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日本統治時期における日式住宅の平面構成に関する研究 における日式

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日本統治時期における日式住宅の平面構成に関する研究 における日式
日 本 統 治 時 期に お け る 日 式 住 宅 の 平 面 構 成 に 関 す る 研 究
─台湾の官舎建築標準からみた住宅の特徴─
A Study on the Plan Composition of Japanese Style House in Japanese Colonial Period
- Characteristics of the initial Plan Composition Based on the “Building Standard for Official Residence” in Taiwan -
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○ Yawen KUO, Kentaro SAKAINO, Mitsuo TAKADA
This study aims to clarify characteristics of the initial floor planning held by the Japanese style official residence in Taiwan by analyzing its basic plan
composition, area ratio and space placement. The characteristics were examined for each residence class by the floor planning types and the space
placement types which this study has set for analysis. The results are as follows:
1) Official residence of various types based on the “Building Standard for Official Residence” held the common area distribution by spatial purpose
regardless of the difference of the residence size.
2) Official residence of small scale tend to reduce the hallway space and to place rooms around the entrance area.
3) Official residence of large scale had improved functional division. By placing the hallway space, the public/the personal domain and the living/the
water supply area were divided efficiently.
4) The water supply area was placed in the opposite side to the entrance regardless of the space composition and the residence class.
Keywords : Japanese Colonial Period, Taiwan, Japanese Style House, Building Standard of Official Residence, Plan Composition, Space Placement Type
日本統治時期、台湾、日式住宅、官舎建築標準、平面構成、空間配置類型
1 研究の背景と目的
《台灣建築會誌》
因すると指摘した郭永傑文 1)の研究や、
本研究は、台湾における日式住宅のうち、特に「官舎
に掲載された中流階級以上の7戸の「官舎住宅」を分析
住宅」に着目し、その原形における建築的特徴を把握す
し、中廊下型官舎住宅を和洋折衷住宅形式の発展と位
ることを目的とする。
置づけた黄蘭翔文 2)の研究、台湾南部の屏東県に建てら
1895年から1945年の日本統治時期(以下、日治時期)
れた鉄道官舎に限って平面構成の分類と系統化を行い、
に、台湾全土で日式住宅が数多く建設された。これらの
鉄道官舎の全体構成に規則性や対称性はないが個々の
日式住宅は、光復後、台湾人によって改造されて使用さ
空間同士の連接には有意性があるとした高鼎翔文3)の研
れたが、年々その現存数は減少している註 1)。1982 年に
究がある。その他にも、植民政府撤退後の台湾国民の日
制定された「文化資産保存法」により、台湾の城郭や遺
式住宅への適応状況と改築などの変化状況文 4)、当時の
跡、寺社などとともに、1998 年以降 8 件の日式住宅も
政策や法令文5,6,7)、
外来文化の移入と定着の過程文8)に着
文化財登録され註 2)、近代化遺産の 1 つとしての価値が
眼した研究があり、それぞれ一定の成果をあげている。
見出されている。今後適切な文化財登録が進むために
しかし、植民政府が職階によって異なる標準を定めた
も、台湾における様々な日式住宅の建築的特徴が解明
「官舎建築標準」註 3)に該当する「官舎住宅」を網羅的に
されることが望まれる。
扱い、その内部空間構成の特色を類型化するには至っ
日治時期の 50 年間に、台湾各地で建設された日式住
ていない。また、日本における官舎建築の研究は、海軍
宅には、
「官舎住宅」、
「移民住宅」、
「民間住宅」の 3 種
省文 9)と旧陸軍省文 10)における官舎設計標準の制定と平
類あり、それぞれ公務員のための住宅、専ら農業のため
面構成についての研究が見られるが、これらは制度の
に日本から移住した農民のための住宅、一般市民のた
背景などの歴史的観点から平面の紹介を行うものであ
めの住宅である。台湾における日式住宅の平面構成に
る。そこで本研究では、
「官舎住宅」の原形を全職階、台
関する研究には、台湾西海岸にある中廊下型官舎及び
湾全土の実例にわたって、掲載している当時の資料を
3,4室で構成される官舎を調査・分析し、官舎の改変は
とり上げ、その内部空間構成の類型化を行うことを目
居室の狭小性と数的不足及びプライバシーの欠如に起
的とする。
* 京都大学大学院工学研究科 大学院生・修士(設計學) (Graduate Student, Graduate School of Eng., Kyoto Univ., M.FineArts)
