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第3章
第1節
第2節
第3節
第4節
第5節
流域連携のあり方検討
白川中流域流域連携の考え方
白川中流域に関する流域連携の現状と課題
白川中流域を中心とした流域連携の検討手順
流域連携検討プログラム
流域連携プログラムの推進にあたって
第3章 流域連携のあり方検討
第1節 白川中流域流域連携の考え方
一般に流域とは、雨水が川にあつまる大地の広がりをさす。流域連携は、この河川を
手がかりに流域に広がる住民がネットワークを組み、地域連携を深めるための情報交換
や人的交流を促進し、流域圏における水環境の保全と創造、歴史や文化の継承、さらに
は産業の振興などを目指して取り組まれる活動と言える。
こうした活動が生まれてきた背景を岸由二氏(TRネット世話人)は、水系だけでな
く流域全体で治水対策をすすめる総合治水への河川管理行政の転換や、水源地と下流域
都市部住民との交流、源流の森林地域と海辺の住民との交流といった、安全な水資源や
自然環境資源に注目した新たなまちづくりへの関心などが指摘されると整理している。
(「流域社会のビジョンについて」)
また、自然保護や環境問題に取り組む数多くのボ
ランティア団体やNPOの活動もその大きな推進力となる。
このように、流域連携の活動は基本的には河川関連住民活動をさすことになるが、今
回のテーマである白川中流域における流域連携の場合には、地下水のかん養と流動、お
よびその利用という一連のつながりの中での「地下水関連住民活動」として、流域連携
活動を位置づけることにする。具体的には、地下水の重要なかん養地域とされる白川中
流域の地下水かん機能を保全するために、下流域に位置する熊本市民が中心となって、
特にかん養源として役割の高い、水田の維持と活用を目的とした交流活動に取り組むこ
とを、流域連携活動と位置づける。
流域連携活動は、住民や団体等の自主的な交流活動が本来のあり方であり、行政主導
によって進めるべきものではないと考える。ただ、当該地域における「地下水関連住民
活動」は、これまでほとんど検討されておらず、今回はじめて具体的な立ち上げを目指
していくことになる。したがって本章では、そうした活動が生まれていくための仕組み
づくりについて、行政側が流域住民にどのような仕掛けを行っていけばよいかについて
提案することにする。
第2節 白川中流域に関する流域連携の現状と課題
河川(表流水)にかかわる流域連携については、緑川・球磨川・白川等、県内でも様々
な環境団体やボランティアによるネットワーク活動が行われている。例えば、緑川につい
ては、天明水の会が緑川浄化事業や、植樹事業などの活動を行っている。球磨川では平成
11年7月に「球磨川流域をきれいにする協議会」が設立されている。白川についても2
002年10月、良好な流域・河川環境の創造と水環境の保全や、川とともに人・文化を
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創る豊かな地域社会の実現を活動理念とした、行政機関と住民団体との「白川流域連携会
議」が開催され、また住民団体による「白川流域リバーネットワーク」の発足会議も開催
されている。白川には白川流域住民交流センターもあり、白川の自然や歴史等に関する情
報発信を行っている。
しかし、地下水については、任意の研究会である熊本地下水研究会が、トヨタ財団の市
民活動助成金を受けて、現地学習会等のバスツアーを行った以外には、これまで大きな取
り組みは見られない。これは、県内の環境ボランティア団体に、そもそも地下水をテーマ
とした活動団体がみられないことが大きく影響しているものと思われる。表に見るように、
大半の環境ボランティアは河川や江津湖に関係した団体であり、直接的に地下水を活動テ
ーマとした団体は皆無である。このような状況は、これまで地下水に関わる大きな環境問
題が発生しなかったことや、基本的に水道事業として行政が取り組むべきものと位置づけ
られていたこと、あるいは地下水が目に見えない存在であるため、全般的に市民の関心が
低かったため、といった理由が推測される。
表2−1 熊本県内環境ボランティア団体一覧(河川・水関連一部抜粋)
・阿蘇の自然を愛護する会
・江田川を美しくする会
・熊本県ホタルを育てる会
・阿蘇町ほたるの会
・大井手を守る会
・熊本自然環境保存研究会
・天草の海を守る会
