類 の 選択 肢 2菌1.新 が あ る。 築住 宅 性 能 表 示制 度 新 築 住 宅 性 能 表 示 制 度 には 、 二 種 類 の評 価 書 が存 (1)設 計評 価 書 と建 設 評価 書 を取 得す る (2)設 計評 価 書 の み を 取得 す る 表1: 既存往宅牲能評価制度の検査項目 (3)全 く取 得 しな い (1)と(2)が、新 築住 宅 性 能 評 価 書 を取 得 した マ ン シ ョ ン とな る 。 しか し、 消 費者 に と って 住 宅 性 能 表 示 制 度 の メ リ ッ トで あ る 、安 価 で 迅 速 な 紛 争 処 理 機 関 の 利 用 が で き る の は 、(1)の両 方 取 得 した マ ン シ ョ ン の 一住 戸 を購 入 した 場 合 のみ で あ る。 新 築 住 宅 性 能 評価 書 は 、認 定 のた め の手 数 料(総 戸 数50戸 で 約2万 前 後 の マ ン シ ョ ンで 、一 戸 当 り設 計評 価 書 円、 建 設評 価 書 で 約2.5万 円注2)と 建 築費 (性能 に 応 じて増 分)・ 検 査 費 の 費 用(V)を 要す る と い う点 にお いて シ グナ ル と して の要 件 を備 えて い る。 費 用 の面 にお いて 、 上 記 の(1)∼(3)の関係 を見 る と、 以 下 の よ うにな る。 V (1)> (2-1) V (2)> V (3)= 0 東京都では、 「 優 良マ ン シ ョ ン登 録 制 度 」 注3を 計 画 し実 行 して い るが 、そ の対 象 と して 、 以 上 の よ う な新 築住 宅 性 能 表 示 制度 の事 情 も鑑 み 、(1)のマ ンシ ョン の み を新 築優 良 マ ン シ ョ ン と して 登 録 して い る 。 2-2.既 存 住 宅性 能 表 示 制 度 既 存 住 宅 性 能 表 示 制度 は、 中古 住 宅 を対 象 に評価 書 を 取 得す る 制度 で あ る。 こ の制 度 は 、 新 築 時 の 住 宅 性 能 評価 書 の取 得状 況 は考 慮 しな い。 よ って 新 築 住 宅 性 能 評価 書 の 取 得済 みマ ン シ ョ ンで あ って も、 中 古 マ ンシ ョ ン と して 、住 棟 単 位 で 再 度 費 用 を掛 け 取 得 す る必 要 が あ る 。 ま た 取 得 に 関 して は住 戸 所 有 者 単 独 で は取 得 で き ず 、 管 理 組 合 で の 合 意 が必 要 と な る。 有 効 期 限 は、 ○: 必修検査項目 ●: オプション選択による検査I URBAN HOUSING △: オプション選択による部分検査が可能な項目 -: 検査不可能なもの SCIENCES 84 既 存 住 宅 性 能 評価 書 が 発行 され て5年 間で あ り、 そ 都 市 住 宅 学47号 2004 AUTUMN の後 再 度 取 得 を繰 り返 さな い と無 効 とな る 。 表1の さ ら に、 この価 格 が 費 用 に対 して 妥 当な もの で あ る 検 査 項 目 につ いて は 、 中古 の場 合 目視 が 中 か も検 証 す る 。 ま た 、資 産 価 値 を住 宅 売 却 す る 際 の 心 で 、検 査 の必 修 項 目は 新 築 の 項 目(個 別 性 に 関す 価 格 と仮 定 し、新 築住 宅 性 能 評価 付 きマ ン シ ョンが 、 る こと)と は全 く異 な る 。 さ らに 、個 別性 に 関す る 中 古 住 宅 市 場 に お い て相 応 の 評 価 を得 て い る の か を 項 目 は、 オ プ シ ョ ンで 取 得 で き る が 、 全 て の 項 目を 検 証 す る 。 具体 的 に は 、 中古 住 宅 の 仲 介 業 者 が行 う 網 羅 す る こと はで きな い。 査 定 業 務 に 注 目 し、 イ ン タ ビ ュー 調 査 で 明 らか にす す な わ ち、 新 築 時 の 性 能 評価 は 中 古 で は 取 得 で き る 。 