** 京都大学大学院工学研究科 大学院生・修士(工学) (Graduate Student, Graduate School of Eng., Kyoto Univ., M.Eng.)
*** 京都大学大学院工学研究科 教授・博士(工学)
(Professor, Graduate School of Eng., Kyoto Univ., Dr.Eng.)
URBAN HOUSING SCIENCES
53
都市住宅学 51 号 2005 AUTUMN
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本研究では、日治時期に建設された「官舎住宅」
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下、官舎)を研究対象としている。官舎は居住者の職階
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られ、前者は高級官僚向けで、後者は一般官僚向けであ
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の高低によって「高等官官舎」と「判任官官舎」に分け
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る註 4)。台湾が光復され、日式住宅に台湾人が居住し始
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が発行した《台灣建築會誌》
(1929-44 年)と植民政府
付けなどが変容しているため、現在の住宅から建築時
の状況を窺うことは出来なかった。そのため、植民政府
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めると、台湾人の生活習慣に応じて間取り、室内の飾り
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の記録《台灣總督府公文類纂》
(1895-1945 年)に掲載
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の住宅例等のうち、住宅の面積、寸法、空間名称、居住
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した官舎の分布及び竣工年は図 1,2 の通りである。
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3 台湾における官舎に関する制度
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者の官職が記載されている178事例(高等官官舎:54例、
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判任官官舎:124 例)について、建築的特徴を明らかに
するために、基本的な平面構成、面積比率、空間配置の
日治時代に台湾に建設された官舎は、台湾各地の機
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関により公務員の職階に基づき規模が定められていた
が、最初は官舎に関する統一的な規格がなく、新築され
た官舎がある一方、台湾の伝統住宅を改装して官舎と
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して使用するものなど、気候や設計者、建築技術、材料
等の相違により、台湾各地に様々な形態の官舎が建設
された文 7)。その後、植民政府により台湾の条件に適応
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況を改善する目的で、1902 年に「官舎標準図」註 8)が、
1905 年に「官舎建築標準」
が施行された。建築標準
註 9)
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カラサル(原文文 11)ママ)> と認識されていた官舎の状
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方行政体制の改変註 7)に伴い、これまで < 不都合ノ點尠
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した設計条件が求められ、それらは一般的な建物を対
象とした「家屋建築規則」註6)に反映された。1901年、地
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では「判任官以下官舎設計標準」が(表1)定められ、居
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住者の職階に応じて、敷地や建物の広さ、空間内容など
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が決められた。あわせて「仕様書」と「図面」を施行し、
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これを機に実用段階へと移行したが、高等官官舎では