・鏡川水質浄化推進協議会
・泗水きれいな水と命を守る会
・天草パークボランティア協会
・鏡ケ池美化促進会
・自然環境研究会
・網津川を守る会
・カッパ堀を良くする会
・藻器堀川をキレイにする会
・池の川水源保存会
・環境ネットワークくまもと
・白川水源保存会
・井芹川を美しくする会
・菊水町ホタルを育てる会
・水前寺ノリ保存会
・五和町ホタルを育てる会
・菊池井出ホタルを育てる会
・清流球磨川・川辺川を未来に手
・井出の口清流会
・菊池川と下川を美しくする会
・芋川を美しくする会
・菊池川とその支流を美しくする
・岩野川を守る会
関係団体連絡協議会
渡す流域郡市民の会
・長命水保存会
・筒川愛護会
・浦川流域環境保全協議会
・菊池川流域同盟
・坪井川清流会
・江津湖研究会
・菊池渓谷を美しくする会
・坪井川流域八景水谷
・江津湖の会
・菊池市ホタルをふやそう会
・(財)肥後の水資源愛護基金
・江津湖の自然と水を守る会
・旭志村命と水を守る会
・明神池保存会
・緑川の清流を取り戻す流域連絡
・きれいな水、いのちを守る熊本県
・免田川を美しくする会
会
合成洗剤追放連絡会
・やまんたろう・かわんたろう
・一つ目水源を守る会
・球磨川河童会
・ゆうすい会
・繁根木川を美しくする会
・八景水谷ゲンジボタルを守る会
・庄口川にゲンジボタルを育てる
会
出典:「第一回水環境復元全国大会報告書」1998 年)
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さらに、地下水かん養のメカニズムに対する住民の認識が曖昧であるため、上流・下流の
連携といった発想が出にくいということも指摘できる。一般に市民は、阿蘇のカルデラ内
や外輪山などに降った雨が地下水となっている、というような漠然とした理解をしており、
大津町や菊陽町を中心とした白川中流域の水田の役割については、まだまだ十分に理解さ
れていないと思われる。つまり、そもそもの問題において、白川中流域への熊本市民の関
心はほとんどないといっても過言ではない。
ただし、地元白川中流域では、最近になって地下水問題を意識した動きが起こっている。
水利用管理の主体である大菊土地改良区、錦野土地改良区、迫井手土地改良区、馬場楠堰
土地改良区の4つの土地改良区は、平成15年1月21日に会合を持ち、「白川流域連絡協
議会」の発足について話し合いを行った。その結果、平成15年4月1日より同「協議会」
の発足が決定されている。もともと堰や用水路の管理も含めて、地域の水利用の管理を行
ってきた土地改良区がこうした連絡会議を設置することは、「地下水関連住民活動」に対す
る窓口としての機能を期待することができ、流域連携の推進に大きな弾みになると思われ
る。また、大菊土地改良区では平成15年度の事業より「交流事業」の実施も位置づけて
おり、具体的には小学校との連携による交流活動を目指して、現在、事業内容を検討中と
のことである。これもまた、流域連携の活動として具体的に共同開催するなど、様々な可
能性が拡大するものといえる。こうした土地改良区の動きは、流域連携だけでなく、具体
的な地下水かん養方策の事業化にあたっても、大きな役割を果たしていくものと期待され
る。
以上のような、白川中流域における「地下水関連住民活動」の現状を考えたとき、最大
の問題は、下流域の熊本市民の白川中流域への関心を、どのように引き出していくかにか
かっているといえる。したがって、白川中流域における流域連携を検討するためには、こ
の市民の関心を引き出す方策を具体的に検討する必要がある。基本的な取り組みの方針と
しては、①情報発信を進める、②生産者と消費者の交流を進める、③学校教育や企業の関
わりを進める、④交流基盤の整備を進める、⑤地下水保全活動に関わる組織づくりを進め
る、といった項目での検討が課題となる。
(冬場でも川のように流れている下井手)
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第3節 白川中流域を中心とした流域連携の検討手順
(1)白川中流域の重要性を広く市民・団体等に知ってもらう
白川中流域の流域連携構築のためには、何よりも白川中流域水田地帯の地下水かん養
に及ぼす役割やその重要性を、広く知ってもらうことが大切である。このことはまた、
地下水かん養機能維持のための具体的な施策を実施するうえでも重要であり、とくに財
源確保の方法においては、市民の理解と協力が不可欠となり、その意味でも白川中流域