これ らの 調査 分 析 か ら、 この 制 度 の 改 善 の方 向 な い項 目 を多 く含 ん で い る こ とが分 か る 。 この点 に 性 を探 る。 お いて 、 新 築 住 宅 性 能 評価 書 は 、擬 似 で き な い シ グ ナ ル と して の性 質 を持 って い る とい え る。 3.分 2-3.住 宅性 能 表 示 制度 の 問 題 点 一 棟(2004)が 指 摘 す る よ う に任 意 制 度 で あ る こ と ョン にお いて 年 々増 加 傾 向 に あ る。2003年 度 にお い は 最 大 の 問題 点[1]である 。一 方 、高井(2002)は 、任 意 て は表2の 制 度 で あ る が 故 に 住 宅性 能 表 示 制度 が 民 間デ ィベ ロ 割 合 で分 か る よ う に、 新 築 マ ン シ ョ ンの 半数 近 くが ッパ ー に とっ て 、 販 売促 進 策 と して 利 用 され て い る 設 計評 価 書 を取 得 して い る ことが 分 か る。 [2]と指 摘 す る。 3。1.デ ー タの 収 集 方法 任 意 制度 で は あ るが 、 評価 書 の 交 付 は 新 築 マ ン シ な によ り も比 較 購 買 を可 能 にす る はず の制 度 が 、 図2の よ うに5通 譲 マ ンシ ョンの 価 格分 析 住 宅 評価 協会 が 発 表 して い る交 付 件数 の 2003年1月 りもの ス ケー ル を市 場 に提 供 す る か ら6月 の半 年 間 に 販売 され た 首都 圏 新 築 マ ン シ ョン を分 析 の 対 象 に した 。 デー タ の収 集 こ と とな った のは 皮 肉 で あ る。 また 、 井 出(2004) 方 法 は、MRC社 が 指 摘 す る よ うに 「中古 の品 質 確 保 は、 新 築 以 来 の 版 」 注4を 参 考 に 、 週 刊 誌 「 住 宅 情 報STYLE」 履 歴 と切 り離 せ な い」[3]はず で あ る が 、 実 際 は この 2003.1.1号 よ り隔 週2003.6.25号 制 度 の 連 動性 は な い。 同様 に 「新 築 時 点 で 高 品 質 で マ ン シ ョ ン381棟 あ れ ば 、 一定 期 間 が経 過 した の ち 、 低 品 質 の 住 宅 よ 381棟 の123棟 の 「マ ンシ ョンDATAMAP首 都圏 の まで に掲 載 され た をサ ンプル と して 収 集 した。 が設 計 評価 書 を取 得 、123棟 の84 りも 一般 に よ りよ い質 を保 って いる と考 え られ る」 棟 が 建 設 評 価 書 も取 得 して い る。 設 計 評 価 書 取 得 の [3]はず で あ るが 、 新 築住 宅 性 能 評 価 書 を シ グ ナ ル と 44%が して 中古 市 場 に お いて 継 承す る規 定 は な い 。 イ プ と フ ァ ミ リー タ イ プ のマ ン シ ョ ンで 、 平 均価 格 以 上 の 問題 点 の指 摘 を踏 ま え て 、 本 研 究 で は 、新 東京23区 は4519.4万 築時 に お け る こ の制 度 の位 置 付 け を 明 らか に す る た 3-2.ヘ め に 、 デ ィベ ロ ッパ ー が住 宅性 能 評価 書 取 得 済 み マ のマ ンシ ョンで あ る。ワンル ー ム タ 円、 平 均専 有 面 積 は78.96m2で あ る。 ドニ ック分 析 本 研 究 で は 、ヘ ドニ ック モデ ル を用 いて 新 築 マ ン ン シ ョン に どの 程 度 価 格 転嫁 して い る か を 分析 す る。 シ ョ ンの 性 能 評価 書 の価 格 寄 与 度 を明 らか に す る 。 