を改定するとともに、高等官官舎は階級に応じて4分類
具体的な「仕様書」と「図面」まで定められておらず、
され、分類ごとに「官舎建築標準」を追加した。これに
建物の規模のみ定められた。1920 年、地方行政体制は
ともない、従来の「官舎標準図」は使用されなくなり、
再度改変され、
「判任官以下官舎設計標準」はこれまで
「判任官以下官舎設計標準」
(1905 年)も 1920 年代後半
地方機関の裁量に任されていた高等官官舎にまでその
にはあまり採用されなくなった。
範囲を拡大した。1922 年に新たに制定された「台灣總
4「官舎建築標準」からみた官舎住宅の平面構成註 10)
督府官舎建築標準」
(表2)の中で判任官官舎の建築標準
時間の経過とともに整備された「官舎建築標準」と
URBAN HOUSING SCIENCES
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都市住宅学 51 号 2005 AUTUMN
「官舎標準図」ではあったが、職階ごとの住宅の規模、空
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間内容、基本平面などのアウトラインを示すのみで
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あったため、同じ等級の官舎であってもその平面構成
は一様ではなかった。よって、文献資料註11)から得られ
た各平面を詳細に検討することにより、官舎の建築的
4-1 官舎の内部空間面積配分
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模を持つ高等官官舎までを対象としている。官舎の平
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特徴を明らかにする。
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面構成分析にあたり、狭小な住宅では室機能を転用す
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収納空間:押入れ・物置・物入・棚・戸棚・下駄箱など、
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室空間:座敷・客間・茶の間・食堂・居間・寝室・子供
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た宍戸文12)の分類手法を用い、住宅の内部空間を、①居
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ることによって 2 つ以上の用途に対応することを示し
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面積配分比は、住宅規模の大小に関わらず一定の範囲
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高等官官舎と判任官官舎を比較すると、内部空間の
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程度で、特徴的な変化は見られない。
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が増大しても「居室空間」の面積配分が僅かに増加する
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部空間面積配分を分析すると、高等官官舎は、住宅規模
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。台湾の日式官舎は、延床面
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用領域」による分類を用いたが、本研究はより狭小な住
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宅を多く分析対象とすることから、官舎内の動線に着
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目し玄関と居室の接続方法をもとに分類することで、
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官舎の平面類型化を行った。その結果、各官舎は、玄関
が各居室と直接接続する「玄関型」
(図 3-1、3-2)
、玄関
から廊下を介して各居室が繋がる「中廊下型」註14)(図3-
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3、3-4)
、玄関が各居室と直接接続する点では「玄関型」
ではあるが、居室の外囲で玄関と接続しない廊下をも
つ「玄関 + 廊下型」
(図 3-5、3-6)の 3類型に分けられた。
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「玄関型」は、居室が隣接して玄関の周囲に配置され、
