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13.企業活動領域の設定と再構成 :活用と蓄積の

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13.企業活動領域の設定と再構成 :活用と蓄積の
13.企業活動領域の設定と再構成
:活用と蓄積のダイナミズム
・教科書(網倉久永,新宅純二郎 『経営戦略入門』)
第13章 「企業活動領域の設定と再構成:活用と蓄
積のダイナミズム」 P.415〜P.430
・概要
本章ではこれまでの多角化・垂直統合の議論を
踏まえて、製品分野・活動の拡張・縮小を包括的
に扱える概念を導入し、全社戦略に関する議論を
見直す。
1
13.企業活動領域の設定と再構成
13.1 企業活動領域
13.2 企業活動領域の再構成:経営資源・組織
能力の活用と蓄積
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
2
13.1 企業活動領域
企業活動領域の変動
– 企業活動領域
と
の2次元で構成
– 従来の多角化
企業活動領域の水平的拡大⇔水平的縮小
– 従来の垂直統合
垂直的拡大⇔垂直的分裂
製品A
製品B
製品C
研究開発
購買
製造
販売
サービス
3
13.1 企業活動領域
Qualcommの歴史
•
•
•
•
•
•
•
•
•
1985年:Dr. Irwin Jacobsを中心に7名で創業
1988年:CDMAのコンセプトを発表
1993年:TIAがCDMAを標準規格として採択
1995年:世界初のCDMAのサービスが香港
(Hutchison Telecom)で開始
1996年:韓国及びアメリカでCDMAのサービス開始
1998年:日本でCDMAのサービス開始
1999年:インフラ設備部門をエリクソンに売却
2000年:端末機部門を京セラに売却
2001年:中国(ユニコム)でサービス開始
4
13.1 企業活動領域
クアルコムと松下電器・日立製作所の比較
■売上げでは松下・日立が10倍以上大きい
■営業利益で、クアルコムは日立製作所を上回る
売上高(百万円)
10,000,000
9,000,000
8,000,000
7,000,000
6,000,000
5,000,000
4,000,000
3,000,000
2,000,000
1,000,000
0
営業利益額(百万円)
9,464,801
450,000
8,894,329
414,273
400,000
350,000
300,000
256,012
279,162
日立製作所
クアルコム
250,000
1/14
200,000
150,000
100,000
663,741
松下電器
日立製作所
クアルコム
注:クアルコムは2004年10月~2005年9月、他社は2005年4月~2006年3月
1ドル=117円で計算 出所:各社決算情報に基づき筆者作成
経産省産業技術環境局:和泉章氏の資料
50,000
0
松下電器
注:クアルコムは2004年10月~2005年9月、他社は2005年4月~2006年3月
1ドル=117円で計算 出所:各社決算情報に基づき筆者作成
5
13.1 企業活動領域
Qualcomm 売上推移と構成
(2001年~2013年)
M$
ロイヤリティ
QCT部門
総売上
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
$772
$835
$985
$1,366
$1,929
$2,750
$3,106
$3,982
$3,950
$4,011
$5,734
$6,656
$7,878
$1,365
$1,591
$2,242
$3,111
$3,290
$4,330
$5,280
$6,720
$6,470
$6,980
$8,859
$12,141
$16,715
$2,680
$3,039
$3,847
$4,880
$5,673
$7,526
$8,871
$11,142
$10,416
$10,991
$14,957
$19,121
$24,866
10年間で10倍の成長
百万ドル
$30,000
$25,000
ロイヤリティ
QCT部門
$20,000
総売上
$15,000
$10,000
ロイヤリティ:特許使用料の収入
$5,000
QCT部門(Qualcomm CDMA Technology):
チップモジュールの販売
$0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
6
13
1.4 戦略形成のプロセス
インテル社の売上推移
7
インテル:90年代半ばの問題
PC内部の死の谷
– 副社長エイマー「周辺チップもDRAMもMPUと同じように性
能が上がらなければ、インテルの最先端MPUは実力を発
揮できない。車のエンジンだけ性能が上がっても車が速く
走れないのと一緒だ。」
– 「V8クラスのエンジンをフォルクス・ワーゲンのビートルの
シャーシに搭載しているようなもの。これでは、エンドユー
ザはV8エンジンのメリットを享受できない。」(IAL元所長
クレイグ・キニー談)
– 周辺チップセット、マザーボードなどへ事業領域を拡大。
– ソフト・メーカーへの補助
– アーキテクチャの変革:デュアル・インデンペント・パス
– バスのスピードの限界(66メガヘルツ)
– システムバスとキャッシュバスの分離
インテル:事業領域の拡大と縮小
• 死の谷問題の克服のために事業領域を拡大
• MPU単体ビジネス
→チップセット →マザーボード
• チップセットのビジネスは、先進国の技術力
のあるPCメーカーには不評(差別化領域の浸
食) →台湾へ売り込み
• 台湾マザーボード・メーカーの成長
→マザーボード事業の縮小
(リファレンス・デザインの提供のみ)
インテルと台湾マザーボード企業の連携
新しい横割り型構造のコンピュータ産業
(1995年ごろ)
OS(基本ソフト)
DOS/
ウインドウズ
OS/2
UNIX
Mac
標準化
コンピュータ
コンパック
HP
デル
パッカード
ベル
IBM
その他
標準化による
オープン化
国際分業
マザーボード
チップセット
標準化
インテル
台湾マザーボード
メーカ
インテル
SIS
その他
VIA
ブラックボックス化
CPU
インテル
AMD モトローラ RISC
インテルは、ブラックボックス化されたCPUを供給する。
台湾企業は、標準化されたオープン領域に多数参入した。
元々、先端マザーボード領域は、先進国企業の市場であった。
インテルのプラットフォーム
プラットフォーム構築前
プラットフォーム構築後
CPU
Pentium
CPU
486
DRAM
DRAM
Controller
キャッシュ
ノース
ブリッジ
IO Bus
Controller
PCIバス
ISAバス
IDE
Controller
DRAM
PCI
デバイス
ISA
デバイス
USB
サウス
ブリッジ
HDD
PCIスロット
HDD
ISAバス
ISAスロット
・・・インテルが提供するチップ
出所:立本博文(2007)「PCのバス・アーキテクチャの変遷と競争優位ーなぜIntel は、プラットフォーム・リーダ
シップを獲得できたか―」東京大学ものづくり経営研究センター ディスカッションペーパー No.171.