マ ン シ ョ ンの よ うな複 合 財 は、 ヘ ドニ ック 分 析 に適 表2: 図2: UIRBAN 住 宅 の5通 りの も の さ し HOUSING SCIENCES 85 評価 書 の交付件 数 注1: 国 土交 通 省集 計 の 全国 分譲 マ ン シ ョン着 工 戸数 注2: 注3: 注4: 評価 協が 発 表 して いる 設計 住 宅評 価 書 の交 付戸 数 設 計住 宅 評価 書 の交 付 戸数/全 国 分譲 マ ンシ ョン着 工 戸数 評価 協 が 発表 して いる 建設 住宅 評 価 書 の交 付戸 数 注5: 建 設住 宅 評価 書 の交 付 戸数/前 年 度全 国 分 譲マ ン シ ョン着 工戸 数 都 市 住 宅 学47号 2004 AUTUMN して お り中古 マ ンシ ョンで は、 「 住 宅 情 報STYLE」 市 以 外 」、埼 玉 県 を 「さ い た ま 市 」 「さ い た ま 市 以 外 」 の デ ー タ を 利 用 し た 小 野 ら(2003)[4]や 実 取 引デ ー 神 奈 川 県 を 「横 浜 市 」 「 横 浜 市 以 外」 の ダ ミー 変 数 を 研 究 等 が あ る。新 築 使 用 した 。距 離 要 因 は、 「 新 宿 か ら の 距 離 」と し て 新 タ を 利 用 し た 大 守(2002)[5]の マ ン シ ョ ン に 関 して は 、 藤 澤 ら(2001)[6]の 宿 か ら最 寄 駅 ま で に 要す る所 要 時 間 を使 用 した 。 ま 研究等 た 最 寄 駅 か ら の 「バ ス 分 数 」 「 徒 歩 分 数 」を 使 用 し た 。 が あ る。 住 棟 属 性 要 因 と して 、竣 工後 か否 か の ヘ ドニ ッ ク 分 析 の 利 点 は 、 単 に 品 質 調 整 済 み 価 格 「 竣 工 」、 間 取 を入 手 で き るば か りで な く、特 定 化 され た 変 数 の 変 りの タ イ プ を ワ ンル ー ム マ ンシ ョ ン と区別 す る た め 化 に 応 じ て 変 化 す る 価 格 を 把 握 す る こ とが で き る 点 「フ ァ ミ リー タ イ プ 」、 高 層 マ ン シ ョ ン か 否 か の 「 タ で あ る 。性 能 評 価 書 の 価 格 へ の 影 響 分 析 の モ デ ル は 、 ワ ー 」、 用 途 地 域 住 居 系 を 基 準 と し て 以 下 の とお り半対 数 線 形 で あ る。 業 系 」 ダ ミ ー 変 数 を 使 用 し た 。 ま た 、 「空 地 率 」 「 総 logPi= α+ βDi+ Σ γmXmi+ εi 「工 業 系 」 「商 戸数」「 戸 当 り敷地 面積 」 「 構 造 」 「EV(エ (3-1) レ ベ ー タ) 台数」 「 駐 車 場 台数 」 「 管 理 費m2単 価 」 を 使 用 し た 。 被 説 明 変 数Piは 、 マ ン シ ョ ン 棟 のm2単 位 価 格 で あ さ らに、 性 能 評価 書 を る 。 α、β 、γmは パ ラ メ ー タ ー 、 εは 誤 差 項 で あ る 。 た モ デ ル が 、3-2式 Diは 、 性 能 評 価 書 取 得 の 有 無 の ダ ミ ー 変 数 で あ る 。 そ の 他 の 説 明 変 数Xmiに 関 し て は 、表3と る 。 地 域 要 因 と して 、都 心3区 準 とし 「 都 心3区 logPi= 「設 計 」 と 「 建 設 」 に分 け で あ る。 α+ βsDsi+ βKDKi+ Σ γmXmi+ εi (3-2) お りで あ を 除 く 東 京23区 Ds、は設 計 評価 書 取 得 の 有 無 の ダ ミー 変 数 、DKiは 、 を基 建 設 評価 書取 得 の 有 無 の ダ ミー 変 数 で あ る。 」 「都 下 」、 千 葉 県 を 「 千 葉 市 」「 千葉 3-3.分 析 結 果 分 析 の結 果 、 性 能 評価 書 を 取 得 した マ ンシ ョ ンは 表3:分 析 結 果 そ う でな いマ ンシ ョンよ り11,019円1m2高 い こ とが 統 計 的 に 有 意 に採 択 され た 。 