URBAN HOUSING SCIENCES
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「私的生活領域」
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海軍省の官舎建築を扱った崎山文 9)は、内部空間の分
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4-2 玄関−居室配置からみた平面類型
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積の半分を「居室空間」が占め、残りの 1/4 を「通路空
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都市住宅学 51 号 2005 AUTUMN
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し、判任官官舎では 9 割以上
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等官官舎で 2 割の採用に対
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住宅での採用傾向が強く、高
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し接続する特徴を持ち、高等官官舎での採用率は少し
増え3割程度であるが、判任官官舎では僅か5例(4.0%)
【2】通路空間
の採用に止まっている。
「中廊下型」は、廊下回りに各
通路空間には、玄関、ホール、廊下、縁側などが含ま
居室が配される平面構成をもち、高等官官舎では半数
れるが、高等官官舎の中には、主人と客が出入りする外
以上に採用がみられるが、判任官官舎では 3 例(2.4%)
玄関と、家族と女中が使う内玄関の2つを設けるものが
のみの採用である。
あった(22/54)
。また、家族が使う領域(寝室、子供室、
4-3 官舎内部の空間配置類型
居間、茶の間など)と、家族以外の人が使う領域(女中
【1】居室空間
室、書生室、控室、待合室など)を分離するために通路
官舎面積の半分を占める居室空間について、各空間
。特に「女中室」
空間が設置されていた(25/44)
(図4-1)
内容ごとに計画戸数を表したのが表5 である。高等官官
は、台所に隣接して配置され、台所等と合わせて通路空
舎における「茶の間・食堂」の計画率は9割以上に達し、
間で区切られている(図4-2,4-3)
。居室空間と水回り空
次いで「居間」
(88.9%)
、
「座敷」
(83.3%)と続く。採用
間など、性質が異なる空間の境界にも通路空間を設置
率が一律に高いこれら空間に対し、8割の高等官官舎が
する事例も見られた(10/44)
(図 5-3)
。しかし、狭小な
設置する「応接室」と「女中室」
、4 割が採用する「書
住宅が多い判任官官舎では、玄関、踏込、縁側は見られ
斎」
、
「次の間」のように、官舎規模の増大に伴い、設置
るものの、廊下を持つものは少なかった(9/124)
。
率が高くなる空間もみられる。また、職階が高い官舎ほ
【3】水回り空間
ど、居室空間の機能分化がより顕著になる。
高等官官舎、特に第一種の官舎では、通常の水回り
判任官官舎でも「座敷」や「居間」の採用率は高く、
空間以外に、さらに客用便所が設置されている実例が
甲種、乙種では「茶の間・食堂」の採用率が4割あった。
少なくない。この場合、客用便所は外玄関や応接室の
甲種では、官舎建築標準に書かれた「応接室」の採用率
近くに配されることが多く、家人用便所は居間の背後
が 6 割と高いが、
「応接室」を採用しなかった 9 事例で
に配されることが多かった。これらから、水回り空間を
は、
「茶の間・食堂」
(6)、
「子供室」
、
「書斎」
、
「女中室」
次のように分析した。まず、客用便所を有するか否かで
(各 1)が採用されていた。
URBAN HOUSING SCIENCES
大きく分け、客用便所を持たない官舎は、さらに便所と
56
都市住宅学 51 号 2005 AUTUMN
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「③分離・前部型」の他に、
「①一体・前部型」と「④分
離・後部型」が見られた。判任官舎についても、高等官
官舎と同様に「②一体・後部型」が 6 割(76/124 戸)を
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所付加型」の水回り空間は見られず、
「②一体・後部型」
、
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一方、住宅規模の小さい判任官官舎では、
「⑤接客便
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「②一体・後部型」だけではなく、
「⑤接客便所付
連接できる廊下がある《玄関 + 廊下型》と《中廊下型》
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占め、それに次いで「④分離・後部型」