の重要性を広く知ってもらうことは大きな意味をもつといえる。
そこで、市民に対する情報発信への取り組みとして、以下の3つの活動への検討をす
すめる。
①広報媒体の創設
地下水に関する情報、白川中流域に関する情報を掲載した情報誌を作成する。
熊本地下水研究会では、トヨタ財団の市民活動助成金を受けて、地下水と白川中流
域に関する情報誌「湧き水通信」を年4回、発行した。そこで発信された情報は、「地
下水の成り立ち」や「地下水データの紹介」、
「白川中流域探訪」、
「ボランティア紹介」
、
「行事・イベント情報」といった内容。発行部数は600部で、熊本市市民交流サロ
ンや大津町役場、菊陽町役場のほか、環境団体や消費者団体、学校等へ配布。この活
動は平成 14 年度のみ。
流域連携事業の一環として、地下水研究会や環境ボランティア等の協力を得ながら、
情報誌発行の継続を目指す。あわせて、ホームページへの掲載も行う。
②現地体験型学習ルートの創設
社会学習、環境学習、歴史学習、ふるさと学習、交流体験などの視点から、上水道
施設や堰・用水路などの歴史的遺構の見学、水田等でのフィールド活動、農家との交
流活動などを盛り込んだ現地体験型の学習ルートを創設する。
視察型のバスツアーからフィールド調査型、作業体験型など、環境団体や消費者団
体、親子連れを対象としたバスツアーを実施する。
(下井手堰での現地学習会)
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③学校教育との連携
今、小学校では、総合学習の時間を使った、環境問題や体験学習への関心が高まっ
ている。地下水のメカニズムや、白川中流域の果たす役割、かん養の仕組みなど、学
校教育現場への出前授業によって、小学生のときから熊本の地下水について科学的な
学習の機会を提供する。
熊本地下水研究会では、九州東海大学の市川研究室の協力を得て、地下水モデル実
験装置を使った、出前授業と学習会を行った。また、熊本市も出前講座を実施してい
る。流域連携事業の一環として、これらの活動を継続していく。
(小学校での出前授業)
(2)生産者と消費者の関わりを高める方法を検討する
白川中流域が熊本市民になじみが薄いのは、この地域が整然と圃場整備された、農業生
産に特化した地域であることにもよる。しかも、農業生産に特化した地域の割には、そこ
で生産される農産物は特段地域性を持ったものはなく、消費者としての熊本市民に対して、
白川中流域を意識させることもほとんどない。こうした現状を変えていくためには、消費
者としての熊本市民に訴えていく仕掛けが必要であるといえる。
そこで、流域連携の二つ目の手順として、特に生産者と消費者が交流する場を創設する
ため、以下の3つの活動の検討をすすめる。
①体験農園、収穫祭の実施
大津町にはすでに温泉センターの岩戸の郷近くに市民農園がある。その利用者は町内
の住民がほとんどであるという。こうした農地の貸し出し型での市民農園ではなく、熊
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本市内の消費者団体と地元農家の協力を得て、市民と農家が交流できる体験農園を整備
し、収穫祭などの交流イベントを企画することで、白川中流域への市民の参加を募って
いく。
表3−1
地下水保全市民活動助成プロジェクトに参加協力した消費者・環境諸団体
・熊本消費者協会
・水環境会議熊本
・暮らしの若葉会
・環境ネットワークくまもと
・熊本消費者懇話会
・熊本県ホタルを育てる会
・NPOくまもと
・大菊土地改良区
・菊池地域農業協同組合
・迫井手土地改良区
②用水路清掃ボランティアの実施
白川中流域には 6 つの堰から取り入れた農業用水が、毛細血管のように広がる用水路
を通して水田に流れ込んでいる。これらの堰や用水路は土地改良区によって管理されて
いるが、その管理維持の負担は、地元にとっても大きなものとなっている。
そこで地元地域への貢献策として、熊本市民よりこれら用水路の清掃ボランティアを
募り、年に数回程度、土地改良区の指導の下に清掃活動を実施することで、地元との交
流を深めていく。
③農産物のブランド化と契約栽培の実現
現在、都市部の消費者にとって関心が高いのは、食の安全性である。地産地消への取
り組みも、こうした安心・安全への関心の中から注目を集めているといえる。白川中流域
は地下水かん養という、下流域の熊本市民にとってきわめて重要な役割を担っており、