問 題 は 、 この 性 能 評価 書 取 得 「表 示」 変 数 を 「 設 計 」 と 「建 設 」 に分 け た 3-2式 の ケ ー スで あ る 。予 想 で は 、2・1式の 費用 に比 例 して0<βs<βKと な り両 方 とも取 得 が 望 ま し い と考 えた が 、 「設 計」評 価 書 取 得 マ ン シ ョ ンが 統 計 上 有 意 に10,095円/m2高 い結 果 とな って い る。 これ らの結 果 か ら、 デ ィベ ロ ッパ ー が 、 販 売 促 進 の た め に安 価 な設 計 評 価 書 を取 得 し、 価 格 に 評価 書 取 得 費 用 を転 嫁 し販 売 して い る ことが 推 測 され る。 これ は いわ ゆ る 「情報 の非 対 称 性 」 が あ るた め で 、 こ の状 態 が 継 続 され れ ば 、 建設 評 価 書 の取 得 イ ンセ ンテ ィ ブは低 下 し、制 度 の 健全 な存 続 が 危惧 され る。 4.中 古 市 場 での 評 価 植 付 き マ ン シ ョンの扱 い 中 古 に関 して は 、 制度 の歴 史 の浅 さか らヘ ドニ ッ クモ デ ル によ る 分析 を行 う に は,サ ン プル 数 が 足 り な い。 そ こで 、 新 築 住 宅性 能 評 価 書 付 きマ ン シ ョン に対 す る 中古 市 場 で の 査 定評 価 と既 存 住 宅 性 能 表 示 制度 に関 して 、仲 介 業 者 にイ ン タ ビュ ー調 査 した 。 t値 の**は 、1%有 UIRIBAN 意 を 表 す 。*は HOUSING SCIENCES 、5%有 意を表す。 86 都 市 住 宅 学47号 2004 AUTUMN イ ン タ ビュ ー調 査 対 象 は 、清水 ら(2004)[7]が 紹介 して い る仲 介業 者 大 手14社 等 の 回 答 を 得 た 。広 告 す る に は、 制 約 が あ る と感 じ 注5、 並 び に(林)不 動産 経済 て い る 仲 介 業 者 は多 く、 具体 的 な方 法 論 に つ い て戸 研 究 所 が 発 表[8]す る 売 上高 順 位 注6を 参 考 に 決定 し た。 売 上 高 上位3社(三 惑 っ て い る様 子 も見 う け られ た 。 井 不 動 産 販売(株)・ 東急 リバ ブル(株)・ 住友 不動 産 販 売(株))と売 上 高4∼15位 新 築住 宅性 能 評価 書 付 の マ ン シ ョ ンの 取 り扱 い に 社の 関 して指 摘 され た 内容 は、以 下 の3点 に要 約 で き る。 (1)新 中 よ り、 一 般 消費 者 向 け の住 宅 の仲 介 業 を営 む3社 ((株)大 京 住 宅 流 通 ・藤 和 不 動産 流 通 サ ー ビス(株)・(株)長 谷 工 アー ベ ス ト)を対 象 に行 っ た。 築 の住 宅 性 能 評 価 書 付 で あ る情 報 を 中 古 市 場 の広 告 等 で掲 示 して い いか 分 か らな い (2)住 宅 性 能 評 価 書 付 で な いマ ン シ ョ ンを 持 っ て い るお 客 様 に対 す る対 応 の心 配 イ ン タ ビュー 回 答 者 は 、 査 定 業 務 に精 通 しかつ 鳥 鰍 的 に査 定 業 務 を見 る こ とが で き る 、査 定 業 務 の責 (3)価 格 面 で 差別 す るた め の客 観 的 指 標 が な い 任 者 も しく は管 理 職 と指 定 し、希 望 に沿 った 部 長 ・ す べ て の 点 で仲 介 業 者 が 単 独 で 対 応 で き る 範 囲 を セ ン ター 長 な どの役 職 に あ る6社7名 の 方 に 、 回答 超 え て お り、 良 質 な ス トッ ク を生 み 出 して も継続 す 者 と して 回答 を得 た 。 る 術 が 無 い状 態 と い え る。 