(33.1%)が多く
なっている。事例数の最も多い《玄関型》では、
「②一
台所などの水回り空間が一体か否か、玄関側を官舎の
体・後部型」に次いで「④便所後部型」が 3割を占める。
前部とした場合、便所が居間からみて前部にあるか否
官舎標準図が「②一体・後部型」の判任官官舎乙∼丁種
かでクロスに4分類し、合計5つの空間配置類型を得た
の 101 事例ではその 7 割に「②一体・後部型」の採用が
( 表 6)
。各類型は、水回り空間が玄関側に一体となって
見られるが、官舎標準図が「④分離・後部型」である甲
いる「①水回り一体・便所前部型」
(図 5-3)
、水回り空
種では、その半数(12/23)において「④分離・後部型」
間がすべて居間の奥に配される「②水回り一体・便所
が採用されている。
後部型」
(図 5-5)、水回り空間が 2 つ以上に分かれ玄関
4-4 官舎住宅平面構成の特徴
側に便所がある「③水回り分離・便所前部型」
(図 5-1)
高等官官舎では、社交などの場となる公的領域と家
と居間の奥に便所がある「④水回り分離・便所後部型」
族生活の場となる私的な領域が、それぞれゾーンとし
(図 5-4)
、そして「⑤接客便所付加型」
(図 5-2)である。
て分離している一方、判任官官舎では領域分けがなさ
高等官官舎では、
「②一体・後部型」
、
「③分離・前部
れていなかった。これは、判任官官舎の面積が狭いた
型」と「⑤接客便所付加型」の 3 類型が見られた。この
め、各空間の独立性を高め、居室のプライバシーを確保
うち、
「②一体・後部型」が 6 割(32/54)を占め、次い
する廊下或いは縁側に面積を割けなかった要因が強い。
で「⑤接客便所付加型」が 38.9%(21 戸)と続く。平面
事実、延床面積の大きい高等官官舎ほど「中廊下型」の
類型からみると、居室空間が玄関の周囲に配置してい
住宅が多く、判任官官舎では「玄関型」の住宅が主と
る《玄関型》では、8 割の官舎が水回り空間が居室空間
なっている。このことより、官舎の「建築標準」によっ
URBAN HOUSING SCIENCES
57
都市住宅学 51 号 2005 AUTUMN
て住宅規模を定めたことが、官舎の平面構成に影響を
文献 7)pp.3-1 ∼ 3-24
4)1922 年の「台灣總督府官舎建築標準」の規定によると、官舎住宅は八種類あ
る。高等官官舎では第一種、第二種、第三種、第四種が、判任官官舎では甲種、
乙種、丙種、丁種がある。参考文献 13)pp.56-57
5)日治時期の資料はその多くが既に散逸または破損しているため、
本研究の調
査対象とした官舎は 178 事例であるが、当然、すべての官舎がこの限りであっ
たわけではない。また、それら資料には、住宅面積、寸法、空間名称、居住者
の官職が記されているが、立面図や断面図、庭の配置等について記された事例
は少なく(立面図と断面図が揃っている事例は、高等官官舎で 4/54、判任官官
舎で 11/124 であった)
、本研究では平面図を分析対象とした。
6)
「家屋建築規則」は植民政府から台湾の一般的な建物に対して、
制定された法
令である。まずは 1896 年、
「台北縣家屋建築規則」が制定された。その対象は
台北県の地方のみであり、内容は構造材料、家屋排水、通風、衛生などである。
1900 年に「台灣家屋建築規則」が制定され、それによって台湾全国の建物が対
象になった。参考文献 14)pp.31-33
7)1901 年 11 月 9 日に改正された勅令第 202 號「台灣總督府地方官官制」によ
り、地方行政機関が「縣」から「廳」に改められ、建築設計業務は建築専業人
員をもたない「廳」の「總務課」で扱われるようになる。その後、1920 年 9 月
1 日実施の勅令第 218 號により地方行政機関は再度改制され、
「廳」を「州」に
改め、
「州」に「土木課營繕係」を設置し建築専業人員を配することで、建築設
計業務の独立執行が可能となった。参考文献 7)pp.2-19 ∼ 2-20
8)
「官舎標準図」は官舎住宅の標準的な設計図面である。
当時この標準図は判任
官官舎のみであり、高等官官舎についてはなかった。多くの判任官官舎は1905
∼ 1921 年の間にこの図面にしたがって建設された。参考文献 7)pp.4-1 ∼ 4-27
9)前掲 注 3)
10)本研究では、居室・水回り・通路・収納の各空間を内部空間と定義し、居室
−通路配置から分類したものを平面類型、
居室−水回り配置から分類したもの
を空間配置類型とし、それらを総じて平面構成と呼んでいる。
11)本研究は、
『官舎建築標準』だけではなく、植民政府発行の《台灣建築會誌》
(1929-44 年)と植民政府の記録《台灣總督府公文類纂》
(1895-1945 年)をもと
に資料収集を行った。
12)本論文中のすべての図面において、
原版の図面中で用いられた空間名称をそ
のまま用い、図 3,4,5,6 に関しては、板間線などの表記についても原版に従っ
た。また、方位は記載されたもののみ記し、方位の記載の有無を問わず、図面
の上下は原版に倣った。縮尺は住宅の寸法などを元に著者が補足した。また室
名が書かれていない資料に関しては、
室名が記載されている資料を参考に著者
が推定し補った。
13)プライバシーを確保するため、
各居室空間の間に廊下を設け、