こうした中流域のイメージをそのまま生産される農産物に用いて、「地下水ブランド化」
された農作物として売り出すことで、熊本市民の関心を高めることができる。そこで、
地元農家と消費者団体との契約栽培を中心に、地下水かん養米や人参、大豆、里芋など、
白川中流域農産物の「地下水ブランド化」をすすめていく。この際、これまでのような
農業ではなく、環境保全型農業など、安全・安心かつ味質の良い農作物の生産を目指す。
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(3)学校・企業等の団体による関わりの方法を検討する
市民や消費者団体、環境団体との連携だけでなく、地下水のテーマは、学校教育での活
動や、企業の地域貢献活動としての位置づけも検討できる。総合学習の時間や体験学習の
場としての中流域水田の活用、地下水かん養への企業の貢献など、白川中流域水田に対す
る学校や企業の関わりとして、以下の2つの活動の検討を進める。
①学童農園の事業化を進める
平成15年1月に実施した、熊本市内及び大津町・菊陽町の小学校95校へのアンケ
ート調査によると、回答した56校のうち、農作業体験等の学校行事や授業に取り組ん
でいる学校は、学校主催が34校、PTA主催が1校、その他2校の合計37校であっ
た。また、取り組んでいないと回答した20校のうち12校は、こうした活動に関心が
あるとも回答した。小学校における学童農園に対するニーズや関心は、きわめて高いも
のであるといえる。白川中流域の水田を学童農園用地として確保し、児童の体験学習や
交流活動など、幅広い活動ができるシステムを、白川中流域を受け皿とした学童農園事
業として検討する。
表3−2
学童農園取り組み事例(アンケート調査から抜粋)
・大津町立大津南小学校
水田:五年生の総合的な学習の時間で“米づくり”に取り組み、年間通して利用してい
る。育苗→しろかき→田植え→水管理・除草→稲刈り→脱穀→米料理。
畑:学校近くの畑を有料で借用してからいも作りに活用している。
・熊本市立楠小学校
2年生と6年生がサツマイモを中心とした体験学習の一環として活用している。2年生は
生活科と絡めてサツマイモ栽培を行っている。6年生は近くの保育園児との交流を通して
苗植えから栽培まで行い、
“ふれあい学習”を行っている。収穫した芋は毎年その学年の創
意の中で活用。今年は学校周辺の民家に(つながりの意もこめて)配布。
・大津町立平川小学校
学校農園…理科及び生活科の時間で、サツマイモ、野菜、花の栽培を行う。
水田…社会及び総合的な学習の時間で、もち米を作り、もちつき大会、しめ縄作り。
・菊陽町立菊陽西小学校
1・2年生…生活科での栽培活動(大豆・ケナフ・サツマイモ)。
3∼6年制…総合的な学習の時間(サツマイモ)。
・熊本市立画図小学校
畑…1年生が生活科の授業でサツマイモを植え、収穫までを体験的に学習している。その
後、おいもパーティを開く。
水田…①2年生が生活科の授業で田植え∼稲刈りまでを体験的に学習している。おにぎり
パーティも開く。②4年生が総合的な学習の時間(授業)に、芹を植えて収穫までを
体験的に学習している。
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②企業田の事業化を進める
地下水に関わる企業の貢献は、熊本地域地下水保全活用協議会への参加や、植樹、山
林の購入、水資源の循環利用など多岐にわたるが、これまでは、直接的に営農活動に関
与するような、農業生産と連関した取り組み活動は見られない。しかし、水田からの地
下水かん養は、減水深データを用いることで、
「減水深×面積×水張り日数」という計算
によって、概略計算可能である。つまり、水田維持に取り組むことで、結果的に地下水
かん養にどの程度貢献したかが数値化できる。しかも、企業が地元農家の営農活動を支
援し、そこで収穫された米を社員食堂等で利用することは、地産地消費を実施すること
にもつながる。そこで、こうした一連の企業の取り組みを、企業田事業として推進して
いくことを検討する。
ソニー・水田で地下水かん養/使用分還元/菊陽町JAと契約へ
菊池郡菊陽町に進出したソニーの半導体事業の生産拠点、熊本テクノロジーセ
ンター(熊本TEC)は、使用した分の地下水を還元するため、白川中流域で水
田を利用した地下水かん養事業に取り組む。…略…
県によると、水田を利用し
た地下水かん養策の事業化は初めて。計画では、委託した農家に水田への水張り