比 較 購 買 を可能 にす るた 具 体 的 な 質 問 項 目は 、 新 築 時住 宅 性 能 評 価 書 につ め の 性 能評 価 書 で あれ ば、 性 能 評 価 書 の 普及 の た め いて の 取 り扱 い と して 、 「査 定価 格 に転 嫁す るか 」も に も現 場 サ イ ドの視 点 を持 った 詳 細 な ル ール 作 りが しく は 「中 古市 場 で ど う広告 す るか」、既 存住 宅 性 能 必 要 不可 欠 と思わ れ る。 評 価 書 に関 して 「 取 得 を勧 め るか 」 「この 制 度が 普 及 4-2.既 存 住 宅 性 能 評価 書 へ の 対応 す るか 」に関 して 質 問 した 。 イ ン タ ビュー の結 果 、 マ ン シ ョ ンを 中古 市 場 に 出 イ ン タ ビ ュー の 場 所 は 、 先方 よ り指 定 され た 会 社 す 際 に 、既 存 住 宅 性 能 評 価 書 の 取 得 を薦 め な い と の の会 議 室 で の対 応 で あ っ た。 期 間 は 、2003年12月 回 答 を 得 た。 戸 建 の場 合 意 義 は あ る が 、 マ ン シ ョン 7日 ∼2004年4月27日 の既 存 住 宅 性 能 評 価 書 につ いて は 、 期待 は低 い こ と の 間 に行 った 。 4-1.新 築 時住 宅性 能 評 価書 の取 り扱 い が分 か った 。そ の理 由 と して 、「 メ リッ トが な い」「コ 新 築 の 住 宅 性 能 評価 書 付 の マ ン シ ョンが 中古 市 場 ス ト負 担 の 問題 」 「築年 の古 い物 件 は取 得 の為 に、ま に売 り出 し され る 場 合 、価 格 面 で差 別 をす るか に対 ず 耐 震 工 事 を行 う必 要 が あ り現 実 に 無 理 」 「組 合 で す る 質 問 に は 、 「評 価 し た い と思 うが や り方 が 分 か の合 意 の 困難 」 等 が 挙 げ られ た。 らな い」 「 買 主側 か らの 指値 に対 して は 、抵 抗 で きる 要 約 す る と、以 下 の2点 要 因 に な る」 等 の 回 答 を得 た 。 (1)コ ス ト負 担 の 問題 に集 約 で きる 。 (2)コ ス トが 発 生す る の に メ リッ トが 不 明 価 格 に転 嫁 す る こ とに 関 して は、 経 験 値 もな く価 格 係 数 を把 握 で き な い とい う戸 惑 い も ある が 、 非 取 す な わ ち新 築 と同 様 に任 意 制 度 の た め比 較 で き る 得 の マ ン シ ョ ン と差 別 化 はで き る と認 識 して い る こ も のが な く、 既 存 住 宅 性 能 評価 書取 得 済 み で あ る こ とは 確 証 が 得 られ た 。 少 な く と も 「 値 引き 交 渉 の 対 とが 中古 住 宅 価 格 を高 くす る わ け で は な いの で あれ 抗 要 件 」 にな る と考 え て い る よ うで あ る。 問 題 は 、 ば、 取 得 して も意 味 が 無 く、 そ の よ う な制 度 を推 薦 非 取 得 の マ ンシ ョン の売 主 も 「 お 客 様 」 で あ り、 こ す る訳 には行 か な い と考 えて い るよ うで あ る。 の 「お 客 様」 の不 動 産 を否 定 す る結 果 にな らな い か 以 上 の よ うな 理 由か ら、 制 度 の普 及 に関 して も、 とい う不 安 を抱 い て い るよ うで あ る。 分 か らな い と 回答 した1社 新 築 時 に お け る住 宅 性 能 評 価 書 取 得 を 中 古 市 場 の を 除 き 、既 存住 宅 性 能 表 示 制 度 の普 及 は 難 しい の で は な いか と の回 答 を得 た 。 