ISA
デバイス
ISAスロット
インテルの関係した標準化領域
分類
ローカルバス
I/Oバス
電源
MB形状
周辺機器バス(低速)
周辺機器バス(高速)
HDD I/F
グラフィックバス I/F
オンボードサウンド
PC全体設計
メモリ I/F
名称
PCI 1.0
PCI 2.0
ACPI 1.0
ATX
USB1.0
USB2.0
Ultra DMA
AGP 1.0
AC97
'90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00
PC98:System Design Guide
PC100,…
は、Intel社が標準化に関わった年
出所:立本博文(2007)「PCのバス・アーキテクチャの変遷と競争優位ーなぜIntel は、プラットフォーム・リーダ
シップを獲得できたか―」東京大学ものづくり経営研究センター ディスカッションペーパー No.171.
パソコン内部の標準化によって、
新興国企業である台湾企業の生産量が急拡大
標準化による生産拡大
400,000,000
Notebook PC
NotePC
MB
350,000,000
K unit(MB/Note PC)
300,000,000
マザーボード
(パソコン内部の
回路基板部品)
250,000,000
200,000,000
150,000,000
100,000,000
標準化の完成
50,000,000
台湾の生産量
作成:立本博文
year
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
0
インテルのプラットフォーム完成後に見る価格推移
120%
インテルが
プラットフォーム・リーダだけが
平均販売価格の変化(1995年を100とする)
プ゚ラットフォームを完成
価格を長期に維持
インテルMPUの平均単価
(粗利:50~60%で変動)
100%
平均単価(
%)
80%
世界的なIT不況
60%
40%
DRAM
20%
ハード・ディスク
(HDD)
0%
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
出所:立本博文(2007)「PCのバス・アーキテクチャの変遷と競争優位ーなぜIntel は、プラットフォーム・リーダ
シップを獲得できたか―」東京大学ものづくり経営研究センター ディスカッションペーパー No.171.
13.1 企業活動領域
企業活動領域の設定
– 水平・垂直方向にどこまで企業の活動領域とすべきか
(1)提供している製品やサービスの技術的
や、市場における
効果などによって決定される「活動集約のメリット」
(2)活動主体間での情報の
や取引主体の
の
程度などによって決定される「活動コーディネーションのコスト・労力」
Ex. 自動車部品の製造の例
– 技術や市場などの影響
Ex.半導体製造における微細加工技術、設計ツール、製造装置の急速
な進歩と市場の需要構造の変化による、競争優位のあり方の変化
– 企業が保有する経営資源や独自能力、またそれらを背景として
選択される戦略の影響
15
13.企業活動領域の設定と再構成
13.1 企業活動領域
13.2 企業活動領域の再構成:経営資源・組織
能力の活用と蓄積
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
16
13.2 企業活動領域の再構成
競争優位の持続と企業の活動領域
– 競争優位の持続という観点
• 時間要因を取り入れた議論が必要
– VRIOフレームワーク
• 競争優位をもたらすような資源や能力の稀少性が く、
模倣可能性が ければ、競争優位は持続的となる。
• ただし、価値が高く、稀少で、模倣可能性の低い、資源や
能力の獲得・蓄積には
と
が必要となる
– 企業の競争力
・表層の競争力:製品の価格や品質
・深層の競争力:生産コストやリードタイム
⇒構築に時間がかかる
17
13.2 企業活動領域の再構成
競争優位の持続と企業の活動領域
– 技術や市場などの制約条件が許すのであれば、
独自資源・能力の内部蓄積よりも外部資源・能力
的な財務パフォーマ
の活用を選択した方が
ンスはよい。
• しかしながら深層の競争力や組織能力に裏付けされ
ていないため、
的な持続は困難。
– 外部環境条件の重大な変化に直面した場合
• 資源・能力の蓄積・活用という観点から企業活動領域
を再設定する必要。
18
2.3 Resource-Based View of the Firm(資源ベースの企業観)
組織能力(organizational capabilities)
– 組織能力と競争力と収益性の関係
その他の環境要因
組織能力
深層の競争力
表層の競争力
他社が簡単に真似できない
現場にできることのレベル
お客から見えない
現場の実力を測る指標
お客が評価する
製品の実力を測る指標
整理整頓清掃
問題解決、改善
ジャストインタイム
フレキシブル生産性
生産性、コスト、
生産リードタイム
開発リードタイム
開発生産性
価格、性能、納期
ブランド、広告の効果
市場シェア、お客の満足度、
開発生産性
利益
パフォーマンス
会社の利益
株価
能力構築競争
参考文献:藤本隆宏(2003)『能力構築競争』中公新書 .