を稲刈り後も継続してもらい、新たなかん養量を確保。収穫したコメは「地産地
消」として同社が買い上げ、熊本TECの社員食堂で使用する。…略…
(熊本日日新聞平成 15 年 2 月 20 日記事より抜粋)
(4)交流基盤の整備を検討する
流域連携事業は、基本的にソフト事業が中心となるが、地元にとってもメリットのあ
る事業として進めていくためには、集客を目的とした観光的施設の検討も必要である。現
在、白川中流域にはこうした集客施設が少なく、このため、阿蘇地域への単なる通過点に
終わっているという現状にある。
そこで、白川中流域の地下水かん養に果たす機能を情報発信し、かつ、地下水のメカニ
ズムや地域の歴史、水田等に関する学習の拠点となる施設の整備として、ビジターセンタ
ーや物産館の整備、さらには地下水かん養と親水公園の機能を併せ持つ湛水公園の整備な
ど、総合的な施設整備による交流基盤の建設を検討する。
①ビジターセンターの整備
地下水かん養の仕組みや、地下水のメカニズムなど、地下水に関する科学館、堰や井
手などの歴史的遺構について学ぶ博物館といった学習・研修機能を持ち、子供から大人
まで、熊本市民と地元との交流活動の拠点となる、ビジターセンターを建設する。
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②物産館の整備
農産品の販売を介した生産者と消費者の交流の促進及び、地産地消の実現と地元農家
の収入向上を目的に物産館を整備する。
③湛水公園の整備
圃場整備が進んでない地区を対象に、トンボや蛙、めだか、ドジョウなど、多様な生
態系に配慮した湛水公園(ビオトープ)を整備する。また、周辺整備にあたっては、昔
は数多く見られたという「水車」を、地域のシンボルとして整備する。
(5)組織づくりの検討
これまで示してきた流域連携推進の手順としての活動は、基本的に行政が住民や団体に
活動実施を仕掛けていくことを前提にしている。しかし、流域連携の本来の目標は、住民
や団体の自主的な連携活動にある。そこで、こうした活動を担っていくと思われる、地下
水をテーマとするボランティア団体の育成や、流域連携事業を進める事務局機能の設置、
あるいは「流域資源管理協議会」(仮称)の創設など、組織作りについての検討も必要とな
る。
①地下水保全市民ネットワークの育成
現在、直接に地下水だけをテーマとして取り組んでいる市民ボランティアは存在しな
い。唯一、熊本地下水研究会が、研究活動と共に情報発信活動に取り組んできた。しか
し、地下水研究会は任意の研究会であり、市民活動の主体としては限界がある。
今回の流域連携事業の推進にあたっては、行政主導によって、地下水に関する特別の
団体を育成するよりも、ホタルの会や江津湖研究会など、既存の環境団体やNPOをネ
ットワークしていくことで、緩やかな市民ネットワークを形成していくことが望ましい。
これらのネットワークの中から、いかにして事務局機能を持った連絡会議が設置できる
かを検討することが求められる。
②流域資源管理協議会(仮称)の創設
「流域資源管理協議会」(仮称)は、流域圏内における、各種資源の賦存状況を調査・
評価し、今後の需給見通しをたてて、地域の持続的発展を可能にするため、資源や環境
の保全・利用・管理のあり方について提言をおこなうとともに、他流域との間および流
域内部での調整を図ることを目的とする。その組織運営に当たっては、
「市民・住民参画」、
「情報公開」
、「地方分権」を旨として、行政機関(国の関連機関、県、流域市町村)、各
種経済団体、住民、NPO、学識経験者などの多様な構成員が参加し、合意形成を目指
すものである。これまで触れてきた流域連携事業だけでなく、白川中流域の土地利用の
あり方や、地下水かん養政策の展開など、地下水保全対策に関する総合的検討を進める
協議会として設置する。
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第4節 流域連携検討プログラム
(1)情報誌の発行プログラム
●発行主体
熊本市水保全課
●発行協力
地下水研究会、(財)熊本開発研究センター、環境NPO、
●版型・ページ数
A4版、8頁、モノクロ
●発行部数
2000部
●発行回数
年4回
●発行経費
150,000 円/回×4回
●目次構成
・「地下水の話」
・「データに見る地下水の現状」
・「白川流域探訪」
・「環境ボランティア・地域づくり団体紹介」