空間の独立性
を高めることは「中廊下型」の第一の目的である。大正時代(1912-1925年)は、
「中廊下型」の住宅の定型化および普及の時期で、特に「中流住宅」で「中廊下
型」がよく取り入れられた。参考文献 15)pp.180-182
与えていることがわかる。
しかし、中には狭小な住宅であるにもかかわらず、室
内に廊下を設けるものも見られる。このような事例は
建築標準に付き従ったものではなく、各空間の独立性
を高め、プライバシーを確保しょうとする居住者の要
求が反映したものと読みとれる。
5 結論
本論文では、日本統治下における台湾の日式住宅の
うち「官舎住宅」について、新たに平面類型として3類
型、空間配置類型として5類型を設定し、これらと住宅
の等級を加えた対応関係から、その特徴を検討した。主
要な特徴は以下の 4 点である。
1)
「官舎建築標準」により様々に規定された「官舎住宅」
は、高等官官舎と判任官官舎の住宅規模の差は極めて
大きいにも関わらず、空間用途別の面積配分を比較す
ると、その面積割合は一様となる。
2)職階の低い判任官官舎では、住宅規模が狭小なため、
通路空間を減らし、居室を玄関回りに配置する「玄関
型」の平面類型が多く採用されている。
3)住宅規模が大きな高等官官舎では、空間の機能分化
が促されるだけでなく、通路空間により公・私的領域や
居室空間・水回り空間の分離が明確になされている。
4)水回り空間の配置を検討した結果、官舎等級や平面
類型によらず「水回り一体・便所後部型」が主となって
参考文献
文1)郭永傑
『増改築による住空間の変容とその要因―台湾における日本時代官
舎の変容に関する研究』、日本建築学会計画系論文集、第 381 号、pp.100-110、1987
文2)黄蘭翔『昭和初期在台殖民地官僚住宅之特徴-以台灣建築會誌所載日式住
宅資料為主』、台灣史料研究 第 13 期、pp.119-153、1999 文3)高鼎翔
『日治時期台鐵官舎建築平面構成之探討』
、
台灣東海大學碩士論文、
1998
文 4)郭永傑『日據時期官舎住宅使用後評估』、建築學報 第 1 期、中華民國建築
學会、pp.33-48、1990
文 5)薛琴『台北市日式宿舎調査研究専題報告書』、台北市政府民政局、2000 文6)陳錫獻『日治時期台灣總督府官舎標準化形成之研究(1896至1922)
』、台灣
中原大學碩士論文、2001 文 7)陳信安『台灣總督府官舍建築標準之研究』
、台灣成功大學博士論文、2004
文8)沈祉杏『日治時期台灣住宅發展1895-1945』
、田園城市文化事業有限公司、2001
文 9)崎山俊雄『近代日本の住宅建築における標準設計の成立過程に関する研究―海
軍省官舎建築を例に』、日本建築学会計画系論文集、第 542 号、pp.213-220、2001
文10)崎山俊雄『旧陸軍省における官舎建築の供給制度と平面構成について―近代日本の
官舎建築に関する歴史的研究」、日本建築学会計画系論文集、第 595 号、pp.189-196、2005
文 11)『總督府事務成績提要 < 第 11 編 >』
、台灣總督府、pp.410-411、1895-1942
文 12)実戸修『戦ふ国民住宅』
、聖書房、1943
文 13)『台北州令規類纂 <第 3輯内務部第3章土木課>』
、台北州庁、pp.56-57、1932
文14)楊志宏『日據時期台灣建築相關法令發展歴程之研究』、台灣中原大学碩士
論文、1996
文 15)西山夘三『すまい考今学−現代日本住宅史』
、彰国社、1989
文16)郭永傑
『台湾の住様式に関する比較住居論的研究』
、九州大学博士論文、
1988
いるが、それに次ぐ空間配置に各住宅等級の特性が現
われている。高等官官舎では、すべての平面類型で公・
私的領域の機能分化が進んだ「接客便所付加型」が多く
みられ、判任官官舎では便所のみ居室後部に配した「水
回り分離・ 便所後部型」が多く採用されている。
謝辞
本研究は、
2003年台湾国立雲林科技大学に提出した修士論文を再考したもの
である。本研究をおこなうにあたり、台湾国立雲林科技大学の聶志高先生に多
くのご教示を仰ぎました。また再考にあたり、京都大学大学院工学研究科の神
吉紀世子先生にもご指導を頂きました。ここに特記して感謝いたします。
註釈
1)
「台北市各区里調査清冊」の中で、中正区、中山区、大安区の 3 区に 1739 戸
(うち使用中のもの 1259 戸)あった日式住宅は、1999 年に行われた「台北市日
式宿舎研究專案」の現地調査では、現存するものが 1224戸(うち使用中のもの
955 戸)に減少した。参考文献 5)pp.132-133
2)2004 年 12 月 31 日現在、
「文化資産保存法」に登録される日式住宅は、台北
市、台南市などの 7 戸の宿舎、官邸などと、1 つの宿舎群(11 戸)である。
3)
「官舎建築標準」は植民政府が官舎の建築に関して初めて出した条文である。
まず、1905 年に「判任官以下官舎設計標準」が、次いで 1922 年には「台灣總督
府官舎建築標準」が定められ、各地の官舎に対する新しい規則となった。参考
URBAN HOUSING SCIENCES
58
都市住宅学 51 号 2005 AUTUMN
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