19
自動車生産性比較 IMVP調査
50
(Labor hours per vehic le)
41.0
40
35.5
30
20
25.3
24.9
21.9
16.8
16.5
12.3
29.7
28.0
20.1
16.8
10
0
JP/JP
US/NA
1989
EUR
1994
2000
NE
組立生産性=
人*時間/台
JP/JPは日本
にある日本企
業工場
US/NAは米国
にある米国企
業工場
EURは欧州に
ある欧州企業
工場
NEは新興国工
場(含む韓国)
資料:Ma tthias H olweg an d Fr it s K. Pi l 「The S e con d cen tu ry」
ⓒ新宅2015
20
アジア自動車工場の生産性比較
人時/台
(2006年調査)
45.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
25.2
41.5
28.4
20.6
10.7
13.0
出所:大鹿隆・藤本隆宏(2011)「アジア自動車工場の組立生産性に関する比較研究―IMVPラウンド
4(2006年)調査を中心に―」」MMRC-DP#351より筆者作図
5,000
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
アジア自動車工場の賃金比較(2006
年調査)
賃金($/月) 実質労務コスト(日本=1000)
出所:大鹿隆(2014)「アジア自動車工場の生産性と賃金率の格差に関する研究
―IMVP ラウンド4(2006 年)調査をベースとして―」MMRC-DP#461.より筆者作図
ⓒ新宅2015
21
コストと現場力
国際通貨コスト(ドルベース)=
立地選択要因
/環境要因
為替レート
×
単位要素コスト(賃金、原料費、光熱費など)
×
現場力
生産性(1台あたり工数など)
ⓒ新宅2015
22
13.企業活動領域の設定と再構成
13.1 企業活動領域
13.2 企業活動領域の再構成:経営資源・組織
能力の活用と蓄積
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
23
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
動態的取引費用
– 企業は本質的コアと補助的ケイパビリティによっ
て構成される。
• 本質的コア:特定の資源や能力の組み合わせによる
「特異的シナジー」によって形成される。
⇒模倣困難
• 補助的ケイパビリティを自社内に保有するかは、内部
的に補助的ケイパビリティを蓄積していくためのコスト
と外部から調達するためのコスト(
)と
の比較で決定
参考:Langlois and Robertson(1995) Firms, Markets and Economic Change: A Dynamic
Theory of Business Institutions, London; Routledge. (谷口和弘訳(2004)『企業制度の理
論:ケイパビリティ・取引費用・組織境界』 NTT出版)
24
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
様々な境界の関係
– 動態的取引費用の観点
• 企業活動領域と「知識の境界」は必ずしも一致している必要は
ない。
• 関係性マネジメント能力を高め、動態的取引費用を節約できる
のであれば、重要な組織能力を必ずしも自社内に蓄積しておく
必要はない。
Ex.自動車産業におけるサプライヤーマネジメント
– 組織間分業における知識マネジメントでの3つのジレンマ
(1)短期効率と長期的蓄積とのトレードオフ
(2)部品蓄積と統合知識の同時向上の難しさ
(3)実際に活動せずに知識を獲得・維持することの難しさ
– これらのジレンマの克服によって活動の領域を狭めなが
らも、知識の境界を広くとることができる。
25
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
活動領域と知識領域
– 活動領域は
が、知識領域は
。
•
川上企業の開発戦略、ソリューション戦略
ハードディスクドライブのヘッド部品メーカー TDK
 活動領域はヘッドに限定
 知識領域は拡張
(参考) 中川功一(2011) 『技術革新のマネジメント』 有斐閣
統合 特化
川下企業の調達戦略:日本の自動車メーカー
 自社で小規模な部品生産を手がける
 同じ部品を部品専業メーカーから大量に仕入れる
(参考) 武石彰(2003) 『分業と競争-競争優位のアウトソーシン
グ・マネジメント』 有斐閣
事業領域
•
×
狭
広
知識領域
26
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
活動領域と知識領域
27
(参考) 中川功一(2011) 『技術革新のマネジメント』 有斐閣
13.3 企業の境界・活動の境界・知識の境界
活動領域と知識領域
28
(参考) 中川功一(2011) 『技術革新のマネジメント』 有斐閣
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