・「市民の声・地域の声」
・「インフォメーション」
●対象読者
熊本市民・大津町民・菊陽町民、環境ボランティア団体、消費者団体、
学校関係者、その他
●配布方法
市役所・役場、市民センター・町民センター、水の科学館、水道局等に
常設、関係機関・団体への郵送
(2)現地体験型学習ツアープログラム
●実施主体
熊本市水保全課
●実施協力
地下水研究会、(財)熊本開発研究センター、環境NPO
●実施回数
年3回
●実施経費
200,000 円/回×3回
●対象者
熊本市民、環境ボランティア、消費者団体、学校関係者、他
●定員
25名程度
●ツアールート
①タイプA(上水道の仕組みとかん養の仕組み学習型)
市民会館前集合→健軍水源地→空港大橋→上井手堰・上井手探訪→
下井手堰・下井手探訪→中流域水田→講話・意見交換会
②タイプB(フィールド調査型)
市民会館前集合→大津町楠木会館・講話・説明会→グループワーク
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・グループワークは、上井手探訪班、下井手探訪班、迫・玉岡井手探訪班、
馬場楠井手探訪班、等に分かれてフィールド調査。
・フィールド調査はカメラや地図を持って、地域資源(環境資源・
歴史資源・産業資源等)の発掘や、地元住民への聞き取り作業などを行う。
これを絵地図にしてまとめ、各班で報告会を行う。
③タイプC(田んぼの学校体験型)
市民会館前集合→中流域水田
・田んぼつくり、稲の成長、稲作農業・農政のこと、田んぼの自然・生き物、
田んぼの行事、などの田んぼにまつわる多面的な体験学習を実施。
(3)出前授業プログラム
●実施主体
熊本市水保全課等
●実施協力
九州東海大学、(財)熊本開発研究センター、地下水研究会
●実施回数
5回程度
●対象
熊本市内小学校、大津町内小学校、菊陽町内小学校、他
●実施方法
学期始めに各学校に出前事業に関する実施要領を配布し、実施希望の
申込を募る。先着順もしくは抽選により実施。
●実施経費
30,000 円/回×5回(材料・資料費のみ)
●実施内容
90 分程度の時間配分で計画
①私たちの上水道について(行政担当者)
②地下水のしくみについて(九州東海大学市川教授)
③みんなで実験してみよう(九州東海大学市川教授)
④質問タイム
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(4)体験農園、収穫祭プログラム
●実施主体
熊本市水保全課等
●実施協力
地元関係団体
●実施方法
JAを仲介として、地元農家より借地。それぞれ稲作及び畑作コース
を設定して、熊本市民を募集。畑作コースについては菊陽町で、稲作
コースは大津町で実施。管理は地元農家に委託する。両町の温泉セン
ターと連携を取って、体験農園利用者の優遇措置を取る。
●対象
熊本市民
●イベント
年に1度、体験農園利用者と農家の交流となる、収穫祭を行う。収穫
祭には、子供会や老人会など、地元の団体を招待して、交流を深める。
●実施内容
①農作業基礎講座:行政等の指導員の協力を得て、道具の使い方から、
植付け、施肥など農作業全般、作物全般に関する基礎的な事項を学
習する。
②食べ物と命の学習会:食べ物の安全や、有機農法などについて学習。
③田植え・草取り・水管理・稲刈りなど、稲作や畑作について、農作
業の全工程を体験。
④農村コミュニティの体験:農業に関わる祭事について学ぶとともに、
地域の行事に参加する。
●推進体制
農作業コーディネーターの任命:地元農家や老人会の中から、体験農
園推進員としての農作業コーディネーターを複数名任命し、ローテー
ションで全体の運営を図っていく。
(5)用水路清掃ボランティアプログラム
●実施主体
熊本市水保全課
●実施協力
地元土地改良区、関連大学等
●実施回数
3回程度
●募集対象
熊本市民
●実施方法
大菊土地改良区事務局と、日程・場所・方法等を協議
20人/回
市民・環境ボランティア・消費者団体・バスツアー参加者等に清掃ボ
ランティアの募集
●実施内容
①水管理作業について学習
②用水路の現状調査(図面に写真や図で現状の問題を調べていく)
③清掃活動
④水環境の生態系調査
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(6)農産物のブランド化と契約栽培プログラム
●実施主体
地元関係団体等
●実施協力
消費者団体、環境団体、地元農家有志