広 告 に表 示 す る か と い う質 問 に は 、 「準 備 が で き て 戸 建 と比 較 し寿 命 の長 い 、また 集 合住 宅 と して の 「マ い な い」 「新 築 時 の 性 能 評 価 の マ ー ク を使 え る の ン シ ョ ン既 存 住 宅 性 能 表 示 制度 」 の取 り扱 いが な け か?」 れ ば、 制 度 の メ リ ッ トも薄 く、普 及 も難 しい もの と 「新 築 時 に取 得 し ま した と伝 え る こ と は で き る が 、店 頭 広 告 や 折 込 チ ラ シは 紙 面 の 限 界 が あ る」 URBAN HOUISING SCIENCES 思 わ れ る。 87 都 市 住 宅 学47号2004 AUTUMN 5.制 度 の 発展 と普 及 に向 け ての 提 案 補注 本研 究 で は 、 まず 分 析 の 結 果 、 新 築 時 に は 「情報 注1ア ンケ ー トは 、建 設評 価 書交 付住 宅 に入 居 した 居住 者 、 平 成14年 の非 対 称 性 」 の 問題 が あ る こ と を示 した 。 ま た イ ン 注2手 タ ビュ ー調 査 の結 果 、制 度 の 問 題 点 と して 指 摘 され 度調 査 につ いて は約6000人 を対 象 と して い る。 数 料 は、評 価 会社 毎 に異 なる。本文 の 手数 料の 算 出 に 使 用 したの は 、ハ ウス プ ラス住 宅 保証(株)の 計 算 式 によ る。 て い る 「履歴 情 報 の非 連 続 性 」 お よ び マ ン シ ョ ンの マ ン シ ョンの場 合 、戸 建 よ り割 安 で総 戸 数が 大 き くな る ほ 「既 存住 宅性 能 評 価 書 の取 得 の問 題 点 」 が 実 際 の 流 どス ケー ル メ リ ッ トが働 き安 くな る傾 向 が ある。 通 の場 にお いて も 生 じて い る こ とが 確 認 で き た。 注3新 以 上 の よ うな結 果 を踏 ま え、 今 後 の 制 度 の 改 善 の 要 件 を考 察 す る と、 図2の 築 ・中古マ ンシ ョ ンを対象 に 任意 登録 制度 と し、優 良 と認 定 され たマ ンシ ョン名 を(財)東 よ うな 新 築 時 の複 数 の も ちづ く りセ ン ターHPで の さ しを単 一 化 し 「 比 較 購 買 の促 進 を図 る こ と」と、 注42003年 京 都防 災 ・建 設 ま 公 表す る制 度。 のデ ー タ数 は 、73,346戸 で あ り(株)不 動産 経 済研 究所 が 発 表す る 首都 圏 供給 マ ン シ ョン戸 数88.2%を 現 在 、 販 売 促進 に利 用 され て い る新 築 「 設計評価書 注5大 の再 考」 が 必 要 とな る と思 わ れ る 。 手14社 とは 、注6の*の 登録 。 会 社 と、住 信住 宅販 売 、安 信 住宅 販 売 、東京 建物 不 動産 販売 。 また 、 本研 究 に お い て デー タ収 集 の際 、性 能 評 価 注6手 書 の取 得 の 有 無 に 関 す る情 報 の確 認 に は多 く の時 間 数 料 収入 上位17社 は収入 の 高 い順 に、三 井 リハ ウ ス グル ー プ*、 住 友 不動 産 販売*、 東急 リバ ブ ル*、 野村 不 動 を要 し、 結 局 、住 宅 情 報 誌 の み で確 認 す る こと とな 産 グル ー プ*、 す み しん不 動 産、 みず ほ アセ ッ ト住宅 販 売、 った 。 先 述 の 国 土 交 通 省 ア ンケー トで も消 費 者 の多 くは売 主 か らの 情 報 で 評価 書 取 得 の有 無 情 報 を入 手 三 菱信 不動 産 販売 、有楽 土地 住宅 販売*、三 菱地 所 住宅 販 売 * 、大京 住宅 流 通*、 中央 三井 住宅 販 売、朝 日住宅 、UFJ住 して い る。 物 件 毎 に問 い 合 わせ を しな けれ ば比 較 検 宅 販売 、藤 和不 動産 流 通サ ー ビス*、 小田急 不 動産*、 長 谷 討で きな い現 制 度 ル ー ル で は 、 消 費者 の コ ス トと労 エアー ベ ス ト*、西武 不 動産*。 謝辞:調 査 に対 応 いた だ いた 仲介 業者 の 方 には 、業 務 の貴 重 力 は少 な くな い。 比 較 購 買 を 可能 にす る た め に も、 な時 間 に協 力 して いた だ き ま した。 また 匿名 の 査読 者 か ら有 これ らの 状 況 を改 善 し、 「消 費 者 に 向 け て の 制 度 の 益な 指摘 を いた だ きま した。 ご厚 意 に感 謝 いた し ます。 わ か りや す い説 明 」 や 「住 情 報 開 示 の 工 夫」 が 必 要 参考文献 で あ る と考 え られ る。 [1] 一棟 宏子 (2004)「消 費者 の立 場か ら見 た住 宅 の品 質確 保 促 今 後 の検 討 す べ き 内容 と して 、 中 古 市 場 に お い て 進 法の 現状 と課 題」 『 都 市住 宅学 』No44 pp15-19 消 費者 が履 歴 情 報 を ど のよ う に判 断 す る か 、 そ れが [2] 高 井宏 之 (2002)「住宅 性 能表 示 制度(共 同住 宅)に関す る供 価 格 に寄 与 す るか 、 また 資 産 と して 評価 す る か を 明 給 者の 受容 と評 価 の実 態」 『都市 住宅 学 』No39 pp55-60 らか に した い。 今 回 の知 見 と併 せ て 、 比 較 購 買 を 可 [3] 井 出 多加 子 (2004)「情 報 の非 対称 性 と住宅 市 場 の 活性 化」 『都市 住宅 学 』No44 pp20-24 能 に す る住 宅 情 報 の あ り方 や そ の 効 果 と して の住 宅 [4] 小 野宏 哉 ・高 辻秀 興 ・清水 千弘 (2003)「 構造 変換 を考 慮 探 索 費用 の 減 少方 策 に関 す る 提言 が 期 待 で き る。 したヘ ドニ ック型 住宅 価 格指 数 の推定 」 『 季刊 さ らに 、既 存 住 宅 性 能 表 示 制 度 に関 して も、 制 度 の 普 及 を 阻 む原 因 が 多 く考 え られ 、 良 質 な ス トック [5] 大 守 隆 (2002)「 東 京 圏マ ン シ ョン流通価 格 指 数」 『季刊 の 形 成 に 向 け て調 査 研 究 が 必 要 と思 わ れ る。 これ ら 住 宅土 地 経済 』2004年 冬季 号pp28・37 を通 じて 、 性能 評 価 や 履 歴 情 報 を活 用 した 市 場 の 評 [6] 藤澤 美 恵子 ・隅 田和 人(2001)「東京 大 都市 圏 にお ける 新築 価 の実 現 を今 後 の 課題 と して 取 り組 み た い。 マ ンシ ョン価 格 のヘ ドニ ック分析 」『第36回 モ デ ル に関 して は 、 デ ー タ の 制約 も あ り性 能 評 価 画 学会 学術 論 文集 』pp943-948 コス ト構 造 一不 動産 取 引コ ス トの把握 」 『季刊 理 した 。 また 、 評価 書 の取 得 費用 を価 格 に転 嫁 す る [8] 時 決 定 され る場 合 は モ デ ル の再 考 が 必 要 で あ る。 こ 「 大 手流 通 各 社 、価 格低 下 で個 人 仲介 伸 び-ネ ッ ト営業 が進 展 、法 人営 業 で収 入増 」『日刊 不 動産 経済 通 信 』2003 れ ら も今後 の課 題 と した い。 SCIENCES 住 宅 土地 経 済 』2004年 冬季 号pp28-37 と考 え モ デ ル を 構 築 した が 、価 格 と評 価 書 取 得 が 同 HOUSING 日本都 市計 [7] 清 水 千弘 ・西村 清 彦 ・浅 見 泰 司 「 不動 産 流 通 シス テ ム の 書 変 数 の 評価 レベ ル を 反 映で きず 、 ダ ミー 変 数 で 処 URBAN 住 宅土 地 経 済 』2003年 夏 季号pp14-23 年(平成15年) 11月27日 88 木 曜 日pp1-2 都 市 住 宅 学47号2004 AUTUMN