●実施方法
地元農家と下流域の消費者団体・環境団体が「水源かん養米」ブラン
ド化研究会をつくり、安全で美味しいコメの栽培について、検討しあ
う。栽培方法等合意できたら、消費者団体を仲介に、購入を前提とし
た契約栽培を進める。
●実施内容
①水源かん養米ブランド化基準つくり
②有機農法の研究
③地産地消のシステム検討
④契約消費者の募集
●推進体制
事務局機能の設置:研究会等をスムースに運営していくために、行政
関係者を入れた事務局を設置し、関係者の活動を支援する。
(7)学童農園事業化プログラム
●実施主体
熊本市水保全課等
●実施協力
地元関係団体等
九州東海大学(工学部、農学部)、環境カウンセラー
●実施対象
熊本市立小学校(81 校)、大津町立小学校(11 校)
菊陽町立小学校(8 校)
●事業概要
予め借り上げた水田(1 校当たり 10a程度)で稲作体験を行う。
稲が生長する過程を観察するとともに、水田に生息する生物や水田(農
業)と地下水との関係、食と農などについても学習する。
●学習項目
①稲作について
②熊本地域の地下水の仕組みについて
③田んぼの生き物について
④わたしたちの食べ物について
⑤田んぼ(農業)の果たす役割について
など
●実施効果
10a×100 ㎜/日×100 日×100 校=1,000,000 ㎥
●検討課題
①事業を実施する水田の確保
②農作業を指導する農家の確保
③環境教育や自然観察を行う人材の確保
④収穫した米の用途
など
91
(8)企業田事業化プログラム
●実施主体
●実施協力
個別企業
熊本市水保全課等、地元関係団体等
●事業概要
企業が稲作農家と米の栽培契約を締結。栽培委託した米については自
社で購入し、社員食堂で消費する。
●メリット
①企業にとっては社員食堂用の米は既にどこからか購入しているもの。
若干割高になっても、「地域に貢献する企業」「環境に配慮する企業」
のイメージが構築できる。
②地元にとっては「地産地消」のより具体的な事例となるとともに、
確実な販路を確保することで農業経営の安定化にも寄与する。
●備
考
①社員食堂で写真等により米の生産者を紹介すれば、より「顔の見え
る」流通が可能になる。
②地元と共同で収穫祭等のイベントや地元産品の販売等を行えば、地
元との絆がより強固なものになる。
③自社消費分としてではなく、飼料稲や援助米として作付けを委託す
れば生産調整の対象となるため、湛水面積の拡大につながる
(9)ビジターセンター・物産館・親水公園整備プログラム
●白川中流域の流域連携に関する施設及び環境整備の考え方
本施設及び環境整備には、次の目的と効果が期待されている。
・白川中流域の持つ地下水かん養機能の重要性及び地下水利用の現状を情報提供
・白川中流域住民(生産者)と下流域住民(消費者)に代表される流域間住民の交
流促進
その目的に対応し、以下の整備方針が考えられる。
・白川中流域地下水かん養機能の重要性に関する紹介
・講演会・教室などの、学習事業を展開
・流域間住民、各種団体などの交流の場作り
・流域間住民交流による白川中流域の農業経済強化
・親水公園などの水の重要性を直接実体験できる環境整備
施設及び環境整備は、大きく以下の4事業で構成する。
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施設整備
ビジターセンター
白川中流域物産館
親水公園整備
屋外体験ゾーン
湛水公園(ビオトープ)
ビジターセンター
ビジターセンターは、熊本市民を対象とした白川中流域の地下水かん養機能の紹介及び
交流活動支援のための施設であり、次の3テーマで構成する。
展示
学習・研究
交流
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A.展
示
白川中流域の持つ地下水かん養機能の重要性を科学的に、かつ理解しやすく展示する
と共に、その機能を維持してきた水耕稲作農業について紹介する。特に堰、井手など
の歴史的に重要な農業土木技術を文化的視点から解説する。
・地下水かん養の科学
・堰、井手の技
・農業と水の文化
・水際生態系
B.学習、研究
熊本市民、小中学生を対象に講演会、教室を開催し、水についてより深く学習する機
会を提供する。また学習、研究の基盤となる水や環境に特化した図書館を設置する。
・講演会
・小中学生教室
・図書館
C.交
流
熊本市民にとって地下水かん養は自らの課題であり、白川流域間の市民交流を支援す
るための施設を整備する。これにより各種市民団体の活動、プログラム立ち上げの促
進を図る。
・生産者、消費者交流
・NPO、ボランティア交流
・他地域間交流(水の都市間など)
白川中流域物産館
物産館は、二つの事業目的を持つ。
・農産品の販売を介した生産者、消費者交流の促進
・白川中流域農業の経済力高揚及び産地化の支援
施設は、
「水、食、健康」をテーマとした「物産直売所」と地元食材を活用した「地元
の味処」によって構成する。
物産直売
地元の味
「水、食、健康」の白川中流域物産館
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A.物産直売所
水を利用した農産加工品を含む、白川中流域農産品、加工品を直売する。
・農産品、加工品
・水を利用した独自開発産品(豆腐、蒟蒻など)
・工芸品
B.地元の味処
地元食材を活用し、かつ水の重要性に着目した健康食レストランとする。
・地元食材の活用
・健康食
物産館イメージ
地元の味処イメージ
親水公園
安全な水を提供できる地下水かん養機能は、水耕稲作農業と密接な関係にあり、さらに
は堰、井手などの伝統的技術や水際環境の保全が大切である。そうした農業文化と水際
環境の重要性を実体験できる親水公園を整備する。
屋外体験ゾーン
(農業及び水供給)
湛水公園
(ビオトープ)
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A.屋外体験ゾーン
水耕稲作農業及び水の供給を直接見学・体験のできるゾーンを設定し、環境整備を行
うと共に、各種体験事業を展開する。
・堰、井手
(水の供給と技術)
・水路、水車、池
(生活と水)
・体験水田
(農業と水)
B.湛水公園(ビオトープ)
トンボ池の名称で知られるビオトープは、水と土を媒体とし、バクテリア、プランク
トンなどの微生物、及び植物、昆虫、小動物によって構成される自立した生物循環の
世界(生態系)である。
このビオトープの成立には水が重要な働きをしており、また動植物の生命活動によっ
て水が浄化されている。
ビオトープの教育的意義は、自然界の生命循環の重要性を知らしめることにあり、ま
たその循環の中で占める水の役割を理解できることである。大きくは、地下水かん養
機能の中にこうした仕組みが組み込まれており、ビオトープをモデルとし、地下水か
ん養機能の理解を助けることが出来る。
・水際生態系の観察
・小中学生教室
・小型ビオトープ製作、講習
ビオトープの構成
ビオトープイメージ
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建築形態(環境共生型施設)
以上解説したこれらの施設は、白川中流域の自然景観の中でシンボル的に配されること
になり、また屋外体験ゾーン、湛水公園(ビオトープ)といった豊かな自然環境に囲まれ
る。施設の機能的意味を考慮しても、これらの施設は、環境共生型の建築形態とするのが
望ましい。
さらに建設材料も堰、井手で用いられている石組み、地元の民家等に見られる大型の木
材を使用し、地域の伝統的な建設技術を再現する。
建築形態の特徴
・屋根植栽を施す。
・躯体は RC 下地石組みとし、大型木材の架構を見せる。
・水田地区に向け開放性を持たせる。
・水や風の流れを演出できる布・紙などの柔らかいインテリア素材を用いる。
環境共生型施設イメージ
97
98
●ビジターセンター、物産館、親水公園の基本構成
白川中流地域物産館(テーマ
ビジターセンター
展示
駐車場
(50台)
学習、研究
交流
物産直販所
水、食、健康)
地元の味処
・地下水かん養の科学
・講演会
・生産者、消費者交流
・農産品、加工品
・地元食材
・堰、井手の技
・小中学生教室
・NPO、ボランティ
・水利用産品
・健康食
・農業と水の文化
・図書館
・水際生態系
ア交流
・他地域交流
駐車場
(30台)
(豆腐、蒟蒻等)
・工芸
(水の都市等)
管理
管理
・事務局
・事務局
・施設公園整備
・産品開発
散策路
アプローチ
アプローチ
水車
屋外体験ゾーン
導入路
流れ
湛水公園(ビオトープ)
・堰、井手
(水の供給と技術)
・水際生態系観察
・水路、水車、池
(生活と水)
・小中学生教室
・体験水田
(農業と水)
・小型ビオトープ製作、講習
導入路
99∼100
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